説明

洗髪機能を備えた浴槽装置

【課題】ストレスのかからない姿勢で洗髪或いは入浴を楽しむことができ、特に洗髪にかかる時間をリラックスできる時間に変えることができ、心地よい刺激でリラクゼーション効果を増大させること。
【解決手段】浴槽1の底面1bに背もたれ部2を形成し、背もたれ部2の延長上における浴槽1の上端部分に入浴者の首6を保持する保持凹所5を形成し、保持凹所5に隣接して浴槽1につかった入浴者の頭7を収容する洗髪槽11を設け、この洗髪槽11に対して、洗髪時以外の入浴時に入浴者の頭7を洗髪槽11よりも上方位置で支持するための入浴用枕を着脱自在に装着できるようにした洗髪機能を備えた浴槽装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗髪機能を備えた浴槽装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ジェットバスやミストサウナにより、リラックスして入浴することができるが、頭を洗うという洗髪行為は依然として省くことができず、特に女性は長い頭髪の手入れに手間がかかり、入浴中において洗髪に長い時間を浪費させられているのが現状である。
【0003】
そこで、洗髪に要する時間をリラックスできる時間に変えられる入浴・洗髪装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。すなわち図5に示すように、浴槽1の上端部分に入浴者の首を保持するための保持凹所5を形成すると共に、保持凹所5に隣接して入浴者の頭7を収容する洗髪槽11を有しており、洗髪を行なう際は、入浴者が洗髪槽11に対して背を向けた状態で浴槽1につかって仰向けとなり、入浴者の首を保持凹所5に入れて、頭7を洗髪槽11内に収容した状態でドーム形フード50を被せ、洗髪槽11に設けた複数のノズル孔51から洗浄水を吐水させて自動洗髪を行なうようにしている。
【0004】
ところが上記特許文献1にみられる入浴・洗髪装置にあっては、洗髪時以外の入浴時にも、入浴者の頭7が洗髪槽11に収容された仰向け状態となるため、入浴者は顔9を略前向きにした楽な姿勢で入浴することができず、リラックス効果が得られないばかりか、仰向き姿勢によって浴槽1内での動作に制限を受けたり、浴槽1内にずり落ちたりする心配もある。
【特許文献1】特開2004−173969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、ストレスのかからない姿勢で洗髪或いは入浴を楽しむことができ、特に洗髪にかかる時間をリラックスできる時間に変えることができ、心地よい刺激でリラクゼーション効果を増大させることができる洗髪機能を備えた浴槽装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、浴槽1の短辺1a側に洗髪槽11を連設し、浴槽1につかった入浴者の頭7を洗髪槽11に収容した状態で洗浄水を入浴者の頭7に吐水して自動的に洗髪を行なうことができる洗髪機能を備えた浴槽装置において、上記浴槽1の底面1bに、入浴者の背中を斜めに支持する背もたれ部2を形成し、該背もたれ部2の延長上における浴槽1の上端部分に入浴者の首6を保持するための保持凹所5を形成すると共に、保持凹所5に隣接して上記洗髪槽11を設け、上記洗髪槽11に対して、洗髪時以外の入浴時に入浴者の頭7を洗髪槽11よりも上方位置で支持するための入浴用枕12を着脱自在に装着できるようにしたことを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、洗髪時には浴槽1の背もたれ部2に入浴者の背中をもたれさせた快適なリクライニング姿勢を保持すると共に、入浴用枕12を洗髪槽11から取り外した状態で、入浴者の首6を保持凹所5に入れて保持し且つ頭7を洗髪槽11内に収容することで、頭髪に洗浄水を吐水させて自動洗髪を行なう。従って、浴槽1に身体を安定保持でき、ストレスのかからない姿勢で洗髪を楽しむことができる。一方、洗髪時以外のときに入浴する場合は、洗髪槽11に入浴用枕12を装着して浴槽1につかる。このとき、洗髪槽11が入浴用枕12で隠され、該入浴用枕12上に入浴者の頭7を支持することで、入浴者は顔9を略前向きに起こした楽な姿勢でリラックスして入浴できる。しかも上記洗髪時の場合と同様、浴槽1に身体を安定保持でき、ストレスのかからない姿勢で快適な入浴ができるようになる。また、洗髪槽11を利用して入浴用枕12を保持できるので、入浴用枕12を吸盤等の固定具を用いて固定する必要もない。
【0008】
また、上記洗髪槽11に、洗髪時における入浴者の顔9に洗浄水が飛散するのを防止するためのフード13を出し入れ自在に収納するフード収納部14を設けるのが好ましく、この場合、洗髪時にフード13を引き出して洗髪水が顔9にかからないようにすることで、快適な洗髪が実行できると共に、洗髪時以外のときはフード13を邪魔にならないように収納でき、使い勝手が良くなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る洗髪機能を備えた浴槽装置は、洗髪時には洗髪槽から入浴用枕を取り外すことで、洗髪槽で自動洗髪を実行でき、洗髪時以外の入浴時には、洗髪槽に入浴用枕を装着することで入浴者の顔を略前向きに起こした楽な姿勢で快適な入浴ができる。さらに、浴槽の底面に入浴者の背中を斜めに支持する背もたれ部を形成したことにより、洗髪時或いは入浴時のいずれにおいても浴槽内で快適なリクライニング姿勢を保持しながら洗髪或いは入浴を楽しむことができ、この結果、ストレスのかからない姿勢で洗髪及び入浴を楽しむことができ、特に洗髪にかかる時間をリラックスできる時間に変えることができるので、心地よい刺激でリラクゼーション効果を増大させることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
本発明の洗髪機能を備えた浴槽装置は、ユニットバスルームに設置され、浴槽1の短辺1a側に洗髪装置10を連設し、入浴者の頭髪に洗浄水を噴射して自動的に洗髪を行なうと共に、洗髪以外のときには入浴用枕12を用いて入浴するものである。
【0012】
上記浴槽1は、図1に示すように、底面1bと、一対の短辺方向側壁面1cと、一対の長手方向側壁面1dとにより構成されている。ここで、一方の短辺方向側壁面1cが頭7側が位置する頭配置部となり、他方の短辺方向側壁面1cが入浴者の足先側が位置する足先配置部となる。浴槽1の底面1bには、頭配置部側から足先配置部側に向かって、入浴者の背中を頭7側が上になるように斜めに支持するための背もたれ部2と、足8を略く字状に曲げて乗せる側面視略三角形状の足乗せ部3と、足裏及び踵を支持する足掛け部4とがこの順に形成されている。
【0013】
上記浴槽1の背もたれ部2の延長上における上端部分には、洗髪時に入浴者の首6を保持するための保持凹所5が形成されている。保持凹所5は上方に開口する略U字状に凹んでおり、その深さdは、入浴者が無理の無い仰向け姿勢がとれ且つ入浴者の仰向けの顔9が浴槽1の水面よりも高くなるような深さ寸法とされる。
【0014】
一方、洗髪装置10は、入浴者の頭7を収容できるように上方が開放された略ボウル形状の洗髪槽11と、洗髪槽11内に洗浄水を供給するための給湯・給水管23と、洗浄水を外部に排出する排水管17と、入浴者の顔9に洗浄水が飛散するのを防止するためのフード13とを備えている。
【0015】
洗髪槽11は浴槽1の保持凹所5に隣接して設けられている。洗髪槽11には排水孔15(図4)が開口しており、その下方には洗浄水を受けるためのシンク16が設けられている。シンク16は排水管17に連通しており、洗髪槽11からシンク16内に流下した洗浄水が排水管17を通って外部に排出されるようになっている。
【0016】
上記フード13は、洗髪槽11よりも後方Bで洗髪槽11よりも上方に設けたハウジング18に設けたフード収納部14に出し入れ自在に収納されている。本例のフード13は、側面視扇形状で且つ前後方向に開口した短筒状に形成されており、フード13の両下端部13cがフード収納部14の両側面に対して水平軸30回りに回転自在に支持されている。図2(b)に示す例では、フード13の外層19と内層20との間が給水路21となった扁平袋状をしており、内層20の複数箇所に給水路21に連通するノズルヘッド22が取り付けられている。給水路21は洗髪槽11内に配管された給湯・給水管23に連通しており、給湯・給水管23から給水路21に供給される洗浄水がノズルヘッド22から入浴者の頭7に噴射するようになっている。また本例のフード13は、互いに繋がった多関節タイプの複数枚(本例では3枚)のフード片13A〜13Cで構成され、内側フード片13Aの内面に複数のノズルヘッド22が設けられている。なお、中間フード片13B或いは外側フード片13Cの内面にノズルヘッド22を設けてもよい。さらに図1のように洗髪槽11の後壁面側にも給湯・給水管23に連通する複数のノズルヘッド22´を設けてもよい。
【0017】
上記洗髪槽11には入浴用枕12が装着可能とされる。この入浴用枕12は、洗髪槽11に着脱自在に装着される装着部12Aと、入浴者の頭7を支持する枕部12Bとで一体形成されている。
【0018】
装着部12Aは、図4(a)に示すように、ボウル形状の洗髪槽11と略同じ断面形状に形成されており、装着部12Aの上面部24は略平坦面に形成されていると共に上面部24の外周縁には、ずれ止め用つば部25が突設されており、つば部25が洗髪槽11周囲のリム面11aに当たることで、装着部12Aを洗髪槽11に対して傾かずに安定した姿勢で保持できるようにしてある。
【0019】
枕部12Bは、装着部12Aを洗髪槽11に嵌め込んだ状態で枕部12Bの前面26が洗髪槽11よりも上方位置に配置されるものである。本例では図4(b)に示すように、枕部12Bの前面26は保持凹所5よりも上方位置で且つ背もたれ部2と略平行な方向に傾斜しており、この枕部12Bの前面26に入浴者の後頭部をあてがうことにより、入浴者は顔9を略前向きに起こした楽な姿勢をとることができる。なお、入浴用枕12の材料の一例として軟質プラスチック、ゴム組成物、プラスチック発泡体などが挙げられるが、勿論これらに限定されるものではない。
【0020】
次に、洗髪時には、入浴用枕12を洗髪槽11から取り外した状態で、入浴者は洗髪槽11に対して背を向けた状態で浴槽1につかる。このとき、浴槽1の背もたれ部2に背中を支持し、足8を足乗せ部3に乗せ、足裏及び踵を足掛け部4に当てることで浴槽1内部で身体を楽なリクライニング姿勢で安定させることができる。この状態で、入浴者の首6を保持凹所5に入れ、頭7を洗髪槽11内に収容して仰向け姿勢となり、その後、フード13を引き出す。このとき、図1に示すように、内側フード片13Aを斜め前下方Eに引き出すと、内側フード片13Aに繋がって中間フード片13B及び外側フード片13Cがそれぞれ引き出される。このとき図2(b)に示す内側フード片13Aの凹所13aが入浴者の額に装着したヘアキャップ29に当たり且つ内側フード片13Aの両下端部13bが洗髪槽11周囲のリム面11aに当たることにより、入浴者の頭7の周囲を各フード片13A〜13Cにて隙間なく覆うことができる。この状態でノズルヘッド22からの洗浄水を図3の異なる複数方向F1、F2、F3から入浴者の頭7に噴射させて自動洗髪を行なう。このとき、給湯・給水管23の途中に例えばポンプ(図示せず)を設け、ポンプによって所定の圧力及び脈動を加えながら洗浄水をノズルヘッド22から吐出させるようにしてもよい。また、洗髪槽11内にシャンプー液やトリートメント液を供給するタンク(図示せず)を設け、シャンプー液或いはトリートメント液が混ざった洗浄水(温水)をノズルヘッド22から噴出させるようにしてもよい。さらに、温風を供給する送風装置(図示せず)を設け、洗髪後にノズルヘッド22から温風を噴出させて頭髪を乾かすようにしてよい。また、自動洗髪の洗浄パターンとして、例えば、温水→シャンプー液→温水→リンス液→温水→すすぎ洗浄→温風があり、これを操作手段で任意に選択実行できるようにしてもよい。
【0021】
しかして、洗髪時には、浴槽1の底面1bに設けた背もたれ部2、足乗せ部3、足掛け部4によって、入浴者の身体が安定するので、仰向け姿勢でも滑り込み現象が起きず、女性に限らず、高齢者や体の不自由な人でも快適な姿勢を保持しながら洗髪を自動的に行なうことができる。しかも浴槽1に身体を安定保持でき、ストレスのかからない姿勢で洗髪を楽しめるので、洗髪にかかる時間をリラックスできる時間に変えることができ、結果、従来の単なる仰向け姿勢で浴槽1につかりながら洗髪を行なう場合と比較して、全く異なる心地よい刺激でリラクゼーション効果を増大させることができる。
【0022】
また、フード13によって洗髪水が顔9にかからず快適な洗髪が実行できると共に、フード13内面にノズルヘッド22を設けたので、洗浄水やシャンプー液等が周囲に飛散するのを防止しながら、洗浄水で頭髪全体を包み込むようにして短時間で洗髪ができると共に、各ノズルヘッド22から入浴者の頭7表面までの間隔がほぼ同じになるので、頭7全体にわたって噴射水圧、温度で洗浄水を浴びせることができ、爽快感が十分に得られ、また水圧に強弱をつけることで頭をもみ洗う感じを出すことができ、洗髪効果をより一層高めることができる。
【0023】
洗髪後にはフード13を仕舞う。本例では各フード片13A〜13Cをフード収納部14内に向かって押し込むことで、図2(a)に示すように、各フード片13A〜13Cが互いに重なり合った状態となり、フード収納部14内にコンパクトに収納できるようになる。
【0024】
次に、洗髪時以外の入浴時には、図4に示すように、洗髪槽11に入浴用枕12を装着する。これにより洗髪槽11が入浴用枕12で隠され、枕部12B上に入浴者の頭7を支持することで、入浴者は洗髪槽11よりも高い位置に頭7を上げることができ、これにより顔9を略前向きに起こした楽な姿勢をとることができる。しかも上記洗髪時の場合と同様、浴槽1内にリクライニング姿勢で楽に入浴できるようになる。また洗髪槽11を利用して入浴用枕12を保持できるので、入浴用枕12を吸盤等の固定具を用いて固定する必要がなく、そのうえ入浴用枕12の装着部12Aのつば部25が洗髪槽11周囲のリム面11aに当たることで、装着部12Aを洗髪槽11内にぴったりと嵌め込んだ状態で安定保持できるため、浴槽1の満水時や浴槽1から溢れる洗浄水で入浴用枕12が流されたりすることもなく、使い勝手が良好となる。
【0025】
本発明にかかる洗髪機能を備えた浴槽装置は、身体の上下肢に障害や疾病を持つ患者の洗髪を行なうためにも有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に用いる洗髪機能を備えた浴槽装置の側面図である。
【図2】(a)は同上のフードの収納状態を説明する斜視図、(b)は内側フードの斜視図、(c)は内側フードの正面断面図である。
【図3】同上の複数のノズルヘッドから入浴者の頭に洗浄水を吐水させる場合の説明図である。
【図4】(a)は同上の洗髪槽から入浴用枕を取り外した状態の斜視図、(b)は洗髪槽に装着した入浴用枕に入浴者の頭を乗せた状態の説明図である。
【図5】従来例の入浴・洗髪装置の側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 浴槽
1a 短辺
1b 底面
2 背もたれ部
5 保持凹所
6 首
7 頭
9 顔
11 洗髪槽
12 入浴用枕
13 フード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の短辺側に洗髪槽を連設し、浴槽につかった入浴者の頭を洗髪槽に収容した状態で洗浄水を入浴者の頭に吐水して自動的に洗髪を行なうことができる洗髪機能を備えた浴槽装置において、上記浴槽の底面に、入浴者の背中を斜めに支持する背もたれ部を形成し、該背もたれ部の延長上における浴槽の上端部分に入浴者の首を保持するための保持凹所を形成すると共に、保持凹所に隣接して上記洗髪槽を設け、上記洗髪槽に対して、洗髪時以外の入浴時に入浴者の頭を洗髪槽よりも上方位置で支持するための入浴用枕を着脱自在に装着できるようにしたことを特徴とする洗髪機能を備えた浴槽装置。
【請求項2】
上記洗髪槽に、洗髪時における入浴者の顔に洗浄水が飛散するのを防止するためのフードを出し入れ自在に収納するフード収納部を設けたことを特徴とする請求項1記載の洗髪機能を備えた浴槽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−222415(P2007−222415A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47477(P2006−47477)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(505154956)松下電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】