説明

活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物及び画像形成方法

【課題】 光源として発光ダイオード(LED)を使用しても硬化性に優れ、良好な接着性を付与できる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供する。
【解決手段】 (1)活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60〜95重量%、活性エネルギー線重合性基を2つ以上有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し5〜40重量%有し、(2)前記活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物として、N−ビニル−2−カプロラクラムを前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜18重量%有し、且つ、(3)メタクリル基を有する活性エネルギー線重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜6重量%有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物、及び画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源として発光ダイオード(LED)を使用しても硬化性に優れ、良好な接着性と耐溶剤性とを付与できる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンター記録装置による印刷は、ノズルよりインクを噴射し被記録材に付着せしめる方式であり、該ノズルと被記録材とが非接触状態にあるため、曲面や凹凸した不規則な形状を有する表面に対して、良好な印刷を行うことができる。このため,産業用途で広範囲にわたる利用分野が期待されている印刷方式である。
【0003】
このようなインクジェット記録用インクとしては、一般的には、主溶剤として水を用いた水性染料インクと、主溶剤として有機溶剤を用いた非水系(油性)染料インクとがある。しかしながら、従来の水性染料インクを産業用途で使用する場合の問題点として、プラスチック材料等の非吸収印刷材料へ印刷被膜を形成した後の乾燥速度、印刷被膜の付着性(接着性)が不十分であることが挙げられる。一方、油性染料インクには、希釈溶媒の有機溶剤やクロム等の重金属を含有するクロム錯塩染料を用いていることから、環境・安全性の面で問題があった。
そこで、これら着色剤に係わる問題点を改良したインクとして、着色剤に顔料を用いた水性顔料及び油性顔料インクや、希釈・溶解用の有機溶剤等の非重合性溶剤を実質的に含有せず、紫外線等の活性エネルギー線で印刷被膜を硬化、乾燥させることの可能な活性エネルギー線硬化型のインクジェット記録用インクが提案されている。
【0004】
活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インクは、活性エネルギー線で印刷被膜を硬化させるために、比較的耐久性に優れる印刷被膜が得られる。しかしながらプラスチック機材等の非吸収印刷材料への印字に対して、接着性に劣るといった問題があった。接着性を改善させる方法としては各種オリゴマーや接着性樹脂の添加が効果的だが、インクの粘度が高くなるため安定した出射性が得られるヘッド駆動条件が狭くなってくる。またオリゴマーや樹脂等の高分子材料の多量添加は、サテライトの増、出射曲がりなど着弾精度劣化、ノズル欠等の問題が生じてくる。また別の接着性改善手法としては、テトラヒドロフルフリルアクリレート等の溶解性の高い反応性モノマーの添加も効果的であるが、臭気、皮膚刺激性の問題等環境面で好ましいものとは言えない。
【0005】
接着性を改善する方法として、1種以上の単官能または多官能のメタクリレートモノマーを5〜60質量%含有し、少なくとも1種以上の多官能のアクリレートモノマーを5〜90質量%含有する活性エネルギー線硬化型のインクジェット記録用インクが知られている。(例えば特許文献1参照)
【0006】
一方、活性エネルギー線硬化型のインクジェット記録用インクの光源として、従来のメタルハライドランプや高圧水銀灯等から低いエネルギーの発光ダイオードランプ(以下LEDランプと称することがある)の切り替えが進んでいる。LEDランプは、例えば発光ダイオードUV−LEDでは、発光ピーク波長が350〜420nmの範囲の紫外線を発生する。即ち、従来のメタルハライドランプや高圧水銀灯等の光源を用いていたインクをUV−LEDに適用させようとした場合、波長350〜420nm付近に吸収を有する光重合開始剤を使用する必要があるが、インキに使用する顔料自身が波長350〜420nmの範囲の光を吸収するため、多くの場合、波長350〜420nmに吸収を有する光重合開始剤を使用しても硬化が不十分となる問題が生じる。
【0007】
特許文献1に記載のインクジェット記録用インクは、メタクリレートモノマーを5〜60質量%、実施例においては30質量%含有している。メタクリレートモノマーは活性エネルギー線硬化性が低いために、該組成のインキをLEDランプで硬化させると、硬化不良となることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−292855号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、光源として発光ダイオード(LED)を使用しても硬化性に優れ、良好な接着性を付与できる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、下記(1)〜(3)の条件を満たす活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物が、光源として発光ダイオード(LED)を使用しても硬化性に優れ、良好な接着性を付与できることを見出した。
(1)活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60〜95重量%、活性エネルギー線重合性基を2つ以上有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して5〜40重量%有する。
(2)前記活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物として、N−ビニル−2−カプロラクラムを前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜18重量%有する。
(3)メタクリル基を有する活性エネルギー線重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜6重量%含有する。
【0011】
前述の通り、メタクリル基は活性エネルギー線硬化性が低い。本発明者らは、メタクリル基を有する活性エネルギー線重合性化合物(以下メタクリルモノマーと称す)の添加量をごく少量とし、且つ、N−ビニル−2−カプロラクラムを特定量併用することで、前記課題が解決できることを見出した。
【0012】
即ち、本発明は、活性エネルギー線重合性化合物及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
(1)活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60〜95重量%、活性エネルギー線重合性基を2つ以上有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して5〜40重量%有し、
(2)前記活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物として、N−ビニル−2−カプロラクラムを前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜18重量%有し、且つ、
(3)メタクリル基を有する活性エネルギー線重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜6重量%有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を提供する。
【0013】
また本発明は、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録材に吐出することにより画像を印字する工程と、発光ダイオード(LED)を用いて波長ピークが365〜420nmの範囲にある活性エネルギー線を照射することにより前記画像を硬化させる工程とを含み、前記活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物が前記記載のインク組成物である画像形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、光源として発光ダイオード(LED)を使用しても硬化性に優れ、良好な接着性と耐溶剤性とを付与できる活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
(活性エネルギー線重合性化合物)
本発明で使用する活性エネルギー線重合性化合物は、
(1)活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物(以下単官能モノマーと略す)を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60〜95重量%、活性エネルギー線重合性基を2つ以上有する重合性化合物(以下多官能モノマーと略す)を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し5〜40重量%有し、
(2)前記単官能モノマーとして、N−ビニル−2−カプロラクラムを前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜18重量%有し、且つ、
(3)メタクリルモノマーを前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜6重量%有することが特徴である。
【0016】
N−ビニル−2−カプロラクラムは、特にプラスチック材への接着性に優れる。従って配合量が1重量%未満であると接着性に劣る。一方18重量%を超える量では、インキ自体の保存安定性が劣る傾向にある。添加量は、中でも、5〜17重量%が好ましく、10〜17重量%が最も好ましい。
【0017】
メタクリルモノマーは、反応性をコントロールする目的で添加する。すなわち、アクリレートモノマーに対し低感度のメタクリレートモノマーを添加することで反応を緩やかに進め塗膜硬化時の内部応力を緩和させる効果を得る。しかしながら多量の添加は反応性が低下しすぎてしまうことから、添加量は1〜6重量%とする。
使用するメタクリルモノマーとしては特に限定はなく公知のメタクリルモノマーを使用することができる。例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する単官能メタアクリレート、また、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジメタアクリレート、また、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジメタアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジメタアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジメタアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリメタアクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジメタアクリレート、トリメチロールプロパントリメタアクリレート,ペンタエリスリトールトリメタアクリレート,ジペンタエリスリトールのポリメタアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸メタアクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸メタアクリレート等の多官能メタアクリレート等が挙げられる。
【0018】
本発明で使用する、N−ビニル−2−カプロラクラム以外の単官能モノマーしては、特に限定はなく公知の単官能モノマーを使用できる。例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有するアクリレート、ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。またこれらは2種類以上併用して用いることもできる。
【0019】
また、本発明で使用する多官能モノマーとしては、特に限定はなく公知の多官能モノマーを使用できる。例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジアクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリアクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート,ペンタエリスリトールトリアクリレート,ジペンタエリスリトールのポリアクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸アクリレート等の多官能アクリレート、
【0020】
アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジ又はトリビニルエーテル化合物の、ビニルエーテル基を有する重合性化合物等が挙げられる。
これらは2種類以上併用して用いることができる。
【0021】
一方本発明において、分子量の高いアクリレートオリゴマー等の反応性オリゴマーは硬化塗膜性能を上げる観点から若干量使用しても構わない。しかしながら多量の使用はサテライト発生等の恐れがあることから、使用量としては活性エネルギー線重合性化合物全量に対し20質量%を超えない量で使用することが好ましい。
反応性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー等が挙げられ、2種類以上併用して用いることができる。
【0022】
前記活性エネルギー線重合性化合物は、使用するインクジェット装置にもよるが、各々のモノマーを配合後の粘度が概ね1〜100mPa・secとなるように設計することが好ましい。
【0023】
(光重合開始剤)
本発明において、活性エネルギー線として紫外線を使用する場合には、光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としてはラジカル重合型の光重合開始剤が使用される。
具体的には、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
特に光源としたLEDを使用する場合には、LEDの発光ピーク波長を加味して光重合開始剤を選択することが好ましい。例えばUV−LEDを使用する場合に適した光重合開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン)、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。
【0024】
また上記光重合開始剤に対し、増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。
【0025】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物には、インクの保存安定性を高めるため、ハイドロキノン、メトキノン、ジ−t−ブチルハイドロキノン、P−メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合禁止剤をインク中に0.01〜2質量%の範囲で添加しても良い。
【0026】
(着色剤)
本願の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、色材を含まないニスのようなインクにも適用可能である。一方目的に応じて着色剤を使用してもよい。使用する着色剤としては染料、顔料のいずれであってもよいが、印刷物の耐久性の点から顔料を使用することが好ましい。
【0027】
本発明で使用する染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料が挙げられる。
【0028】
本発明で使用する顔料としては、無機顔料あるいは有機顔料を使用することができる。無機顔料としては、酸化チタンや酸化鉄、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。また、有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などを含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用することができる。
【0029】
顔料の具体例としては、カーボンブラックとして、三菱化学社製のNo.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等が、コロンビア社製のRaven5750、同5250、同5000、同3500、同1255、同700等が、キャボット社製のRegal400R、同330R、同660R、Mogul L、同700、Monarch800、同880、同900、同1000、同1100、同1300、同1400等が、デグッサ社製のColor Black FW1、同FW2、同FW2V、同FW18、同FW200、ColorBlack S150、同S160、同S170、Printex 35、同U、同V、同140U、Special Black 6、同5、同4A、同4等が挙げられる。
【0030】
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、16、17、73、74、75、83、93、95、97、98、109、110、114、120、128、129、138、150、151、154、155、180、185、213等が挙げられる。
【0031】
また、マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、123、168、184、202、209、C.I.ピグメントヴァイオレット 19等が挙げられる。
【0032】
また、シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15:3、15:4、60、16、22が挙げられる。
【0033】
前記顔料の平均粒径は、10〜200nmの範囲にあるものが好ましく、より好ましくは50〜150nm程度のものである。また前記着色剤の添加量、十分な画像濃度や印刷画像の耐光性を得るため、インク全量の1〜20質量%の範囲で含有させることが好ましい。
【0034】
また、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物が着色剤を含有する場合、該着色剤を含有するインク組成物は、各色毎の複数有するものであっても良い。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの基本4色に加えて、それぞれの色毎に同系列の濃色や淡色を加える場合、マゼンタに加えて淡色のライトマゼンタ、濃色のレッド、シアンに加えて淡色のライトシアン、濃色のブルー、ブラックに加えて淡色であるグレイ、ライトブラック、濃色であるマットブラックが挙げられる。
【0035】
この他に、本発明の課題を損なわず、且つ吐出安定性を損なわない範囲において、必要に応じて界面活性剤、レベリング添加剤、マット剤、膜物性を調整するためのポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ワックス類を添加することが出来る。
【0036】
前記顔料は、前記活性エネルギー線重合性化合物等に対する分散安定性を高める目的で顔料分散剤を用いることが好ましい。具体的には、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822、PB817、アビシア社製のソルスパーズ24000GR、32000、33000、39000、楠本化成社製のディスパロンDA−703−50、DA−705、DA−725等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、高分子分散剤の使用量は、顔料に対して10〜80質量%の範囲が好ましく、特に20〜60質量%の範囲が好ましい。使用量が10質量%未満の場合には分散安定性が不十分となる傾向にあり、80質量%を超える場合にはインクの粘度が高くなる傾向にあり、吐出安定性が低下しやすい傾向にある。
【0037】
また、本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物には、被印刷基材に対する接着性の付与等を目的に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル等の非反応性樹脂等を配合することができる。しかしながら非反応性樹脂の添加はサテライト発生の恐れがあることや、耐溶剤性の低下のおそれがあることから、添加量は少量にとどめておくことが好ましい。
【0038】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の製造は、顔料を含む場合は顔料、及び活性エネルギー線重合性化合物、必要に応じ高分子分散剤、樹脂を加えた混合物をビーズミル等の通常の分散機を用いて顔料を分散した後、光重合開始剤を加え、さらに必要に応じ表面張力調整剤等の添加剤を加えて攪拌、溶解することで調製できる。予め、ビーズミル等の通常の分散機を用いて高濃度の顔料分散液(ミルベース)を作製後、光重合開始剤を溶解した活性エネルギー線重合性化合物、添加剤等を攪拌、混合して調製することもできる。
【0039】
顔料を分散させるための攪拌・分散装置としては、ビーズミルの他、たとえば超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなど、公知慣用の各種分散機を使用することができる。
【0040】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、活性エネルギー線、好ましくは紫外線等の光照射をすることにより硬化反応を行う。紫外線等の光源としては、通常UV硬化性インクジェットインキに使用する光源、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等であれば問題なく硬化させることができる。例えばFusion System社製のHランプ、Dランプ、Vランプ等の市販されているものを用いて行うことができる。
本発明のインク組成物は、これら紫外線光源から発せられる紫外線にて積算光量で50〜1000mJ/cmの照射で硬化することが好ましく、より好ましくは50〜200mJ/cmで硬化することが好ましい。
【0041】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は感度がよいことから、UV−LEDや、紫外線発光半導体レーザ等の紫外線発光半導体素子により硬化が可能である。具体的には、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録材に吐出することにより画像を印字する工程と、発光ダイオード(LED)を用いて波長ピークが365〜420nmの範囲にある活性エネルギー線を照射することにより前記画像を硬化させることで、画像を形成させることが可能である。
【0042】
インクジェット記録方式としては、従来公知の方式がいずれも使用できる。例えば圧電素子の振動を利用して液滴を吐出させる方法(電歪素子の機械的変形によりインク滴を形成するインクジェットヘッドを用いた記録方法)や熱エネルギーを利用する方法が挙げられる。
【0043】
本発明に係るインクジェット記録方法によれば、低PII(低皮膚刺激性)、低粘度、および低照度の紫外線照射でも優れた光硬化性を示す光硬化型インク組成物を使用するため、インクの取り扱い性および吐出安定性に優れ、低照度でも硬化性の高い画像を形成することができる。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物はプラスチック材に対する接着性に優れる。従って、曲面や凹凸した不規則な形状を有するような、プラスチック成形体等の表面にも容易に印字することができる。具体的には、汎用の射出成形用プラスチックとして使用される、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)/ABS樹脂、PA(ポリアミド)/ABS樹脂、PC(ポリカーボネート)/ABS樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)/ABS等のABS系のポリマーアロイ、AAS(アクリロニトリル・アクリルゴム・スチレン)樹脂、AS(アクリロニトリル・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレンゴム・スチレン)樹脂、MS((メタ)アクリル酸エステル・スチレン)系樹脂、PC(ポリカーボネート)系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、PP(ポリプロピレン)系樹脂、等が挙げられる。
また、被記録材として包装材料用の熱可塑性樹脂フィルム等のプラスチック材からなるフィルムを使用することも可能である。例えば食品包装用として使用される熱可塑性樹脂フィルムとしては、ポリエチレンレテフタレート(PET)フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。これらは一軸延伸や二軸延伸等の延伸処理を施してあってもよい。またフィルム表面には必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理などの各種表面処理を施してもよい。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物は、特にアクリル、メタクリル系樹脂、ポリプロピレン樹脂に対する接着性に優れる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に何ら制限されるものではない。なお、以下実施例中にある部とは、質量部を表す。
【0046】
[高濃度顔料分散液(ミルベース)の調整例]
(ミルベース(1)の製造例)
ファストゲンブルーTGR-G 10部
DIC製 フタロシアニン顔料C.I.ピグメントブルー15:4
ソルスパーズ 32000 4.5部
ルーブリゾール製 高分子顔料分散剤
ライトアクリレートPO−A 85.5部
共栄社化学製 フェノキシエチルアクリレート
を攪拌機で1時間撹拌混合した後、ビーズミルで2時間処理し、ミルベース(1)を作製した。
【0047】
(ミルベース(2)の製造例)
エバスクリーンイエローG01 10部
(株)ランクセス製 C.I.ピグメントイエロー150
ソルスパーズ 32000 6部
日本ルーブリゾール(株)製 高分子顔料分散剤
ライトアクリレートPO−A 84部
共栄社化学製 フェノキシエチルアクリレート
を攪拌機で1時間撹拌混合した後、ビーズミルで2時間処理し、ミルベース(2)を作製した。
【0048】
(実施例1〜6 活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の製造方法)
表1の組成に従い、活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を製造した。具体的には、重合性モノマーの混合物に、光重合開始剤としてイルガキュア819(BASF社製)を5部、ルシリンTPO(BASF(株)社製)を5部、イルガキュア907(BASF社製)を2部、増感剤としてDETX−S(日本化薬(株)社製 ジエチルチオキサントン)を2部、表面張力調整剤としてKF−615(信越シリコーン(株)社製 ポリエーテル変性シリコーンオイル)0.4部、重合禁止剤としてイルガスタブUV−10(BASF(株)社製)0.05部を添加し、60℃で30分加熱攪拌した後、調整例のミルベースを添加し、十分に混合した。次いで1.2μmのフィルターを用いてろ過することにより活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物(1)〜(8)を得た。
【0049】
(比較例1〜8 活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の製造方法)
表2の組成に従った以外は実施例1と同様にして、比較例用の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物(H1)〜(H8)を得た。
【0050】
(物性測定方法)
活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物(1)〜(8)、(H1)〜(H8)の物性として、表面張力と粘度を測定した。測定方法を示す。
【0051】
[表面張力]
協和界面科学社製のウェルヘルミー型表面張力測定器:CBUP−A3を用いて表面張力を測定した。プラスチック容器に入れたインク組成物を恒温水槽に浸漬し、予め25℃に調整することで25℃の表面張力を測定した。
【0052】
[粘度]
東機産業社製粘度測定器:TVE−20Lにて、25℃における粘度を測定した。測定回転数は、20rpm/mimとした。なお、本発明の実施例で使用したインクジェット印刷評価装置にて安定に印刷する為にインク組成物の粘度を14〜16mPa・secの間に調整した。
【0053】
【表1】


※表中の重量%は、全モノマー量に対する重量%を表す。
【0054】
【表2】


※表中の重量%は、全モノマー量に対する重量%を表す。

【0055】
【表3】


※表中の重量%は、全モノマー量に対する重量%を表す。

【0056】
【表4】


※表中の重量%は、全モノマー量に対する重量%を表す。

【0057】
表1,2中の略語は、以下の通りである。
VEEA:日本触媒(株)社製 アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル
M−222:MIWON(株)社製 ジプロピレングリコールジアクリレート
IBXA:大阪有機(株)社製 イソボロニルアクリレート
V−CAP:ISP(株)社製 N−ビニルカプロラクタム
POA:共栄社化学(株)社製 フェノキシエチルアクリレート
SR350:サートマー社製 トリメチロールプロパントリメタクリレート
SR248:サートマー社製 ネオペンチルグリコールジメタクリレート
ライトエステルHO:共栄社化学(株)製 2−ヒドロキシエチルメタクリレート
SR203:サートマー社製 テトラヒドロフルフリルメタクリレート
SR351S:サートマー社製 トリメチロールプロパントリアクリレート
SR247:サートマー社製 ネオペンチルグリコールジアクリレート
ライトエステルHOA:共栄社化学(株)製 2−ヒドロキシエチルアクリレート
SR285:サートマー社製 テトラヒドロフルフリルアクリレート
【0058】
(インク評価)
実施例または比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物の印刷被膜の特性は以下のように行った。
【0059】
[基材への印刷方法]
シェアモード型ピエゾ方式のインクジェットヘッドを備えたインクジェット印刷評価装置に、実施例または比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を充填し、対象となる基材に所定の膜厚になる様に印刷を行なった。
【0060】
[活性エネルギー線(LED)硬化性]
実施例または比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を、ポリカーボネート板(1mm厚)に対し、前述の印刷方法にて2μmの膜厚で塗布し、次いでステージ移動装置を備えた浜松ホトニクス(株)社製のLED照射装置(発光波長:385nm、ピーク強度:500mW/cm)にて、1回の照射エネルギー量が50J/mとなるように照射し、タックフリーになるまでの照射エネルギー量の積算値を測定した。
尚、インクの感度は、LED硬化型プリンターにての実用的な印刷条件に対応する為には、200mJ/cm迄の積算光量で硬化する感度が好ましい。
【0061】
[保存安定性]
実施例または比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物15mlをポリ容器に入れ、恒温槽内で60℃で4週間静置保存した。静置保存前のインクの粘度と静置保存後の粘度を比較し、その変化率を、下記式により求めた。粘度の測定方法は、前述の粘度物性測定方法に準じた。
【0062】
【数1】

【0063】
尚、インクジェットヘッドからのインク吐出適正から考慮し、吐出適正に悪影響を与えない粘度変化率10%以内を合格とした。
【0064】
[接着性:クロスカットテープ剥離試験]
実施例または比較例の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を、下記プラスチック基材に、前述の印刷方法にて膜厚約6μm膜厚約6となるように印刷し、次にステージ移動装置を備えた浜松ホトニクス(株)社製のLED照射装置(発光波長:385nm、ピーク強度:500mW/cm)により、塗膜表面のタック感がなくなるまで照射し、接着性用評価板を得た。
接着性用評価板上の硬化塗膜に、10×10の100マス様にカッターナイフで切り込みを入れた後、ニチバン製セロハンテープを貼り付け、10回程爪で擦りつけた。次いで、剥離速度約1cm/secの速度にて勢い良くテープを剥がし、塗膜の残ったマス目の数を確認した。
尚、残存マス数が50以上の場合を、合格と判断した。
【0065】
プラスチック基材は、以下の通りである。
印刷基材 アクリル:アクリル板((株)クラレ製:コモグラスP)
PC:ポリカーボネート板(旭硝子(株)製:レキサン)
PVC:硬質塩ビ板(三菱樹脂(株)製:ヒシプレート303GE)
PET:易接着処理PET板(東洋紡績(株)製:コスモシャインA4100)
PP:ユポ紙(ユポコーポレーション製:ユポ紙)
ABS:ABS板(住友ベークライト(株)製:タフエースEAR003)

【0066】
【表5】

【0067】
【表6】

【0068】
【表7】


【0069】
【表8】

【0070】
(メタクリレートモノマー配合の影響)
実施例1〜4、および比較例1〜4の評価結果より、メタクリレートモノマーを配合した実施例1〜4は、全ての基材に対して良好な接着性を示したが、実施例1〜4と反応部位以外の構造が同一のアクリレートモノマーを配合した比較例1〜4は、アクリル基材やPP基材への接着性に劣る事が分かった。このことより反応性化合物としてメタクリレートモノマーの配合がプラスチック基材への接着性に有効であることが判る。
【0071】
(メタクリレートモノマーの配合量の影響)
実施例2,5,6、および比較例7,8の評価結果から、メタクリレートモノマーの配合量が約1〜6重量%の割合で配合された場合、プラスチック基材への接着が良好であることがわかる。またその塗膜の硬化には、積算光量200mJ/cmで硬化していることが判る。
また、比較例7からは、メタクリレートモノマーの配合量が6重量%以上の場合、硬化に要する積算光量が250mJ/cm以上必要となることが判る。
【0072】
(N−ビニルカプロラクタムの配合量の影響について)
実施例2,7、および比較例5,6の評価結果より、N−ビニルカプロラクタムは、5重量%配合量することでプラスチック基材に対する接着性が非常に向上することが判る(実施例7と比較例5の比較より)、一方20重量%を超える比較例6では、粘度変化率が上昇し、インクジェットインキとしての適性が劣る傾向にある。
【0073】
(単官能モノマーの配合量の影響について)
実施例2,8、比較例9の評価結果より、単官能モノマーの重量%が前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60重量%未満であると、プラスチック基材に対する接着性が劣ることが判った。このことより、単官能モノマーの重量%は前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60重量%以上が必要であることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線重合性化合物及び光重合開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物であって、
(1)活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対して60〜95重量%、活性エネルギー線重合性基を2つ以上有する重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し5〜40重量%有し、
(2)前記活性エネルギー線重合性基を1つ有する重合性化合物として、N−ビニル−2−カプロラクラムを前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜18重量%有し、且つ、
(3)メタクリル基を有する活性エネルギー線重合性化合物を前記活性エネルギー線重合性化合物全量に対し1〜6重量%有する
ことを特徴とする活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項2】
着色剤として顔料を含有する請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物。
【請求項3】
活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物を被記録材に吐出することにより画像を印字する工程と、発光ダイオードを用いて波長ピークが365〜420nmの範囲にある活性エネルギー線を照射することにより前記画像を硬化させる工程とを含み、前記活性エネルギー線硬化型インクジェット記録用インク組成物が請求項1または2に記載のインク組成物であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項4】
前記被記録材がプラスチック材である請求項3に記載の画像形成方法。

【公開番号】特開2013−53208(P2013−53208A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191620(P2011−191620)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】