説明

流体の流れ計測装置

【課題】同一仕様の計測ユニットで種々の流量範囲の計測を可能した流体の流れ計測装置を実現するものである。
【解決手段】計測流路1に流れる流体の少なくとも一部が流れる測定流路2と、前記測定流路2を流れる流体の流速および/または流量を計測する計測手段3と、前記測定流路2を流れる流体の流れを主流A、計測流路1を流れる流体の流れを副流Bとしたとき、これらに主流A、副流Bの割合を制御する流量制御手段5とを具備したものである。したがって、全体の流量が減少したときに副流を制限することによって、計測対象の主流Aの流速を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス、水などの流体の流速および/または流量を計測する流体の流れ計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体の流れ計測装置は、例えば図6に示すように、計測流体が流れる主管流路101に計測流路102を設置し、前記計測流路102に分流された流量を計測し、予め設定された全体流量との分流比でもって、全体流れの流量を演算するようにしていた。
【0003】
この構成であれば、大配管の大流量を測定できる可能性を有するものである(例えば、特許文献1、および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−251686号公報
【特許文献2】特開2005−140729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら前記従来の構成では、計測流路102に流れ込む流量が少なくなり、計測できる下限以下の場合には、流速があまりにも遅くなって計測不可能となり、計測できる範囲はその形状で画一的に制限されてしまうという課題があった。
【0006】
本発明はこのような従来の課題を解決したもので、広範囲の流速および/または流量でも確実な計測を実現したものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明の流体の流れ計測装置は、計測流路と、前記計測流路に流れる流体の少なくとも一部が流れる測定流路と、前記測定流路を流れる流体の流速および/または流量を計測する計測手段と、前記測定流路を流れる流体の流れを主流、計測流路を流れる流体の流れを副流としたとき、これらに主流、副流の割合を制御する流量制御手段とを具備したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流体の流れ計測装置は、流量制御手段により、測定流路に流れる流量を計測手段が計測可能な流速になるように制御することで、広範囲の流量域で確実な計測を可能としたもので、計測流量が大きく異なる環境下であっても配管の組換えなしに計測できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1における流体の流れ計測装置の断面図
【図2】同計測装置の要部作用説明図
【図3】同計測装置のブロック図
【図4】同計測装置における計測手段の構成図
【図5】(a)は本発明の実施の形態2における流体の流れ計測装置の正断面図、(b)は側断面図
【図6】従来の流体の流れ計測装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、計測流路と、前記計測流路に流れる流体の少なくとも一部が流れる測定流路と、前記測定流路を流れる流体の流速および/または流量を計測する計測手段と、前記測定流路を流れる流体の流れを主流、計測流路を流れる流体の流れを副流としたとき、これらに主流、副流の割合を制御する流量制御手段とを具備したものである。
【0011】
これにより、計測流路の流れる流量が小流量から大流量まで広いレンジで計測ができるものである。
【0012】
第2の発明は、特に、第1の発明において、流量制御手段は、副流の流れを遮蔽可能としたもので、極めて少ない流体量まで計測することができる。
【0013】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、流量制御手段は、主流の流速に連動して副流を遮蔽するようにしたことで、自動的に流れの経路を選択し、広い範囲の流れ測定が可能となる。
【0014】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか一つの発明において、計測流路の内部に測定流路を同心的に配置したことにより、外部配管との接続が容易となる。
【0015】
第5の発明は、特に、第1〜4のいずれか一つの発明において、流量制御手段を測定流路の上流側、および下流側の双方に対応して設けたことにより、逆流の計測も可能となるものである。
【0016】
第6の発明は、特に、第1〜5のいずれか一つの発明において、計測流路における測定流路の少なくとも上流側に整流手段を配置したことで、計測流路に流れ込む流体に多くの偏流があっても安定した測定が可能となり、計測精度を高めることができる。
【0017】
第7の発明は、特に、第1の発明において、計測手段として超音波送受信器を用いたことにより、よりレンジアビリティの広い高精度な計測が可能となるとともに、サンプリング時間が短い計測が可能であるため、瞬時の計測が必要な用途などにも対応が可能となる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、実施の形態が本発明を限定するものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1、2において、計測流路1に測定流路2が内設してあり、前記計測流路1を流れる流体が測定流路2に分流するようにしてある。
【0020】
これら計測流路1、および測定流路2は断面円形状であって、同心円的に配置されている。計測流路1に導入された流体のうち、測定流路2に分流されるものが主流A、同測定流路2の外周と計測流路1との間を流れるものが副流Bである。
【0021】
測定流路2には主流Aの流速測定用の計測手段3を配置して計測ユニット4を構成している。
【0022】
そして、計測流路1、さらに詳しくは、測定流路2の外周と計測流路1との間であって、同測定流路2の両端側には前記副流Bの流量を制御する流体制御手段5が設けてある。
【0023】
両方に流体制御手段5を設けたのは逆流にも対応できるようにしたところにある。
【0024】
前記流体制御手段5は、副流Bが流れる部位と対応して周方向に複数の扇形開口を有する2枚の円形板で構成され、その一方を固定、他を回転自在としたもので、可動側の円形板の操作によって扇形開口の合致度が調整され、それに伴って副流Bの流量、ひいては主流Aの分流量が変化するようにしてある。
【0025】
可動側の円形板は、例えば、超音波モータなどの回転手段でその角度が調整されるようにしてあり、図2(a)が最大開口状態、(b)が全閉、つまり副流B手段状態を示している。
【0026】
図3は制御ブロックを示し、計測手段3の信号に基づき演算手段6が測定流路2を流れる流体の流速および/または流量を演算する。この求めた流速および/または流量と予め登録手段7に登録してある補正値により分流比に対応した計測流路1の流速および/または流量を算出し、表示手段8に示すものであり、この全体の制御を制御手段9が受け持っている。
【0027】
回転手段駆動回路10は流量制御手段5の可動円形板を駆動する回転手段を動作させるためのものである。
【0028】
なお、本実施の形態では、結果を表示手段8により表示するようにしているが、測定結果は数値データとしてデータロガーなどに出力することでもよく、また無線システムまた有線によるデータ転送機能を搭載して他の場所で出力することも可能である。
【0029】
次に、計測手段3の具体例を図4をもとに説明する。
【0030】
測定流路2には流路を挟んで一対の超音波送受信器11a,11bが上流側と下流側で角度φを有して斜めに対向して配置されている。
【0031】
超音波送受信器11a,11b間で交互に超音波を送受信させて流体の流れに対して順方向と逆方向の超音波の伝搬時間の差を一定間隔を置いて計り、伝搬時間差信号として出力する働きを持つ。
【0032】
この伝搬時間差信号を受けて演算手段6により被計測流体の流速および/または流量を演算するものである。
【0033】
さらに述べると、図4において、Lを測定距離、T1を上流からの伝達時間、T2を下流からの伝達時間、Cを音速、φを流体の流れ方向に対する超音波伝搬路とのなす角度とした場合、流速Vは以下の式にて算出される。
【0034】
T1=L/(C+Vcosφ) (1)
T2=L/(C−Vcosφ) (2)
T1の逆数からT2の逆数を引き算する式より音速Cを消去して
V=(L/2cosφ)[(1/T1)−(1/T2)] (3)
φおよびLは既知なので、T1およびT2の値より流速Vが算出できる。この流速に測定流路2の断面積、および補正係数を乗じることで流量が算出できる。
【0035】
以上の構成において、以下その作用を説明する。
【0036】
前述したように、超音波による計測方法においては、超音波伝播部の流速が遅くなった
場合、演算手段の分解能の測定限界より計測精度が落ち、極端に流速が低い場合計測不能となることもありえる。そうした課題に対応するためには計測部自体の変更やセンサなどのデバイス部品の見直しが必要となり、測定流量のレンジに対応してそれぞれ計測手段を用意しなければいけなくなる。
【0037】
本実施の形態においては、前述したように流量制御手段5を有しており、通常の測定モードでは図2(a)に示す開口状態で計測が行われるが、測定流路2に流れる流量が少なくなり、演算手段6が計測手段3の下限に達したと判定した場合、制御手段9からの指示により回転手段駆動回路10が超音波モータなどの回転手段を駆動し、図2(b)に示すように副流Bを遮蔽する。
【0038】
したがって、計測流路1に導入された流量の全てが測定流路2に流れて流速が増すため、低い流量であっても計測可能となる。
【0039】
なお、前記の説明では副流Bの流動―遮断を択一的に行ったが、必ずしもこれに限ったものではなく、リニアな副流Bの増減、つまりは主流Bへの分流量をリニアに増減させることも勿論考えられるであろう。
【0040】
(実施の形態2)
図5は実施の形態2を示し、先の実施の形態1と異なる点は、測定流路2の開口部の上下流側に整流手段12a,12bを設け、計測流路1に流れ込む流れが非常に乱れていた場合でも、測定流路2での計測への影響を抑制できるようにしたところにある。この構成によれば、如何なる配管条件であっても精度の良い測定が可能となる。
【0041】
なお、図1と同作用を行う構成要素には同一符号を付し、具体的な説明は実施の形態1のものを援用する。
【0042】
整流手段12a,12bの構成としてはハニカム状の多孔体を使っているが、金網など別の多孔体構造の部材であっても使用可能であり、逆流が発生しないものであれば、一方のみに配置することも考えられる。
【0043】
また、いずれの実施の形態においても副流B側を制御するようにしたが、場合によっては、測定流路2の流体抵抗を制御して、これにより主流Aそのものを増減するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上のように、本発明によれば、測定流路に流れる主流の量を制御することが可能となり、広流量範囲の計測が可能となり、ガスなどの気体流体、水などの液体流体にかかわりなく確実な計測を実現できるものである。
【符号の説明】
【0045】
1 計測流路
2 測定流路
3 計測手段
5 流量制御手段
11a,11b 超音波送受信器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測流路と、前記計測流路に流れる流体の少なくとも一部が流れる測定流路と、前記測定流路を流れる流体の流速および/または流量を計測する計測手段と、前記測定流路を流れる流体の流れを主流、計測流路を流れる流体の流れを副流としたとき、これらに主流、副流の割合を制御する流量制御手段とを具備した流体の流れ計測装置。
【請求項2】
流量制御手段は、副流の流れを遮蔽可能とした請求項1記載の流体の流れ計測装置。
【請求項3】
流量制御手段は、主流の流速に連動して副流を遮蔽するようにした請求項1または2記載の流体の流れ計測装置。
【請求項4】
計測流路の内部に測定流路を同心的に配置した請求項1〜3いずれか1項記載の流体の流れ計測装置。
【請求項5】
流量制御手段を測定流路の上流側、および下流側の双方に対応して設けた請求項1〜4いずれか1項記載の流体の流れ計測装置。
【請求項6】
計測流路における測定流路の少なくとも上流側に整流手段を配置した請求項1〜5いずれか1項記載の流体の流れ計測装置。
【請求項7】
計測手段は超音波送受信器を用いた請求項1記載の流体の流れ計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−53081(P2011−53081A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202208(P2009−202208)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】