説明

流し台

【課題】収納ラックから流れ落ちる汚水等を排水口に確実に案内して排出することができる流し台を提供する。
【解決手段】
流し台の水槽10の底面の後方側部分に、段部11を介して低い位置にある排水用凹部20を備え、前記排水用凹部20の上方空間を、流し台用の小物を収納するための収納ラック21の設置空間とし、前記収納ラック21が、多数の線材を所定間隔を置いて組み込んで構成された上方開放型の水切り籠からなり、前記収納ラック21の前後寸法を前記排水用凹部20の前後寸法とほぼ同一の大きさに設定し、かつ、該収納ラック21の左右寸法を前記排水用凹部20の左右寸法とほぼ同一の大きさに設定した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流し台用の小物を収納するための収納ラックを、流し台の水槽の壁面等に備えた流し台に関する。
【背景技術】
【0002】
上記流し台においては、例えば水槽の後側のほぼ左右中央に後側に奥まった凹部を備えさせ、その凹部内に収納ラックを位置させて凹部を構成する縦壁面に備えさせた係止手段にて係止保持させたものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−102559号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1の構成の収納ラックは、多数の線材にて籠状に形成されていることから、使用直後の洗浄用タワシやスポンジ等の洗浄用具を収納ラックに収納していると、その洗浄用具から汚水が下方の水槽の底面に流れ落ちることがある。この流れ落ちた汚水は、底面の傾斜案内面によって排水口まで案内されて排水されることになるが、排水量が多い場合に、水槽の前方に位置する底面である洗い場まで前記汚水が流れ込んで、洗い終わって濯ぎを行うために置いている食器等に付着してしまう結果、再度洗わなければならない不都合が発生することがあった。
【0004】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、収納ラックから流れ落ちる汚水等を排水口に確実に案内して排出することができる流し台を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述の課題解決のために、流し台の水槽の底面の後方側部分に、段部を介して低い位置にある排水用凹部を備え、前記排水用凹部の上方空間を、流し台用の小物を収納するための収納ラックの設置空間としたことを特徴としている。
上記のように、排水用凹部の上方に収納ラックを設置することによって、収納ラックから落下する汚水等は、全て低い位置にある排水用凹部に落下するから、高い位置にある底面である洗い場を構成する底面にまで移動することを確実に阻止することができる。
【0006】
前記収納ラックが、多数の線材を所定間隔を置いて組み込んで構成された上方開放型の水切り籠からなり、前記収納ラックの前後寸法を前記排水用凹部の前後寸法とほぼ同一の大きさに設定し、かつ、該収納ラックの左右寸法を前記排水用凹部の左右寸法とほぼ同一の大きさに設定してもよい。
【0007】
前記底面の外周縁から上方に立ち上げられて水槽を構成する周壁が、前方に位置して左右方向に直線状に延びる前方側縦壁部と、この前方側縦壁の左右両端から後方へ直線状に延びる左右一対の横側縦壁と、これら横側縦壁の後端から後方に向かって左右方向中央側に直線状に延びる傾斜縦壁と、これら左右一対の傾斜縦壁の後端同士を連結するとともに前記前方側縦壁部にほぼ平行となる直線状の後方側縦壁とからなり、前記収納ラックを、前記左右の傾斜縦壁の壁面及び前記後方側縦壁の壁面に沿った形状に構成してもよい。
【0008】
前記後方側縦壁の左右方向一端から離間する側へ延長させた延長線とこの延長線側に位置する横側縦壁の後端から後方へ延長させた延長線と該延長線側に位置する傾斜縦壁とで形成される三角形状のデッドスペースを蛇口の配管スペースとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
排水用凹部の上方空間を、流し台用の小物を収納するための収納ラックの設置空間とすることによって、収納ラックから落下する汚水等の全てを、低い位置にある排水用凹部に落下させることができるから、高い位置にある底面である洗い場を構成する底面にまで移動することを確実に阻止することができる。従って、収納ラックから流れ落ちる汚水等を排水用凹部を介して排水口に確実に案内して排出することができる流し台を提供することができる。
【0010】
前記収納ラックが、多数の線材を所定間隔を置いて組み込んで構成された上方開放型の水切り籠からなり、前記収納ラックの前後寸法を前記排水用凹部の前後寸法とほぼ同一の大きさに設定し、かつ、該収納ラックの左右寸法を前記排水用凹部の左右寸法とほぼ同一の大きさに設定することによって、排水用凹部の上方空間を全て収納ラックの設置空間に利用することができ、多数の小物を収納することができながらも、収納ラックから流れ落ちる汚水等を排水用凹部へ確実に落下させることができる。
【0011】
前記底面の外周縁から上方に立ち上げられて水槽を構成する周壁が、前方に位置して左右方向に直線状に延びる前方側縦壁部と、この前方側縦壁の左右両端から後方へ直線状に延びる左右一対の横側縦壁と、これら横側縦壁の後端から後方に向かって左右方向中央側に直線状に延びる傾斜縦壁と、これら左右一対の傾斜縦壁の後端同士を連結するとともに前記前方側縦壁部にほぼ平行となる直線状の後方側縦壁とからなり、前記収納ラックを、前記左右の傾斜縦壁の壁面及び前記後方側縦壁の壁面に沿った形状に構成することによって、収納ラックを方向の異なる3つの縦壁の壁面にて安定よく接当支持することができる。
【0012】
前記後方側縦壁の左右方向一端から離間する側へ延長させた延長線とこの延長線側に位置する横側縦壁の後端から後方へ延長させた延長線と該延長線側に位置する傾斜縦壁とで形成される三角形状のデッドスペースを蛇口の配管スペースとすることによって、収納ラックの蛇口からの水が掛かってしまうことを回避し易いだけでなく、蛇口の配管スペースを水槽の後方側に確保する構成に比べて、流し台が前後方向に大型化することを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1に、本発明の流し台3を組み込んだシステムキッチンを示している。前記システムキッチンは、IHクッキングヒータ1を上部に備えたヒータキャビネット2と、蛇口J及び流し台3を上部に備えたシンクキャビネット4と、一段低くなった作業スペース用の凹部5が上部に備えた作業台用キャビネット6とを左右方向に併設しているが、これらのキャビネットに代えて、他のキャビネットを併設してもよいし、シンクキャビネット4を単独で使用することもできる。又、前記3つのキャビネット2,4,6の下方には、スライド自在な引出し7,8,9を備えているが、それらキャビネット2,4,6自体の具体的構成も、自由に変更可能である。
【0014】
図1〜図6に示すように、前記流し台3を構成する水槽10の底面の前方側に、段部11を挟んで一段(複数段でもよい)高い位置にある第1底面12を備え、該底面の後方側に、該段部11を挟んで一段(複数段でもよい)低い位置にある第2底面13を備え、前記第1底面12と前記第2底面13とに位置する状態で排水用の開口14が形成され、該開口14のうち、前記第1底面12側に位置する半円状の第1開口を上方から閉じる半円状の第1蓋部15と、前記第2底面13側に位置する半円状の第2開口を上方から閉じる半円状の第2蓋部16と、これら第1蓋部15と第2蓋部16とを連結する連結部17(図5参照)とを備えた覆い蓋18を備え、該覆い蓋18に前記開口14へ連通する連通口19(図5参照)を備えているが、この覆い蓋18は無くてもよい。前記第2底面13は、水槽10の後側に位置し、ほぼ台形状で前記第1底面12よりも前後方向で小さい面積、つまり第1底面12のほぼ1/3程度の面積の大きさになっているが、位置及び形状並びに大きさは自由に変更可能であるが、洗い場となる第1底面12よりも小さな面積に設定することになる。又、前記排水用の開口14を第2底面13にのみ設けて実施することもできる。前記開口14を左右方向ほぼ中央部でかつ後方寄り位置に備えたが、どこに設けてもよいし、又、開口14の形状は、円形の他、例えば矩形状又は楕円形等であってもよい。
【0015】
前記第1底面12は第2底面13(後方側)側ほど下方に位置する傾斜面になっており、第2底面13側(後方側)へ排水を案内することができるようになっている。又、第2底面13は、左右方向ほぼ中央に形成された前記開口14側へ排水が案内することができるように、左右両端からそれぞれ中央へ向かうほど下方に位置する傾斜面になっているが、開口14の位置に合わせて変更することになる。
【0016】
前記一段下がった第2底面13と該第2底面13の前端が連結される前記段部11と該第2底面13の前端を除く左右端及び後端が連結される後述する縦壁27,28,29の壁面とで、排水用凹部20を構成している。そして、前記排水用凹部20の上方空間を、流し台用の小物を収納するための収納ラック21の設置空間に利用している。前記排水用凹部20を間口方向(前後方向)から見た時の流し台3の左右幅全域に渡って形成することによって、排水用凹部20の体積を増大させることができるから、排水量が増大した場合でも、排水用凹部20に移動した排水が第1底面12側へ移動することを確実に回避することができる利点がある。
【0017】
図2〜図6に示すように、前記収納ラック21が、多数の棒状の線材を縦横に所定間隔を置いて組み込んで構成された上方開放型の水切り籠からなり、前記収納ラック21は、水槽10を構成する後方側縦壁29に取り付けられた左右一対の突起22,22に係止する円弧状の係止部23,23を備えている。又、前記収納ラック21の前後寸法を前記排水用凹部20の前後寸法とほぼ同一の大きさに設定し、かつ、該収納ラック21の左右寸法を前記排水用凹部20の左右寸法とほぼ同一の大きさに設定することによって、排水用凹部20の上方空間を全て収納ラック21の設置空間に利用することができ、多数の小物を収納することができながらも、収納ラック21から流れ落ちる汚水等を排水用凹部へ確実に落下させることができるようにしているが、排水用凹部20よりも小さな寸法に収納ラック21を構成して実施することもできる。又、前記排水用凹部20が平面視ほぼ台形状になっていて、これに合わせて収納ラック21も平面視ほぼ台形状に構成しているが、排水用凹部20及び収納ラック21の形状は自由に変更可能である。
【0018】
前記2つの底面12,13の外周縁から上方に立ち上げられて水槽10を構成する周壁が、前方に位置して左右方向に直線状に延びる前方側縦壁部24と、この前方側縦壁24の左右両端から後方へ直線状に延びる左右一対の横側縦壁25,26と、これら横側縦壁25,26の後端から後方に向かって左右方向中央側に直線状に延びる傾斜縦壁27,28と、これら左右一対の傾斜縦壁27,28の後端同士を連結するとともに前記前方側縦壁部24にほぼ平行となる直線状の後方側縦壁29とからなり、前記収納ラック21を、前記左右の傾斜縦壁27,28の壁面及び前記後方側縦壁29の壁面に沿った形状に構成することによって、収納ラックを3つの縦壁27,28,29の壁面にて安定良く接当支持することができるようにしている。
【0019】
前記後方側縦壁29の左右方向一端から離間する側へ延長させた延長線とこの延長線側に位置する横側縦壁26の後端から後方へ延長させた延長線と該延長線側に位置する傾斜縦壁28とで形成される三角形状のデッドスペースを蛇口Jの配管30(図1参照)の配管スペースとすることによって、蛇口Jの配管スペースを水槽の後方側に確保する構成に比べて、流し台3が前後方向に大型化することを回避することができる利点があるが、蛇口Jの配管スペースを水槽の後方側に確保する構成であってもよい。
【0020】
図1〜図6に示すように、前記収納ラック21の上端開口の一部を覆うための2枚のプレート31,32を左右方向に並べた状態で備え、右側のプレート32を左右方向にスライド自在に構成されている。前記プレート31又は32には、多数の排水孔31A又は32Aを備えており、例えばプレート31,32に一時的に載置したタワシやスポンジ等から流れ出す汚水が排水孔31A又は32Aを通して収納ラック21に案内され、下方の排水用凹部20に落下するように構成しているが、プレート31,32は無くてもよい。
図7では、前記2つのプレート31,32に加えて、右側に1つのプレート36を設けた場合を示しており、プレートの個数及び形状は自由に変更可能である。右側のプレート36も他の2つのプレート31,32と同様に形状のみ異なるだけで基本構成は同一であり、後述する。
【0021】
又、前記一方のプレート31が、前記タワシやスポンジ等の小物を載置可能な1/4円弧形状の扁平板部31aと、この扁平板部31aの3辺から下方に垂下した3枚の垂直板部31bとからなる金属製のプレート本体と、前記垂直板部31bの下端に嵌まり込む合成樹脂製のカバー部材31cとから構成され、又、他方のプレート32が、前記タワシやスポンジ等の小物を載置可能な長方形状の扁平板部32aと、この扁平板部32aの4辺から下方に垂下した4枚の垂直板部32bとからなる金属製のプレート本体と、前記垂直板部32bの下端に嵌まり込む合成樹脂製のカバー部材32cとから構成されている。そして、収納ラック21の前端に上方から被せられた金属製の前側プレート33と前記後方側縦壁29の壁面との間に前記プレート31,32を左右方向にスライド自在に支持させている。又、図7に示す第3のプレート36も、前記タワシやスポンジ等の小物を載置可能なほぼ台形状の扁平板部36aと、この扁平板部36aの4辺から下方に垂下した4枚の垂直板部36bとからなる金属製のプレート本体と、前記垂直板部36bの下端に嵌まり込むほぼ台形状で環状の合成樹脂製のカバー部材36cとから構成されている。
【0022】
前記プレート31,32及び前側プレート33に代えて、図8に示すように、構成してもよい。つまり、収納ラック21の上端開口全域に渡って覆い被せられる載置固定式の固定プレート37と、この固定プレート37の特定箇所に頻繁に使用する小物を出し入れ可能な開口34Aを構成する取り外し自在な開口形成部材34と、この開口形成部材34の左側(右側でもよい)に収納ラック21内に収納された小物を取り出すことができるように開口を形成するための取り外し可能な可動プレート35とから構成している。前記固定プレート37の上面を構成する扁平板部37aには、排水用の貫通孔37Aが形成され、扁平板部37aの外周縁から下方に垂下する環状で板状のスカート部37bを備えている。又、前記可動プレート35にも貫通孔35Aが形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】システムキッチンの斜視図である。
【図2】シンクキャビネットの上部を示す分解斜視図である。
【図3】シンクキャビネットの上部を示す斜視図である。
【図4】シンクキャビネットの平面図である。
【図5】図4におけるII−II線断面図である。
【図6】図4におけるI−I線断面図である。
【図7】3つのプレートの斜視図である。
【図8】別のプレートの斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1…クッキングヒータ、2…ヒータキャビネット、3…流し台、4…シンクキャビネット、5…排水用凹部、6…作業台用キャビネット、7,8,9…引出し、10…水槽、11…段部、12,13…底面、14…開口、15,16…蓋部、17…連結部、18…覆い蓋、19…連通口、20…排水用凹部、21…収納ラック、22…突起、23…係止部、24…前方側縦壁部、25,26…横側縦壁、27,28…傾斜縦壁、29…後方側縦壁、30…配管、31,32,36…プレート、31A,32A,36A…排水孔、31a,32a,36a…扁平板部、31b,32b,36b…垂直板部、31c,32c,36c…カバー部材、33…前側プレート、37…固定プレート、37A…貫通孔、37a…扁平板部、37b…スカート部、34…開口形成部材、34A…開口、35…可動プレート、35A…貫通孔、J…蛇口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流し台の水槽の底面の後方側部分に、段部を介して低い位置にある排水用凹部を備え、前記排水用凹部の上方空間を、流し台用の小物を収納するための収納ラックの設置空間としたことを特徴とする流し台。
【請求項2】
前記収納ラックが、多数の線材を所定間隔を置いて組み込んで構成された上方開放型の水切り籠からなり、前記収納ラックの前後寸法を前記排水用凹部の前後寸法とほぼ同一の大きさに設定し、かつ、該収納ラックの左右寸法を前記排水用凹部の左右寸法とほぼ同一の大きさに設定したことを特徴とする請求項1記載の流し台。
【請求項3】
前記底面の外周縁から上方に立ち上げられて水槽を構成する周壁が、前方に位置して左右方向に直線状に延びる前方側縦壁部と、この前方側縦壁の左右両端から後方へ直線状に延びる左右一対の横側縦壁と、これら横側縦壁の後端から後方に向かって左右方向中央側に直線状に延びる傾斜縦壁と、これら左右一対の傾斜縦壁の後端同士を連結するとともに前記前方側縦壁部にほぼ平行となる直線状の後方側縦壁とからなり、前記収納ラックを、前記左右の傾斜縦壁の壁面及び前記後方側縦壁の壁面に沿った形状に構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の流し台。
【請求項4】
前記後方側縦壁の左右方向一端から離間する側へ延長させた延長線とこの延長線側に位置する横側縦壁の後端から後方へ延長させた延長線と該延長線側に位置する傾斜縦壁とで形成される三角形状のデッドスペースを蛇口の配管スペースとしたことを特徴とする請求項3記載の流し台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−7907(P2009−7907A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172817(P2007−172817)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】