説明

流体の流れを制御するための静電流体加速器および方法

【課題】スパークなどの望ましくない寄生的な影響を最小化することのできる実用的なスパーク管理装置を提供する。
【解決手段】電力を負荷装置に供給するよう動作可能な高電圧電源と、前記負荷装置における1つ以上の電磁パラメータを監視するよう動作可能なセンサと、前記負荷におけるスパーク前の状態を識別するために前記1つ以上の電磁パラメータに応答する第1の検出器と、前記高電圧電源が、前記スパーク前の状態に応答して前記電力の大きさを所望のレベルに速やかに変えることを可能にするよう前記第1の検出器に接続された第2の検出器とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
スパーク管理の方法および装置と題される、2002年7月3日に出願された連続番号第10/187,983号、流体の流れを制御するための静電流体加速器および方法と題される、2003年1月28日に出願された連続番号第10/352,193号、静電流体加速器と題される、1999年10月14日に出願された連続番号第09/419,720号、流体の流れの静電流体加速の制御のための方法および装置と題される、2002年6月21日に出願された連続番号第10/175,947号、および流体の流れを制御するための静電流体加速器および方法と題される、2002年7月3日に出願された連続番号第10/188,069号の特許のすべてを全体としてここに引用により援用する。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は、コロナ放電の発生のための方法および装置に関し、特に、流体の運動および制御のためにイオンおよび電界を使用した、流体、特に空気に速度および運動量を与えるための流体の加速のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.先行技術の説明
いくつかの特許(たとえば、シャノンらの米国特許第4,210,847号、およびスパージオンの第4,231,766号を参照)は、コロナ放電を使用してイオンを発生し、粒子を帯電させることができるという事実を認めている。そのような方法は、Chapman & Hall(1997)によって出版されたApplied Electrostatic Precipitationに記載される
ように静電集塵器および電気巻上機で広く使用されている。コロナ放電装置は、電極の対、たとえば、コロナ放電電極とアトラクタ電極との対に高電圧を印加することによって生成することができる。その場合、コロナ放電は、高電圧電源を電極の対に印加することによって生成される。電極は、(コロナ放電電極と呼ばれる)電極の1つの近位に不均一な電界を生成して、コロナ、および近くの相補的な電極(コレクタ電極またはアトラクタ電極と呼ばれる)に向かう、結果的なコロナ電流を生成するように構成および配置される。必要なコロナ放電電極の幾何学的形状は、典型的には、コロナ電流の流れの方法に向かうように向けられた、すなわち、コレクタ電極またはアトラクタ電極に面する、鋭い点または縁(edge)を必要とする。
【0004】
したがって、少なくともコロナ放電電極は、電極の近傍で必要な電界の勾配を生成するように小さいか、または鋭い点もしくは縁を含まなければならない。コロナ放電は、より低いコロナ開始電圧とより高い破壊(またはスパーク)電圧との間の比較的狭い電圧の範囲で起きる。コロナ開始電圧より下方では、コロナ放電電極からイオンは放出されず、したがって、空気の加速は生成されない。一方、印加された電圧が絶縁破壊またはスパークのレベルに近づくと、スパークおよび電気的なアークが生じ、コロナ放電のプロセスを中断し、不快な電気的なアーク音を生じ得る。したがって、これら値の間で、特に流体の加速が最も効率的であるスパークレベルに近いがそのわずかに下方で高電圧を維持することが一般的に有利である。
【0005】
静電装置でのスパークの問題に対処する特許がいくつかある。たとえば、ベーカーの米国特許第4,061,961号は、2段の静電集塵器の電源の動作周期を制御するための回路を説明している。この回路は、電源変圧器の一次巻線に直列に接続される切換装置と、切換装置を制御するように動作可能な回路とを含む。電源変圧器の一次巻線の電流を監
視するように適合された容量性ネットワークが制御回路を動作するために設けられる。通常の動作条件では、すなわち、電源変圧器の一次巻線の電流が定格の限界内であるときは、容量性ネットワークは電流が電源変圧器の一次巻線を通って流れるように制御回路を動作する。しかしながら、集塵器の構成要素間のアークによって生成され、かつ電源変圧器の二次巻線からその一次巻線へ反射される高電圧の過渡現象に関連する一次電流レベルの増加を検出すると、容量性ネットワークは制御回路を動作する。応答して、制御回路は、高電圧の過渡現象に関連するアーク状態がなくなるかまたは抑制されるまで、切換装置に変圧器の一次巻線を通る電流の流れを抑制させる。高電圧の過渡現象の終了後、ある時間間隔に続いて、切換装置は、一次巻線への電源を自動的に再確立し、これにより静電集塵器の電源の通常動作を再開する。
【0006】
ベーカーらの米国特許第4,156,885号は、持続する過負荷が検出された後に動作可能な静電集塵器の電源のための自動電流過負荷保護回路について記載している。
【0007】
ウェーバーの米国特許第4,335,414号は、静電集塵器の空気清浄器の電源のための自動電子リセット電流カットオフについて記載している。保護回路は、一次電力巻線、比較的高電圧を提供する二次巻線、および比較的低電圧を提供する三次巻線を有する鉄共振形変圧器を使用して電源を保護する。保護回路は、高電圧から得られた電圧を検知し、検知電圧を固定された基準と比較することにより、イオン化器またはコレクタセルでの過負荷の場合に電源の動作を抑制するように動作する。検知電圧が所定の値を下回るとき、一次の変圧器を通る電流の流れは所定の時間だけ抑制される。電流の流れは自動的に復旧され、回路は障害が解消されるまで周期的に電源を停止させる。基準電圧は三次巻線の電圧から得られ、短い持続時間の過負荷の状態に対する回路の感度が向上する。
【0008】
先行技術によって認められているように、高電圧の印加には放電の危険がある。適用例によっては、放電は望ましい。他の多くの高電圧の適用例では、スパークは回避されるかまたは防止されるべき望ましくない事象である。これは、高電圧がスパークレベルの近くで、すなわち、絶縁破壊電圧の近くで維持される適用例に特に当てはまる。たとえば、電気集塵器は可能な最も高い電圧レベルで動作するため、スパークが生成されるのは避けられない。静電集塵器は、典型的には分あたりで50〜100のスパークのスパーク率を維持する。スパークが起こると、電源の出力は、通常ゼロボルトに降下し、その間に空中放電およびスパーク前の抵抗が再確立される「イオン消失時間」と呼ばれる所定の時間の経過後に動作を再開する。各スパーク事象は、高電圧装置の全体的な効率を低下させ、電極の劣化および経年変化の主な原因の1つである。スパークの発生は、多くの環境および関連する適用例、たとえば、家庭用の静電空気加速器、フィルタおよび電気器具などでは受入れられない不快な音も生じる。
【0009】
スパークによって生じる望まれない騒音に加え、先行技術には他の非効率性もある。たとえば、コロナ放電電極およびアトラクタ電極の対は、不均一な電界を生成するように構成および配置されるべきであり、少なくとも1つの電極、すなわち、コロナ放電電極は、電極の近傍に好適な電界の勾配を提供するように比較的小さいか、および/または鋭い点または縁を含むことが多い。電極間に電圧を印加してイオンの生成のために必要な電界を効率的に生成するために使用される既知の構成がいくつかある。リーの米国特許第4,789,801号、および第6,152,146号、ならびにテイラーらの第6,176,977号は、電極の対にわたってパルス電圧波形を印加することについて記載しており、波形は10%から100%の間の動作周期を有する。これら特許は、そのような電圧の生成は、定常状態のDC電力の印加と比較して、結果的なコロナ放電装置によるオゾンの生成を減少させると記載している。オゾンの生成を低減するためのそのような電圧生成の実際の利点にかかわらず、空気の流れの生成は100%未満の動作周期を使用することにより実質的に減少し、結果生じる脈動性の空気の流れは不快とされる。
【0010】
シャーマンらの米国特許第6,200,539号は、約20kHzの周波数で交流電圧を生成するための高周波数高電圧電源の使用について記載している。そのような高周波数高電圧の生成は、大きく比較的高価な電源を必要とし、典型的にはエネルギの損失が大きい。ワインバーグの米国特許第5,814,135号は、非常に狭い(すなわち、急勾配で短い持続時間の)電圧パルスを生成する高電圧電源について記載している。そのような電圧の生成は、比較的低体積かつ低速度の空気の流れのみを生成することができ、大きな空気の流れの加速または運動のためには好適ではない。
【0011】
リーの米国特許第4,789,801号、ワインバーグの第5,667,564号、テイラーらの第6,176,977号、およびサカキバラらの第4,643,745号も、静電界を使用して空気を加速する空気運動装置について記載している。これら装置で実現される空気の速度は非常に低速であり、商業用または工業用の用途には実用的ではない。
【0012】
エドワードの米国特許第3,699,387号および第3,751,715号は、空気の流れを向上するために連続して配置された静電空気加速器(EFA)の複数の段の使用について記載している。これら装置は、吸引(attracting)(集電)(collecting)電極として導電性のメッシュを使用し、このメッシュは近隣のコロナ電極を分離する。メッシュは大きな空気抵抗を示し、空気の流れを損ない、EFAは望ましいより大きな流量を実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,210,847号
【特許文献2】米国特許第4,231,766号
【特許文献3】米国特許第4,061,961号
【特許文献4】米国特許第4,156,885号
【特許文献5】米国特許第4,335,414号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
残念ながら、これら装置のどれも商業的に実現可能な量の空気の流れを生成することはできない。従来の空気運動装置の複数の段を設けることは、それ自身では解決策を提供しない。たとえば、連続して配置された静電流体加速器の5つの直列の段は、1つの段のみよりも17%大きい空気の流れをもたらすのみである。たとえば、スパージオンの米国特許第4,231,766号を参照されたい。同様に、電極の互いに対する相対的な場所を変えても、EFAの性能および流体の速度の改善は限られている。たとえば、米国特許第4,812,711号は、わずか0.5m/sの空気の速度の生成を報告しており、商業的な扇風機および送風機に期待されかつそこから利用可能なものをはるかに下回る。
【0015】
したがって、商業的に有用な流量を生成しつつ、スパークなどの望ましくない寄生的な影響を最小化することのできる実用的な静電流体加速器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
発明の概要
この発明は、効率を向上し、大きな出力を提供し、スパークおよびオゾンの生成の低減などの寄生的な影響を低減または排除するためのイオン発生装置およびプロセスに向けられた特徴を含む。
【0017】
スパーク開始電圧レベルは電極の同じセットでも一定の値を有さないことがわかっている。スパークは突然の事象であり、確実に予測することはできない。電気的なスパークの
発生は予測不可能な事象であることが多く、複数の原因によって引起され、それらの大半ではないとしても多くは一時的な状態である。スパークの開始は、湿度、温度、汚染およびその他のような流体(すなわち、絶縁体)の状態とともに変動する傾向がある。電極の同じセットでは、スパーク電圧は10%以上の開始の幅の変動を有し得る。
【0018】
当該技術分野で知られる高電圧の適用例および装置は、典型的にはスパークが生成されて初めてスパークに対処する。すべてのスパークが回避されるべきであれば、動作電圧は比較的低いレベルに維持しなくてはならない。必然的に低減される電圧レベルは、静電流体加速器および集塵器などの関連する装置の空気の流量および装置の性能を低下させる。
【0019】
上述のように、以前の技術および装置は、スパークの開始後に初めてスパーク事象に対処し、スパークが生じるのを防止するための商業的に実用的な技術的な解決策はなかった。(単に存在するアークを消すのではなく)スパークを回避しつつ、スパークを生成しそうな範囲内に電圧レベルを維持するための動的な機構を提供することは、より効率的な動作に繋がり、スパークに伴う電気的なアーク音を回避する。
【0020】
この発明の1つの特徴は、これに限らないがコロナ放電システムなどの装置のための高電圧の生成を可能にする。この発明は、完全な絶縁破壊およびスパーク放電より或る時間前にスパークの開始を検出する能力を提供する。この発明の特徴である、「無慣性の」高電圧電源を用いることによって、スパークに関連する放電を管理することができる。このようにして、スパーク開始レベルに実質的により近い高電圧レベルを用いつつ、スパークの発生を防止することが実用的になる。
【0021】
この発明の特徴および局面は、絶対的なスパークの抑制が必要とされないか、または望ましくないこともあり得るようなスパーク管理にも向けられる。
【0022】
この発明の一局面によると、スパーク管理装置は、高電圧電源、および負荷装置に提供される電流のパラメータを監視するように構成された検出器を含む。パラメータに応答して、スパーク前の状態が識別される。切換回路はスパーク前の状態の識別に応答して、負荷装置に提供される電流を制御する。
【0023】
この発明の特徴によると、高電圧電源は、一次電源を高電圧の電源に変換して電流を供給するように構成された高電圧電源を含み得る。
【0024】
この発明の別の特徴によると、高電圧電源は、昇圧変圧器、および出力が昇圧電圧器の一次巻線に接続されている交流(ac)パルス発生器を含む高電圧の電源を含み得る。整流回路は、昇圧変圧器の二次巻線に接続されて高電圧レベルで電流を提供する。
【0025】
この発明の別の特徴によると、高電圧電源は、低慣性の出力回路を有する高電圧電源を含み得る。
【0026】
この発明のさらに別の特徴によると、高電圧電源は、電流の流れを監視するように動作可能な制御回路を含み得る。スパーク前の状態の検出に応答して、電流の電圧はスパークの発生に貢献しないレベルに下げられる(たとえば、スパークレベルより下)。
【0027】
この発明のさらに別の特徴によると、負荷回路は、スパーク前の状態の識別に応答して、電流の実質的な部分を選択的に受取るために高電圧電源に接続されてもよい。負荷回路は、たとえば、電気エネルギを消散するための電気装置(たとえば、電気エネルギを熱エネルギに変換する抵抗器)、または電気エネルギを蓄えるための電気装置(たとえば、キャパシタまたはインダクタ)であり得る。負荷装置は、電流を受取ってコロナ放電を作る
ように構成された複数の電極を含むコロナ放電装置の異なる段などの何らかの動作装置を含んでもよい。コロナ放電装置は、静電空気加速装置、静電空気清浄器および/または静電集塵器の形であってもよい。
【0028】
この発明の別の特徴によると、切換回路は、電源によって供給される一次負荷装置に加え、選択的に補助装置に電力を与えるための回路を含んでもよい。初期のスパークが検出されると、一次装置に定期的に供給される電力の少なくとも一部分は、スパーク前の状態の識別に応答して補助装置に向けられ、一次装置の電圧を低下させ、スパークを回避する。一次負荷および装置の1つまたは両方は、コロナ放電構成によって作られた静電力の影響下で流体を加速するように構成された空気処理装置であってもよい。
【0029】
この発明の別の特徴によると、検出器は、スパーク前の状態に関連する電流レベルまたは波形の変化、電圧レベルまたは波形の変化、もしくは磁気的、電気的または光学的な事象を含む現象に感度があってもよい。
【0030】
この発明の別の局面によると、スパーク管理の方法は、装置に高電圧電流を供給するステップと、高電圧電流を監視して装置のスパーク前の状態を検出するステップとを含む。高電圧電流は、スパーク前の状態に応答して制御され、スパーク前の状態に関連するスパーク事象の発生を制御する。
【0031】
この発明の別の特徴によると、監視するステップは、高電圧電流で電流スパイクを検知するステップを含み得る。
【0032】
この発明の特徴によると、高電圧電流を供給するステップは、電源を一次電圧レベルから一次電圧レベルより高い二次電圧レベルに変圧するステップを含み得る。二次電圧レベルの電力を整流して、高電圧電流を装置に供給してもよい。これは、出力電圧または装置の電圧、たとえば、コロナ放電空気加速器のコロナ放電電極の電圧レベルを低減するステップを含んでもよい。電圧はスパークの発生に貢献しないレベルに低減してもよい。制御は、高電圧電流の少なくとも一部分を補助負荷装置を経由させることによっても実現することができる。経由させるステップは、高電圧電流を供給する高電圧電源の出力回路に抵抗器を切換えることによって行なうことができる。
【0033】
この発明の別の特徴によると、付加的なステップは、流体をコロナ放電電極に導入するステップと、高電圧電流でコロナ放電電極に通電するステップと、流体にコロナ放電を生成するステップと、コロナ放電の影響下で流体を加速するステップとを含む。
【0034】
この発明の別の局面によると、静電流体加速器は、コロナ放電電極およびコレクタ電極のアレイ、ならびに電気的にアレイに接続されて高電圧電流をコロナ放電電極に供給する高電圧電源を含んでもよい。検出器は、高電圧電流の電流レベルを監視して、応答してスパーク前の状況を識別するように構成してもよい。切換回路は、スパーク前の状態の識別に応答して高電圧電流を制御してもよい。
【0035】
この発明の特徴によると、切換回路は、スパーク前の状態に応答して高電圧電源によるコロナ放電電極への高電圧電流の供給を抑制するように構成してもよい。
【0036】
この発明の別の特徴によると、切換回路は、スパーク前の状況の識別に応答して高電圧電流の少なくとも一部分を受取るように構成されたダンプ抵抗器を含んでもよい。
【0037】
コロナ放電スパークには、差し迫ったスパーク事象の発生を伝える或る観測可能な電気的な事象が先行し、それを監視して絶縁破壊が生成しそうなときを予測できることがわか
っている。スパークの指標は、電流の増加、またはコロナ放電の近傍での磁界の変化または変動(たとえば、増加)、もしくは回路内または電極の環境での観測可能な状態であり得る。特に、スパーク事象には典型的にはコロナ電流の増加が先行することが実験的に明らかになっている。この電流の増加は、スパーク事象の短い時間(すなわち、0.1から1.0ミリ秒)前に起こる。電流の増加は、関連する電気的な放電の約0.1〜1.0ミリ秒(msec)前に見られる短い持続時間の電流スパイクの形であり得る。この増加は実質的には電圧の変化には非依存である。スパーク事象を防止するために、初期の電流スパイクを検出して、およびコロナ放電電極に印加されるおよび/またはコロナ放電電極の電圧レベルをスパークレベルを下回るように急速に低下させる必要がある。
【0038】
そのようなスパーク管理を可能にするためには2つの条件を満たさなければならない。第1に、高電圧電源は、スパーク事象が発生する前に、すなわち、事象の検出からスパーク事象の開始までの時間内に出力電圧を急速に低下させることができなければならない。第2に、コロナ放電装置は、スパークの前に、蓄えられた電気エネルギを放電すること、すなわち、放電することができなければならない。
【0039】
コロナ電流の増加とスパークとの間の時間は0.1〜1.0msecのオーダーである。したがって、コロナ放電装置(電源および電力を供給されているコロナ放電電極のアレイを含む)に蓄えられた電気エネルギは、蓄えられたエネルギを短い時間、すなわち、ミリ秒以下の範囲の短い時間で消散させることができなければならない。さらに、高電圧の電源は、電圧の生成を好ましくはミリ秒以下またはマイクロ秒の範囲で中断するために、「低慣性の」特性(すなわち、その出力での電圧レベルを急速変化させることができる)および回路を有さなくてはならない。そのような急速な電圧の減少は、蓄えられたエネルギが少ない100kHzから1MHzの範囲で動作する高周波切換高電圧電源、および出力電圧を急速に低下または停止するための回路を使用して実際に可能である。そのような能力を提供するため、電源は、コロナ電流のスパイクの検出と結果的なスパーク事象との間の時間よりも小さい「シャットダウン」期間(すなわち、高電力出力を中止するために必要な時間)で高い切換周波数で動作しなければならない。最新技術の電源は1MHzまでの切換周波数で動作することができ、特に適切に設計された(たとえば、無慣性の)電源は、必要なミリ秒以下の範囲で電力の生成を中断することができる。つまり、電源を停止し、出力電圧を安全なレベル、すなわち、スパークの形の放電の開始を十分に下回るレベルに大きく低下させることができる。
【0040】
電気的なスパークに先行する電気的な事象を検出するためにさまざまな技術がある。電流センサは、ピーク、または平均、もしくはRMS、またはその他の出力電流の大きさまたは値、ならびに電流の変化率、すなわち、dI/dtを測定するために使用することができる。またはこれに代えて、電圧センサを使用して、電圧供給の電圧レベルまたはAC成分の電圧レベルを検出してもよい。差し迫ったスパーク事象を識別するために監視可能な別のパラメータは、出力電圧の降下、または出力電圧のAC成分の電圧の時間に対する第1の導関数(すなわち、dV/dt)である。スパークの形の放電に先行する電界または磁界の強度もしくはコロナ放電での他の変化を検出することも可能である。これら技術の共通の特徴は、コロナ電流のスパイクの増加には出力電圧の増加または実質的な電力のサージ(surge)が伴わないことである。
【0041】
異なる技術を用いて、電源によって生成される出力電圧を急速に低下させてもよい。好ましい方法は、電力トランジスタ、またはSCR、もしくは昇圧変圧器の一次に供給されるパルス高周波ac電力を作る電源の他の切換構成要素を停止して、電力生成プロセスを中断することである。この場合、切換構成要素は動作しないようにされ、負荷には電力は生成または供給されない。この方法の欠点は、電源の構成要素、特にキャパシタおよびインダクタなどの出力フィルタリング段に蓄積された残留エネルギ(浮遊容量および漏れイ
ンダクタンスを含む)をどこかに解放しなければならない点、すなわち、適切なエネルギのシンク(sink)、典型的には「グラウンド」に放電しなければならない点である。何らかの急速な放電機構がないと、電源によって蓄えられた残留エネルギが負荷に解放され、出力電圧が低下する速度を低速化する(すなわち「低下させる」)。またはこれに代えて、好ましい構成および方法は、磁気的な構成要素(変圧器および/または複数の巻線のインダクタ)の一次巻線(すなわち、巻線の端子を相互接続する)を電気的に「ショート」させて、磁界を崩壊させることにより蓄えられたエネルギを消散させ、エネルギが負荷に伝達されないようにするものである。別の、より根本的な方法は、電源の出力を比較的低い値の抵抗にショートさせる。この抵抗は、しかしながら、スパーク抵抗よりもずっと高くなければならず、同時に、スパーク事象の直前に現われるような電源を供給されているコロナ放電装置の動作抵抗よりも低くなくてはならない。たとえば、高電圧のコロナ装置(たとえば、静電流体加速器)がスパークの検出の直前には1mAの電流を消費し、電源からの出力電流が、スパーク事象中(または他のショート回路状態)に電流制限装置(たとえば、一連の電流制限抵抗)により1Aに制限される場合、負荷に(すなわち、コロナ放電装置のコロナ放電電極およびアトラクタ電極の間に)印加される「ダンピング」抵抗は、1mAより大きいが(すなわち、抵抗を低くして、通常動作の負荷電流よりも多くの電流を伝えなければならない)、1Aよりも小さく生じなければならない(すなわち、最大のショート電流によって制限される電流よりも小さい)。この付加的なダンピング抵抗は、高電圧のリードタイプのリレーまたは他の高電圧高スピードのリレーもしくは切換構成要素(たとえば、SCR、トランジスタ等)により電源の出力に接続されてもよい。無慣性の高電圧電源の共通のかつ重要な特徴は、初期のスパーク事象に先行しかつそれを示す電気的な事象から、何らかの介入がない場合にスパークが実際に起こったであろう時間までの時間よりも短い時間で、すなわち、典型的にはミリ秒以下またはマイクロ秒の範囲で電力の生成を中断することができる点である。
【0042】
そのような無慣性の電源の別の重要な特徴は、電源の構成要素に蓄積されかつ蓄えられた残留エネルギが、負荷、たとえば、コロナ放電装置での放電プロセスを実質的に減速させるべきでないか、またはさもなければ妨げるべきでないという点である。たとえば、コロナ放電装置がそれ自身の電気エネルギを50マイクロ秒で放電し、スパーク事象までの最小の予想時間が100マイクロ秒である場合、電源は放電時間に50マイクロ秒より多く付加してはならず、実際の放電時間は100マイクロ秒を超えない。したがって、高電圧電源は、電力トランジスタなどのアクティブな構成要素がオフにされた後にコロナ放電装置にそれらのエネルギを放電し得るキャパシタまたはインダクタのようなエネルギ蓄積構成要素を使用するべきではない。この能力および機能性を提供するため、高電圧変圧器は、比較的小さな漏れインダクタンスを有し、かつ出力フィルタ容量性が小さいかまたは出力フィルタ容量性を有さないべきである。電圧乗算器およびフライバックインダクタを含む従来の高電圧電源のトポロジーは、そのようなスパーク管理または防止に一般的には好適ではない。
【0043】
この発明は、イオン発生プロセスが単に電圧を2つの電極に印加するよりも複雑であるという事実を認めるかまたは理解するために先行技術の欠点に対処する。先行技術のシステムおよび方法は、一般的には、大きな空気の流れを生成すると同時にオゾンの生成を制限することができない。
【0044】
コロナ関連のプロセスは3つの共通の局面を有する。第1の局面は、流体の媒体内でのイオンの発生である。第2の局面は、放出されたイオンによる流体の分子および異物の粒子の帯電である。第3の局面は、対向する(コレクタ)電極に向けての(すなわち、電界線に沿った)帯電した粒子の加速である。
【0045】
イオンによって引起される空気または他の流体の加速は、イオンの量(すなわち、数)
および流体の粒子の近くで電荷を誘発して流体の粒子を対向する電極に向かって推進するそれらの能力に応じて異なる。同時に、オゾンの発生は、電極に印加された電力に実質的に比例する。イオンが流体に導入されると、それらは粒子および中性に帯電した流体の分子に付着する傾向がある。各粒子は、特定の粒子のサイズに応じて限られた量の電荷のみを受取ることができる。以下の式によると、電荷の最大量(いわゆる飽和電荷)は次のように表わすことができる。
【0046】
【数1】

【0047】
ここでdp=粒子サイズ、εrは電極の対の間の絶縁材料の誘電率、ε0は真空での誘電
率である。
【0048】
この式から、或る数のイオンが流体に導入されると近くの分子および周囲の粒子を最大レベルに帯電させることがわかる。このイオンの数は1つの電極から別の電極に流れる電荷の数を示し、2つの電極間を流れるコロナ電流を決定する。
【0049】
一旦帯電されると、流体の分子は電界の向きで対向するコレクタ電極に引付けられる。力Fが作用するこの方向付けられた空間は、電界の強度Eに依存する電荷Qを有する粒子を動かし、これは電極に印加される電圧に比例する。
【0050】
F=−Q*
コロナ電流により最大数のイオンが流体に導入されかつ結果的な電荷が印加された電圧のみにより加速される場合、実質的な空気の流れが生成され、平均的な電流消費は実質的に低減される。これは、電極間の電圧が実質的に一定であるときに、コロナ電流が何らかの最低の値から最大の値へと値がどのように変化するかを制御することによって実現可能である。言い換えると、(印加される平均的な高電圧に比例して)電極に印加される電力電圧の高電圧リップル(または、交流成分)を最小化しつつ、電流のリップルを実質的に高く保ち、理想的には電流の全平均またはRMSの振幅に匹敵するように保つことが有利であることがわかっている。(別段の記載がないかまたは用法により暗示されない場合、ここで使用されるように、「リップル」という言葉および「交流成分」という語句は、正弦波、正方形、鋸歯状、不規則、複合等の時間的に変動するすべての信号波形を含む信号の時間的に変動する成分を指し、さらに「交流」または「ac」としても知られる双方向性の波形およびパルス直流電流または「パルスdc」などの一方向性の波形の両方を含む。さらに、文脈によって別に示されない限り、これらに限らないが「リップル」、「ac成分」、「交流成分」等を含む言葉とともに使用される「小さい」、「大きい」等の形容詞は、信号の電位(または「電圧」)および信号の流量(または「電流」)などの特定のパラメータの相対的または絶対的な振幅を示す。電圧波形と電流波形とのそのような区別は、コロナ電極およびアトラクタ電極のコロナ発生アレイのリアクタンス性(容量性)の成分によってコロナ関連の技術および装置で可能である。容量性成分は比較的低い振幅の電圧交流成分を生じ、比較的大きい対応する電流の交流成分を生成する。たとえば、小さいリップルで高電圧を生成する電源をコロナ装置で使用することが可能である。これらリップルは比較的高周波数「f」でなければならない(すなわち、1kHzよりも大きい)。以下のように、電極(すなわち、コロナ電極およびコレクタ電極)は、高周波数の電圧が印加されるときに比較的小さなインピーダンスXcを示すようにそれらの互いの容量C
が十分に大きくなるよう設計される。
【0051】
【数2】

【0052】
電極は、非リアクタンス性のdc抵抗およびリアクタンス性のac容量性インピーダンスの並列接続を表わすか、またはそれとして見ることができる。オーム抵抗によりコロナ電流は1つの電極から別の電極へと流れる。この電流の振幅は、印加された電圧の振幅にほぼ比例し、実質的に一定である(dc)。容量性インピーダンスは、電極間の電流のac部分を生じさせる。この部分は、印加された電圧のac成分の振幅(「リップル」)に比例し、かつ電圧の交流成分の周波数に反比例する。リップル電圧の振幅およびその周波数に応じて、電極間の電流のac成分の振幅は電流のdc成分よりも少ないかまたは大きくなり得る。
【0053】
小さな振幅のリップルで高電圧(すなわち、フィルタリングされたdc電圧)を生成することができるが、電極にわたって比較的大きなac成分(すなわち、大きな振幅の電流のリップル)で電流を提供する電源により、イオンの発生および流体の加速が向上され、空気の場合には、オゾンの生成が大きく低減されるかまたは最小化される。したがって、コロナ電流のdc成分の振幅によって除したコロナ電流のac成分の振幅として規定される比率または分数として表現される電流のリップル(すなわち、Iac/Idc)は、電圧のリップルよりかなり大きく(すなわち、少なくとも2倍)、好ましくは電圧のリップルの少なくとも10倍,100倍であり、より好ましくは、電圧のリップルの1000倍の大きさで、後者は、同様に、dc成分の振幅によって除したコロナ放電電極に印加される電圧の時間的に変動する成分またはac成分の振幅として規定される(すなわち、Vac/Vdc)。
【0054】
さらに、最適なコロナ放電装置の性能は、平均的な電圧の振幅に対して出力電圧が小さな振幅の電圧交流成分を有するときに実現され、電極および介在する絶縁体を通る流れ(すなわち、加速される流体)は、電圧の交流成分(dc電圧に対する)より少なくとも2倍、より好ましくは10倍大きく(dc電流成分に対して)、すなわち、電流のac/dcの比率は、2倍、10倍だけ大きく、または印加される電圧のac/dcの比率よりも大きい。つまり、結果的な電流が以下の関係を満たすようにコロナ放電電極に電圧を生成することが好ましい。
【0055】
【数3】

【0056】
上述の要件のいずれかが満たされる場合、電流および電圧のac/dcの比率がほぼ等しい場合の電源と比較して、結果的なコロナ放電装置は、動かされる流体の立方フィートあたりの消費電力が少なくなり、(空気の場合)オゾンの生成が少なくなる。
【0057】
これら要件を満たすため、電源およびコロナ発生装置は適切に設計および構成されなければならない。特に、電源は、最低限のみの、かつ同時に比較的高周波数のリップルで高電圧の出力を生成しなければならない。コロナ発生装置自身は、電極を通る、すなわち、1つの電極から別の電極への実質的に高周波数の電流の流れを提供する所定の値の設計された浮遊または寄生キャパシタンスを有するべきである。電源が低周波数のリップルを生成する場合、Xcは比較的大きくなり、交流成分電流の振幅は、電流の直流成分の振幅に
は匹敵しない。電源が非常に小さいリップルを生成するかまたはリップルを生成しない場合、交流電流は直流電流には匹敵しない。コロナ発生装置(すなわち、電極のアレイ)が低いキャパシタンス(寄生および/または電極の間の浮遊キャパシタンスを含む)を有する場合、交流電流はこの場合も直流電流には振幅で匹敵しない。大きな抵抗が電源と電極のアレイとの間に設けられると(たとえば、リーの米国特許第4,789,801号の図1および図2を参照)、ac電流のリップルの振幅は減衰され(すなわち、減少し)、振幅では電流のdc(すなわち、一定)成分のそれに匹敵しない。したがって、所定の電圧および電流の関係が存在するように或る条件が満たされる場合のみ、コロナ発生装置は最適に機能して、十分な空気の流れを提供し、動作効率が向上され、望ましいオゾンのレベルが得られる。結果的な電源は、費用もかからない。
【0058】
特に、リップルを発生する電源は、さもなければ電源の出力に接続された比較的高価でかつ物理的に大きな高電圧のキャパシタによって提供される出力のフィルタリングを必要としない。これだけでも電源は費用がかからなくなる。さらに、そのような電源はより少ない「慣性」を有し、すなわち、蓄えられるエネルギが少なく、出力の振幅の変動を減衰させる傾向があり、したがって、リップルのないまたは無視可能なリップルの高慣性の電源よりも急速に出力電圧を変化させることができる。
【0059】
この発明は、先行技術の空気の流れについての限界および一般的な能力のなさにおけるいくつかの欠点に対処して理論的に最適の性能を実現する。これら欠点の1つは、複数段のEFA装置に対する過度のサイズの要件を含む。連続して配置されるEFAのいくつかの段はエアダクトに沿って(すなわち、空気の流れの方向に沿って)かなりの長さを必要とするためである。この長いダクトは空気の流れに対してより大きな抵抗を与える。
【0060】
段が互いに近くに配置されるときにさらに他の問題が生じる。段の間の間隔を低減すると、1つの段のアトラクタ電極と隣接する次の段のコロナ放電電極との間に「バックコロナ」が生成されることがあり、逆の空気の流れが生じる。さらに、近隣の段の間の電気的なキャパシタンスにより、近隣の段の間に寄生電流の流れがある。この電流は、近隣の段の間の非同期の高電圧のリップル、または高電圧のパルスによって引起こされる。
【0061】
大きいかまたは複数の段を使用して、各別々の(またはグループの)段にそれ自身の高電圧電源(HVPS)が設けられるようにすると別の問題が生じる。この場合、コロナ放電を作るために必要な高電圧が、許容不可能なレベルのスパークを電極間に発生させ得る。スパークが発生すると、HVPSは、動作を再開する前にイオン消失およびスパークの消失のために必要な或る時間だけ完全に停止しなければならない。電極の数が増加すると、スパークは電極の1つのセットの場合よりも頻繁に発生する。1つのHVPSがいくつかの電極のセット(すなわち、いくつかの段)に供給する場合、発生するより多くのスパークを消すためにより頻繁に停止する必要がある。このことはシステム全体に対して電力の中断の望ましくない増加に繋がる。この問題に対処するため、各段にはそれ専用のHVPSから供給すると有利である。しかしながら、別々のHVPSを使用すると、近隣の段の電極間の浮遊キャパシタンスによって引起こされる望ましくない電気的な相互作用を回避するためおよびバックコロナの生成を避けるため、連続する段の間隔をより大きくする必要がある。
【0062】
この発明は、EFAの段の間隔をより近づけることにより空気の流れを増加させつつ望ましくない影響の導入を最小化するかまたは回避するための新規の解決策を提示する。この発明は、電極の幾何学的形状、互いの場所および電極に印加される電圧の組合せを実現して性能を向上する。
【0063】
この発明の特徴によると、複数のコロナ電極および集電電極は、互いに平行に位置付けられるか、または空気の流れの方向に垂直なそれぞれの平面の間に延在するように位置付けられる。近隣の段のすべての電極は互いに平行であり、近隣の段の電極はすべて互いに平行であり、同じ種類の電極(すなわち、コロナ放電電極または集電電極)はすべて、同じ種類の電極または電極の縁がある平面に直交する同じ平行な平面に配置される。別の特徴によると、近隣の段の電極間のコロナ放電を回避するかまたは最小化するために段の間隔が狭められる。隣接する電極間の最も近い間隔が「a」である場合、第1の電極に印加される電圧V1と最も近い第2の電極に印加される電圧V2との間の電位差(V1−V2)と電極間の距離との比率は、規格化された距離「aN」であり、aN=(V1−V2)/aである。1つの段のコロナ放電ワイヤから近隣の段の最も近い部分への正規化された距離は、これら電極間に印加されるコロナ開始電圧を超えなければならず、これは実際には、逆コロナの生成を防止するために、それがコロナ放電から対応する関連の(すなわち、最も近い)吸引電極への正規化された距離の1.2倍から2.0倍以上でなければならないことを意味する。
【0064】
最後に、近隣の段に印加される電圧は同期されかつ同位相にされるべきである。つまり、近隣の段の電極に印加される電圧のac成分は、同時に上下し、かつ実質的に同じ波形および大きさおよび/または振幅を有するべきである。
【0065】
この発明は、(典型的には単位長さあたりの段で測定された)EFAの電極の密度を増加させ、電極間の浮遊電流を排除または大きく減少させる。同時に、この発明は、近隣の段の電極間のコロナ放電(たとえば、バックコロナ)を排除する。これは、部分的には、近隣のEFAの段に実質的に同じ電圧の波形で電力を供給することによって実現され、すなわち、近隣の電極の電位は、段の間の作動電圧を排除または低減するために同じかまたは非常に類似の交流成分を有する。段の間でそのように同期して動作することで、隣接するEFAの構成要素の近隣の電極間の電位差は一定になり、1つの電極から別の電極への結果的な浮遊電流は最小化されるかまたは完全に回避される。同期は異なる手段によっても実現可能であるが、対応する電源からの同期されかつ同位相にされたそれぞれの電圧で、またはそれぞれの印加された電圧の類似の振幅のac成分を提供するように同期された電源で近隣のEFA構成要素に電力を供給することによるのが最も容易である。これは、近隣のEFA構成要素に接続された同じ電源で、または印加された電圧の同期かつ同位相にされたac成分を生成する異なる好ましく適合された電源で実現することができる。
【0066】
この発明は、先行技術の空気の流れの限界および一般的な能力のなさにおける他の欠点にも対処して理論的に最適の性能を実現する。これら欠点の別のものは、商用に好適な大きな流体の流れを生成する能力が限られていることを含む。さらに別の欠点は、高い強度の電界の発生を避けるために(コロナ電極以外に)大きな電極の構造を必要とする点である。物理的な大きな電極を使用すると、流体の流れの抵抗が増加し、EFAの能力および効率が制限される。
【0067】
EFAが最大の能力でまたはその近くで、すなわち、最大の電圧が印加され電力が消費されて動作するときにさらに別の問題が生じる。この場合、印加される動作電圧は、典型的には誘電破壊電圧の近くに維持されるため、スパークおよび/またはアークなどの望ましくない電気的な事象を生じ得る。さらに別の欠点は、意図されない接触が電極の1つに行なわれたときに生じることがあり、大きな電流の流れが人を通る可能性があり、これは
不快でありかつ危険でもある。
【0068】
典型的にコロナ電極として用いられる細いワイヤを使用すると、さらに別の問題が生じる。そのようなワイヤは、比較的細くなくてはならず(通常は、直径が約0.004'')、脆く、したがって手入れまたは取扱いが難しい。
【0069】
より強力な流体の流れが必要であるかまたは望ましいときに(たとえば、より大きな流量)、別の問題が生じる。従来の複数段の配置は、それぞれの電界への互いの干渉を避けるためにコロナ電極は互いから最小の距離になければならないため、比較的低い電極の密度に繋がる(したがって、不十分な最大到達可能な電力に繋がる)。間隔の要件によって体積が増加し、かつ電極の密度が制限される。
【0070】
この発明の特徴は、加速電極の構成および製造で抵抗の高い材料を使用することにより新規の電極の幾何学的形状および最適化された互いの電極の場所(すなわち、電極間の幾何学的形状)を使用して流体の流れを増加するための新規の解決策を提供する。
【0071】
この発明の特徴によると、複数のコロナ電極および加速電極は互いに平行に位置付けられ、電極の一部は空気の流れの方向に垂直なそれぞれの平面間に延在する。コロナ電極は、金属または導電性セラミックなどの導電性の材料で作られる。コロナ電極は、細いワイヤ、刃または帯の形であってもよい。コロナ放電はコロナ電極の狭い面積で起こり、これら狭い面積はここでは「イオン化端」と称される。これら端は、一般的には所望の流体の流れの方向に関してコロナ電極の下流側にある。他の電極(たとえば、加速電極)は、流体の流れの主な方向に延在するバーまたは細い帯の形である。一般的に、コロナ電極の数は、加速電極の数に1を加えたものに等しい。つまり、各コロナ電極は1つまたは2つの隣接する加速電極に対向しかつ平行に位置付けられる。
【0072】
加速電極は高抵抗の経路を提供する高抵抗の材料で作られ、すなわち、電極にわたって大きな電圧の低下を生じることなくコロナ電流を容易に伝える高抵抗率の材料で作られる。たとえば、加速電極は、炭素入りプラスチック、ケイ素、砒化ガリウム、リン化インジウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、セレン化カドミウムなどの比較的高抵抗の材料で作られる。これら材料は、典型的には、103から109'Ω−cmの範囲の、より好ましくは
、105から108'Ω−cmの間、より好ましくは106から107'Ω−cmの範囲の固有の抵抗率ρを有する。)
同時に、電極の幾何学的形状は、スパークまたはアークなどの局所的な事象または外乱が、大きな電流の増加または音を発生することなく終了されるように選択される。
【発明の効果】
【0073】
この発明は、(典型的には体積当たりの「電極の長さ」で測定された)EFAの電極の密度を増加させ、電極の物理的な厚みに関連するような電極によって引起こされる空気力学的な流体の抵抗を大きく減少させる。この発明の付加的な利点は、電極に印加される動作電圧が電気的な絶縁破壊の限界にどれだけ近づいても、それにかかわらず実質的にスパークのない動作を提供するという点である。この発明のさらに別の利点は、電極をより丈夫でかつ信頼性のおけるものにする頑強なコロナ電極の形状を提供する点である。電極の設計によって、「故障のない」EFAを作ることができ、たとえば、意図せずに接触された場合に安全性を脅かす危険を生じないものを作ることができる。
【0074】
この発明のさらに別の利点は、コロナ放電を提供するために固体材料以外を使用した電極の使用である。たとえば、コロナ放電の放出、より大きな電気処理能力の支援のために導電性の流体を効率的に用いて、流体の速度を増加させることができる。さらに、流体は、コロナ放電のシース(sheath)の近傍で電気化学的なプロセスを変えることができ、た
とえば、(空気の場合)、固体のコロナ材料によって生成されるよりもオゾンの生成が少なくなり、または通過する流体の化学的な変質をもたらす(瞬間的な有害な気体の破壊)。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】高電圧電源(HVPS)の概略的な回路図であり、低い振幅の高周波数の電圧リップルを有する高い振幅のdc電圧も生成する絶縁破壊開始レベルをある程度余裕をもって下回るレベルに電圧出力レベルを急速に低下させるように制御可能な低慣性の出力回路を備える。
【図2】コロナ放電装置などの高電圧装置でのスパーク事象を防止するように構成された別の高電圧電源の概略的な回路図である。
【図3】高電圧装置でのスパーク事象の発生を防止するように構成された別の高電圧電源の概略的な回路図である。
【図4】高電圧装置でのスパーク事象の発生を防止するように構成された高電圧電源の概略的な回路図である。
【図5】スパーク事象を予測しかつ回避するように構成されたHVPSから電力を受取る静電流体加速器のコロナ放電電極での出力コロナ電流および出力電圧のオシロスコープのトレースである。
【図6】HV電力を静電装置に供給するように接続されたHVPSの図である。
【図7A】dc電圧およびdc+ac電流を生成する電源の概略図である。
【図7B】経時的に電圧および電流の振幅を別々に示す電源出力の波形図である。
【図8A】(i)空気の流れを最適化し、(ii)電力消費を低減し、および/または(iii)オゾンの生成を最小化するように不十分な電極間のキャパシタンスを有するコロナ放電装置の概略図である。
【図8B】図1に示されるような電源から利益を得、かつそれと協働するように最適化されたコロナ放電装置の概略図である。
【図9】コロナ放電装置に印加される高電圧および結果的なコロナ電流のオシロスコープのトレースである。
【図10A】隣接するコロナ放電の段に供給する1つの高電圧電源を備えた静電流体加速器(EFA)アセンブリの概略図である。
【図10B】それぞれの隣接するコロナ放電の段に供給する同期された電源の対を備えたEFAアセンブリの概略図である。
【図11A】段の間にac差動電圧成分を備えない近隣のEPAの段の電極間の電圧および電流のタイミング図である。
【図11B】小さな電圧のリップルが段の間に存在する近隣のEFAの段の電極間の電圧および電流のタイミング図である。
【図12】出力電圧が同期された高電圧電源サブアセンブリの対を含む電源ユニットの概略図である。
【図13A】第1の電極配置の幾何学的構成を実現する2段のEFAアセンブリを示す概略的な上面図である。
【図13B】第2の電極配置の幾何学的構成を実現する2段のEFAアセンブリを示す概略的な上面図である。
【図14】電気的に対向する高抵抗加速電極から間隔をあけて配置され、細いワイヤとして形成されるコロナ電極を備えたEFAアセンブリを示す概略図である。
【図15】ワイヤとして形成されるコロナ電極と、高抵抗バーとして形成される加速電極とを備え、後者が外側のシェル内に全体が封入された導電性部分を備えるEFAアセンブリを示す概略図である。
【図16】ワイヤとして形成されるコロナ電極と、高抵抗バーとして形成される加速電極とを備え、加速電極の幅に沿って変動するかまたは段階的な導電性を有する隣接したセグメントを備えたEFAアセンブリを示す概略図である。
【図17】電気的に対向する高抵抗加速電極間に位置する薄い細片の形をしたコロナ電極を備えたEFAアセンブリを示す概略図である。
【図18A】流体内と、対応する加速電極の本体内とにおけるコロナ電流分配を示す図である。
【図18B】スパークまたはアーク事象の結果として生じる電流の経路を示す図である。
【図19】櫛状の加速電極を示す概略図である。
【図20】導電性流体で満たされ、高抵抗加速電極の間に挿入される中空で滴状のコロナ電極を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
好ましい実施例の説明
図1は、静電流体加速器などの高電圧装置でスパーク事象の発生を防止するように構成された高電圧電源(HVPS)100の概略的な回路図である。HVPS100は、一次巻線107および二次巻線108を備えた高電圧昇圧変圧器106を含む。一次巻線107はハーフブリッジインバータ(電力トランジスタ104、113およびキャパシタ105、114)を介してDC電圧源101により提供されるac電圧に接続される。ゲート信号コントローラ111は、トランジスタ104、113のゲートで制御パルスを生成し、その周波数は、RCタイミング回路を形成する抵抗器110およびキャパシタ116の値によって決定される。二次巻線108は、全波ブリッジ整流回路として構成された4つの高電圧(HV)高周波ダイオードを含む電圧整流器109に接続される。HVPS100は、HV装置または電極(たとえば、コロナ放電装置)に接続される端子120とグラウンドとの間で高電圧を生成する。HV装置に印加される電圧、たとえば、コロナ放電電極のアレイにわたって印加される電圧のAC成分は、高電圧キャパシタ119によって検知され、検知された電圧は、ツェナーダイオード122によって制限される。出力電圧がスパークに先行する特徴的な電圧の変動を示すと、変動の特徴的なAC成分は抵抗器121にわたる比較的大きな信号レベルに繋がり、トランジスタ115をオンする。トランジスタ115は、信号コントローラ111のピン3を接地し、電力トランジスタ104および113のゲートにわたる電圧を中断する。トランジスタ104および113が非導電性にされると、一次巻線107にわたってほぼ瞬間的に電圧が中断され、強く結合された二次巻線108に伝えられる。同様の急速な電圧の降下がスパーク開始レベルを下回ってコロナ放電装置に生じるため、切迫したアークまたは絶縁破壊が回避される。
【0077】
スパーク防止技術は2つのステップまたは段階を含む。第1に、コロナ放電装置の浮遊キャパシタンスに蓄えられたエネルギはコロナ電流を通じて放電されコロナ開始電圧へと下げられる。この電圧は常にスパーク開始電圧を十分に下回る。この放電が約0.1mssec(すなわち、100mksec未満)より短い時間で起こる場合、電圧の降下は効率的にスパーク事象の発生を防止する。より高いスパーク開始電圧レベルからコロナ開始レベルへの電圧の降下は、約50mksecで実現されることが好ましいことが実験的にわかっている。
【0078】
電源電圧がコロナ開始レベルに達し、かつコロナ電流が停止した後、放電プロセスはより低速になり、電圧は数ミリ秒の間でゼロに降下する。電源100は、抵抗器121およびトランジスタ115のゲート−ソースの自己キャパシタンスによって規定された同じ所定の時間後に電圧の生成を再開する。所定の時間は、通常は数ミリ秒のオーダーであり、イオン消失プロセスおよび通常の動作の回復に十分であることがわかっている。一次電力を変圧器106に再び印加することに応答して、コロナ放電装置に提供される電圧は、ほぼコロナ開始レベルから通常の動作レベルへと数マイクロ秒で上昇する。そのような配置を用いると、さもなければ同じコロナ放電配置および構成に頻繁なスパークを生じさせる値を出力電圧が超えたときでもスパーク事象は起こらない。電源100は、利用可能な電
気的な構成要素を使用して構築することができ、特別な構成要素は必要とされない。
【0079】
図2は、リード接点222および付加的な負荷223を備えた代替の電源200の概略的な回路図である。電源200は、一次巻線210および二次巻線211を備えた高電圧の2つの巻線のインダクタ209を含む。一次巻線210は、電力トランジスタ208を介してグラウンドに接続され、かつ端子201に設けられたdc電源に接続される。PWMコントローラ205(たとえば、UC3843電流モードPWMコントローラ)は、トランジスタ208のゲートで制御パルスを生成し、その動作周波数は、抵抗器202およびキャパシタ204を含むRC回路によって決定される。典型的な周波数は100kHz以上である。二次巻線211は、HVキャパシタ215および218、ならびに高周波数HVダイオード216および217を含む倍電圧回路に接続される。電源200は、HV装置または電極(すなわち、負荷)に接続される出力端子219および220の間で10kVから25kVの間のHVdc電力を生成し、典型的には18kVを生成する。制御トランジスタ203は、分路抵抗212を通る電流が予め設定されたレベルを超えたときにオンし、電流がリード接点222を含むリードタイプのリレーの制御コイル221を通って流れるようにする。電流がコイル221を通って流れるとき、リード接点222は閉じ、HV出力をHVダンピング抵抗223へと向け、出力に負荷をかけて、抵抗器207およびキャパシタ206によって決定された時間で出力電圧のレベルを低下させる。さまざまなEFA構成要素および/または装置と組合せてこのスパーク管理回路を使用すると、通常動作中のすべてのスパークを実質的に排除することができる。リードリレー203/222は、台湾のGe-Ding Information Inc.のZP−3であってもよい。
【0080】
図3は、図2に示されるものと類似の別のHVPS配置の概略的な回路図である。しかしながら、この場合、HVPS300は、リード接点322、およびHVPSの出力端子に直接的に接続された付加的な負荷323を含む。HVPS300は、一次巻線310および二次巻線311を備えた高電圧変圧器309を含む。一次巻線310は、電力トランジスタ308を介してグラウンドに接続され、かつ電力入力端子301に接続されたDC源に接続される。PWMコントローラ305(たとえば、UC3843)は、トランジスタ308のゲートで制御パルスを生成する。これら制御パルスの動作周波数は、抵抗器302およびキャパシタ304によって決定される。二次巻線311は、HVキャパシタ315および318、ならびに高周波数HVダイオード316および317を含む倍電圧回路に接続される。HVPS300は、HV装置または電極(負荷)に接続される出力端子319および320でほぼ18kVの高電圧出力を生成する。スパーク制御トランジスタ303は、分路抵抗器312を通る電流が予め設定された所定のレベルを超えたときにオンし、電流が制御コイル321を通って流れるようにする。電流がコイル321を通って流れるとき、リード接点322は閉じて、HVPSのHV出力をHVダンピング抵抗器323に向け、これにより、抵抗器307およびキャパシタ306によって決定された時間だけ出力電圧のレベルを低減する。この初期のスパーク検出および緩和の配置を使用すると、長い動作時間にわたって実質的にスパークが生成されない。
【0081】
図4は、図2に示されるものと類似の電源の構成を示し、HVPS400は、通常開いている接点422およびコイル421含むリレー、ならびに電力ダンピング負荷423をさらに含む。HVPS400は、一次巻線410および二次巻線411を備えた電力変圧器409を含む。一次巻線410は電力トランジスタ408を介してグラウンドに接続され、かつ端子401でdc電源に接続される。PWMコントローラ405(たとえば、UC3843)は、トランジスタ408のゲートで制御パルスの列を生成する。これらパルスの動作周波数は、抵抗器402およびキャパシタ404によって設定される。二次巻線411は、HVキャパシタ415および418、ならびに高周波数HVダイオード416および417を含む倍電圧回路に高電圧(たとえば、9kV)を供給するように接続される。電源400は、HV装置またはコロナ電極(負荷)に接続される端子419および4
20で高電圧出力を生成する。制御トランジスタ403は、分路抵抗器412を通る電流が差し迫ったスパーク事象に特徴的となるように予め設定された所定のレベルを超えたときに、電流がコイル421を通って流れるようにする。コイル421を通って電流が流れると、リレーの接点422は閉じ、ダンピング抵抗器423を介して一次巻線410をショートさせる。ダンピング抵抗器423によって設けられた付加的な負荷は、抵抗器407およびキャパシタ406によって決定された時間で出力電圧レベルを急速に低下させる。
【0082】
図5は、コロナ電流501および出力電圧502での電源出力の2つのトレースを含むオシロスコープのディスプレイである。示されるように、コロナ電流は、約0.1から1.0msecの時間内の初期のスパークを示す特徴的な細いスパイク503を有し、ここでは電流スパイクの約2.2msec後に示される。コロナ放電装置または類似のHV装置での電流スパイク503の検出は、制御回路を作動させ、HVPSをオフし、かつ好ましくは電極の電位を絶縁破壊安全性レベルかまたはその下方に低下させるために必要な蓄えられたエネルギを減衰する。たとえば、高周波数パルス発生器(たとえば、PWMコントローラ205)の動作を抑制することによりHVPSへの一次電力を中断することに加え、HV装置に印加される電圧をスパーク開始または絶縁破壊電位を下回るレベルに急速に低下させるために他のステップを行なってもよい。これらステップおよび支援回路は、蓄えられた電荷を、抵抗器、キャパシタ、インダクタまたはそれらの組合せなどの適切な「シンク(sink)」に「ダンピングする」ステップを含んでもよい。シンクは、HVPSの物理的な境界内にあってもよいし、および/または電力を供給されている装置、すなわち、HV装置または負荷にあってもよい。負荷にある場合、シンクは負荷内に蓄えられた電荷をより素早く受取ることができ、HVPSにあるシンクは、HVPSの出力の電圧レベルを低下させるように方向付けられ得る。シンクは、たとえば、HV抵抗器を使用して、電力を消散させて負荷に供給されるかまたは負荷の電圧レベルを低下させることができることに注意されたい。またはこれに代えて、エネルギを蓄えておいて、スパーク事象が対処された後に再び印加して、装置を通常動作に素早く戻すようにしてもよい。さらに、すべての場合に電圧をゼロの電位レベルに下げる必要はなく、スパーク事象を回避するために知られているかまたは予測されたある値まで電圧レベルを低減すれば十分であり得る。一実施例によると、HVPSは、特定のスパーク前のインジケータ(たとえば、電流のスパイクの強度、波形、持続時間等)の特性をスパーク事象の可能性を回避するかまたは予め設定されたレベルに最小化するための適切な応答と関連付けるための処理および記憶の能力を含む。たとえば、HVPSは、電流のスパイクの下での絶対的な振幅または面積
【0083】
【数4】

【0084】
に応答して、所望の量のスパーク事象の制御を提供するように事前に決定された数の負荷を選択的に挿入するようにしてもよく、たとえば、スパーク事象を回避し、スパーク事象の強度を遅延または低減させ、所望の数または量のスパーク事象を提供する等してもよい。
【0085】
再び図5を参照すると、HVPSの出力が完全に中断され、コロナ放電装置に電流が流れない場合、コロナ放電装置の電圧は、図5に示されかつ上述のように急激に降下する。短い時間の後、HV装置に印加される電圧レベルを低減するために何の措置もとられなかった場合に実際のスパーク事象が起こったであろう瞬間を示す電流スパイク504が観測され得る。幸い、出力電圧はスパークレベルを十分に下回るため、スパークまたはアークは生成されない。その代わりに、中位の電流のスパイクのみが見られ、これは外乱または
望ましくない電気的なアーク音を生成させないようにするために十分小さいものである。電流スパイク504の検出の2〜10msecのオーダーの時間の後、または電流スパイク503の1〜9msec後、HVPSはオンし、通常動作を再開する。
【0086】
図6は、静電装置602、たとえば、コロナ放電流体加速器にHV電力を供給するように接続されるこの発明によるHVPS601の図である。静電装置602は、共通の接続604によりHVPS601に接続される複数のコロナ放電電極603を含んでもよい。アトラクタ電極またはコレクタ電極605は、接続606によりHVPS601の相補的なHV出力に接続される。HV電位がコロナ放電電極603に印加されると、それぞれのコロナ放電の電子の雲が電極の近傍に形成され、コロナ放電電極と反対に帯電したアトラクタ電極またはコレクタ電極605との間の絶縁体として作用する介在する流体(たとえば、空気)の分子を帯電させる。イオン化された流体の分子は、コレクタ/アトラクタ電極605の対向する電荷に向かって加速され、所望の流体の動きが生じる。しかしながら、さまざまな環境的および他の外乱のため、流体の絶縁特性が異なり得る。この変動は、コロナ放電電極およびアトラクタの電極603、605のセットの間で電気的なアークが発生し得る点まで絶縁破壊電圧を低下させるのに十分であり得る。たとえば、埃、湿気、および/または流体の密度の変化は、絶縁破壊レベルを、装置に印加されている動作電圧を下回る点に下げることがある。スパーク前の標識事象(たとえば、電流スパイクまたはパルス等)に対して電力信号の電気的な特性を監視することにより、スパークを回避することが望ましい状況において動作電圧を低下させるなどの事象を管理するための適切なステップが実現される。
【0087】
上述の発明は、スパーク事象の数および/または強度を排除するかまたは低減することに向けられるが、他の実施例は、他のスパーク管理の設備、能力および機能性を提供し得る。たとえば、この発明の実施例による方法は、電圧レベルを急速に変化させることにより(たとえば、PWMコントローラの動作周期を変化させることにより)、スパーク放電をより均一化し、所望のスパーク強度および/または量を提供するため、または他の何らかの目的のためにスパーク事象を管理することができる。したがって、この発明の実施例の付加的な適用例および実現例は、所望の結果を得るためのスパーク前の検出および特定のレベルへの急速な電圧の変化を含む。
【0088】
この発明のこれらの特徴および他の特徴によると、3つの特徴によりスパーク事象の効率的な管理が実現される。第1に、電源は無慣性であるべきである。これは、電流供給はスパーク前の指標とスパーク事象の発生との間の時間よりも短い時間で出力電圧を急速に変化させることができなければならないことを意味する。この時間は、通常は、1ミリ秒以下である。第2に、効率的かつ急速なスパーク前の検出の方法が電源停止回路に組込まれるべきである。第3に、負荷装置、たとえば、コロナ放電装置は、スパーク前の標識と実際のスパーク事象との間の時間よりも短い時間で放電され得る低い自己静電容量を有するべきである。
【0089】
図7Aは、この発明の実施例によるコロナ放電装置に電力を供給するのに好適な電源のブロック図である。高電圧電源(HVPS)705は、変動する振幅Vac+dcの電源電圧701(図7B)を生成する。電圧701は、Vdcの平均的なdc電圧に、距離703によって表わされる瞬間値を有する振幅Vacのacまたは交流成分(すなわち、電圧の交流成分)を重畳する。電圧701の典型的な平均のdc成分(Vdc)は、10kVから25kVの範囲にあり、より好ましくは18kVに等しい。リップルの周波数「f」は典型的には100kHz前後である。低周波の高調波、たとえば、120Hzを含む60Hzの商用電力線の周波数の倍数などが電圧の波形に存在し得ることに注意されたい。以下の計算は、最も有意な高調波、つまり最も高い高調波、この場合は100kHzのみを考える。リップルのピークからピークへの振幅703(Vacは電圧701のac成
分である)は、ピークからピークで0ボルトから2000ボルトの範囲にあり得、より好ましくは、900V未満またはそれに等しく、RMSの値はほぼ640Vである。電圧701は、電極の対(すなわち、コロナ放電電極およびアトラクタ電極)に印加される。抵抗器706は、HVPS705の内部抵抗およびHVPS705を電極に接続するワイヤの抵抗を示し、この抵抗は典型的には比較的小さな値を有する。キャパシタ707は2つの電極間の寄生キャパシタンスを示す。なお、キャパシタ707の値は一定ではないが、約10pFのレベルにあると大まかには推定される。
【0090】
抵抗器708は、コロナ放電電極およびアトラクタの電極の間の空隙に特徴的な非リアクタンス性のdcオーム負荷抵抗Rを示す。この抵抗Rは、印加される電圧に応じて異なり、典型的には10メガオームの値を有する。
【0091】
HVPS705からのdc成分は抵抗器708を通って流れ、ac成分は、抵抗器708よりも100kHzの動作範囲で実質的に低いインピーダンスを示すキャパシタンス707を通って主に流れる。特に、キャパシタ707のインピーダンスXcはリップルの周波数の関数である。この場合、これは、
c=1/(2πfC)=1/(2*3.14*100,000*10*10-12)=160kΩにほぼ等しい。
【0092】
キャパシタンス707を通って流れる電流のac成分Ia.c.は、
a.c.=Va.c./Xc=640/160,000=0.004A=4mA
に等しい。
【0093】
抵抗器708を通って流れる電流のdc成分Idcは、
dc=Vdc/R=18kV/10MΩ=1.8mA
に等しい。
【0094】
したがって、電極間の結果的な電流のac成分Iacは、結果的な電流のdc成分よりも約2.2倍大きい。
【0095】
装置700の動作は図7Bのタイミング図を参照して説明することもできる。イオン化電流が何らかの最大の振幅(Imax)に達すると、イオンがコロナ放電電極から放出され、周囲の分子および流体の粒子(すなわち、空気の分子)を帯電させる。このとき、最大の電力が生成され、最大のオゾンの生成(空気または酸素における)が行なわれる。電流がIminに減少すると、生成される電力は少なくなり、実質的に全くオゾンは生成されない。
【0096】
同時に、帯電した分子および粒子は最大の電流の状態と同じ力で対向する電極(アトラクタ電極)に向かって加速される(電圧は実質的に一定であるため)。したがって、流体の加速率は実質的に影響されず、オゾンの生成が低減されるのと同じ程度には影響されない。
【0097】
周囲の流体の加速は、コロナ放電電極からアトラクタ電極へのイオンのモーメントから生じる。これは、電圧701の影響下でイオンがコロナ放電電極から放出され、コロナ放電電極の周囲に「イオンの雲」を作るからである。このイオンの雲は電界の強さに応答して対向するアトラクタ電極に向かって移動し、その強度は印加される電圧701の値に比例する。電源705によって供給される電力は、ほぼ出力電流702に比例する(電圧701が実質的に一定に維持されると仮定する場合)。したがって、脈動する性質の電流702により、同じ振幅の純粋なdc成分よりもエネルギの消費が少なくなる。電流のac成分およびdc成分の間のそのような電流の波形および関係は、低い内部抵抗706およ
び出力電圧の小さい振幅の交流成分703を有することによって確保される。最も効率的な静電流体加速は、電流702の交流成分の相対的な振幅(すなわち、Iac/Idc)が電圧701の交流成分の相対的な振幅(すなわち、Vac/Vdc)よりも大きいときに得られることが実験的にわかっている。さらに、これら比率が離れると、付加的な改善が実現される。したがって、Vac/VdcがIac/Idcを大きく下回る(すなわち、半分を越えない)、好ましくは、Iac/Idcの1/10、1/100を越えないか、またはより好ましくは1/1000である場合、(ここで、VacおよびIacは、同じように測定され、たとえば、ともにRMS、ピークからピークまたは類似の値である)、さらに効率的な流体の加速が実現される。数学的に異なった表現をすると、コロナ電流の一定成分と印加される電圧の時間的に変動する成分との積をコロナ電流の時間的に変動する成分と印加された電圧の一定成分との積で除したものは、最小化されるべきであり、各別々のステップは当初のステップに対する大きさで大きな改善を提供する。
【0098】
図8Aは、上述の式を満たさないコロナ放電装置を示す。これは針の形のコロナ放電電極800を含み、その鋭い幾何学的形状は針の尖った端部の近傍でコロナ放電を生成するのに必要な電界を提供する。対向するコレクタ電極801はずっと大きく、滑らかなバーの形である。高電圧の電源802は、高電圧供給ワイヤ803および804を通じて電極の両方に接続される。しかしながら、コレクタ電極801の中央の軸に垂直な放電電極800の相対的な配向のため、この配置は電極800および801の間に有意なキャパシタンスを生成しない。一般的に、キャパシタンスは電極間に面する有効面積に直接的に比例する。この面積は図8Aに示される装置では非常に小さいが、これは電極の1つが最小限の断面積を有する針先の形であるためである。したがって、電極800から電極801に流れる電流は有意のac成分を有さない。図8Aに示されるものに類似のコロナ放電装置の配置は非常に低い空気加速能力および比較的大きな量のオゾンの生成を示す。
【0099】
図8Bは代替のコロナ放電装置を示す。複数のコロナ放電電極は長く細いコロナ放電ワイヤ805の形であり、対向するコレクタ電極806はコロナワイヤ805に平行なより厚みのあるバーの形である。高電圧電源807は、それぞれの高電圧供給ワイヤ809および810によって、コロナ放電ワイヤ805およびコレクタ電極806に接続される。この配置によって電極間の面積はずっと大きくなり、したがって、その間のキャパシタンスがずっと大きくなる。コロナワイヤ805からコレクタ電極806に流れる電流は、有意のac成分を有し、高電圧電源807は十分な電流供給能力を有することができる。図8Bに示されるもののようなコロナ放電装置の配置により、実質的に高周波数の電流リップルであるが小さな電圧リップル(すなわち交流成分)で高電圧電源によって電源を供給されるときに、空気加速能力は大きくなり、比較的イオンの生成は小さくなる。
【0100】
図1を再び参照すると、高電圧電源回路100は、小さな高周波数リップルを有する高電圧を生成することができるように構成してもよい。上述のように、電源100は、一次巻線107および二次巻線108を備える高電圧の二重の巻線の変圧器106を含む。一次巻線107は、ハーフブリッジインバータ(電力トランジスタ104、113およびキャパシタ105、114)を通じてdc電圧源101に接続される。ゲート信号コントローラ111は、抵抗器103および117を通じてトランジスタ104、113のゲートで制御パルスを生成する。これらパルスの動作周波数は、抵抗器110およびキャパシタ116に対して選択された値によって決定される。変圧器106の二次巻線108は、4つの高電圧高周波数の電力ダイオードを含むブリッジ電圧整流器109に接続される。電源100は、端子120とコロナ放電装置の電極に接続されるグラウンドとの間で高電圧出力を生成する。
【0101】
図9は、生成されかつ電極のアレイを通って流れる結果的な電流902とともに、コロナ放電装置での出力電流および電圧の波形、高電圧901のオシロスコープのトレースを
示す。電圧901は約15,300Vの比較的一定の振幅を有し、交流成分はほとんどまたは全くないことがわかる。一方、電流902は、電流の平均値(1.189mA)をはるかに超えた、2mAを超える比較的大きな交流電流の成分(リップル)を有する。
【0102】
上述の特徴に加え、この発明は、低慣性の電源が、電流供給に高リアクタンスの負荷を与えるコロナ放電素子のアレイと組合される実施例をさらに含む。つまり、アレイの容量負荷は、電源の出力でのリアクタンス性の成分を大きく上回る。この関係により、一定の低いリップルの電圧および高いリップルの電流が得られる。この結果はオゾンの生成が低減された効率の高い静電流体加速器にある。
【0103】
図10Aは、2つのEFAの段1014および1015を含むこの発明の別の実施例による静電流体加速器(EFA)装置1000の概略図である。第1のEFAの段1014は、コロナ放電電極106および関連する加速電極1012を含み、第2のEFAの段1015は、コロナ放電電極1013および関連する加速電極1011を含む。EFAの段およびすべての電極は共に概略的に示されている。説明しやすくするため、段あたりコロナ放電および集電の電極の1つのセットのみが示されているが、各段はコロナ電極および加速の電極の多くのアレイの対を含み得ることが予想される。EFA1000の重要な特徴は、コロナ放電電極1006とコレクタ電極1012との間の距離d1は、コレクタ電
極1012と後続の段1015のコロナ放電電極1013との間の距離d2に匹敵する点
、すなわち、隣接する段の素子間の最も近い距離は同じ段内の電極間の距離よりさほど大きくない点である。典型的には、コレクタ電極1012と隣接する段のコロナ放電電極1013との段の間の距離d2は、同じ段内のコロナ放電電極1006とコレクタ電極10
12との間の段内の間隔の距離d1(または、コロナ放電電極1013とコレクタ電極1
011との間隔)の1.2倍から2.0倍の間であるべきである。この一貫した間隔のため、電極1006と1012、および1006と1013との間のキャパシタンスは同じオーダーである。この配置では、コロナ放電電極1006と1013との間のキャパシタンス結合により、電極間に何らかの寄生電流が流れることができる。この寄生電流は電極の対1006および1012の間の容量性電流と同じオーダーの振幅である。電極1013と106との間の不必要な電流を低減するために、各々には同期された高電圧の波形が供給されるべきである。図10Aに示される実施例では、両方のEFAの段は、共通の電源1005によって、すなわち、並列に両方の段に電力を供給する1つの電圧変換回路(たとえば、電力変圧器、整流器およびフィルタリング回路等)を有する電源により電力を供給される。このことにより、電極1006と1013との間の電圧差は電極1006および1011に対して一定に保たれるため、電極1006と1013との間には全く電流が流れないか、または非常に小さい電流のみが流れる。
【0104】
図10Bは、それぞれ別々の電流供給1002および1003によって電力を供給されるEFAの段1016および1017の対を含むEFA1001の代替の構成である。第1のEFAの段1016は、段1016内に相補的な電極の対を形成するコロナ放電電極1007および集電電極1008を含む。第2のEFAの段1017は、相補的な電極の第2の対を形成するコロナ放電電極1009および集電電極1010を含む。EFAの段1016、1017およびすべての電極1007〜1010は共に概略的に示されている。
【0105】
第1のEFAの段1016は電源1002によって電力を供給され、第2のEFAの段1017は電源1003によって電力を供給される。両方のEFAの段および両方の電源1002ならびに1003は、同期を簡略化するために同じ設計であってもよいが、代替の配置を収容するのに適切なように異なる設計を使用してもよい。電源1002および1003は、同期された電力出力を提供するように制御回路1004によって同期される。制御回路は、両方の電源1002および1003が実質的に等しい同期されかつ同位相に
された出力電圧を生成して、電極1007および1009の間の電位差が実質的に一定に保たれるようにする(たとえば、ac電圧成分を有さないかまたは非常に小さなac電圧成分を有するようにする)。(注意:「同期された」という言葉は、一般的には信号間の周波数および位相の両方の一致を含み、位相の調整の要件は、「同位相にされた」という言葉の使用によってさらに強調され、たとえば、各段に印加されかつ各段に存在するように、関連の場所で信号が互いに同位相であることを必要とする)。この電位差を一定に保つことによって(すなわち、ac電圧成分を最小化するかまたは排除することによって)、電極1007と1009との間の容量性電流の流れが、たとえば、典型的には1mA未満、好ましくは100μA未満の許容値に制限されるかまたは排除される。
【0106】
隣接するEPAの段の電極間の寄生的な電流の低減は、図11Aおよび図11Bに示される波形を参照して理解することができる。図11Aに見られるように、電極1007(図10B)に存在する電圧V1および電極1009に存在する電圧V2は同期されかつ同位相にされるが、必ずしもdc振幅は等しくない。完全な同期のため、電極1007および1009に存在する電圧間の差V1−V2はほぼ一定であり、信号間のdcオフセット値のみを表わす(すなわち、ac成分はない)。電極1007および電極1009の間を結合する容量を通って流れる電流Icは、このキャパシタンスの電圧の変化時間速度(dV/dt)に比例する。
【0107】
c=C*[d(V1−V2)/dt]
この関係から、任意のキャパシタンスの電圧が一定に保たれる場合(すなわち、ac成分を有さない)、経路には電流が流れないことが直接的にわかる。一方、小さな電圧の変化であっても、電圧の変化が素早い場合、大きな容量性電流の流れが作られ得る(すなわち、大きなd(V1−V2)/dt)。近隣のEFAの段の異なる電極から過度の電流が流れるのを防ぐため、これら近隣の段の電極に印加される電圧は同期されかつ同位相にされるべきである。たとえば、図11Bを参照すると、コロナ電圧V1およびV2はわずかに同期しておらず、差、d(V1−V2)/dtの小さなac電圧成分が生じている。この小さなac電圧成分は、隣接するEFAの段の間を流れる有意の寄生電流Icにつながる。この発明の実施例は、段の間に電流が流れるのを回避するためにすべての段に印加される電力の同期を含む。
【0108】
隣接するEFAの段の電極の最も近い間隔は次のように概算することができる。典型的なEFAは狭い電圧範囲で効率的に動作することに注意されたい。同じ段のコロナ放電電極と集電電極との間に印加される電圧Vcは、適切な動作のため、いわゆるコロナ開始電
圧Vonsetを超えなければならない。つまり、電圧VcがVonset未満のとき、コロナ放電
は起こらず、空気の運動は生成されない。同時に、Vcはアークを回避するために絶縁破
壊電圧Vbを超えてはならない。電極の幾何学的形状および他の条件に応じて、VbはVonsetの2倍より大きくてもよい。典型的な電極の構成では、Vb/Vonsetの比率は、約1
.4から1.8であり、任意の特定のコロナ放電電極が、「バックコロナ」を生成し得る近隣の集電電極からの距離に位置付けられないようにされる。したがって、近隣の段の最も近い電極間の規格化された距離aNnは、同じ段のコロナ放電電極と集電電極との間の正規化された距離「aNc」より少なくとも1.2倍大きくなくてはならず、好ましくは距離「aNc」の2倍以下であることが好ましい。つまり、近隣の段の電極は、電極間の電圧差が近隣の段の任意の電極間のコロナ開始電圧未満であるように間隔をあけなくてはならない。
【0109】
上述の条件が満たされない場合、必然的な結果として、近隣の段はそうでない場合よりも互いにより大きく間隔をあけられなければならない。段の間の間隔がそのように増加されると、いくつかの条件が空気の運動に悪影響を及ぼす。たとえば、近隣の段の間の間隔が増加するとダクトが長くなり、結果的に、空気の流れに対する抵抗が大きくなる。EF
Aの全体的なサイズおよび重量も増加する。同期されかつ同位相にされたHVPSを用いると、効率を低減することなく、またはスパークの生成を増加させることなくHFAの段の間の間隔を低減することを可能にすることにより、これら負の局面が回避される。
【0110】
図12を参照すると、2段のEFA1200は、それぞれの第1および第2の段1212および1213と関連するHVPS1201および1202の対を含む。両方の段は実質的に同一であり、同一のHVPS1201および1202によって電力を供給される。HVPS1201および1202は、それぞれのパルス幅変調(PWM)コントローラ1204および1205、電力トランジスタ1206および1207、高電圧インダクタ1208および1209(すなわち、フィルタリングチョーク)、ならびに倍電圧器1201および1202を含む。HVPS1220および1221は段1212および1213のそれぞれのEFAのコロナ放電電極に電力を供給する。前と同じく、段1212および1213のEFAの電極は、1つのコロナ放電電極および1つの加速(アトラクタ)電極の1つの対として概略的に示されるが、各段は典型的には二次元のアレイとして構成された複数の電極の対を含む。PWMコントローラ1204、1205は、それぞれの電力トランジスタ1206および1207のゲートに高周波数パルスを生成する(およびピン7で供給する)。これらパルスの周波数は、抵抗器1216およびキャパシタ1217ならびに抵抗器1218およびキャパシタ1219を含むそれぞれのRCタイミング回路によって決定される。通常、段の間のこれら構成要素の値のわずかな差は、2つのHVPSの段のわずかに異なる動作周波数につながる。しかしながら、周波数のわずかな変動でもEFA1200の段1212および1213の非同期の動作につながる。したがって、電源1201および1202の同期されかつ同位相にされた(すなわち、ゼロの位相の移動または差)の動作を保証するため、コントローラ1205は、抵抗器1215およびキャパシタ1214を含む同期入力回路を介してPWMコントローラ1204のピン1から同期信号パルスを受取るように接続される。この配置は、PWMコントローラ1205をPWMコントローラ1204に同期させて、両方のPWMコントローラの出力電圧パルスがともに同期され(同じ周波数)かつ同位相にされる(同じ位相)ようにする。
【0111】
図13Aおよび図13Bは2段のEFA装置の2つの異なる構成を示す断面図である。2つの段しか図示されないが、詳細な原理および構造は等しい。図13Aを参照すると、第1のEFA装置1311は、シリアルまたはタンデムな段1314および1315からなる。第1の段1314は、第1の垂直な列に整列した複数の平行なコロナ放電電極1301と、コロナ放電電極1301の列に平行な第2の列に整列した集電電極1302とを含む。すべての電極は、図面の頁の内外へ長手方向に延在する断面で示される。コロナ放電電極1301は、他の構成も可能であるが、図示のとおり導電性ワイヤの形態であり得る。集電電極1302は水平方向に細長い導電性バーとして示される。また、これは例示を目的としており、他の幾何学的形態および構成がこの発明のさまざまな実施例と合致して実現され得る。第2の段1315は、(同様に図面の頁に対して垂直に延在する細い導電性ワイヤとして示される)整列したコロナ放電電極1303と、(バーとして示される)集電電極1304との列を含む。すべての電極はエアダクト1305内に装着される。EFA1311の第1の段1314および第2の段1315は、それぞれ別個のHVPS(図示せず)によって電力が供給される。HVPSは同期されかつ同位相にされているので、第2の段1315のコロナ放電電極1303は、EPAの性能に悪影響を及ぼしたりその性能を下げたりすることなく、第1の段1314の集電電極1302に可能な限り近い規格化された距離に配置され得る。
【0112】
例示の目的で、隣り合う段1314および1315の電極に印加されるすべての電圧とその成分(たとえば、acおよびdc)とが等しいと仮定する。さらに、コロナ放電電極1301および1303に高い電圧が印加され、かつ、集電電極1302および1304が接地される、すなわち、コロナ放電電極1301および1303に印加される高い電圧
に対して共通の接地電位で維持されると仮定される。すべての電極は、互い違いに配置された列におけるそれ自体の段の相補的な電極と水平に整列しかつ垂直にオフセットされている別々の段の対応する電極と平行で垂直な列に配置される。コロナ放電電極1301と、垂直に隣接する最も近くの集電電極1302の前縁との間の規格化された距離1310はaN1に等しい。第2の段のコロナ電極1303と第1の段の集電電極1302の後縁との間の規格化された距離aN2(1313)は、aN1よりも大きないくらかの距離aN2であるはずであり、実際の距離はコロナ放電電極に印加される特定の電圧に依存する。いずれの場合も、aN2はaN1よりも大きくなくてはならず、すなわち、1〜2倍の距離aN1、より好ましくは1.1〜1.65倍のaN1、さらにより好ましくは約1.4倍のaN1の範囲内であるべきである。特に、図13Aに示されるように、距離aN2は、その間に電流の流れを作り出すコロナ開始電圧間の電圧を避けるのに必要とされる以上に大きくなくてはならない。この規格化された「スタント」距離aN2が1.4×aN1に等しいと仮定する。すると、隣り合う段の間における水平距離1312は、距離aN2(1313)未満である。図示のとおり、段内の間隔は、隣り合う段のうち同じ種類の電極が(図13Aに示される)1つの平面1320に位置する場合、最小限にされる。平面1314は、コロナ放電電極の縁を含む平面(図13Aにおける平面1317)と直交する平面として規定され得る。隣り合う段の同じ種類の電極が、異なっているが平行な平面、たとえば(図13Bに示される)平面1321および1322に位置する場合、隣接するEFAの段の電極間における結果的な最小限の間隔は、線1319で示されるaN2に等しい。線1319の長さが距離1313(aN2)と同じであり、かつ距離1312よりも長いので、段の間の間隔が大きくなることに留意されたい。
【0113】
こうして、この発明のこれらの特徴は、3つの条件のうちの1つ以上をさまざまに組合せて満たすアーキテクチャを組込む。
【0114】
1. 隣り合うEFAの段の電極は、実質的に同じ電圧波形で電力が供給される、すなわち、隣り合う電極上の電位は実質的に同じ交流成分を有するはずである。それらの交流成分は、大きさおよび位相がともに近いかまたは同一であるはずである。
【0115】
2. 隣り合うEFAの段は狭い間隔で配置され、隣り合う段の間の間隔は、当該隣り合う段の電極間におけるいかなるコロナ放電をも避けるかまたは最小限にするのに十分な距離に制限されかつ決定されている。
【0116】
3. 隣り合う段の同じ種類の電極は、電極(または電極の前縁)が位置する平面と直交する同じ平面に位置するべきである。
【0117】
図14は、ワイヤ状のコロナ電極1402(他の数が含まれてもよいが、この発明を例示する目的で3つの電極が示され、典型的な装置は、所望の性能をもたらすのに適切なアレイで数十または数百の電極を有する)と、加速電極1409(この発明の簡略化された例においては2つ)とを含むEFA装置1400の概略図である。加速電極1409の各々は、比較的高抵抗の部分1403と低抵抗の部分1408とを含む。高抵抗部分1403は、101〜109'Ω−cm、より好ましくは105〜108'Ω−cm、さらに好ましくは106〜107'Ω−cmの範囲内の特定の抵抗ρを有する。
【0118】
すべての電極は断面で示される。したがって、コロナ電極1402は細いワイヤの形または形状であるが、加速電極1409はバーまたはプレートの形状である。加速電極1409に最も近いコロナ電極1402の「下流」部分がイオン化端1410を形成する。コロナ電極1402と加速電極1409の低抵抗部分1408とは、ワイヤ導体1404および1405を介して高電圧電源(HVPS)1401の反対側の極性端子に接続される。低抵抗部分1408は特定の抵抗ρ≦104'Ω−cmを有し、好ましくは1'Ω−cm
を超えず、さらにより好ましくは0.1'Ω−cmを超えない特定の抵抗を有する。EF
A1400は、矢印1407で示される所望の流体の流れの方向に流体の流れを作り出す。
【0119】
HVPS1401は、電界が電極間に形成されるように電極1402と集電電極1409との間に予め定められた電圧を生成するよう構成される。この電界は、1406として概略的に示される点描の流線によって表わされる。当該電圧がいわゆる「コロナ開始電圧」を上回ると、コロナ放電活動がコロナ電極1402の近傍において開始され、これにより、コロナ電極1402からの対応するイオン放出プロセスがもたらされる。
【0120】
コロナ放電プロセスにより、流体イオンがコロナ電極1402から放出され、電界線1406に沿いかつこれに追従して加速電極1409の方に加速される。コロナ電流は、自由イオンおよび他の荷電微粒子の形であり、加速電極1409の最も近い端部に届く。次いで、コロナ電流が、周囲の流体のいくらか高抵抗の経路とは対照的に、電気抵抗が最も低い経路に沿って電極を通って流れる。加速電極1409の高抵抗部分1403が周囲のイオン化流体よりも低い抵抗を有するので、コロナ電流のかなりの部分が加速電極1409の本体を通り、すなわち高抵抗部分1403を通り低抵抗部分1408へ、さらに接続ワイヤ1405を介して完結されるHVPS1401への戻り経路へと流れる。電流が(空気流1407の主要な方向に対して平行な)高抵抗部分1403の幅(図14を参照)に沿って流れると、電流経路に沿って電圧降下Vdが引起される。この電圧降下は、(差し当たり、低抵抗部分1408と接続ワイヤとの抵抗を無視するとして)コロナ電流Ic掛ける高抵抗部分1403の抵抗Rに比例している。次いで、コロナワイヤ102と加速電極1409の最も近いそれぞれの端部との間に印加された実際の電圧Vaは、抵抗によって誘導された電圧降下のために、HVPS1401の出力電圧Vout未満である。すなわち、
a=Vout−Vd=Vout−Ic*R(1)
コロナ電流がコロナ電極1402と加速電極1409の端部との間の電圧Vaに非線形に比例しており、すなわち電流が電圧よりも速く増大することに留意されたい。電圧と電流との関係は経験式によって概算され得る。
【0121】
c=k1*(Va−V01.5,(2)
この場合、V0=コロナ開始電圧、k1=経験的に決定された係数、である。この非線形の関係は所望のフィードバックを与え、これが、事実上、電極にわたって現われる結果的な電圧Vaの値を自動的に制御し、コロナ放電の外乱および不規則さを防ぐか、最小限に
するか、軽減するかまたは緩和する。コロナ放電プロセスが、温度、汚染、湿気、異物などの変わりやすい複数の環境因子に依存する本質的に「不規則な」(すなわち「予測できない」)コロナ電流値であると考えられることに留意されたい。何らかの理由で、電極間の空間の1つの位置におけるコロナ電流がどこか他の位置におけるよりも大きくなる場合、対応する高抵抗部分1403に沿った電圧降下Vdがより大きくなり、したがって、こ
の位置における実際の電圧Vaがより低くなるだろう。これにより、この位置におけるコ
ロナ電流が制限され、スパークまたはアークの発生が防止されるかまたは最小限にされる。
【0122】
以下の例は、この発明の一実施例において用いられるかもしれない典型的な成分値を用いて例示の目的で示される。図14に概略的に示されるEFA1400の一実施例においては、コロナ開始電圧は、コロナ電極1402の近傍において最小限の30kV/cmの電界強度を達成するために8.6kVに等しくなると想定される。この値は計算、測定またはそれ以外の方法で決定されてもよく、コロナ/加速電極の10mmの間隔とコロナ電極の0.1mmの直径とに対するコロナ開始値に特有のものである。加速電極1409の高抵抗部分103の全抵抗Rtotalは0.5MΩに等しく、空気流方向1407に沿った
高抵抗部分1403の幅(図14を参照)は1インチに等しい。空気流の方向に対して横方向の(すなわち、図面の平面の方への)加速電極1409の長さは24インチに等しい。したがって、加速電極1409の1インチごとに抵抗Rinchがある。
【0123】
inch=Rtotal*24=12M'Ω
この特定の設計に対する経験的係数は、22*10-6に等しい。12.5kVに等しい
印加された電圧Vaでは、コロナ電流Icは以下に等しい。
【0124】
c=4.6×10-9*(12,500V−8,600V)1.5=1.12mA.
しかしながら、半導体部分103の各インチを通って流れるコロナ電流Ic/inchは以下に等しい。
【0125】
1.12mA/24インチ=47μA/インチ.
したがって、この半導体部分103の1インチの長さにわたる電圧降下Vdは以下に等
しい。
【0126】
d=47*10-6*12*106Ω=564V.
HVPS1401からのVoutは電極に印加された電圧Vaの合計に等しく、加速電極1409の半導体部分1403にわたる電圧降下Vdは以下のとおりである。
【0127】
out=12,500+564=13,064V.
何らかの理由で、ある局所区域におけるコロナ電流が、ある地点において94μAに等しくなるように、たとえば十分に分配された47μA/インチの値の2倍に増大する場合、結果的な電圧降下Vdはこの変化を反映し、1,128Vに等しくなるだろう(すなわ
ち、Vd=94×10-6μA*12×106Ω)。すると、Va=Vout−Vd=13,06
4−1,128=11,936Vとなる。こうして、電圧降下Vdの増大により、局所区
域における実際の電圧レベルが減衰され、この区域におけるコロナ電流が制限される。式(2)に従うと、この1インチの長さを通るコロナ電流Icは、1.12mAとは対照的
に、4.6*10-9(11,936−8,600V)1.5/24インチと表わすことができる。この「負のフィードバック」効果は、これにより、何らかの局所的な不規則さがある場合でも通常のEFA動作を復元するよう動作する。たとえば、電極間の空間内に入ってくる異物(たとえば、塵など)によって短絡が発生した極端な状況においては、回路を通る最大電流は、当該異物が電極に接触する局所区域の抵抗によって実際上制限される。
【0128】
2つの電極を共に短絡させる、すなわち、コロナ電極1402と加速電極1409との間における(介在する流体の電気抵抗に比べて)比較的抵抗の低い電気経路をもたらす指またはねじ回しのような異物について考察する。電流が高抵抗部分1403の幅、すなわち1インチにほぼ等しい幅を有する区域を通って流れると当然仮定され得る。したがって、異物が最大の電流の流れImaxをもたらし得るが、Imaxは、
max=Vout/Rtotal=13,064V/12*106Ω=1.2mA
に等しく、これは、通常の動作電流1.12mAよりもわずかに大きい。このような電流のわずかな増加では感電の危険はないはずであり、またはいかなる不快音(たとえば、アークおよびポップノイズ)も生じないはずである。同時に、EFA全体の最大動作電流が、以下のとおりに、強い流体の流れ、たとえば少なくとも100ft3/minをもた
らすのに十分な値に制限される。
【0129】
max=13,064V/0.5MΩ=26mA
加速電極が比較的低い抵抗(たとえば、ρ≦104'Ω−cm、好ましくはρ≦1'Ω−
cm、より好ましくはρ≦10-1'Ω−cm)を有する金属または別の材料でできている
場合、短絡電流はHVPS1401の最大電力(すなわち最大電流容量)により、および
/または、その出力フィルタ(たとえば、フィルタキャパシタ)に蓄積されたいかなるエネルギによっても制限されることとなり、これにより、ユーザに著しい感電の危険をもたらし、スパークによって生じる不快な「パチッ」という音または「ポップ」音を引起し、および/または、電磁気の障害(たとえば、無線周波妨害またはrfi)を発生させることとなる。概して、問題のない動作を提供するために高抵抗部分103の特定の抵抗特性および幾何学的構成(長さ対幅の比率)が選択されるが、EFAの動作には電流の制限を課さない。これは、(i)加速電極の全長(主要な流体の流れの方向に対して横方向のサイズ)と、(ii)加速電極の幅(流体の流れの方向に沿ったサイズ)との間の(好ましくは少なくとも10である場合の)比較的大きな比率を提供することによって達成される。一般に、電極の長さはその電極の幅よりも大きいはずである。最適な結果は、電極の位置および構成に依存して、複数の加速電極、好ましくは、コロナ電極の数のプラスマイナス1個以内の数に等しいいくつかの加速電極を設けることによって達成され得る。図14は例示の目的で2つの加速電極と3つのコロナ電極とを示すが、他の電極構成が4つの加速電極のうち同じ3つのコロナ電極に面する3つの加速電極を含むか、または他の数および構成の代替的な電極構成を含むだろうことに留意されたい。
【0130】
局所的な過剰な電流が高抵抗材料の劣化に繋がるおそれがあることも考慮に入れるべきである。これは、異物がいくらか長期間(たとえば、除去される前に数ミリ秒以上)にわたって電極間にひっかかる場合に特に当てはまる。過電流の状態による電極の損傷および関連する故障を防ぐために、HVPSは、このような過電流の事象を検出し、かつ速やかに発電を中断するかまたは電流の流れを妨げることのできる電流センサまたは他の装置を備えていてもよい。予め定められたリセットまたは休止期間Toffの後、残りまたは残余
の短絡状態のいずれをも検出するのに十分な最小限の予め定められたいくらかの期間Tonにわたって発電が回復され得る。この短絡状態が続く場合、HVPSは、少なくとも期間Toffにわたって遮断されるか、またはそうでない場合不能化される可能性がある。こう
して、過電流の問題が続く場合、EFAの安全な動作と電極の長い寿命とを確保するために、HVPS1401は、Tonよりも実質的に長い(たとえば10倍以上長い)Toff
有する何回かのサイクルにわたってこのオン・オフサイクルの動作を続け得る。ある場合においては、このサイクルは、手作業で介入する必要なしに、或る短絡した状態を除く効果を有することに留意されたい。
【0131】
図15は、高抵抗部分を有する加速電極を備えたEFAの別の実施例を示す。図14に示されるEFA1400とEFA1500との間の主な相違は、後者においては、低抵抗部分1508が加速電極1509の高抵抗部分1503内に完全に収容される(すなわち、周囲の高抵抗材料によって完全に封入される)ことである。この変更により、この発明のこの実施例に少なくとも2つの利点が与えられる。第一に、高抵抗部分1503内に低抵抗部分1508を完全に封入すると、HVPS1501の高電圧の「ホットな」端子に不用意にまたは偶発的に直接接触するのを妨げることによってEFAの安全が高められる。第二に、この構成により、コロナ電流が、表面領域だけでなく、高抵抗部分1503のより多くの部分または体積を通じて流れるようにされる。大抵の高抵抗材料(たとえばプラスチックまたはゴム)に対する表面導電性は、体積(すなわち内部の)導電性と同じオーダであるが、累進的な表面の汚染および劣化のために劇的に異なる(たとえば、時間とともに数桁のオーダで増加しつつ変化する)可能性がある。
【0132】
EFAは、加速電極の表面における流体に存在する粒子を集める固有の能力を有する。いくらかの量または分量の粒子が集められるかまたは加速電極上に蓄積する場合、当該粒子は汚染物質の連続した固体層、たとえば連続した膜で電極の表面を覆う可能性がある。この汚染物質の層の導電性は、高抵抗材料自体の導電性よりも高い可能性がある。このような場合、コロナ電流はこの汚染物質層を通って流れ、高抵抗材料が与える利点を損なうおそれがある。図15のEFA1500は、高抵抗部分1503内に低抵抗部分1508
を完全に封入することによってこの問題を回避する。低抵抗部分1508が、HVPS1501の供給端子またはHVPS1501から電力を供給する導電性ワイヤ1505と連続しているかまたはそれに直接接触するいずれかの点を有する必要がないことに留意されたい。これらの導電性部分の主な機能は、加速電極1509の長さに沿って電位の平衡を保つこと、すなわち低抵抗部分1508と接触する高抵抗部分1503がいくらかの等電位で維持されるように電流を分配することであることが理解されるべきである。加えて、(イオン化端1510を含む)コロナ電極1502が接地される場合、高い動作電圧によって負傷および/または感電死を招くおそれのある危険な電流レベルに不注意にまたは偶発的にさらされる機会が実質的に減じられるかまたはなくなるが、これは、構造全体にわたって接触する「ホットな」電位が存在しないからである。
【0133】
図16は、(好ましくはイオン化端1610を有する長手方向に向けられたワイヤとして形成される)コロナ電極1602と加速電極1603とを備えたEFAアセンブリ1600の概略図であり、当該加速電極1603は水平に積み重ねられた複数の高抵抗バーを含み、その各々が加速電極の幅に沿って低減する異なる抵抗値を有している。加速電極1603はいくつかのセグメント1608〜1612でできており、各々が、隣接する隣りのセグメントに直に接触している。これらのセグメントの各々は、異なる特定の抵抗値ρnを有する材料でできているかまたはそのように設計されている。特定の抵抗がHVPS
1601端子接続の方に漸進的に(すなわち、セグメント1608〜1609、1611および1612から逓減して)減少する場合、結果的な電界が流体の流れの主要な方向に対する直線性の点でより均一であることが決定されている。図14および図16においては、コロナ電極1402/1502と加速電極1403/1503との間に示される電界線が流体の流れの主要な方向に対して完全に平行ではなく湾曲していることに留意されたい。この湾曲により、イオンおよび他の荷電粒子が方向の範囲にわたって加速され、これによりEFAの効率を低下させる。一連の加速電極抵抗値を有することにより、特にコロナ電流が或る最大値に達するとイオンの軌道が流体の流れの主要な方向と整列することが分かった。加速電極1603が、例示の目的でそれぞれの抵抗値ρnを持ついくつかの別
個のセグメントを含むよう示されるが、抵抗値が電極の幅にわたって絶えず異なるようにされ得ることにも留意されたい。当該幅にわたる漸進的な抵抗の変動は、たとえば、漸進的な抵抗の増加または低減を達成するために適切に変化する濃度レベルで好適な不純物質をイオン注入することを含むいくつかのプロセスによって達成され得る。
【0134】
図17Aおよび図17Bは、加速電極1703が高抵抗材料で作られているEFA1700のさらに別の実施例の概略図である。例示の目的で、図17Aおよび図17Bは、特定の数のコロナ電極1702および加速電極1703をそれぞれ示すが、他の数および構成がこの発明のさまざまな実施例に合致して用いられてもよい。
【0135】
加速電極1703は、1つ以上の高抵抗材料の薄い細片または層でできている。コロナ電極1702は金属または導電性セラミックなどの低抵抗材料でできている。HVPS1701は導電性ワイヤ1704および1705によってコロナ電極1702および加速電極1703に接続される。コロナ電極1702の幾何学的構成は、電極が維持および据付が本質的により難しい針または細いワイヤとして形成され、かつEFAの通常の動作の途中で損傷を受けやすい幾何学的構成とは異なる。各コロナ電極1702の下流の縁はイオン化端1710を含む。他の小さな物体と同様に、典型的にはコロナ電極に用いられる細いワイヤは脆いので信頼性がない。代わりに、図17Aおよび図17Bに示されるこの発明の実施例は、比較的幅の広い金属製の細片の形をしたコロナ電極を備える。これらの金属の細片は、その「下巻の」縁に沿ってコロナ放電を容易に発生させるように必然的にコロナ放電端部が薄いが、当該細片は(空気流の向きに沿った方向に)比較的広く、これにより、それに対応して細いワイヤほど脆弱ではない。
【0136】
図17Aに示されるEFA1700の別の利点は、先のシステムにおいて用いられるよりも実質的に薄い加速電極1703を含む。すなわち、先の加速電極は、加速電極の縁の周辺および周囲に電界を発生させないようにするために、典型的には関連するコロナ電極よりもはるかに厚い。図17Aに示される構成は、加速電極1703の平坦な面とは逆または反対側のコロナ電極1702の縁(この発明の図ではコロナ電極の右側の「下巻の」縁)の配置により、加速電極1703による電界の発生を最小限にするかまたはなくす。すなわち、コロナ電極1702の本体のうち少なくとも一部分が加速電極1703の前縁を通り過ぎる所望の流体の流れの方向へ下巻の方に延在し、これにより、コロナ電極1702のその後縁に沿った動作部分が、加速電極1703の延在した平坦面の間かつそれらのすぐ近くにコロナ放電を発生させる。この方向付けおよび構成により、コロナ電極1702の後縁の周囲に形成される対応する電界強度よりも実質的に低い電界強度がこのような平坦面の近傍において与えられる。こうして、コロナ放電は、加速電極1703の表面ではなく、コロナ電極1702の後縁の近傍に生成される。
【0137】
コロナ放電の開始直後に、コロナ電流が、流体内のイオンおよび荷電粒子の生成と、導電性ワイヤ1705を介する加速電極1703の本体に沿ったHVPS1701へのこのような電荷の移動とにより、コロナ電極1702と加速電極1703との間に位置する加速すべき流体(たとえば空気、絶縁液体など)を通って流れる。反対方向には(すなわち、加速電極1703から流体を通りコロナ電極1702へと)電流が流れないので、バックコロナは生成されない。この構成により、(矢印1707で示される)所望の流体の流れの方向に対し、別の構成で与えられ得るよりも実質的に直線的な(線1706で表される)電界がもたらされることがさらに分かった。流体の流れの主要な方向に対して横方向の電界の等電位線を生成する加速電極1703にわたる電圧降下により、電界の直線性が一層高められる。電界線がこのような等電位線と直交しているので、当該電界線は主要な流体の流れの方向に対しより平行となる。
【0138】
図17Aに示されるEFA1700の別の利点は、加速電極1703の介在する構造によりコロナ電極1702の活性部分(すなわち、図に示される右縁)を互いから隔離することによって提供される。こうして、コロナ電極は互いを「見ることなく」、したがって、先のシステムとは異なり、コロナ電極1702は互いに極めて近接して(すなわち、図17Aに示されるように垂直方向に)位置決めされ得る。図17Aに関連して説明される設計の特徴を用いることにより、実質的でより大きな流体の流れを実現するのを阻む2つの主要な障害が回避される。これらの障害のうち第1の障害は、典型的な加速電極の比較的前面が厚い部分によってもたらされる高い空気抵抗である。この発明の構成により、抗力が低い幾何学的構成を有する、すなわち空気力学的に「好適な」形状に形成されるコロナ電極および加速電極がともに提供される。たとえば、これらの幾何学的構成がもたらす大気に対する抗力Cdの係数は、1を超えず、好ましくは0.1未満、より好ましくは0.01未満である。実際の幾何学的構成または形状は所望の流体の流れと加速すべき流体の粘性とに必然的に依存しており、これらの因子は設計間で異なっている。
【0139】
この発明のこの実施例によって克服される第2の障害は、先の構成に従って必要とされかつ先の構成によって認められる従来の電極間の間隔の要件のために起こり得る結果的に低密度な電極である。たとえば、引用によりこの明細書中に全体が援用される米国特許第4,812,711号は、互いから50mmの距離の間隔を空けて配置された4つのコロナ電極を示す。当然のことながら、この比較的低密度で少数の電極では、結果として得られる低レベルの流体の流れでもって極めて低電力のレベルにしか対処し得ない。対照的に、この発明の実施例は、コロナとアトラクタとの間の10mm未満、好ましくは1mm未満の間隔に対処する。
【0140】
電極のさらに別の構成が図17BのEFA1700に関連して示される。この場合、コ
ロナ電極1702は、矢印1707で示される所望の流体の流れの方向に加速電極1703から予め定められた距離をあけて配置される。また、結果的な電界は、コロナ電極1702から出て加速電極1703に向けられる破線で示されるように実質的に直線的である。しかしながら、所望の流体の流れの方向に対して、コロナ電極1702が加速電極1703の「中間」には配置されないことに留意されたい。
【0141】
図17Aに示されるこの発明のさまざまな実施例の目的は、他の場合に可能であるかまたは他のEFA装置によって実現される以外の現在の製造技術と合致した間隔のより狭いコロナ電極(すなわち、より高密度の電極)を実現することに向けられる。すなわち、極端に薄く短い電極は、たとえば現在の微小電気機械システム(MEMS)と関連する半導体技術および能力と合致する単一の製造プロセスまたはステップによって容易に製造可能である。図17Aを再び参照すると、隣接するコロナ電極1702が互いから1mm未満またはさらにはわずか数μm未満の距離だけ間隔をあけて垂直に配置され得ることが分かるだろう。結果として電極密度が増加することにより、流体加速および流量が向上する。たとえば、米国特許第4,812,711号は、毎秒(m/sec)0.5メートルの気流速度しか発生させることのできない装置を説明する。そうではなく、電極が1mmの間隔をあけて配置される場合、電極密度の50倍の増加と電力能力の向上とが実現されて、気流速度がこれに対応して、すなわち約25m/secまたは5,000ft/minにまで高められ得る。さらに、いくつかのEFAの段は、所望の流体の流れの水平な方向に連続して、またはタンデムに配置されてもよく、各段はさらに、それが連続した段を通過すると流体を加速させる。当該段の各々は直接隣接した段から予め定められた距離に配置され、この距離は、各段の対向する電極に印加される最大電圧によって決定される。特に、ある段のコロナ放電電極および加速電極がともにより近接して配置される場合、コロナ放電を開始しかつ維持するのに必要な電圧がより少なくて済む。したがって、EFAの全段は同様に、各段内で用いられるよりも低い動作電圧を考慮して、互いにより近接して配置され得る。この関係により、段内の(たとえば垂直方向の)電極密度にほぼ比例した水平方向の段密度が得られる。こうして、流体の流れの加速が電極間の距離の2乗に反比例するように、電極の「垂直」密度の増加が類似の「水平」密度をもたらすことが予想され得る。
【0142】
この発明のさまざまな実施例によって実現される利点は、加速電極の一部分として高抵抗材料を用いることに少なくとも部分的に起因する。高抵抗材料は、比較的高抵抗の材料、たとえば、炭素入りのプラスチックまたはゴム、ケイ素、ゲルマニウム、錫、砒化ガリウム、リン化インジウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、セレン化カドミウムなどを含み得る。これらの材料は、101〜1010'Ω−cm、より好ましくは104〜109'Ω−cm、
より好ましくは106〜107'Ω−cmの範囲の特定の抵抗ρを有するはずである。高抵
抗材料を用いることにより高い電極密度が支持される。たとえば、近接して配置された金属の加速電極は、高い頻度でスパーク事象を発生させる不安定な動作特性を示す。対照的に、この発明の実施例に従った高抵抗電極は、より直線的な電界を生成し、これにより、スパークの発生と、加速電極の鋭い縁から出てくるバックコロナの生成とを最小限にする。バックコロナの除去については図17Aを参照すると理解され得る。
【0143】
さらに図17Aを参照すると、コロナ放電事象が、コロナ電極1702の後縁または右縁においてまたはそれに沿って発生するが、加速電極1703の前縁または左縁に沿って発生しないことが示され得る。これは、コロナ放電プロセスによって発生する電圧および電界分布のためである。たとえば、加速電極1703の左縁は、薄いかまたは鋭利にされているコロナ電極1702の右縁よりも少なくともいくらか厚い。電極付近の電界が電極の厚さにほぼ比例しているので、コロナ放電はコロナ電極1702の前縁で始まる。次いで、結果的なコロナ電流が、コロナ電極1702の後縁からHVPS1701の高電圧端子へと2つの経路を通って流れる。第1の経路は、線1706で示される電界に沿った流
体のイオン化された部分を通る。第2の経路は加速電極1703の本体を通る。加速電極1703の本体を通って流れるコロナ電流は、結果として、この本体に沿って電圧降下をもたらす。この電圧降下は、加速電極1703の右縁に印加されるように高電圧端子から当該電極の左縁の方に進む。コロナ電流が増大すると、対応する増加がこの電圧降下に示される。HVPS1701の出力電圧が、加速電極1703の左縁に沿ってコロナ放電を始めるのに十分なレベルに達すると、これらの縁における電圧降下は、いかなる電圧の上昇をも減衰させ加速電極の縁に沿ったコロナ放電を妨げるのに十分に高い。
【0144】
この発明の他の実施例は、電極間の間隔をたとえば数ミクロンのオーダに減じ得る。このような間隔では、コロナ放電状態は比較的低い電圧で開始され得るが、そのコロナ放電は、電圧自体ではなく、電圧によって発生する高強度の電界によって引起こされる。この電界強度は、印加される電圧にほぼ比例し、対向する電極間の距離に反比例している。たとえば、約8kVの電圧は、約1cmの電極間の間隔でコロナ放電を開始するのに十分である。電極間の間隔を10分の1の1mmに減ずることにより、コロナ放電を開始するのに必要な電圧が約800ボルトにまで減じられる。電極間の間隔を0.1mmにさらに減ずると所要のコロナ開始電圧が80Vに減じられ、10ミクロンの間隔ではコロナ放電を開始するのに8ボルトしか必要とされない。これらのより低い電圧によって電極間の間隔と各段の間の間隔とがより狭くなり、これにより、全体的な流体の加速が数倍に増す。先に述べたように、この増大は電極間の距離の2乗にほぼ反比例しており、結果として、1cmの間隔と比べて、空気流の全体的な増加がそれぞれ100,10,000および1,000,000となる。
【0145】
高抵抗電極構造を用いる利点のさらなる説明が図18Aおよび図18Bに関連して述べられる。図18Aを参照すると、EFA1800はコロナ電極1802と加速電極1803とを含む。加速電極1803は、低抵抗部分1804と高抵抗部分1806とを含む。コロナ電流は、矢印1805で示される電流の経路を介しコロナ電極1802と加速電極1803との間に存在するイオン化流体を通って(すなわち電極間の空間を通って)流れるが、その経路は、矢印で示されるように加速電極1803の高抵抗部分1806を通じて続いている。局所的な外乱、たとえばスパーク事象が発生すると、結果的な放電電流が、図18Bの矢印1807で示される狭い経路を通るよう導かれる。次いで、当該電流が、高抵抗部分1806にわたってより幅広の経路1808に沿って進む。増加した電流の流れが加速電極1803の小さな領域から出て、経路1808にわたって次第に外方向に広がるだけであるので、経路1808にわたる結果的な抵抗は、このような電流が高抵抗部分1806の全体にわたって分配される場合よりも実質的に高くなる。したがって、増加した電流の流れによって知らされるスパークまたはスパーク前の事象が経路1808に沿った抵抗によって制限され、これにより電流が制限される。高抵抗部分1806が特定の抵抗と幅対長さの比率とを有するよう選択される場合、いかなる著しい電流増加も回避または軽減され得る。このような電流増加は、上述の放電もしくはスパーク、電極上もしくは電極間の異物(たとえば塵、虫など)の存在、ねじ回し、または電極間に据えられ電極に接触する指さえも含むいくつかの事象によって引起こされる可能性がある。
【0146】
この発明の別の実施例が図19に示される。図示のとおり、EFA1900は加速電極1903の櫛状の高抵抗部分1906を含む。スパークなどのいかなる局所的な事象も、吸引電極1903のごく一部分にわたって、たとえば事象付近の単一または少数の歯にわたって流れるよう明確に制限される。通常の動作状態に関連付けられるコロナ電流は矢印1905で示される。たとえば、矢印1907および1908で示されるスパークなどの事象は、指または歯1906に沿って流れるよう制限される。この経路にわたる抵抗は、事象によってもたらされる電流のいかなる増加をも抑えるのに十分に高い。幅対長さの比率を選択するのではなく、歯の数を増すことで性能が高められることに留意されたい。典型的な1対0.1の幅対長さの比率が適切であり得るが、0.05対1以下の比率がより
好ましいだろう。
【0147】
記載されたように、この発明のさまざまな特徴により、コロナ放電またはイオンの放出を発生させるために固体以外の材料を用いることが可能となる。概して、固体材料は単に「しぶしぶ」イオンの生成を諦め、これにより流体のEFA加速を制限する。同時に、水などの多くの流体は、コロナ放電を引起すよう位置決めされかつ形作られる場合、より多くのイオンを放出し得る。たとえば、コロナ放出材料として導電性流体を用いることが米国特許第3,751,715号に記載される。その中においては、涙滴の形をした容器が、導電性流体を入れるためのくぼみとして記載される。導電性流体は、たとえば水道水であってもよく、またはより好ましくは、NaCl、HNO3、NaOHなどの強電解質を含む水溶液であってもよい。図20は、EFA2000が5つの加速電極2003と4つのコロナ電極2002とを含むこの発明の実施例に従ったEFAの動作を示す。これらの電極はすべて断面で示される。コロナ電極は各々、狭く細長い非導電性シェル2009から成り、当該非導電性シェル2009はプラスチックまたはシリコンなどの絶縁材料で作られ、シェルの後縁または右側におけるイオン化端2010においてスロット2011が形成されている。コロナ電極2002のシェル2009は、適切な供給管を介して導電性の流体供給部または貯蔵器(図示せず)に接続される。コロナ電極2002の後縁に形成されるスロット2011は、流体が流体分子の張力によってシェル2009内に収容されるように十分に狭い。スロット2011は、スロットを通して導電性流体をゆっくりと一定に放出するために、スポンジ状の「障害」またはノズル部分を備えていてもよい。HVPS2001は、導電性流体2008が先の鋭い導体として作用し、かつスロット2011におけるコロナ電極2002の後縁からイオンを放出するように、コロナ放電を発生させるのに十分な電圧を生成する。導電性流体2008の結果的なイオンは、線2006で表される電界に沿ってスロット2011から加速高抵抗電極2003の方に移動する。流体がコロナ放電の発生に消費されると、当該流体は、適切な流体供給部または貯蔵器(図示せず)からシェル2009を介して補充される。
【0148】
この明細書中に言及されるすべての公報、特許および特許出願がこの発明が関係する当業者のレベルを示すことが留意されかつ理解されるべきである。すべての公報、特許および特許出願は、個々の公報、特許または特許出願の各々が全体として引用により具体的かつ個別に援用されるよう示されたのと同程度に、引用によりこの明細書中に援用される。
【符号の説明】
【0149】
100 高電圧電源、101 DC電圧源、104,113 電力トランジスタ、105,114 キャパシタ、106 高電圧昇圧変圧器、107 一次巻線、108 二次巻線、109 電圧整流器、110 抵抗器、111 ゲート信号コントローラ、113
トランジスタ、115 トランジスタ、116 キャパシタ、119 高電圧キャパシタ、120 端子、121 抵抗器、122 ツェナーダイオード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパーク管理装置であって、
電力を負荷装置に供給するよう動作可能な高電圧電源と、
前記負荷装置における1つ以上の電磁パラメータを監視するよう動作可能なセンサと、
前記負荷におけるスパーク前の状態を識別するために前記1つ以上の電磁パラメータに応答する第1の検出器と、
前記高電圧電源が、前記スパーク前の状態に応答して前記電力の大きさを所望のレベルに速やかに変えることを可能にするよう前記第1の検出器に接続された第2の検出器とを含む、スパーク管理装置。
【請求項2】
前記高電圧電源は、一次電源を高電圧電力供給に変圧して前記電流を供給するよう構成される高電圧電源を含む、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項3】
前記高電圧電源は、昇圧多重巻線磁気力装置と、前記昇圧多重巻線磁気力装置の一次巻線に接続される出力を有する代替的な電圧発生器を含む高電圧電源と、高電圧レベルで前記電流を供給するために前記昇圧多重巻線磁気力装置の二次巻線に接続される整流回路とを含む、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項4】
前記高電圧電源は、低レベルの蓄えられた電磁エネルギを備えた出力回路を有する高電圧電源を含む、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項5】
前記高電圧電源は、前記少なくとも1つの電磁パラメータの電流を監視するよう動作可能であり、かつ、スパーク前の状態の検出に応答して、スパーク発生を妨げるレベルにまで前記電流の電圧を下げる制御回路を含む、請求項4に記載のスパーク管理装置。
【請求項6】
前記高電圧電源は、前記電磁パラメータを監視するよう動作可能であり、かつ、スパーク前の状態の検出に応答して、スパークの発生に繋がらないレベルにまで前記電力の電圧を下げる制御回路を含む、請求項4に記載のスパーク管理装置。
【請求項7】
前記スパーク前の状態の前記識別に応答して前記電力の実質的な部分を選択的に受取るための、前記高電圧電源に接続される負荷回路をさらに含む、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項8】
前記負荷回路は電気エネルギを消散するための電気装置を含む、請求項7に記載のスパーク管理装置。
【請求項9】
前記負荷回路は電気エネルギを蓄えるための電気装置を含む、請求項7に記載のスパーク管理装置。
【請求項10】
前記負荷装置は、前記電力を受取ってコロナ放電を引起こすよう構成された複数の電極を含むコロナ放電装置を含む、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項11】
前記コロナ放電装置は静電空気処理装置を含む、請求項10に記載のスパーク管理装置。
【請求項12】
前記静電空気処理装置は、静電空気加速装置、静電空気清浄器および静電集塵器からなる群から選択される装置を含む、請求項11に記載のスパーク管理装置。
【請求項13】
前記第1の検出器は、前記負荷装置に加えて補助装置に選択的に電力を供給するための
回路を含み、これにより、前記電力のうち少なくとも一部分が、前記スパーク前の状態の前記識別に応答して前記負荷装置から前記補助装置に向けられる、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項14】
前記負荷装置および前記補助装置はともに、コロナ放電構成によって作り出される静電力の影響下で流体を加速するよう構成されたそれぞれの静電空気処理装置を含む、請求項13に記載のスパーク管理装置。
【請求項15】
前記センサは、前記スパーク前の状態を識別するための電流の変化、電圧の変化、磁気の変化、電気事象の発生、および光学事象の発生を含む組から選択される現象に対して感度の良い、請求項1に記載のスパーク管理装置。
【請求項16】
スパーク管理の方法であって、
高電圧電力を装置に供給するステップと、
前記高電圧電力が前記装置のスパーク前の状態を検出するよう電磁パラメータを監視するステップと、
前記スパーク前の状態に応答して前記高電圧電力を制御して、前記スパーク前の状態に関連付けられるスパーク事象の発生を制御するステップとを含む、方法。
【請求項17】
高電圧電力を供給する前記ステップは、
電力の源を、一次電圧レベルから前記一次電圧レベルよりも高い二次電圧レベルに変圧するステップと、
前記電力を前記二次電圧レベルで整流して、前記高電圧電力を前記装置に供給するステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記監視するステップは、前記高電圧電流における電流スパイクを検知するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記監視するステップは、前記高電圧電力の出力電圧パラメータを検知するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記制御するステップは、前記高電圧電力の電圧レベルを、スパーク発生を妨げるレベルにまで下げるステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記制御するステップは、前記高電圧電力の少なくとも一部分を補助負荷装置に経由させるステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記高電圧電力の少なくとも一部分を前記補助負荷装置に経由させる前記ステップは、前記高電圧電力を供給する高電圧電源の出力回路に付加的な負荷を接続するステップを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
コロナ放電電極に流体を導入するステップと、
前記高電圧電力で前記コロナ放電電極に通電するステップと、
前記流体にコロナ放電を発生させるステップと、
前記コロナ放電の影響下で前記流体を加速するステップとをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
静電流体加速器であって、
コロナ放電電極およびコレクタ電極のアレイと、
高電圧電力を前記コロナ放電電極に供給するための、前記アレイに電気的に接続された
高電圧電源と、
前記高電圧電力の電磁パラメータを監視するよう構成されたセンサと、
前記負荷装置に供給される前記電力を制御するために前記スパーク前の状態の識別に応答する第1の検出器と、
前記第1の検出器に接続された第2の検出器とを含み、前記第2の検出器は、前記スパーク前の状態に応答して前記高電圧電力の電力の大きさを所望のレベルに速やかに変えるよう前記高電圧電源を制御するよう動作可能である、静電流体加速器。
【請求項25】
前記第1の検出器は、前記スパーク前の状態に応答して前記高電圧電源による前記コロナ放電電極への前記高電圧電力の供給を妨げるよう構成される、請求項24に記載の静電流体加速器。
【請求項26】
前記第1の検出器は、前記スパーク前の状態の前記識別に応答して前記高電圧電力の少なくとも一部分を受取るよう構成されたダンプ抵抗器を含む、請求項24に記載の静電流体加速器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−134158(P2012−134158A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−9243(P2012−9243)
【出願日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【分割の表示】特願2009−188629(P2009−188629)の分割
【原出願日】平成15年6月23日(2003.6.23)
【出願人】(504142411)テッセラ,インコーポレイテッド (33)
【Fターム(参考)】