活性炭収容ケース及び該ケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置
【課題】一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができ、設置スペースが限られた場所においても簡易に設置することが可能な活性炭収容ケース及びそのケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置を提供することを課題とする。
【解決手段】この発明の活性炭収容ケースは、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭の支持用ネットを有する活性炭収容ケースであって、前記側壁には該収容ケースの複数段積層を可能とする嵌合部が形成されるとともに、端面には外周気密状態に密封するためのシール部材が設けられ、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしたことを特徴とする。
【解決手段】この発明の活性炭収容ケースは、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭の支持用ネットを有する活性炭収容ケースであって、前記側壁には該収容ケースの複数段積層を可能とする嵌合部が形成されるとともに、端面には外周気密状態に密封するためのシール部材が設けられ、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、悪臭ガスの活性炭吸着法による脱臭に関し、詳細には活性炭を収容するケース及び該ケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水処理場、屎尿処理場、下水処理場などで発生する悪臭ガスから臭気成分を除去する方法として活性炭吸着法が知られている。活性炭吸着法を利用した脱臭装置として、例えば、廃棄物処理用の焼却炉で発生した排ガスを、集塵機で除塵した後、吸着剤としての活性炭が充填された吸着塔に通し、排ガス中のダイオキシン等の有害物質を活性炭に吸着させて除去した後、大気中に放出させるものがある。(例えば、特許文献1)
上記した従来の吸着塔(30)は、図12に示すように、角筒状の建物であって、その内部を上中下の3段のケース装入ゾーン(31)(32)(33)に分け、各装入ゾーン(31)(32)(33)に複数個の粒状活性炭収容ケース(34)を装入するものとしてある。そして、吸着塔(30)の下部に設けられた導入口から吸着塔(30)内に排ガスを導入して各ケース内の活性炭層を順次通過させ、悪臭成分を除去した後、吸着塔(30)の上部に設けられた排出口から排出するものとしている。
【0003】
ここで、悪臭成分を吸着除去する吸着剤としての活性炭の吸着力には寿命があるため、その吸着力が低下してきた場合には、新しい活性炭と交換する作業が必要となる。
【0004】
しかしながら、上記吸着塔(30)における粒状活性炭収容ケース(34)は大型であるため、その搬入、交換作業に際しては、ホイスト(35)によってケースを吊り下げ、ケースの下端部に設けられたローラ(36)をレール(37)上に転がして移動させる必要があり、非常に面倒であった。
【0005】
また、上記吸着塔(30)は、廃棄物処理場などで使用される大型な設備としているため、その建設には多大な時間と労力、費用が必要であり、また設置スペースが限られているビルやマンションのディスポーザーシステムなどから発生する悪臭ガスを除去する脱臭装置として利用するには不向きであった。
【0006】
さらに、上記のような大型な吸着塔(30)は、持ち運んで利用することができないため、建設現場や工事現場などにおいて、期間限定で使用する脱臭装置として利用するには不向きであった。
【特許文献1】特開平11−165020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができ、設置スペースが限られた場所においても簡易に設置することが可能な活性炭収容ケース及びそのケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明)
この発明の活性炭収容ケースは、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭の支持用ネットを有する活性炭収容ケースであって、前記側壁には該収容ケースの複数段積層を可能とする嵌合部が形成されるとともに、端面には外周気密状態に密封するためのシール部材が設けられ、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしたことを特徴とする。
【0009】
このような活性炭収容ケースでは、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしているので一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができる。
【0010】
(請求項2記載の発明)
この発明の上向流活性炭吸着塔は、請求項1記載の活性炭収容ケースの下方に脱臭されるべき悪臭ガスを導くためのガス導入路を設けるとともに、前記活性炭収容ケースの上方に脱臭済みガスを外部へ排出するためのガス排出路を設けたことを特徴とする。
【0011】
この明細書において、上記活性炭収容ケースの下方に設けられたガス導入路から悪臭ガスを導入して各ケース内の活性炭層を順次通過させ、悪臭成分を除去した後、収容ケースの上方に設けられたガス排出路から排出するようにしたものを、全体として上向流活性炭吸着塔とする。
【0012】
(請求項3記載の発明)
この発明の上向流活性炭吸着塔は、請求項2記載の上向流活性炭吸着塔であって、前記ガス導入路とガス排出路の間に、前記活性炭収容ケースの押さえ部材が架設されていることを特徴とする。
【0013】
(請求項4記載の発明)
この発明の脱臭装置は、請求項3記載の上向流活性炭吸着塔と、悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置とからなることを特徴とする。
【0014】
この明細書において、上記した上向流活性炭吸着塔と、当該吸着塔に導入される悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置とを含んだものを、全体として脱臭装置とする。
【0015】
(請求項5記載の発明)
この発明の脱臭装置は、請求項4記載の脱臭装置であって、前記除湿装置が、倒立した略U字状に湾曲された管路を有し、前記略U字状の方向転換域が上方側となるように配設され、前記管路の下方側の入口端側から上方側の方向転換域を介して出口端側へと悪臭ガスを通過させるようにした除湿機構を有することを特徴とする。
【0016】
このような除湿機構では、倒立した略U字状に湾曲された管路を有し、前記管路の下方側の入口端側から上方側の方向転換域を介して出口端側へと悪臭ガスを通過させるようにしたので、悪臭ガス中の水蒸気は管路の内壁に接触して液化することとなる。そして、略U字状の方向転換域が上方側となるように配設されたので、管路の内壁で液化した水分は管路内を出口端側等へ流下し、例えば下方の水分貯留タンクに貯留したり地面や下水に直接廃棄したりすることができる。
【0017】
ここで、前記管路の材質として、プラスチック製、ステンレス製、チタニウム製などを例示することが出来る。プラスチック製(塩化ビニールやポリプロピレン等)やステンレス製とすると悪臭ガスに対して耐蝕性を発揮する。また、前記管路は自然冷風で冷却したり、強制冷風で冷却したり、水やその他液体で温度交換して冷却することも出来る。略U字状に湾曲された管路は湾曲より屈曲に近いものであってもよい。
【0018】
前記管路の断面は、円形状でも多角形状でもよい。前記管路の断面の面積は、20〜20000mm2の範囲が液化効率や通気抵抗の点から好ましい。前記管路の断面が円形の場合、内径としてはその直径が5〜50mmの範囲が液化効率や通気抵抗の点から好ましい。また、前記管路の肉厚としては、管路の冷却によって悪臭ガスの飽和蒸気圧を下げるために薄い方が伝熱性に優れ好ましく、プラスチック製の場合には強度との関係で実用的には1〜3mmの範囲が好ましい。管路の長さは、略U字状の全長が500〜1500mmの範囲が通気抵抗の点から好ましい。
【0019】
さらに、悪臭ガスに対し出口端側から負圧をかけることにより管路にガスを通過させることが出来る。このように構成すると、入口端側から正圧をかけて押し込んだ場合のような悪臭ガスの漏洩が発生し難い。また、出口端側から吸引ファン等で吸引することにより、吸引ファン等の機器は除湿後のガスを吸うことになるので機器の保護となる。
【0020】
(請求項6記載の発明)
この発明の脱臭装置は、請求項5記載の脱臭装置であって、前記倒立した略U字状に湾曲された管路が方向転換域近傍で縦方向に偏平な形状である除湿機構を有することを特徴とする。
【0021】
このように構成すると、管路の方向転換域近傍は断面積が減少しており、悪臭ガス中の水蒸気が管路の内壁に接触し易いので液化効率(除湿性)を向上させることができる。また、方向転換域近傍でのみ偏平な形状とすることにより、低管内抵抗と高液化効率を両立させることが出来る。偏平の度合い(短径÷長径)としては、5〜50%の間が低管内抵抗と高液化効率とのバランスの点から好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明の活性炭収容ケースは、上記のような構成をしているので、一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができる。また、活性炭収容ケース同士を重ねるだけで連結可能なので上向流活性炭吸着塔の建設および設置が容易である。さらに、活性炭ケース自体の大きさを制限しているため、上向流活性炭吸着塔や脱臭装置の小型化が可能であり、設置スペースが限られた場所においても利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の活性炭収容ケース及び該ケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置を実施するための最良の形態としての実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1はこの発明の活性炭収容ケース2の斜視図、図2この発明の上向流活性炭吸着塔1の一実施例を示す正面図、図3は前記上向流活性炭吸着塔1の一部断面正面図、図4はこの発明の脱臭装置6の一実施形態を示す一部断面正面図、図5は除湿装置7の管路8近傍の拡大説明図、図6は他の形態の管路8の拡大説明図、図7は他の形態の除湿装置7、活性炭吸着塔1及び吸引ファンF等の説明図である。
【0025】
(上向流活性炭吸着塔1について)
この発明の上向流活性炭吸着塔1は、図2及び図3に示すように、複数段に積層された活性炭収容ケース2と、脱臭されるべき悪臭ガスを最下段にある活性炭収容ケース2へと導くガス導入路3と、各活性炭層を通過した脱臭済みガスを最上段にある前記活性炭収容ケース2から外部へと排出するガス排出路4と、悪臭ガスを吸引する吸引ファンFとからなる。また、上向流活性炭吸着塔1は、複数段積層された活性炭収容ケース2の転倒防止用の押さえ部材5を有する。押さえ部材5は、例えば金属製の棒状の部材であって、ガス導入路3とガス排出路4の間に着脱可能に架設されるとともに、下端部が載置台や地面に固定される。これにより、複数段に積層された活性炭収容ケース2が、ガス導入路3とガス排出路4とで挟み込まれるように加圧されるため、転倒が防止されるとともに、各収容ケース2間は気密に保持される。なお、押さえ部材5の材質は金属製のものに限られず、木製やプラスチック製としてもよく、また、一本だけでなく複数本取り付けるようにしてもよい。
【0026】
ここで、上向流活性炭吸着塔1は活性炭収容ケース1を複数段積層しなければならないものではなく、1段だけであってもよい。通常、脱臭対象の悪臭ガスは複数の臭気成分で構成されているため、1種類の活性炭のみで臭気成分を除去することは難しく、複数種類の活性炭Cをそれぞれ別々の活性炭収容ケース2に収容して複数段に積層し複数種類の活性炭からなる活性炭脱臭層を形成して複数の臭気成分を完全に除去するものとしている。ここで、使用する活性炭Cとして、アルデヒド専用活性炭、中性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭、酸性ガス用活性炭が挙げられる。硫化メチル、二硫化メチルなどの中性臭気成分には、ヨウ素や臭素などハロゲン化合物を添着した中性ガス用活性炭が使用され、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性臭気成分には、リン酸などの鉱酸を添着した塩基性ガス用活性炭が使用され、硫化水素、メチルメルカプタンなどの酸性臭気成分には、苛性ソーダなどのアルカリ剤を添着した酸性ガス用活性炭が使用される。したがって、要処理悪臭ガスの臭気成分が1種類のみである場合には、活性炭収容ケース2を複数段積層する必要はない。
【0027】
(活性炭収容ケース2について)
活性炭収容ケース2は、図1に示されるように、方形の容器であって、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に粒状活性炭Cの支持用ネットNを有する。支持用ネットNは、粒状活性炭Cが落下せず、かつ悪臭ガスが通過できるような網目形状をしている。また、活性炭収容ケース2の前記側壁の下部には、収容ケース2を複数段(本実施例においては5段)積層可能とする位置ずれ防止用の嵌合部Kが形成されている。嵌合部Kは、側壁から外方に張り出した態様となっており、収容ケース2を重ねた際、下段側の収容ケース2の側壁上部が嵌まり合うものとなっている(図4参照)。さらに、側壁の上下端面には積層時の各収容ケース2間を外周気密状態にするためのゴムなどの弾性部材などからなるシール部材Sが取り付けられている。なお、シール部材Sは、活性炭収容ケース2を複数段積層した態様の上向流活性炭吸着塔1では各収容ケース2間の外周気密状態を保持するものとなるが、活性炭収容ケース2が1段のみの場合には、地面や後述するガス導入路3、ガス排出路4との間の外周気密状態を保持する。
【0028】
ここで、活性炭収容ケース2及び活性炭Cの支持用ネットNの材質として、プラスチック製、ステンレス製、チタニウム製などを例示することが出来る。プラスチック製(塩化ビニールやポリプロピレン等)やステンレス製とすると悪臭ガスに対して耐蝕性を発揮する。収容ケース2の大きさは、例えば、縦300mm、横300mm、高さ300mmに設定し、活性炭Cを収容した状態における総重量が約15kgを越えないもの、好ましくは10kg程度に設定している。但し、収容ケース2の大きさ及び粒状活性炭Cを含めた総重量はこれに限られたものではなく、活性炭Cの交換時に作業者一人でも容易に持ち運びできる程度の大きさ・重さであればよい。活性炭収容ケース2の形状についても、方形に限られず、円形などとしてもよい。
【0029】
また、上記実施例では嵌合部Kを収容ケース2の下部側に設けたが、これに限られず、上部側において側壁から外方に張り出した態様とし、上段側の収容ケース2の側壁下部に嵌合するものとしてもよい。また、収容ケース2の上下端部にそれぞれ凹部あるいは凸部を形成し、積層時にこれらの凹凸部が嵌合するものとしたり、凹凸部間に上述したシール部材Sを介在させてもよい。
【0030】
(ガス導入路3について)
ガス導入路3は、図2及び図3に示すように、活性炭収容ケース2と同じ材質及び略同一の大きさからなる中空の部材であって、その上部は悪臭ガスの通路として開口されるとともに、一側面には後述する除湿装置7に接続される導入管3aが設けられている。ガス導入路3は最下段に位置する活性炭収容ケース2に接続され、除湿装置7を通過した悪臭ガスが導入管3aを介して上向流活性炭吸着塔1へと導入される。
【0031】
(ガス排出路4について)
ガス排出路4も、ガス導入路4と同様に活性炭収容ケース2と同じ材質及び略同一の大きさからなる中空の部材であって、その下部は悪臭ガスの通路として開口されるとともに、一側面には吸引ファンFに接続される排出管4aが設けられている。ガス排出路4は最上段に位置する活性炭収容ケース2に接続され、活性炭吸着層を通過した悪臭ガスは臭気成分が除去されて排出管4aを介して外部へと排出される。
【0032】
なお、悪臭ガスは、排出管4aに接続された吸引ファンFにより上向流活性炭吸着塔1内を負圧により引っ張るようにしている。すなわち、悪臭ガスに対しガス排出路4側から負圧をかけることにより活性炭吸着層にガスを通過させるようにしている。ここで、活性炭吸着塔1内の静圧を2kPaに設定し、悪臭ガスが上向流活性炭吸着塔1内を通過する速度を0.2〜0.5m/s程度に抑えて、比較的にゆっくりと活性炭吸着層を通過させる。
【0033】
(脱臭装置6について)
脱臭装置6は、図4に示すように、上述した活性炭吸着塔1と悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置7とからなる。活性炭Cは、悪臭ガスの湿度が高いと結露により活性炭表面が水分で覆われ、活性炭の細孔が水分により塞がれて臭気成分の吸着力が低下するため、活性炭吸着塔1へと悪臭ガスを導入する前に悪臭ガスから水蒸気を除去することが望ましい。特に、排水処理設備、屎尿処理場、下水処理場、ビルやマンションのディスポーザーシステムなどで発生する悪臭ガスは、ガスの温度や湿度が高く飽和水蒸気を含んでいるため、従来より、脱臭処理前にエアフィルターやミストセパレータによる水分除去が行われている。しかし、エアフィルターで夾雑物やミストセパレータで霧状の水滴を除去したとしても、水蒸気は殆どそのまま通過していたので、水蒸気を多く含むガスは活性炭吸着の際に外気温によって冷却され結露水を発生し、吸着性能を低下させてしまっていた。そこで、この発明の脱臭装置6は、以下に詳述するような除湿機構を有する除湿装置7によって悪臭ガスから水蒸気を除去している。
【0034】
(除湿装置7について)
この除湿装置7は、図4及び図5に示すように、倒立した略U字状に湾曲された管路8(プラスチック製の細径パイプ)を有し、前記略U字状の方向転換域9が上方側となるように配設した除湿機構を有する。前記倒立した略U字状に湾曲された管路8は複数本(15本)を2列にして少しずらして配設し(それぞれの管路8に外気がより当たり易くなり冷却効率が向上する)、悪臭ガスを分散通過処理させるようにしている。
【0035】
管路8の入口端側Iには未処理ガスの導入空間10を形成し、ビルやマンションのディスポーザーシステムなどから導入管11で悪臭ガスを導くようにしている。また、出口端側Oに処理済みガスの排出空間12を形成し、この排出空間12から処理済みのガスを前記活性炭吸着塔1へと排出管13及びガス導入路3の導入間3aを介して供給すると共に液化した水分は地面に廃棄するようにしている。
【0036】
そして、前記管路8の下方側の入口端側Iから上方側の方向転換域9を介して出口端側Oへと悪臭ガスを通過させるようにした。具体的には、この除湿装置7の次に活性炭吸着塔1を設けており、この活性炭吸着塔1に配設した吸引ファンFによりガスを誘引して負圧により引っ張るようにした。すなわち、悪臭ガスに対し出口端側Oから負圧をかけることにより管路8にガスを通過させるようにした。
【0037】
この除湿装置7は室外に設置し、管路8を外気温(自然冷風)により冷却するようにしたが、前記管路8は機械的な冷風で強制冷却したり、水やその他液体で温度交換して冷却することも出来る。
【0038】
前記管路8の断面は、円形状とした。前記管路8の材質は、悪臭ガスの成分(アンモニアや硫化水素)に対して耐蝕性を有する塩化ビニール樹脂のプラスチック製とした。前記管路8の内径の直径は22mmとし、その断面の面積は380mm2とした。前記管路8の肉厚は、2mmとした。管路8の長さは、略U字状の全長が1120mm(高さ500mm)とした。略U字状の方向転換域9の曲率半径は、100mmとした。
【0039】
この除湿装置7では、倒立した略U字状に湾曲された管路8を有し、前記管路8の下方側の入口端側Iから上方側の方向転換域9を介して出口端側Oへと悪臭ガスを通過させるようにしたので、悪臭ガス中の水蒸気は管路8の内壁に接触して液化することとなり、水蒸気を除去することができる。また、略U字状の方向転換域9が上方側となるように配設されたので、管路8の内壁で液化した水分は管路8内を入口端側Iと出口端側Oへ流下し、地面に直接廃棄することができる。
【0040】
また、前記倒立した略U字状に湾曲された管路8を複数本(15本)配設し、悪臭ガスを分散通過させるようにしたので、多くのガス容量を一遍に処理することができ、またガスを分散させて整流された状態で処理することができるという利点がある。さらに、悪臭ガスに対し出口端側Oから負圧をかけることにより管路8にガスを通過させるようにしており、入口端側Iから正圧をかけて押し込んだ場合のような悪臭ガスの漏洩が発生し難い。また、出口端側Oから吸引ファンFで吸引することにより、吸引ファンF等の機器は除湿後のガスを吸うことになるので機器の保護となるという利点がある。
【0041】
この除湿装置7により、飽和水蒸気と悪臭成分(アンモニアや硫化水素)を含む温度が43℃のガスを外気温35℃の雰囲気下で処理したところ、40%の水蒸気を除去することが出来た。具体的には、略U字状に湾曲された管路8の前半の上行き路と後半の下行き路で水蒸気が管路8内壁に液化し、ぽたぽたぽたぽたとよく取れた。この取れ方は全く予想外のことであった。このように水蒸気が非常によく取れる理由は、上行き路では主としてガス温度の低下効果によるものであり、下行き路では略U字状の方向転換域9を通過時のガス流に乱れが生じてスパイラル流(スモークガスを流すとスパイラル流〔渦巻き流〕が観測された)が発生することにより管路8内壁に沿った気流導線が長くなって冷却効率が向上していることによるものと考えられる。
【0042】
そして、この除湿装置7を通過後、上向流活性炭吸着塔1の活性炭収容ケース2付近での結露は殆どなくなり、活性炭Cの性能低下は認められなかった。また、この除湿装置7によるガス通過抵抗は少なく後ろの上向流活性炭吸着塔1に配設された吸引ファンFを大型化する必要はなかった。
【0043】
なお、図6に示すように、前記略U字状の管路8の方向転換域9における頂部を縦方向に少し押し潰したような偏平に形成してもよい。具体的には、偏平の度合いは管路8の内径が縦方向が20mm、横方向が25mm(偏平率25%)とした。このように前記略逆U字状の管路8を方向転換域9近傍で偏平な形状とすることにより、管路8の方向転換域9近傍は断面積が減少し、悪臭ガス中の水蒸気が管路8の内壁に接触し易くなるので液化効率(除湿性)を向上させることができる。また、方向転換域9近傍でのみ偏平な形状とすることにより、低管内抵抗と高液化効率を両立させることが出来ると共に、略U字状の方向転換域9を通過時のガス圧変化による乱流発生の増大効果が期待できるという利点がある。
【0044】
偏平な略U字状の方向転換域9を有する除湿装置7では、飽和水蒸気と悪臭成分(アンモニアや硫化水素)を含む温度が43℃のガスを外気温35℃の雰囲気下で処理したところ、43%の水蒸気を除去することが出来た。上述した偏平でない方向転換域9と比較して水蒸気の除去効率が向上しているのは、偏平な略U字状の方向転換域9を通過時のガス圧変化による乱流発生の増大効果によってスパイラル流が強くなり、このスパイラル流に起因する管路8内壁の気流導線がより長くなって冷却効率が向上していることによるものと考えられる。
【0045】
さらに、図7に示すように、前記活性炭吸着塔1の入口における相対湿度を低く抑ええるため、外気取入口14aを有した除湿室14内に、上述した除湿機構を有する除湿装置7を収容すると共に孔15aを有した冷却空気取入管15を配置し、この冷却空気取入管15の一端側と活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13とを調整用ダンパー17を介して接続するものとしてもよい。この追加した構成により、外気取入口14aから除湿室14内に流入した空気(略U字状の管路と効率良く暖められた外気)は、孔15a→冷却空気取入管15→調整用ダンパー17→活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13→活性炭吸着塔1を経て大気へ放出される。
【0046】
また、図7に示すように、外気取入口fを有したファンケースFC内に、吸引ファンFを収容すると共に、前記ファンケースFCと活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13とを調整用ダンパー18を介して空気取入管16で接続するものとしてもよい。この追加した構成により、外気取入口fからファンケースFC内に流入して吸引ファンFのモータが発生する熱により暖められた外気は、空気取入管16→調整用ダンパー18→活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13→活性炭吸着塔1を経て大気へ放出される。
【0047】
なお、上記外気は、通常、結露の原因となる臭気ガス(35℃〜40℃、湿度約100%)より低い温度と乾燥状態である。
【0048】
ここで、加温された冷却空気取入管15及び空気取入管16からの乾燥外気を、処理ガス風量の約5%程度とした状態では、臭気ガスの相対湿度が100%の場合、活性炭吸着塔1の入口では相対湿度が75〜80%程度である。そのため、活性炭吸着塔1内では全く結露が発生しないものとなった。なお、加温された冷却空気取入管15及び空気取入管16からの乾燥外気の混合量は約5%であればガス処理性能に関して実用上全く問題とならない。
【0049】
また、上記した外気の取り入れは、最終的にダクトのサクション側(大気圧より低い)の吸引力による強制吸引であり、自然換気と比べて除湿性能が向上する。
【0050】
さらに、外気取入口fからファンケースFC内に流入してきた外気により吸引ファンFのモータが発生する熱が吸熱され、その結果ベアリング等の寿命延命効果がある。
【0051】
したがって、図7に示す態様の除湿装置7では、強制吸引用、あるいは冷却用の別の装置を新たに加えることなく除湿性能と装置の信頼性が格段に向上するという優れた特徴を有することが明らかである。
【0052】
以上のように、脱臭装置6は、上向流活性炭吸着塔1と除湿装置7との組み合わせにより、悪臭ガスを先ず除湿装置7で除湿し、次いで上向流活性炭吸着塔1により活性炭Cで脱臭するようにしたので、活性炭Cの吸着力を低下させる悪臭ガスに含まれる水蒸気を効率よく除去して活性炭Cを長持ちさせることができるとの利点を有する。また、活性炭収容ケース2が一人でも持ち運べる程度の重さであるので、活性炭Cの交換作業が容易である。また、脱臭装置6の全体の寸法を従来の脱臭装置と比較して小型に設定できるので(例えば横600mm、奥行き1000mm、高さ2000mm)、設置スペースが限られた場所でも利用できる。さらに、脱臭装置6´の底部にキャスター等を取り付ければ移動が容易となり、持ち運んで利用することができるため、建設現場や工事現場などにおいて、期間限定で使用する脱臭装置として利用することができる。
【実施例2】
【0053】
図8はこの発明の他の実施形態の上向流活性炭吸着塔1´の概略斜視図、図9は図8の上向流活性炭吸着塔1´内の載置台に活性炭収容ケース2´を載置した状態を示す説明図、図10はこの発明の脱臭装置6´の他の実施形態を示す正面図、図11は図10の脱臭装置6´の上面図である。
【0054】
(上向流活性炭吸着塔1´について)
この発明の上向流活性炭吸着塔1´は、図8に示すように、周囲が気密に鋼板で覆われ、活性炭収容ケース2´を載置する載置台19を床面に有し、脱臭されるべき悪臭ガスを前記載置台19の下方へ導く導入管3a´が接続されたガス導入路3´と、前記活性炭収容ケース2´の上方で得られる脱臭済みのガスを外部へと排出する排出管4a´が接続されたガス排出路4´とを有する。載置台19は、上向流活性炭収容塔1´の床面に平行となるように鋼材を格子状に組んで構成される。そして、図8及び図9に示すように鋼材により形成された載置部19a、19a・・・に各々活性炭Cが収容された収容ケース2´が載置される。なお、上向流活性炭収容塔1´には図示しない収容ケース2´の搬出入用の扉が設けられている。
【0055】
このような上向流活性炭吸着塔1´は、周囲が気密に鋼板で覆われた1つの部屋(脱臭室)として構成され、この脱臭室の中に活性炭収容ケース2´を設置するものとしているので、活性炭収容ケース2が直接外気にさらされる上記した実施例1における上向流活性炭吸着塔1と比較して、気密性がより守られ、悪臭ガスの漏れによる周辺住民等への影響が抑えられる。
【0056】
(活性炭収容ケース2´について)
活性炭収容ケース2´は、図9に示すように、長方形のカートリッジタイプの容器であって、基本的には実施例1における活性炭収容ケース2と同じ構成をしており、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭Cの支持用ネットN(図示せず)を有する。また、上述した活性炭収容ケース2と同様に、前記側壁の下部側に収容ケース2´を複数段積層可能とする位置ずれ防止用の嵌合部Kを形成してもよく、また側壁の上下端部に、積層時の各収容ケース2間あるいは載置台19との接触面を外周気密状態にするためのゴムなどの弾性部材などからなるシール部材を取り付けてもよい。
【0057】
なお、収容ケース2´及び活性炭Cの支持用ネットNの材質として、プラスチック製、ステンレス製、チタニウム製などを例示することが出来る。プラスチック製(塩化ビニールやポリプロピレン等)やステンレス製とすると悪臭ガスに対して耐蝕性を発揮する。収容ケース2´の大きさは、例えば縦350mm、横450mm、高さ200mmに設定され、活性炭Cを収容した状態における全重量が約15kgを越えないもの、好ましくは10kg程度に設定される。
【0058】
(脱臭装置6´について)
図10及び図11に示すように、脱臭装置6´は、上述した収容ケース2´が脱臭室内において複数段(本実施形態では5段)積層されると共に、複数列(本実施形態では3列)配列された上向流活性炭収容塔1´と悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置7とからなる。活性炭Cは、悪臭ガスの湿度が高いと結露により活性炭表面が水分で覆われ、活性炭の細孔が水分により塞がれて臭気成分の吸着力が低下するため、活性炭吸着塔1´へと悪臭ガスを導入する前に悪臭ガスから水蒸気を除去することが望ましい。
【0059】
(除湿装置7について)
除湿装置7は、図10及び図11に示すように、倒立した略U字状に湾曲された管路8(プラスチック製の細径パイプ)を有し、前記略U字状の方向転換域9が上方側となるように配設した除湿機構を有する。前記倒立した略U字状に湾曲された管路8を複数本配設し(それぞれの管路8に外気がより当たり易くなり冷却効率が向上する)、悪臭ガスを分散通過処理させるようにしている。なお、除湿装置7及びその除湿機構の構成は実施例1と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0060】
なお、管路8の入口端側Iには未処理ガスの導入空間10を形成し、ビルやマンションのディスポーザーシステムなどから導入管11で悪臭ガスを導くようにしている。また、出口端側Oに処理済みガスの排出空間12を形成し、この排出空間12から処理済みのガスを脱臭ファンF´へと排出管13を介して供給すると共に液化した水分はドレインDから地面に廃棄するようにしている。
【0061】
そして、前記管路8の下方側の入口端側Iから上方側の方向転換域9を介して出口端側Oへと悪臭ガスを通過させるようにした。具体的には、この除湿装置7と前記上向流活性炭収容塔1´とを脱臭ファンF´を介して接続し、脱臭ファンF´によりガスを誘引して負圧により引っ張るようにして除湿装置7内を通過させた後、正圧をかけてガスを押し込むようにして上向流活性炭収容塔1´内を通過させるようにした。なお、9個の活性炭収容ケース2´を5段積層した場合(計45個)の脱臭ファンF´の仕様を、風量18m3/min、静圧2.1kPa、電力1.5kwに設定した。
【0062】
この除湿装置7は室外に設置し、管路8を外気温(自然冷風)により冷却するようにしたが、前記管路8は機械的な冷風で強制冷却したり、水やその他液体で温度交換して冷却することも出来る。
【0063】
以上のように、脱臭装置6´は、上向流活性炭収容塔1´と除湿装置7との組み合わせにより、悪臭ガスを先ず除湿装置7で除湿し、次いで上向流活性炭収容塔1´において活性炭Cで脱臭するようにしたので、活性炭Cの吸着力を低下させる悪臭ガスに含まれる水蒸気を効率よく除去して活性炭Cを長持ちさせることができるとの利点を有する。また、活性炭収容ケース2´が一人でも持ち運べる程度の重さであるので、活性炭Cの交換作業が容易である。また、脱臭装置6´の全体の寸法を従来の脱臭装置と比較して小型に設定できるので(例えば横2200mm、奥行き2800mm、高さ1925mm)、設置スペースが限られた場所でも利用できる。さらに、脱臭装置6´の底部にキャスター等を取り付ければ移動が容易となり、持ち運んで利用することができるため、建設現場や工事現場などにおいて、期間限定で使用する脱臭装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の活性炭吸着ケースの一実施例を示す斜視図
【図2】この発明の上向流活性炭吸着塔の一実施例を示す正面図。
【図3】図1の上向流活性炭吸着塔の一部断面正面図。
【図4】この発明の脱臭装置の一実施形態を示す一部断面正面図。
【図5】除湿装置の管路近傍の拡大説明図。
【図6】他の形態の管路の拡大説明図。
【図7】他の形態の除湿装置、活性炭吸着塔1及び吸引ファン等の説明図。
【図8】この発明の他の実施形態の上向流活性炭吸着塔の概略斜視図。
【図9】図7の上向流活性炭吸着塔内の載置台に活性炭収容ケースを載置した状態を示す説明図。
【図10】この発明の脱臭装置の他の実施形態を示す正面図。
【図11】図9の脱臭装置の上面図。
【図12】従来の活性炭吸着塔の概略垂直断面図。
【符号の説明】
【0065】
C 活性炭
K 嵌合部
N 支持用ネット
S シール部材
1、1´ 上向流活性炭吸着塔
2、2´ 活性炭収容ケース
3、3´ ガス導入路
4、4´ ガス排出路
5 押さえ部材
6、6´ 脱臭装置
7 除湿装置
8 管路
9 方向転換域
10 導入空間
11 導入管
12 排出空間
13 排出管
【技術分野】
【0001】
この発明は、悪臭ガスの活性炭吸着法による脱臭に関し、詳細には活性炭を収容するケース及び該ケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、排水処理場、屎尿処理場、下水処理場などで発生する悪臭ガスから臭気成分を除去する方法として活性炭吸着法が知られている。活性炭吸着法を利用した脱臭装置として、例えば、廃棄物処理用の焼却炉で発生した排ガスを、集塵機で除塵した後、吸着剤としての活性炭が充填された吸着塔に通し、排ガス中のダイオキシン等の有害物質を活性炭に吸着させて除去した後、大気中に放出させるものがある。(例えば、特許文献1)
上記した従来の吸着塔(30)は、図12に示すように、角筒状の建物であって、その内部を上中下の3段のケース装入ゾーン(31)(32)(33)に分け、各装入ゾーン(31)(32)(33)に複数個の粒状活性炭収容ケース(34)を装入するものとしてある。そして、吸着塔(30)の下部に設けられた導入口から吸着塔(30)内に排ガスを導入して各ケース内の活性炭層を順次通過させ、悪臭成分を除去した後、吸着塔(30)の上部に設けられた排出口から排出するものとしている。
【0003】
ここで、悪臭成分を吸着除去する吸着剤としての活性炭の吸着力には寿命があるため、その吸着力が低下してきた場合には、新しい活性炭と交換する作業が必要となる。
【0004】
しかしながら、上記吸着塔(30)における粒状活性炭収容ケース(34)は大型であるため、その搬入、交換作業に際しては、ホイスト(35)によってケースを吊り下げ、ケースの下端部に設けられたローラ(36)をレール(37)上に転がして移動させる必要があり、非常に面倒であった。
【0005】
また、上記吸着塔(30)は、廃棄物処理場などで使用される大型な設備としているため、その建設には多大な時間と労力、費用が必要であり、また設置スペースが限られているビルやマンションのディスポーザーシステムなどから発生する悪臭ガスを除去する脱臭装置として利用するには不向きであった。
【0006】
さらに、上記のような大型な吸着塔(30)は、持ち運んで利用することができないため、建設現場や工事現場などにおいて、期間限定で使用する脱臭装置として利用するには不向きであった。
【特許文献1】特開平11−165020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明は、一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができ、設置スペースが限られた場所においても簡易に設置することが可能な活性炭収容ケース及びそのケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(請求項1記載の発明)
この発明の活性炭収容ケースは、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭の支持用ネットを有する活性炭収容ケースであって、前記側壁には該収容ケースの複数段積層を可能とする嵌合部が形成されるとともに、端面には外周気密状態に密封するためのシール部材が設けられ、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしたことを特徴とする。
【0009】
このような活性炭収容ケースでは、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしているので一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができる。
【0010】
(請求項2記載の発明)
この発明の上向流活性炭吸着塔は、請求項1記載の活性炭収容ケースの下方に脱臭されるべき悪臭ガスを導くためのガス導入路を設けるとともに、前記活性炭収容ケースの上方に脱臭済みガスを外部へ排出するためのガス排出路を設けたことを特徴とする。
【0011】
この明細書において、上記活性炭収容ケースの下方に設けられたガス導入路から悪臭ガスを導入して各ケース内の活性炭層を順次通過させ、悪臭成分を除去した後、収容ケースの上方に設けられたガス排出路から排出するようにしたものを、全体として上向流活性炭吸着塔とする。
【0012】
(請求項3記載の発明)
この発明の上向流活性炭吸着塔は、請求項2記載の上向流活性炭吸着塔であって、前記ガス導入路とガス排出路の間に、前記活性炭収容ケースの押さえ部材が架設されていることを特徴とする。
【0013】
(請求項4記載の発明)
この発明の脱臭装置は、請求項3記載の上向流活性炭吸着塔と、悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置とからなることを特徴とする。
【0014】
この明細書において、上記した上向流活性炭吸着塔と、当該吸着塔に導入される悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置とを含んだものを、全体として脱臭装置とする。
【0015】
(請求項5記載の発明)
この発明の脱臭装置は、請求項4記載の脱臭装置であって、前記除湿装置が、倒立した略U字状に湾曲された管路を有し、前記略U字状の方向転換域が上方側となるように配設され、前記管路の下方側の入口端側から上方側の方向転換域を介して出口端側へと悪臭ガスを通過させるようにした除湿機構を有することを特徴とする。
【0016】
このような除湿機構では、倒立した略U字状に湾曲された管路を有し、前記管路の下方側の入口端側から上方側の方向転換域を介して出口端側へと悪臭ガスを通過させるようにしたので、悪臭ガス中の水蒸気は管路の内壁に接触して液化することとなる。そして、略U字状の方向転換域が上方側となるように配設されたので、管路の内壁で液化した水分は管路内を出口端側等へ流下し、例えば下方の水分貯留タンクに貯留したり地面や下水に直接廃棄したりすることができる。
【0017】
ここで、前記管路の材質として、プラスチック製、ステンレス製、チタニウム製などを例示することが出来る。プラスチック製(塩化ビニールやポリプロピレン等)やステンレス製とすると悪臭ガスに対して耐蝕性を発揮する。また、前記管路は自然冷風で冷却したり、強制冷風で冷却したり、水やその他液体で温度交換して冷却することも出来る。略U字状に湾曲された管路は湾曲より屈曲に近いものであってもよい。
【0018】
前記管路の断面は、円形状でも多角形状でもよい。前記管路の断面の面積は、20〜20000mm2の範囲が液化効率や通気抵抗の点から好ましい。前記管路の断面が円形の場合、内径としてはその直径が5〜50mmの範囲が液化効率や通気抵抗の点から好ましい。また、前記管路の肉厚としては、管路の冷却によって悪臭ガスの飽和蒸気圧を下げるために薄い方が伝熱性に優れ好ましく、プラスチック製の場合には強度との関係で実用的には1〜3mmの範囲が好ましい。管路の長さは、略U字状の全長が500〜1500mmの範囲が通気抵抗の点から好ましい。
【0019】
さらに、悪臭ガスに対し出口端側から負圧をかけることにより管路にガスを通過させることが出来る。このように構成すると、入口端側から正圧をかけて押し込んだ場合のような悪臭ガスの漏洩が発生し難い。また、出口端側から吸引ファン等で吸引することにより、吸引ファン等の機器は除湿後のガスを吸うことになるので機器の保護となる。
【0020】
(請求項6記載の発明)
この発明の脱臭装置は、請求項5記載の脱臭装置であって、前記倒立した略U字状に湾曲された管路が方向転換域近傍で縦方向に偏平な形状である除湿機構を有することを特徴とする。
【0021】
このように構成すると、管路の方向転換域近傍は断面積が減少しており、悪臭ガス中の水蒸気が管路の内壁に接触し易いので液化効率(除湿性)を向上させることができる。また、方向転換域近傍でのみ偏平な形状とすることにより、低管内抵抗と高液化効率を両立させることが出来る。偏平の度合い(短径÷長径)としては、5〜50%の間が低管内抵抗と高液化効率とのバランスの点から好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明の活性炭収容ケースは、上記のような構成をしているので、一人でも持ち運びが可能であり、活性炭の交換作業を容易に行うことができる。また、活性炭収容ケース同士を重ねるだけで連結可能なので上向流活性炭吸着塔の建設および設置が容易である。さらに、活性炭ケース自体の大きさを制限しているため、上向流活性炭吸着塔や脱臭装置の小型化が可能であり、設置スペースが限られた場所においても利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、この発明の活性炭収容ケース及び該ケースを使用した活性炭吸着塔と脱臭装置を実施するための最良の形態としての実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0024】
図1はこの発明の活性炭収容ケース2の斜視図、図2この発明の上向流活性炭吸着塔1の一実施例を示す正面図、図3は前記上向流活性炭吸着塔1の一部断面正面図、図4はこの発明の脱臭装置6の一実施形態を示す一部断面正面図、図5は除湿装置7の管路8近傍の拡大説明図、図6は他の形態の管路8の拡大説明図、図7は他の形態の除湿装置7、活性炭吸着塔1及び吸引ファンF等の説明図である。
【0025】
(上向流活性炭吸着塔1について)
この発明の上向流活性炭吸着塔1は、図2及び図3に示すように、複数段に積層された活性炭収容ケース2と、脱臭されるべき悪臭ガスを最下段にある活性炭収容ケース2へと導くガス導入路3と、各活性炭層を通過した脱臭済みガスを最上段にある前記活性炭収容ケース2から外部へと排出するガス排出路4と、悪臭ガスを吸引する吸引ファンFとからなる。また、上向流活性炭吸着塔1は、複数段積層された活性炭収容ケース2の転倒防止用の押さえ部材5を有する。押さえ部材5は、例えば金属製の棒状の部材であって、ガス導入路3とガス排出路4の間に着脱可能に架設されるとともに、下端部が載置台や地面に固定される。これにより、複数段に積層された活性炭収容ケース2が、ガス導入路3とガス排出路4とで挟み込まれるように加圧されるため、転倒が防止されるとともに、各収容ケース2間は気密に保持される。なお、押さえ部材5の材質は金属製のものに限られず、木製やプラスチック製としてもよく、また、一本だけでなく複数本取り付けるようにしてもよい。
【0026】
ここで、上向流活性炭吸着塔1は活性炭収容ケース1を複数段積層しなければならないものではなく、1段だけであってもよい。通常、脱臭対象の悪臭ガスは複数の臭気成分で構成されているため、1種類の活性炭のみで臭気成分を除去することは難しく、複数種類の活性炭Cをそれぞれ別々の活性炭収容ケース2に収容して複数段に積層し複数種類の活性炭からなる活性炭脱臭層を形成して複数の臭気成分を完全に除去するものとしている。ここで、使用する活性炭Cとして、アルデヒド専用活性炭、中性ガス用活性炭、塩基性ガス用活性炭、酸性ガス用活性炭が挙げられる。硫化メチル、二硫化メチルなどの中性臭気成分には、ヨウ素や臭素などハロゲン化合物を添着した中性ガス用活性炭が使用され、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性臭気成分には、リン酸などの鉱酸を添着した塩基性ガス用活性炭が使用され、硫化水素、メチルメルカプタンなどの酸性臭気成分には、苛性ソーダなどのアルカリ剤を添着した酸性ガス用活性炭が使用される。したがって、要処理悪臭ガスの臭気成分が1種類のみである場合には、活性炭収容ケース2を複数段積層する必要はない。
【0027】
(活性炭収容ケース2について)
活性炭収容ケース2は、図1に示されるように、方形の容器であって、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に粒状活性炭Cの支持用ネットNを有する。支持用ネットNは、粒状活性炭Cが落下せず、かつ悪臭ガスが通過できるような網目形状をしている。また、活性炭収容ケース2の前記側壁の下部には、収容ケース2を複数段(本実施例においては5段)積層可能とする位置ずれ防止用の嵌合部Kが形成されている。嵌合部Kは、側壁から外方に張り出した態様となっており、収容ケース2を重ねた際、下段側の収容ケース2の側壁上部が嵌まり合うものとなっている(図4参照)。さらに、側壁の上下端面には積層時の各収容ケース2間を外周気密状態にするためのゴムなどの弾性部材などからなるシール部材Sが取り付けられている。なお、シール部材Sは、活性炭収容ケース2を複数段積層した態様の上向流活性炭吸着塔1では各収容ケース2間の外周気密状態を保持するものとなるが、活性炭収容ケース2が1段のみの場合には、地面や後述するガス導入路3、ガス排出路4との間の外周気密状態を保持する。
【0028】
ここで、活性炭収容ケース2及び活性炭Cの支持用ネットNの材質として、プラスチック製、ステンレス製、チタニウム製などを例示することが出来る。プラスチック製(塩化ビニールやポリプロピレン等)やステンレス製とすると悪臭ガスに対して耐蝕性を発揮する。収容ケース2の大きさは、例えば、縦300mm、横300mm、高さ300mmに設定し、活性炭Cを収容した状態における総重量が約15kgを越えないもの、好ましくは10kg程度に設定している。但し、収容ケース2の大きさ及び粒状活性炭Cを含めた総重量はこれに限られたものではなく、活性炭Cの交換時に作業者一人でも容易に持ち運びできる程度の大きさ・重さであればよい。活性炭収容ケース2の形状についても、方形に限られず、円形などとしてもよい。
【0029】
また、上記実施例では嵌合部Kを収容ケース2の下部側に設けたが、これに限られず、上部側において側壁から外方に張り出した態様とし、上段側の収容ケース2の側壁下部に嵌合するものとしてもよい。また、収容ケース2の上下端部にそれぞれ凹部あるいは凸部を形成し、積層時にこれらの凹凸部が嵌合するものとしたり、凹凸部間に上述したシール部材Sを介在させてもよい。
【0030】
(ガス導入路3について)
ガス導入路3は、図2及び図3に示すように、活性炭収容ケース2と同じ材質及び略同一の大きさからなる中空の部材であって、その上部は悪臭ガスの通路として開口されるとともに、一側面には後述する除湿装置7に接続される導入管3aが設けられている。ガス導入路3は最下段に位置する活性炭収容ケース2に接続され、除湿装置7を通過した悪臭ガスが導入管3aを介して上向流活性炭吸着塔1へと導入される。
【0031】
(ガス排出路4について)
ガス排出路4も、ガス導入路4と同様に活性炭収容ケース2と同じ材質及び略同一の大きさからなる中空の部材であって、その下部は悪臭ガスの通路として開口されるとともに、一側面には吸引ファンFに接続される排出管4aが設けられている。ガス排出路4は最上段に位置する活性炭収容ケース2に接続され、活性炭吸着層を通過した悪臭ガスは臭気成分が除去されて排出管4aを介して外部へと排出される。
【0032】
なお、悪臭ガスは、排出管4aに接続された吸引ファンFにより上向流活性炭吸着塔1内を負圧により引っ張るようにしている。すなわち、悪臭ガスに対しガス排出路4側から負圧をかけることにより活性炭吸着層にガスを通過させるようにしている。ここで、活性炭吸着塔1内の静圧を2kPaに設定し、悪臭ガスが上向流活性炭吸着塔1内を通過する速度を0.2〜0.5m/s程度に抑えて、比較的にゆっくりと活性炭吸着層を通過させる。
【0033】
(脱臭装置6について)
脱臭装置6は、図4に示すように、上述した活性炭吸着塔1と悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置7とからなる。活性炭Cは、悪臭ガスの湿度が高いと結露により活性炭表面が水分で覆われ、活性炭の細孔が水分により塞がれて臭気成分の吸着力が低下するため、活性炭吸着塔1へと悪臭ガスを導入する前に悪臭ガスから水蒸気を除去することが望ましい。特に、排水処理設備、屎尿処理場、下水処理場、ビルやマンションのディスポーザーシステムなどで発生する悪臭ガスは、ガスの温度や湿度が高く飽和水蒸気を含んでいるため、従来より、脱臭処理前にエアフィルターやミストセパレータによる水分除去が行われている。しかし、エアフィルターで夾雑物やミストセパレータで霧状の水滴を除去したとしても、水蒸気は殆どそのまま通過していたので、水蒸気を多く含むガスは活性炭吸着の際に外気温によって冷却され結露水を発生し、吸着性能を低下させてしまっていた。そこで、この発明の脱臭装置6は、以下に詳述するような除湿機構を有する除湿装置7によって悪臭ガスから水蒸気を除去している。
【0034】
(除湿装置7について)
この除湿装置7は、図4及び図5に示すように、倒立した略U字状に湾曲された管路8(プラスチック製の細径パイプ)を有し、前記略U字状の方向転換域9が上方側となるように配設した除湿機構を有する。前記倒立した略U字状に湾曲された管路8は複数本(15本)を2列にして少しずらして配設し(それぞれの管路8に外気がより当たり易くなり冷却効率が向上する)、悪臭ガスを分散通過処理させるようにしている。
【0035】
管路8の入口端側Iには未処理ガスの導入空間10を形成し、ビルやマンションのディスポーザーシステムなどから導入管11で悪臭ガスを導くようにしている。また、出口端側Oに処理済みガスの排出空間12を形成し、この排出空間12から処理済みのガスを前記活性炭吸着塔1へと排出管13及びガス導入路3の導入間3aを介して供給すると共に液化した水分は地面に廃棄するようにしている。
【0036】
そして、前記管路8の下方側の入口端側Iから上方側の方向転換域9を介して出口端側Oへと悪臭ガスを通過させるようにした。具体的には、この除湿装置7の次に活性炭吸着塔1を設けており、この活性炭吸着塔1に配設した吸引ファンFによりガスを誘引して負圧により引っ張るようにした。すなわち、悪臭ガスに対し出口端側Oから負圧をかけることにより管路8にガスを通過させるようにした。
【0037】
この除湿装置7は室外に設置し、管路8を外気温(自然冷風)により冷却するようにしたが、前記管路8は機械的な冷風で強制冷却したり、水やその他液体で温度交換して冷却することも出来る。
【0038】
前記管路8の断面は、円形状とした。前記管路8の材質は、悪臭ガスの成分(アンモニアや硫化水素)に対して耐蝕性を有する塩化ビニール樹脂のプラスチック製とした。前記管路8の内径の直径は22mmとし、その断面の面積は380mm2とした。前記管路8の肉厚は、2mmとした。管路8の長さは、略U字状の全長が1120mm(高さ500mm)とした。略U字状の方向転換域9の曲率半径は、100mmとした。
【0039】
この除湿装置7では、倒立した略U字状に湾曲された管路8を有し、前記管路8の下方側の入口端側Iから上方側の方向転換域9を介して出口端側Oへと悪臭ガスを通過させるようにしたので、悪臭ガス中の水蒸気は管路8の内壁に接触して液化することとなり、水蒸気を除去することができる。また、略U字状の方向転換域9が上方側となるように配設されたので、管路8の内壁で液化した水分は管路8内を入口端側Iと出口端側Oへ流下し、地面に直接廃棄することができる。
【0040】
また、前記倒立した略U字状に湾曲された管路8を複数本(15本)配設し、悪臭ガスを分散通過させるようにしたので、多くのガス容量を一遍に処理することができ、またガスを分散させて整流された状態で処理することができるという利点がある。さらに、悪臭ガスに対し出口端側Oから負圧をかけることにより管路8にガスを通過させるようにしており、入口端側Iから正圧をかけて押し込んだ場合のような悪臭ガスの漏洩が発生し難い。また、出口端側Oから吸引ファンFで吸引することにより、吸引ファンF等の機器は除湿後のガスを吸うことになるので機器の保護となるという利点がある。
【0041】
この除湿装置7により、飽和水蒸気と悪臭成分(アンモニアや硫化水素)を含む温度が43℃のガスを外気温35℃の雰囲気下で処理したところ、40%の水蒸気を除去することが出来た。具体的には、略U字状に湾曲された管路8の前半の上行き路と後半の下行き路で水蒸気が管路8内壁に液化し、ぽたぽたぽたぽたとよく取れた。この取れ方は全く予想外のことであった。このように水蒸気が非常によく取れる理由は、上行き路では主としてガス温度の低下効果によるものであり、下行き路では略U字状の方向転換域9を通過時のガス流に乱れが生じてスパイラル流(スモークガスを流すとスパイラル流〔渦巻き流〕が観測された)が発生することにより管路8内壁に沿った気流導線が長くなって冷却効率が向上していることによるものと考えられる。
【0042】
そして、この除湿装置7を通過後、上向流活性炭吸着塔1の活性炭収容ケース2付近での結露は殆どなくなり、活性炭Cの性能低下は認められなかった。また、この除湿装置7によるガス通過抵抗は少なく後ろの上向流活性炭吸着塔1に配設された吸引ファンFを大型化する必要はなかった。
【0043】
なお、図6に示すように、前記略U字状の管路8の方向転換域9における頂部を縦方向に少し押し潰したような偏平に形成してもよい。具体的には、偏平の度合いは管路8の内径が縦方向が20mm、横方向が25mm(偏平率25%)とした。このように前記略逆U字状の管路8を方向転換域9近傍で偏平な形状とすることにより、管路8の方向転換域9近傍は断面積が減少し、悪臭ガス中の水蒸気が管路8の内壁に接触し易くなるので液化効率(除湿性)を向上させることができる。また、方向転換域9近傍でのみ偏平な形状とすることにより、低管内抵抗と高液化効率を両立させることが出来ると共に、略U字状の方向転換域9を通過時のガス圧変化による乱流発生の増大効果が期待できるという利点がある。
【0044】
偏平な略U字状の方向転換域9を有する除湿装置7では、飽和水蒸気と悪臭成分(アンモニアや硫化水素)を含む温度が43℃のガスを外気温35℃の雰囲気下で処理したところ、43%の水蒸気を除去することが出来た。上述した偏平でない方向転換域9と比較して水蒸気の除去効率が向上しているのは、偏平な略U字状の方向転換域9を通過時のガス圧変化による乱流発生の増大効果によってスパイラル流が強くなり、このスパイラル流に起因する管路8内壁の気流導線がより長くなって冷却効率が向上していることによるものと考えられる。
【0045】
さらに、図7に示すように、前記活性炭吸着塔1の入口における相対湿度を低く抑ええるため、外気取入口14aを有した除湿室14内に、上述した除湿機構を有する除湿装置7を収容すると共に孔15aを有した冷却空気取入管15を配置し、この冷却空気取入管15の一端側と活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13とを調整用ダンパー17を介して接続するものとしてもよい。この追加した構成により、外気取入口14aから除湿室14内に流入した空気(略U字状の管路と効率良く暖められた外気)は、孔15a→冷却空気取入管15→調整用ダンパー17→活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13→活性炭吸着塔1を経て大気へ放出される。
【0046】
また、図7に示すように、外気取入口fを有したファンケースFC内に、吸引ファンFを収容すると共に、前記ファンケースFCと活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13とを調整用ダンパー18を介して空気取入管16で接続するものとしてもよい。この追加した構成により、外気取入口fからファンケースFC内に流入して吸引ファンFのモータが発生する熱により暖められた外気は、空気取入管16→調整用ダンパー18→活性炭吸着塔1の入口近傍の管路部分13→活性炭吸着塔1を経て大気へ放出される。
【0047】
なお、上記外気は、通常、結露の原因となる臭気ガス(35℃〜40℃、湿度約100%)より低い温度と乾燥状態である。
【0048】
ここで、加温された冷却空気取入管15及び空気取入管16からの乾燥外気を、処理ガス風量の約5%程度とした状態では、臭気ガスの相対湿度が100%の場合、活性炭吸着塔1の入口では相対湿度が75〜80%程度である。そのため、活性炭吸着塔1内では全く結露が発生しないものとなった。なお、加温された冷却空気取入管15及び空気取入管16からの乾燥外気の混合量は約5%であればガス処理性能に関して実用上全く問題とならない。
【0049】
また、上記した外気の取り入れは、最終的にダクトのサクション側(大気圧より低い)の吸引力による強制吸引であり、自然換気と比べて除湿性能が向上する。
【0050】
さらに、外気取入口fからファンケースFC内に流入してきた外気により吸引ファンFのモータが発生する熱が吸熱され、その結果ベアリング等の寿命延命効果がある。
【0051】
したがって、図7に示す態様の除湿装置7では、強制吸引用、あるいは冷却用の別の装置を新たに加えることなく除湿性能と装置の信頼性が格段に向上するという優れた特徴を有することが明らかである。
【0052】
以上のように、脱臭装置6は、上向流活性炭吸着塔1と除湿装置7との組み合わせにより、悪臭ガスを先ず除湿装置7で除湿し、次いで上向流活性炭吸着塔1により活性炭Cで脱臭するようにしたので、活性炭Cの吸着力を低下させる悪臭ガスに含まれる水蒸気を効率よく除去して活性炭Cを長持ちさせることができるとの利点を有する。また、活性炭収容ケース2が一人でも持ち運べる程度の重さであるので、活性炭Cの交換作業が容易である。また、脱臭装置6の全体の寸法を従来の脱臭装置と比較して小型に設定できるので(例えば横600mm、奥行き1000mm、高さ2000mm)、設置スペースが限られた場所でも利用できる。さらに、脱臭装置6´の底部にキャスター等を取り付ければ移動が容易となり、持ち運んで利用することができるため、建設現場や工事現場などにおいて、期間限定で使用する脱臭装置として利用することができる。
【実施例2】
【0053】
図8はこの発明の他の実施形態の上向流活性炭吸着塔1´の概略斜視図、図9は図8の上向流活性炭吸着塔1´内の載置台に活性炭収容ケース2´を載置した状態を示す説明図、図10はこの発明の脱臭装置6´の他の実施形態を示す正面図、図11は図10の脱臭装置6´の上面図である。
【0054】
(上向流活性炭吸着塔1´について)
この発明の上向流活性炭吸着塔1´は、図8に示すように、周囲が気密に鋼板で覆われ、活性炭収容ケース2´を載置する載置台19を床面に有し、脱臭されるべき悪臭ガスを前記載置台19の下方へ導く導入管3a´が接続されたガス導入路3´と、前記活性炭収容ケース2´の上方で得られる脱臭済みのガスを外部へと排出する排出管4a´が接続されたガス排出路4´とを有する。載置台19は、上向流活性炭収容塔1´の床面に平行となるように鋼材を格子状に組んで構成される。そして、図8及び図9に示すように鋼材により形成された載置部19a、19a・・・に各々活性炭Cが収容された収容ケース2´が載置される。なお、上向流活性炭収容塔1´には図示しない収容ケース2´の搬出入用の扉が設けられている。
【0055】
このような上向流活性炭吸着塔1´は、周囲が気密に鋼板で覆われた1つの部屋(脱臭室)として構成され、この脱臭室の中に活性炭収容ケース2´を設置するものとしているので、活性炭収容ケース2が直接外気にさらされる上記した実施例1における上向流活性炭吸着塔1と比較して、気密性がより守られ、悪臭ガスの漏れによる周辺住民等への影響が抑えられる。
【0056】
(活性炭収容ケース2´について)
活性炭収容ケース2´は、図9に示すように、長方形のカートリッジタイプの容器であって、基本的には実施例1における活性炭収容ケース2と同じ構成をしており、上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭Cの支持用ネットN(図示せず)を有する。また、上述した活性炭収容ケース2と同様に、前記側壁の下部側に収容ケース2´を複数段積層可能とする位置ずれ防止用の嵌合部Kを形成してもよく、また側壁の上下端部に、積層時の各収容ケース2間あるいは載置台19との接触面を外周気密状態にするためのゴムなどの弾性部材などからなるシール部材を取り付けてもよい。
【0057】
なお、収容ケース2´及び活性炭Cの支持用ネットNの材質として、プラスチック製、ステンレス製、チタニウム製などを例示することが出来る。プラスチック製(塩化ビニールやポリプロピレン等)やステンレス製とすると悪臭ガスに対して耐蝕性を発揮する。収容ケース2´の大きさは、例えば縦350mm、横450mm、高さ200mmに設定され、活性炭Cを収容した状態における全重量が約15kgを越えないもの、好ましくは10kg程度に設定される。
【0058】
(脱臭装置6´について)
図10及び図11に示すように、脱臭装置6´は、上述した収容ケース2´が脱臭室内において複数段(本実施形態では5段)積層されると共に、複数列(本実施形態では3列)配列された上向流活性炭収容塔1´と悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置7とからなる。活性炭Cは、悪臭ガスの湿度が高いと結露により活性炭表面が水分で覆われ、活性炭の細孔が水分により塞がれて臭気成分の吸着力が低下するため、活性炭吸着塔1´へと悪臭ガスを導入する前に悪臭ガスから水蒸気を除去することが望ましい。
【0059】
(除湿装置7について)
除湿装置7は、図10及び図11に示すように、倒立した略U字状に湾曲された管路8(プラスチック製の細径パイプ)を有し、前記略U字状の方向転換域9が上方側となるように配設した除湿機構を有する。前記倒立した略U字状に湾曲された管路8を複数本配設し(それぞれの管路8に外気がより当たり易くなり冷却効率が向上する)、悪臭ガスを分散通過処理させるようにしている。なお、除湿装置7及びその除湿機構の構成は実施例1と同じであるので、その詳細な説明は省略する。
【0060】
なお、管路8の入口端側Iには未処理ガスの導入空間10を形成し、ビルやマンションのディスポーザーシステムなどから導入管11で悪臭ガスを導くようにしている。また、出口端側Oに処理済みガスの排出空間12を形成し、この排出空間12から処理済みのガスを脱臭ファンF´へと排出管13を介して供給すると共に液化した水分はドレインDから地面に廃棄するようにしている。
【0061】
そして、前記管路8の下方側の入口端側Iから上方側の方向転換域9を介して出口端側Oへと悪臭ガスを通過させるようにした。具体的には、この除湿装置7と前記上向流活性炭収容塔1´とを脱臭ファンF´を介して接続し、脱臭ファンF´によりガスを誘引して負圧により引っ張るようにして除湿装置7内を通過させた後、正圧をかけてガスを押し込むようにして上向流活性炭収容塔1´内を通過させるようにした。なお、9個の活性炭収容ケース2´を5段積層した場合(計45個)の脱臭ファンF´の仕様を、風量18m3/min、静圧2.1kPa、電力1.5kwに設定した。
【0062】
この除湿装置7は室外に設置し、管路8を外気温(自然冷風)により冷却するようにしたが、前記管路8は機械的な冷風で強制冷却したり、水やその他液体で温度交換して冷却することも出来る。
【0063】
以上のように、脱臭装置6´は、上向流活性炭収容塔1´と除湿装置7との組み合わせにより、悪臭ガスを先ず除湿装置7で除湿し、次いで上向流活性炭収容塔1´において活性炭Cで脱臭するようにしたので、活性炭Cの吸着力を低下させる悪臭ガスに含まれる水蒸気を効率よく除去して活性炭Cを長持ちさせることができるとの利点を有する。また、活性炭収容ケース2´が一人でも持ち運べる程度の重さであるので、活性炭Cの交換作業が容易である。また、脱臭装置6´の全体の寸法を従来の脱臭装置と比較して小型に設定できるので(例えば横2200mm、奥行き2800mm、高さ1925mm)、設置スペースが限られた場所でも利用できる。さらに、脱臭装置6´の底部にキャスター等を取り付ければ移動が容易となり、持ち運んで利用することができるため、建設現場や工事現場などにおいて、期間限定で使用する脱臭装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明の活性炭吸着ケースの一実施例を示す斜視図
【図2】この発明の上向流活性炭吸着塔の一実施例を示す正面図。
【図3】図1の上向流活性炭吸着塔の一部断面正面図。
【図4】この発明の脱臭装置の一実施形態を示す一部断面正面図。
【図5】除湿装置の管路近傍の拡大説明図。
【図6】他の形態の管路の拡大説明図。
【図7】他の形態の除湿装置、活性炭吸着塔1及び吸引ファン等の説明図。
【図8】この発明の他の実施形態の上向流活性炭吸着塔の概略斜視図。
【図9】図7の上向流活性炭吸着塔内の載置台に活性炭収容ケースを載置した状態を示す説明図。
【図10】この発明の脱臭装置の他の実施形態を示す正面図。
【図11】図9の脱臭装置の上面図。
【図12】従来の活性炭吸着塔の概略垂直断面図。
【符号の説明】
【0065】
C 活性炭
K 嵌合部
N 支持用ネット
S シール部材
1、1´ 上向流活性炭吸着塔
2、2´ 活性炭収容ケース
3、3´ ガス導入路
4、4´ ガス排出路
5 押さえ部材
6、6´ 脱臭装置
7 除湿装置
8 管路
9 方向転換域
10 導入空間
11 導入管
12 排出空間
13 排出管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭の支持用ネットを有する活性炭収容ケースであって、前記側壁には該収容ケースの複数段積層を可能とする嵌合部が形成されるとともに、端面には外周気密状態に密封するためのシール部材が設けられ、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしたことを特徴とする、一人でも持ち運び可能な活性炭収容ケース。
【請求項2】
請求項1記載の活性炭収容ケースの下方に脱臭されるべき悪臭ガスを導くためのガス導入路を設けるとともに、前記活性炭収容ケースの上方に脱臭済みガスを外部へ排出するためのガス排出路を設けたことを特徴とする上向流活性炭吸着塔。
【請求項3】
前記ガス導入路とガス排出路の間に、前記活性炭収容ケースの押さえ部材が架設されていることを特徴とする請求項2記載の上向流活性炭吸着塔。
【請求項4】
請求項2または3記載の上向流活性炭吸着塔と、悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置とからなる脱臭装置。
【請求項5】
請求項4記載の脱臭装置であって、前記除湿装置が、倒立した略U字状に湾曲された管路を有し、前記略U字状の方向転換域が上方側となるように配設され、前記管路の下方側の入口端側から上方側の方向転換域を介して出口端側へと悪臭ガスを通過させるようにした除湿機構を有することを特徴とする脱臭装置。
【請求項6】
請求項5記載の脱臭装置であって、前記倒立した略U字状に湾曲された管路が方向転換域近傍で縦方向に偏平な形状である除湿機構を有することを特徴とする脱臭装置。
【請求項1】
上下が悪臭ガスの通路として開口されるとともに、側壁が非通気性部材で構成され、底部に活性炭の支持用ネットを有する活性炭収容ケースであって、前記側壁には該収容ケースの複数段積層を可能とする嵌合部が形成されるとともに、端面には外周気密状態に密封するためのシール部材が設けられ、活性炭を収容した状態における総重量を5kg〜15kgとしたことを特徴とする、一人でも持ち運び可能な活性炭収容ケース。
【請求項2】
請求項1記載の活性炭収容ケースの下方に脱臭されるべき悪臭ガスを導くためのガス導入路を設けるとともに、前記活性炭収容ケースの上方に脱臭済みガスを外部へ排出するためのガス排出路を設けたことを特徴とする上向流活性炭吸着塔。
【請求項3】
前記ガス導入路とガス排出路の間に、前記活性炭収容ケースの押さえ部材が架設されていることを特徴とする請求項2記載の上向流活性炭吸着塔。
【請求項4】
請求項2または3記載の上向流活性炭吸着塔と、悪臭ガスから水蒸気を除去するための除湿装置とからなる脱臭装置。
【請求項5】
請求項4記載の脱臭装置であって、前記除湿装置が、倒立した略U字状に湾曲された管路を有し、前記略U字状の方向転換域が上方側となるように配設され、前記管路の下方側の入口端側から上方側の方向転換域を介して出口端側へと悪臭ガスを通過させるようにした除湿機構を有することを特徴とする脱臭装置。
【請求項6】
請求項5記載の脱臭装置であって、前記倒立した略U字状に湾曲された管路が方向転換域近傍で縦方向に偏平な形状である除湿機構を有することを特徴とする脱臭装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−285217(P2008−285217A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133773(P2007−133773)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(300064663)横井工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(300064663)横井工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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