説明

活性酸素消去能を備えた脱臭体およびそれを用いた空気清浄機

【課題】従来の活性酸素を用いた有害物質や臭気物質を分解除去する方法では、未反応の活性酸素を分解するためのフィルターを別途設置する必要があるためコンパクト化が難しく、エアコンなどに搭載する簡易型の脱臭フィルターとしての応用は困難であるという課題を有していた。
【解決手段】物理吸着作用を有する吸着剤と、遷移金属酸化物と、活性酸素消去能を有する抗酸化物と、これらを担持する担体とから構成され、遷移金属酸化物は臭気物質に対して酸化触媒作用を有し、かつ抗酸化物の活性酸素消去を促進する活性を有する活性酸素消去能を備えた脱臭体で、部屋や車などの生活空間で発生する有害物質や臭気物質と活性酸素とを同時に除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部屋や車などの生活空間の気体に含まれる臭気物質を吸着除去でき、特にタバコの主成分でVOCの一種でもある有害性の高いアセトアルデヒドを有害性の小さい酢酸へ転化し、それを吸着除去することができ、それと同時にタバコの煙に含まれる活性酸素を消去できる脱臭体およびそれを用いた空気清浄機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2000−486号公報に示されるように、放電などにより活性酸素を発生させ、それにより有害物質や臭気物質を分解除去する方法が広く知られている。
【0003】
また、特開2005−65822号公報には、有害ガス分解ユニットと有害ガス吸着ユニットを併用し、さらにそれに揮発性の抗酸化剤を気中に放出するユニットを風路中に備え、脱臭や有害ガスの除去を行うことが記載されている。本文中には活性酸素の除去を示唆する内容の記載はないが、幾分かは活性酸素を除去できると考えられる。
【特許文献1】特開2000−486号公報
【特許文献2】特開2005−65822号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特開2000−486号公報に開示の活性酸素を用いた有害物質や臭気物質を分解除去する方法では、未反応の活性酸素を分解するためのフィルターを別途設置する必要があるためコンパクト化が難しく、エアコンなどに搭載する簡易型の脱臭フィルターとしての応用は困難であるという課題を有していた。
【0005】
また、特開2005−65822号公報に開示の方法では、有害ガスの除去はできるものの、活性酸素と抗酸化剤との反応を促進する触媒がないため、ほとんど分解効果は期待できないという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、部屋や車などの生活空間で発生する有害物質や臭気物質と活性酸素とを同時に除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の活性酸素消去能を備えた脱臭体およびそれを用いた空気清浄機は、物理吸着作用を有する吸着剤と、遷移金属酸化物と、活性酸素消去能を有する抗酸化物と、前記吸着剤と前記遷移金属酸化物と前記抗酸化物とを担持する担体とから構成され、前記遷移金属酸化物は臭気物質に対して酸化触媒作用を有し、かつ前記抗酸化物の活性酸素消去を促進する活性を有する活性酸素消去能を備えた脱臭体とするものである。
【0008】
これによって、部屋や車などの生活空間で発生する有害物質や臭気物質と活性酸素とを同時に除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活性酸素消去能を備えた脱臭体は、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤や遷移金属酸化物により除去でき、また活性酸素を消去する抗酸化物とその消去速度を向上させる遷移金属酸化物により、活性酸素を除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体や空気清浄機を提供できる。
【0010】
特に、タバコの煙に含まれる有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着剤で吸着除去でき、同時に含まれる過酸化水素などの活性酸素を除去する空気清浄機を提供できる。
【0011】
また、本発明の空気清浄機は、人の手を煩わすことなく自動的に吸脱着を制御し、メンテナンスフリーで長期間使用できる空気清浄機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
第1の発明は、物理吸着作用を有する吸着剤と、遷移金属酸化物と、活性酸素消去能を有する抗酸化物と、前記吸着剤と前記遷移金属酸化物と前記抗酸化物とを担持する担体とから構成され、前記遷移金属酸化物は臭気物質に対して酸化触媒作用を有し、かつ前記抗酸化物の活性酸素消去を促進する活性を有する活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、部屋や車などの生活空間で発生する臭気を物理吸着作用を有する吸着剤や遷移金属酸化物により除去でき、また活性酸素を消去する抗酸化物とその消去速度を向上させる遷移金属酸化物により、活性酸素を除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0013】
第2の発明は、吸着剤が疎水性ゼオライトである請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、シリカ分を高めたゼオライトは極性が小さくなるため、非極性の臭気分子を吸着できるようになり、また雰囲気の湿度に依存することなく臭気分子を吸脱着できるようになるため、多様な臭気分子を吸着除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0014】
第3の発明は、抗酸化物はビタミンC、ビタミンE、リコピン、カテキン類、タンニン、イソフラボン、ポリフェノール類、没食子酸の少なくとも一種を含む請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、抗酸化物の中でも特に活性酸素消去能が高い上記物質を用いることにより、効率良く活性酸素を除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0015】
第4の発明は、担体がハニカム構造体である請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、通気抵抗が小さく、比表面積が大きいため、圧損を抑え、臭気の吸脱着効率や活性酸素の除去効率が高い活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0016】
第5の発明は、遷移金属酸化物と抗酸化物とが吸着剤表面に担持されている請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、遷移金属酸化物と抗酸化物の分散性を高め、比表面積を大きくすることができ、また吸着剤と近接しているため遷移金属酸化物の触媒作用により転化された中間生成物を速やかに吸着剤へ移動させることで酸化物表面が清浄になるため、酸化物の触媒を効率良く働かせることができ、部屋や車などの生活空間で発生する有害物質や臭気物質を効率良く除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0017】
第6の発明は、遷移金属酸化物がスピネル型構造の酸化コバルトであり、活性酸素の一種である過酸化水素を分解し、かつ酸化触媒作用により臭気物質中に含まれるアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、吸着剤で吸着除去する請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、スピネル型構造の酸化コバルトがアルデヒド類を酸化し岩塩型構造となり、次に岩塩型構造が空気中の酸素により酸化されスピネル型構造に戻り、その繰り返しで触媒作用を発揮するため、スピネル型構造の酸化コバルトを選択することでアルデヒド類をカルボン酸へ転化する性能が高く、カルボン酸への転化率の高い脱臭体を実現できる。
【0018】
第7の発明は、アルデヒド類はアセトアルデヒドであり、カルボン酸は酢酸である請求項6記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、アセトアルデヒドはタバコや建材の接着剤等に多く含まれている発ガン性を有するとされる有害な物質で、それを有害性が少ない酢酸に転化し、ゼオライトにより除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0019】
第8の発明は、吸着剤へ吸着したカルボン酸は通気により脱着し、繰り返し使用可能な請求項6もしくは請求項7のうちいずれか1項に記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体とするもので、吸脱着しやすい吸着剤であるゼオライト等の吸着剤を担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達したゼオライトが脱着再生され、メンテナンスフリーで長期間使用できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0020】
第9の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体と、タバコの煙を含む空気を吸引する吸引手段とを備えた空気清浄機とするもので、タバコの煙に含まれる有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着剤で吸着除去でき、同時に含まれる過酸化水素などの活性酸素を除去する空気清浄機を提供できる。
【0021】
第10の発明は、活性酸素消去能を備えた脱臭体により脱臭された空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記脱臭体から脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口と、前記導入口と前記排気口との流路を切り替える切り替え手段とを前記活性酸素消去能を備えた脱臭体の風下に配置した請求項9記載の空気清浄機とするもので、吸着剤を担持した脱臭体に通気することにより、飽和吸着に達した吸着剤から脱着した臭気が室外もしくは車外に排気されることで、メンテナンスフリーで長期間使用できる活性酸素消去能を備えた空気清浄機を実現できる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態1)
図1(a)は本発明の第1の実施の形態における脱臭体を示す外観模式図であり、(b)は脱臭体表面の拡大模式図である。活性酸素消去能を備えた脱臭体1は、担体3としてポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステル繊維やセルロース繊維などの有機繊維、もしくはシリカやアルミナ繊維などの無機繊維から構成される平板および波形板を交互に積層されたハニカム構造体であり、通気方向2へ低い通気抵抗で通気することができる。
【0024】
担体3は、物理吸着作用を有する吸着剤4(以下、本実施の形態では物理吸着剤4という)と遷移金属酸化物5(以下、本実施の形態では触媒酸化物5という)と抗酸化物6とを表面に担持する役割がある。
【0025】
物理吸着剤4、触媒酸化物5、抗酸化物6を担体3にアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により結合させ、担持している。このときバインダを添加し、接着力を高めると良いが、添加量が多い場合、吸着効果、触媒活性、活性酸素消去活性を低下させる原因となり、少ない場合、担体3との密着力が低下し、剥がれ落ちやすくなる。
【0026】
望ましくは、物理吸着剤4と触媒酸化物5と抗酸化物6との合計量とバインダの固形分とが重量比で1:1〜20:1程度である。
【0027】
また、バインダは無機系としてはナトリウムやカリウム成分を極力除去したコロイダルシリカ、リン酸アルミニウムなどが適しており、有機系としては水に酢酸ビニル、アクリル、エチレン、ビニルアルコール、変性ウレタンなどの樹脂粒子や、これらの樹脂からなる共重合樹脂粒子を分散させた水系エマルジョン型接着剤を用いるのが望ましい。
【0028】
この有機系バインダは、水を蒸発させることにより、樹脂粒子や共重合樹脂粒子の濃度が高くなり、そしてこれら粒子の表面同士がくっつき始め、粒子表面が互いに溶け合い、被膜を形成することで接着作用が発揮される。
【0029】
このように樹脂皮膜となるため、有機繊維に担持後も加工性に優れる一方で、無機系バインダより触媒性能は劣るという短所もある。
【0030】
物理吸着剤4は、ゼオライト、シリカゲル、セピオライト、アルミナ、活性炭等の物理吸着作用を有する物質が用いられるが、臭気物質の吸脱着速度が速いゼオライトが最も望ましく、特にシリカ/アルミナ比が大きいため極性が小さい疎水性ゼオライトを用いるとよい。
【0031】
これにより、非極性の臭気分子も吸着するようになり、また雰囲気の湿度に依存することなく臭気分子を吸脱着できるため、多様な臭気分子を吸脱着できる脱臭体を実現できる。
【0032】
また、ゼオライトやセピオライト等にはナトリウムやカリウム成分を極力除去したものを用いることが望ましい。これにより触媒酸化物5によるアルデヒド類からカルボン酸への転化率が向上する。
【0033】
本実施の形態で用いた疎水性ゼオライトは0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではない。
【0034】
しかしながら、大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。
【0035】
さらに、物理吸着剤4の形は図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は物理吸着剤4の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。
【0036】
活性酸素消去能を備えた脱臭体の表面に凹凸を設けることにより、単位体積あたりの表面積を増やすことができるようになり、より効果的である。
【0037】
本実施の形態では、活性酸素消去能を備えた脱臭体1に有機繊維で構成される平板および波形板を交互に積層されたハニカム構造体を用いたが、物理吸着剤4と触媒酸化物5と抗酸化物6との混合物を格子状に押出成型を行ったハニカム構造体を用いても良い。
【0038】
これにより、バインダを用いることがなくハニカム構造体全体を物理吸着剤4と触媒酸化物5と抗酸化物6とにすることができるので、吸着効果およびカルボン酸への転化率、活性酸素消去効率が高い活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0039】
触媒酸化物5は、コバルトを主成分とする酸化物でスピネル型の結晶構造のCo3O4とすることが望ましい。
【0040】
その他、Mn、Fe、Ni、Cu、Znなどの遷移金属を加え、スピネル型構造の複合酸化物としても良い。これは、スピネル型構造の酸化物触媒がアルデヒド類を酸化し岩塩型構造となり、次に岩塩型構造が空気中の酸素により酸化されスピネル型構造に戻り、その繰り返しで触媒作用を発揮するため、スピネル型構造を選択することでアルデヒド類をカルボン酸へ転化する性能が高く、カルボン酸への転化率の高い活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0041】
また、触媒酸化物5は抗酸化物6が有する活性酸素消去能を促進あるいは増幅させる触媒的な役割を有する。
【0042】
また、活性酸素が過酸化水素である場合、触媒酸化物5が直接過酸化水素を分解する触媒作用を有する。
【0043】
過酸化水素はタバコの煙に多く含まれ、同時に含まれるアセトアルデヒドの分解も行うことができるため、タバコ臭を脱臭する空気清浄機の脱臭フィルターに最適である。本実施の形態で用いた触媒酸化物5は0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではない。
【0044】
しかしながら、大きさを小さくした方が、同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。
【0045】
さらに、触媒酸化物5の形も図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は触媒酸化物5の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。
【0046】
触媒酸化物5もアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により、担体3あるいは物理吸着剤4に担持されている。
【0047】
特に、物理吸着剤4表面に担持されている場合、触媒酸化物5の触媒作用によりアルデヒドから転化されたカルボン酸類を速やかに吸着剤へ移動、吸着させることで触媒酸化物5表面が清浄になり反応サイトが空くため、これを繰り返すことで次々と触媒作用を発揮させることができ、部屋や車などの生活空間で発生する有害物質や臭気物質を効率良く除去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0048】
抗酸化物6は、ビタミンC、ビタミンE、リコピン、カテキン類、タンニン、イソフラボン、ポリフェノール類、没食子酸などが挙げられ、これらのうち少なくとも一種を用いることが望ましい。
【0049】
本実施の形態で用いた抗酸化物6は0.1〜10μm程度の径であるが、この大きさに限定されるものではないが、大きさを小さくした方が同体積での表面積を大きくとることができるので好ましい。
【0050】
さらに、抗酸化物6の形も図中にあるような球状に限定されるものではなく、また実際は抗酸化物6の一次粒子が集まり、二次粒子を形成したり、さらには三次粒子を形成したりした粒子が担体3へ担持されていると考えられる。
【0051】
抗酸化物6もアンカー効果もしくは物理的な結合もしくは化学的な結合などの作用により、担体3あるいは物理吸着剤4、触媒酸化物5に担持されている。
【0052】
次に担持方法について説明する。物理吸着剤4と触媒酸化物5と抗酸化物6との担体3への担持方法については、スプレーなどを用いた噴霧法、ディップ法などあるが、担体3が無機繊維の場合、物理吸着剤4と触媒酸化物5と抗酸化物6と必要に応じてバインダを水や溶剤などに分散させ、ハニカム構造体をそのスラリーに浸漬することで担持するディップ法が望ましい。
【0053】
この後、乾燥させることにより活性酸素消去能を備えた脱臭体が完成する。抗酸化物が水あるいは溶剤に溶解する物質である場合、乾燥時に担体3、物理吸着剤4、触媒酸化物5の表面に析出することとなる。
【0054】
乾燥温度は、抗酸化物6の活性酸素消去能が壊れない温度、すなわち60〜100℃程度が望ましい。
【0055】
また担体3が有機繊維の場合、抄紙工程中に有機繊維に加えて物理吸着剤4と触媒酸化物5と抗酸化物6とを混合しておくことで抄紙を行い、これらを担持させることができる。
【0056】
ディップ法の場合、粉末状の物理吸着剤4と触媒酸化物5とを分散させスラリーを作製するが、物理吸着剤4および触媒酸化物5の平均径は小さい方が望ましく、一次粒子の平均径で1μm以下程度が望ましい。
【0057】
さらには、なるべく凝集が起こらないように水や溶媒に分散させることが望ましく、必要に応じて分散剤を添加すると良い。
【0058】
(実施の形態2)
図2は本発明の第2の実施の形態における脱臭体の模式図である。
【0059】
部屋あるいは車10内部に空気清浄機11が設置されている。空気清浄機11は吸引手段13と、吸気口14と、活性酸素消去能を備えた脱臭体15と、脱臭された空気16を部屋に戻す導入口17と、臭気を含む空気20を部屋あるいは車10内から排気する排気口19からなる。
【0060】
そして、導入口17と排気口19との間には、これらを切り替える切り替え手段18がある。
【0061】
なお、図2には記載していないが、タバコの臭気などに反応するセンサーを取り付け、吸引手段13や切り替え手段18と連動させても良い。
【0062】
また、本発明の空気清浄機はエアコンや換気扇等に取り付けて、あるいは組み込んで用いることもできる。
【0063】
吸引手段13はシロッコファン、ターボファン、プロペラファン、クロスフローファン、貫流ファン等が一般の吸引手段として使用され、特に限定するものではない。
【0064】
本実施の形態ではプロペラファンを用いた。また、吸引手段13は活性酸素消去能を備えた脱臭体15への送風手段としても用いることができる。
【0065】
次に動作方法について説明する。部屋あるいは車10内でタバコを吸った場合、空気清浄機11はタバコの煙を含む空気12を吸引手段13により吸気口14を通して吸い込み、活性酸素消去能を備えた脱臭体15を通り脱臭される。
【0066】
このとき同時に、タバコの煙に含まれる過酸化水素やヒドロキシラジカルのような活性酸素も消去される。
【0067】
活性酸素が消去され、脱臭された空気16は導入口17を通り、部屋あるいは車10へ戻される。
【0068】
活性酸素消去能を備えた脱臭体15が飽和吸着に達し、部屋あるいは車10内に臭気がない場合、切り替え手段18によって通気方向を室外あるいは車外へ排出する排気口19側へ切り替え、吸引手段13を作動させ通気させることにより、臭気が飽和吸着した物理吸着作用を有する吸着剤から臭気を脱着させ、脱着させた臭気を含む空気20を室外あるいは車外へ排出することができる。
【0069】
したがって、この動作を繰り返すことにより、メンテナンスフリーで長期間使用できる空気清浄機を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上のように、本発明にかかる活性酸素消去能を備えた脱臭体およびそれを用いた空気清浄機は、上述したように生活空間で発生する臭気を吸着除去できるとともに、主にタバコの煙や排ガスに含まれる活性酸素を消去できる活性酸素消去能を備えた脱臭体を実現できる。
【0071】
そして、特に有害なアセトアルデヒドを常温で有害性の小さい酢酸へと転化し、吸着除去できる活性酸素消去能を供えた脱臭体を提供することができ、また人の手を煩わすことなく自動的に吸脱着を制御し、メンテナンスフリーで長期間使用できる空気清浄機を提供することができる。
【0072】
さらに、活性酸素消去能を備えた脱臭体はエアコン、生ごみ処理機、VOC分解機、介護用脱臭機、排ガス処理機、換気扇などへ搭載あるいは取り付けることにより、メンテナンスフリーで長期間利用できる脱臭機能、有害物質分解機能を付加することができるものである。また、空気清浄機は部屋に設置されたエアコンや換気扇、カーエアコン等と連動させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】(a)本発明の第1の実施の形態における活性酸素消去能を備えた脱臭体を示す外観模式図(b)本発明の第1の実施の形態における活性酸素消去能を備えた脱臭体表面の拡大模式図
【図2】本発明の第2の実施の形態における空気清浄機を示す断面模式図
【符号の説明】
【0074】
1 活性酸素消去能を備えた脱臭体
2 通気方向
3 担体
4 物理吸着作用を有する吸着剤
5 遷移金属酸化物
6 抗酸化物
10 部屋あるいは車
11 空気清浄機
12 タバコの煙を含む空気
13 吸引手段
14 吸気口
15 活性酸素消去能を備えた脱臭体
16 脱臭された空気
17 導入口
18 切り替え手段
19 排気口
20 臭気を含む空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理吸着作用を有する吸着剤と、遷移金属酸化物と、活性酸素消去能を有する抗酸化物と、前記吸着剤と前記遷移金属酸化物と前記抗酸化物とを担持する担体とから構成され、前記遷移金属酸化物は臭気物質に対して酸化触媒作用を有し、かつ前記抗酸化物の活性酸素消去を促進する活性を有することを特徴とする、活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項2】
吸着剤が疎水性ゼオライトであることを特徴とする、請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項3】
抗酸化物はビタミンC、ビタミンE、リコピン、カテキン類、タンニン、イソフラボン、ポリフェノール類、没食子酸の少なくとも一種を含むことを特徴とする、請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項4】
担体がハニカム構造体であることを特徴とする、請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項5】
遷移金属酸化物と抗酸化物とが吸着剤表面に担持されていることを特徴とする、請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項6】
遷移金属酸化物がスピネル型構造の酸化コバルトであり、活性酸素の一種である過酸化水素を分解し、かつ酸化触媒作用により臭気物質中に含まれるアルデヒド類をカルボン酸へ転化後、吸着剤で吸着除去することを特徴とする、請求項1記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項7】
アルデヒド類はアセトアルデヒドであり、カルボン酸は酢酸であることを特徴とする、請求項6記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項8】
吸着剤へ吸着したカルボン酸は通気により脱着し、繰り返し使用可能であることを特徴とする、請求項6〜7のうちいずれか1項に記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の活性酸素消去能を備えた脱臭体と、タバコの煙を含む空気を吸引する吸引手段とを備えた空気清浄機。
【請求項10】
活性酸素消去能を備えた脱臭体により脱臭された空気を室内あるいは車内へ導入する導入口と、前記脱臭体から脱着した臭気を室外あるいは車外へ排気する排気口と、前記導入口と前記排気口との流路を切り替える切り替え手段とを前記活性酸素消去能を備えた脱臭体の風下に配置したことを特徴とする、請求項9記載の空気清浄機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−111311(P2007−111311A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−306899(P2005−306899)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】