説明

活性剤を含む経皮医薬組成物

本発明は、対象の皮膚を通しての活性剤の徐放性を提供するための組成物および方法であって、医薬経皮組成物が、少なくとも1つの脂肪酸エステルおよび治療上有効量の活性剤を含む組成物および方法を、提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の皮膚を通して治療活性剤を送達するための組成物および方法、例えば、経皮医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の治療活性剤は、とりわけ、肝臓における高レベルの代謝(「初回通過効果」)または高レベルの胃腸での分解のいずれかに関連する種々の理由で、経口投与に適していないということが周知である。これらの欠点を回避するために、経皮製剤または経粘膜製剤が開発されてきた。特に、経皮投与または経粘膜投与のための医薬組成物は、経口用形態に勝って、肝臓による治療活性剤の代謝およびその活性剤の胃での分解に関連する問題の解消などのいくつかの優位点を有する。しかしながら、経皮組成物および経粘膜組成物は、治療活性剤の、皮膚の表面から血流への通過の動態学に関連する問題に直面する。
【0003】
実際、皮膚は、真皮および最外の表皮層という2つの層を含む不均一な組織であり、表皮層は、角質層および生表皮(viable epidermis)にさらに分けることができる。これらの層は、皮膚に、薬物などの外来物質の侵入に対するバリア能力を与える。角質層は、物理的拡散バリアとして作用するのに対し、表皮および真皮は、加えて、生化学的バリアまたは酵素的バリアを提供することができる。
【0004】
皮膚による治療活性剤の吸収に関する研究は、吸収された活性剤の結末に関心を払うのではなく、ほとんどの部分を、皮膚を通しての活性剤成分の吸収速度を改善することに集中してきた。例えば、皮膚を通して浸透する活性剤の初期速度を高めるために、浸透促進剤の使用が提案された。用語「浸透促進剤」は、一般に、皮膚または粘膜を通しての活性剤の可逆的な拡散を促進するいずれかの分子、および溶媒と表皮または粘膜の角層との間の活性剤の分配を促進するいずれかの溶解補助剤を指す。ほとんどの促進剤は角質層のバリア能力に影響を及ぼし、すなわち、ほとんどの促進剤は、角質層構造を可逆的に変え、これにより薬物の拡散性および溶解性を増大させる。実際、これは活性剤の皮膚浸透を高めるが、組織を通しての大量の薬物の直接吸収も生じて、その組成物の付与直後の数時間に、血液中のピーク活性剤濃度を導く可能性がある。この初期ピークの後には、通常はかなりの時間後に、または1日1回行われる組成物の次回の投与の前まで、血中濃度のトラフ値が続くことが多い。血液中の薬物濃度のこのような突然の上昇は、患者にとっては危険である可能性がある。なぜなら、このような突然の上昇は、生物によって耐容される薬物用量を超える可能性があるからである。加えて、活性剤の用量全体が、付与後の最初の数時間のうちに血流および組織へ送達されるので、その薬物の意図された効果は次回の付与まで持続しない可能性がある。
【0005】
それゆえ、活性物含有量のうちの少なくとも一部を、例えば真皮中での一時的貯蔵を通して、制御放出の態様で送達することができる、経皮医薬組成物に対するニーズがまだある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
徐放性経皮医薬組成物、ならびにその製造方法および使用方法が本願明細書に記載される。
【0007】
いくつかの実施形態によれば、皮膚表面への局所投与のための徐放性医薬組成物であって、1以上のステロイドを含む薬学的活性剤と、脂肪酸エステルと、水と、C2〜C6モノアルコールと、脂肪酸とを含み、当該組成物中の全活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤であり、好ましくは約4:1〜約20:1の範囲にある徐放性医薬組成物が提供される。
【0008】
いくつかの実施形態では、この組成物は、プロピレングリコールなどの共溶媒をさらに含む。いくつかの実施形態では、この共溶媒は、当該医薬組成物の総重量の0.01重量%〜7重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の3重量%〜7重量%の範囲の量で存在する。
【0009】
いくつかの実施形態では、この脂肪酸エステルは、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピルエステル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸エチル、ドデカン酸エチル、リノール酸エチル、パルミトレイン酸エチル、イソステアリン酸エチルおよびリノレン酸エチルからなる群から選択される。いくつかの実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該組成物の中に配合された脂肪酸とアルコールとの反応から得られるであろうエステルである。他の実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該組成物の中に配合された脂肪酸と当該組成物の中に配合されたアルコールとの反応から得られるであろうエステルではない。いくつかの実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該医薬組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の0.05重量%〜2.4重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の0.1重量%〜2.2重量%の範囲の量で存在する。
【0010】
いくつかの実施形態では、この脂肪酸はC8〜C22脂肪酸である。いくつかの実施形態では、この脂肪酸は、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸およびリノレン酸からなる群から選択される。好ましい実施形態では、この脂肪酸はオレイン酸である。いくつかの実施形態では、この脂肪酸は、当該医薬組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の0.05重量%〜3.5重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の1.0重量%〜3.0重量%の範囲の量で存在する。
【0011】
特定の実施形態では、組成物は、2%のオレイン酸エチルを脂肪酸エステルとして、2%のオレイン酸を脂肪酸として、および5%のプロピレングリコールを共溶媒として含む(すべては、当該医薬組成物の総重量の重量による)。他の特定の実施形態では、組成物は、0.3重量%のオレイン酸エチルを脂肪酸エステルとして、0.3重量%のオレイン酸を脂肪酸として、および0.75重量%のプロピレングリコールを共溶媒としてとして含む(すべては、当該医薬組成物の総重量の重量による)。
【0012】
いくつかの実施形態では、この薬学的活性剤は、エストロゲン、抗エストロゲン剤(またはSERM)、アンドロゲン、抗アンドロゲン剤、プロゲスチン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、この薬学的活性剤は、エストラジオールおよびプロゲステロンから選択され、脂肪酸エステルはオレイン酸エチルである。他の特定の実施形態では、この薬学的活性剤は、テストステロンおよびジヒドロテストステロン(DHT)から選択され、脂肪酸エステルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される。いくつかの実施形態では、この活性剤は、当該医薬組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%の範囲の量で存在する。
【0013】
いくつかの実施形態では、当該アルコールは、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、およびこれらの混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、このアルコールはエタノールである。いくつかの実施形態では、このアルコールは、当該医薬組成物の総重量の10重量%〜90重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の20重量%〜80重量%の範囲の量で、または当該医薬組成物の総重量の45重量%〜75重量%の範囲の量で存在する。
【0014】
他の実施形態によれば、皮膚表面への局所投与のための徐放性医薬組成物を製造する方法であって、1以上のステロイドを含む薬学的活性剤、脂肪酸エステル、水、C2〜C6モノアルコールおよび脂肪酸を混合する工程を含み、当該組成物中の全活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは約4:1〜約20:1の範囲にある、方法が提供される。上記および下記のとおりのいずれの組成物も、このような方法によって製造されてもよい。
【0015】
他の実施形態によれば、対象の皮膚を通しての薬学的活性剤の徐放性を提供するための方法であって、当該対象の皮膚に、1以上のステロイドを含む薬学的活性剤と、脂肪酸エステルと、水と、C2〜C6モノアルコールと、脂肪酸とを含む医薬組成物を局所投与する工程を含み、当該組成物中の全活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤である方法が提供される。上記および下記のとおりのいずれの組成物も、このような方法において使用されてもよい。特定の実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該医薬組成物の総重量の0.1重量%〜20重量%の範囲の量で当該組成物の中に存在する。
【0016】
いくつかの実施形態では、皮膚を通しての当該薬学的活性剤の徐放性は、その投与後少なくとも24時間観察される。他の実施形態では、皮膚を通しての当該薬学的活性剤の徐放性は、その投与後少なくとも36時間観察される。なお他の実施形態では、皮膚を通しての当該薬学的活性剤の徐放性は、その投与後少なくとも48時間観察される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例5で試験した異なる製剤についての、48時間のうちに皮膚を通して送達されたプロゲステロンの量(フラックス、μg/cm2/hr)を表す(■−製剤1;●−製剤2;▲−Progestogel(1% プロゲステロン水性アルコールゲル)(Besins Healthcare))。
【図2】1つの例示的な製剤における薬物充填量に対して、およびEstrogel(登録商標)(0.06% エストラジオールゲル、四角)(Ascend Therapeutics)と比較して、48時間のうちに皮膚を通して送達されたエストラジオールの量(μg)(菱形)を表す。
【図3】48時間にわたるエストラジオールの全浸透(μg)に対するオレイン酸、プロピレングリコールおよびエストラジオール濃度の効果を表す。
【図4】48時間にわたるエストラジオールの全浸透(μg)に対するオレイン酸、プロピレングリコールおよびエストラジオール濃度の効果を表す。
【図5】48時間にわたるエストラジオールの全浸透(μg)に対するオレイン酸エチルおよびエストラジオール濃度の効果を表す。
【図6】48時間にわたるエストラジオールの全浸透(μg)に対するオレイン酸エチルおよびエストラジオール濃度の効果を表す。
【図7】実施例7で試験した3つの組成物についての経時的なフラックスプロファイル(μg/cm2/hr)を表す(■−製剤301;●−製剤303;▲−製剤309)。
【図8】実施例7で試験した3つの組成物についての経時的なフラックスプロファイル(μg/cm2/hr)を表す(■−製剤306;●−製剤307;▲−製剤311)。
【図9】実施例7で試験した5つの組成物についての経時的なフラックスプロファイル(μg/cm2/hr)を表す(■−製剤302;●−製剤304;▲−製剤305;▼−製剤308;左向き黒三角−製剤310)。
【図10】0.24%のエストラジオール、5%のプロピレングリコールおよび2%のオレイン酸(すべては、当該組成物の総重量の重量による)を含有する混合物に対する、エタノール(96%)濃度(v/v)の関数としてのオレイン酸エチルの溶解度(g/100g)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
経皮的に投与された活性剤が皮膚を通して血流の中へ直接通過するかどうか、または経皮的に投与された活性剤が、血液循環へと放出される前に、活性剤の貯蔵場所(storage depot)としての役割を果たす皮膚内の区画内に、最初に保持されるのかどうかを検討した研究はほとんどない。「Will cutaneous levels of absorbed material be systemically absorbed?」と題する論文(Drugs and Pharmaceutical Science、1999年、第97巻、235−239頁)から、皮膚は、吸収された物質に対する貯蔵場所として振る舞うことができるということが公知である。例えば、化学物質についての皮膚貯蔵場所は、局所的に付与された親油性化学物質(ステロイドなど)については、角質層の中に存在すると、Vickers、Adv Biol Skin、1972年、第12巻、177−89頁によって記載されている。
【0019】
しかしながら、本発明によれば、真皮中の貯蔵場所は、角質層中の貯蔵場所よりも効果的である可能性があり、組織中の活性剤の拡散動態学を制御するためのより良好な手段およびより有効な経時的な薬物送達を提供することができることが見出された。実際、真皮は、皮膚全体の大部分を構成する。真皮は、密な血管およびリンパ管の脈管構造を含有し、真皮は全身循環への薬物吸収の部位である。とはいうものの、真皮は、物質の投与または堆積のための部位として標的にされることは稀でしかなく、これは、おそらくは、活性剤が実際に保持される皮膚の層を制御することが困難であることによる。
【0020】
従って、本願明細書に記載されるのは、薬物送達プロファイルに関して有利な特性を呈し、有利な結果を成し遂げる経皮医薬組成物である。例えば、本願明細書に記載される組成物の実施形態は、皮膚の外層を通して真皮への治療活性剤の全身送達を成し遂げるが、このとき、貯蔵部位(デポー)が形成され、この貯蔵部位から、活性剤が、長期間にわたって、例えば少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、または少なくとも48時間という時間にわたって、血流の中へと送達される。このことは、例えば、活性剤が、皮膚洗浄後、24時間まで、またはこれより長く血流の中へと放出され続けるとき、観察されうる。
【0021】
また、本発明の組成物は、有利なことに、広い範囲の活性剤濃度にわたって高いレベルの活性剤送達を成し遂げる。加えて、当該組成物は、異なる付与間で、および異なる患者間で吸収レベルの再現性を促進するように製剤化される。
【0022】
従って、いくつかの実施形態によれば、薬学的活性剤および脂肪酸エステルを含む皮膚表面への局所投与のための徐放性経皮医薬組成物であって、当該組成物中の活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは4:1〜20:1の範囲にある徐放性経皮医薬組成物が提供される。いくつかの実施形態では、当該組成物は、水、アルコールおよび脂肪酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、当該組成物は、共溶媒、プロピレングリコールなどをなおさらに含む。経皮医薬組成物のための他の従来の構成成分も、より詳細に後述されるように、含まれてもよい。
【0023】
特に、下記の実施例でより詳細に論じられるように、本発明は、当該治療活性剤に対して少なくとも4倍過剰(w/w基準で)に脂肪酸エステルを与えることで、徐放性、一定範囲の活性剤濃度にわたる一貫性のある送達プロファイル、および付与ごとおよび患者ごとの再現性などの有利な特性を有する経皮医薬組成物を生じるという予想外の知見に関する。どのような理論に結び付けられることも望まないが、この高い脂肪酸エステル:活性剤比は、真皮の中への活性剤の分配、および真皮内での貯蔵部位の形成を容易にし、活性剤の真皮保持、そしてその後の血流中への徐放性を生じると考えられる。従って、本願明細書に記載される組成物および方法は、活性剤の真皮保持を増大させ、徐放性送達を成し遂げるための方法も提供する。
【0024】
従って、いくつかの実施形態によれば、対象の皮膚を通して薬学的活性剤の徐放性を提供するための方法であって、対象の皮膚に、治療上有効量の当該活性剤および脂肪酸エステルを含む医薬組成物を局所投与する工程を含み、当該組成物中の活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤である、方法が提供される。いくつかの実施形態では、当該組成物は、水、アルコールおよび脂肪酸をさらに含む。いくつかの実施形態では、当該組成物は、共溶媒、プロピレングリコールなどをなおさらに含む。経皮医薬組成物のための他の従来の構成成分も、より詳細に後述されるように、含まれてもよい。
【0025】
本願明細書で使用する場合、語句「持続」送達は、組成物が、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、または少なくとも48時間(例えば、少なくとも24時間)にわたって活性剤を送達し続けるということを意味する。例えば、持続送達組成物は、付与後、最初の24時間後に活性剤を送達し続ける可能性がある。いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される持続送達組成物は、付与後、最初の24時間後に治療上有効量の活性剤を送達し続ける。組成物および活性剤に依存して、本願明細書に記載される持続送達組成物は、最初の24時間後に、送達される活性剤の全量の、例えば少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、またはこれより多くの送達を続ける可能性がある。また、組成物および活性剤に依存して、本願明細書に記載される持続送達組成物は、最初の24時間後に、組成物の中に付与された活性剤の全量の、例えば少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、またはこれより多くの送達を続ける可能性がある。このことは、例えば、活性剤が、付与後、24時間まで、またはこれより長く血流の中へと放出され続けるとき、観察されうる。
【0026】
いくつかの実施形態では、本願明細書に記載される持続送達組成物は、付与後、最初の12、24、36、または48時間後に、脂肪酸エステルを含まない同等の組成物によって同じ期間の間に送達される量よりも高いレベルで、活性剤を送達し続ける。実施例2で説明されるように、これは、例えば、本願明細書に記載される組成物および脂肪酸エステルを含まない同等の組成物(例えば、脂肪酸エステルが存在しないことを除いて同一である組成物)を、インビトロでのフランツ(Franz)セルアッセイで試験することによって観察することができる。フランツセルアッセイでは、組成物がフランツセルの中で皮膚試料に付与され、24時間放置され、次いで洗浄され、次いで洗浄後(例えば、付与後、最初の24時間後)の皮膚を通る薬物送達が測定され比較される。
【0027】
当該組成物および方法は、以下でより詳細に記載され、実施例で説明される。
【0028】
本願明細書で使用する場合、および特段の記載がない限り、「1つの(a、an)」は「1以上の」を意味する。
【0029】
用語「約」および範囲一般の使用(用語「約」によって修飾されていようとなかろうと)は、理解される数は、そこで示されたまさにその数に限定されるわけではないということを意味し、本発明の範囲から外れない限り、記載された範囲に実質的に入る範囲を指すことが意図されている。本願明細書で使用する場合、「約」は、当業者によって理解され、「約」が使用される文脈にある程度は依存することになる。当業者にとって明確ではない「約」の使用例が「約」が使用される文脈で与えられる場合、「約」は、その特定の用語の±10%までを意味することになろう。
【0030】
医薬組成物
上記のように、治療上有効量の治療活性剤と、脂肪酸エステルとを含む組成物であって、当該組成物中の活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは4:1〜20:1の範囲にある組成物が本願明細書に記載される。特定の実施形態では、この組成物は、薬学的活性剤と、脂肪酸エステルと、水と、アルコールと、脂肪酸とを含む。さらなる特定の実施形態では、この組成物は、プロピレングリコールなどの共溶媒をさらに含む。
【0031】
特定の実施形態では、当該組成物は、約2%の脂肪酸(オレイン酸など)、約2%の脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および約5%の共溶媒(プロピレングリコールなど)を含む。さらに特定の実施形態では、当該組成物は、2%の脂肪酸(オレイン酸など)、2%の脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および5%の共溶媒(プロピレングリコールなど)を含む。他の特定の実施形態では、当該組成物は、約0.3%の脂肪酸(オレイン酸など)、約0.3%の脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および約0.75%の共溶媒(プロピレングリコールなど)を含む。さらに特定の実施形態では、当該組成物は、0.3%の脂肪酸(オレイン酸など)、0.3%の脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および0.75%)の共溶媒(プロピレングリコールなど)を含む。上記のように、本願明細書で使用する場合、用語「約」は、記載された量の±10%を包含する。
【0032】
いくつかの実施形態では、当該組成物は特定された構成成分を含む。いくつかの実施形態では、当該組成物は特定された構成成分からなる。他の実施形態では、当該組成物は、特定された構成成分から実質的になる。本願明細書で使用する場合、特定された構成成分「から実質的になる」は、当該組成物は、少なくともその特定された構成成分を含むが、本発明の基本的かつ新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない他の構成成分も含んでもよいということを意味する。
【0033】
当該組成物の特定の構成成分は、このあと詳細に記載される。
【0034】
活性剤
本願明細書に記載される組成物は、少なくとも1つの治療活性剤を含む。この活性剤は、例えば、500ダルトン未満の分子量などの小さいサイズを有するほぼ疎水性の薬物分子であることができる。いくつかの実施形態では、この活性剤は、ホルモンおよび性ホルモンを含めたステロイドから選択される。用語「性ホルモン」は、エストロゲン、抗エストロゲン剤(またはSERM)、アンドロゲン、抗アンドロゲン剤、プロゲスチン、およびこれらの混合物などの脊椎動物のアンドロゲンまたはエストロゲン受容体と相互作用する天然または合成のステロイドホルモンを指す。
【0035】
当該組成物が複数のステロイドを含むとき、当該組成物中のステロイドの全量に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:ステロイド、好ましくは4:1〜20:1の範囲にある。本発明の組成物が1以上のステロイドおよび1以上の他の治療活性剤を含むとき、当該組成物中の活性剤の全量に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤である。他の実施形態では、当該組成物中の活性剤の全量に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は4:1 脂肪酸エステル:活性剤未満であるが、当該組成物中のステロイドの全量に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:ステロイドである。
【0036】
例えば、本願明細書に記載される組成物における使用に適したステロイドホルモンとしては、多くの天然および合成のステロイドホルモンが挙げられ、アンドロゲン、エストロゲン、およびプロゲスターゲンおよびこれらの誘導体、例えばデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、アンドロステンジオン、アンドロステンジオール、ジヒドロテストステロン、テストステロン、プロゲステロン、プロゲスチン、エストリオール、エストラジオールが挙げられる。他の適切なステロイドホルモンとしては、グルココルチコイド、甲状腺ホルモン、カルシフェロール、プレグネノロン、アルドステロン、コルチゾール、およびこれらの誘導体が挙げられる。適切なステロイドホルモンとしては、とりわけ、エストロゲン様作用、プロゲステロン作用、アンドロゲン作用、または同化作用を有する性ホルモン、例えばエストロゲン、エストラジオールおよびこれらのエステル、例えば、吉草酸エステル、安息香酸エステル、またはウンデシレン酸エステル、エチニルエストラジオールなど;プロゲストーゲン、例えば酢酸ノルエチステロン、レボノルゲストレル、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、デソゲストレル、またはゲストデンなど;アンドロゲン、例えばテストステロンおよびそのエステル(プロピオン酸エステル、ウンデシレン酸エステルなど)など;タンパク質同化薬、例えばメタンドロステノロン、ナンドロロンおよびそのエステルが挙げられる。
【0037】
エストロゲン
特定の実施形態では、1以上のエストロゲンは、天然のエストロゲン、例えば17β−エストラジオール、エストロン、結合型ウマエストロゲン、エストリオールおよびフィトエストロゲン;半天然のエストロゲン、例えば吉草酸エストラジオール;または合成のエストロゲン、例えばエチニルエストラジオールからなる群から選択される。
【0038】
いくつかの実施形態では、本発明は、水と、エストロゲンから選択される少なくとも1つの治療活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、水と、エストラジオールである少なくとも1つの治療活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。このような組成物の特定の実施形態では、活性剤がエストラジオールであるとき、この組成物は、プロゲステロン、プロピレングリコール、オレイン酸、オレイン酸エチル、エタノール、ヒドロキシプロピルセルロースおよび精製水の組み合わせをさらには含まない。
【0039】
抗エストロゲン剤
抗エストロゲン剤は、現在は選択的エストロゲン受容体調節因子(SERM)と呼ばれる1つのクラスの薬学的活性剤であり、これらの化合物は、自身のエストロゲン様活性を何ら提示することなくエストラジオールの効果を遮断することができる化合物であるであると一般に理解されていた。しかしながら、このような説明は、現在では、不十分であるということが知られている。用語「SERM」は、純粋なエストロゲンアゴニストまたはエストロゲンアンタゴニストとは対照的に、たいていは標的とされる組織に依存してエストロゲンアゴニスト−アンタゴニスト活性の混合型のおよび選択的なパターンを有する化合物を記述するために新しく作られた。これらの薬物の薬理学的な目標は、これらの作用が有益である組織(例えば骨、脳、肝臓)においてエストロゲン様作用をもたらすことと、エストロゲン様作用(細胞増殖)が有害である可能性がある乳房および子宮内膜などの組織においては活性をもたらさないかまたは拮抗活性を有するかのいずれかであることである。
【0040】
特定の実施形態では、抗エストロゲン剤(SERM)は、エンドキシフェン、ドロロキシフェン、クロミフェン、ラロキシフェン、タモキシフェン、4−OH タモキシフェン、トレミフェン、ダナゾール、およびこれらの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される。より特定の実施形態では、本発明は、水と、クロミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、エンドキシフェンまたはこれらの薬学的に許容できる塩からなる群から選択される抗エストロゲン(SERM)から選択される少なくとも1つの治療活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。
【0041】
特定の実施形態では、本発明は、水と、抗エストロゲン剤(SERM)から選択される少なくとも1つの治療活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。このような組成物のいくつかの特定の実施形態では、当該活性剤がタモキシフェンであるとき、脂肪酸エステルはミリスチン酸イソプロピルではない。このような組成物の他の特定の実施形態では、当該活性剤がタモキシフェンであるとき、当該組成物は脂肪酸をさらに含む。このような組成物のさらに他の特定の実施形態では、当該活性剤が4−OH タモキシフェンであるとき、脂肪酸エステルはミリスチン酸イソプロピルではない。このような組成物の他の特定の実施形態では、当該活性剤が4−OH タモキシフェンであるとき、当該組成物は脂肪酸をさらに含む。
【0042】
アンドロゲン
アンドロゲンは、天然のアンドロゲン、テストステロン、およびその半天然の誘導体もしくは合成誘導体、例えばメチルテストステロン;テストステロンの生理的前駆体、例えばデヒドロエピアンドロステロンもしくはDHEA、あるいはプラステロンおよびその誘導体、例えば硫酸DHEA、Δ−4−アンドロステンジオンおよびその誘導体;テストステロン代謝産物、例えば5−α−レダクターゼの酵素作用の後に得られるジヒドロテストステロン(DHT);またはアンドロゲン型効果を有する物質、例えばチボロンからなる群から選択されてもよい。
【0043】
特定の実施形態では、本発明は、水、アンドロゲンから選択される少なくとも1つの活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。このような組成物の特定の実施形態では、活性剤がテストステロンまたはジヒドロテストステロン(DHT)であるとき、当該組成物は、浸透促進剤としての脂肪酸も含む。
【0044】
抗アンドロゲン剤
当該抗アンドロゲン剤は、酢酸シプロテロンおよびメドロキシプロゲステロンなどのステロイド系化合物、またはフルタミド、ニルタミドもしくはビカルタミドなどの非ステロイド系化合物からなる群から選択されてもよい。
【0045】
特定の実施形態では、本発明は、水、抗アンドロゲン剤から選択される少なくとも1つの活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。
【0046】
プロゲスチン
本発明に係る医薬組成物で使用されるプロゲスチンは、天然のプロゲスチン、プロゲステロンまたはエステル型のそれらの誘導体、および1、2または3型の合成のプロゲスチンからなる群から選択されてもよい。
【0047】
第1の群は、プロゲステロンまたは合成プロゲスチン1(SP1)(プレグナン)に類似の分子、例えばプロゲステロン異性体(レトロプロゲステロン)、メドロゲストン、およびノルプロゲステロン誘導体(デメゲストンまたはプロメゲストン)を含む。
【0048】
第2の群は、17α−ヒドロキシ−プロゲステロン誘導体または合成プロゲスチン2(SP2)(プレグナン)、例えば酢酸シプロテロンおよび酢酸メドロキシプロゲステロンを含む。
【0049】
第3の群は、ノルステロイドまたは合成プロゲスチン3(SP3)、(エストランまたはノルアンドロスタン)を含む。これらは、19−ノルテストステロン誘導体、例えばノルエチンドロンである。また、この群は、これらのノルアンドロスタンまたはエストランから誘導されC18にメチル基およびC13にエチル基を有するゴナン型の分子を含む。触れられてもよい例としては、ノルゲスチメート、デソゲストレル(3−ケトデソゲストレル)またはゲストデンが挙げられる。プロゲスチン活性およびアンドロゲン活性の両方を有するチボロンも、有利なことに、本発明に係る医薬組成物において選択されてもよい。
【0050】
特定の実施形態では、本発明は、水と、プロゲスチンから選択される少なくとも1つの治療活性剤と、アルコールと、脂肪酸エステルとを含む皮膚表面への局所投与のための医薬組成物を提供する。このような組成物の特定の実施形態では、活性剤がプロゲステロンであるとき、この組成物は、エストラジオール、プロピレングリコール、オレイン酸、オレイン酸エチル、エタノール、ヒドロキシプロピルセルロースおよび精製水の組み合わせをさらには含まない。
【0051】
特定の実施形態では、本発明に係る医薬組成物の中の治療活性剤はプロゲスチン、エストロゲンまたはこの2つの組み合わせである。
【0052】
上記のように、当該組成物が複数のステロイドを含むとき、当該組成物中のステロイド活性剤の全量に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、例えば4:1〜20:1の範囲にある。
【0053】
当該組成物の中に存在する治療活性剤の量は、一般に、治療効果のために送達されるべき投薬量および製剤上の考慮事項によって影響を受けることになろう。当該組成物は、一般に治療上有効量の活性剤を含む。本願明細書で使用する場合、語句「治療上有効量」は、当該薬物が投与される目的の特定の薬理学的な反応を、対象において成し遂げる量(投薬量)を意味する。特定の例において特定の対象に投与される薬物の「治療上有効量」は、標的の状態/疾患を処置することにおいて必ずしも有効でなくてもよく、これは、たとえこのような投薬量が当業者によって治療上有効量であるとみなされるとしてもである、ということを強調しておきたい。当業者は、「治療上有効量」は患者ごと、または状態ごとに変わる可能性があり、日常的な手段によって、所定の患者/状態について「治療上有効量」を決定できるということを認識しているであろう。
【0054】
治療活性剤は、約0.01%〜約5%、または0.01%〜5%(約0.02%〜約3%を含む)、または0.02%〜3%、例えば約0.03%〜約2%、または0.03%〜2%(約0.05%〜約0.5%を含む)、または0.05%〜0.5%、例えば約0.2%〜約0.4%、または0.2%〜0.4%の範囲の量で当該組成物の中に存在することが有利であり、これらの百分率は、当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。
【0055】
1つの有利な実施形態によれば、当該活性剤がプロゲスチンを含むとき、プロゲスチン含有量は、約0.01%〜約5%(約0.05%〜約3%を含む)、例えば約0.1%〜約1%の範囲にあり、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、プロゲスチン含有量は、0.01%〜5%(0.05%〜3%を含む)、例えば0.1%〜1%の範囲にあってもよい。
【0056】
別の実施形態によれば、当該活性剤がエストロゲンを含むとき、エストロゲン含有量は、約0.01%〜約5%(約0.02%〜約3%を含む)、例えば約0.03%〜約2%(約0.05%〜約0.50%を含む)、例えば約0.20%〜約0.40%の範囲にあり、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、エストロゲン含有量は、0.01%〜5%(0.02%〜3%を含む)、例えば0.03%〜2%(0.05%〜0.50%を含む)、例えば0.20%〜0.40%(約0.30%〜0.40%を含む)の範囲にあってもよい。
【0057】
より好ましい実施形態では、当該活性剤がエストロゲンを含むとき、エストロゲン含有量は約0.30%〜0.40%の範囲にあることになろう。
【0058】
脂肪酸エステル
本願明細書に記載される組成物は少なくとも1つの脂肪酸エステルを含む。
【0059】
本発明での使用に適した脂肪酸エステルとしては、8〜22個の炭素原子、例えば12〜20個の炭素原子を含有する長鎖脂肪族脂肪酸エステルが挙げられる。この脂肪酸エステルは、アルコールと、非限定的に、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、イソステアリン酸(18:0)、パルミトレイン酸(16:1)、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)からなる群から選択される脂肪酸との反応から得られるであろう脂肪酸エステルであってもよい。
【0060】
従って、例えば、この脂肪酸エステルは、任意に、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸エチル、ドデカン酸エチル、リノール酸エチル、パルミトレイン酸エチル、イソステアリン酸エチルおよびリノレン酸エチルからなる群から選択することができる。特定の実施形態では、この脂肪酸エステルは、アルコールとオレイン酸との反応から得られるであろうエステルである。
【0061】
1つの実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該組成物の中に配合された脂肪酸とアルコールとの反応から得られるであろうエステルである。他の実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該組成物の中に配合された脂肪酸とアルコールとの反応から得られるであろうエステルではない。1つの実施形態では、この脂肪酸エステルは、当該組成物の中に配合された脂肪酸と当該組成物の中に配合されたアルコールとの反応から得られるであろうエステルではない。例えば、本発明に関しては、真皮中での貯蔵部位の形成に起因すると考えられる持続される送達などの本願明細書で論じられる有利な結果は、当該組成物の中に配合された脂肪酸エステルが同じく当該組成物の中に配合されたいずれかの脂肪酸に対応するかどうかに関係なく、観察される可能性がある。
【0062】
上記のように、脂肪酸エステルは、当該治療活性剤に対して少なくとも4倍過剰(w/w基準で)で、当該組成物の中に存在する、すなわち、当該組成物の中に存在する活性剤に対する当該組成物の中に存在する脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは4:1〜20:1の範囲にある。好ましい実施形態では、当該組成物の中に存在する活性剤に対する当該組成物の中に存在する脂肪酸エステルの重量:重量比は、4:1〜15:1、好ましくは5:1〜10:1、より好ましくは5:1〜7:1の範囲にある。これらのパラメータの範囲内で、当該医薬組成物中の脂肪酸エステル含有量は、約0.1重量%〜約20重量%、例えば約0.2重量%〜約10重量%(約0.5重量%〜約5重量%を含む)の範囲にあってもよく、すべては、当該医薬組成物の総重量に基づく。従って、当該組成物は、0.1重量%〜20重量%、例えば0.2重量%〜10重量%(0.5重量%〜5重量%を含む)の量の脂肪酸エステルを含んでもよい。
【0063】
特定の実施形態では、当該医薬組成物中の脂肪酸エステル含有量は、約0.01%〜約5%(約0.05%〜約2.4%を含む)、例えば約0.1%〜約2.2%の範囲にあってもよく、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、脂肪酸エステル含有量は、0.01%〜5%(0.05%〜2.4%を含む)、例えば0.1%〜2.2%の範囲にあってもよい。
【0064】
脂肪酸
本発明のいくつかの実施形態では、当該組成物は、脂肪酸浸透促進剤などの少なくとも1つの脂肪酸を含んでもよく、この少なくとも1つの脂肪酸は、飽和または不飽和のいずれであってもよい。本発明に係る使用に適した脂肪酸としては、8〜22個の炭素原子、例えば10〜18個の炭素原子を含有する長鎖脂肪族脂肪酸が挙げられる。この脂肪酸は、非限定的に、カプリン酸(10:0)、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0);オレイン酸(18:1)、イソステアリン酸(18:0)、パルミトレイン酸(16:1)、リノール酸(18:2)およびリノレン酸(18:3)からなる群から選択されてもよい。特定の実施形態では、この脂肪酸はオレイン酸である。
【0065】
特定の実施形態では、当該組成物の中に配合された脂肪酸は、同じく当該組成物の中に配合された脂肪酸エステルに対応し、例えば組成物は、オレイン酸エチルおよびオレイン酸を含む。従って、特定の実施形態では、本発明の組成物は、オレイン酸およびその対応するエステルのうちの少なくとも1つの両方を含む。他の実施形態では、当該組成物の中に配合された脂肪酸は、同じく当該組成物の中に配合された脂肪酸エステルに対応しない。
【0066】
本発明に係る医薬組成物中の脂肪酸含有量は、約0.01%〜約5%(約0.05%〜約3.5%を含む)、例えば約1%〜約3%の範囲にあることが有利であり、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、脂肪酸含有量は、0.01%〜5%(0.05%〜3.5%を含む)、例えば1%〜3%の範囲にあってもよい。
【0067】
アルコール
上記のように、本発明の組成物は、少なくとも1つのC2〜C6モノアルコールを含む。本願明細書で使用する場合、用語「アルコール」は、少なくとも1つの炭素原子およびただ1つのアルコール基−OHを含有する有機分子(モノアルコール)を指す。
【0068】
例示的なC2〜C6アルコールは、C2〜C4アルコール、例えばエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、またはこれらの混合物を含むことができる。本発明の組成物における使用に適した例示的な、非限定的なC2〜C6モノアルコールはエタノールおよびイソプロパノールである。
【0069】
このようなC2〜C6モノアルコールの存在によって、皮膚上での当該組成物の乾燥も加速される可能性がある。その理由で、約70〜約130℃の範囲(約75〜約85℃の範囲を含む)の沸点を有するC2〜C6モノアルコールが選択されてもよい。
【0070】
典型的には、このC2〜C6モノアルコールは、約10%〜約90%(約20%〜約80%を含む)、例えば約45%〜約75%の範囲の量で使用され、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、このC2〜C6モノアルコールは、10%〜90%(20%〜80%を含む)、例えば45%〜75%の範囲の量で存在してもよい。
【0071】
共溶媒
本発明に係る医薬組成物は、共溶媒をも含んでもよい。医薬組成物における使用に適した共溶媒は、ポリオールまたはポリグリコールなど当該技術分野で公知であり、グリセロール、プロピレングリコールおよびポリエチレングリコールからなる群から選択されることが有利である。
【0072】
共溶媒は、約0.01%〜約7%(約3%〜約7%を含む)、例えば約4%〜約6%の範囲の量で本発明の組成物の中に存在してもよく、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、共溶媒は、0.01%〜7%(3%〜7%を含む)、例えば4%〜6%の範囲の量で存在してもよい。
【0073】
この共溶媒は、一般に、治療活性剤の溶解性を高め、特に、アルコールが乾いたときに皮膚表面上に残る治療活性剤を溶解した状態に維持することに寄与する可能性がある。その理由で、約150℃〜約300℃の範囲、例えば約150℃〜約200℃の範囲の沸点を有する共溶媒が選択されてもよい。
【0074】
ゲル化剤
本発明の組成物は、任意に、少なくとも1つのゲル化剤を含んでもよい。
【0075】
本願明細書で使用する場合、用語「ゲル化剤」は、特定の溶媒、例えば水と接触したときにゲルを形成する能力を有する、任意にポリマー性の、化合物を指す。医薬組成物における使用に適したゲル化剤(例えば、増粘剤)は当該技術分野で公知である。ゲル化剤は、本発明の医薬組成物の粘度を上昇させるように作用する可能性がある。例えば、ゲル化剤は、皮膚の上への当該組成物の容易な塗布を可能にするのに十分な粘度を有する組成物を与える可能性がある。加えてまたはあるいは、ゲル化剤は溶解補助剤として作用する可能性がある。
【0076】
ゲル化剤の例としては、アクリル酸ベースのポリマー(ポリアクリル酸ポリマー、例えばNoveon、オハイオ州によるCarbopol(登録商標)を含む)、セルロース誘導体、ポロキサマーおよびポロキサミン、より正確に言えば、アクリル酸ベースのポリマーであるカルボマー、例えばCarbopol(登録商標) 980または940、981または941、1342または1382、5984、934または934P(Carbopol(登録商標)は、通常、アリルスクロースまたはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のポリマーである)、Ultrez、Lubrizolによって市販されているPemulen TR1(登録商標)またはTR2(登録商標)(アリルペンタエリスリトールで架橋された、アクリル酸とC10〜C30アルキルアクリレートとの高分子量共重合体)、Synthalen CRなどのアニオン性ポリマー;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(Hercules Incorporatedによって販売されているKlucel(登録商標)、例えばKlucel HF(登録商標)またはKlucel HPC(登録商標))、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど、およびこれらの混合物などのセルロース誘導体;Lutrol(登録商標) グレード68または127などのポロキサマーまたはポリエチレン−ポリプロピレンコポリマー、ポロキサミンならびにキトサン、デキストラン、ペクチン、および天然ガムなどの他のゲル化剤が挙げられる。これらのゲル化剤のうちのいずれか1以上を、単独または組み合わせて、本発明に係る医薬組成物で使用してよい。1つの態様では、このゲル化剤は、ポリアクリル酸、セルロース誘導体、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、Pemulen(登録商標)をゲル化剤として含む。
【0078】
典型的には、このゲル化剤は、約0.05重量%〜約5重量%(約0.1重量%〜約3重量%を含む)、例えば約1.5重量%〜約2.5重量%の範囲の量で使用され、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、このゲル化剤は、0.05重量%〜5重量%(0.1重量%〜3重量%を含む)、例えば1.5重量%〜2.5重量%の範囲の量で存在してもよい。
【0079】
保湿剤
本発明の組成物は、任意に、少なくとも1つの保湿剤を含んでもよい。
【0080】
本願明細書で使用する場合「保湿剤」は、皮膚を水和する薬剤を指す。医薬組成物における使用に適した保湿剤は当該技術分野で公知である。保湿剤は、単独でまたは組み合わせて使用することができ、例えば、2または3(または4以上)の異なる保湿剤の組み合わせを使用することができる。いくつかの実施形態では、保湿剤は、皮膚軟化薬および/または湿潤剤から選択される。
【0081】
本願明細書で使用する場合、「皮膚軟化薬」は、皮膚を軟化させかつ皮膚の加湿を改善する傾向がある物質を指す。医薬組成物における使用に適した皮膚軟化薬は当該技術分野で周知であり、鉱油、ワセリン、ポリデセン、イソヘキサデカン、10〜30個の炭素原子を有する脂肪酸およびアルコール;ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノレン酸、リシノール酸、アラキジン酸、ベヘン酸、およびエルカ酸(euricic acid)ならびにペラルゴンアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ヒドロキシステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リシノレイルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、およびエルシルアルコール(euricic alcohol);トリグリセリドエステル、ヒマシ油、カカオバター、サフラワー油、ヒマワリ油、ホホバ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、タラ肝油、アーモンド油、アボカド油、パーム油、ゴマ油、スクアレン、キクイオイル(Kikui oil)、大豆油、アセトグリセリドエステル、エトキシル化グリセリド、エトキシル化グリセリルモノステアレート、10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルキルエステル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸デシル、オレイン酸イソデシル、ステアリン酸ヘキサデシル、ステアリン酸デシル、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジイソヘキシル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸ラウリル、乳酸ミリスチル、乳酸アセチル;10〜20個の炭素原子を有する脂肪酸のアルケニルエステル、ミリスチン酸オレイル、ステアリン酸オレイル、オレイン酸オレイル、エトキシル化脂肪アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールエステル、エチレングリコールのモノ脂肪酸エステルおよびジ脂肪酸エステル、ジエチレングリコールのモノ脂肪酸エステルおよびジ脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、ワックスエステル、ビーズワックス、鯨ろう、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸ステアリル、シリコーン油、ジメチコーン、シクロメチコーンが挙げられる。いくつかの実施形態では、当該組成物は、室温で液体である1以上の皮膚軟化薬を含む。
【0082】
本願明細書で使用する場合「湿潤剤」は、空気から水を吸収する吸湿性の物質を指す。本発明における使用に適した湿潤剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、グリセリルトリアセテート、ポリオール、ソルビトール、マルチトール、高分子ポリオール、ポリデキストロース、キラヤ(quillaia)、乳酸、および尿素が挙げられる。
【0083】
本発明における使用に適した保湿剤は、アミン、アルコール、グリコール、アミド、スルホキシド、およびピロリドンを含んでもよい。1つの態様では、この保湿剤は、乳酸、グリセリン、プロピレングリコール、および尿素からなる群から選択される。
【0084】
本発明の1つの実施形態では、この保湿剤は、約0.01重量%〜約30重量%(約0.05重量%〜約20重量%を含む)、例えば約0.1重量%〜約10重量%(約0.5重量%〜約5重量%を含む)の範囲の量で使用され、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、例えば、保湿剤は、0.01重量%〜30重量%(0.05重量%〜20重量%を含む)、例えば0.1重量%〜10重量%(0.5重量%〜5重量%を含む)の範囲の量で使用されてもよい。
【0085】
1つの実施形態では、当該組成物は、約0.01重量%〜約30重量%(約0.05重量%〜約20重量%を含む)、例えば約0.1重量%〜約10重量%(約0.5重量%〜約5重量%を含む)の範囲の量のグリセリンを含み、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、組成物は、0.01重量%〜30重量%(0.05重量%〜20重量%を含む)、例えば0.1重量%〜10重量%(0.5重量%〜5重量%を含む)の範囲の量のグリセリンを含んでもよい。
【0086】
水性媒体
上記のように、本発明の組成物は水性媒体を含み、従って水を含む。医薬組成物に適した水性媒体は当該技術分野で公知である。
【0087】
本発明の1つの態様によれば、この水性媒体は、水の他に、pHを調整する上で有用な成分、例えば、有利にも当該組成物のpHを約4〜約10の間、例えば約5〜約9の間、または約6〜約8の間(4〜10、5〜9および6〜8を含む)に維持することを可能にする少なくとも1つの緩衝剤を含む。
【0088】
本発明に係る医薬組成物の1つの特定の実施形態によれば、このバッファーは、以下からなる群から選択される:
− 塩基性にするかもしくは塩基性のバッファー、例えばリン酸塩バッファー(例えばリン酸一水素ナトリウムもしくはリン酸二水素ナトリウム)、クエン酸塩バッファー(例えばクエン酸ナトリウムもしくはクエン酸カリウム)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム(炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの混合物を含む)、または
− 中性のバッファー、例えばTrisバッファー(例えばtrisマレイン酸塩)、もしくはリン酸塩バッファー。
【0089】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの混合物を含む。
【0090】
このバッファーは、直接に、例えば粉末形態で加えられるか、または水の中で、例えば1〜500mMの範囲の濃度に希釈されて、当該組成物に導入される。従って、液体バッファー溶液を当該組成物に導入することができる。
【0091】
当業者なら、使用されるバッファーの化学特性、その形態(粉末状であるのかまたは水で希釈されているのか)ならびに当該組成物の出発時のpHおよび所望のpHに応じて、所望の緩衝効果を得るためにどのようにバッファーの量を調整するかを理解しているであろう。
【0092】
下記の値に限定されるわけではないが、当該組成物で使用されるバッファーが、粉末形態で導入される炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの混合物である場合(本願の実施例8を参照)、炭酸ナトリウムは、約0.01〜0.1%の範囲の量で導入することができ、炭酸水素ナトリウムは、約0.001〜0.01%の範囲の量で導入することができる(これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている)ということが、合理的に予想されうる。
【0093】
下記の値に限定されるわけではないが、当該組成物で使用されるバッファーが、pH=10.7を有する炭酸塩バッファーの60mM溶液である場合(本願の実施例1〜3を参照)、この60mMバッファー溶液は、約1%〜約80%(約5%〜約70%を含む)、例えば約10%〜約50%の範囲の量で導入することができる(これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている)ということが、合理的に予想されうる。
【0094】
しかしながら、当該組成物の中のバッファーの量は、標準的な緩衝化技法に従ってバッファーが導入される製剤の組成に応じて、さらに変わりうる。
【0095】
別の態様では、本発明の医薬組成物は、塩基をさらに含む。有利なことに、この塩基は、例えば、薬学的に許容できるものであり、典型的には、トリエタノールアミン、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノールまたはトロメタミン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。当該医薬組成物のpHが経皮投与のために最適化されていない場合、例えば、ゲル化剤が、最終生成物について所望されるpHよりも酸性のpHを生じる少なくとも1つのアクリル酸ベースのポリマーを含む場合、塩基の使用は、医薬組成物の中和に寄与する可能性がある。さらに、塩基(中和剤)の使用は、電荷の中和およびポリマー塩の形成の間のポリマー鎖の膨潤を改善または最適化する可能性がある。ゲル化剤がアクリル酸ベースのポリマーを含む実施形態では、塩基はトリエタノールアミンを含んでもよい。塩基の使用は、粘度も改善または最適化する可能性がある。
【0096】
当業者は、当該組成物における使用のための、塩基の適切な量を選ぶ方法を知っているであろうから、当該組成物の中に存在するゲル化剤の性質、および当該組成物のアルコール含有量に基づいて、塩基を選択してもよい。例えば、カルボマーおよび/または高アルコール含有量を用いる場合、トロメタミンおよび/またはNaOHが、組成物において所望の最終のpHに到達するように選ばれる量で、塩基として選択されてもよい。
【0097】
さらなる任意の構成成分
本発明の医薬組成物は、任意に、塩、安定剤、抗菌薬、例えばパラベン化合物、芳香剤、および/または噴霧剤などの他の通常の医薬添加剤を含んでもよい。
【0098】
例えば、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびアスコルビン酸などの安定剤を含むことが有利である可能性がある。しかしながら、BHAは、本発明の組成物を黄色に着色する可能性がある。それゆえ、より好ましい実施形態では、本発明の組成物はBHAを含まない。
【0099】
選択された成分の性質に応じて、界面活性剤を含むことが有利である可能性がある。医薬組成物における使用に適した界面活性剤は当該技術分野で公知であり、当業者は、皮膚科学的にかつ/または美容上許容できる界面活性剤など、本発明における使用のための適切な界面活性剤を選択することができる。それらの例としては、非イオン性界面活性剤、例えば:
− エステル、例えば
○ポリエチレングリコールと、脂肪酸とのエステル、例えばモノグリセリド、ジグリセリドおよびトリグリセリドの混合物であり、ポリエチレングリコールと脂肪酸とのモノエステルおよびジエステルの混合物であるLabrasol(登録商標);
○サッカロースと脂肪酸とのエステル、例えばHLB 16を有するスクロースラウレート;HLB 16を有するスクロースパルミテート;
○ソルビタンポリオキシエチレンのエステル、例えばTween(登録商標) 化合物、例えばTween(登録商標) 20、60および/または80;
− アルキレンオキシドコポリマー、例えばエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドのコポリマー、例えばPluronics(登録商標)
が挙げられる。
【0100】
さらなる例としては、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)などのアニオン性界面活性剤およびセトリミド(臭化アルキルトリメチルアンモニウム)などのカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0101】
典型的には、界面活性剤は、本発明の組成物において、約0.01重量%〜約5重量%(約0.05重量%〜約3重量%を含む)の範囲の量で使用され、これらの百分率は当該医薬組成物の総重量に対して、重量によって表されている。従って、界面活性剤は、当該組成物において、0.01重量%〜5重量%(0.05重量%〜3重量%を含む)の範囲の量で使用されてもよい。
【0102】
本発明に係る医薬組成物は、溶液、ゲル、クリーム、ローション剤、乳液、軟膏剤、エアロゾルまたはパッチの形態にあってもよい。
【0103】
特定の実施形態では、本発明の組成物は、ゲルまたは溶液の形態にある。
【0104】
例示的な組成物および使用
例示的な、非限定的な組成物が以下で与えられる。上記のように、百分率(%)は、当該組成物の総重量に基づく重量による量(w/w)を指す。当該組成物の異なる構成成分の合計は、全体の組成物の100%(w/w)になる。
【0105】
1つの態様では、本発明は、皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって、当該組成物は、
(i)0.01〜2.5%(w/w)の1以上のステロイドを含む薬学的活性剤と、
(ii)10〜90%(w/w)の少なくとも1つのC2〜C6モノアルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノールと、
(iii)0.04〜10%(w/w)の脂肪酸エステルと、
(iv)0〜10%(w/w)の脂肪酸と、
(v)0〜5%(w/w)の少なくとも1つのゲル化剤と、
(vi)100%(w/w)にするのに必要な(q.f.s.)水と
を含み、当該組成物中の全活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤である、医薬組成物に関する。
【0106】
好ましい実施形態では、本発明は、皮膚表面への局所投与のための医薬組成物であって、当該組成物は、
(i)0.01〜1.25%(w/w)、好ましくは0.30〜0.50%(w/w)、の、エストロゲン、好ましくはエストラジオールから選ばれる薬学的活性剤と、
(ii)20〜80%(w/w)の少なくとも1つのC2〜C6モノアルコール、例えばエタノールまたはイソプロパノールと、
(iii)0.04〜5%(w/w)の脂肪酸エステル、好ましくはオレイン酸エチルと、
(iv)0.01〜5%(w/w)の脂肪酸、好ましくはオレイン酸と、
(v)0.05%〜5%(w/w)の少なくとも1つのゲル化剤、好ましくはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸とC10〜C30アルキルアクリレートとの高分子量共重合体、例えばPemulen(登録商標) TR−1と、
(vi)100%(w/w)にするのに必要な水と
を含み、当該組成物中の全活性剤に対する当該組成物中の脂肪酸エステルの重量:重量比は、少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは4:1および7:1の範囲にある、医薬組成物に関する。
【0107】
使用される活性剤に応じて、本発明の医薬組成物は、種々の処置のために有用である可能性がある。例えば、当該組成物は、薬学的活性剤の送達が所望されるいずれの方法でも使用することができ、そして、薬学的活性剤の持続的な、全身送達が所望される場合に特に有用である可能性がある。当該組成物が1以上のステロイドを含むとき、当該組成物は、そのステロイドの送達が所望されるいずれの方法でも使用することができ、そして、ステロイドの持続的な、全身送達が所望される場合に特に有用である可能性がある。例えば、当該組成物は、1以上のステロイドの全身投与によって処置、改善または予防されうるいずれかの状態を患っているか、またはそのような状態を発生するリスクにある患者を処置するための方法において使用することができる。例示的な、非限定的な治療方法としては、以下のものが挙げられる。
【0108】
活性剤が抗エストロゲン剤(SERM)であるとき、本発明の組成物は、以下の乳房障害を患っているか、または以下の乳房障害を発生するリスクにある患者を処置するために有用である:
− 密な乳房組織、例えば乳癌のリスクの前兆でありかつ/または乳房X線撮影感度を低下させる高密度乳房組織を伴う状態;
− 良性の乳房疾患、例えば腺疾患、嚢胞、管拡張症、線維腺腫、線維症、過形成、異形成および他の線維嚢胞性変化;
− 女性化乳房;
− 乳癌(非浸潤性乳癌を含む);
− 悪性黒色腫;
− 乳房痛(mastalgia);
− 限局性の癌および/または腫瘍、例えば肺腫瘍;ならびに
− 抗エストロゲン剤の全身投与を伴う他の療法。
【0109】
活性剤がエストロゲン、例えばエストラジオール、抗エストロゲン剤(SERM)、アンドロゲン、例えばテストステロンまたはDHTであるとき、本発明の組成物は、骨に関連する障害、例えば骨粗鬆症、閉経に関連する骨粗鬆症、グルココルチコイド誘発性骨粗鬆症、パジェット病、骨吸収異常、骨癌、骨量減少(全般的な骨量減少および/または局所的な骨量減少)、骨転移(高カルシウム血症を伴うかまたは伴わない)、多発性骨髄腫および骨の脆弱性を特徴とする他の状態を処置するために有用である。
【0110】
活性剤が、エストロゲン、例えばエストラジオールであるとき、本発明の組成物は、
− 心血管疾患の予防または認知機能の改善;
− 閉経の症候、例えばのぼせ、寝汗、睡眠の問題(不眠症)、疲労、膣の乾燥およびかゆみおよび灼熱感、性欲減退、生理不順、膀胱の問題、および気分変動を管理すること;
− 前立腺癌;ならびに
− エストロゲンの全身投与を伴う他の療法
のために有用である。
【0111】
活性剤がプロゲストーゲン、例えばプロゲステロンであるとき、本願明細書に記載される組成物は、
− 良性の乳房疾患、乳房痛(mastodynia)、乳腺症、周期性の乳房痛(mastalgia)、ならびに嚢胞および良性腫瘍の再発の予防;
− 月経前症候群、排卵障害または無排卵症に起因する月経不順、良性の乳腺症、閉経前期、閉経後の女性におけるエストロゲンとの補助的使用、エストロゲン療法を受けている子宮を摘出していない閉経後女性における子宮内膜増殖症の予防、黄体期欠損、切迫流産、および切迫早産に起因する不妊症を処置するため、卵巣機能を欠く女性(卵母細胞提供)における、卵巣不全または完全な卵巣機能不全の間の、特に排卵障害(dysovulation)に起因する原発性もしくは続発性の不妊症または低妊孕率における、体外受精周期のあいだの黄体期補助療法(luteal phase support)のため、自発性のまたは人工的な周期のあいだの黄体期補助療法のためのプロゲステロン補充療法(progesterone support);ならびに
− プロゲストーゲンの全身投与を伴う他の療法
に有用である。
【0112】
活性剤がアンドロゲン、例えばテストステロンまたはDHTであるとき、本発明の組成物は、
− 性腺機能低下症;
− うつ病性障害、2型糖尿病、血糖コントロールを高めるため、勃起不全、メタボリックシンドローム、虚弱、狭心症、うっ血性心不全、骨減少症および骨粗鬆症を処置するため;ならびに
− アンドロゲンの全身投与を伴う他の療法
に有用である。
【0113】
上記の例が与えられたが、当業者は、本願明細書に記載される組成物は、薬学的活性剤、例えば1以上のステロイド、の全身送達が所望されるいずれの状況においても有用であるということは容易にわかるであろう。さらに、いずれかのおよびすべての使用について、当業者は、例えば図2に提示されたデータなどの浸透データを使用することにより、与えられた活性剤濃度を有する与えられたゲルを使用して、目的のインビボ送達レベルを成し遂げるために毎日施用するためのゲルの適切な量を決定することができるであろう。
【0114】
例示的な投与方法
上記のように、本願明細書に記載される組成物は経皮投与に適している。例えば、当該組成物は、直接的な非閉塞的な経皮(transdermal)/経皮的(transcutaneous)付与のために、皮膚の表面に直接に付与されてもよい。本願明細書で使用する場合、用語「直接的な/直接に」および「非閉塞的」は、当該組成物が、投与を行うためのマトリクスまたは膜を必要とせず、従ってパッチ、硬膏剤、テープ系などを介して分配される必要がないということを反映する。しかしながら、当該組成物は、任意に、パッチ、硬膏剤、テープ系などを介して分配されてもよい。
【0115】
当該組成物は、当該組成物を皮膚の表面に付与するために有効な任意の手段によって投与されてもよい。例えば、当該組成物は、手を使用して直接手作業により、または点滴器またはピペットなどの付与装置、スワブ、はけ、布、パッド、スポンジなどの付与装置を用いて、またはいずれかの他の付与装置、例えば紙、厚紙または積層材料を含む固体支持体など(フロック化された(flocked)、糊付けされたまたは別の態様で固定された繊維を含む材料を含む)を用いて付与されてもよい。あるいは、当該組成物は、加圧容器または加圧されていない容器から、エアロゾルまたは非エアロゾルスプレーとして付与されてもよい。いくつかの実施形態では、当該組成物は、例えば定量噴霧式付与装置から、または当該組成物の単回用量を含む付与装置から、定量で投与される。
【0116】
いくつかの実施形態では、当該組成物は、皮膚の表面に、所定の表面積にわたって投与される。所定の有限の量の当該組成物を所定の表面積へと投与することで、与えられた表面積に付与される活性物質の量の制御、すなわち、局所濃度を制御することが可能になる。局所濃度を制御する(例えば、限定する)ことにより、局所的な副作用、例えば局所的なアンドロゲン効果(ざ瘡、脂性肌が挙げられるがこれらに限定されない)を最小にすることができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、投与される組成物の量は、活性剤の治療上有効量(例えば、単回用量)を与える所定の有限の量である。
【0118】
当該組成物を製造する方法
本発明は、本発明の医薬組成物を製造するための方法も提供する。当業者は、共通一般知識に基づいて、任意の適切な手段によって本発明の医薬組成物を調製することができる。例えば、当該薬学的活性剤をアルコールに溶解させて、水性媒体(例えば、水およびこれまでに論じた他の任意の構成成分)および(使用されるならば)共溶媒と混合することができ、次いで、保湿剤(使用されるならば)などの他の賦形剤を加え、そしてさらに混合することができる。ゲル化剤(使用されるならば)は、撹拌下で導入することができる。中和剤(使用されるならば)は、通常、この方法の最後にまたは最後の近くで、中和剤を加えないならば最終となる組成物に、加えられる。例えば、当該組成物がCarbopol(登録商標)を含む場合、この組成物を中和するためにNaOHまたはトリエタノールアミンを使用することができる。他の任意の構成成分は、公知の手順に従って当該方法の他の段階で加えることができる。例えば、防腐剤(使用されるならば)は、このプロセスのいずれかの適切な時期に、適切な溶媒の中で加えることができる。
【0119】
例えば、特定の実施形態では、構成成分は、以下の順序で加えられて混合されてもよい:
1. アルコールおよび共溶媒を加え、均一になるまで混合する。
2. 治療活性剤をゆっくり加え、完全に溶解するまで混合する。
3. 脂肪酸を加え、均一になるまで混合する。
4. 脂肪酸エステルを加え、均一になるまで混合する。
5. ゲル化剤(使用されるならば)をゆっくり加え、完全に水和されるまで十分に混合する。6. バッファー溶液(使用されるならば)をゆっくり加え、均一になるまで混合する。
【0120】
以下の具体例は、本願明細書に記載される組成物を例証するものとして含まれる。これらの例は、本発明の範囲を限定することは決して意図されていない。本発明の他の態様は、本発明が関係する当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0121】
実施例1:真皮へのエストラジオールのインビトロ吸収
A. 化学物質および製剤
トリチウム化したエストラジオール[H]を、下記の医薬組成物の調製において使用する。
【表1】

アルコール含有量は、親油性成分を溶解するように適合される。
【0122】
B. 方法
1. 方法の原理
レセプター液と真皮との接触を許容するフランツ拡散セル(Franz TJ、「Percutaneous absorption on the relevance of in vitro data」、J Invest Dermatol、1975年3月、第64巻、第3号、190−5頁)の中に置いたヒトの皮膚の生検を用いて(真皮の中に吸収される物質が測定される)、インビトロでの経皮吸収を定量的に検討する。
【0123】
2. セルの説明
皮膚生検は、フランツセルの2つの部分の間に水平に維持され、上皮および真皮と呼ばれる2つの別々の区画を区切る。上皮区画は、この皮膚の上側に置いた、正確な表面積(1.77cm2)のガラスのセルキャップからなる。この皮膚生検の下側の真皮区画は、側面の収集ポートが取り付けられている一定容積(約6.5ml)のレザバーを含む。これらの2つの要素は、クランプを用いて適所に保持される。
【0124】
真皮区画は、9g/lの塩化ナトリウムおよび15g/lのウシ血清アルブミンの溶液からなるレセプター液が満たされている。この液体は、このアッセイ全体を通して定期的にすべて除去され、側面の収集ポートを使用して新しいレセプター液によって置き換えられる。
【0125】
生理的な皮膚温度を模擬するために、37℃の水を含有する二重の水循環ジャケットが、このセルの下方部分を取り囲んでいる。温度およびレセプター液の中の内容物の均質性を確実にするために、撹拌棒が真皮区画に置かれ、各セルは、マグネチックスターラー上に置かれる。
【0126】
上方部分、または上皮区画は外部末端で開いており、皮膚の表面を試験室の周囲の空気にさらす。
【0127】
3. 皮膚生検の調製
この実験のために使用するヒトの腹部の皮膚は、形成外科手順後のドナーから採取する。皮膚は−20℃で保存される。放射活性製剤の付与の前日に、(凍結前に皮下脂肪が取り除かれていない場合には)解凍後、皮下脂肪を取り除き、皮膚をおよそ350μmに採皮する。この皮膚を、放射活性製剤の付与の前日に、上記セルに載せる。
【0128】
4. 操作手順
10マイクロリットル(約1μCi)の調剤を、ガラスのセルキャップによって区切られた表皮の表面にわたって付与する。この実験の間、レセプター液は、2、4、6、8および24時間に、側面の収集ポートを通して完全に取り除かれる。次に、真皮区画は、新しい溶液で再び満たされる。
【0129】
試験の終わりに(24時間)、皮膚の表面に残る残留薬物を、その表面を洗浄することにより取り除く。メスを用いて優しく掻爬することにより、表皮をこの真皮から分離する。
【0130】
5. 試料の処理および放射活性の測定
これまでに記載されたとおりに得られる試料に含まれる放射活性は、専用のソフトウェアを具えたシンチレーティング・リキッド・ベータ・カウンタ(scintillating liquid beta counter)を使用して測定される。
【0131】
6. 真皮について得られた結果の表現:
真皮の中で見出されるエストラジオールの量は、ng相当量でまたは投与された用量の百分率で表される。各結果は、(n個の)実験的測定値の平均値を表し、その標準偏差と関連付けられる。
【0132】
7. 結果と考察
【表2】

【0133】
これらの結果は、試験した両方のエストラジオール濃度において、オレイン酸エチルの添加が、エストラジオールの真皮保持の有意な上昇(少なくとも1.5倍)を誘導する(p<0.01)ということを示す。(製剤2 対 1および4 対 3に関する結果を比較せよ)。
【0134】
実施例2:真皮へのテストステロンのインビトロ吸収
A. 化学物質および製剤
トリチウム化したテストステロン[3H]を、下記の医薬組成物の調製において使用する。
【表3】

アルコール含有量は、親油性成分を溶解するように適合される。
【0135】
B. 方法および結果
上記の2つのテストステロン製剤を用いて、実施例1に開示される操作手順に従う。
【0136】
24時間後、皮膚の表面に残る残留薬物を、セルごとに皮膚の表面を洗浄することにより取り除き、その直後に、真皮区画を新しいレセプター液で再び満たす。次に、このセルをさらに24時間、モニターする。
【0137】
48時間後、このレセプター液を集め、メスを用いて優しく掻爬することにより、表皮を真皮から分離する。真皮は、セルの下方部分から分離される。表皮および真皮の層を、放射活性の抽出のために、1ml(表皮)または3ml(真皮)のSoluene 350(商標) (PACKARD)の中で60℃で数時間消化する。
【0138】
a)48時間における真皮中での保持:
【表4】

【0139】
これらの結果は、オレイン酸エチルの添加は、付与から2日後および皮膚洗浄から1日後に測定したときでさえ、真皮保持の有意な上昇(少なくとも1.5倍)を誘導する(p<0.05)ことを示す。
【0140】
b)24時間〜48時間のレザバーへの放出:
【表5】

これらの結果は、皮膚洗浄から24時間後の浸透吸収に対するオレイン酸エチルの有意な影響をも示す。
【0141】
これらの結果は、本発明の組成物および方法は、皮膚洗浄後24時間にわたる皮膚からのテストステロン活性剤の徐放性をもたらすということを明瞭に示す。
【0142】
実施例3:真皮へのテストステロンのインビトロ吸収
A. 化学物質および製剤
トリチウム化したテストステロン[3H]を、下記の医薬組成物の調製において使用する。
【表6】

アルコール含有量は、親油性成分を溶解するように適合される。
【0143】
B. 方法および結果
上記の2つのテストステロン製剤を用いて、実施例1に開示される操作手順に従う。
【表7】

【0144】
これらの結果は、試験したテストステロン濃度において、ミリスチン酸イソプロピルの添加が、24時間後に真皮保持の有意な上昇(少なくとも2.5倍)を誘導する(p<0.01)ということを示す。
【0145】
実施例4:真皮へのジヒドロテストステロンのインビトロ吸収
A. 化学物質および製剤
トリチウム化したジヒドロテストステロン[3H]を、下記の医薬組成物の調製において使用する。
【表8】

【0146】
B. 方法および結果
上記の2つのDHT製剤を用いて、実施例1に開示される操作手順に従う。
【表9】

【0147】
これらの結果は、ゲル中のIPMの百分率の上昇が、24時間後に、有意な(p<0.05)ジヒドロテストステロンの真皮保持(少なくとも2倍)を誘導するということを示す。
【0148】
実施例5:フランツヒト皮膚有限用量モデルを使用するプロゲステロンの経皮吸収の評価
A. 緒言
インビトロでのフランツヒト皮膚有限用量モデルは、経皮吸収の研究および局所的に付与された薬物の薬物動態の決定のための有益なツールであることが判明している。このモデルは、皮膚が典型的なインビボ条件に合致する温度および湿度に維持されることを可能にする特別に設計された拡散チャンバーの中に置かれたヒトのエキソビボの死体皮膚または外科的皮膚を使用する(Franz,TJ、「Percutaneous absorption: on the relevance of in vitro data」、J Invest Derm、1975年、第64巻、190−195頁)。有限用量(例えば、4〜7mg/cm2)の製剤が皮膚の外部表面に付与され、皮膚の内面を浸すレザバー溶液の中に薬物が現れるまでの速度をモニターすることにより、薬物吸収が測定される。全吸収、吸収速度、および皮膚含有量を規定するデータを、このモデルで正確に決定することができる。この方法は、インビボでの経皮吸収の動力学を正確に予測するための歴史的前例を有する(Franz TJ、「The finite dose technique as a valid in vitro model for the study of percutaneous absorption in man」、Skin: Drug Application and Evaluation of Environmental Hazards、Current Problems in Dermatology、第7巻中、G.Simon、Z.Paster、M.Klingberg、M.Kaye(編)、Basel、Switzerland、S.Karger、1978、58−68頁)。
【0149】
C. 研究デザイン
2つの試験製剤および1つの参照製剤からのプロゲステロンの経皮吸収薬物動態を、プロゲステロンを含有する3つの局所ゲル製剤の単一施設、非盲検、ドナー内研究を使用して、ヒトの皮膚に対してインビトロ有限用量モデルを使用して検討した。各製剤を、インビトロでのフランツ有限用量皮膚モデルを使用して、3つの異なる皮膚ドナーに対して三重に試験した。
【0150】
D. 研究製品および投薬
参照製品:市販のProgestogel(1% プロゲステロン水性アルコールゲル)(Besins Healthcare)。
【0151】
【表10】

【0152】
投薬
5μL製剤/cm2/皮膚切片(ピペットによって投与し、ガラス棒を使用して擦った)。このガラス棒を、物質収支の説明責任のパーツとして分析のために、および付与した用量の補正のために、保持する。
【0153】
E. 研究手順
1. 試薬および基準の源
この研究で使用するすべての試薬は、分析試薬等級またはこれより上級である。
【0154】
2. レザバー培地
皮膚完全性試験については、基本培地はリン酸緩衝生理食塩水(pH 7.4±0.1)からなる。すべてのさらなる研究行為については、基本培地は、0.1% Volpo(非イオン性界面活性剤:Volpo(Oleth−20)は、水溶性が低い化合物の水溶性を高めることが知られている非イオン性界面活性剤である。このレザバー溶液中のVolpoは、経皮吸収の間の拡散シンク(diffusion sink)状態を確実にするであろうし、試験皮膚のバリア特性に影響を及ぼさないことが知られている)を含む0.1× PBSからなる。
【0155】
3. 拡散セルおよび皮膚の調製
皮膚疾患の明らかな徴候がない、ヒトのエキソビボの体幹の皮膚をこの研究で使用する。この皮膚は、採皮され、凍結保存され、水不浸透性のプラスチックの袋の中で密閉され、そして実験の日まで約−70℃で保存される。使用に先立って、この皮膚を約37℃の水の中で解凍し、次いで水道水の中で洗い、あらゆる付着した血液または他の物質を表面から取り除いた。
【0156】
単独のドナーからの皮膚を、公称1.0cm2のフランツ拡散セルに取り付くのに十分な大きさの、複数のより小さい切片へと切断する。真皮チャンバーをリン酸緩衝等張性生理食塩水(PBS)、pH 7.4±0.1のレザバー溶液で一杯に満たし、上皮チャンバーは、周囲の試験室環境に対して開いたままにする。次いでこのセルを、真皮レザバー溶液が約600RPMで磁気的に撹拌される拡散装置の中に置き、その温度を、32.0±1.0℃の皮膚表面温度を達成するように維持する。
【0157】
各皮膚切片の完全性を保証するために、試験製品の付与の前にトリチウム水に対するその透過性を測定する(Franz TJ、Lehman PA、「The use of water permeability as a means of validation for skin integrity in in vitro percutaneous absorption studies」、Abst. J Invest Dermatol、1990年、第94巻、525頁)。短い(0.5〜1時間)の平衡期間の後、O(NEN、マサチューセッツ州、ボストン、比放射能約0.5μCi/mL)を、露出した表面全体が覆われるように、点滴器によって皮膚の上面にわたって層にする(およそ200〜500μL)。5分後、O水層を取り除く。30分の時、レザバー溶液を集め、液体シンチレーション計数によって放射活性含有量について分析する。Oの吸収が1.56μL−equ/cm未満である皮膚試験片は、許容できると考えられる。
【0158】
4. 用量投与および試料採取
局所用試験製剤を皮膚切片に投与する前に、投与前の試料を集め、レザバー溶液を0.1% Volpoを含む0.1× PBSの新しい溶液で置き換える。
【0159】
その後、各試験製品を、同じドナーに由来する皮膚の三重の切片に付与する。投薬は、5μLの製剤/cmを送達するように設定した容積式ピペットを使用して実施し、付与した用量は、ガラス棒を使用して皮膚へと擦る。このガラス棒は、物質収支の説明責任のパーツとして分析のために保持する。
【0160】
投薬後の予め選択した時間(4、8、12、24、32、および48時間)に、レザバー溶液の全体を取り除き、新しいレザバー溶液で置き換え、所定の量のアリコートを、後の分析のために保存した。
【0161】
最後の試料を集めた後、表面を50:50 メタノール:水で2回(各回に0.5mLの体積)洗浄し、吸収されていない製剤を皮膚の表面から集める。この洗浄後、次いで、無傷の皮膚をチャンバーから取り出し、50:50 メタノール/水の中で抽出した。
【0162】
5. 分析実験室
プロゲステロンの定量を、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によって実施する。簡潔に言えば、HPLCは、ダイオードアレイUV検出器および、必要であれば、質量分析(MS)を具えるHewlett−Packard 1100 Series HPLCシステムで、最新の実験室方法を使用して行われる。無希釈の標品から毎日調製する外部標準曲線を使用して、ピーク面積を濃度へと数値化する。収集日にアッセイしない試料は、−20℃以下で保存する。
【0163】
F. 分析および報告
1. 検討パラメータ
以下のパラメータを算出する:
a)全吸収(チャンバーから採取したすべてのレザバー溶液の合計)
b)研究期間にわたる浸透の速度および程度
c)表面洗液および皮膚の内容物。
【0164】
2. データ評価
a)いずれかの試料がLLD(検出下限)未満である場合、その試料は、非データ値として扱ってもよい。研究者の判断で、LLQ(定量下限)未満のすべての値は、ゼロ値、または鍵となるパラメータを算出する目的のために測定した実際の値として、宣言されてもよい。
b)外れ値と疑われるものは、DeanおよびDixonの外れ値検定を使用して確認する。研究者の判断で、外れ値と宣言された値は、データの全体の総和から除外されてもよい(しかし、本文またはデータ表にその旨の記載がされるであろう)。
c)チャンバー内で、与えられた時間点での値が非データ値として宣言されたか、または他の理由で欠落している場合、その時間点の値は、関連するパラメータを算出するための補間値で置き換えることができる。この補間値は、以下のようにして、隣り合う値を結ぶ線上で算出されることになる:
●3点が与えられ:(T1、A)、(T2、B)および(T3、C)、(B)が欠落しているとして、
●ここでT=時間およびA−C=測定されたデータ値であり、
●推定されるB=A−[((A−C)/|T1−T3|)×(|T1−T2|)]
【0165】
3. 統計的評価
ドナー内の反復された結果を平均し、標準偏差を各々の鍵となるパラメータについて算出する。次にドナー内平均を集め、ドナー集団間平均およびその標準誤差を算出する。試験対象(test article)間の差を、スチューデントのt−検定を使用して評価する。
【0166】
G. 結果
結果はμg/cm単位である。
【表11】

【0167】
1%プロゲステロンの製剤は、同じ濃度の活性物(1%プロゲステロン)を有する市販のProgestogel製剤が成し遂げるのと比べて、4倍を超える大きさの、レザバー区画への有効成分の送達を成し遂げる。
【0168】
3%プロゲステロンの製剤は、48時間にわたって1%製剤よりも少ない活性物しかレザバーに送達しないが、はるかに高い量の薬物を皮膚に充填し(31.7μg 対 3.9μg)、これにより、より長い時間にわたって、皮膚からレザバーへの活性物の放出が予測される。
【0169】
図1は、試験した3つの製剤についての浸透プロファイルを図示する。
【0170】
実施例6:フランツヒト皮膚有限用量モデルを使用するエストラジオールの経皮吸収の評価
実施例5に記載したプロトコルと同じプロトコルに従うが、下記の点が異なる。
【0171】
各々が2% オレイン酸、2% オレイン酸エチル、および5% プロピレングリコールを有する0.36% エストラジオールを含有する4つの異なるゲル製剤を試験した。製剤の変動要素(例えば、バッファーおよびゲル化剤)を表6−1に提示する。48時間後の累積的な薬物浸透は1.03〜1.77μgの範囲であり、最大送達は8〜20時間に起こった(表6−3を参照)。これらの結果を、下記の表6−3で、0.06% エストラジオールゲルの2つのロット(1つのロットはこれらの実験のために調製したものであり、1つは、市販の製品の試料である。0.06% エストラジオールゲル製剤の組成については表6−2を参照)についての結果と比較する。0.06% エストラジオールゲル製剤では、48時間後の薬物の累積的浸透は約0.07μgであり、最大送達は8時間後に起こった。従って、エストラジオール濃度の6倍上昇(0.06%から0.36%へ)が、累積的な薬物送達の15〜25倍上昇を生じた。これから、浸透の増大が濃度の上昇だけに基づく可能性は否定され、浸透の増大は製剤設計によっても影響を受けたに違いないということが結論できる。
【0172】
【表12】

【表13】

【表14】

【0173】
これらの結果は、製剤CがEstrogel(登録商標)製剤よりも約25倍大きい最大送達を与えたことを示す。その後、製剤Cをより低いエストラジオール濃度で検討し、用量反応を判定した。結果(図2)は、送達された薬物の量は、付与したエストラジオールの濃度の上昇とともに増加したということを示す。最高濃度(0.36%)で得られた結果は、この実施例で得たデータ(表6−3、製剤C)とよく一致する。加えて、Estrogel(登録商標)(0.06% エストラジオール)について得た値は、これら2つの検討の間で非常によく一致し、これらの信頼性をさらに支持する。
【0174】
また、図2に示す結果は、だいたい等しいエストラジオール濃度(0.07% 対 0.06%)においてさえも、新製剤(C)はEstrogel(登録商標) 製剤よりも約10倍多い薬物を送達したということも示す。従って、本願明細書に記載される組成物によって、10倍少ない付与量で、例えば0.07%のエストラジオールを含有する製剤Cを用いて、既存の市販の経皮ゲル製品と等しい用量を送達することが可能になる。これは、等しい用量を与えるためにはるかに少ない製品しか必要としないことに起因する安全性の優位点、規制面での優位点および費用削減を含めた著しい優位点を表す。例えば、規制当局は、治療上の有効性のために必要とされる活性剤の最小量しか含有しない製品の開発を奨励することが多い。
【0175】
実施例7:フランツヒト皮膚有限用量モデルを使用するエストラジオールの経皮吸収に対する製剤の影響の評価
本発明の新しいゲル製剤における活性物の経皮吸収に対する浸透促進剤および共溶媒の影響を検討するために、2段階の、統計的に設計した実験を行った。
【0176】
第1段階では、送達される活性物の全量に対する、エストラジオール濃度と一緒に、オレイン酸および共溶媒(プロピレングリコール)濃度を変えることの影響を検討した。
【0177】
第2段階では、送達される活性物の量および送達の時間プロファイルに対する、オレイン酸エチルおよびエストラジオール濃度を変えることの影響を検討した。
【0178】
「Design−Expert」統計ソフトウェア(www.statease.comでStatEaseから入手できる)を使用して、この検討で使用する実験データ点を生成した。
【0179】
実施例5に記載したプロトコルと同じプロトコルに従うが、下記の点が異なる。
【0180】
A. 検討の第1段階
第1段階について、混合物構成成分としてのオレイン酸およびプロピレングリコールと、ならびに数値因子(プロセス)としてのエストラジオールと組み合わせたD−最適計画を使用する。オレイン酸およびプロピレングリコール濃度を、それら2つの濃度の合計が一定に留まりかつ7%に等しいように変え、従って製剤間の潜在的な溶解度差が最小になる。
【0181】
下記の表は、調製して、2人の異なるドナーからの試料に対して三重に試験する製剤を要約する。加えて各製剤は、72%のエタノール、2%のオレイン酸エチルおよび2%のPemulen TR−1を含有していた。
【表15】

加えて、以下の工程を実施する。
【0182】
効力評価
最終の製剤のエストラジオール効力は、HPLC/UVによって三重に測定することができる。効力は、付与した用量の中のエストラジオールの質量を算出するために(w/v)として算出することができ、このため、付与した用量の吸収された百分率を算出することができる。また、上記の表に示した調製した製剤の目標効力と比較するために、効力は、密度について補正して、(w/w)として算出することもできる。この検討について許容できるためには、エストラジオール効力は、±5.0%以内になければならない。このデータ解析では、各製剤の実際のエストラジオール濃度を使用する。
【0183】
製剤調製:
1. エタノールおよびプロピレングリコールを加え、均一になるまで混合する。
2. エストラジオールをゆっくり加え、完全に溶解するまで混合する。
3. オレイン酸を加え、均一になるまで混合する。
4. オレイン酸エチルを加え、均一になるまで混合する。
5. Pemulen TR−1をゆっくり加え、完全に水和されるまで十分に混合する。
6. 炭酸塩バッファー溶液を上記のゲルマトリクスにゆっくり加え、均一になるまで混合する。
【0184】
B. 検討の第2段階
第2段階について、中心複合計画を伴う応答曲面計画を使用する。
【0185】
検討する対象の製剤を以下の表に示すが、これらには、72%のエタノール、2%のPemulen TR−1、2%のオレイン酸、および5%のプロピレングリコールが加えられている。
【表16】

【0186】
実験手順の残部は、本検討の第1段階と同じである。
【0187】
C. 本検討の第1段階からの結果
「効力評価」のパラグラフのもとで上記のセクションA.に記載したように、各製剤を、その実際のエストラジオール濃度についてチェックする。測定された値を下記の表に示し、データ解析で使用する。
【表17】

【0188】
全浸透データ(48時間後にレザバー区画に浸透していた活性物の量)は、分析を、当該計画の混合およびプロセスのパートのための二次モデルを用いて統計的に有意に許容するのに十分な質にあった。
【0189】
図3は、得られた応答曲面を図示する。プロピレングリコール(グラフの前側)がオレイン酸(グラフの後側)によって徐々に置き換えられるにつれて、エストラジオール濃度の関数としての吸収の変化は、釣鐘型の曲線から平坦な一定の曲線へと移る。
【0190】
釣鐘型の曲線は、例えば、高プロピレングリコールおよび低オレイン酸濃度を有する製剤の場合のように、製剤中の治療活性剤の濃度に対する吸収の強い依存性から生じる。
【0191】
治療活性剤の濃度に対するこの依存性は望ましくはない。なぜなら、より大きい範囲の活性剤濃度にわたって効率的な送達を成し遂げることができる組成物が、一般に、規制および商業の観点から好ましいからである。
【0192】
オレイン酸/プロピレングリコール軸の他端では、すなわち高オレイン酸/低プロピレングリコール領域では、エストラジオール濃度に対する吸収の依存性は観察されず、全吸収は、より高い絶対レベルに到達し、これは、浸透促進剤としての脂肪酸の効率に起因する可能性が最も高い。しかしながら、0.26および0.5%エストラジオールで行った反復された結果について図3で見られるように、これらの実験データ点の再現性はよくはない。この再現性の欠如は、同じデータセットについての標準誤差のグラフ(示さず。誤差は、オレイン酸濃度の上昇とともに増大する)を見ることにより、また、2人の異なるドナーに対して3つの反復された結果からなっていた各実験点についての個々のデータを見ることによっても、確認される。1人のドナーの試料から他のドナーの試料への、および同じドナー試料に対する反復された結果の間でさえの、吸収のこのような発散は、この系の不安定性を示す。実際、いくつかの実験は大量の活性物を送達するが、他方で、他の実験は、すべての実験パラメータが一定に保たれているにもかかわらず、著しく少ない活性物しか送達しない。このような挙動は、医薬組成物においては望ましくない。なぜなら、臨床に移された時、これらの製剤は、大きい患者ごとのばらつきを、または付与ごとの患者内でのばらつきさえも与える可能性があるからである。これらの理由から、本検討で検討する最高および最低のプロピレングリコール/オレイン酸濃度を含まない脂肪酸および共溶媒濃度の範囲を選択することが有利である可能性がある。
【0193】
この点をさらに説明すると、図4は、図3に三次元的に図示したデータの上から見下ろした図を表す。約2%オレイン酸および5%プロピレングリコールを中心とする中央領域は、たとえ活性物の最高送達を与えなくとも、データ点間で強い再現性を成し遂げつつ(より高濃度のオレイン酸を用いて得たデータとは反対)、活性剤濃度に対する依存性(より高濃度のプロピレングリコールについて見られる問題)が最小で吸収を呈する組成物にとって最も望ましいようである。
【0194】
それゆえ、特定の実施形態では、脂肪酸浸透促進剤は、当該組成物の総重量に基づき、0.01重量%〜5重量%(0.05重量%〜3.5重量%を含む)、例えば1重量%〜3重量%の量で存在する。
【0195】
加えて、特定の実施形態では、共溶媒(プロピレングリコールなど)は、当該組成物の総重量に基づき、0.01重量%〜7重量%(3重量%〜7重量%を含む)、例えば4重量%〜6重量%の量で存在する。
【0196】
D. 本検討の第2段階からの結果
図5および図6は、48時間にわたる全吸収に対するオレイン酸エチルおよびエストラジオールの濃度の影響を図示する。エストラジオール濃度の変化は、対応するオレイン酸およびプロピレングリコールの濃度で本検討の第1段階ですでに図示したように、釣鐘型の様式で吸収に影響を及ぼす。オレイン酸エチルの添加は、吸収の全量を増大させるという効果、また、最適のエストラジオール濃度(すなわち、最大吸収に対応するエストラジオール濃度)をより高い値へとシフトさせるという効果も有する。この現象は、図6で最も明瞭に見られる。
【0197】
しかしながら、実施例1〜4ですでに説明したように、エステル(オレイン酸エチル)の主たる効果は、送達プロファイルを経時的に改変して、徐放性効果をもたらすことである。この現象を図示するために、試験した11種の組成物についての吸収フラックスの時間的経過を表すグラフを、図7〜9に示すように、3つのカテゴリーにグループ分けした。
【0198】
図7は、約20時間後にフラックスの上昇を開始し、用量が経時的に逐次漸増するプロファイルを導く、第1の群についてのフラックスプロファイルを示す。これは、付与の時間内の強い送達が求められ、そのあと薬物の一定の放出のプラトーが続く製品にとっては望ましくない。図7に図示した3つのデータ点は、すべて、図6からのグラフの中の「低オレイン酸エチル」−「高エストラジオール」の隅に属する。
【0199】
図8は、第2の群のフラックスプロファイルを提示するが、この群では、投与後6時間で起こるピークの後、フラックスは減少する。このプロファイルは、投与後最初の数時間内の速くおよび効率的な送達を成し遂げるが、より長期間、すなわち24時間またはさらには48時間にわたる一定の放出を欠く、いくつかの先行技術の組成物に典型的である。図8に図示した3つのデータ点は、図6からのグラフの中で、Y=Xの線に沿っている。
【0200】
最後に、図9は、早期の、迅速なフラックスの上昇、そしてその後の2日間にわたる一定のフラックスレベル、すなわち、徐放性、貯蔵場所効果を有する実験データ点のプロファイルを提示する。このタイプのフラックスは、薬物の、治療上の血中濃度の迅速な達成と持続される血中濃度の両方が所望される多くの療法において望ましい。このタイプのプロファイルを成し遂げる組成物は、図6からのグラフの「高オレイン酸エチル」−「低エストラジオール」半分(換言すれば、Y=Xの線の上側)にある、本発明に係る組成物である。
【0201】
経時的なフラックスプロファイルのこの定性分析は、脂肪酸エステルが活性剤よりも多量に存在するとき、例えば、脂肪酸エステルが、重量:重量基準で、活性剤の量の少なくとも4倍多い量で存在するとき、活性剤の徐放性は、満足できる態様で成し遂げられるということを示す。
【0202】
特に、より多くのエステルが当該組成物の中に存在するほど、貯蔵場所効果はより良好であると思われる。この因子は、できるだけ多くの脂肪酸エステルを組成物の中に含ませようとするべきであるということを示唆する。しかしながら、組成物中の脂肪酸エステルの溶解度によって上限が課される。一例として、図10は、
0.24% エストラジオール;
5% プロピレングリコール;および
2% オレイン酸
必要量の水
を用いて作製した製剤の中に、室温で、エタノール(96% v/v)濃度の関数として溶解することができるオレイン酸エチルの量を図示する。図10および下記の表から、72%エタノールを含む製剤では、最大で2.2%のオレイン酸エチルが溶解することができるということが明らかである。
【表18】

【0203】
実施例8:皮膚感作研究
これまでの研究で、本願明細書に記載するいくつかの実施形態で使用する量、例えば約5%(w/w)での、高い量の共溶媒、プロピレングリコールなどを含む経皮組成物に関する、皮膚刺激作用の問題が報告されている。本願明細書に記載される組成物が刺激性であり、従っておそらくは幅広い臨床使用に適しないのではないかを判定するために、モルモットおよびウサギにおいて、以下の製剤を使用して皮膚感作研究を行う:
【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【0204】
これらの研究を行い、動物モデルにおいて局所的なパッチ付与を介して皮膚感作反応(アレルギー性接触皮膚炎)を引き起こすかまたは誘発する、試験組成物、K36活性物およびP36活性物の可能性を評価する。
【0205】
モルモット:当該組成物を、閉塞的な局所パッチおよびヒルトップチャンバー(Hilltop Chamber)チャンバー付与によって、Crl:HA(Albino Hartley)モルモットに付与する。誘導段階の間、5匹の動物/性別/群の3つの処置群に、K36プラセボ、P36プラセボ、または陽性対照、ヘキシルけい皮アルデヒド(HCA 100%)を投与し、他方で、10匹の動物/性別/群の残りの2つの処置群に試験組成物、K36活性物またはP36活性物を投与する。誘発段階の間、各プラセボ群にそれぞれの試験組成物を投与し、陽性対照に鉱油中の50% HCA(HCA 50%)を投与する。両方の段階の間、すべての群に、プラセボ、陽性対照、または試験組成物を皮膚への付与によって、0.4mL/用量で投与する。誘導段階の間、プラセボ、陽性対照および試験組成物を1、8および15日目に週1回で3週間投与し、次いで2週間の休薬期間を設け、誘発段階の間は、陽性対照および試験対象を29日目に1回投与する。
【0206】
本研究の継続期間の間、罹患率、死亡率、損傷、ならびに食餌および水の利用能についての観察を、すべての動物について毎日2回行う。加えて、無作為化の前(−7日目)、各試験組成物投与前(15日目は例外で、アンラッピング(unwrapping)後に、投薬後およそ6時間で体重を記録した)、および終了の前日(31日目)にすべての動物についての体重を測定し、記録する。誘発段階の間だけ、パッチの除去からおよそ24および48時間(投薬後)に、皮膚感作についての皮膚刺激作用の採点を行う。研究の終わりに、これらの動物を、二酸化炭素の吸入によって安楽死させる。
【0207】
誘発段階の間に投与後24時間および48時間で記録した皮膚刺激作用スコアは、誘導用量の投与後およびその後の2週間の休薬期間後に感作は起こらないということを示した。K36活性物およびP36活性物群の刺激作用スコアは、K36プラセボおよびP36プラセボ群について記録したスコアにほぼ等しいか、またはK36プラセボおよびP36プラセボ群について記録したスコアよりも低かった。加えて、K36活性物およびP36活性物においては、それぞれのプラセボ群と比較したときに、体重増加の低下が観察された。これらのより低い体重増加は、試験対象に関連すると考えられたが有害であるとは考えなかった。
【0208】
ウサギ:この研究は、試験組成物の潜在的な皮膚刺激効果および/または腐食効果を評価するために行う。3匹の雌のNew Zealand White Hra:(NZW)SPF白色ウサギの1つの処置群に、活性物製剤K36およびP36、ならびにそれらのそれぞれのプラセボを、4つの背中の部位のうちの1つに、0.5mL/部位の用量レベルで投与する。プラセボおよび試験対象を、1日1回、3日連続で皮膚への付与を介して各動物のそれぞれの試験部位に投与する。
【0209】
罹患率、死亡率、損傷、ならびに食餌および水の利用能についての観察を、すべての動物について毎日2回行う。体重を、投与前に測定し記録する。1日目および2日目に、投与後30〜60分以内、ならびに4時間および24時間に、皮膚刺激作用スコアを行う。3日目に、投与後30〜60分以内、および4、24、48、および72時間で試験部位を採点する。付加的な刺激作用スコアを、8日目および15日目に行い、観察される効果の可逆性または不可逆性を完全に評価する。研究の終わりに、すべての動物を安楽死させ、さらなる評価をせず屠殺体を捨てる。
【0210】
最小〜軽度の紅斑および浮腫を、K36およびP36のプラセボおよび活性物製剤の両方について観察した。P36プラセボおよびP36活性物は、K36プラセボおよびK36活性物よりもわずかにより多くの刺激作用を引き起こすようであったが、これらの差は非常に小さかった。体重のわずかの減少がすべての3匹の動物について観察され、これは試験対象に関連すると考えられたが有害であるとは考えなかった。
【0211】
これらの研究は、約5%プロピレングリコールを含む本願明細書に記載される組成物は刺激性ではなく、顕著な皮膚感作効果を生じないということを実証する。従って、これらの因子は、本願明細書に記載される組成物の臨床使用を限定しないであろう。
【0212】
実施例9:ウサギにおける21日間の経皮毒性研究
この研究は、連続21日間、1日1回、皮膚への付与を介して、10匹の雄および10匹の雌のNew Zealand White Hra:(NZW)SPF白色ウサギの2つの処置群に投与したときの、上記の試験組成物の2つの製剤、K36活性物およびP36活性物、ならびにそれらのそれぞれのプラセボの潜在的な毒性を評価するために行う。
【0213】
K36活性物およびP36活性物の両方を、0.36%エストラジオールの活性濃度で製剤化する。試験対象を、およそ0.85〜1.11mLの投与量で投与する。10匹の動物/性別の2つのさらなる群が対照としての役割を果たすことになり、プラセボ、K36プラセボおよびP36プラセボを投与される。
【0214】
罹患率、死亡率、損傷、ならびに食餌および水の利用能についての観察を、すべての動物について毎日2回行う。臨床観察を毎週行う。投薬の第1週の間は毎日、その後は毎週、試験部位を紅斑および浮腫について評価する。毎週、体重を測定し記録する。
【0215】
毎日、食餌消費量を測定し記録する。試験前および最後の剖検の前に、臨床病理評価のための血液試料および尿試料をすべての動物から集める。研究の終わりに、剖検を実施し、臓器重量を記録する。P36活性物およびP36プラセボを投与された動物について、選択した組織を顕微鏡によって調べる。研究した他の2つの群由来の組織は、起こりうる将来の参照のために保持する。
【0216】
体重における試験組成物に関連する変化はなく、試験組成物に関連する明瞭な臨床知見もなかった。可能性がある試験組成物に関連する臨床知見としては、食欲不振、攻撃行動、および啼鳴が挙げられた。これらの知見は、K36活性物またはP36活性物のいずれかで処置した1群あたり1性別あたり1匹の動物に限定されており、いずれのプラセボ群でも観察されなかった。
【0217】
非常にわずかの(ほとんど認識できない)紅斑を、K36活性物およびP36活性物において、それぞれのプラセボ群における頻度と同程度またはより低い頻度で、研究全体を通して散発的に観察した。これらの知見は、主に媒体に関係し試験組成物に関連しないと考えた。
【0218】
それぞれのプラセボ群と比較したとき、K36活性物およびP36活性物の群の両方において、試験組成物に関連するが、有害ではない、食餌消費量の低下を観察した。雄の食餌消費量はより大きく影響を受け(18.4%〜19.2%)、しばしば統計的に有意であったが、これに対し、雌の食餌消費量は、中程度に影響を受け(6.5%〜11.1%)、時おり統計的に有意であるだけであった。
【0219】
血液学パラメータにおける試験組成物に関連する変化としては、K36活性物およびP36活性物投与の群の両方における、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリット、網状赤血球、および血小板の中程度の減少が挙げられた。全白血球およびリンパ球もこれらの群で減少した。
【0220】
臨床化学パラメータにおける試験組成物に関連する変化としては、K36活性物およびP36活性物の群の両方におけるアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、アラニンアミノ基転移酵素(ALT)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、ソルビトールデヒドロゲナーゼ(SDH)、尿素窒素、およびクレアチニンの増加、ならびにトリグリセリドの減少が挙げられた。肝臓酵素の増加は、K36を投与された雄よりも、P36を投与された雄においてわずかに大きい傾向があった。尿素窒素およびクレアチニンの増加は非常に小さかったため、これは、二次的なものであった可能性がある。
【0221】
血液凝固または尿検査パラメータにおける試験組成物に関連する変化はなかった。
【0222】
この研究において、雄における試験組成物に関連する巨視的な知見はなかった。P36活性物群の中の雌における試験組成物に関連する巨視的な観察としては、3匹の動物における卵管の嚢胞、および1匹の動物における、子宮および子宮頸部が腹壁に接着する腹腔接着が挙げられた。子宮角および子宮体の赤色変色という試験組成物に関連する可能性が高い巨視的な観察を、K36活性物群の中の1匹の雌のウサギで行った。顕微鏡分析は実施していないが、この観察は、P36活性物の雌のウサギで見られた病変と類似の病変と相関するという可能性が高い。
【0223】
臓器重量における試験組成物に関連する統計的に有意な変化は、P36活性物およびK36活性物の群の両方において、雄および雌の両方の肝臓、脾臓および胸腺の重量で起こり、そしてP36活性物およびK36活性物の群の両方からの雌の子宮頸部を含めた子宮の重量において起こった。
【0224】
試験組成物に関連する微視的な変化は、雄および雌の肝臓、脾臓および胸腺内で、雄の前立腺および精嚢において、ならびに雌の卵管、子宮頸部を含めた子宮および膣において起こった。
【0225】
肝臓内では、肝細胞内グリコーゲン貯蔵の広汎性の欠乏があった。加えて、最小〜軽度の胆管過形成があった。エストロゲンは胆管細胞の増殖を刺激することが示されている(LeSage,G.、S.GlaserおよびG.Alpini、「Regulation of Cholangiocyte Proliferation」、Liver、2001年、第21巻、73−80頁)ので、胆管過形成は、直接の試験対象効果である可能性があった。
【0226】
脾臓内では、時おり赤血球貪食の増大、着色した(ヘモジデリンを含んだ)マクロファージの増加を、および稀に赤脾髄の洞様毛細血管の拡張を伴う網内系マクロファージの最小〜中程度の過形成があった。加えて、処置した動物における脾リンパポピュレーション(splenic lymphoid population)の最小〜中程度の欠乏があった。これらの変化は、直接の試験組成物効果である可能性がある。なぜなら、エストロゲンは、ラットにおいて、脾臓の細網内皮細胞を刺激して、食作用の増加を生じることが示されており(Steven,W.M.およびT.Snook、「The Stimulatory Effects of Diethylstilbesterol and Diethylstilbesterol Diphosphate on the Reticuloendothelial Cells of the Rat Spleen」、 American Journal of Anatomy、1975年、第144巻、第3号、339−359頁)、また、高レベルのエストロゲンは、ラットの脾臓内でT細胞集団およびB細胞集団の両方の減少を引き起こすことが示されている(Burns−Naas,L.A.、B.J.MeadeおよびA.E.Munson、「Toxic Response of the Immune System」、 Cassarett & Doull’s Toxicology: The Basic Science of Poisons、Curtis D. Klaassen編、New York:McGraw−Hill、2001年、419−470頁)からである。
【0227】
胸腺の変化は、軽度〜重篤な全般的なリンパ欠乏からなっていた。エストロゲンは、胸腺の欠乏を引き起こすことが示されている(Burns−Naas、前出)。
【0228】
処置した動物の前立腺および精嚢内の微視的な変化としては、これらの腺の両方と関連する平滑筋の肥大が挙げられ、いくつかの動物は、上皮下の間質が前立腺における腺内中隔(intraglandular septa)の肥厚を生じる、増加した線維増殖を有していた。これらの間質の変化に加えて、腺上皮の成熟異常または退縮があり、これは、上皮が、管腔の直径の増大などの腺の他の特徴に比べて低下した成熟度(増加した不成熟度)にあるということを意味していた。
【0229】
処置した雌の範囲内で、軽度〜重篤な膣内上皮の粘液分泌および軽度〜中程度の膣内平滑筋の肥大があった。同様の知見は、子宮の子宮頸部領域の上皮に存在した。エストロゲン化合物に対する一般的反応である脱落膜反応(Zook,B.C.、O.A.Janne、A.A.Abraham、およびH.A.Nash、「The Development and Regression of Deciduosarcomas and Other Lesions Caused by Estrogens and Progestins in Rabbits」、Toxicologic Pathology、2001年、第29巻、第4号、411−416頁;Jaane,O.A.、B.C. Zook、A.K.Didolkar、K.Sundaram、およびH.A.Nash、「The Roles of Estrogen and Progestin in Producing Deciduosarcoma and Other Lesions in the Rabbit」、 Toxicologic Pathology、2001年、第29巻、第4号、417−421頁)が、少なくとも最小程度に、P36活性物群の雌由来のすべての子宮試料および2つの脾臓において見られた。この脱落膜反応は、子宮内膜下の間質内および子宮内の血管内の両方で起こる。重篤に影響を受けた血管を有するウサギでは、血液供給の破壊に起因する隣接する子宮組織の虚血性壊死が伴った。この壊死は貫壁性であることがあり、1匹のウサギでは、子宮の腹部体表での線維症および腹腔の壁側表面への接着を生じた。
【0230】
同じく雌で、P36活性物群の動物のうちの3匹は卵管に嚢胞を有していた。嚢胞は、種々の雌の生殖器においては珍しいものではなく、そのため、これらの嚢胞は発生異常を表しているという可能性があるが、しかしながら、3匹のP36活性物群の雌にこれらの嚢胞が存在し対照の動物に存在しないということは、この変化は試験対象の投与に関連する可能性があるということを示唆する。
【0231】
K36活性物とP36活性物処置群との間には有意差はなかった。
【0232】
一般に、これらの知見は、エストロゲンを含有する試験組成物の投与に共通に付随するため、本願明細書に記載される特定の製剤の潜在的な臨床上の有用性を害することはない。
【0233】
実施例10:12人の健康なヒトの男性対象における用量逐次漸増試験
12人の健康な男性対象が、2つの処置のうちの1つを1日1回、3日間、そして投与と投与との間に11日間の休薬期間を置いて与えられるように計画した、複数用量、非盲検、用量逐次漸増試験を設計した。
【0234】
このフェーズ1の試験の目的は、健康な男性ボランティアにおける0.25gおよび1.00gの、0.07%経皮エストラジオールゲルの複数回投与の安全性および薬物動態(PK)プロファイルを評価することであった。使用した経皮ゲルは以下の製剤を有していた:
【表23】

12人の健康な対象を登録し、2つの非盲検の処置期間に参加させた。スクリーニングプロセスを成功裏に完了した対象は、1日目、各処置期間の最初の採血のおよそ1〜2時間前に研究センターに入った。処置期間Aについて、0.25gの0.07%ゲルが1日1回、3日間投与されることになっていた。処置期間Bの間、1.0gの0.07%ゲルが1日1回、3日間投与されることになっていた。投薬期間は、少なくとも11日間の休薬期間によって隔てられることになっていた。
【0235】
診断および主な選択基準:健康な肥満度指数(BMI)18〜30kg/m2(端値を含む)、および最低体重50kg(110ポンド)の成人男性のボランティア、18〜45歳。
【0236】
結果:
【表24】

【0237】
結論:
エストラジオールの平均ベースライン濃度は、14.3pg/mL〜21.7pg/mLの範囲であった。0.25gのゲルの投与後、エストラジオール濃度は、ベースラインのわずかに上へと上昇した(最高平均血漿中濃度=25.6pg/mL)。1.00gのゲルの投与後、エストラジオール濃度はおよそ2〜3倍増加した(最高平均血漿中濃度=54.3pg/mL)。一般に、エストラジオールの濃度は、0.25gのゲルについては投与後およそ12時間でベースラインレベルに戻り;1.00gのゲルについては、エストラジオールの濃度は、およそ96時間でベースラインレベルに戻った。
【0238】
一般に、1.00gについてのエストラジオールTmaxは、0.25gについてのエストラジオールTmaxよりも短かった。エストラジオールTmaxは、ゲルの投与後、およそ3時間(0.25g、第3の投薬間隔)と13時間(0.25g、第1の投薬間隔)との間で観察された。
【0239】
各用量群の中で、各24時間投薬間隔についてのAUC(AUC0−24)についての平均推定値は同等であり、これは、エストラジオールの有意な蓄積はないことを示す。ゲル用量の増加に対して、これに比例する増加よりも少ない、エストラジオールへの曝露の増加があった。
【0240】
ゲル用量の4.00倍増加後のエストラジオールへの全身曝露のピークおよびエストラジオールへの全身曝露全体の増加は、Cmax0−120に基づいて1.95倍、およびAUC0−120に基づいて1.26倍であった。
【0241】
エストラジオールCmax0−120およびAUC0−120についての比(0.25g:1.00g)(90%信頼間隔)は、それぞれ、47.89%(40.17%、57.10%)および80.01%(70.45%、90.88%)であった。
【0242】
実施例11:12の健康なヒトの男性対象における用量逐次漸増試験
このフェーズ1の試験の目的は、健康な男性ボランティアにおける経皮エストラジオールゲルの2つの異なる製剤の薬物動態(PK)プロファイルを比較することであった。この試験の二次的な目的は、有害事象の発生率および重症度を評価することであった。
【0243】
これは、2つの異なる製剤を健康な男性ボランティアに経皮投与した後のエストラジオールの薬物動態を評価するために2パートで行われた複数用量、非盲検、2処置試験であった。
【0244】
12人の健康な成人男性対象が、2つの無作為化された処置期間に参加した。各処置期間の間、1.25gの0.06% EstroGel(登録商標) (エストラジオールゲル)または1.0gの本発明に係る0.07%エストラジオールゲル(下記の表の製剤)のいずれかが、対象の上腕に、1日1回、5日間投与された。対象は、第1の処置期間の間は処置コードAまたはBのいずれか、および第2の処置期間の間は反対の処置コードを与えられるように、無作為化された。処置期間1および2は、3日間の休薬期間によって隔てられた。
【0245】
各処置期間における最後の試験ゲルの付与の後に少なくとも24時間、対象は、採血のために研究センターに拘束されて留まり、7日目および8日目に採血および他の試験手順のために研究センターに戻った。
【表25】

【表26】

【0246】
各処置期間の間、血液試料を、各投与の前、および各投与の後、投与後72時間までの選択した時間に、エストラジオールの測定のために集めた。スクリーニングおよび処置後の安全性評価を除く薬物動態評価のために、各対象から102個までの血液試料(約510mLの全血)を得た。試料の汚染を防止するために、期間1および2の間、すべての血液試料を、試験ゲルが投与されている腕とは反対側の腕から採取した。
【0247】
次の処置期間への進行に先立ち、投薬開始の前に、安全性データ(有害事象、臨床検査)を再検討する。
【0248】
すべての処置期間について、対象は、試験ゲルの各付与のおよそ1時間前に、シャワーを浴びる/入浴することを要求された。シャワーを浴びること/入浴することという特典は、試験ゲルの次の付与の1時間前まで一時停止された。各用量は、指定された付与部位に局所的に付与された。投薬後は、投与後2時間まで、食事は許されなかった。水は、投与後1時間は差し控えられたが、その後は、拘束期間の残り期間は、自由に許容された。対象は、各処置期間について、用量とほぼ同時に食事が提供され、すべての処置期間の間、同じメニューの選択が利用できた。浴室/手洗所の特典は、投薬後1時間は一時停止された。
【0249】
結果:
健康な男性ボランティアへの、0.7mgで1日1回×5日間の試験ゲルの局所的付与および1日1回×5日間のEstroGel 0.75mgの局所的付与の後のエストラジオールについての薬物動態パラメータの概要を、下記の表に提供する。
【表27】

【0250】
本願明細書に開示されるゲルがヒトでの臨床試験で試験された実施例10および11の両方が、当該製剤は安全で、かつ注目する薬物を系統的に患者へと送達する上で有効であるということを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面への局所投与のための徐放性医薬組成物であって、
1以上のステロイドを含む薬学的活性剤と、
前記医薬組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%の脂肪酸エステルと、
水と、
C2〜C6モノアルコールと、
脂肪酸と、
0.05重量%〜5重量%のゲル化剤と
を含み、前記組成物中の全活性剤に対する前記組成物中の前記脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは4:1〜20:1の範囲にある、組成物。
【請求項2】
共溶媒、好ましくはプロピレングリコールをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記共溶媒は、前記医薬組成物の総重量の0.01重量%〜7重量%、好ましくは3重量%〜7重量%の範囲の量で存在する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記脂肪酸エステルは、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸エチル、ドデカン酸エチル、リノール酸エチル、パルミトレイン酸エチル、イソステアリン酸エチルおよびリノレン酸エチルからなる群から選択される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸エステルはミリスチン酸イソプロピルである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記脂肪酸エステルはオレイン酸エチルである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記脂肪酸エステルは、前記組成物の中に配合された前記脂肪酸とアルコールとの反応から得られるであろうエステルである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記脂肪酸エステルは、前記組成物の中に配合された前記脂肪酸と前記組成物の中に配合された前記アルコールとの反応から得られるであろうエステルではない、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂肪酸エステルは、前記医薬組成物の総重量の0.05重量%〜2.4重量%、好ましくは0.1重量%〜2.2重量%の範囲の量で存在する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記脂肪酸は、好ましくはカプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、パルミトレイン酸、リノール酸およびリノレン酸からなる群から選択されるC8〜C22脂肪酸であり、より好ましくは前記脂肪酸はオレイン酸である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記脂肪酸は、前記医薬組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜3.5重量%、より好ましくは1.0重量%〜3.0重量%の範囲の量で存在する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
2%のオレイン酸エチルを前記脂肪酸エステルとして、2%のオレイン酸を前記脂肪酸として、および5%のプロピレングリコールを前記共溶媒として含む(すべては、前記医薬組成物の総重量の重量による)、請求項1から請求項4および請求項6から請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
0.3%のオレイン酸エチルを前記脂肪酸エステルとして、0.3%のオレイン酸を前記脂肪酸として、および0.75%のプロピレングリコールを前記共溶媒として含む(すべては、前記医薬組成物の総重量の重量による)、請求項1から請求項4および請求項6から請求項11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記薬学的活性剤は、エストロゲン、抗エストロゲン剤、アンドロゲン、抗アンドロゲン剤、およびプロゲスチンからなる群から選択される1以上のステロイドを含む、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記薬学的活性剤は、エストラジオールおよびプロゲステロンのうちの1以上から選択され、前記脂肪酸エステルはオレイン酸エチルである、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記薬学的活性剤は、テストステロンおよびジヒドロテストステロン(DHT)のうちの1以上から選択され、前記脂肪酸エステルは、オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルから選択される、請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記活性剤は、前記医薬組成物の総重量の0.01重量%〜5重量%の範囲の量で存在する、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記C2〜C6モノアルコールは、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、およびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましくは前記C2〜C6モノアルコールはエタノールである、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記C2〜C6モノアルコールは、前記医薬組成物の総重量の10重量%〜90重量%、好ましくは20重量%〜80重量%、より好ましくは45重量%〜75重量%の範囲の量で存在する、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
対象の皮膚を通して薬学的活性剤の徐放性を提供するための方法であって、前記方法は、前記対象の皮膚に医薬組成物を局所投与する工程を含み、前記医薬組成物は、
1以上のステロイドを含む薬学的活性剤と、
前記医薬組成物の総重量の0.1重量%〜20重量%の脂肪酸エステルと、
水と、
C2〜C6モノアルコールと、
脂肪酸と、
0.05重量%〜5重量%のゲル化剤と
を含み、
前記組成物中の前記全活性剤に対する前記組成物中の前記脂肪酸エステルの重量:重量比は少なくとも4:1 脂肪酸エステル:活性剤、好ましくは4:1〜20:1の範囲にある、方法。
【請求項21】
前記組成物は、請求項2から請求項19のいずれか1項に記載の組成物である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
皮膚を通しての前記薬学的活性剤の徐放性は、前記投与後少なくとも24時間、好ましくは前記投与後少なくとも36時間、より好ましくは前記投与後少なくとも48時間、観察される、請求項20または請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−508444(P2013−508444A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535814(P2012−535814)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066283
【国際公開番号】WO2011/051354
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512104100)
【Fターム(参考)】