説明

流れ終結界面を含んだ毛管流路を有するセンサストリップ

流路14を有するデバイスであって、流路内の液体の流れを制御するために少なくとも1つの流れ終結界面122が用いられる。流れ終結界面122aは液体の流れがこの界面を越えて流れるのを阻止する。一態様では、本発明は、例えばバイオセンサなどのセンサ100をストリップの形態で提供し、このセンサは電気化学的または光学的測定に適している。このセンサはベース層102およびカバー層116を含み、ベース層はスペーサ層112によってカバー層から分離されている。ベース層102、カバー層116、およびスペーサ層112は流路114を定め、液体試料がそこに引き込まれ、かつ毛管引力によってそこを流れる。試料の流れは流路内に位置決めされた流れ終結界面122aによって終結させされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は毛管引力によって流れが生じる経路内の流体の流れを制御するデバイスに関する。さらに詳細には、本発明はセンサの反応部位への液体試料の取込みを制御するセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
毛管引力によって流れが生じる経路内の流体の流れを制御することは、微小流体システムまたは微量分析システムにおいて重要である。多くの場合、化学反応が実行される領域内の流体の容量を制御して、反応の正確な制御または対象とする被検体の正確な定量化あるいはその両方を確実にすることが必要となる。
【0003】
別の反応段階を開始する前にある反応段階を完了するためには、流体の流れの制御が必要となるかもしれない。流体の流れの制御は希釈の作用を制御するためにも必要となるかもしれない。流体の流れの制御は前記反応の完了後に流れを維持するためにも必要となるかもしれない。
【0004】
先行技術は試験試料中の被検体の濃度を測定するための多数の電気化学的または光学的テストストリップを開示している。特に、先行技術は全血中の血糖値の測定のための使い捨て式のテストストリップを開示しており、これは主に被検体の反応を生成するのに用いられる反応層、測定のモード、および測定に用いられるアルゴリズムを扱っている。
【0005】
このようなテストストリップへの液体試料の導入は様々な方法で達成され得る。簡単な方法は反応部位の上に液体の試料を直接設置することである。第2の方法は毛管引力によって液体試料を引き上げることを可能にするのに十分小さい寸法を有する腔を定めることである。毛管引力を使用する別の例は試料の経路内にメッシュを設置して、灯心作用によって試料を運んで反応部位を充填することである。
【0006】
米国特許第5,509,410号明細書は、読出し回路に脱着可能に取り付けられるように構成された(好適には平坦である)細長い支持体を備えたストリップを開示しており、第1の導体および第2の導体は各々支持体に沿って延在し、前記回路への接続手段を含んでいる。液体混合物と第1の導体とを接触させるように位置決めされた活性電極は化合物および(好適には)電子伝達体を伴う反応を触媒することのできる酵素の沈殿物を含み、酵素触媒反応と第1の導体との間で電子を運ぶことができる。基準電極が前記混合物と第2の導体とを接触させるように位置決めされている。
【0007】
米国特許第5,141,868号明細書は腔または複数の腔を有する特異的に反応する試料を採取および試験するデバイスを開示しており、その腔の寸法は毛管引力によって液体試料を腔または複数の腔に引き出すことを可能にするのに十分小さなものになっている。その腔は試料の1つまたは複数の電気的特性を測定するための電極配置を含む。腔の壁の表面は任意選択でデバイス内で実行される試験に適した材料のコーティングを有している。デバイス内では、試料は毛管引力によってカバー層および空気の界面によって定められた地点までバイオセンサに流れ込む。このデバイスの欠点は、結合とプレートの不連続によって形成された開口に達するまで腔が充填されることにある。腔の寸法が試料が休止状態に達する前にアッセイが始まるようなものになっている場合、流体の試料中の被検体の濃度の測定の誤差が発生する。
【0008】
米国特許第5,759,364号明細書、第5,437,999号明細書、第5,997,817号明細書、および第6,207,000号明細書は電気化学的テストストリップ中で生体試料を運ぶために毛管引力を利用する流路の使用の態様を記載している。
【0009】
米国特許第5,628,890号明細書は、基体の表面とカバー層との間に設置されたメッシュ層を利用して化学的灯心作用により試料が流路に流れ込むように試料の表面張力を低減させるセンサを開示している。流路はメッシュを通して疎水性絶縁層を印刷することによって定められる。メッシュ層の塗布は時間のかかる工程であり、メッシュ層を用いたバイオセンサはメッシュ層を使用しないバイオセンサに比べてより大きな試料を必要とするかもしれない。これは主として、メッシュ層を挿入するためには、より大きな寸法を有する流路が必要となるかもしれないためである。このメッシュ層を除去すれば、時間は節約され、コストは縮小され、かつ必要となる試料の容量は低減されるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は少なくとも1つの流れ終結界面を用いて流路内の液体の流れが制御される流路を有するデバイスを提供する。流れ終結界面は液体が界面を越えて流れるのを阻止する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様では、例えばバイオセンサなどのセンサをストリップの形態で提供し、該センサは電気化学的または光学的測定に適している。このセンサはベース層およびカバー層を含み、ベース層はスペーサ層によってカバー層から分離されている。ベース層、カバー層、およびスペーサ層は、液体試料が引き込まれ、かつ毛管引力を用いて流れる流路を定める。試料の流れは流路内に位置決めされた流れ終結界面によって終結させられる。
【0012】
好適な実施形態では、センサはストリップの形態であり、以下のものを備える:
(a)第1の主表面および第2の主表面を有するベース層、
(b)第1の主表面および第2の主表面を有するカバー層であり、該カバー層の第1の主表面はベース層の第1の主表面に面しているカバー層、
(c)ベース層からカバー層を分離するためにカバー層の第1の主表面とベース層の第1の主表面との間に挿置されたスペーサ層、
(d)カバー層の第1の主表面、ベース層の第1の主表面、およびスペーサ層によって形成された壁を有する流路であり、該流路は反応部位を有し、該流路は液体試料をその流路の中に引き込むことができ、かつ毛管引力を用いてその流路を流れることのできるような寸法になっている流路、
(e)カバー層の第1の主表面に塗布されるか、またはその中に形成される流れ終結界面であり、該界面は流路内の液体試料の流れを終結させることができる流れ終結界面、
(f)液体試料が流路内に導かれる試料塗布ゾーン、および
(g)流路から気体を排出できるように流路と連通している少なくとも1つの開口部。
【0013】
反応部位は電極配置または光学的配置を含むことができる。ある電極配置は流路内に少なくとも1つの作用電極および基準電極を含む。電極配置に関連して、指定されたアッセイのための少なくとも1つの試薬が反応部位に位置決めされ得るか、または反応部位まで運ばれ得る。ある光学的配置は、光の源が透光性材料に光を通過させて、検出かつ測定され得る、試料中の被検体の存在または量に関連する信号、例えば、透光度または反射率を提供できるように流路の少なくとも一部分が透光性材料を含んでいることを必要とする。透光性材料に関連して、指定されたアッセイのための少なくとも1つの試薬が反応部位に位置決めされ得るか、または反応部位まで運ばれ得る。
【0014】
好適な実施形態では、スペーサ層が流路の側壁を形成し、カバー層が流路の上部壁を形成し、ベース層が流路の底部層を形成する。流路内の試料の流れを終結させるために、流れ終結界面が試料塗布ゾーンから指定された距離のカバー層の内または上に確立される。空気はスペーサ層内、カバー層内、またはベース層内に形成された少なくとも1つの開口部を介して流路から放出され得、この少なくとも1つの開口部は流路と連通している。
【0015】
流れ終結界面は1つまたは複数の物理的機構によって機能し得る。例えば、有用であることが認められた物理的機構は親水性/疎水性界面を用いることを含み、この場合、流れている流体が流路内の疎水性障壁に達するまで親水性液体は親水性表面に沿って流れる。別の場合には、疎水性流体は、流れている流体が流路内の親水性障壁に達するまで疎水性表面に沿って流れる。有用であることが認められた別の物理的機構は、流体が沿って流れる表面に対する流体の毛管引力を乱す障壁を含む。有用であることが認められたさらに別の物理的機構は、流体が沿って流れる表面に対する流体の毛管引力を乱す流路の寸法の変化を含む。
【0016】
親水性液体を含んだ試料のために親水性/疎水性界面を用いるセンサの場合、カバー層の第1の主表面は親水性である。親水性/疎水性界面は、カバー層の一部の上に疎水性材料の層を塗布して親水性/疎水性界面を生成することによってカバー層上に形成され得る。親水性液体の試料は親水性/疎水性界面に達するまでカバー層の親水性表面に沿って流れる。別の実施形態では、カバー層はその第1の主表面上に少なくとも一部分の上に親水性コーティングを有する疎水性材料の層であり得る。疎水性カバー層に塗布された親水性コーティングの一部分が機械的な剥離またはアブレーション(例えば、レーザを用いてなど)によって除去されて、カバー層の疎水性材料を露出させることによって親水性/疎水性界面が形成され得る。
【0017】
本発明は主として親水性液体について考えられているが、疎水性液体の試料に適合するように流路が改変されてよい。試料が疎水性液体の場合、第1の主表面が疎水性であるカバー層が使用されてよい。親水性材料の層を疎水性材料に塗布して親水性/疎水性界面が生成され得る。疎水性液体の試料は親水性/疎水性界面に達するまでカバー層の疎水性表面に沿って流れる。別の実施形態では、カバー層はその第1の主表面の少なくとも一部の上に疎水性コーティングを有する親水性材料の層であってよい。次に、親水性カバー層に塗布された疎水性コーティングの一部分が機械的な剥離またはアブレーションのいずれかによって除去されて、カバー層の親水性材料を露出させることにより親水性/疎水性界面を形成し得る。
【0018】
親水性表面に沿って流れる親水性液体または疎水性表面に沿って流れる疎水性液体のいずれかの場合、複数の開口部をカバー層内に形成することによって毛管引力を用いて、液体が当該主表面に沿って流れるカバー層の第1の主表面内に流れ終結界面を導入することができ、毛管引力が乱されるようにこの開口部は十分な寸法であるとともに十分に近い間隔を置いて設置され、これにより流路内に液体を流すことを可能にする力が阻止され得る。この作用は所望の場所の流路の寸法を大きくすることによってもたらされてもよく、この場合、毛管引力は乱され、これにより流路内に液体を流すことを可能にする力が阻止され得る。
【0019】
本発明によれば、流路は液体試料がそのような主表面または流れ終結界面を含んだ流路の主表面の複数の部分に沿って流れるように設計される。流路は液体試料がそのような主表面または流れ終結界面を含まない流路の主表面の複数の部分に沿って流れないように設計される。この設計は液体試料が流れ終結界面に達したときに流れを停止されるように必要となる。
【0020】
流路内の空気は流路の側壁内の少なくとも1つの開口部によって放出され得る。別の実施形態では、流路はその遠位において閉じられており、側壁内に開口部を有さない。この実施形態では、センサストリップはカバー層に形成された少なくとも1つ、好適には複数の開口部によってカバー層を通して放出され得る。カバー層内の複数の開口部を使用することにより、流路に対して不適切に位置決めされた単一の開口部の使用の結果生じる開口部が流路を外部の環境と繋がないということから生じる問題が解決される。2つ以上の開口部を使用する場合、およびこのような開口部が相互に分離される場合、開口部の少なくとも1つが流路から空気を排出するように働く可能性は高くなる。カバー層が流路の上にどのように設置されても、少なくとも1つの開口部、好適には2つ以上の開口部が流路の上に位置決めされて排出を可能にするように、開口部は十分に近接して設置されることが好ましい。これと同時に、開口部はカバー層の機械的強度が低減されないように十分な距離を空けて分離されるのが好ましい。さらに、このような開口部は流れ終結界面として働く付加的な機能を実行することができるので、液体はこのような開口部を越えて流れることはない。試料とカバー層の第1の主表面との間の毛管引力が乱されて、これにより試料が開口部を越えて流れないように、このような開口部は適切な距離だけ相互に分離されるべきである。
【0021】
本発明のセンサストリップでは、流れ終結界面は試料が指定された場所を越えて流れるのを阻止し、これにより必要となる試料の容量は低減される。試料はセンサストリップの試料塗布ゾーンに導入され、試料は毛管引力により生じる力を用いて流路を移動する。試料は流れ終結界面に達するまで流路に沿って流れる。流れ終結界面においては、毛管引力により生じた力は流れ終結界面によって生成された障害物を乗り越えるほどには十分なものではない。例えば微小流体システムなど、試料が流路の異なる支流に流れることが必要とされるシステムでは、2つ以上の流れ終結界面が使用されてよい。付加的な流れ終結界面を用いて、試料の乱れが試料の流れの所望の終結地点を越えて流れないように確実にすることもできる。
【0022】
本願明細書で用いられるように、「毛管引力」という表現は力を意味する。水が汚れの無いガラス管内にあるときに、液体自身の内部の凝集力よりも大きな液体の固体表面への付着力によって生じ、表面に沿って液体を流す力を意味する。「反応部位」という表現は、アッセイを実行するのに発生しなければならない反応に関連する材料を含んだセンサの部分を意味する。電気化学的センサの反応部位は少なくとも基準電極および作用電極を備えた配置を含む。光度測定センサの反応部位は光が流路内に伝達され、これによりそのように伝達された光の性質の変化が検出される領域を含む。センサが任意の試薬を含んでいる場合、その試薬は試料と相互に作用し、試験に関連する変化を受けることによってアッセイを支援し、これにより、いずれの配置が使用されても、試薬を伴う反応に基づく測定が電極配置または光度測定配置と関連して実行される。「親水性」という用語は水性の液体に対する親和性を有する表面の特性またはある水性の液体によって滑らかに濡れることのできる表面の特性を意味する。「疎水性」という用語は、水性の液体に対する親和性を有さない表面の特性またはある水性の液体によって滑らかに濡れることのできない表面の特性を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1および2は本発明によるセンサストリップの一実施形態を示している。図3および4は本発明に従って製造されたセンサストリップの別の実施形態を示している。これら実施形態の説明を簡単にするために、各々の実施形態において同じ機能を有するそれらのパーツには同じ参照番号を使用する。このような実施形態は主に、流れ終結界面の性質上および排気口を形成する開口部の性質上異なっている。図1および2のパーツと実質的に異なる図3および4のパーツは、添字「a」によって区別される。したがって、図3および4では、流れ終結界面および排気口のための開口部の参照番号には添字「a」が付いている。
【0024】
図1、2、3、および4を参照すると、センサストリップ100はベース層102、電気化学的使用のための導電路104a、104b、および104c、反応部位106、指定されたセンサ領域110の輪郭を描く絶縁層108、流路114の幅および深さを指定するスペーサ層112、流路114を閉じ込めるカバー層116を備える。試料は毛管引力によって流路114内を流される。
【0025】
カバー層116は試料の流れを終結させる流れ終結界面を含んでいる。図1および2では、流れ終結界面118は親水性/疎水性界面である。親水性/疎水性界面118はセンサ領域110の下流側に設置されるが、必要となる試料の容量を低減させるようにセンサ領域110にできるだけ近接して設置される。親水性/疎水性界面118は試料の流れを終結させ、その結果、試料塗布ゾーン120に導入されるときにさらなる試料がセンサ領域110に流れ込むことはないので、試料の分析が静止(休止)した標本上で実行することができ、これにより一貫性のある分析が可能となる。分析の間に試料が流れる場合、センサの反応が弱められる。したがって、試料の流れを終結させることが非常に望ましい。空気を放出して試料の摂取に抗う圧力を低減させるために、少なくとも1つの開口部122が流路114と連通してセンサストリップ100内に形成される。この圧力は試料が流路114を横断するのを妨げる。図3および4では、流れ終結界面118aは複数の開口部122aを含んでいる。これらの開口部122aは毛管引力が乱されるように、十分な寸法であり、かつ十分近接した間隔で位置決めされており、これにより流路114内に液体を流すことを可能にする力が妨げられる。
【0026】
ベース層102は不活性高分子材料で製造されるのが好ましい。ベース層102を形成するのに使用され得る代表的な材料には、ポリ(塩化ビニル)、ポリカーボネート、およびポリエステルがあるが、これに限定するものではない。ベース層102の寸法は重要ではないが、典型的なベース層102は長さ約20mm〜約40mm、幅約3mm〜約10mm、および厚さ約0.5mm〜約1mmを有する。
【0027】
導電路104a、104b、および104cは導電性材料から製造される。導電路104a、104b、および104cを形成するのに使用され得る代表的な材料には、炭素、白金、パラジウム、金、および銀と塩化銀の混合物があるが、これに限定するものではない。導電路104a、104b、および104cは、以下に記載する電気的接点123a、123b、および123cの各々ならびに電極の位置を決定する。第3の電極が存在しない場合は、第3の導電路を省略することができる。電気接点を適した測定装置(図示せず)に挿入可能である。
【0028】
反応部位106はある配置の電極、および任意選択で1つまたは複数の試薬の層を含む。センサストリップの電極配置は2つまたは3つの電極を含むことが好ましい。2つの電極システム(図示せず)では、作用電極および二重目的の基準/対向電極が電極配置を定める。反応部位106が充填されたことを示すために第3の電極(トリガ電極)が任意選択で付加され得る。トリガ電極は適切な量の試料が反応部位106を充填するまでアッセイの開始を妨げる。二電極システムは参照により本願明細書に組み入れた米国特許第5,509,410号明細書により完全に記載されている。この基準電極は第3の電極が存在しない状態でトリガ電極として働いてアッセイのシーケンスを開始するように位置決めされ得る。
【0029】
図1、2、3、および4に示した三極式システムでは、作用電極124、基準電極126、および対向電極128が電極配置を定めている。作用電極124の機能は反応部位106で発生する反応、例えば、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロギナーゼとのグルコースの反応を監視することである。基準電極126の機能は作用電極において所望の電位を維持することである。対向電極128の機能は作用電極124において必要な電流を提供することである。このシステムでは、対向電極128はトリガ電極の二次機能を有することができ、つまり、適した量の試料が反応部位106を充填するまでアッセイの開始を妨げる。
【0030】
作用電極124において生じる反応は、監視かつ制御が必要な反応、例えば、グルコースオキシダーゼまたはグルコースデヒドロギナーゼとのグルコースの反応である。基準電極126および対向電極128の機能は、作用電極124が所望の状態、すなわち、正確な電位を実際に受けるのを確実にすることである。作用電極124と基準電極126との間の電位差は作用電極124における所望の電位と同じものであると推定される。理想的な基準電極では、電流は基準電極を流れず、基準電極は定常電位を維持する。二重目的の基準/対向電極の場合、電流は二重目的の基準/対向電極を流れ、故に二重目的の基準/対向電極は定常電位を維持しない。低電流では、電位シフトは作用電極における反応が著しい影響を受けないように十分に小さいものであり、故に、二重目的の基準/対向電極は擬似基準電極と呼ばれる。二重目的の基準/対向電極はその対向電極の機能を依然として行うが、二重目的の基準/対向電極の場合、二重目的の基準/対向電極と作用電極との間に印加される電位を変えて作用電極の電位の変化を補償することはできない。
【0031】
電極124、126、および128は導電性材料で製造される。電極124、126、および128を形成するのに使用され得る代表的な材料には、炭素、白金、パラジウム、および金があるが、これに限定するものではない。基準電極126は任意選択で銀および塩化銀の混合物から成る層を含んでよい。電極124、126、および128の寸法は重要ではないが、典型的な作用電極は約0.5mm〜約5mmの面積を有し、典型的な基準電極は約0.2mm〜約2mmの面積を有し、典型的な対向電極は約0.2mm〜約2mmの面積を有する。
【0032】
作用電極124は作用領域を含んだ導電性材料の層を含む。この作用領域は作用領域の導電性材料の層の上に付着される(作用インクと呼ばれる)インクを含み得る。作用インクは対象となる被検体に反応する試薬系を含む。
【0033】
作用領域は対象の試験に適した試薬を含んだ作用インクから形成される。この試薬は酵素(例えば、グルコースアッセイ用のグルコースデヒドロギナーゼまたはグルコースオキシダーゼ)、酸化還元媒介物(例えばフェナントロリンキノンなどの有機化合物、例えばフェロセンまたはフェロセン誘導体などの有機金属化合物、例えばフェリシアン化物などの配位錯体)、および導電性充填剤(例えば炭素)または非導電性充填剤(例えばシリカ)の混合物を含んでよい。別の場合には、酵素の代わりに作用領域は測定される酵素に対し触媒活性のある基体を含み得る。それぞれの印刷インクは電極124、任意選択で電極126または電極128あるいは両方に固定長の離散領域として加えられる。各々の印刷インクはスクリーン印刷法によって塗布され得る、この印刷インクは多糖類(例えば、グアールガム、アルギン酸塩、セルロースまたは例えばヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体)、ゼラチン加水分解物、酵素安定剤(例えば、グルタミン酸塩またはトレハロース)、膜形成高分子(例えば、ポリビニルアルコール)、導電性充填剤(例えば、炭素)または非導電性充填剤(例えば、シリカ)、消泡剤、緩衝剤、あるいはこれらを組み合わせたものをさらに含む。
【0034】
試料が作用電極124、基準電極126、および対向電極128(または別の実施形態においては、二重目的の基準/対向電極および作用電極)を覆うことができないほど離して電極を離間させることはできない。試料が横断する経路の長さ(すなわち、試料経路)は必要となる試料の容量を最小化するためにできるだけ短く保たれることが好ましい。試料経路の最大長はセンサストリップの長さと同程度であり得る。しかし、それに対応して試料の抵抗が増大すると、試料経路の長さは必要な反応電流を生成することを可能にする距離まで制限される。溶液抵抗も基準電極126領域の端部から作用電極124の作用領域の端部までの距離によって(または別の実施形態においては、二重目的の基準/対向電極から作用電極の作用領域の端部までの距離によって)影響を受ける。基準電極126と作用電極124との間の(または別の実施形態においては、作用電極から二重目的の基準/対向電極までの)距離を縮小すれば、溶液抵抗が低減される。離間した状態で電極を位置決めすることは、作用電極が試料によって完全に覆われる前に回路の完成を阻止する(故に反応電流の検出を阻止する)という利点がある。
【0035】
導電路104a、104b、および104cの細長い部分は任意選択で導電性材料の路に重ねられ、好適には銀粒子および塩化銀粒子を含んだ混合物から製造され得る。この任意の重なっている路により、結果的に抵抗はより小さくなり、したがって、導電性はより高くなる。任意選択で、疎水性の電気的絶縁性材料108の層が導電路104a、104b、および104cにさらに重なる。疎水性の電気的絶縁性材料108の層は基準電極126、作用電極124、および対向電極128の位置、および電気接点を覆わない。(別の実施形態の)二重目的の基準/対向電極を用いた実施形態では、疎水性の電気的絶縁性材料の層は、二重目的の基準/対向電極、作用電極、および任意の第3の電極の位置、および電気接点を覆わない。疎水性の電気的絶縁性材料108のこの層は短絡を防ぐように働く。この絶縁性材料は疎水性であるので、試料を露出された電極に留めておくことができる。好適な絶縁性材料は「POLYPLAST」(Sericol社、英国ケント州ブロードステアズ)として市販されている。
【0036】
反応部位106は電気化学的センサに適した反応部位に限定されない。光度測定センサ(図示せず)では、反応部位はその光学的性質(例えば、吸光度、反射率)を被検体の存在または量の関数として変える試薬系を含み得る。光度測定センサは図1、2、3、および4に示したセンサと類似するものであるが、電極および路は除かれており、光源が透光性材料に光を透過させて試料中の被検体の存在または量、例えば、吸光度または反射率に関連する信号を提供するように、反応部位では流路の少なくとも一部分は透光性材料を含んでいる。この光信号が検出かつ測定され得る。透光性材料に関し、指定のアッセイ用の少なくとも1つの試薬が反応部位に置かれるか、反応部位まで運ばれ得る。さらに別の種類のセンサ(図示せず)では、反応部位はイオン選択電極を含み得る。
【0037】
スペーサ層112はベース層102の第1の主表面130およびカバー層116の第1の主表面132に結合し得る実質的に均一な厚さの材料を含んでいる。スペーサ層112はその両主表面に接着性材料が被覆された裏打を含み得る。スペーサ層112を形成するのに適した裏打および接着剤の例は、参照により本願明細書に組み入れたEncyclopedia of Polymer Science and Engineering、13巻、John Wiley & Sons社(1988年)、345〜368貢に記載されている。別の場合には、スペーサ層112は接着剤を印刷することによって形成され得る。スペーサ層112を準備するのに適した接着剤は、外部応力にセンサストリップ100が曝されたときにスペーサ層112の深さが維持されるように外圧に対して十分な抵抗性があるべきである。
【0038】
スペーサ層112はいくつかの方法のいずれかで準備され得る。一実施形態では、スペーサ層は両面接着テープ、すなわち、その両主表面上に接着剤の層を有する裏打層から準備され得る。別の実施形態では、スペーサ層112は水性担体または有機担体からベース層102上に被覆される接着剤から形成され得る。さらに別の実施形態では、スペーサ層112は放射線硬化性接着剤、好適には紫外線硬化性接着剤から形成されてよく、この接着剤はベース層102上に被覆され得る。スペーサ層112の寸法は重要ではないが、スペーサ層112は典型的には約3mm〜約30mmの長さおよび約50μm〜約200μmの厚さを有する。スペーサ層112は流路114の側壁を形成する。流路114の典型的な幅は約2mm〜約5mmである。
【0039】
スペーサ層112はセンサストリップ100を一体ユニットとして維持するためにベース層102およびカバー層116の両方に付着しなければならない。スペーサ層112は接着剤を用いてカバー層116およびベース層102に結合されることが好ましい。スペーサ層112の好適な実施形態はその両主表面に接着剤の層を有する裏打を含む。この接着剤は水性接着剤、溶剤性接着剤、または放射線硬化性接着剤、好適には紫外線硬化性接着剤(以下「UV硬化性接着剤」という)であり得る。水性接着剤、溶剤性接着剤、またはUV硬化性接着剤は、スペーサ層112の所要のデザインがベース層102上に印刷されるようにスクリーン印刷されるのが好ましい。UV硬化性接着剤の硬化されない層を硬化させることから生じるであろうスペーサ層の厚さはUV硬化性接着剤の硬化されない層の厚さにほぼ相当するので、所要のデザインはUV硬化性接着剤から準備されるのが好ましく、これにより正確に定められた深さを有する流路114が確実に製造される。
【0040】
その両主表面上に接着剤の層を有する裏打を含んだ市販の製品には、TESA 4972(TESA Tape社、ノースカロライナ州シャーロット)などの材料がある。このような製品はベース層102に塗布される前に予め切断されるのが好ましい。米国特許第6,207,000号は、スペーサ層(両面に接着剤の付いた)が担体層上に積層され、次いで流路の形状を決定する外形がスペーサ層から除去されるプロセスを開示している。
【0041】
本発明の使用に適した水性接着剤の代表例には、アクリルベースのKiwoPrint D−series接着剤(Kiwo社、テキサス州シーブルック)などの材料がある。水性接着剤の1つの利点は、印刷環境の湿度が接着剤の早過ぎる乾燥を回避するように所望の値に維持され得ることにある。水性接着剤の1つの不利点は、水性担体が蒸発するときに流路114の深さが著しく縮小されることにある。さらに、水性接着剤は外的に印加される圧力を受けたときに変形を防ぐための十分な機械的強度を有さないかもしれない。
【0042】
本発明の使用に適した溶剤性接着剤の代表例には、アクリルベースのKiwoPrint L−seriesおよびT−series接着剤(Kiwo社、テキサス州シーブルック)などの材料がある。溶剤の蒸発は水に比べて生じ易いので、溶剤性接着剤は水性接着剤よりも使用がより難しい。さらに、流路114の深さは溶剤を除去した後に著しく縮小する。
【0043】
本発明の使用に適したUV硬化性接着剤の代表例には、アクリル酸、ベンゾフェノン、アクリル酸イソボニル、メタクリル酸イソボニル、専用の光重合開始剤、および専用のアクリルオリゴマーおよびポリエステルを含んだKiwo UV3295VP(Kiwo社、テキサス州シーブルック)などの材料がある。UV硬化性接着剤の利点には、周囲条件(つまり、重合を開始するには外部の紫外線が必要となる)下における乾燥に対する抵抗性および硬化プロセスを通した印刷直後に層の厚さを維持する能力がある。先に述べたように、水性および溶剤性接着剤の厚さに由来する流路114の深さは硬化と同時に縮小する(流路114の深さの縮小の範囲は約40%〜約70%である)。UV硬化性接着剤の粘度はヒュームドシリカ(Cab−O−Sil M5、Cabot社、マサチューセッツ州ボストン)を含めることにより元の調合から改変され得る。ヒュームドシリカを添加(好適には最大で重量の3%)することによって、硬化された接着剤の結合性に悪影響を及ぼすことなく粘度の調整が可能となる。インクの粘度を増大させれば、接着剤が印刷される時間と接着剤が硬化される時間との間でインクが広がる能力を抑えることによって流路の側壁の形成が改善される。スペーサ層の厚さはこのような接着剤を印刷するのに用いられる適切なスクリーンの網目の数および糸の太さを選択することによって制御され得る。別の場合には、接着剤は所望の厚さのステンシルスクリーンを用いてスクリーン印刷され得る。
【0044】
ある印刷方法によって塗布されるスペーサ層112の位置合わせ公差は、ストリップの形態を有するセンサの迅速な製造に十分に適したものである。特に、スペーサ層112を形成する材料が便利な場所にある印刷ステーションにおいて簡単に印刷され得る。スペーサ層112がシートから切断されたテープを用いて塗布される場合、接着剤が露出したままになっていなければならない任意の領域を被覆しないように、シートから切断されたテープはセンサの所定領域に位置していることが必要である。同様に、スペーサ層112が接着剤の印刷を用いて塗布される場合、接着剤が露出したままになっていなければならない任意の領域を被覆しないように、接着剤はセンサの所定領域内に印刷されることが必要である。
【0045】
カバー層116は不活性高分子材料から製造されるのが好ましい。流路114の表面を形成するカバー層116の部分は、親水性であるか、または親水性コーティング材料によって親水性にされることが好ましい。カバー層用のこの種類の材料またはカバー層用のコーティング材料は親水性液体を含んだ試料と共に使用するのが適している。カバー層116を形成するのに使用され得る材料の代表例には、親水性コーティングを有する、例えばポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、コロナ放電処理または界面活性剤処理を受けた、例えばポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル、およびコロナ放電処理または界面活性剤処理を受けたポリ(塩化ビニル)を含むが、これに限定されるものではない。カバー層116の寸法は重要ではないが、典型的なカバー層116は約15mm〜約35mmの長さ、約3mm〜約10mmの幅、および約0.05mm〜約1mmの厚さを有する。試料が疎水性液体を含んでいる場合、流路114の壁を形成するカバー層116の部分は疎水性であるか、または疎水性コーティング材料によって疎水性にされることが好ましい。疎水性コーティングを形成する代表的な材料には、長鎖炭化水素および疎水性界面活性剤があるが、これに限定されるものではない。このような材料は当業者にはよく知られている。
【0046】
カバー層116は、流路114を通る親水性流体の流れを促進するために、その主表面の一方(すなわち、流路114の壁を形成する表面)が親水性材料の層で被覆されたポリエステル材料(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート))から製造されるのが好ましい。カバー層116を準備するのに適した材料の代表例には、共にポリ(エチレンテレフタレート)から形成される3M社の9971親水性PETフィルムおよび三菱社の4FOGがある。親水性材料の層によって試料がカバー層116の表面を濡らすことができるようになり、これにより流路114を通る試料の流れが容易になる。試料の流れは、試料が流路114から除去されるか、または流路114が試料の全体を消費するまで継続する。さらなる試料が流路114の入口(試料塗布ゾーン120)に存在する場合であっても、流れ終結界面、例えば、親水性/疎水性界面118、界面118aは試料の流れを終結させる。
【0047】
カバー層116上に被覆された親水性材料の層は外力が存在しない状態で親水性流体の吸収を支援する。すなわち、例えば注射器による注入によって試料を腔に充填する必要はない。カバー層116上に被覆された親水性材料の層が無い場合、親水性流体の試料は流路114を充填しないか、または流路114を充填するのに過度に長い時間を必要とするかのいずれかである。親水性/疎水性界面118がカバー層116から親水性材料の一部を除去して溝を形成することによって形成される場合、疎水性層内に形成された溝によって親水性試料の流れを終結させるために、カバー層114は親水性材料の層の下に疎水性層を有していなければならない。この溝が不充分に深くてカバー層116のアブレーションされた部分が疎水性にならない場合、親水性試料はまず流路114を溝まで充填するが、溝は親水性/疎水性界面にはならず、その結果溝は親水性試料の流れを終結させない。さらに、親水性/疎水性界面118がカバー層116から親水性層の一部分を除去して溝を形成することによって形成される場合、単に試料の流れに起因するモーメントによって試料が溝の幅を横断するのを阻止するように溝は十分な幅でなければならない。毛管引力は流れる試料にモーメントを与える。このモーメントは溝に位置する親水性/疎水性界面118を試料が超えることができるように、試料を十分な速度で流すことができる。別の状況では、血液試料中の固体物質は溝の幅にわたり、試料が横断し得る橋を形成することができ、これにより親水性/疎水性界面118を越えて試料を流すことが可能となる。約50μmの幅および約5μmの深さを有する溝は、その表面上に被覆された約0.1μmの厚さを有する親水性層を含んだカバー層が疎水性材料の場合に、流体の流れが終結されるのを確実にするのに十分なものである。しかし、溝の深さは親水性材料を除去するのに十分でありさえすればよく、溝の幅は流体の任意の部分がその幅にわたらないようにするのに十分なものでありさえすればよい。溝の正確な寸法は試行錯誤法によって決定され得る。当然、溝の長さは流路114の幅以上である。
【0048】
上記は親水性カバー層に沿って毛管引力によって流れる親水性液体試料に言及したものである。同じ理論は疎水性カバー層に沿って毛管引力によって流れる疎水性液体試料に当てはまるが、その違いは単に、その疎水性層が親水性層に置き換えられていること、および親水性コーティングが疎水性コーティングに置き換えられていることである。
【0049】
図5、6、7、8、および9は種々の種類の流れ終結界面をより詳細に示している。しかし、これらの図は限られた数の代表例を提供しているに過ぎないことに注意すべきである。図5、6、7、8、および9に示したもの以外に流れ終結界面を提供する方法は多数ある。図5、6、7、8、および9では、カバー層116の上流端を文字「U」で示し、カバー層116の下流端を文字「D」で示している。
【0050】
一実施形態では、図5に示したように、親水性/疎水性界面118はカバー層116の第1の主表面132の一部分に、カバー層116のその一部分の親水性を変える材料の層134を塗布することによって製造され得る。カバー層116の第1の主表面132が親水性の場合、親水性/疎水性界面118を形成するのに塗布される材料の層134は疎水性であるべきである。カバー層116の第1の主表面132が疎水性の場合、親水性/疎水性界面118を形成するのに塗布される材料の層134は親水性であるべきである。
【0051】
別の実施形態では、図6に示したように、親水性/疎水性界面118は、カバー層116の第1の主表面132の一部分136からコーティング材料を除去することによってカバー層116の第1の主表面132の一部分136の親水性を変えることによって製造され得る。例えば、カバー層116が疎水性材料から製造され、カバー層116の第1の主表面132が親水性材料の層で被覆される場合、親水性材料の一部分136を除去して親水性/疎水性界面118が形成され得る。カバー層116が親水性材料から製造され、カバー層116の第1の主表面132が疎水性材料の層で被覆される場合、疎水性材料の一部分136を除去して親水性/疎水性界面118が形成され得る。
【0052】
さらに別の実施形態では、図7に示したように、カバー層116の第1の主表面132が親水性材料から製造される場合、カバー層116の第1の主表面132の一部分138は親水性/疎水性界面118を形成するように疎水性材料の層で被覆され得る。カバー層116の第1の主表面132が疎水性材料から製造される場合、カバー層116の第1の主表面132の一部分138は親水性/疎水性界面118を形成するように親水性材料の層で被覆され得る。親水性/疎水性界面を含む実施形態のすべてにおいては、親水性/疎水性界面の寸法は重要ではないが、試料の流れを終結させるのに十分な大きさである。
【0053】
図8に示したように、図3および4に示した実施形態に実質的に類似するさらに別の実施形態では、複数の開口部122aがカバー層116内の流れ終結界面118aが必要とされる位置に形成され得る。このような開口部122aは流路内に液体を流す毛管引力の力を乱すであろう障壁を形成するように十分な寸法であり、適切な距離だけ離間されている。開口部122aが離れ過ぎて離間している場合、流体の流れは終結されない。しかし、開口部122aはカバー層116の構造的完全性が悪影響を受けるほどに共に近接し過ぎて設置されるべきでないことに注意すべきである。同じく、開口部122aはカバー層116の構造的完全性が悪影響を受けるような寸法になるべきではない。開口部122aの寸法の適切な選択および開口部122a間の距離の適切な選択は、当業者によって容易に決定され得る。カバー層116の位置ずれがセンサストリップに悪影響を及ぼさないように複数の開口部122aを用いることが望ましい。
【0054】
さらに別の実施形態では、図9に示したように、流れ終結界面118bを設置することが望ましい流路内のある地点においては、流路の1つまたは複数の寸法が、流路内に液体を流す毛管引力の力が乱されるような程度にまで増大され得る。好適には、流路の深さがカバー層116の第1の主表面132から非常に多量の材料を除去することによって著しく増大される。この材料の除去によって、流れ終結界面118bの上流側の流路の深さよりも著しく大きい深さを有する切欠き状の流れ終結界面140が提供される。この様式の流れの乱れの機構は、流体の重量から生じる力が毛管引力から生じる力を超えるときに発生する。流路の寸法を選択してこの作用をもたらすことは、試行錯誤によって実行され得る。上記実施形態のいずれも、本願明細書に記載の流路と共に用いるのに適した流れ終結界面を提供するであろう。
【0055】
流路114の寸法は流体の試料が毛管引力によって流路114を充填するように選択される。流路114の設計は、流れ終結界面を用いるか、または流路の寸法を増大させて毛管引力の作用を低減させることによって変えられる場合、試料の取り込みを可能にする毛管引力に起因する力はさらなる液体を流路に流入させるには不十分である。
【0056】
上記のように、本発明によれば、流路114は液体試料が流れ終結界面を含んだ流路114のそのような主表面または主表面のある部分に沿って流れるように設計される。流路114は液体試料が流れ終結界面を含まない流路のそのような主表面またはそのような主表面のある部分に沿って流れないように設計される。この設計は液体試料が流れ終結界面に達したときに流れを停止するように必要である。
【0057】
空気が流路114から流れ出ることができるようにセンサストリップ内に開口部が必要である。この開口部はベース層102、カバー層116、またはスペーサ層112内に設置され得る。好適な実施形態では、流れ終結界面118の下流側のスペーサ層112内の少なくとも1つの開口部122によって、試料が流路114に導入されているときに流路114内の空気を排気できるようになる。
【0058】
センサストリップ100はスペーサ層112内にあり流路114と連通する1つまたは複数の開口部122を有し得る。図1および2を参照すること。カバー層116またはベース層102内に開口部が存在しない場合、開口部122の位置決めはベース層102、スペーサ層112、およびカバー層116の位置合わせによって決定される。
【0059】
別の実施形態では、流体の試料が加えられたときに流路114中の気体を除去できるように、カバー層116は流路114の近傍に複数の開口部122aを有し得る。図3および4を参照すること。複数の開口部122aによって、カバー層116内に単一の開口部を有するシステムに比して、位置合わせ公差を低減させることが可能になる。すなわち、センサストリップ100の構造的完全性を維持するために開口部122aを離間することができ、この結果開口部122aの一部は流路114と連通しないように位置決めされてよく、これによって排気口として機能する能力が妨げられる。しかし、開口部122aを形成することによって、結果として、開口部122がスペーサ層112内に形成される実施形態と実質的に等しいセンサストリップ100の排気および構造的完全性が提供される。この実施形態はカバー層116またはスペーサ層112内の単一の開口部とは異なって複数の開口部122aがカバー層116内に含まれるという点で、先に記載した実施形態とは異なっている。必要に応じて開口部が十分な寸法であり、かつ適切な距離だけ相互に分離されている限り、開口部は流れ終結界面として働くことができる。
【0060】
本願明細書に記載のセンサストリップ100は血糖値を監視するテストストリップとして使用され得る。本願明細書に記載のセンサストリップ100は電極への試料の流れを改善するのにメッシュの層を利用しない。メッシュの層を用いないことにより、製造時間および製造コストが低減される。また、必要となる試料の容量がメッシュ層を除くことにより低減される。
【0061】
本発明は流路の無限の数のデザインを提供するので、流れ終結界面を含んだ単一のカバー層が使用され得る。カバー層内に形成された開口部を流路に対して正確に位置合わせする必要はない。本発明の流路の設計はベース層とカバー層との間の適切な接着も可能にする。より重要なことは、試薬の希釈が最小化され、かつ試料を流路に取り込んだ後に静止した試料状態が維持され得るセンサストリップが提供され、これにより結果として被検体の一貫性のある分析が行われる。
【0062】
以下の非限定的実施例が本発明をさらに例証する。
(実施例)
【実施例1】
【0063】
この実施例は本発明のセンサストリップの調整を示すものである。この実施例のセンサストリップを図1および2に示す。
【0064】
スクリーン印刷法を用いてポリ(塩化ビニル)(PVC)から製造されたベース層に炭素の路を塗布する。この炭素の路は、基準電極、対向/トリガ電極、および作用電極を含んだ反応部位内の電極の位置を定める。対向電極はトリガ電極としても機能する。試料がトリガ電極と接触するときにアッセイが始まる。炭素の路はその接点の位置も定める。定められた反応部位を露出させるように絶縁層が炭素の路の上に印刷され得る。この絶縁層の特徴は、対象となる反応を測定する計器に挿入され得る電気接点を形成するように、絶縁層から一部分が切断されていることにある。UV硬化性接着剤を印刷してスペーサ層が形成され、かつ流路の側壁が定められ得る。硬化された層の厚さは塗布されたような硬化されていない層の厚さに類似しているため、UV硬化性接着剤は水性または溶剤性の接着剤よりも好ましい。カバー層は界面活性剤で処理されたポリエステル(3M 9971親水性PETフィルム)の層を含んでいる。疎水性層が流路内の試料に対して露出されるように50μmの幅および5μmの深さを有する単一の領域をアブレーションして親水性コーティングを除去することによって、カバー層内に親水性/疎水性界面を形成するために、低強度のレーザビームが使用され得る。しかし、2つ以上の領域をアブレーションして試料がアブレーションされた単一の領域を横断しかつ流れの終結の所望の位置を越えて流れる可能性が低減され得る。この目的には2mm未満の間隔で離間された領域をさらにアブレーションすることが十分である。このようにアブレーションされたカバー層によって親水性液体を含んだ試料を流路に取り込むことが可能となる。このカバー層は親水性/疎水性界面が排気路を構成する開口部の上流側および反応部位の下流側になるように、スペーサ層上に設置される。
【0065】
センサストリップが使用されるように、試料は流路の試料塗布ゾーンに入り、カバー層上のコーティングの親水性から生じる毛管引力によって流路を横断させられる。試料の流れは試料が親水性/疎水性界面に達するときに終結される。さらなる試料が試料塗布ゾーンに存在している場合であっても、試料の流れは終結する。
【0066】
試料がストリップの近位端において取り込まれる試料塗布ゾーンを生成するように、センサストリップの近位端が任意選択で切り取られ得る。この種類のセンサストリップは一般にはend−fillセンサストリップと呼ばれる。本発明は単一のend−fillセンサストリップの製造に限定されるものではない。複数のend−fillセンサストリップが同時に製造され得る。複数のend−fillセンサストリップをシート上に製造した後、センサストリップを分離して複数の個々のセンサストリップが形成され得る。
【実施例2】
【0067】
この実施例では、実施例1のセンサストリップが提供されるが、銀および塩化銀の混合物が作用電極から延びている路の上に印刷されており、路の印刷された部分に沿って抵抗が低減される。
【実施例3】
【0068】
この実施例では、実施例2のセンサストリップが提供されるが、試薬層が作用電極上に印刷されている。この任意の反応層は酵素、媒介物、任意の結合剤、および任意の充填剤を含む。
【実施例4】
【0069】
この実施例では、実施例3のセンサストリップが提供されるが、試薬層が3つの電極すべての上に塗布されている。
【実施例5】
【0070】
この実施例では、実施例4のセンサストリップが提供されるが、銀および塩化銀の混合物を含む層が対向/トリガ電極および基準電極上に印刷されている。試薬層が基準電極において好ましい基準電圧を提供することができない場合、この選択が望ましい。
【実施例6】
【0071】
この実施例では、実施例1のセンサストリップが提供されるが、前記カバー層が、カバー層の一部分を疎水性にするために疎水性コーティングがカバー層の親水性表面の一部分の上に塗布されたカバー層に置き換えられており、これにより親水性/疎水性界面が形成される。
【実施例7】
【0072】
この実施例では、実施例1のセンサストリップが提供されるが、前記カバー層が疎水性PET支持体の近位部分が親水性コーティングで被覆されたカバー層に置き換えられている。この実施形態では、親水性コーティングの上に疎水性材料を被覆する工程が省かれている。親水性液体の取り込みを可能にするために、カバー層の親水性部分はセンサの近位端に設置される。
【実施例8】
【0073】
この実施例では、実施例1のセンサストリップが提供されるが、センサストリップはその側壁内に排気路として働く開口部を有さないスペーサ層を採用している。このセンサストリップは流れ終結界面および排気路の両方として働く複数の開口部を含んだカバー層を採用している。低強度のレーザを用いてカバー層内に開口部が形成される。図1のように、カバー層を形成するのに使用される材料は3M 9971親水性PETフィルムである。ある開口部の中心からそれに隣接する開口部の中心まで測定すると、カバー層を通っているこの開口部は直径0.4mmで、1mmの間隔で離間されている。このカバー層は親水性表面を流路に向けた状態でスペーサ層の上に設置される。親水性液体を含んだ試料の摂取は、液体とカバー層の親水性コーティングとの間の毛管引力によってもたらされる。この開口部は開口部におけるカバー層の親水性コーティングの面積を十分に縮小することによって試料とカバー層との間の毛管引力を低減させることにより流れ終結界面として働く。流路と連通しているカバー層内の開口部は流れ終結界面として働くだけでなく、排気路としても働くので、スペーサ層内に開口部を必要としない。この実施例のセンサストリップを図3および4に示す。
【0074】
当業者には、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の種々の変形および改変は明白となり、本発明が本願明細書に記載の例示的実施形態に不当に限定されるものではないことを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明のセンサストリップの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】図1に示したセンサストリップの立側面図である。
【図3】本発明のセンサストリップの別の実施形態を示す分解斜視図である。
【図4】図3に示したセンサストリップの立側面図である。
【図5】流路の壁を形成するカバー層の主表面の一実施形態を示す平面図である。
【図6】流路の壁を形成するカバー層の主表面の別の実施形態を示す平面図である。
【図7】流路の壁を形成するカバー層の主表面のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図8】流路の壁を形成するカバー層の主表面のさらに別の実施形態を示す平面図である。
【図9】流路の壁を形成するカバー層の主表面のさらに別の実施形態を示す平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)第1の主表面および第2の主表面を有するベース層と、
(b)第1の主表面および第2の主表面を有するカバー層であり、該カバー層の第1の主表面は前記ベース層の第1の主表面に面しているカバー層と、
(c)前記ベース層から前記カバー層を分離するように前記カバー層の第1の主表面と前記ベース層の第1の主表面との間に挿置されたスペーサ層と、
(d)前記カバー層の前記第1の主表面、前記ベース層の前記第1の主表面、および前記スペーサ層によって形成された壁を有する流路であり、該流路はその中に反応部位を有し、該流路は液体試料をその流路の中に引き込むことができ、かつ毛管引力を用いてその流路を流れることのできるような寸法になっている流路と、
(e)前記カバー層の前記第1の主表面に塗布されるか、またはその中に形成される流れ終結界面であり、該界面は前記流路内の液体試料の流れを終結させることができる流れ終結界面と、
(f)液体試料が前記流路内に導かれる試料塗布ゾーンと、
(g)前記流路から気体を排出できるように前記流路と連通している少なくとも1つの開口部とを備えたセンサストリップ。
【請求項2】
前記反応部位は電極配置を含む請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項3】
前記電極配置は作用電極および二重目的の基準電極/対向電極を含む請求項2に記載のセンサストリップ。
【請求項4】
前記電極配置はトリガ電極をさらに含む請求項3に記載のセンサストリップ。
【請求項5】
前記電極配置は少なくとも前記作用電極上に試薬系をさらに含む請求項3に記載のセンサストリップ。
【請求項6】
前記試薬系は酵素および該酵素用の媒介物を含む請求項5に記載のセンサストリップ。
【請求項7】
前記電極配置は、作用電極、対向電極、および基準電極を含む請求項2に記載のセンサストリップ。
【請求項8】
前記電極配置はトリガ電極をさらに含む請求項7に記載のセンサストリップ。
【請求項9】
前記電極配置は少なくとも前記作用電極上に試薬系をさらに含む請求項7に記載のセンサストリップ。
【請求項10】
前記試薬系は酵素および該酵素用の媒介物を含む請求項9に記載のセンサストリップ。
【請求項11】
前記少なくとも1つの開口部は前記スペーサ層内に形成される請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの開口部は前記カバー層内に形成される請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項13】
前記スペーサ層は接着剤の層を含む請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項14】
前記接着剤は放射線硬化性接着剤から形成される請求項13に記載のセンサストリップ。
【請求項15】
前記接着剤は水性接着剤または溶剤性接着剤から形成される請求項13に記載のセンサストリップ。
【請求項16】
前記スペーサ層はその両主表面上に接着剤の層を有する裏打を含む請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項17】
前記流れ終結界面は親水性/疎水性界面である請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項18】
前記親水性/疎水性界面はその上に親水性材料のコーティングを有する疎水性材料の層を含み、前記流路内の前記液体に前記疎水性材料を曝露させるように前記親水性材料の一部が除去される請求項17に記載のセンサストリップ。
【請求項19】
前記親水性/疎水性界面はその上に疎水性材料のコーティングを有する親水性材料の層を含み、前記流路内の前記液体に前記親水性材料を曝露させるように前記疎水性材料の一部が除去される請求項17に記載のセンサストリップ。
【請求項20】
前記カバー層の前記第1の主表面は、疎水性コーティングがその一部に塗布された親水性材料を含む請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項21】
前記カバー層の前記第1の主表面は、親水性コーティングがその一部に塗布された疎水性材料を含む請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項22】
前記流れ終結界面は前記カバー層内に複数の開口部を含む請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項23】
前記流れ終結界面は前記流路の少なくとも1つの寸法を増大させることによって形成され、これにより流路内で液体を流す毛管引力の力が乱される請求項1に記載のセンサストリップ。
【請求項24】
液体の流れを可能にし、かつ前記液体の流れを終結させるデバイスであって、該デバイスは、
(a)壁によって境界が定められた流路であり、該流路は毛管引力によって液体が流れるようにする寸法を有する流路と、
(b)前記流路内で前記液体の流れを終結させる流れ終結界面とを含んだデバイス。
【請求項25】
前記流れ終結界面は前記親水性/疎水性界面である請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記親水性/疎水性界面はその上に親水性材料のコーティングを有する疎水性材料の層を含み、前記流路内の前記液体に前記疎水性材料を曝露させるように前記親水性材料の一部が除去される請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
前記親水性/疎水性界面はその上に疎水性材料のコーティングを有する親水性材料の層を含み、前記流路内の前記液体に前記親水性材料を曝露させるように前記疎水性材料の一部が除去される請求項25に記載のデバイス。
【請求項28】
前記流路の前記壁は、疎水性コーティングがその一部に塗布された親水性材料を含む請求項24に記載のデバイス。
【請求項29】
前記流路の前記壁は、親水性コーティングがその一部に塗布された疎水性材料を含む請求項24に記載のデバイス。
【請求項30】
前記流れ終結界面は前記流路の前記壁内に複数の開口部を含む請求項24に記載のデバイス。
【請求項31】
前記流れ終結界面は前記流路の少なくとも1つの寸法を増大させることによって形成され、これにより流路内で液体を流す毛管引力の力が乱される請求項24に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−509187(P2006−509187A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−543445(P2004−543445)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/031700
【国際公開番号】WO2004/034053
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】