説明

津波・洪水等の非常事態からの避難装置

【課題】津波などに対してより強力に対抗し得るようにした津波・洪水等の非常事態からの避難装置を提供する。
【解決手段】複数本の支柱が、設置基盤に設定した平面四辺形の線上に対応して立設固定され、これらの支柱を介して上階としての避難部分が設けられるとともに、この避難部分と設置基盤側との間を階段式の登降手段314で連絡した津波・洪水等の非常事態からの避難装置であって、階段式の登降手段314は、前列の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側における2階部分以下の高さ範囲に添うべく斜め向きの直階段316の部分を有し、該直階段316の下部は、前列の支柱のうちの一方の支柱の前側に位置するとともに、直階段315の上部は前列の支柱のうちの他方の支柱の前側に位置し、直階段315の上部に接続された踊り場317は、他方の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側回りに位置するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、津波・洪水等の非常事態からの避難装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、津波対策用として海岸線などに設置される津波避難用施設物(津波タワー)は、基盤に打設された鉄筋コンクリート製基礎と、同基礎上に立設固定された複数本の支柱と、同支柱上に固定された避難ステージと、基盤側と避難ステージとの間を連絡する登降手段とを備えたものになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、これまでの津波避難用施設物は、支柱・避難ステージ・登降手段の全てが鉄骨製でなることから、前方から津波が襲来してくると前方下部から突き上げる力が働いた際に抵抗力で充分対抗しようとするが、未曾有の規模をもつ津波あるいは悪条件が重なる場合などにあっては浮き上がり傾向になるおそれがあった。
上記に鑑み、本発明は、津波などに対してより強力に対抗し得るようにした津波・洪水等の非常事態からの避難装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、想定する方向から襲来する津波流Xを先に受ける前列の支柱とこれら前列の支柱よりもあとの段階で津波流Xを受けると想定される後側の支柱とを有する複数本の支柱が、設置基盤に設定した平面四辺形の線上に対応して立設固定され、前記前列の支柱は、設置基盤上における前記平面四辺形上の一辺の両端頂点個所に対応して配置されるとともに、前記後側の支柱は、前記平面四辺形上における前記一辺以外の後方となる位置に配置されており、これらの支柱を介して上階としての避難部分が設けられるとともに、この避難部分と設置基盤側との間を階段式の登降手段で連絡した津波・洪水等の非常事態からの避難装置であって、前記階段式の登降手段は、前記前列の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側における2階部分以下の高さ範囲に添うべく斜め向きの直階段の部分を有し、該直階段の下部は、前記前列の支柱のうちの一方の支柱の前側に位置するとともに、直階段の上部は前記前列の支柱のうちの他方の支柱の前側に位置し、前記直階段の上部に接続された踊り場は、前記他方の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側回りに位置するように構成されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のものにおいて、避難部分は、津波流Xの襲来が想定される前側に対応して非透水式で面状の手すりを備えている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、想定する方向から襲来する津波流Xを先に受ける前列の支柱とこれら前列の支柱よりもあとの段階で津波流Xを受けると想定される後側の支柱とを有する複数本の支柱が、設置基盤に設定した平面四辺形の線上に対応して立設固定され、前記前列の支柱は、設置基盤上における前記平面四辺形上の一辺の両端頂点個所に対応して配置されるとともに、前記後側の支柱は、前記平面四辺形上における前記一辺以外の後方となる位置に配置されており、これらの支柱を介して上階としての避難部分が設けられるとともに、この避難部分と設置基盤側との間を階段式の登降手段で連絡した津波・洪水等の非常事態からの避難装置であって、前記階段式の登降手段は、前記前列の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側における2階部分以下の高さ範囲に添うべく斜め向きの直階段の部分を有し、該直階段の下部は、前記前列の支柱のうちの一方の支柱の前側に位置するとともに、直階段の上部は前記前列の支柱のうちの他方の支柱の前側に位置し、前記直階段の上部に接続された踊り場は、前記他方の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側回りに位置するように構成されていることを特徴とするので、津波などに対してより強力に対抗し得るようにした津波・洪水等の非常事態からの避難装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下の各実施形態で説明されている個々の提案技術は他の実施形態にも適用されるものとする。
【0007】
図1ないし図3は津波対策用避難装置についての他の実施形態を示す。
図2は図2の平面図、図2は図1の正面図、図3は図2の右側面図(左側面図は右側面図と同一に表れる)をそれぞれ示す。300は設置地盤で、同設置基盤300の6個所には、六面体でなる主基礎ブロック301…が鉄筋コンクリート基礎施工により埋設固定されている。この6個所とは、図1に示すように、正四角形を隣り合わせに一対組み合わせて出来た長四辺形の6つの頂点位置を指す。尚、図1における上下に対応する主基礎ブロック301の中心間距離は4.5m、左右に離れた主基礎ブロック301の中心間距離は9mとされている。
【0008】
各主基礎ブロック301には、同ブロック301よりも少し面積が狭い据付突座302が一体に突設されている。303は支柱で、丸パイプ製であり、同支柱303は6本用意され、津波襲来想定高さよりも2〜3m余裕をもって高く伸びるように下端の座フランジ304を前記据付突座302上に載置して固定されている。その固定は、主基礎ブロック301から据付突座302を通じて上に突き出たアンカーボルト(図示省略)に座フランジ304に開けた孔を通しナットで締め付ける方法とされている。
尚、この支柱303にはプラグ305が設けられていて同プラグ305を外すことで形成される孔を通じて図2のようにコンクリート306…を注入でき、これにより、支柱303の津波の襲来が想定される下半部分の増強が図られるようになっている。このコンクリート注入方式は全ての支柱303に対し実施する場合と図1の矢印Xのように津波が襲来する前側2本のみというように限定的に実施する場合とがある。また、プラグ305は支柱303の上端付近であることもある。尚、矢印Xは津波流の襲来が想定される方向である。
【0009】
308は中段横連結材(梁)で、支柱303の中間高さより少し上の高さに設けられ、支柱303の隣同士を連結するものとされている。この横連結材308は。図2の左上欄に示すようなH型鋼でその溝向きは上側の図とされているが下側の図のようにされることがある。
尚、この横連結材308のうち津波襲来側Xに向く面には図2の左上欄に示すように津波流を全てダイレクトに受けず上下に分流させて強度確保を図るように前方が半丸凸状の分流起生材309を取り付けてもよい。勿論同起生材309は他の横連結材308,310にも取り付けてもよい。分流起生材309は木材を使用すると経済的であるとともに緩衝作用もある。また、図2の左上欄に示すように同起生材309は三角形に突出状のものにしたり、半丸でなく丸棒材でもよい。さらに、同起生材309は角材としその稜線が前向きとなる状態でマウントしてもよい。
【0010】
310は上段横連結材で、同じくH型鋼とされて支柱303間を連結している。これら上段横連結材310で形成される面内には100人前後収容可能な広さをもつ避難ステージ311が設けられている。312は登着場で、避難ステージ311の一部を構成している。313はステージ手摺である。
【0011】
314は階段である登降手段で、設置基盤300から前記登着場312をL形に結ぶ一対のものとして固定されている。この登降手段314は下部315と上部316及び踊り場317とで形成されるとともに、一方の登降手段314の下部315は、津波襲来方向Xに対し図1のように直交し、他方の登降手段314の下部315は、津波返し流Yに対し直交するものとされ、ここでこれら下部315は津波流X,Yに対して緩衝手段を兼ねている。尚、図2に示すように、側桁317にも分流促進材309を付すことがある。この場合、下部315のX側前面およびY側前面にこうした分流促進材309を付すと津波流に対し最も有効に機能する。また、同分流起生材309は、ゴム質(中空状も含む)や木質などのように緩衝機能をするものが好適である。
【0012】
この避難装置は、津波襲来方向Xが図1に仮想線矢印のようであれば6本の支柱303…のうち矢印に最も先行する支柱303とそれに隣合う2本の支柱303,303がL字形を形成するので船舶Sや大木などがX方向から漂着しても左右に分流化して脇の方へ流す作用をするが、図33の実線矢印Xのように長辺に平行な方向から津波流が襲来してくる場合には船舶Sが先行する一対の支柱303,303に平行に当たって停滞することになりそのエネルギーが避難装置にダイレクトに作用して装置の損壊や倒壊につながるおそれがある。
【0013】
そのことからX方向に先行する一対の支柱303,303の前方中央位置には緩衝杭319を配置するとともにY方向に対するものとしても設置したものである。
この緩衝杭319は、その後方斜め位置の補助緩衝杭320を設けてこれらの緩衝杭319,320により船舶Sを斜めに流して避難装置にX方向のエネルギーが直接作用しないようにする。321は側面緩衝杭である。
322は杭ブロック、323は据付突座であり、据付突座323は杭ブロック322に一体に形成されている。緩衝杭319および補助緩衝杭320は、これら据付突座323付杭ブロック322に対し上向きに突出するアンカーボルトに杭側のフランジを連結して固定する方法と杭319,320を杭ブロック322内に一体埋め込み式に固定する方法とがある。
【0014】
尚、補助緩衝杭320は緩衝杭319に対し図1に示すようにθ=30度で後方へ振った線上に設けてあるが、この角度は35度・40度・45度・50度・60度など自由な角度を選ぶことができる。また、杭319,320の回りには、図2に示すように、船舶Sなどの漂流物を脇へ流しやすくするための転動輪324をセットしておくこともできる。同転動輪324の表面が緩衝材付であれば緩衝しつつ脇へと流すのに有効に機能する。緩衝材付転動輪は、例えば、廃タイヤの中央に樹脂製中筒を装備することで緩衝機能をもった回転しやすいものを上下積層式とすることで提供できる。
また、主基礎ブロック301…は独立基礎式であったが、これらは地中梁で相互連結したタイプにしたり、ベタ基礎方式にすることができる。このことは緩衝杭319や補助緩衝杭320についても同様に構成することができる。
さらに、前記実施形態では6本支柱型としたが、4本支柱型、8本支柱型その他型式でも同様に実施する。
また、中段横連結材308で構成される水平面内にも避難ステージを構成することがある。
さらに、図1に仮想線で示すように、避難可能人員を増やすため、上部316および登着場312などを拡幅316′、312′してもよい。同図の下側も同様に拡幅状に形成してもよい。避難ステージ311自体を図示よりも広く確保する方法として、例えば、図2に示すように、後側の緩衝杭320,319を高く伸ばしてその上を利用して避難ステージ延伸部311′を構成し登降に影響がなくしかも津波流の影響少なくして安全なステージとすることができるだけでなく、緩衝杭320,319の方も上端が支持されて増強される利点もある。同延伸部311′は前側にすることはできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の一実施形態を示す平面図。
【図2】 図1の装置正面図。
【図3】 図2の装置右側面図。
【符号の説明】
【0016】
1…設置基盤 2…基礎ブロック 7…下部支柱 10…上部支柱 13…中間避難ステージ 18…上部避難ステージ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
想定する方向から襲来する津波流Xを先に受ける前列の支柱とこれら前列の支柱よりもあとの段階で津波流Xを受けると想定される後側の支柱とを有する複数本の支柱が、設置基盤に設定した平面四辺形の線上に対応して立設固定され、前記前列の支柱は、設置基盤上における前記平面四辺形上の一辺の両端頂点個所に対応して配置されるとともに、前記後側の支柱は、前記平面四辺形上における前記一辺以外の後方となる位置に配置されており、これらの支柱を介して上階としての避難部分が設けられるとともに、この避難部分と設置基盤側との間を階段式の登降手段で連絡した津波・洪水等の非常事態からの避難装置であって、前記階段式の登降手段は、前記前列の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側における2階部分以下の高さ範囲に添うべく斜め向きの直階段の部分を有し、該直階段の下部は、前記前列の支柱のうちの一方の支柱の前側に位置するとともに、直階段の上部は前記前列の支柱のうちの他方の支柱の前側に位置し、前記直階段の上部に接続された踊り場は、前記他方の支柱の津波流Xの襲来が想定される前側回りに位置するように構成されていることを特徴とする津波・洪水等の非常事態からの避難装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、避難部分は、津波流Xの襲来が想定される前側に対応して非透水式で面状の手すりを備えている津波・洪水等の非常事態からの避難装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−122424(P2011−122424A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255329(P2010−255329)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【分割の表示】特願2007−233333(P2007−233333)の分割
【原出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(503018571)有限会社フジカ (48)
【Fターム(参考)】