説明

津波・高潮対策用可動式防波堤

【課題】 正常時には景観を阻害しないように全高が低く、津波や高潮などの異常潮位時に上昇して防波機能を発揮でき、かつ数百メートル以上にもわたって隣接して設置することができ、その連結部に必要な水密性及び耐圧性を有し、全体の作動がスムースであり、補修の必要性が少ない津波・高潮対策用の可動式防波堤を提供する。
【解決手段】 護岸に沿って設置され鉛直の第1内壁面12aを有する護岸外壁12と、護岸外壁に隣接して平行に設置され第1内壁面からほぼ一定の間隔を隔てた第2内壁面14aを有する護岸内壁14と、護岸外壁と護岸内壁を護岸に沿って所定の間隔を隔てて連結する複数の護岸連結部材16と、第1内壁面、第2内壁面、および隣接する護岸連結部材で囲まれる矩形空間11に収容され第1内壁面と第2内壁面の間に貯まる水の浮力で護岸外壁より上方まで浮上可能な複数の防波フロート18と、隣接する防波フロート間に設けられその隙間からの漏水を低減する漏水低減装置20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助扉によって連続化された津波・高潮対策用の可動式防波堤に関する。
【背景技術】
【0002】
東海地震を始め、津波による被害が心配される地域では、津波・高潮対策として護岸の改造が要望されている。しかし、港等の護岸において、何十年に一度の確率でしか発生しない津波や高潮などの異常潮位時のために護岸の高さをそれに合わせると、莫大な費用が発生し不経済であるのみならず景観を阻害する問題がある。
【0003】
そこで異常潮位時の流入水の浮力を利用した止水装置として、例えば特許文献1、2が提案されている。
【0004】
特許文献1の「浮力式床面止水装置」は、動力や人間による操作を必要とせずに出水時に自動的に浮上する浮力式止水板であり、図10に示すように、通路の床面Fに埋設したトラフ状の集水ピット51の内部に嵩比重を1以下とした止水板52を挿入するとともに集水ピット51の近傍に同じ床面Fに開口する1次ピット55を設け、これら集水ピット51と1次ピット55とを連通孔56で接続して構成したものである。
【0005】
特許文献2の「防波堤」は、波の高さに応じて堤体の高さを変化させることができ、堤体が海面から姿を現す量を減少させることができることを目的とし、図11に示すように、横方向に所定の間隔をおいて、面対向させて水中に立設したガイド側壁61と、これらのガイド側壁間に収納した中空の昇降堤体62と、この昇降堤体内の水量を調節して堤体の浮力を調節する手段とからなり、堤体61を側壁間において沈降及び浮上可能に構成したものである。
【0006】
【特許文献1】特開2000−345537号公報、「浮力式床面止水装置」
【特許文献2】特開平5−79023号公報、「防波堤」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の浮力式止水板や防波堤は、単体のフロート(止水板や昇降堤体)を用いているが、これらを数百メートル以上にもわたって設置する際には、フロート間の防水対策が問題となる。
すなわちフロートを収納する堤防体内の水槽は全体として非常に長い(数百メートル以上)ものになるので、適切な間隔で水槽の前後を構造的に連結しないと必要な強度を確保し難くなる。
【0008】
しかし、その連結材の存在のためにフロート間に隙間が生じざるを得ない。従ってフロートが上昇したときにこの隙間を塞ぐ何らかの防水構造が必要となる。
また各フロートは浮上時にはそれぞれ違った挙動をするため、連結部の防水構造はそれらの動きに追従できるものでなければならない。
【0009】
従ってフロート間の防水構造には以下の機能が求められる。
(1)ある程度の水密性があること、(2)水圧に耐えうる強度を有すること、(3)各フロートの動きにスムースに追従できること、(4)補修の必要性が少ないシンプルな構造であること。
【0010】
本発明はかかる問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、正常時には景観を阻害しないように全高が低く、津波や高潮などの異常潮位時に上昇して防波機能を発揮でき、かつ数百メートル以上にもわたって隣接して設置することができ、その連結部に必要な水密性及び耐圧性を有し、全体の作動がスムースであり、補修の必要性が少ない津波・高潮対策用の可動式防波堤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、護岸に沿って設置され鉛直の第1内壁面を有する護岸外壁と、該護岸外壁に隣接して平行に設置され前記第1内壁面からほぼ一定の間隔を隔てた第2内壁面を有する護岸内壁と、護岸外壁と護岸内壁を護岸に沿って所定の間隔を隔てて連結する複数の護岸連結部材と、前記第1内壁面、第2内壁面、および隣接する護岸連結部材で囲まれる矩形空間に収容され第1内壁面と第2内壁面の間に貯まる水の浮力で護岸外壁より上方まで浮上可能な複数の防波フロートと、隣接する防波フロート間に設けられその隙間からの漏水を低減する漏水低減装置とを備えたことを特徴とする津波・高潮対策用可動式防波堤が提供される。
【0012】
上記本発明の構成によれば、護岸外壁と護岸内壁の間に形成される矩形空間に防波フロートが収容されるので、正常時には景観を阻害しないように全高を低く抑えることができる。また津波や高潮などの異常潮位時に第1内壁面と第2内壁面の間に水が貯まることにより、防波フロートが護岸外壁より上方まで浮上(上昇)して防波機能を発揮することができる。
また、複数の護岸連結部材で護岸外壁と護岸内壁を所定の間隔を隔てて連結するので、適切な間隔で前後を構造的に連結し、必要な強度を確保することができる。
さらに、隣接する防波フロート間に漏水低減装置を設け、その隙間からの漏水を低減するので、数百メートル以上にもわたって隣接して設置することができる。
【0013】
本発明の好ましい第1実施形態によれば、前記漏水低減装置は、隣接する防波フロート間に位置し護岸外壁から護岸内壁に向けて積層された複数のスライド式補助扉であり、
該複数のスライド式補助扉を構成する最上部の補助扉の上端は、隣接する防波フロートの昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉の下端は前記護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材に連結され、中間部の補助扉は上下端に設けられた係合部の係合により隣接する防波フロートの昇降に追従しながら最上部と最下部の補助扉の間を塞ぐようになっており、
前記隣接する防波フロートは、その端部に各スライド式補助扉の両端部を支持する端部支持金具を有する。
【0014】
この構成により、最上部の補助扉の上端が、隣接する防波フロートの昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉の下端は昇降しない箇所(護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材)に連結されており、中間部の補助扉は上下端に設けられた係合部の係合により隣接する防波フロートの昇降に追従しながら最上部と最下部の補助扉の間を塞ぐので、その連結部に必要な水密性を確保できる。
また防波フロートに設けられた端部支持金具で、各スライド式補助扉の両端部を支持するので、必要な耐圧性も確保できる。
さらに、隙間があるシンプルな構造であり、磨耗や消耗がほとんどないので、全体の作動をスムースにでき、かつ補修の必要性を低減又は無くすことができる。
【0015】
本発明の好ましい第2実施形態によれば、前記漏水低減装置は、隣接する防波フロート間に位置し護岸外壁から護岸内壁に向けて所定の隙間を隔てて積層された複数の平板式補助扉であり、
該複数の平板式補助扉は、隣接する防波フロートの側面に一端が交互に固定され、隣接する防波フロートの昇降に追従してその間にラビリンスシールを形成する。
【0016】
この構成により、隣接する防波フロートの側面に一端が交互に固定された複数の平板式補助扉が、所定の隙間を隔てて積層されてその間にラビリンスシールを形成するので、その連結部に必要な水密性を確保できる。
また各平板式補助扉は、隣接する防波フロートの側面に一端が交互に固定されているので、必要な耐圧性も確保できる。
さらに、隙間があるシンプルな構造であり、磨耗や消耗がほとんどないので、全体の作動をスムースにでき、かつ補修の必要性を低減又は無くすことができる。
【0017】
本発明の好ましい第3実施形態によれば、前記漏水低減装置は、隣接する防波フロート間に位置し護岸外壁から護岸内壁に向けて折り畳み可能な蛇腹式補助扉であり、
該蛇腹式補助扉を構成する最上部の補助扉の上端は、隣接する防波フロートの昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉の下端は前記護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材に連結され、中間部の補助扉は上下端に設けられたヒンジ部の係合により最上部と最下部の補助扉の間を隣接する防波フロートの昇降に追従しながら塞ぐようになっており、
前記隣接する防波フロートは、その端部に蛇腹式補助扉のヒンジ部を支持するヒンジ部支持ガイドを有する。
【0018】
この構成により、最上部の補助扉の上端が、隣接する防波フロートの昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉の下端は昇降しない箇所(護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材)に連結されており、中間部の補助扉は上下端に設けられたヒンジ部の係合により最上部と最下部の補助扉の間を隣接する防波フロートの昇降に追従しながら塞ぐので、その連結部に必要な水密性を確保できる。
また防波フロートに設けられたヒンジ部支持ガイドで、蛇腹式補助扉のヒンジ部の両端部を支持するので、必要な耐圧性も確保できる。
さらに、隙間があるシンプルな構造であり、磨耗や消耗がほとんどないので、全体の作動をスムースにでき、かつ補修の必要性を低減又は無くすことができる。
【発明の効果】
【0019】
上述したように、本発明の津波・高潮対策用の可動式防波堤は、フロート間に特殊な漏水低減装置を設けることで、フロートが上昇したときにフロート間の隙間の防水性を確保することができ、長距離の可動防波堤を実現することができる。従って、正常時には景観を阻害しないように全高が低く、津波や高潮などの異常潮位時に上昇して防波機能を発揮でき、かつ数百メートル以上にもわたって隣接して設置することができ、その連結部に必要な水密性及び耐圧性を有し、全体の作動がスムースであり、補修の必要性が少ない、等の優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明による可動式防波堤の第1実施形態の斜視図である。この図に示すように、本発明による可動式防波堤10は、護岸外壁12、護岸内壁14、護岸連結部材16、防波フロート18および漏水低減装置20を備える。
【0022】
護岸外壁12は、津波や高潮などを受ける可能性のある護岸(この図で手前側)に沿って設置され、鉛直の第1内壁面12aを有する。
護岸内壁14は、護岸外壁12に隣接して平行に設置され、護岸外壁12の第1内壁面12aからほぼ一定の間隔を隔てた第2内壁面14aを有する。
護岸連結部材16は、護岸外壁12と護岸内壁14を連結する部材であり、護岸に沿って所定の間隔を隔てて複数が設けられる。
なお、護岸外壁12、護岸内壁14および護岸連結部材16は、全体が一体のコンクリート構造物であるのが好ましいが、本発明はこれに限定されず、一部をボルト等で連結してもよく、あるいは護岸に沿って一定のピッチで一体化したモジュールを互いに水密に連結してもよい。
【0023】
上述した構成により、上方から見て、第1内壁面12a、第2内壁面14a、および隣接する護岸連結部材16で囲まれる矩形空間11が形成される。また、護岸外壁12および護岸内壁14はそれぞれ連続した水密の壁であり、護岸に沿った両端部が図示しない両端連結部材で水密に連結されている。従って、第1内壁面12aと第2内壁面14aの間は、水密空間となり、雨天や異常潮位時(津波や高潮など)には内部に水が流入して貯まり、内部の水位が上昇するようになっている。
【0024】
防波フロート18は、複数が一定の間隔を隔てて連続し、それぞれが第1内壁面12a、第2内壁面14a、および隣接する護岸連結部材16で囲まれる矩形空間に収容され、第1内壁面12aと第2内壁面14aの間に貯まる水の浮力でその上端18aが護岸外壁12の上面12bより上方まで浮上するようになっている。
漏水低減装置20は、隣接する防波フロート18の間に設けられ、その隙間からの漏水を低減する機能を有する。
【0025】
図2は、図1のA-A断面図である。この図に示すように、護岸連結部材16は、護岸外壁12と護岸内壁14の底部を連結する底部連結部材16aと、漏水低減装置20の下方に位置し防波フロート18の両側を連結する中間連結部材16bと、上述した両端部の図示しない両端連結部材とからなる。中間連結部材16bは、護岸に沿って所定の間隔を隔てて複数が設けられ、その間で防波フロート18が上下に自由に移動できる矩形空間11を形成している。
底部連結部材16aと中間連結部材16bはこの図では連続に一体成形されているが、その間に隙間を設けてもよい。
中間連結部材16bはその下方部に幅が広がる段付部16cを有し、防波フロート18が下降したときにその両端部を段付部16cで支持するようになっている。また、この下降位置において、防波フロート18の上端面18aは、この例では護岸外壁12の第1内壁面12aの上端高さと一致するように寸法が決められている。
段付部16cと底部連結部材16aとの間には、中空空間であるピット16dが設けられている。このピット16dは、各防波フロート18の下方に独立して設けてもよいが、この例では段付部16cに図示しない連通路が設けられ互いに連通し、点検等の作業の際に通り抜けができるようになっている。
【0026】
図3は、図2のB−B断面図である。この図に示すように、防波フロート18は、中空の水密金属箱であり、全体の比重が1より小さく、好ましくは0.5前後に設定され、海水の浮力で上方に浮上した場合、その全高のほぼ1/2が護岸外壁より上方まで浮上するようになっている。
すなわち、この例では、矩形空間11に海水が貯まり、防波フロート18が浮上した場合には、その上面18aが第1内壁面12aの上面12bよりさらに約3m上まで上昇するようになっている。
なお、防波フロート18は、内部点検用の開閉可能なマンホールを有していてもよい。また、中空の水密金属箱の代わりに、密度の小さい材料(例えばFRP等)で構成してもよい。さらに、完全に水密でなく、下面に開口を有してもよい。
【0027】
この図において、護岸外壁12の第1内壁面12aと護岸内壁14の第2内壁面14aには、防波フロート18の上下動を案内するガイド13が設けられている。このガイド13は、例えば摩擦の小さい摺動材である。
また、護岸外壁12の第1内壁面12aと護岸内壁14の第2内壁面14aの上端部には、グレーチング板15が取り付けられ、防波フロート18との隙間を小さく規制して異物の侵入を防止し、人の歩行を容易にしている。
【0028】
防波フロート18の下面には、ストッパーチェーン19の上端が固定され、その下端は底部連結部材16aに固定されている。ストッパーチェーン19の全長は、防波フロート18が浮上し、その上面18aが所定の高さ(この例では第1内壁面12aの上面12bよりさらに約3m上)まで上昇した際に、それ以上には浮上できない長さに設定されている。
【0029】
またこの図において、ピット16dには、排水用の主ポンプ8aが設けられ、さらに予備ポンプ8bが、第2内壁面14aより内側に設けられ、矩形空間11に貯まった海水や雨水を排水できるようになっている。なお、主ポンプ8aと予備ポンプ8bは、一方を省略することもできる。
【0030】
図4は、図2のC−C断面図である。この図において、(A)は防波フロートの上昇時、(B)は下降時である。
この例において、漏水低減装置20は、複数(この図で4枚)のスライド式補助扉21と防波フロートに設けられた端部支持金具22とからなる。端部支持金具22は、隣接する防波フロート18の端部に設けられた階段状の部材であり、各スライド式補助扉の両端部を支持する。
4枚のスライド式補助扉21は、隣接する防波フロート18の間に位置し護岸外壁12から護岸内壁14に向けて積層されている。
複数のスライド式補助扉21を構成する最上部の補助扉の上端は、護岸内壁14側に突出し、この突出部が端部支持金具22の階段状段付部と係合し、隣接する防波フロート18の昇降に追従して昇降するようになっている。
また、最下部の補助扉の下端は、この例では護岸外壁12側に突出し、護岸外壁12側のガイド13の下面と係合し、防波フロート18の昇降に追従せずにガイド13より下方に位置するようになっている。なお、最下部の補助扉の係合位置はこの例に限定されず、護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材に連結されていればよい。
複数のスライド式補助扉21を構成する中間部の補助扉は、上下端に設けられた係合部(この例では上端が護岸内壁14側、下端が護岸外壁12側に突出している)の係合により、隣接する防波フロート18の昇降に追従しながら最上部と最下部の補助扉の間を塞ぐようになっている。
【0031】
図1〜図4の構成によれば、最上部の補助扉21の上端が、隣接する防波フロート18の昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉21の下端は昇降しない箇所に連結されており、中間部の補助扉21は上下端に設けられた係合部の係合により隣接する防波フロートの昇降に追従しながら最上部と最下部の補助扉の間を塞ぐので、その連結部に必要な水密性を確保できる。
また防波フロート18に設けられた端部支持金具22で、各スライド式補助扉21の両端部を支持するので、必要な耐圧性も確保できる。
さらに、隙間があるシンプルな構造であり、磨耗や消耗がほとんどないので、全体の作動をスムースにでき、かつ補修の必要性を低減又は無くすことができる。
【0032】
図5は、本発明による可動式防波堤の第2実施形態の図2と同様の断面図である。また図6は、図5のC−C断面図(A)とD−D矢視図(B)である。
【0033】
この例において、漏水低減装置20は、隣接する防波フロート18の間に位置し、護岸外壁12から護岸内壁14に向けて所定の隙間を隔てて積層された複数(この例で4枚)の平板式補助扉23である。4枚の平板式補助扉23は、隣接する防波フロート18の側面に一端が交互に固定され、隣接する防波フロート18の昇降に追従してその間にラビリンスシールを形成するようになっている。
図5(B)に示すように、ガイド13は、この例ではT字型の断面を有し、摩擦の小さい摺動材で、防波フロート18のこの図で前後左右の動きを制限している。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0034】
この構成により、隣接する防波フロート18の側面に一端が交互に固定された複数の平板式補助扉23が、所定の隙間を隔てて積層されてその間にラビリンスシールを形成するので、その連結部に必要な水密性を確保できる。
また各平板式補助扉23は、隣接する防波フロート18の側面に一端が交互に固定されているので、必要な耐圧性も確保できる。
さらに、隙間があるシンプルな構造であり、磨耗や消耗がほとんどないので、全体の作動をスムースにでき、かつ補修の必要性を低減又は無くすことができる。
【0035】
図7は、本発明による可動式防波堤の第3実施形態の図2と同様の断面図である。また図8は、図7のC−C断面図であり、(A)は防波フロートの上昇時、(B)は下降時である。
【0036】
この例において、漏水低減装置20は、蛇腹式補助扉24であり、隣接する防波フロート18の間に位置し、護岸外壁12から護岸内壁14に向けて折り畳み可能に構成されている。また、隣接する防波フロート18は、その端部に蛇腹式補助扉24のヒンジ部15を支持するヒンジ部支持ガイド18bを有する。
すなわち、蛇腹式補助扉24を構成する最上部の補助扉24の上端は、そのヒンジ部両端がヒンジ部支持ガイド18bの上端位置に回転可能に取り付けられ、隣接する防波フロート18の昇降に追従して昇降するようになっている。
また最下部の補助扉24の下端も、そのヒンジ部両端がヒンジ部支持ガイド18bに嵌り、かつ固定部分(護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材)に連結され、防波フロート18の昇降に追従せずに護岸外壁12の上面12bより下方に位置するようになっている。
さらに中間部の補助扉24は、上下端に設けられたヒンジ部の係合により最上部と最下部の補助扉の間を隣接する防波フロートの昇降に追従しながら塞ぐようになっている。その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0037】
この構成により、最上部の補助扉24の上端が、隣接する防波フロート18の昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉24の下端は昇降しない箇所(護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材)に連結されており、中間部の補助扉24は上下端に設けられたヒンジ部の係合により最上部と最下部の補助扉の間を隣接する防波フロート18の昇降に追従しながら塞ぐので、その連結部に必要な水密性を確保できる。
また防波フロートに設けられたヒンジ部支持ガイド18bで、蛇腹式補助扉のヒンジ部25の両端部を支持するので、必要な耐圧性も確保できる。
さらに、隙間があるシンプルな構造であり、磨耗や消耗がほとんどないので、全体の作動をスムースにでき、かつ補修の必要性を低減又は無くすことができる。
【0038】
図9は、本発明による可動式防波堤の作動説明図である。この図において、(A)は正常時、(B)は津波等の異常潮位時、(C)は想定以上の異常潮位時を示している。
正常時には、図9(A)に示すように、護岸外壁12と護岸内壁14の間に形成される矩形空間11に防波フロート18が収容されており、景観を阻害しないように全高が低く抑えられている。
正常時に、護岸外壁12と護岸内壁14の間の空間11に雨水が流入した場合には、主ポンプ8aまたは予備ポンプ8bで排水し、防波フロート18の上昇を防止する。
【0039】
津波等の異常潮位時(B)(C)には、異常潮位時に第1内壁面12aと第2内壁面14aの間に水が貯まることにより、防波フロート18が護岸外壁12より上方まで浮上(上昇)して防波機能を発揮する。
図9(B)に示すように、空間11に水が貯まると、ストッパーチェーン19が伸びきり、防波フロート18を上昇位置に固定する。
図9(C)の示すように、想定される異常潮位を越える場合が起こった場合には、ある程度の海水が防波堤内に侵入するが、可動防波堤が無い場合に比べると防波堤内の水位上昇時間が遅らされ、住民の避難時間を確保することが可能となる。
また、水位が低下し、再度の津波等のおそれがなくなった時には、主ポンプ8aまたは予備ポンプ8bで排水し、防波フロート18を下降させることができる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施例及び実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による可動式防波堤の第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1のA-A断面図である。
【図3】図2のB−B断面図である。
【図4】図2のC−C断面図である。
【図5】本発明による可動式防波堤の第2実施形態の図2と同様の断面図である。
【図6】図5のC−C断面図(A)とD−D矢視図(B)である。
【図7】本発明による可動式防波堤の第3実施形態の図2と同様の断面図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【図9】本発明による可動式防波堤の作動説明図である。
【図10】特許文献1の「浮力式床面止水装置」の構成図である。
【図11】特許文献2の「防波堤」の構成図である。
【符号の説明】
【0042】
10 可動式防波堤、11 矩形空間、
12 護岸外壁、12a 第1内壁面、12b 上面、13 ガイド、
14 護岸内壁、14a 第2内壁面、15 グレーチング板、
16 護岸連結部材、16a 底部連結部材、16b 中間連結部材、
16c 段付部、16d ピット、
18 防波フロート、18a 上端、18b ヒンジ部支持ガイド、
19 ストッパーチェーン、
20 漏水低減装置、21 スライド式補助扉、22 端部支持金具、
23 平板式補助扉、24 蛇腹式補助扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
護岸に沿って設置され鉛直の第1内壁面を有する護岸外壁と、該護岸外壁に隣接して平行に設置され前記第1内壁面からほぼ一定の間隔を隔てた第2内壁面を有する護岸内壁と、護岸外壁と護岸内壁を護岸に沿って所定の間隔を隔てて連結する複数の護岸連結部材と、前記第1内壁面、第2内壁面、および隣接する護岸連結部材で囲まれる矩形空間に収容され第1内壁面と第2内壁面の間に貯まる水の浮力で護岸外壁より上方まで浮上可能な複数の防波フロートと、隣接する防波フロート間に設けられその隙間からの漏水を低減する漏水低減装置とを備えたことを特徴とする津波・高潮対策用可動式防波堤。
【請求項2】
前記漏水低減装置は、隣接する防波フロート間に位置し護岸外壁から護岸内壁に向けて積層された複数のスライド式補助扉であり、
該複数のスライド式補助扉を構成する最上部の補助扉の上端は、隣接する防波フロートの昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉の下端は前記護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材に連結され、中間部の補助扉は上下端に設けられた係合部の係合により隣接する防波フロートの昇降に追従しながら最上部と最下部の補助扉の間を塞ぐようになっており、
前記隣接する防波フロートは、その端部に各スライド式補助扉の両端部を支持する端部支持金具を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の津波・高潮対策用可動式防波堤。
【請求項3】
前記漏水低減装置は、隣接する防波フロート間に位置し護岸外壁から護岸内壁に向けて所定の隙間を隔てて積層された複数の平板式補助扉であり、
該複数の平板式補助扉は、隣接する防波フロートの側面に一端が交互に固定され、隣接する防波フロートの昇降に追従してその間にラビリンスシールを形成する、ことを特徴とする請求項1に記載の津波・高潮対策用可動式防波堤。
【請求項4】
前記漏水低減装置は、隣接する防波フロート間に位置し護岸外壁から該護岸外壁に向けて折り畳み可能な蛇腹式補助扉であり、
該蛇腹式補助扉を構成する最上部の補助扉の上端は、隣接する防波フロートの昇降に追従して昇降し、その最下部の補助扉の下端は前記護岸外壁、護岸内壁又は護岸連結部材に連結され、中間部の補助扉は上下端に設けられたヒンジ部の係合により最上部と最下部の補助扉の間を隣接する防波フロートの昇降に追従しながら塞ぐようになっており、
前記隣接する防波フロートは、その端部に蛇腹式補助扉のヒンジ部を支持するヒンジ部支持ガイドを有する、ことを特徴とする請求項1に記載の津波・高潮対策用可動式防波堤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−70536(P2006−70536A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254156(P2004−254156)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】