説明

津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置

【課題】
今回の東日本大震災で判明したように、予想をはるかに超える大津波には、従来技術である止水壁の反力に頼る既設の防波堤は、津波被害防止にあまり役に立たなかった事実を踏まえ、今後は既設の防波堤活用を前提に、津波水流の一部緩和を目的とする装置を、短期に増加設置が可能な形の技術確立が課題。
【解決手段】
課題を解決する為に、パスカル原理を応用した本願発明の津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置は、具備された取水口3から噴射口4まで空洞で密閉状態を保つ取水口3から入坑した推力の高圧流体が、当該装置通過で進行方向を転換したその推力の高圧流体の流量分の全部が、津波水流本体に対して逆水流の形で噴射できる構造の、少ない費用で設置された当該装置1の後方は、その流量の二倍分が津波水流の衝撃力を緩和させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、津波被害を低減させるには、地震等で異常高圧となった津波水流の高圧推力を早やかに低減すればするほど津波被害は確実に少なくなるので、その高圧推力が防波堤に激突する前のできるだけ早い時期に低減させるための津波水流衝撃力緩和装置分野に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した巨大地震による大津波は、津波襲来の経験が豊富な東日本の太平洋沿岸部でも甚大な災害を被らせた未曽有の事実は、津波襲来を防御する思想に基づく既存の技術である特許文献1の多段津波防波堤も含め止水壁の反力だけを頼りとする構造物の防波堤などは、多くが崩壊したから、ほとんどの地域で津波水流減衰に役立たなかった事実を踏まえても、その地域で生活を求める住民にとっては、生活の糧を賄う職場の設置場所を考慮するなら、同じ場所に今回と同じような大津波が来襲しても、津波被害を少しでも低減できる装置が、早期に設置が可能となる技術の確立を希望されている。
【0003】
文部科学省研究開発局の地震調査研究推進本部発表によると、2008年1月1日を
算定基準とした30年以内の地震発生確率が、東海地震だけでも87パーセント(マグニチュード8.0程度)と予測しているが、もし同時に東南海地震も併発すれば、今回の様な東日本大震災と同規模の巨大津波の大災害を被ることを避けられないので、全国にある既設の防波堤も活用する装置でなければ時間的にも余裕が無い、特に上記の地域を含め大津波の被害を少しでも低減する効率的な装置を、広範囲に、且つ、敷設費用が比較的に低廉で設置可能な技術を、我が国を含め国際的にも緊急に確立する必要に迫られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−113219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では津波襲来の経験値に基づいて津波高さを想定した設計の止水壁の反力に全面依存する津波被害防止策の防波堤などを設置してきたが、今回の東日本大震災で証明されるように、予想をはるかに超える大津波には、止水壁の反力に頼る既設の防波堤は津波被害防止にあまり役に立たなかった事実を踏まえ、今までの津波水流の衝撃力を止水壁の反力だけで止める設計思想を見直して、今後は既設の防波堤を有効的に活用する為に、津波の特性を利用する形である津波水流の一部緩和を目的とする装置を、比較的簡単な据付け工事が可能となる構造にし、且つ、予算規模の都合でいつでも短期に増加設置が可能な形の技術確立が課題。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、津波の水圧が一番高い海底部に設置しても、津波水流の衝撃力で崩壊も移動もしないように鉄筋コンクリートなどの比重が重い材料で形成された台座の中に、津波水流に向かって、下部坑の取水口から上部坑の噴射口まで、密閉した空洞でつなげた容器形態の当該装置に、海底部の水圧が高い下部坑の取水口から入坑した推力の高圧流体が、配置位置の高低差分だけ水圧が低い上部坑の噴射口外側に向かって入坑時と同じ高水圧で平常潮位になるまで、即ち、津波推力が0になるまで通過する自然事象を利用して、当該装置通過で進行方向を転換したその推力の高圧流体の流量分の全部が、津波水流本体に対して逆水流の形で噴射する自然事象によって、その推力の高圧流体が方向転換の結果で防波堤に向かう流量が削減された分と、津波本体に向かって噴射される分が、即ち、当該装置に入坑した高圧流体の流量の二倍分に当る推力が、背後の防波堤などに対して、津波水流の衝撃力を緩和させる構造とした。
【0007】
上記課題を解決するために、図1及び図4に示すよう、当該装置に入坑した推力の高圧流体が円滑に方向転換できるようにその主要内部を角部が少ない半円形にした。
【0008】
上記課題を解決するために、図1に示した形以外に、図5に示す遠方沖の取水口3側に、導水用の延長パイプ又は延長ホースの接続で、当該装置の上部坑5の噴射口6までの接続が密閉状態で保たれるなら、津波推力が遠方沖に設置された取水口3に流入すれば、圧力の反力が100パーセントである密閉した容器の圧力は各面に対して直角に等しい強さで直ちに作用する。とするパスカルの原理通り、津波水流がまだ到達していない当該装置1の上部坑5の噴射口6から、直ちに、津波水流本体方向へ、遠方沖設置の取水口3付近と全く同じ圧力の高圧逆水流を噴射する態様となる、本願発明の津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置1である。
【0009】
上記課題を解決するために、図6に示すよう遠方沖の深海部に津波水流の一部を取り込む取水口3を設置し、その取水口3にパイプ接続された上部坑5の噴射口6を具備した当該装置1を、津波襲来が予想される既設の防波堤18前面に、当該装置1の効果が拡散し難い距離で配備するなら、津波が防波堤18前の当該装置1などに到達する前に、その噴射口6から津波水流に向けて逆水流を噴出させることは、遠方沖の津波本体の水圧を、遠方である防波堤付近から減衰させる手段にもなるので、その役目を担う遠方沖の取水口設置を簡便化する為に、導水用のパイプ又はホースなどが簡単に接続でき、そして、導水管又は導水ホースが安定的な固定を持続し易い二列方式にするために、図7でも示すように、下部坑4の取水口3を円形形状として同水位になるよう二カ所配置にした。
【0010】
上記課題を解決するために、噴射速度が遅くなっても、津波本体のできるだけ広い面
に対して噴射する逆推力値を増大させたいなら、圧力の反力が100パーセントである密閉した容器の圧力は、各面に対して直角に等しい強さで直ちに作用する。とするパスカル原理を応用した設計の段階で、上部坑5の噴射口6の断面積を広げるだけで課題解決が比較的簡単に可能となる構造とした。
【0011】
上記課題を解決するために、当該装置1が高圧で多量の流量を噴射すればその反動力も大きな値になるので、その反動抑止力増強のために、当該装置1後方の水圧の反力を利用する目的で鉛直壁8にして、そこで発生する水圧の反力拡散防止のために拡散防止壁9も具備した。
【0012】
上記課題を解決するために、当該装置1を既存の防波堤18の沖側前面に並列で設置
すれば、後方にある防波堤では、津波水流海底部の推力を吸収してその推力を逆推力として噴射する構造の当該装置1を通過する作用で、当該装置1の直後方の防波堤18などには、吸収分と逆推力分を足した、即ち、その流量の二倍分の推力が津波水流の衝撃力を緩和させるので、その当該装置据え付け工事を容易にするために、当該装置1の設置方法を図3に示すよう単体並列方式にして、それぞれの単体は個別で海底面に杭11などで固定させる形にした。
【発明の効果】
【0013】
本願発明の津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置1を、防波堤18外海側の、緩和効果が拡散し難い程度の距離の既設防波堤前面に設置すれば、襲来する津波の水流の水圧が一番高い海底部の一部を津波推力の速度が0になるまで、その高圧流体を取水した当該装置1の通過によっての方向転換で、津波水流本体に向けて高圧の逆推力を噴射するから当該装置1の後方にある防波堤18は、その推力の高圧流体が当該装置1の通過によって防波堤18に到達しない分と防波堤18から津波水流が遠ざかる分を合わせた流量の二倍分が、津波による衝撃力を確実に緩和させる効果があるから、景観を破壊する武骨な背の高い防波堤設置は不要となり、効果もほとんど同じである既設防波堤活用の当該装置1の設置は、背の高い防波堤設置より格段に設置費用が少なくて済み、全国の海岸に短期間で隈なく設置しても、費用対効果は、従来より国民負担は少なくて済む絶大な効果となる。
【0014】
当該装置1の効果を、圧力の反力が100パーセントである密閉した容器の圧力は各面に対して直角に等しい強さで直ちに作用する。とするパスカルの原理に基づいて数理的に確認する為に、津波の総高さを海底より20mとして、その海底部の水圧は20トン/平方メートル即ち20000kg/平方メートルで、津波推力の速さは1秒間に7mとし、津波推力が下部坑に入るための取水口3の断面積は0.5平方メートル、上部坑5から出るための噴射口6の断面積は1.0平方メートルで、その中心点の位置は、下部の取水口3の中心点位置との差が0.5mとして、その噴射口6の外側水圧は、19.5トン/平方メートル即ち19500kg/平方メートルとの数値を仮定して計算すれば、下部坑4の取水口3から入坑する流体の流量は0.5平方メートル×7m/秒=3.5立方メートル/秒となり、推力は、取水口3で、20000kg/平方メートル×0.5平方メートル=10000kgとなるので、上部坑5の噴射口6は断面積が1平方メートルだから、噴射口6で噴射する逆推力は、20000kg/平方メートル×1平方メートル=20000kgとなるが、その20000kgの逆推力速度は、流量3.5立方メートル/秒÷噴射口6の断面積1平方メートル=3.5m/秒となり、入坑時速度7m/秒より半減するが、当該装置一基で増大した20トンの逆推力は、入坑推力に正比例するから、初期に秒速3.5mで水圧19.5トン/平方メートル部分の津波水流本体に向けて噴射をする結果、その逆噴射を受ける続ける津波水流本体は、自体の推力が0になるまで、即ち、平常値水位の水圧になるまで、津波水流は減衰し続けるから、並列設置された当該装置1の幅の設置数に正比例した同じ長さになる直背後にある防波堤18だけは、津波水流の直接的な当初値、秒速7mで襲来する20トン/平方メートルの衝撃力を被らない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明の当該装置1の設置形態を表した本体縦断線21の断面図である。
【図2】本願発明の当該装置1を上から見た上面図である。
【図3】本願発明を実施するための設置形態を主要部だけ切り取った斜視図である。
【図4】本願発明の当該装置1の単体の下部坑4と上部坑5を密閉で接続する内部構造を分かり易くするために一部を切り取った斜視図である。
【図5】本願発明を実施するために取水口3を遠方沖に設置する形態の側面図である。
【図6】本願発明を実施するために取水口3を遠方沖に設置する形態の上から見た上面図である。
【図7】本願発明の当該装置1の単体の正面図である。
【図8】本願発明を実施するための延長パイプ13を固定する、延長パイプ固定用金具14使用中の横断線22の断面図である。
【図9】本願発明を実施するための延長パイプ13を接続する接続金具12の使用側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、当該装置1は、津波の水圧が一番高い海底部に設置しても、津波水流の衝撃力と逆推力噴出の反動などで崩壊も移動もしないように、高さを最低限に抑えるためと、図4に示すように、延長パイプ又は延長ホースの接続を容易にするために、取水口3を円形にして同水位になる二カ所配置に、又、噴出口6は横広がりにして単体ごと
に杭などで固定できる構造にして、当該装置1の後ろ側は、鉛直壁8にして、移動抑止力
強化で利用する背後の水圧の反力も拡散しないように、反力拡散防止壁9も具備する形態
にした。
【0017】
図1・4に示すように、当該装置1は、外側の水圧が高い下部坑4の取水口3から、外側の水圧が低い上部に設置された噴出口6まで、高圧流体の自然事象による進行方向転換で、坑内の抵抗力をできるだけ受けないように、坑内の作用部の構造を半円形にした。
【0018】
図1に示すように、当該装置を固定する為の杭頭部を皿形にして、流体の取水及び噴出の値が計算通りに近づくよう杭頭部埋没型にした。
【0019】
図4に示すように、当該装置の取水口を円形にして、導水用のパイプ又はホースなどが簡単に接続でき、そして、図5・6・8に示すように、導水管又は導水ホースが安定的な固定維持が容易な二列方式とするために、延長パイプ13の固定金具14を固定杭16使用で延長パイプ13を固定して、図7に示すように、下部坑4の取水口3を円形の二カ所の並び配置にして、図9に示すように、延長パイプ接続を補助するボルト締め可能なフランジ12を具備する形態にした。
【0020】
図1に示すように、当該装置1の台座の前部は、海底地中へ埋没する部分を傾斜にして、当該装置1に入らない漏れた津波水流が、当該装置1の反力で飛散した津波水流の一部によって、固定機能を負う海底地面がえぐられ難くなる形態にした。
【実施例】
【0021】
図3に示すように、防波堤18の外海側の前面に、防波堤18と平行した長さまで、並列した多数の本願発明の津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置1の取水口3と噴射口6が、津波水流と対峙する形で冠水状態となる海底に、当該装置1の全部を取水口3が海底地面17に常時隠れないぎりぎりの位置に設置して、当該装置1の本体に固定用杭11などで固定させる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
平成23年3月11日の東日本大震災を目の当たりにすれば、津波水流の衝撃力緩和は絶対的緊急必要課題だから、既設の防波堤を全面活用できる、本願発明の津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置は、景観を破壊する背の高い防波堤より格段に設置費用を節約できるので、国家予算の面からでも設置の可能性が非常に高い画期的な発明となる。
【符号の説明】
【0023】
1・・・津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置本体
2・・・津波推力の進行方向
3・・・取水口
4・・・下部坑
5・・・上部坑
6・・・噴射口
7・・・逆推力の進行方向
8・・・鉛直壁
9・・・反力拡散防止壁
10・・津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置本体の固定杭用穴
11・・津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置本体の固定杭
12・・パイプ接続用フランジ
13・・延長パイプ
14・・延長パイプ固定用金具
15・・延長パイプ固定用杭穴
16・・延長パイプ固定用杭
17・・海底地面
18・・防波堤
19・・海面の平常水位
20・・津波の予想水位
21・・図2に示す、津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置本体の縦断線
22・・図6に示す、使用中の延長パイプ固定用金具の横断線


























【特許請求の範囲】
【請求項1】
津波の水圧が一番高い海底部に設置するために、津波水流の衝撃力で崩壊も移動もしないように鉄筋コンクリートなどの比重が重い材料で形成された台座の中に、津波水流に向かって、下部坑の取水口から上部坑の噴射口まで密閉した空洞でつなげた容器形態の当該装置に、海底部の水圧が高い下部坑の取水口から入坑した推力の高圧流体が、配置位置の高低差分だけ水圧が低い上部坑の噴射口外側に向かって入坑時と同じ高水圧で通過する自然事象を利用し、且つ、当該装置通過で進行方向を転換したその推力の高圧流体の流量分全部が、津波水流本体に対して逆水流の形で噴射できる構造を特徴とする、津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置。
【請求項2】
津波推力が防波堤に到達する前のできるだけ早い時期に、遠方沖で津波推力を取り入れるものにおいて、取水口を導水用の延長パイプ、又は延長ホースなどの接続を容易に、且つ、敷設維持も強固にさせるために、当該装置の取水口を円形形状として同水位になるよう二カ所配置にした構造を特徴とする、津波推力利用の津波水流衝撃力緩和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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