説明

流体ポンプの使用

本発明は、流体ポンプを含んでなる移動手段を使用して、前記少なくとも1つの材料の輸送を行うことを含んでなる、溶融状態にある少なくとも1つの材料を第1の場所から第2の場所に輸送する方法を提供する。好ましいタイプの流体ポンプは逆流切り替え器(RFD)ポンプである。好ましくは、溶融状態にある少なくとも1つの材料は、少なくとも1つの溶融無機塩または溶融金属、好ましくは塩化カリウムまたは塩化リチウムまたはこれらの共融混合物混合物などのアルカリ金属ハロゲン化物を含んでなる。この材料は、通常、200℃を超える温度で溶融状態にある。本発明の方法による使用に好ましいガスは乾燥アルゴンである。特に好ましい態様においては、本発明の方法は、原子力工業の種々の用途において乾燥条件で溶融塩を輸送するのに適用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料の輸送、特に溶融材料の輸送に関する。特に、本発明は、溶融状態にある材料の輸送に関し、そしてこの目的に簡単かつ信頼できる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
溶媒および反応媒体の両方として溶融材料の使用に対する要求が頻繁に業界に存在する。当然、このような材料の使用は複数の容器の使用を要求し、それゆえ場所の間の材料の輸送を必要とする場合が存在する。技術的には、溶融材料を溶融状態に保つために、運転の間高い温度を維持しなければならないということが一般的なケースであるので、このことは問題を引き起こす可能性がある。このように、使用される輸送方法は、いかなる地点においても、材料の固化を生じる温度低下を生じてはならないということが必要である。
【0003】
更には、化学反応は、極端な環境において所望の反応の達成を完全に妨害し得る、望まれない副反応および加水分解を回避するために、空気、特に雰囲気に関連する湿気を排除した不活性雰囲気中で実施することが必要とされるということがしばしばあるケースである。加えて、加水分解および/または分解と関連する問題を回避し得るために、湿気敏感性成分は、雰囲気との接触から常時保護されなければならない。
【0004】
このような困難な問題は実験室規模では頻繁に遭遇されるが、通常、標準の実験室の手順を用いて窒素ガスの不活性ブランケットを設けることにより、このような環境中でかなり容易に克服され得る。しかしながら、湿気敏感性材料を商業的規模で取り扱うことが必要な場合には、潜在的な困難な問題が激化し、そして重大な問題が起こらないためには、注意深く工夫された手順が使用されなければならない。このことは、このような材料を工業的規模の装置およびプラント機械中で輸送しなければならない場合、装置への損傷ならびに材料の損失が起こる可能性のある場合には特に当てはまる。
【0005】
この文脈において、本発明者らは、プラント規模でのいわゆる溶融塩の取り扱いに伴う困難な問題に特に取り組んできた。これらの材料は、例えば溶融塩を高い温度(それぞれ、773および1000K)で使用する、Argonne National Laboratoryの電気金属冶金処理法(ANL−EMT)およびDimitrovgrad SSC−RIAR法による照射済の核燃料再処理/廃棄物コンディショニングにおいて広範な使用を見出す。溶融塩は、軽水炉(LWR)からの照射済の燃料の再処理での使用にも使用されてきた。溶融塩の更なる大きな関心は、電力、ならびに燃焼アクチニドおよび長寿命の核分裂生成物を生じる、溶融塩反応器における潜在的な使用に集中してきた。
【0006】
これらの溶融塩は、通常、高温でのみ液体である塩の混合物である。伝統的には溶融塩は150℃以上で、更に頻繁にはこれよりずっと高い温度で溶融し、そしてこのような塩は通常無機カチオンから構成される。このように、工業用用途での溶融塩の使用は広く行き渡っており、そして工業用規模でのこのような材料の取り扱いと、輸送に対する要求が頻繁に存在するということが先行技術を考慮すると判る。
【0007】
溶融塩の取り扱いに対する要求の特定の例は、太陽熱発電所におけるポンプ、特に遠心ポンプによる溶融塩の移動を含み、そこでは146℃で溶融する水酸化ナトリウムと水酸化カリウムおよび窒化物を含んでなる混合物が通常使用され、そして溶融塩が500℃までの温度で取り扱われるという要求が存在する。別法としては、225℃で溶融し、そして高い温度で増加された安定性を示す、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの単純な混合物が使用され得る。
【0008】
それゆえ、工業用用途における溶融塩の満足な取り扱いに対するしかるべき鍵となる要求が存在するということは明白であろう。勿論、第一に、溶融物を低粘度とするために、塩の融点以上で、そして望ましくは好適には高い温度で、好ましくは500°〜550℃の範囲で塩を加熱し、そして溶融する能力のある加熱システムが提供されるということが必要である。更には、熱損失を低下し、そして塩の凝固を生じる可能性のあるコールドスポットが発現しないということを確実にするために、この装置は、容器と配管の周りに好適な絶縁を組み込んでいなければならない。
【0009】
しかしながら、溶融塩の若干の凝固が起こる場合には、装置は以降の再溶融運転に耐える能力があるということが必須であり、そして装置の設計がこのような考慮を斟酌するということが重要である。
【0010】
塩の容積は固体から溶融状態まで変化するときに20%増加し、そこで塩の溶融時の配管あるいは容器の変形の破裂を防止するために、ゾーン加熱システムは必須であるということも一般に見出されている。変形を回避するための容器のゾーン加熱の代替策として、必然的に更に費用を要する選択肢ではあるが、円錐形容器などの改変された設計を有する容器を提供することが可能である。
【0011】
溶融塩の吸湿性性状に鑑みて、塩化水素ガスの放出を生じ、結果としてリグの極めて迅速な腐食を特に高い温度で促進するので、塩が湿気を吸収することを防止するために乾燥環境が存在するということを確実にするということも極めて重要である。このように、不活性雰囲気が装置内に設けられ、したがって、好ましくは不活性ガスまたは不活性ガスの混合物を用いる不活性化系が装置中に組み込まれるということが必須である。窒素はウラン金属と反応して、窒化ウランを形成する潜在力を有するので、通常、前記不活性ガスは、ウラン金属を取り扱う核用途においてはアルゴンを含んでなる。
【0012】
望ましいこととしては、溶融塩を取り扱う系は、前記材料の安全かつ効率的な取り扱いを促進する種々の他の更なる特徴を組み込むようにもなされている。
これらの特徴のなかには次のものが含まれる。
・圧力および真空レリーフ系;
・不活性化系の質をモニターするためのppm範囲のOおよびHOの濃度を検出するガス分析器;
・耐腐性および耐熱性金属部品;
・耐熱性ガスケット、例えばグラファイト含有ガスケット;
・配管の応力を最小とし、損傷または破断を防止するために、例えばベント配管の部分を挿入することにより温度による配管の膨張を補償する設計;および
・インターロックを提供して、動作不良を防止し、そしてシーケンス化された加熱を確実にし、このようにして、例えばリグ中の種々の場所の塩の温度が所定のしきい値、すなわち融点温度以上でない場合には、使用者がいかなるポンプも作動させないようにするか、あるいは例えば、第1の段階として底部被包が加熱されるという可能性を無くすることにより、正しい加熱シーケンスが追従されているということを確実にするための監視制御とデータ取得システム(SCADA)。
【0013】
上記の要求に照らして、本発明者らは、溶融材料を安全かつ効率的に取り扱いそして輸送するために使用され、そして溶融材料の工業的な取り扱いおよび輸送において更に一般的な用途を見出し得る、装置および方法を提供することを追求してきた。
【0014】
種々の液体を移動するための極めて多数の工業的用途において流体ポンプの使用が既知である。特に、原子力工業においては、このようなポンプは、外周温度において流体の放射性材料を移動することにおいて用途を見出し、そしてこのようなポンプは流体と接触する可動部分を持たず、そして結果として、前記手順はすべてポンプの外側部分で行われるという事実により、例えばメンテナンス手順時の流体の完全な封じ込めを容易にしてきた。このことは、放射性流体の場合には関連する材料の極めて毒性の性状により極めて重要な考慮である。このような用途の例は、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4で開示されている。
【特許文献1】GB−A−2070699
【特許文献2】GB−A−2122262
【特許文献3】GB−A−2220709
【特許文献4】GB−A−2283065
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
いくつかのタイプの流体ポンプが使用可能であり、特別な例はダイオードポンプと逆流切り替え器ポンプである。すべてのこれらのポンプの共通の特徴は、これらが空気または窒素などの圧縮ガスを動力源として使用し、そしてサイクル作動のガス圧力パルスにより駆動されるということである。しかしながら、極めて高い温度で流体を輸送するためにこのようなポンプを使用することは報告されておらず、特にこのような条件下での溶融材料の輸送への適用は文書にされていない。
【0016】
このように、本発明者らは、溶融材料を輸送するための新しい方法を提供することを追求してきた。特に、本発明は、核物質再処理で使用される溶融塩の輸送に重点を当てた、150℃を超える、更に通常には200℃以上の融点の概ね吸湿性の無機塩である溶融塩を輸送するための方法を提供することを追求する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このように、本発明によれば、流体ポンプを含んでなる移動手段を使用して、前記少なくとも1つの材料の輸送を行うことを含んでなる、溶融状態にある少なくとも1つの材料を第1の場所から第2の場所に輸送する方法が提供される。
【0018】
通常、溶融状態にある前記少なくとも1つの材料は、少なくとも1つの溶融無機塩あるいは溶融金属を含んでなる。好ましい溶融無機塩は、無機ハロゲン化物、最も好ましくは塩化カリウムまたは塩化リチウムまたはこれらの共融混合物混合物などのアルカリ金属ハロゲン化物を含んでなる。前記材料は、通常、150℃を超える、更に通常、200℃を超える温度で溶融状態にある。場合によっては、溶融状態にある前記少なくとも1つの材料は、スラッジ、微粉または他の懸濁された材料を更に含んでなり得る。
【0019】
前記方法は、前記少なくとも1つの溶融材料が含まれていて、前記第1の場所から前記第2の場所まで前記材料を動かし、持ち上げ、移動し、あるいはポンプ移送する、流体ポンプを装置中に設けることを含んでなる。
【0020】
輸送対象の少なくとも1つの材料が湿気および/または酸素に敏感であるということは頻繁にあるケースである。このことは、溶融塩などの吸湿性材料の場合には確かに正しく、そしてこのような場合には、処理の間乾燥条件と乾燥雰囲気を維持することが必要である。このように、本発明の好ましい態様は、水性汚染物またはいかなる水性材料も含まない乾燥条件において溶融状態にある少なくとも1つの材料を第1の場所から第2の場所に輸送する本発明による方法が提供される、非水性系を想定する。
【0021】
酸素敏感性材料の場合には、勿論、不活性雰囲気を設けなければならないということが要求である。前記のように、これらの流体ポンプの共通の特徴は、これらが空気または窒素などの圧縮ガスを動力源として使用し、そしてサイクル作動のガス圧力パルスにより駆動されるということである。それゆえ、必要な場合には、加圧ガスは、乾燥ガスまたは不活性ガスまたは乾燥し、かつ不活性であるガスを含んでなり得る。前記ガスはガスの混合物を含んでなり得、そして酸素敏感性を考慮しなくともよい場合には、圧縮空気、好ましくは乾燥圧縮空気が好適なガスを提供する。好ましい不活性ガスはアルゴンであり;乾燥アルゴンは実質的にすべての用途に好適である。
【0022】
場合によっては、ガスとの接触あるいは輸送時に溶融材料の一部の固化が起こり得る可能性を回避するために、このガスは、使用前に溶融物と実質的に同じ温度まで加熱され得る。溶融材料と接触する前にガスが高い温度の状態を保つことを確実にするために、溶融材料を含有する装置の中にガスを導入する経路も加熱され得る。しかしながら、多数の用途において、このような加熱が存在しない場合に溶融材料の固化は起こらないので、ガスまたは経路を加熱することが必要であることは見出されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
最も単純なタイプのポンプは逆流切り替え器(RFD)ポンプであり、そしてこれは本発明の用途に特に適している。RFDポンプはガス制御器、装填容器、逆流切り替え器および排出配管を含んでなる。このポンプの運転は、装填容器に圧縮ガスを駆動相および再充填相の二相で繰り返し供給することによる。
【0024】
駆動相時には、圧縮ガスはガス制御器から装填容器に通され、これによって、低減断面積の領域において流れ速度の増大が起こるRFDから溶融材料が押し出され、更なる溶融材料を連結された供給タンクから吸い出す領域において圧力の低下と、排出配管からの供給が生じる。この相は装填容器が空になるまで続き、空になるとポンプは溶融材料が供給タンクからRFDに入って、装填容器を再充填する再充填相となる。必要な場合には、充填速度を増強するために不完全な真空がガス制御器経由で装填容器に場合によっては印加され得る。装填容器が充満したならば、ポンプは再び駆動相となり、そして相はこのようにして繰り返されて、サイクル作動のポンピング作用を生じる。
【0025】
RFDポンプは供給タンクの下部に貫入してフィード容器の外部に取り付けられ得るか、あるいはスペースおよび蓋貫入が許容される場合には、ポンプはタンクの内部に位置し得る。代替の形のRFDポンプは、ガスピストン内に搭載されるRFDを使用し、そして必要とされる最大の蓋貫入を最小とする浸漬RFDを含んでなり;このような形のポンプは、ポンプを点検ポート経由で供給タンクの中に挿入することが可能であるので、スペースまたはタンクの下部貫入が制約される場合の特別な使用のものである。
【0026】
流体ポンプの構築に好適な材料は、これらが接触しなければならない生成物の性状により主として決定される。明らかであるが、この材料は、これらの生成物による攻撃に耐久性のあるものでなければならないことは必須である。例えば、溶融塩の場合には、特に高い温度あるいは圧力での一部の溶融塩についてはRFD内の低減断面積の領域中で生じる増大された流体流れは、ある条件下で起こる若干の腐食を生じる可能性があるが、炭素鋼が一般的に満足であるということが判った。このような場合には、この状況は、RFDの製造において更に高耐久性材料を使用することにより救済され得、好適な例はハステロイまたはシリコンカーバイドセラミックを含む。
【0027】
溶融塩の移動を取り扱う場合には、流体ポンプは、塩と直接接触する可動部分がなく、慣用のポンプでしばしば生じる磨耗および腐食の問題を最小とするという利点を有する。
【0028】
運転においては、吸引駆動サイクルを繰り返し加える場合、流れを得るのためには与えられる溶融物の密度に対して好適なRFDポンプの設計および選択が必須である。更には、材料を溶融状態に維持するためには、装填容器およびRFD装置の好適な加熱が必須である。RFD装置の運転は、少なくとも1つの駆動ジェットポンプと少なくとも1つの吸引ジェットポンプ、または真空と加圧ガスの可用性を含んでなる少なくとも2つのジェットポンプを設けることに依存する。
【0029】
好ましくは、満足な流れを得、そして過ブローまたは吸引および配管の供給端での溶融材料の噴霧の生成を回避するためには、流体ポンプは制御器を含んでなり、駆動相と吸引相のタイミングをとるようになされる。明らかなことであるが、加圧ガスを装置に供給するにしたがって、装置中の圧力が増加し、それゆえ本発明の方法の実施時には望ましくない圧力変動を回避しなければならないということは重要であるので、制御器を調整して、駆動時間と吸引時間をこれらの要求にしたがって設定することが熟練者により最も満足に行われる運転である。
【0030】
本発明の方法による使用のための流体ポンプのもう一つの好ましい特徴は、溶融物を過吸引した場合に、溶融物がジェットポンプに到達する可能性を回避するために、装填容器と前記少なくとも2つのジェットポンプの各々の間にガスレッグを設けることを想定する。好ましくは、前記ガスレッグの各々は少なくとも8mの高さを有する。
【0031】
運転時、装填容器の過充填を回避するように、圧力が40mバール以下であるということを確実にするために、圧力レリーフ調整が行われることも好ましい。装填容器の自己充填は主容器中の陽圧により起こる。装填容器の自己充填を許容するように吸引時間の減少を可能にするのに、施設が使用可能であるということも好ましい。
【0032】
本発明の方法はある範囲の溶融材料の輸送に適用可能である。200°〜1200℃の範囲の融点を有する溶融塩または溶融塩の組み合わせ物を特に挙げ得る。しかしながら、この溶融材料は次の少なくとも1つも含んでなり得る。
・溶融状態にある金属、通常、ナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、カドミウム、ウランまたは他のアクチニド;
・例えば鋳造あるいは製鋼工業で一般に使用されるような、溶融合金;
・範囲200°〜1200℃の融点を有する化学的な化合物あるいは混合物、例えばLiCl/KCl共融混合物またはNaOH/炭酸ナトリウム共融混合物(m.p.284℃を有し、そして高温化学および廃棄物の処理または分解に使用される);
・200℃を超える融点を有するポリマー。
【0033】
本発明の方法の適用が成功するには、輸送対象の材料が溶融状態において所定の装置中で第1の場所から第2の場所まで流動するのに充分に可動性であるということを必要とする。結果として、材料の粘度はある限界を超えるべきでないということが必要である。一般に、粘度が20cpを超えない場合、最適な結果が得られるということが見出され、そして好ましくは、粘度は15cpを超えない。このような状況においては、ある範囲の溶融材料の輸送は、0.1と101/秒の間の範囲の速度で達成され得るが、厳密な速度は、勿論、この範囲の上限を制限する配管の直径および流体ポンプの効率などのパラメーターにしばしば依存する。
【0034】
このガスが溶融材料と反応しないか、あるいは吸収されないために、供給されるガスが乾燥そして/あるいは不活性でなければならないということはしばしば好ましいということが前出事項から理解されるであろう。しかしながら、ガスが前記材料と反応するか、あるいはこれにより吸収されるということが許容し得るか、あるいは更には望ましい状況が想定され得る。このように、本発明は、溶融材料を特定のガスと反応させるか、あるいはこれにより飽和することが必要とされ得るので、非反応性ガスの使用に限定されない。
【0035】
本発明の方法は、溶融材料を輸送するための単純で、信頼でき、そして繰り返し得る手段を提供し、そして更なる可動部分を設けることを必要としない。運転においては、例えば遠心ポンプにより供給される機械的エネルギーの結果として観測される温度の上昇の場合のように、溶融材料の更なる加熱は行われない。
【0036】
特に好ましい態様においては、本発明の方法は、高い温度における溶融塩の輸送、特に塩化リチウム、塩化カリウムおよびこれらの共融混合物混合物などの溶融無機ハロゲン化物の輸送に成功裏に適用され得る。この方法は、原子力工業、特に核燃料再処理における種々の用途で、溶融塩が例えば、種々のランタニドおよびアクチニド金属およびこれらの化合物、または種々の核分裂生成物を含む、多数の放射能を示す種により汚染される場合に、このような溶融塩の輸送において特に有用であり、そして前記材料の輸送に対して安全かつ便利な手段を提供する。
【0037】
範囲を限定するものでないが、添付の図面を参照することにより、本発明の方法が更に図示される。
【0038】
最初に図1を見ると、溶融塩ダイナミックリグでの使用に好適な、内部搭載の配列の逆流切り替え器ポンプの簡略化された概略図が示される。この装置はフィード容器(1)を含んでなり、その中に装填容器(2)と逆流切り替え器(3)が位置する。フィード容器および装填容器は溶融塩(4)を含有する。逆流切り替え器(3)は、配管(5)により装填容器(2)に接続され、そして更なる配管(6)は、逆流切り替え器(3)からフィード容器(1)を出る。配管(7)は、装填容器(2)を駆動ジェットポンプ(8)に接続し、これは、次には吸引ジェットポンプ(9)と第1の制御バルブ(10)に結合される。吸引ジェットポンプ(9)は、第2の制御バルブ(11)に接続され、そして配管(12)経由でベント(13)に接続される。配管(12)は、圧力レリーフバルブ(14)によりフィード容器(1)にも結合される。バルブ(14)は、フィード容器(1)を過圧力から保護する役割をし;真空レリーフバルブ(図示せず)も過圧力に対する保護の更なる手段としてフィード容器(1)に取り付けられている。図1の装置は、特に図示されないアルゴン供給、好適な制御ユニットおよび他の制御バルブも含む。
【0039】
運転においては、圧力下で供給されるアルゴンは、第1の制御バルブ(10)および駆動ジェットポンプ(8)から装填容器(2)に通され、流体を配管(5)から逆流切り替え器(3)に押し込み、そして更なる流体をフィード容器(1)から吸い出させる。次に、この流体は配管(6)から供給され、そして異なる場所まで輸送される。このサイクルのこの部分は、通常、ほぼ15秒の期間の間であるが、駆動相を含んでなり、そして装填容器が空になるまで続く。
【0040】
その後、再充填相においては、流体は、逆流切り替え器(3)からフィード容器(1)に通り、装填容器(2)を再充填する。好ましくは、不完全な真空が吸引ジェットポンプ(9)により配管(12)経由で装填容器(2)に印加されて、充填の速度を増進させる。サイクルのこの部分は、一般にほぼ45秒で完結し、そこで全サイクルは完結するのに1分のオーダーを要し、そして溶融材料の移動を完結するのに必要な回数繰り返される。
【0041】
図2に移ると、時間に対する(a)塩レベルおよび(b)リグ圧力のプロットを示す、溶融塩についての逆流切り替え器の延長された試験の結果が図示されている。プロット上のラベル1〜5は、各駆動−吸引サイクルの間の種々の静止時間に相当する。運転中同時に塩レベルの観察される変化をリグ圧力と比較すると、溶融材料がRFDによりポンプ送液されたということを推定し得る。
【0042】
このように、例えば、ラベル3および4により示されるシリーズの終結時に、RFDポンプを停止すると、溶融物のホールドアップが受器および配管中で減少するのにしたがって、すなわち溶融物がポンピングタンクの中に逆流するにしたがって、ポンピングタンク(V2002)中のレベルは上昇する。逆に、ラベル2により示されるシリーズの開始時にRFDポンプを開始すると、溶融物のホールドアップは配管中で増加し、すなわち主タンクは部分的に空になる一方で、主タンク中のレベルは低下する。更に一般的には、2つの容器の間の閉ループ系において、ポンピングタンク中の溶融物レベルは、主に溶融物の流れ速度の関数として変わる。しかしながら、図2の詳細な解析から熟練者には明白になるように、これらの変動は、しばしば、この明細書で説明されるシャットダウンおよびスタートアップの例よりも複雑である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の方法による溶融塩の輸送で使用するための内部搭載の配列の逆流切り替え器流体ポンプの概略図を示す。
【図2】本発明の方法を溶融塩の輸送に適用することにより得られる結果のグラフ表示を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体ポンプを含んでなる移動手段を使用して、前記少なくとも1つの材料の輸送を行うことを含んでなる、溶融状態にある少なくとも1つの材料を第1の場所から第2の場所に輸送する方法。
【請求項2】
前記流体ポンプがダイオードポンプを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体ポンプが逆流切り替え器ポンプを含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記逆流切り替え器ポンプがガス制御手段、装填容器、逆流切り替え器および排出配管を含んでなり、前記ガス制御手段が駆動相と再充填相を含んでなる二相での装填容器への加圧ガスの繰り返された供給を容易にする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
再充填相時に、不完全な真空がガス制御手段経由で装填容器に印加されて、充填速度を増強する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記逆流切り替え器ポンプがフィード容器の内部に位置する、請求項3〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
前記逆流切り替え器ポンプがフィード容器の外部に取り付けられ、供給タンクの下部に貫入している、請求項3〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
前記逆流切り替え器ポンプが浸漬逆流切り替え器を含んでなる、請求項3〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項9】
前記ガス制御手段が少なくとも1つの駆動ジェットポンプと少なくとも1つの吸引ジェットポンプ、または真空と加圧ガスの可用性を含んでなる少なくとも2つのジェットポンプを含んでなる、請求項3〜8のいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
装填容器と前記少なくとも2つのジェットポンプの各々の間にガスレッグを設けることを更に含んでなる、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
前記ガスレッグの各々が少なくとも8mの高さを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記流体ポンプを構築する材料が炭素鋼を含んでなる、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記流体ポンプを構築する材料がハステロイまたはシリコンカーバイドセラミックを含んでなる、請求項1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項14】
前記材料が150℃を超える温度で溶融状態にある、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記温度が200℃を超える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
溶融状態にある前記少なくとも1つの材料の前記第1の場所から前記第2の場所への前記輸送が水性汚染物を含まない乾燥条件で行われる、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記加圧ガスが乾燥ガスを含んでなる、請求項4〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記加圧ガスが不活性ガスを含んでなる、請求項4〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
前記加圧ガスがガスの混合物を含んでなる、請求項4〜18のいずれか一つに記載の方法。
【請求項20】
前記加圧ガスが乾燥空気を含んでなる、請求項4〜17あるいは19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記加圧ガスがアルゴンを含んでなる、請求項4〜19のいずれか一つに記載の方法。
【請求項22】
前記加圧ガスが乾燥アルゴンを含んでなる、請求項4〜19あるいは21のいずれか一つに記載の方法。
【請求項23】
前記加圧ガスが使用前に溶融物と実質的に同じ温度まで加熱される、請求項4〜22のいずれか一つに記載の方法。
【請求項24】
溶融材料を含有する装置の中にガスを導入する経路が加熱されて、溶融材料と接触する前にガスが高い温度の状態を保つことを確実にする、請求項4〜23のいずれか一つに記載の方法。
【請求項25】
溶融状態にある前記少なくとも1つの材料が少なくとも1つの溶融無機塩または溶融金属を含んでなる、請求項1〜24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1つの溶融無機塩が少なくとも1つの無機ハロゲン化物を含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの無機ハロゲン化物が少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物を含んでなる、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのアルカリ金属ハロゲン化物が塩化カリウムまたは塩化リチウムまたはこれらの共融混合物混合物を含んでなる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記溶融無機塩が放射能を示す種により汚染されている、請求項25〜28のいずれか一つに記載の方法。
【請求項30】
前記放射能を示す種がランタニドあるいはアクチニド金属またはこれらの化合物または核分裂生成物を含んでなる、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも1つの溶融金属がナトリウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、カドミウム、ウランまたは他のアクチニドの少なくとも1つを含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの溶融金属が鋳造あるいは製鋼工業で一般に使用されるような溶融合金を含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
溶融状態にある前記少なくとも1つの材料が範囲200°〜1200℃の融点を有する化学的な化合物または混合物を含んでなる、請求項1〜13あるいは15〜30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項34】
前記混合物がNaOH/炭酸ナトリウム共融混合物を含んでなる、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
溶融状態にある前記少なくとも1つの材料が200℃を超える融点を有するポリマーを含んでなる、請求項1〜13あるいは15〜30のいずれか一つに記載の方法。
【請求項36】
溶融状態にある少なくとも1つの材料の粘度が20cpを超えない、請求項1〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記粘度が15cpを超えない、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの溶融材料の輸送の速度が0.1と10l/秒の間の範囲にある、請求項1〜37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
加圧ガスが溶融状態にある少なくとも1つの材料と反応せず、吸収されない、請求項4〜38のいずれか一つに記載の方法。
【請求項40】
加圧ガスが溶融状態にある少なくとも1つの材料と反応するか、あるいは吸収される、請求項4〜38のいずれか一つに記載の方法。
【請求項41】
溶融された塩化リチウム、塩化カリウムおよびこれらの共融混合物混合物の輸送に適用される場合の、請求項1〜40のいずれか一つに記載の方法。
【請求項42】
原子力工業における溶融塩の輸送に適用される場合の、請求項1〜41のいずれか一つに記載の方法。
【請求項43】
放射能を示す種により汚染されている溶融塩の輸送に適用される場合の、請求項1〜42のいずれか一つに記載の方法。
【請求項44】
前記放射能を示す種がランタニドあるいはアクチニド金属またはこれらの化合物または核分裂生成物を含んでなる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜44のいずれか一つに記載の方法の実施における流体ポンプの使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−538237(P2008−538237A)
【公表日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503588(P2008−503588)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001157
【国際公開番号】WO2006/103435
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願人】(506316546)
【Fターム(参考)】