説明

洗顔用パフ

【課題】本発明による洗顔用パフは、ル−プパイル部が綿/クラビオン短繊維Aが『へたる』ことなく形成されており、肌からの化粧落としに極めて有効であり、使い心地のよい水切り性を持ち、更に肌に優しい等の理想的な条件を満足させることができた。
【解決手段】フォーム材を芯材1とし、パイル編み生地2にて被包してなる洗顔用パフ10であって、前記パイル編み生地2が綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aとポリ乳酸繊維系長繊維Bより構成され、パイル編み生地2の地部3に設けた開口部4より綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aとポリ乳酸繊維系長繊維Bとを撚り合わせずにル−プパイル部5を形成し、その後、ヒ−トセットによりル−プパイル部5のポリ乳酸繊維系長繊維Bを収縮させ、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aの基部をポリ乳酸繊維系長繊維Bにて支持し、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aを立ち上がらせたパフ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗顔時に用いるパフ(以下、単に洗顔用パフという)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から用いられている洗顔用パフは、スポンジ芯材を布等で被覆した全体に偏平な例えば楕円形状としているのが通常である。しかしながら、この従来の洗顔用パフにおいては化粧、汚れ、垢、脂肪分等を落とすことが主であり、素材が肌に与える影響に対しては殆ど考慮されてはいなかった。
【0003】
素材が肌に与える影響を考慮したものとして特許文献1がある。これは皮膚の表面から美容に害のある脂肪分、老廃物を取り除くことができ、肌に悪影響のない抗菌性、抗黴性、防臭性を有する洗顔用パフを提供することを目的とするものであり、クッション材を芯材とし布体が被包してなる洗顔用パフにおいて、表面の布体を繊維表面に脱アセチル化キチンとセリシンとからなる複合体を固着してなる繊維のパイル編み生地で形成したことを特徴とするものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−142857号公報
【0005】
上記繊維の採用は、吸水性、乾燥性に優れ、黴に対する抵抗性もあり、耐酸性、耐アルカリ性、耐酸化剤、耐還元剤及び耐有機溶剤等の性質を有するため、長期間使用しても化粧品及び洗顔料等によりその影響を受けず、肌にもその影響を与えないこと等の結果に基づくものである。
【0006】
そして、この繊維は比較的細く、かつループパイル編み生地であるため、汗腺や毛穴を開いて垢等の表面の汚れや、毛穴の深部に詰まりニキビの原因になったりする脂肪分や老廃物を取り除くことができる。従って、顔の美容と健康が増進されると言われている。
【0007】
又、これらの効果を更に高めたものとして特許文献2がある。これは、垢等の表面の汚れや、毛穴の深部に詰まりニキビの原因になったりする脂肪分や老廃物を更に効果的に取り除き、顔の美容と健康を更に増進することを狙ったものであり、繊維生地を特殊な構成としたことにより達成されたものである。
【0008】
【特許文献2】特開2005−168751号公報
【0009】
その技術内容は、セル膜を除去した軟質ウレタンフォーム材を芯材とし、繊維生地にて被包してなる洗顔用パフであって、繊維生地がニットのパイル編み生地であり、パイル部分には10〜90%のマイクロファイバ−と他のスパン糸90〜10%とからなる交編或いは交撚生地であることを特徴とするもので、マイクロファイバ−は1デシテックス以下の繊維であり、通常はポリエステル或いはナイロン繊維が好んで用いられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2における洗顔用パフにあっても問題がないとは言えず、例えば、マイクロファイバ−が極めて細いことから来る肌への影響があるのではないかと言う点、ループ構造のパイルが『へたり』やすく、肌に直接触れて化粧落とし等の機能を発揮するはずのパイルの効果が低下してしまう点が指摘されている。そして、パイルに『へたり』を生じると、いわゆる水切りが悪くなって使い心地が低下することにもなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、軟質フォーム材を芯材1とし、パイル編み生地2にて被包してなる洗顔用パフ10であって、前記パイル編み生地2が綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aとポリ乳酸繊維系長繊維Bより構成され、パイル編み生地2の地部3に設けた開口部4より綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aとポリ乳酸繊維系長繊維Bとを撚り合わせずにル−プパイル部5を形成し、その後、ヒ−トセットによりル−プパイル部5のポリ乳酸繊維系長繊維Bを収縮させ、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aの基部をポリ乳酸繊維系長繊維Bにて支持し、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aを立ち上がらせたことを特徴とする洗顔用パフであり、より具体的には、複数のル−プパイル部5とル−プパイルなし部6とを交互に形成した洗顔用パフである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成は以上の通りであり、パイル編み生地2のル−プパイル部5における綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aの基部を、ポリ乳酸繊維系長繊維Bを熱収縮させて支持し、これを立ち上がらせたものであり、これによって肌を痛めずに、しかも効率よく肌の表面の汚れや、脂肪分や老廃物を取り除くことができるようになったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、パイル編み生地2における綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aが立設され、『へたり』を少なくした構造としたもので、人体の皮膚の表面に対してソフトで、長時間良好なる洗浄作用が奏される。即ち、肌の表面の汚れは元より、肌の細かい隙間に入り込み、汚れ落とし(化粧品の除去)等の効果が果たされるものである。
【0014】
パイル編み生地2における第1は、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aであり、その割合は任意で、例えば綿を用いない場合もあるが、通常は60〜80/40〜20、具体的には70/30である。尚、キチンキトサンビスコ−ス繊維の例としてはオ−ミケンシ(株)製のクラビオン(特許文献3)であり、これはカニ殻から苛性ソ−ダで蛋白質を、塩酸でカルシウムを取り除き、チキン・キトサンを残し、これとパルプからのセルロ−スを夫々溶解し、分子レベルで融合した繊維であり、柔らかく天然の抗菌作用があり、保温性に優れ、肌ざわりもソフトな感覚を有する繊維である。
【0015】
【特許文献3】特許第2736868号
【0016】
パイル編み生地2における第2は、ポリ乳酸繊維系長繊維Bであり、この例としては(株)ユニチカ製(商標名:テラマック)のポリ乳酸繊維系長繊維(特許文献4)があり、これはトウモロコシから抽出したポリ乳酸繊維で、天然系の長繊維の一つで、ウ−リ−系にして濡れても『へたり』にくく、そして、緩やかな抗菌作用がある繊維である。
肌刺激性の小さい繊維である。
【0017】
【特許文献4】特開2001−234454号公報
【0018】
パイル編み生地2は、片面或いは両面丸編パイル組織、トリコット編、ラッセル編等のル−プパイル形状を有する生地であり、これによって芯材である軟質フォーム材の片面或いは両面を被包する。尚、必要であれば、他の繊維を併用することも可能であり、肌のためには、大豆蛋白質繊維、木綿、他の天然或いは合成繊維、場合によってはその一部としてマイクロファイバ−をも用いることができる。
【0019】
例えば、大豆蛋白質繊維は大豆粒を原料として球状蛋白質を抽出し、加工剤を加えて湿式防止法によって得られた再生繊維であり、透湿性、通気性、ソフトタッチの風合いを持つ繊維である。
【0020】
又、天然蛋白とアクリロニトリルをグラフト重合させて得られる蛋白質系半合成繊維(東洋紡績(株):商標名「シノン」)を用いることも可能であり、天然蛋白としてミルクカゼインを用いており、絹に類似した肌に優しい風合いを持つもので、このような繊維を本発明の長繊維及び/又は短繊維の組み合わせ構造に用いることにより、肌に優しくて使い心地性に優れるという特性をよりよく発揮させることができる。
【0021】
本発明の洗顔用パフ10は芯材1に軟質フォーム材を用いるものであり、芯材1の好ましい例は軟質ウレタンフォ−ムであり、特にセル膜を除去したフォ−ム材が望まれる。そして、洗顔用であることから、軟質ウレタンフォーム材のセル数が10〜60個/インチであり、場合によっては、セル数を異にした複数のフォ−ム材を積層したものであってもよい。ここで軟質ウレタンフォ−ムのセルについて述べれば、軟質ウレタンフォーム材は発泡ガスを内包した泡によって発泡形成されるが、この泡粒を形成する膜をセル膜といい、骨格を残して膜を除去することによって泡立て効果は勿論、水切り性が極めて優れたものとなる。
【0022】
尚、必要に応じてにセリシンを後加工により塗布するものであり、セリシン処理により綿/レ−ヨンの繊維Aの奥深く染み込み、保湿、柔軟性が出る。セリシン処理については多数の提案がなされており、その一部をここに記載し(特許文献6〜9)技術内容には言及しない。
【0023】
【特許文献6】特開平04−202855号公報
【0024】
【特許文献7】特開平06−017372号公報
【0025】
【特許文献8】特開平08−058006号公報
【0026】
【特許文献9】特開平08−060547号公報
【0027】
本発明は以上の構成を備えたものであり、特定の短繊維Aと長繊維Bとの組合せによる特性を効果的に利用しているもので、それらの各繊維A、Bの特性を生かし、特に肌触りがよくて長時間の使用にあっても『へたり』にくい優れた洗顔用パフ10を具現化したものである。
【0028】
本発明にて用いる綿/クラビオン短繊維Aは柔らかいが『へたり』やすいという点が指摘されているところ、テラマック長繊維Bは細い糸がばらけて広がるが、熱に弱くセットすると収縮する性状があり、本発明はこの性質を利用し、柔らかい糸である綿/クラビオンAを、縮んでばらける糸であるテラマックBがその基部を支えて立ち上がらせ、綿/クラビオン繊維Aの『へたり』をなくしたものである。
【0029】
このため、ル−プパイル部5は上記A及びBの繊維を撚り合わせずに同じ開口部4より5〜6本のル−プパイル部5を形成し、次いでパイルなし部6を形成し、これを繰り返してパイル編み生地2とし、その後ヒ−トセットして洗顔用パフ10に用いられるパイプ編み生地2が完成するものである。このようなル−プパイプ部5とパイプ部なし部6との島模様を形成することは、洗顔用パフ10としての洗顔料の泡立ち性、軽重量化、通気性を考慮したものである。
【実施例】
【0030】
以下、図示の実施例について本発明を詳細に説明する。図1はパイル編み生地にて芯材を完全に包んだ構造の洗顔用パフ(第1実施例)の平面図、図2はその断面図、図3は図2の一部拡大図である。
【0031】
図において、10は洗顔用パフを示し、軟質ウレタンフォーム芯材1と、この芯材1を包んだパイル編み生地2とからなり、この例では、偏平で平面視で楕円形をなしている。勿論、洗顔用パフ10の形状はこの例に限定されないことは当然である。
【0032】
パイル編み生地2は、綿/クラビオン短繊維(70/30)A及びテラマック長繊維Bから形成されている。そして、パイル編み生地2の地部3より五つ連続させて同じ開口部4よりル−プパイル部5を形成し、次いで一つル−プパイルを形成しない部位6とし、これを上下左右に繰り返し連続させてパイル編み生地2を得る。かかるル−プパイル5は綿/クラビオン短繊維A及びテラマック長繊維Bを撚り合わせずにル−プパイル形状としたものである。尚、地部3を構成する繊維も適宜選択されるが、この例にあっては、ポリエステル繊維100%にて構成されたものである。
【0033】
そして、得られたパイル編み生地2をヒ−トセットし、テラマック長繊維Bを熱収縮させ、綿/クラビオン短繊維Aのル−プの基部をテラマックBの熱収縮体にて支持し、上記短繊維Aを立設する構造としたものである。パイル編み生地2の最終製品としては、地部3が比較的粗い目で形成され、五連で帯状をなす綿/クラビオン短繊維Aのル−プパイル部5とル−プパイル部のない溝状をなす部位6が交互に存在することとなる。
【0034】
従って、ル−プ状に立設された綿/クラビオン短繊維Aは『へたる』ことなく、しかも心地よい肌触りを可能としたもので、全体の重量を軽くでき、また洗顔剤の泡立ちをよくすることができ、更にル−プパイル部5の肌への接触力が落ちず特有の効果が持続されることとなったものである。
【0035】
芯材1としての軟質ウレタンフォームはセル数が25.3個/インチであり、このウレタンフォ−ムのセル膜を除去したものを用いた。セル膜を除去した軟質ウレタンフォームはフォ−ム骨格が強化され、酸やアルカリ、更には他の薬剤や化粧品等によって劣化がもたらされることは少なくなり、しかも洗顔料の泡立ちを極めて良くするという効果を奏するものである。
【0036】
尚、本発明の第1実施例にあっては、軟質ウレタンフォ−ム芯材1を内包しつつパイル編み生地2、2の周囲を括り合わせた構造としたが、その内包手段は任意であり、更に、図示はしないが軟質ウレタンフォ−ム芯材1の片面にのみ前記パイル編み生地2を配したものであってもよく、これらの貼り合わせも従来より公知の方法によって行われる。
【0037】
本発明の洗顔用パフ10の特徴を、特許文献2にて提案された洗顔用パフとの比較によって更に述べる。特許文献2のパイル編み生地が1デシテックス以下のマイクロファイバ−(45%)とラクトロン(55%)(カネボウ合繊製)とをル−プ状に編んだ繊維で構成されるのが好ましいものであるが、マイクロファイバ−の肌に対する接触によって汚れを落とすことには大きな効果があるが、同時に、ファイバ−の断面が多角形状を呈しているため、エッジ作用により肌を痛める可能性があるのではないかと懸念されていた。
【0038】
しかるに、本発明の洗顔用パフ10によれば、肌に対して極めて柔軟な綿/クラビオン短繊維Aを『へたる』ことなく常にル−プ状に立設されている構造としたものであり、従来からの上記のような肌に対する懸念をなくし、特徴ある洗顔用パフ10を提供することができるようになったものである。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明による洗顔用パフ10は、以上のようにそのル−プパイル部5が綿/クラビオン短繊維Aが『へたる』ことなく形成されていることから、肌からの化粧落としに極めて有効であり、使い心地のよい水切り性を持ち、更に肌に優しい等の理想的な条件を満足させることができたもので、広く採用されることとなったものである。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明の洗顔用パフの第1実施例における平面図である。
【図2】図2は図1の洗顔用パフの中央断面図である。
【図3】図3は図2の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0041】
A‥綿/クラビオン短繊維、
B‥テラマック長繊維、
1‥軟質ウレタンフォーム芯材、
2‥パイル編み生地、
3‥パイル編み生地の地部、
4‥ル−プパイルを形成する開口部、
5‥ル−プパイル部、
6‥ル−プパイルなしの部位、
10‥洗顔用パフ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟質フォーム材を芯材1とし、パイル編み生地2にて被包してなる洗顔用パフ10であって、前記パイル編み生地2が綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aとポリ乳酸繊維系長繊維Bより構成され、パイル編み生地2の地部3に設けた開口部4より綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aとポリ乳酸繊維系長繊維Bとを撚り合わせずにル−プパイル部5を形成し、その後、ヒ−トセットによりル−プパイル部5のポリ乳酸繊維系長繊維Bを収縮させ、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aの基部をポリ乳酸繊維系長繊維Bにて支持し、綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aを立ち上がらせたことを特徴とする洗顔用パフ。
【請求項2】
複数のル−プパイル部5とル−プパイルなし部6とを交互に形成した請求項1記載の洗顔用パフ。
【請求項3】
パイル編み生地2が芯材1の片面を被包した請求項1又は2記載の洗顔用パフ。
【請求項4】
パイル編み生地2が芯材1の両面を被包した請求項1又は2記載の洗顔用パフ。
【請求項5】
芯材1がウレタンフォーム材である請求項1乃至4いずれか1記載の洗顔用パフ。
【請求項6】
芯材1がセル膜を除去したウレタンフォーム材である請求項5記載の洗顔用パフ。
【請求項7】
軟質ウレタンフォーム材のセル数が10〜60個/インチである請求項5又は6記載の洗顔用パフ。
【請求項8】
芯材1が複数層積層された構造である請求項1乃至7いずれか1記載の洗顔用パフ。
【請求項9】
綿/キチンキトサンビスコ−ス系短繊維Aが、60〜80%/40〜20%である請求項1記載の洗顔用パフ。
【請求項10】
パイル編み生地2にセリシンを後加工により塗布した請求項1乃至9いずれか1記載の洗顔用パフ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−289377(P2007−289377A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120188(P2006−120188)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(501054067)株式会社ヴァンクール (2)
【Fターム(参考)】