説明

流体ディスペンサ

粉末状の流体を投与するための流体ディスペンサであって、前記ディスペンサは、移動可能な駆動壁(22)とスプレー開口部(53)とを備えた流体容器(23)を有し、特徴となるのは、当該容器は気体または粉末状の流体を浸透させるのに適した多孔性素材の部品(4)を格納していることである、という前記流体ディスペンサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状の流体を投与するための流体ディスペンサであって、移動可能な駆動壁とスプレー開口部とが設けられた流体容器を有する、という前記ディスペンサに関する。「粉末」という語は、細かい粒子状の固形物であって、流体の力学的および動的性質を有するならば(すなわち、流れ、スプレーすることができ、そして空間を満たすならば)、いかなるものをも示す。本発明は、さらに具体的に言えば、香水、化粧品、さらには実に薬品の分野に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
ディスペンサを駆動するためには、移動可能な駆動壁に圧力を加え、それによって容器の動作容積を小さくし、容器に格納された粉末に圧力を加えさえすればよい。こうした圧力の影響を受け、粉末はスプレー開口部の方へ送られ、その先で粉末はスプレーされた流体の噴流の形で投与される。流体が気体(たとえば空気)を格納していることが効果的であり、この気体は、粉末をススプレー開口部の方へ運び、そしてその先ではスプレーされた形で運ぶ、という運搬手段として働く。
【0003】
スプレー開口部の出口において、連続的、かつほぼ一定の投与を確実にするためには、気体に対する粉末の割合をほぼ一定にする必要がある。残念なことに、粉末は容器の内部で動いたり、スプレー開口部から遠い方の側または同開口部に近い側に堆積したりする可能性がある。したがって、容器内部における粉末の位置に応じて、スプレーされた流体の噴流に含まれる粉末の程度は変化する。
【0004】
従来技術において、特許文書US―2002/0190081号では、流体製品(粉末タイプでもよい)を格納する容器を有する型の、変形可能な駆動壁を備えたディスペンサについて説明している。また、その容器は、流体製品を浸透させるのに適した多孔性素材の部品を格納している。容器の容積のうち多孔性素材の部品が占める部分は小さいため、粉末は容器の内部で多孔性素材の部品の外部に堆積することがある。結果として、スプレーは一定ではなくなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、スプレー開口部の出口における一定でないスプレーに関するそうした問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明は、粉末状の流体を投与するための流体ディスペンサであって、前記ディスペンサは、移動可能な駆動壁とスプレー開口部とを備えた流体容器を有し、当該容器は気体または粉末状の流体を浸透させるのに適した多孔性素材の部品を格納しており、特徴となるのは、多孔性素材が、容器の容積の大部分を占めていることである、という前記流体ディスペンサを提供する。したがって、粉末は、容器内部でセルの中にほぼ均一な形で3次元に分散する。こうして、粉末は容器の中の特定の位置において決して堆積しないようになる。さらに、多孔性素材の部材は、気体および気体によって運ばれる粉末のためのバッフルの役目を果たす。多孔性素材の部品のオープンセルは、圧力を受けた気体によって運ばれる粉末を送り出すチャネルを有する。毛細現象によって多孔性素材の部材に滲み込む液体状の流体と違い、粉末状の流体は、多孔性素材の素材を作っているオープンセルの内壁によって保持され、そのため重力により堆積する、という事態は防止される。粉末状の流体は、毛細現象に反応しない。したがって、多孔性素材の部材は、吸収スポンジとして使用されるのではなく、むしろ、均一な3次元の散布を形成するように、粉末の細かい構成粒子を容器のほぼ全体にわたって均一な状態で保持するための保持体として使用される。多孔性素材の部品は、このように重力の影響を受ける粉末のための段の付いた保持体として働く。
【発明の効果】
【0007】
効果的な構成として、多孔性素材の部品は、スプレー開口部の近傍まで延びていることとする。変形例において、多孔性素材の部品を混合チャンバによってスプレー開口部から隔てることもできる。
別の特徴によれば、多孔性素材の部品は弾性変形可能であることとする。
効果的な構成として、多孔性素材の部品は駆動壁の下で延びており、そのため、駆動壁の移動中に変形されることとする。この場合、多孔性素材の部品は、容器の駆動壁を休止位置まで弾性的に押しやることにしてもよい。
本発明の別の特徴によれば、多孔性素材の部品は、容器の容積のほぼ全てを占めていることとする。また、変形例において、多孔性素材の部品は、容器の容積の半分以上、効果的な構成として60%、好ましい構成として75%を占めていることとする。
本発明の別の特徴によれば、容器の中の粉末状の流体ほぼ全てが多孔性素材の部材に浸透し、その内部にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、非限定的な例として本発明の実施の形態を示す添付図面を参照しながら、本発明に関してさらに詳細に説明する。
図に示された粉末ディスペンサは、4つの構成部品、すなわち成形シート2、密封下側シート3、多孔性素材の部品4、そしてエンドピース5から作られている。必至ではないが、エンドピース5を省くことも可能である。成形シート2は平らな周縁マージン21と実質的にドーム形の盛り上がった状態の中央部分とを形成している。密封下側シート3は、平らな周縁マージン21において成形シート2に耐漏洩様態で接続されており、盛り上がった状態の中央部分において形成される空間を分離している。生じた空間の殆どが粉末のための容器23として働く。当然のことながら、シール処理されて一体になったシートを使用せず、全く異なった方法で流体容器を作ることも可能である。たとえば、容器は可撓性のある壁を有する貯蔵器で作ることもできる。可撓性のある壁を有する貯蔵器は、圧縮可能な素材で作られた小さなフラスコの形、あるいは自由に変形が可能なシートで作られた可撓性ポーチの形にすることができる。容器の構造は、本発明にとって重要ではない。しかし、本発明の説明のため使用し図示する例において、ディスペンサはシール処理されて一体になった2枚のシートで作られており、その間に粉末容器を形成している。
【0009】
本発明の特徴によれば、投与開口部はシート2、3によって形成されておらず、シート2、3の間に配置されたエンドピース5に形成されている。これは図3からさらにはっきりと見て取れる。たとえば、シート2、3はシール処理によってエンドピース5に固定すればよい。図3から見て取れるように、成形シート2は部分27においてエンドピース5に固定されている。効果的な構成として、エンドピース5には、少なくとも部分的に溶解し、成形シート2とエンドピース5との間の粘着を強める働きをする密封リブ54が設けられている。また、エンドピース5には、参照番号23で全体が示される容器に通じるスプレー開口部53が形成されている。非限定的な実施の形態において、混合チャンバ55がスプレー開口部53のすぐ上流の位置に置かれている。
【0010】
本発明において、流体容器23は、粉末状の流体を浸透させるのに適した多孔性素材の部品4を格納している。効果的な構成として、流体のほぼ全てまたは全てが、多孔性素材の部品4に浸透し、その内部にある。図2および3にあるように、混合チャンバ55が設けられている場合は、少量の粉末がその混合チャンバに存在することがあり得る。実際には、混合チャンバ55は多孔性素材の部品4をスプレー開口部53から隔てている。混合チャンバ55は、渦巻きの生成を可能にし、そうした渦巻きは粉末をスプレー開口部53を通って運ぶための誘導役となる。多孔性素材の部品4には粉末が浸透されているが、さらに気体(たとえば空気)も含まれている。効果的な構成として、多孔性素材の部品4の内部に格納されている気体の割合は、粉末の量よりもはるかに大きい。多孔性素材の部品4はオープンセル型、すなわちそれぞれが通じ合う絡み合ったチャネルの迷路から作られており、当該部品は全体的に浸透性を有するようになっている。多孔性素材の部品4が少量の粉末しか含んでいない場合には、オープンセルは塞がれていない。このことは、気流がセルを通過し、それによって粉末をスプレー開口部53の方へ運搬することを可能にする。
【0011】
盛り上がった部分は、成形シートから形成されており、効果的な構成として、移動可能な駆動壁22を形成している。この例において、たとえば手の親指を使って押さえ込む形で圧力を加えることによって駆動壁は変形され、移動される。従って、駆動壁22を押さえ込むことによって容器23の内部の容積は小さくなり、それによって容器に格納されている気体に圧力を加えることができる。結果として、気体は、粉末の一部を運びながらスプレー開口部53の方へ送られる。効果的な構成として、駆動壁22は形状記憶を有し、それによって、容器の最大容積を規定している休止位置に戻ることが可能である。この休止位置は図2に示されている。駆動壁をその休止位置に戻すことを可能にするためには、弾性戻し手段が必要である。この弾性戻し手段は、駆動壁22に直接形成してもよい。たとえば、押さえ込む形での圧力がなくなるとすぐに単独で自動的にその休止位置に戻る、という形状と弾性とを駆動壁に与えるだけでよい。また、変形例において、弾性戻し手段は容器23の内部にある多孔性素材の部品4によって作られている、という構成も可能である。その場合は、特別に成形されたシート(たとえば、熱成形タイプ)を使用する必要さえない。単に、可撓性のあるシートを使用し、そのシートが容器23の内部の多孔性素材の部品4の存在によって成形される、という形が可能である。この場合、駆動壁22は、完全に駆動壁のすぐ下にある多孔性素材の部品の弾力性だけによって、その休止位置に戻される。そこで、ディスペンサは、単に可撓性のある変形可能なポーチの内部に有された弾性変形可能な多孔性素材の部品でのみ構成することができ、形状記憶を持たせる必要はない。エンドピース5を省くことさえできる。この場合、スプレー開口部は2枚のシートのうち一方に直接、またはシートとシートの間に形成される。
【0012】
多孔性素材の部品4は、容器23の容積の全てを占め、スプレー開口部53に直接接触するまで延びていることにしてもよい。変形例において、多孔性素材の部品は、容器のうちより小さな割合(たとえば容器の半分、60%、さらには75%)を占めることにしてもよい。いずれにせよ、多孔性素材の部品が容器の容積の大部分を占めている、という構成が好ましい。
【0013】
本発明の説明のため使用した例において、使用前には、スプレー開口部53は、シール処理されて一体になった成形シート2と密封シート3とによって構成された取り外し可能な密封部材20によって閉じられている。取り外し可能な部材20は、エンドピース5のすぐ前を通る折り線24に沿ってディスペンサの他の部分から隔てることができ、この位置において、部材20は、密封壁25をスプレー開口部53に面する形で形成している。したがって、使用前には、容器23は完全に外部から離てられている。さらに、取り外し可能な部材が所定位置にあって、スプレー開口部53を閉じている限り、多孔性素材の部品4は、その最大圧縮状態に近い状態まで圧縮されている、という構成まで可能である。この場合は、取り外し可能な密封部材20が取り除かれた時点にだけ、多孔性素材の部品4がスプレー開口部53経由で容器内に取り込まれる空気によって拡張する。したがって、ディスペンサは、取り外し可能な密封部材20が取り除かれるまで、特に平らまたは圧縮された形を有する。さらに、こうした弾性変形可能な多孔性素材の部材は、液体ディスペンサにも使用でき、その際には、移動可能な駆動壁がその休止位置に戻ることができるよう弾性戻り機能を与えることが目的となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の流体ディスペンサの平面図である。
【図2】図1のディスペンサの縦断面図である。
【図3】図2のディスペンサの前方部分の拡大図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の流体を投与するための流体ディスペンサであって、前記ディスペンサは、移動可能な駆動壁(22)とスプレー開口部(53)とを備えた流体容器(23)を有し、当該容器は気体または粉末状の流体を浸透させるのに適した多孔性素材の部品(4)を格納しており、
特徴となるのは、
多孔性素材が、容器の容積の大部分を占めていることである、
という前記流体ディスペンサ。
【請求項2】
多孔性素材の部品(4)は、スプレー開口部(53)の近傍まで延びていること、
を特徴とする請求項1に記載のディスペンサ。
【請求項3】
多孔性素材の部品(4)は弾性変形可能であること、
を特徴とする請求項1または2に記載のディスペンサ。
【請求項4】
多孔性素材の部品(4)は駆動壁(22)の下で延びており、そのため、駆動壁の移動中に変形されること、
を特徴とする請求項1、2、または3のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項5】
多孔性素材の部品(4)は、容器の容積のほぼ全てを占めていること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項6】
多孔性素材の部品(4)は、容器の容積の半分以上、効果的な構成として60%、好ましい構成として75%を占めていること、
を特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項7】
多孔性素材の部品(4)は、容器の駆動壁(22)を休止位置まで弾性的に押しやること、
を特徴とする請求項3に記載のディスペンサ。
【請求項8】
多孔性素材の部品(4)は、混合チャンバ(55)によってスプレー開口部(53)から隔てられていること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項9】
容器の中のほぼ全ての粉末状の流体は、多孔性素材の部品(4)に浸透し、その内部にあること、
を特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のディスペンサ。
【請求項10】
多孔性素材の部品は、オープンセル型であって、粉末は、多孔性素材の部品全体にわたってほぼ均一な状態でセルの内部に保持されていること、
を特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のディスペンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−511404(P2006−511404A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−563284(P2004−563284)
【出願日】平成15年12月19日(2003.12.19)
【国際出願番号】PCT/FR2003/003834
【国際公開番号】WO2004/058595
【国際公開日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(502343252)バルワー エス.アー.エス. (144)
【Fターム(参考)】