説明

洗車用ブラシ

【目的】洗車時における車体への絡みつきを防止した安価な洗車用ブラシを提供すること。
【解決手段】洗車用ブラシは、エチレン・酢酸ビニル共重合物を63wt%〜83wt%と、炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%と、を含む多孔性独立気泡発泡体からなる。このような配合によって作製される洗車用ブラシは、樹脂のねばりが小さくなり、洗車時における車体の突起物への絡みつきが防止される。そのため、絡みつきに起因する車体の突起物、例えば、アンテナやワイパー等の損傷が回避できる。尚、多孔性独立気泡発泡体は、変形容易な扁平形状であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗車用ブラシに関し、更に詳しくは、洗車の際に自動車の突起物への絡みつきを防止しつつ、高い洗浄力を備え、更に、耐久性にも優れた洗車用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エチレン−酢酸ビニルの発泡体を材質とする洗車用ブラシが知られているが、エチレン−酢酸ビニルの発泡体を材質とすると、自動車の突起物に絡みつき、その突起物(例えば、ワイパー、アンテナ)を損傷させるという問題が指摘されていた。
【0003】
そこで、そうした絡みつきに起因する車体損傷を防止すべく、例えば、特許文献1に記載の洗浄片が提案されている。この洗浄片は、ガソリンスタンド等で多用されている洗車用ブラシを構成する多数の柔軟な洗浄片であり、エチレン−エチルアクリレート樹脂発泡体から構成される。この洗浄片は、その発泡体の引張強度を0.5〜1.2MPaの範囲に、連泡率を10%以下に、25%圧縮硬さを0.2MPa以下に設定したものである。
【0004】
その他にも、特許文献2に記載の洗浄用ブラシのブラシ片は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体及び添加油剤等により構成され、その気泡断面が露出し、基本断面の平均粒径が50〜125μmである。特に、ブラシ片の車体への絡まりに起因する車体損傷を防止するには、このブラシ片は、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の引張弾性率が0.2〜1.5MPaが好ましいというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3586812号公報
【特許文献2】特許第4290478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の洗浄片又はブラシ片は、コスト上の問題が指摘されている。そのため、エチレン−酢酸ビニルを材料として用いる一方で、洗車時における車体への絡みつきを防止した安価な洗車用ブラシが要求されている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、洗車時における車体への絡みつきを防止した安価な洗車用ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者等は、洗車時における車体への絡みつきを防止した安価な洗車用ブラシを得るために鋭意研究を行ったところ、エチレン・酢酸ビニル共重合物を63wt%〜83wt%と、炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%と、を含む多孔性独立気泡発泡体によって洗車用ブラシを構成すればよいことを知見するに至った。本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。
本発明に係る洗車用ブラシは、エチレン・酢酸ビニル共重合物を63wt%〜83wt%と、炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%と、を含む多孔性独立気泡発泡体からなることを要旨とする。この場合に、前記多孔性独立気泡発泡体は、車体の細部を洗車しうるべく変形容易な扁平形状、例えば、厚さにして、1mm〜10mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る洗車用ブラシは、エチレン・酢酸ビニル共重合物を63wt%〜83wt%と、炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%と、を含む多孔性独立気泡発泡体によって構成したものであるから、樹脂のねばりが小さく洗車時における車体の突起物への絡みつきを防止することができるという効果がある。本発明に係る洗車用ブラシは、更に、この絡みつきに起因する車体損傷を防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗車ブラシの洗浄片10の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシについて説明する。
本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシは、エチレン・酢酸ビニル共重合物を63wt%〜83wt%と、炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%と、を含む多孔性独立気泡発泡体からなる(化学式:(CH・(C)・C・CaCO)。この多孔性独立気泡発泡体は、炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%含有するため、樹脂のねばりが少ない、すなわち、滑りがよくなるため、洗車時における車体への絡みつきが防止される。尚、炭酸カルシウムの配合量を13wt%未満とすると、車体洗浄時の車体表面での滑りが悪く、30wt%超とすると硬くなり滑り過ぎ洗浄音が高くなる。そのため、本実施形態に係る洗車用ブラシは、炭酸カルシウムの配合量を13wt%〜30wt%としている。
【0012】
このように、本発明の一実施形態に係る洗車用ブラシは、洗車時における車体への絡みつきが防止されるために、これに起因する車体損傷、例えば、アンテナやワイパー等の突起物の破損が防止される。
この多孔性独立気泡発泡体は、融点が60℃〜115℃であり、密度が0.22〜0.155であり、水に溶けないという物理的・化学的性質を備える。この多孔性独立気泡発泡体は、洗車用ブラシとして用いられることから、車体の細部を洗車しうるべくとされる。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る扁平形状をなした洗車用ブラシの洗浄片10を示す。洗浄片10は、先端部分が複数に分岐(n股分岐(n:n>1の整数))した又は分岐しない短冊状の複数の洗浄片12,12…と、洗車機に取り付けるための孔14,16が形成された取付本体18からなる。洗浄片10は、ガソリンスタンドの洗車用ブラシのブラシ部分として用いられる。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例及び比較例について説明する。
(試験片の作製)
実施例1〜3及び比較例1〜2について、表1に示す配合でエチレン・酢酸ビニル共重合物と、炭酸カルシウムと、発泡剤等の添加物を含む樹脂を溶融・混合し、発泡体を作製した。この発泡体を加工して、図1に示す外観の洗浄片を作製した。この洗浄片は、大きさが72cm×38cmであり、その各短冊状の洗浄片の長さ(二股部分を含む長さ)が15cm、幅が8mm、厚さが3mmである。各実施例及び各比較例について、洗車用ブラシ(試験用ブラシ)として、この洗浄片を二つに折り曲げたものを10枚づつ、径114mm×高さ1800mmの洗車機の支柱ポールの外周に高さ方向に等間隔で合計90枚取り付けたものを作製した。
【0015】
【表1】

【0016】
(各種試験)
試験用ブラシを用いて洗車を実施し、車体部分への絡みつきを観察した。その結果を表1に併せて示す。
また、1000時間の連続運転により耐久性を調べた。
【0017】
(評価)
表1に示すように、実施例1〜3の炭酸カルシウムを15wt%、18wt%、30wt%含む洗浄片を用いた試験用ブラシにより洗車を実施した場合には、いずれも洗車時における車体への絡みつきが発生しなかった。また、車体の洗浄状態は良好だった。
更に、連続運転を実施しても洗浄片は外観が損なわれず、その洗浄力低下も見られず、試験用ブラシは耐久性に優れていることが確認できた。このことから、エチレン・酢酸ビニル共重合物を主成分とする高分子材料への炭酸カルシウムの配合量を15wt%、18wt%、30wt%とすると、樹脂のねばりが小さくなり、車体の突起物への絡みつきが防止されることが確認できた。更に、炭酸カルシウムの量を増加させるに伴ってコストを低減できることが確認できた。
これに対して、比較例1〜2の炭酸カルシウムを10wt、5wt%含む洗浄片を用いた試験用ブラシにより洗車を実施した場合には、いずれも洗車時における車体への絡みつきが発生した。
【0018】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る洗車用ブラシは、車体の突起物を損傷させることがなく、しかも、高い洗浄力を備え、更に、耐久性にも優れているためガソリンスタンドをはじめとする洗車業界において安全に使用することができ、産業上利用価値が高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・酢酸ビニル共重合物を63wt%〜83wt%と、
炭酸カルシウムを13wt%〜30wt%と、
を含む多孔性独立気泡発泡体からなる洗車用ブラシ。
【請求項2】
前記多孔性独立気泡発泡体は、変形容易な扁平形状であることを特徴とする請求項1に記載の洗車用ブラシ。

【図1】
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