説明

流体の流れ計測装置

【課題】環境変化に伴って、受信波形が変化しても、高い計測分解能を維持する流体の流れ計測装置を提供することを目的とする。
【解決手段】送信手段6から出力される交流信号によって第1振動子2から超音波信号が送信され、第2振動子3で受信された後、波形検出手段8によってその受信波のゼロクロス点が予め定められた数だけ検出される。計時手段9は、基準クロックに基づいて送信開始から各ゼロクロス点までの経過時間を計測しているが、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係が異なるように周波数設定手段13が、基準クロック周波数を設定しているので、環境変化などによって受信波形が変化した場合であっても、位相関係を適切に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波信号の伝搬時間を計測することにより流速を検出し、流体の流量を計測する流量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体の流れ計測装置においては、例えば、特許文献1に示すようなものが提案されている。
【0003】
図7において、流体管路31の一部に超音波振動子32と振動子33とを流れの方向に相対して設け、スタート回路34で計時手段35の計時を開始すると同時に、送信回路36でバースト信号を送出し、振動子32から流れ方向に超音波を発生させ、この超音波を振動子33で受信し、増幅回路37と比較手段38で検出すると計時手段35の計時を停止し、時間演算手段39で計時手段35の計時結果に演算処理を施して、伝搬時間を求めている。また、定められた計測回数を完了すると、切換手段40で振動子を切換え、振動子33から流れに逆らって超音波を発生させ、流れ方向に超音波を発生させた時と同様の手順で伝搬時間を求めている。
【0004】
図7において、音速をC、流速をv、ふたつの振動子間の距離をL、超音波の伝搬方向と流れの方向とがなす角度をθとし、管路の上流側に配置された振動子32から超音波を送信し、下流側に配置された振動子33にで受信した場合の伝搬時間をt、逆方向の伝搬時間をtとした場合tおよびtは次式で求めることができる。
【0005】
=L/(C+vcosθ) (式1)
=L/(C−vcosθ) (式2)
(式1)および(式2)を変形し、(式3)で流速vが求まる。
【0006】
v=L・(1/t−1/t)/2cosθ (式3)
(式3)で求めた値に流体管路の断面積を掛ければ流体の流量を求めることができる。
【0007】
図8は流れ計測装置の信号特性図である。図8には、増幅回路37で増幅された後の超音波受信波形、比較手段38の出力波形、計時手段35が備えている基準クロック(図示せず)の波形である。比較手段38は、交流信号の基準電圧(ゼロ点)と、受信信号との比較結果を”1”、”0“の2値に変換して出力する構成となっている。比較手段38の出力が”1”から”0“、または”0”から”1”に変化する点が受信信号が基準電圧(ゼロ点)を通過する点(ゼロクロス点)である。計時手段35は送信回路36の送信開始からゼロクロス点AおよびBまでの経過時間taおよびtbを基準クロックに基づいて計時し、時間演算手段39ではふたつの値の平均値を伝搬時間として求めている。つまり比較手段38で検出された各ゼロクロス点の検出時間の平均値を求めて(式1)および(式2)で示した伝搬時間を求めている。
【0008】
以上のように構成された流体の流れ計測装置における時間分解能について説明する。例えば、図8に示すようにふたつのゼロクロス点A、Bを検出するケースを考える。何らかの要因(温度変化や流量変化など)によって、超音波の伝搬時間が変化した場合には、点Aと点Bは同じ時間間隔を保ったまま、時間軸上を相対的に前後に移動することとなる。図8で示した、ゼロクロス点AとBにおける基準クロックの位相差は180度であるため、伝搬時間が1/2クロック分だけ変化する毎に、ゼロクロス点AとBの計測結果が交互に1クロック分だけ変化することになる。よって、基準クロックの半分の時間分解能を得
ることができる。
【0009】
ゼロクロス点の数を増やした場合も同様に、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係が異なるように設定しておけば、基準クロックの周期よりも高い時間分解能を得ることができる。したがって、基準クロック周波数と受信信号周波数の関係を予め調整しておくことによって、基準クロックの周波数を低く抑えながら高い分解能の計測結果を得ることができるため、低消費電力かつ高精度の流れ検出装置の提供が可能となるのである。
【特許文献1】特開平10−30947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の構成では、基準クロックと受信波形の位相関係を制御方法の詳細が開示されていない。仮に位相関係を最適に設定できたとしても、環境条件によって超音波波形の周波数が変化した場合においては、開示されている構成では、両者の位相関係を環境条件に合わせて適切に設定することが困難であった。
【0011】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、環境変化に関わらず、常に高い分解能の計測性能を備えた流体の流れ計測装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記従来の課題を解決するために、本発明の流体の流れ計測装置は、第1振動子に交流信号を出力する送信手段と、第2振動子で受信された超音波信号によって連続して複数回発生するゼロクロス点を予め定められた数だけ検出する波形検出手段と、基準クロックに基づいて第1振動子の送信から波形検出手段で検出されたゼロクロス点までの経過時間を計測する計時手段と、発振器の基準クロック周波数を設定する周波数設定手段とを備え、周波数設定手段が、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係が異なるように基準クロック周波数を設定するようにしている。
【0013】
上記発明によれば、受信波形が変化した場合であっても、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の流体の流れ計測装置は、環境変化に伴って、受信波形が変化した場合であっても、高い計測分解能を維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、流体管路に設けられ超音波信号を送信する第1振動子と、前記超音波信号を受信する第2振動子と、前記第1振動子に交流信号を出力する送信手段と、前記第2振動子で受信された超音波信号によって連続して複数回発生するゼロクロス点を予め定められた数だけ検出する波形検出手段と、一定周波数の基準クロックを発生する発振器と、前記基準クロックに基づいて前記第1振動子の送信から前記波形検出手段で検出されたゼロクロス点までの経過時間を計測する計時手段と、前記計時手段の計測結果を基に超音波信号の伝搬時間を求める時間演算手段と、各ゼロクロス点の発生時間間隔を求める時間差演算手段と、前記発振器の基準クロック周波数を設定する周波数設定手段とを備え、
前記周波数設定手段は、前記時間差演算手段の出力が所定の条件を満たすように基準クロック周波数を設定するようにしたことを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明は、周波数設定手段は、各ゼロクロス点における前記基準クロックの位相関係が異なるように基準クロック周波数を設定することを特徴とするものである。
【0017】
そして、第1、第2の発明によれば、受信波形が変化した場合であっても、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【0018】
第3の発明は、時間差演算手段に代えて波形検出手段で検出された相異なるふたつのゼロクロス点における基準クロックの位相差を求める位相差検出手段を備え、周波数設定手段は前記位相差検出手段の検出した位相差が目標値に一致するように発振器の基準クロック周波数を設定するようにしたことを特徴とするものである。
【0019】
そして、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係の微調整が可能となるものである。
【0020】
第4の発明は、周波数設定手段は、位相差検出手段の検出した位相差の目標値として360度をゼロクロス検出回数で除した値に定めて、発振器の基準クロック周波数を設定することを特徴とするものである。
【0021】
第5の発明は、周波数設定手段は、位相差検出手段の検出した位相差と位相差目標値の偏差が所定値未満になるまで設定動作を繰り返して基準クロック周波数の調整を行うようにしたことを特徴とするものである。
【0022】
そして、第4、第5の発明によれば、常に高い計測分解能を維持することができるとともに、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係の微調整が可能となるものである。
【0023】
第6の発明は、周波数設定手段は、位相差検出手段の検出した位相差と位相差目標値の偏差が所定値より大きい場合には、時間演算手段の出力を無効とするようにしたことを特徴とするものである。
【0024】
そして、計測値の信頼性を高めることができる。
【0025】
第7の発明は、ゼロクロス点で動作を開始し基準クロックの立上り点で動作を停止する第2発信器と、前記第2発信器のカウント数を計数する第2計時手段を備え、位相差検出手段は、前記第2計時手段で計数するカウント数に基づいて波形検出手段で検出された相異なるふたつのゼロクロス点における基準クロックの位相差を求めるようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
そして、常に高い計測分解能を維持することができるとともに、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係の微調整が可能となるものである。
【0027】
第8の発明は、流体温度を検出する温度検出手段と、流体温度、発振器の基準クロック周波数、位相差検出手段の検出した位相差の三者の関係を記憶する記憶手段と、前記記憶手段の記憶内容に基づいて位相差目標値に対する基準クロック周波数を選択する学習手段を備え、周波数設定手段が、学習手段で選択された値を基準クロック周波数に設定するようにしたことを特徴とするものである。
【0028】
そして、流体温度の変化に伴って、受信波形が変化した場合であっても、常に、受信波形と基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【0029】
第9の発明は、温度検出手段が、時間演算手段の出力結果を用いて流体温度を演算する演算回路によって構成されていることを特徴とするものである。
【0030】
そして、特別な装置を付加することなく安価な構成で温度変化に対応することができ、流体温度の変化に伴って、受信波形が変化した場合であっても、常に、受信波形と基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【0031】
第10の発明は、時間演算手段の計測結果を用いて流体流量を演算する流量演算手段と、流体流量、発振器の基準クロック周波数、位相差検出手段の検出した位相差の三者の関係を記憶する記憶手段と、前記記憶手段の記憶内容に基づいて位相差目標値に対する基準クロック周波数を選択する学習手段を備え、周波数設定手段が、学習手段で選択された値を基準クロック周波数に設定するようにしたことを特徴とするものである。
【0032】
そして、流量の変化に伴って、受信波形が変化した場合であっても、常に、受信波形と基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【0033】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における流体の流れ検出装置のブロック図である。
【0034】
図1において、流体管路1の途中に超音波を送信する第1振動子2が流れの上流側に配置され、第1振動子2から送信された超音波を受信する第2振動子3が流れの下流側に配置されている。第1振動子2と第2振動子3は送受信の役割を反転する切換手段4を介して後段の処理ブロックに繋がれている。つまり、この切換手段4の作用により第1振動子2を送信側、第2振動子3を受信側とすることが可能である。
【0035】
トリガ手段5は計測開始を指示するトリガ信号を出力し、この信号と同期して送信手段6から交流信号が出力される。送信手段6の出力信号は切換手段4を介して第1振動子2へ出力され、第1振動子2から超音波信号が出力される。第1振動子2から送信され第2振動子3で受信された超音波信号は、切換手段4を介して増幅回路7で増幅された後、波形検出手段8に出力される。
【0036】
波形検出手段8では、交流信号である超音波信号と、そのゼロ点との大小比較を行い、大小関係の逆転する点をゼロクロス点と判断し、そのゼロクロス点を予め定められた数だけ検出した後、動作を停止する。そして、トリガ手段5の出力と同時に計時手段9が発振器10から供給される基準クロックに基づいて計測開始からゼロクロス点までの経過時間を計測する。
【0037】
また、計時手段9の計測結果は時間演算手段11と時間差演算手段12に出力され、時間演算手段11では超音波信号の伝搬時間が、時間差演算手段12では各ゼロクロス点の発生時間間隔が求められる。そして、時間差演算手段12の出力が所定の条件を満たすように周波数設定手段13が、発振器10が出力する基準クロック周波数を設定する。
【0038】
図2は、本実施の形態における流体の流れ検出装置の信号特性図である。例えば、図2に示すような受信波形を計時手段9および時間差演算手段12で計測した場合を考える。なお、計時手段9は発振器10から出力される基準クロックに基づいて動作するタイマカウンタとする。ゼロクロス点Aの計測値がCaであったとすると、ゼロクロス点B、C、Dの計測値Cb、Cc、Cdは次のような値となる。
【0039】
Cb=Ca+4 (式4)
Cc=Ca+8 (式5)
Cd=Ca+12 (式6)
これらの値は時間差演算手段12に出力され、各ゼロクロス点間の間隔が求められる。A〜B、B〜C、C〜Dの間隔をそれぞれ、Cab、Cbc、Ccdとすると、各値は次
のように求められる。
【0040】
Cab=Cbc=Ccd=4 (式7)
(式7)はゼロクロス時間間隔が基準クロックの整数倍(4倍)であることを示しており、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係が等しいことを示している。よって、この関係が崩れるように、すなわち、3つの値全てが等しくはならないように、周波数設定手段13が基準クロック周波数を設定する。
【0041】
周波数設定手段13は例えば、CR発振回路などによって構成されるものであって、抵抗値を変化させることによって容易に信号周波数を調整することが可能である。周波数設定手段13は時間差演算手段12の計測結果を参照しながら信号周波数を徐々に変化させて最適な周波数を選択する。周波数が最適化された後、基準クロック周波数は固定される。
【0042】
以上のように、周波数設定手段13が、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係が異なるように基準クロック周波数を設定しているので、受信波形が変化した場合であっても、各ゼロクロス点における基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【0043】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における流れ計測装置のブロック図である。図3において、主要部は図1と同一であるため詳細な説明は省略し異なる部分についてのみ説明する。
【0044】
図3において、第2計時手段15は第2発振器16から発生される第2クロックに基づいて、基準クロックとゼロクロス点の発生時間差を求めている。計時手段9および第2計時手段15の計測結果は時間演算手段11と位相差検出手段14に出力され、時間演算手段11では超音波信号の伝搬時間が、位相差検出手段14では隣接するゼロクロス点間における基準クロックの位相差が求められる。周波数設定手段13は位相差検出手段14の出力に応じて発振器10が出力する基準クロック周波数を設定している。
【0045】
図4は、実施の形態2における流体の流れ検出装置の信号特性図である。ゼロクロス点Aにおいて第2発振器16と第2時手段15が動作を開始し、次の基準クロックの立上り点A’までの時間差Taa’を計測する。次のゼロクロス点Bにおいても第2発振器16と計時手段15が動作を開始し、次の基準クロックの立上り点B’までの時間差Tbb’を計測する。Taa’およびTbb’はゼロクロス点AおよびBにおける基準クロックの位相を示す値であるのは明らかである。ここで、第2計時手段15によって計測されたゼロクロス点Aから次の基準クロック立ち上がり点A’までのカウント数をCx、ゼロクロス点Bから次の基準クロック立ち上がり点までのカウント数をCy、第2クロックの周期をT2とすると、Taa’およびTbb’は(式8)および(式9)で表せる。
【0046】
Taa’=Cx×T2 (式8)
Tbb’=Cy×T2 (式9)
基準クロックの周期をT1として、位相差検出手段14は、(式10)を用いて、ふたつのゼロクロス点間の位相差Δθを求める。
【0047】
Δθ=(Taa’−Tbb’)/T1×360° (式10)
周波数設定手段13は(式10)の値が目標値に一致するように発振器10の基準クロック周波数を設定する。例えば、波形検出手段8によるゼロクロス検出回数が4回の時には、(式10)の値を90°に定める。その場合、時間軸上でT1/4だけ異なるふたつの受信波形を比較した場合、4つのゼロクロス点のうちの少なくともひとつが異なる値を
示すため、時間演算手段11で求める伝搬時間が異なった値となる。以下同様に、T1/4だけ波形が時間軸上を変化する毎に、時間演算手段11で求める伝搬時間が異なった値となるので、基準クロックの1/4の時間分解能を得ることができたと言える。
【0048】
周波数設定手段13は位相差Δθが目標値の90°から所定値以上外れている場合には、発振器10の基準クロック周波数を変更して超音波を送信し、再度、位相差検出手段14で位相差Δθを取得する。そして、目標値とΔθの偏差が所定値未満となるまで設定動作を繰り返しながら、基準クロック周波数の調整を行なう。
【0049】
以上のように、位相差検出手段14で位相差を取得することにより、検出した位相差が目標値に一致するように発振器10の基準クロック周波数を設定できるようになるため、基準クロック周波数の微調整が可能となるばかりでなく、ゼロクロス点の検出回数に応じて、最適な位相差が得られる基準クロック周波数の設定が可能となり、常に高い計測分解能を得ることができる。
【0050】
また、調整動作中、すなわち、Δθの偏差が大の時には、時間演算手段11で求めた伝搬時間は無効とすれば計測信頼性を高めることが可能である。
【0051】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における流れ計測装置のブロック図である。図5において、主要部は図1および図3と同一であるため詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図5において温度検出手段17は時間演算手段11の出力を用いて流体温度を求めている。記憶手段18は、基準クロック周波数調整時に取得した流体温度と、発振器10の基準クロック周波数、位相差検出手段14で取得した隣接するゼロクロス間における基準クロックの位相差の三者の関係を記憶しており、学習手段19は記憶手段18の内容を参照して、流体温度の変化に応じて、目標の位相差を得るための基準クロック周波数を求めている。
【0053】
まず、温度検出手段16の測定原理について説明する。(式1)、(式2)において、流速vは、一般に音速Cよりも遥かに小さな値を取るので、次のように変形できる。
【0054】
=(L/C)(1+Vcosθ/C)−1≒(L/C)(1−Vcosθ/C)
(式11)
=(L/C)(1−Vcosθ/C)−1≒(L/C)(1+Vcosθ/C)
(式12)
(式11)および(式12)より、
C=2L/(t+t) (式13)
また、流体温度Tと音速Cは、一般的には、(式14)の近似式で示すような比例関係で表すことができる。
【0055】
C=α・T+β (式14)
ただし、ここで、α、βは定数項である。よって、(式13)および(式14)を用いて式を変形することにより、(式15)が成り立つ。
【0056】
T=α−1・{2L/(t+t)−β} (式15)
したがって、往復の伝搬時間を知ることで、特別な構成の温度検出手段を備えることなく、流体温度の検出が可能となるのである。
【0057】
記憶手段18の記憶形式は温度Tに対する基準クロック周波数と位相差の関係を数式で表したものや、テーブル形式で記憶したものなどが考えられる。
【0058】
学習手段19は温度検出手段17の検出温度に相当する最適な基準クロック周波数を記憶手段18の情報を元に選択して、選択した周波数を周波数設定手段13へ伝える。
【0059】
以上の動作によって、流体の温度変化に伴う振動子の振動周波数の変化を踏まえて、目標の位相差を得るための基準クロック周波数を即座に求めることが可能となり、受信波形が変化した場合であっても、常に、受信波形と基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。
【0060】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4における流れ計測装置のブロック図である。図6において、主要部は図1と同一であるため詳細な説明は省略し異なる部分についてのみ説明する。
【0061】
図6において流量演算手段20は時間演算手段11の出力を用いて流体流量を求めている。記憶手段18は、基準クロック周波数調整時に取得した流体流量と、発振器10の基準クロック周波数、位相差検出手段14で取得した隣接するゼロクロス間における基準クロックの位相差の三者の関係を記憶しており、学習手段20は記憶手段19の内容を参照して、流体流量の変化に応じて、目標の位相差を得るための基準クロック周波数を求めている。
【0062】
記憶手段18の記憶形式は流体流量に対する送信周波数と位相差の関係を数式で表したものや、テーブル形式で記憶したものなどが考えられる。
【0063】
学習手段19は温度検出手段17の検出温度に相当する最適な基準クロック周波数を記憶手段18の情報を元に選択して、選択した周波数を周波数設定手段13へ伝える。
【0064】
以上の動作によって、流体の流量変化に伴う振動子の振動周波数の変化を踏まえて、目標の位相差を得るための基準クロック周波数を即座に求めることが可能となり、調製時間を短縮することが可能となる。
【0065】
以上の動作によって、流体の温度変化に伴う振動子の振動周波数の変化を踏まえて、目標の位相差を得るための基準クロック周波数を即座に求めることが可能となり、受信波形が変化した場合であっても、常に、受信波形と基準クロックの位相関係を適切に保つことができる。特に、電池駆動によって10年間連続使用される家庭用ガスメータのように低い消費電量を維持しながら高い計測分解能を必要とする場合に特に有効である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の流体の流れ計測装置は、環境変化に伴って、受信波形が変化した場合であっても、高い計測分解能を維持することができるので、気体のみならず、液体の流れ計測にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態1における流れ計測装置のブロック図
【図2】同装置の信号特性図
【図3】本発明の実施の形態2における流れ計測装置のブロック図
【図4】同装置の信号特性図
【図5】本発明の実施の形態3における流れ計測装置のブロック図
【図6】本発明の実施の形態4における流れ計測装置のブロック図
【図7】従来の流れ計測装置のブロック図
【図8】同装置の信号特性図
【符号の説明】
【0068】
1 流体管路
2 第1振動子
3 第2振動子
6 送信手段
8 波形検出手段
9 計時手段
10 発振器
11 時間演算手段
12 時間差演算手段
13 周波数設定手段
14 位相差検出手段
17 温度検出手段
18 記憶手段
19 学習手段
20 流量演算手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管路に設けられ超音波信号を送信する第1振動子と、前記超音波信号を受信する第2振動子と、前記第1振動子に交流信号を出力する送信手段と、前記第2振動子で受信された超音波信号によって連続して複数回発生するゼロクロス点を予め定められた数だけ検出する波形検出手段と、一定周波数の基準クロックを発生する発振器と、前記基準クロックに基づいて前記第1振動子の送信から前記波形検出手段で検出されたゼロクロス点までの経過時間を計測する計時手段と、前記計時手段の計測結果を基に超音波信号の伝搬時間を求める時間演算手段と、各ゼロクロス点の発生時間間隔を求める時間差演算手段と、前記発振器の基準クロック周波数を設定する周波数設定手段とを備え、
前記周波数設定手段は、前記時間差演算手段の出力が所定の条件を満たすように基準クロック周波数を設定することを特徴とする流体の流れ計測装置。
【請求項2】
周波数設定手段は、各ゼロクロス点における前記基準クロックの位相関係が異なるように基準クロック周波数を設定することを特徴とする請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項3】
時間差演算手段に代えて波形検出手段で検出された相異なるふたつのゼロクロス点における基準クロックの位相差を求める位相差検出手段を備え、
周波数設定手段は前記位相差検出手段の検出した位相差が目標値に一致するように発振器の基準クロック周波数を設定する請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項4】
周波数設定手段は、位相差検出手段の検出した位相差の目標値として360度をゼロクロス検出回数で除した値に定めて、発振器の基準クロック周波数を設定することを特徴とする請求項3記載の流体の流れ計測装置。
【請求項5】
周波数設定手段は、位相差検出手段の検出した位相差と位相差目標値の偏差が所定値未満になるまで設定動作を繰り返して基準クロック周波数の調整を行うようにした請求項項3または4記載の流体の流れ計測装置。
【請求項6】
周波数設定手段は、位相差検出手段の検出した位相差と位相差目標値の偏差が所定値より大きい場合には、時間演算手段の出力を無効とする請求項3または4記載の流体の流れ計測装置。
【請求項7】
ゼロクロス点で動作を開始し基準クロックの立上り点で動作を停止する第2発信器と、前記第2発信器のカウント数を計数する第2計時手段を備え、
位相差検出手段は、前記第2計時手段で計数するカウント数に基づいて波形検出手段で検出された相異なるふたつのゼロクロス点における基準クロックの位相差を求めるようにした請求項3〜6のいずれか1項記載の流体の流れ計測装置。
【請求項8】
流体温度を検出する温度検出手段と、流体温度、発振器の基準クロック周波数、位相差検出手段の検出した位相差の三者の関係を記憶する記憶手段と、前記記憶手段の記憶内容に基づいて位相差目標値に対する基準クロック周波数を選択する学習手段を備え、
周波数設定手段は、学習手段で選択された値を基準クロック周波数に設定する請求項3〜7のいずれか1項記載の流体の流れ計測装置。
【請求項9】
温度検出手段は、時間演算手段の出力結果を用いて流体温度を演算する演算回路によって構成される請求項8記載の流体の流れ計測装置。
【請求項10】
時間演算手段の計測結果を用いて流体流量を演算する流量演算手段と、流体流量、発振器の基準クロック周波数、位相差検出手段の検出した位相差の三者の関係を記憶する記憶手
段と、前記記憶手段の記憶内容に基づいて位相差目標値に対する基準クロック周波数を選択する学習手段を備え、
周波数設定手段は、学習手段で選択された値を基準クロック周波数に設定する請求項3〜7のいずれか1項記載の流体の流れ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−175668(P2008−175668A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8800(P2007−8800)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】