説明

流体インジケータデバイス

液体試料の少なくとも1つの性質を検査する流体検査デバイスを開示し、本デバイスは、(i)液体試料塗布部位(2);(ii)試料塗布部位と液体連通する少なくとも1つの試験流路(4);(iii)試料塗布部位と液体連通する参照流路(6);および(iv)試験流路と参照流路が互いに接触する連結部位(10)であって、典型的には出口、導管、チャンバ、又は、液体の前方への流動を可能にする他の部分を備える連結部位を備え、参照流路に沿って流動する液体は、連結部位に到達した時、試験流路に沿った液体の流動を防止する効果を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体が通過する流体デバイスに関する。本発明はまた、流体試料中の検体の量および/又は存在、又は流体試料の性質の測定に好適な検査デバイスにも関する。
【背景技術】
【0002】
検体を検出する簡単な使い捨て流体デバイスが知られている。欧州特許第291194号明細書は、ラテラルフローの多孔質キャリヤを備える検査デバイスを開示しており、そこでは、検出ゾーンに粒子状の標識された結合試薬が蓄積し、それによって液体試料中に検体が存在するか又は存在しないかを示す視認可能な信号が使用者に提供される。しかし、信号は使用者による解釈を必要とする。そのため、実装された光学素子が標識された試薬の存在又は強度を測定し、解釈を必要としない絶対的な答えを提供することができるデジタルデバイスが開発されてきた。しかし、デジタルデバイスは、光学素子の他に、電子部品を更に処理する電源およびデジタル表示装置を必要とするため、製造に費用がかかる。
【0003】
米国特許第4,963,498号明細書は、流体試料中の検体又は流体試料の性質を測定するマイクロ流体デバイスを開示しており、そこでは、デバイス中に存在する試薬は試料の流速に影響を与える。デバイスは、試験キャピラリと参照又は対照キャピラリの両方を備えてもよい。
【0004】
欧州特許第456699号明細書は、各インジケータチャンバの上流の多数の流体導管に接続された試料塗布ポートを備える、液体中の物質の存在を試験する装置を開示している。一例によれば、流体導管内に存在する凝集試薬は、試料と相互作用して流速を変化させ、例えば、液体が検査の時間内にインジケータチャンバに到達することを防止する。
【0005】
物質の存在を試験するキャピラリデバイスは、また、国際公開第2004/083859号パンフレットによって開示されている。デバイスは、目的の検体(典型的には、ヒト絨毛性ゴナドトロピン、hCG)が存在すると試験キャピラリ内の液体試料の凝集が起こり、この凝集によって試験キャピラリ内の液体試料の流動が防止されるが、対照キャピラリ(凝集試薬を含有しない)内では防止されないことによって機能する。試験キャピラリと対照キャピラリの下流部分に液体試料が存在するか又は存在しないかを電極で検出する。
【0006】
非デジタル検査デバイス、とりわけ妊娠試験デバイスおよび/又は家庭用検査デバイスに関連する問題は、それらが検査結果を、ある程度の解釈を必要とし得る様々な強度の信号として提供することである。このため、とりわけ検査デバイスの使用者又は検査デバイスを読み取る人が好ましい検査結果を期待している場合、検査結果は誤った解釈がされ易い。しかし、妊娠試験デバイスなどの幾つかの試験デバイスの場合、解釈を必要とせず、検査結果が2つの選択肢(即ち、妊娠している又は妊娠していない)の1つとして提供されるようにデバイスを構成することが好ましい。これは、「二者択一の結果(binary outcome)を示す」デバイスと記載され得る。これは、使用者による解釈の必要がない明解な結果を提供するが、使用者による解釈は望ましくない。この問題は、従来技術では、様々な強度の信号を読み取り、電子(例えば、LCD又はLED)表示装置で二者択一の結果を提供するために、複雑な光学および電子素子を組み込む検査デバイス又は検査デバイス読取装置を提供することによって対処してきた。本発明は、好ましい実施形態で、既存の光学/電子検査デバイスより製造がずっと簡単で二者択一の結果を示す検査デバイスを提供する、より簡単な方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、液体試料の少なくとも1つの性質を検査する流体検査デバイスを提供し、本デバイスは、
(i)液体試料塗布部位;
(ii)試料塗布部位と液体連通する少なくとも1つの試験流路;
(iii)試料塗布部位と流体連通する参照通路、および
(iv)試験流路と参照流路が互いに接触する連結部位であって、典型的には出口、導管、チャンバ、又は、液体の前方への流動を可能にする他の部分を備える連結部位、
を備え、
ここで、参照流路に沿って流動する液体は、連結部位に到達した時、試験流路に沿った液体の流動を防止する効果を有する。
逆に、試験流路に沿って流動する液体が、参照流路の液体より前に連結部位に到達する場合、少なくとも幾つかの実施形態では、参照流路に沿った液体の流動が防止され得る可能性がある。参照流路又は試験流路に沿った液体の流動の防止は必ずしも永久的ではない:検査が実施され、読み取られる時間内で液体の流動が防止されれば十分である。
【0008】
試験流路および/又は参照流路は、マイクロ流体チャネル、多孔質キャリヤ、又は2つの組み合わせを備えても、又はそれからなってもよい。好ましい多孔質キャリヤとしては、ニトロセルロースおよび濾紙が挙げられる。マイクロ流体チャネルは、好ましくは、典型的な試料液体が毛管流によりチャネルに沿って流動できるような毛細管の寸法を有する。好ましくは、試験流路および/又は参照流路は、毛細管の寸法を有する少なくとも1つの部分を有するチャネルを備える、又はそれからなる。
【0009】
典型的なマイクロ流体チャネルは、0.1〜500μm、より典型的には1〜100μmの内部断面寸法を有する。マイクロ流体チャネルは、ポリカーボネート、エポキシ樹脂などの合成プラスチック材料、ガラス又は金属から形成されてもよい。チャネルは、従来の方法を使用してエッチング、キャスティング、成形などによって形成されてもよい。
【0010】
典型的には、しかし必ずではないが、検査される液体試料の性質は、目的の検体の存在および/又は量を含む。目的の検体は、例えば、ステロイド、ホルモン、ペプチド又はポリペプチド、炭化水素、脂質、リポ蛋白質、ポリヌクレオチド、酵素、血液型マーカー、疾患マーカー、診断又は予後インジケータ、カチオン、アニオン、又は、ウイルス、細菌、酵母、真菌、胞子若しくは真核細胞などの分子複合体を含んでもよい。1つの好ましい実施形態では、目的の検体はhCGを含む。別の実施形態では、検体はグルコースを含む。決定され得る液体試料の性質は、例えば、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、トロンビン時間、および活性化凝固時間などの血液又は血漿の凝集性であってもよい。
【0011】
検査デバイスは対照を含んでもよく、対照は、試料が試料塗布部位に適切に塗布されたこと、および検査デバイスが正常に機能していることを示す信号を発生させることができる。対照は、1種類以上の試薬が入っている対照流路を備えてもよい。参照流路はまた対照の役割を果たしてもよい。
【0012】
好都合には、対照流路は、試料塗布部位に塗布された試料液体が流路に沿って流動し、典型的には連結部位の上流又は下流にあるインジケータ部位に到達し、そこで信号、典型的には視認可能な信号を発生させるようになっている。
【0013】
試験流路は、概ね、参照流路と性質がかなり類似しているが、典型的には目的の検体と反応又は結合する1種類以上の試薬又は結合相手を含む。好ましくは、このような反応又は結合は、試験流路に沿った試料液体の流速を変化させる(典型的には減少させる)効果がある。
【0014】
本発明のデバイスは、2つ以上の試験流路、および任意に、対応する数の参照流路を提供することによって2種類以上の目的の検体の存在および/又は量に関して検査するように容易に構成することができる。
【0015】
一実施形態では、各試験流路について試料塗布部位に別々の試料塗布ポート又は供給部(input)が設けられている。別の実施形態では、塗布される試料液体が2つ以上の流路(例えば、2つ以上の試験流路、又は少なくとも1つの試験流路と1つの参照流路)に流入し得るように、試料塗布部位は、共通の試料塗布ポート又は供給部を備える。好ましくは、検査を開始するのに1つの試料塗布工程で十分であるように、デバイスは、デバイス内に存在する全ての流路に試料液体を供給する共通の試料塗布ポート又は供給部を備える。
【0016】
液体試料は、水、下水試料、又は水性抽出物(例えば、水性の食物又は飲料の試料)、又は、例えば、血液、血漿、血清、尿、膿、汗、唾液、膣液、又は涙のような生物試料などの任意の好適な液体であってもよい。好ましい試料は尿である。液体試料はデバイスに「そのまま」塗布されてもよく、又は前処理工程(例えば、次の1つ以上を含む:混合、攪拌、超音波処理、希釈、インキュベーション、変性、又は1種類以上の試薬との反応)が施されてもよい。
【0017】
流体試料中の検体の存在および/又は量、流体試料の他の性質を表示又は測定するため、検査の実施には、好都合には、試料と、試験流路に沿った液体試料の流速に影響を与えることができる1種類以上の物質との反応又は相互作用が含まれる。好ましくは、物質の少なくとも1つは、検査デバイス内に提供されるが、追加で又は代わりに、1種類以上のこのような物質は検査デバイスに試料を塗布する前に試料と混合されてもよい。一般に、(1種類以上の)物質と試料との反応又は相互作用は、試験流路に沿った試料の進行速度を変化させる(即ち、増加又は減少させる)傾向がある。(1種類以上の)物質は、試料が目的の検体を検出可能なある一定の最小限の濃度よりも多く含むと、試験流路に沿った試料液体の流速を増加させるようなものであってもよい。しかし、より好ましくは、(1種類以上の)物質は、試料が(1種類以上の)目的の検体を含むと、試験流路に沿った試料液体の流速を妨げる又は減少させるなどの効果を有する。
【0018】
好ましい実施形態では、デバイスは、(1種類以上の)目的の検体と反応する1種類以上の試薬、又は(1種類以上の)目的の検体と結合する結合相手を含む。好都合な結合相手は、抗体若しくはその抗原結合フラグメント(Fab、Fv、scFv、およびドメイン抗体等)、又は、抗体若しくはその抗原結合フラグメントの多量体を含む。
【0019】
他の好適な結合相手(目的の検体の性質に依存する)は、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、相補的ポリヌクレオチド(任意に、修飾された塩基又は非天然型の塩基を含む、DNA、RNA、PNA、LNA又はこれらの任意の組み合わせの10以上、好ましくは17以上の塩基から構成される)、およびポリペプチドレセプター又はそれらの各リガンドに対する結合活性を維持するその少なくとも一部を含んでもよい。レセプターとしては原核ポリペプチドと真核ポリペプチドの両方が挙げられ、その多数の例(全長型と切断型の両方)が知られている。
【0020】
試薬又は結合相手は、検査デバイスに固体化されていてもよく(即ち、検査の実施中、付着したままである)、又は放出可能に付着していてもよく(即ち、検査の実施中、担体から放出される)、又は、固体化された試薬若しくは結合相手と、放出可能に付着した試薬若しくは結合相手との組み合わせを含んでもよい。例えば、一実施形態では、放出可能に付着した結合相手が、試験流路の上流部分に配置された多孔質キャリヤ上に提供されている。別の実施形態では、固体化された結合相手が、試験流路内に提供されている。更に別の実施形態では、放出可能に付着した結合相手が、試験流路の比較的上流部分に(多孔質キャリヤ上に又は他の方法で)提供されており、固体化された結合相手が試験流路の比較的下流部分に提供されている。抗体等を表面に放出可能に付着させる又は固体化する方法は、当業者に周知である。好都合には、結合相手は、試験流路の一部を形成するキャピラリチャネル内に提供される。
【0021】
結合相手又は試薬は、有利には標識されている。好適な標識としては、以下に限定されないが、酵素、蛍光色素、着色色素、および金コロイド粒子又は他の金属コロイド粒子が挙げられる。
【0022】
一実施形態によれば、検体が存在すると試験チャネル内の流体の流速が増加し得る。例えば、検体の結合によって、界面活性剤にコンジュゲートしている種の移動が起こり得、流体チャネル内にそれが存在すると試料の流速が増加する。
【0023】
好都合には、結合相手は粒子状であるか、又は粒子状物質を含む。一実施形態では、結合相手は、ラテックス粒子又は金コロイド粒子又は他の金属コロイド粒子を含む。有利には、単一の粒子が目的の検体の複数の要素に同時に結合し得るように、粒子は複数の結合相手分子を含む。好ましくは、ラテックス粒子は、着色色素などの直接目に見える標識が付けられている又はそのような標識でマーキングされている。
【0024】
一実施形態では、1つ又は複数の結合相手は、目的の検体が存在すると、試験流路内で凝集反応が起こるようなものであり、凝集反応は試験流路に沿った試料液体の流動を遅延させる又は抑制する役割をする。試験流路に沿った流動のこのような遅延又は抑制は、参照又は対照流路に沿って流動する液体が最初に連結部位に到達し、試験流路に沿った液体が更に前進することを阻止する効果を有する(後述)。
【0025】
別の実施形態では、試験流路は、血液又は血漿の凝固性を決定するためにトロンボプラスチンなどの試薬、又は1種類以上の様々な凝固因子を含んでもよい。
【0026】
別の実施形態によれば、試薬は、グルコースと反応して流体試料中の粘度の増加を引き起こすことができるコンカナバリンAであってもよい。試験流路は、特定の溶媒が存在すると膨潤して粘度の増加を引き起こす溶媒膨潤性ポリマーゲルを含んでもよい。検出される検体が水であるとき、このようなものの一例はデキストランポリマーである。
【0027】
本発明の検査デバイスは、試験流路に沿って流動する液体と参照流路に沿って流動する液体との「競争」を使用するものと考えられ得る−連結部位に到達する最初の液体は「競争」に勝って、もう一方の流路に沿った液体が更に前進することを阻止する。
【0028】
ブロックを形成する1つの方法は、連結部位の下流に多数の(1つ以上の)通気孔を提供することである。液体を流路に沿って前進させるためには、これらの通気孔を介して、試験および流路のマイクロ流体チャネルを充填する気体(典型的には空気)を排出することが必要である。しかし、流路の一方の液体は連結部に到達すると、もう一方の流路の気体の排気を防止して、ガスブロック(典型的には空気ブロック)を形成し、塞がれた流路に沿って液体が前進することを防止する。この構成は非常に簡単であり、移動部品を必要とせず、製造が容易である。
【0029】
試験流路と参照流路の一方又は両方は、更に、例えば、凝集反応が起こるとき、より完全なバリア又は障害の形成を促進する狭窄、フィルタ、又は堰などの流動に対する部分的バリアを備えてもよい。典型的には、このような部分的バリア又は障害は、1つ以上の試験流路に設けられるが、参照流路には設けられない。
【0030】
デバイスは、好都合には、少なくとも1つのインジケータ部位を備える。一実施形態では、インジケータ部位は連結部位の下流に配置されている。一実施形態では、インジケータ部位は連結部位の上流に配置されている。一実施形態では、1つのインジケータ部位は試験流路内又は試験流路上にあり、1つのインジケータ部位は参照流路内又は参照流路上にあり、インジケータ部位は両方とも試料塗布部位と連結部位の間に配置されている。
【0031】
インジケータ部位は、検査デバイスを使用する人に検査結果に関する情報を表示する表示装置を備える。典型的には、検査結果は、少なくとも一部、色の変化によって表示される。
【0032】
デバイスの1つ又は複数のインジケータ部位で視認可能な色の変化を実施できる多数の方法がある。
【0033】
一実施例では、インジケータ部位は連結部位の下流にある。簡単な実施形態では、インジケータ部位における特定の色の色素の存在によって、どちらの経路(試験流路又は対照流路)で液体が最初にインジケータ部位に到達したかが示されるように、異なる色の色素が各試験流路と対照流路に提供されている。或いは、2つの異なる酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼとグルコースオキシダーゼ)をインジケータ部位に提供することができ、且つ酵素の1つに対する各基質を流路内に提供することができるが、基質は関連する酵素触媒の存在下で反応し、着色生成物を生成する。生成物の色は、どちらの基質がインジケータ部位に導入されたか(従って、どちらの流路で液体が最初にそこに送達したか)を示す。概略的に言えば、インジケータ部位は(連結部位の下流に配置されている場合)、検出可能な異なる信号を発生させる2つの異なる信号発生手段の成分を備え、各信号発生手段の1つ以上の他の成分は上流に移動可能に配置され、一方の信号発生手段の他の成分は試験流路内に配置され、もう一方の信号発生手段の他の成分は参照流路内に配置され、信号を発生させるために他の成分はインジケータ部位のもう一方の成分に接触することを必要としてもよい。2つの信号発生手段のうちどちらが活性化されるかは、他の成分のどちらがインジケータ部位に最初に到達するかに依存し、また試験流路と参照流路に沿った液体の相対的流速に依存する。
【0034】
一実施形態では、インジケータ部位はpH感受性インジケータを含み、試験流路と参照流路はそれぞれ、異なるpH作用剤を含む、例えば、1つは比較的酸性のpHの緩衝剤を含み、1つは比較的アルカリ性のpHの緩衝剤を含む。従って、液体が最初にインジケータ部位に到達する流路によって、インジケータ部位のpH、従ってインジケータの色が決定される。
【0035】
下流のインジケータ部位を有するこの一般的なタイプの実施形態は、参照流路に沿って流動する液体が最初にインジケータ部位に到達するように、試験流路に沿った液体の流動を大幅に妨げる又は遅延させる必要がない−1秒か2秒の時間差で十分であるという利点を有する。
【0036】
他の実施形態では、インジケータ部位は、連結部位の上流に、参照流路と試験流路のそれぞれに設けられている。一実施形態では、ある検査結果がインジケータ部位に表示されるように、液体が試験流路のインジケータ部位に到達する前に、参照流路に沿った液体の流動は、ある程度、試験流路に沿った液体の流動を阻止する役割を果たす。幾つかの実施形態では、液体が試験流路および/又は参照流路のインジケータ部位に到達する場合/とき、視認可能な変化が見られるように、インジケータ部位の上流に色素などのインジケータ物質を提供することが有利となり得る。
【0037】
幾つかの実施形態では、インジケータ部位は、(例えば、他は不透明なハウジング中の窓又は孔を通して)使用者に見えるキャピラリなどのマイクロ流体チャネルを備える。一実施形態では、インジケータ部位は、1つが試験流路の一部を形成し、1つが参照流路の一部を形成する2つのチャネル又はキャピラリを備える。一実施形態では、インジケータ部位のマイクロ流体チャネル又はキャピラリは検査の実施中、着色された液体で充填される。液体の色自体が検査の結果を示す。或いは、着色された液体は、単に、チャネル又はキャピラリの視認性を変化させる役割をしてもよい。例えば、透明又は白色を背景にした透明なプラスチック又はガラスのキャピラリは容易に見えない場合がある。このようなチャネル又はキャピラリに着色された液体を導入すると、コントラストが増加し、チャネル又はキャピラリを容易に視認できるようになる。或いは、チャネル又はキャピラリが最初、その背景と高いコントラストを有する場合(例えば、赤を背景にした白色のキャピラリ)、チャネル又はキャピラリに背景と同じ色の着色された液体を導入すると、コントラストが減少し、キャピラリ又はチャネルは観察しにくくなる。これらは全て、検査の結果に関する視認可能な信号を伝える又は表示する様々な方法を示す。
【0038】
幾つかの実施形態では、インジケータ部位は、1つ以上の単語又は記号(「PREGNANT(妊娠)」、又は、プラス若しくはマイナス記号など)を形成する1つ以上のチャネル又はキャピラリを備えてもよい。本発明による検査デバイスが妊娠試験デバイスとして提供される1つの特定の実施形態では、1つの流路は、チャネル又はキャピラリが単語「NOT(非)」を形成するインジケータ部位を備え、別の流路は、チャネル又はキャピラリが単語「PREGNANT(妊娠)」を形成するインジケータ部位を備える。典型的には、単語「NOT」は試験流路に形成され、単語「PREGNANT」は参照流路に形成される。hCGを含有しない(即ち、被験者が妊娠していない)試料がデバイスに塗布されると、液体は試験流路と参照流路の両方に沿って自由に流動する。着色標識、例えば、色素は、両方の流路に沿って輸送され、単語「NOT」と「PREGNANT」がメッセージとして表示装置に現れる。hCGを含む試料がデバイスに塗布されると、試験流路に存在する凝集試薬(例えば、抗hCG抗体でコーティングされたラテックスの粒子)は流速を非常に減少させるため、試験流路内の液体がインジケータ部位に到達できる前に、参照流路内の液体が連結部に到達する。これは試験流路を有効に塞ぐため、単語「NOT」が視認可能とならず、代わりに表示装置はメッセージ「PREGNANT」を表示する。
【0039】
幾つかの実施形態では、試料中に目的の検体が存在しないとき、試験流路に沿って流動する液体より少し前に、参照流路に沿って流動する液体が連結部位に到達するようなデバイスを構成するように検査デバイスを偏らせることが好ましい場合がある。この特徴は、排他的ではないが、特に、連結部位の下流にインジケータ部位が設けられ、例えば、試験流路と参照流路にそれぞれインジケータ又は標識が提供される実施形態に適用される。液体試料が参照流路と試験流路を介して連結部位に到達するのにかかる時間が同一である場合、両方の流路の液体がちょうど同時に連結部位に到達し、従ってインジケータ部位で混合され、そのため明確な検査結果を提供できないことが少なくとも考えられる。これは、参照流路を短くすることおよび/又は参照流路に沿った流速を速くすることによって(例えば、穴がより細いキャピラリを使用することによって)回避できる。
【0040】
第2の態様では、本発明は、液体試料中における目的の検体の存在を試験する方法を提供し、本発明は、本発明の第1の態様によるデバイスの試料塗布部位に液体試料を塗布する工程、およびデバイスが表示する検査結果を示す又は記録する工程を含む。
【0041】
第3の態様では、本発明は、必要な要素を機能可能な関係に組み立てることを含む、本発明の第1の態様による検査デバイスの製造方法を提供する。
【0042】
不明確さを回避するため、「好ましい」、「有利な」、「望ましい」、「好都合な」、「典型的な」などとして本明細書に記載される任意の特徴は、文脈中に他に記載されない限り、本発明中に別々に又は前述の他の任意の特徴と組み合わせて存在し得ることをこれによって明確に記載する。
【0043】
ここで、例証の実施例により、および添付の図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による検査デバイスの一実施形態の概略図である。
【図2】本発明による検査デバイスの別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0045】
実施例1
図1は、本発明によるデバイスを示す。デバイスは、共にキャピラリチャネルを備える試験流路4と参照流路6に流体連通した試料塗布部位2を有する。フィルタ8は、任意に、流路の一方又は両方に設けられてもよい。流路は、下流で、共通チャネル12に繋がる連結部位10で集束する。インジケータ部位14は、連結部位10の下流に設けられてもよい。
【0046】
試料塗布部位2の試料塗布ポートを介してデバイスに塗布された液体試料は、それぞれ試験流路と参照流路4、6に沿って連結部位10の方に流動することができる。共通チャネル12とインジケータ部位14に1つ以上の通気孔が設けられ、液体がキャピラリに沿って前進することによって空気はデバイスから排出される。しかし、流体の前面の1つが連結部位10に到達すると、それは通気孔からもう一方の流路を塞ぎ、液体がもう一方の流路に沿って更に前進することを防止する。このようにして、デバイスは、流体の前面が最初に連結部位10に到達する流路に沿って流動する流体がインジケータ部位14に到達することだけを可能にする。各チャネルのどちらの流体が最初に到達したかを観察者が判定できるように、流体チャネルに表示手段を提供してもよい。例えば、流体試料が色素と相互作用して特定の色の液体を作り出すことができるように、各チャネルに異なる色の色素を提供してもよい。このようにして、インジケータ部位に特定の着色色素が存在すると、使用者はどちらの液体が最初に流体ゲートに到達したかを判定することができる。
【0047】
図1による検査デバイスの調製
アガロースでコーティングされた200μmのポリエステル(ゲルボンド(GelBond)、BMA)からベース層を調製した。適切なマイクロ流体の特徴を、厚さ75μmのヒートシール接着PE層からグラフトテック(GraftTeC)カッターを使用して切り取り、2層を一緒に積層した。最後に第3の層を中間層に積層し、75μmのマイクロ流体チャネルを得た。
【0048】
実施例2
本発明による検査デバイスの代替の実施形態を図2に示す。図1に示されている実施形態のものと機能的に同等の構成要素は共通の参照番号で示す。
【0049】
前記実施例におけるように、検査デバイスは、共通の試料塗布部位2に試料塗布ポートを備え、液体試料はそこから、試験流路4の一部を形成するキャピラリと参照流路6の一部を形成する別のキャピラリの中に流入することができる。或いは、各流路に独自の別々の試料塗布部位を設けてもよい。当業者は、本実施例に記載の検査デバイスに、目的とする他の検体の存在を試験するための他の試験流路を設けてもよいことが分かる。必要に応じて、他の試験流路又は他の試験流路のそれぞれに、対応する参照流路を設けることができる。
【0050】
図2に示されている実施形態では、各流路は、連結部位10の上流にフィルタ要素8とインジケータ部位14を備える。
【0051】
フィルタ要素8は、目的の検体、この場合はhCGに対する1つ以上の結合相手を含む。目的の検体が存在すると、結合相手、即ち、抗hCGモノクローナル抗体でコーティングされた粒子は凝集反応を媒介する。
【0052】
各流路にはまた、液体試料との接触によって移動可能になり、液体試料と一緒に移動する着色色素が提供されている。
【0053】
各流路のインジケータ部位14は、試験流路4に単語「NOT」を形成し、参照流路に単語「PREGNANT」を形成するキャピラリチャネルを備える。これらのキャピラリは、透明な合成プラスチック材料から形成され、低コントラストのもの(例えば、白色又は透明な合成プラスチック材料)を背景にしている。従って、検査を実施する前は、キャピラリは視認性が高くない。
【0054】
しかし、検査が開始すると、インジケータ部位の上流の流路に配置された色素は、前進する液体試料によって移動可能になる。試料がhCGを含有しない場合、液体は両方の流路に沿って自由に流動する。色素を含有する液体は、このようにして両方のキャピラリを充填し、検査結果「NOT PREGNANT(非妊娠)」を表示する。参照流路に沿った幾つかの箇所に通気孔を設け、それに沿った液体の流動を促進してもよい。特に、液体が参照流路のインジケータ部位を充填することを助けるために、この通気孔を設けてもよい。試験流路4に沿って流動する液体の前面より前に参照流路6に沿って流動する液体が連結部位10に到達すると、空気をもはや試験流路キャピラリから排出することができず、液体がそのチャネルに沿って更に前進することが防止されるように、好ましくは、試験流路にはこのような通気孔がなく、空気は試験流路キャピラリ4から、連結部位10の下流の共通チャネル12にある1つ以上の通気孔を介してしか排気されない。
【0055】
試験流路と参照流路に沿った液体の流速、および/又は各流路の長さは、hCGが存在しないとき、液体が両方の流路4、6に沿って流動し、各インジケータ部位を充填するように調整される。典型的には、試料中にhCGが存在しないとき、参照流路に沿って流動する液体は、試験流路に沿って流動する液体と同時に、又はそのほんの1秒か2秒前に連結部位10に到達する。
【0056】
しかし、塗布された試料がhCGを含む場合、試験流路4内で凝集が起こり、それによって、試験流路キャピラリに沿ってインジケータ部位に向かう液体の前進がかなり遅延される。これによって、参照流路に沿って流動する液体は容易に連結部位への「競争に勝つ」ことができる。参照流路に沿って流動する液体は、試験流路4に沿って流動する液体がインジケータ部位に到達する前に、連結部位10に到達する。この場合、単語「NOT」は色素で充填されず、不明瞭なままであるが、単語「PREGNANT」は視認性が高くなり、このようにして検査結果が表示される。
【0057】
実施例3
本発明の実現可能性を実際に実証するために、15μmのポリスチレンビーズ(ポリサイエンス(Polyscience))をアミノデキストラン500,000RMM、次いでNHS−LCLC−ビオチンでコーティングし、ビオチン化ラテックスビーズを調製した(NHS=N−ヒドロキシスクシンイミジル、LCLC=「長鎖」、即ち、炭素数12のスペーサー)。200μg/mlのBSA溶液50μlに(非特異的結合部位をブロックするため)、15μmビオチン粒子の5%溶液50μlを添加し、ボルテックスで混合した。試験流体を調製するため、ボルテックスで混合しつつ、ビオチン化された粒子のBSA溶液にストレプトアビジン1μm磁性粒子の溶液5μlを添加した。調製後直ぐに、後述のマイクロ流体デバイスに流体を添加した。
【0058】
BSA緩衝剤からなる参照液も調製した。
【0059】
幅5mm、長さ3cm、高さ100μmの寸法を有する流体チャネルの上流に設けられた試料塗布ポートを有するマイクロ流体デバイスを調製した。流体チャネルに沿って2cmの距離のところに、30μmの間隙を有する流体チャネルに平行に延びるチャネルを備える長さ5mmのフィルターゾーンが設けられた。
【0060】
2つのこのようなデバイスを調製し、試験溶液と参照溶液をそれぞれ両方に添加し、流体の前面が流体チャネルの端部に到達するのにかかる時間を測定した。この特定の実施例では、試験溶液はチャネルの端部に到達するのに60秒かかった。対照的に、参照液は10秒しかかからなかった。
【0061】
試験流体の流動の遅延は、凝集した粒子がフィルターゾーンに詰まるためであった。参照流体の場合、凝集は起こらず、従って流体は妨げられずに流動することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料の少なくとも1つの性質を検査する流体検査デバイスであって、
(i)液体試料塗布部位;
(ii)前記試料塗布部位と液体連通する少なくとも1つの試験流路;
(iii)前記試料塗布部位と液体連通する参照流路、および
(iv)前記試験流路と前記参照流路が互いに接触する連結部位であって、典型的には出口、導管、チャンバ、又は、液体の前方への流動を可能にする他の部分を備える連結部位、
を備えるデバイスであり、
前記参照流路に沿って流動する液体が、前記連結部位に到達した時、前記試験流路に沿った液体の流動を防止する効果を有する、検査デバイス。
【請求項2】
前記試験流路および/又は参照流路が、マイクロ流体チャネル、多孔質キャリヤ、又は両方の組み合わせを備える、請求項1に記載の検査デバイス。
【請求項3】
前記マイクロ流体チャネルの少なくとも一部が毛細管の寸法を有する、請求項2に記載の検査デバイス。
【請求項4】
前記試験流路および/又は参照流路が、次、即ち、フィルタ、インキュベーション部位、チャンバ、流動制限の1つ以上を備える、請求項1〜3に記載のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項5】
前記試験流路および/又は参照流路が、標識又はインジケータを備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項6】
前記標識又はインジケータが、前記液体試料と接触した時、移動可能である、請求項5に記載の検査デバイス。
【請求項7】
前記標識又はインジケータが、酵素、蛍光色素、着色色素、および金コロイド粒子又は他の金属コロイド粒子からなる群から選択される、請求項5又は6に記載の検査デバイス。
【請求項8】
前記試料中に存在する目的の検体と反応する試薬、又は前記試料中に存在する目的の検体と結合する結合相手を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項9】
前記試薬又は結合相手が、前記試験流路内に配置されている、請求項8に記載の検査デバイス。
【請求項10】
前記結合相手が、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、又は、抗体若しくはその抗原結合フラグメントの多量体を含む、請求項8又は9に記載の検査デバイス。
【請求項11】
前記試薬又は結合相手が、粒子状であるか又は粒子と結合している、請求項8〜10のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項12】
前記試薬又は結合相手は、目的の検体が存在するとき、前記試験流路に沿った試料液体の流動を妨げる又は遅延させるのに十分な凝集を引き起こす、請求項8〜11のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項13】
前記検査の結果を示すインジケータ部位を更に備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項14】
前記インジケータ部位が前記連結部位の下流に設けられている、請求項13に記載の検査デバイス。
【請求項15】
インジケータ部位が前記連結部位の上流に設けられている、請求項13に記載の検査デバイス。
【請求項16】
インジケータ部位が前記試験流路と前記参照流路の両方に設けられている、請求項15に記載の検査デバイス。
【請求項17】
1つ以上の通気孔が前記連結部位の下流に設けられており、それによって、液体を前記試験流路と前記参照流路に沿って前進させるのに、前記通気孔を通して空気又は他の流体を排出することが必要である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項18】
前記検査結果に対して二者択一の結果を提供する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項19】
妊娠試験デバイスであり、前記目的の検体がhCGを含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の検査デバイス。
【請求項20】
実質的に前述され、添付の図面に示されているような検査デバイス。
【請求項21】
液体試料中の目的の検体の存在および/又は量を検出する方法であって、前記液体試料を請求項1〜20のいずれか一項に記載の検査デバイスの前記試料塗布領域に塗布する工程、および、前記検査結果を示す又は記録する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501876(P2010−501876A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526157(P2009−526157)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003091
【国際公開番号】WO2008/025945
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(302044591)インバーネス・メデイカル・スウイツツアーランド・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (38)
【Fターム(参考)】