説明

流体分析装置及び方法

本発明は、湿潤された基板が比較的低い気泡圧力を有するときでさえも、1つ又はそれよりも多くの結合材料を備える基板(10)を通じて1つ又はそれよりも多くの分析物を備えるサンプル流体(50)を反復的にポンピングすることを可能にする分析装置(1)及び方法を提供する。その上、装置(1)は、第一容積(16)と、第二容積(18)と、弁(24)並びにポンプ(20)を備える戻り流路(22)とを含む。ポンプ(20)は、サンプル流体(50)を基板(10)を通じてポンプ送りし、それによって、分析物が基板に結合することを可能にするために、第一容積(16)と第二容積(18)との間に圧力差を構築する。弁(24)を開放し、逆の圧力差を構築することによって、サンプル流体(50)は、戻り流路(22)を通じて基板(10)を迂回する。弁を閉塞した後、所望であるならば、装置は後続の周期の準備が出来ている。本装置及び本方法は、原則的に、如何なる量のサンプル流体の分析、気泡圧力に対する如何なる種類の基板の使用を許容し、よって、多角的であり頑丈である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、流体処理に関し、具体的には、分析のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明をより詳細に記載する前に、先ず、本発明をさらに理解するのを助け得るある背景情報が提供される。
【0003】
分析は、(流体)サンプルの組成、具体的には、サンプル中の特定のDNA又はRNA配列又はタンパク質の存在、不存在、又は、量をを定性的に及び/又は定量的に調査するためにしばしば遂行される。特に、PCR、ポリメラーゼ連鎖反応法が、DNA又はRNA配列の存在又は不存在の検出のための全ての種類の分析の開発に多大に貢献している。現在、DNA含有サンプルを生体から収集し、その中の特定のDNA配列の存在、不存在、又は、量を決定することが可能である。マルチターゲット(multiple target)配列のためのそのような分析を同時に遂行し、それによって、処理量(throughput)を増大する技術、所謂ターゲット配列の多重検出(multiplex detection)が利用可能である。
【0004】
例えば、血液サンプル又は類似物中の特定のバクテリアの検出のために、DNA増殖プロセス並びに蛍光トレーサ分子へのこのDNAの結合に基づく検出方法が既知である。特定の種類のDNAのみが、特定のプローブ分子に結合する。次に、結合されたDNAの存在は、光学手段、例えば、光源による活性化並びにカメラによる検出によって検出される。
【0005】
現在、例えば、糖尿病の場合における血糖量の測定のような、この種類の分析は、日常ベースでは未だ遂行されていない。一般的に、十分に装備された研究室が必要であり、相互汚染を回避し、且つ、得られる結果が信頼できる、即ち、試験の偽陽性又は偽陰性読取りを最小限化ことを保証するために、注意深いプロトコルが使用されなければならない。
【0006】
DNA及び/又はRNAの存在、不存在、又は、量の検出は、例えば、遺伝子、遺伝子の対立遺伝子、遺伝子形質又は障害、多型性、単一ヌクレオチド多型性(SNP)の存在、不存在、又は、量を表示し、或いは、生体内の外因性DNA又はRNAの存在、即ち、生体内の病原体又はバクテリアの存在、不存在、又は、量を示す。
【0007】
具体的には、第一の特徴において、本発明は、サンプル中の分析物の存在又は量のためにサンプル流体を分析するための分析装置に関し、分析装置は、第一表面と、反対の第二表面とを有し、第一表面から第二表面への複数の貫通進行(through going)流路を有し、且つ、分析用の特別な結合物質を少なくとも部分的に備える基板と、第一表面と流体連絡する第一容積と、第二表面と流体連絡する第二容積と、第一容積と第二容積との間に圧力差を構築するためのポンプとを含み、ポンプは、第一容積に動作的に接続される。
【0008】
文献US6,383,748は、分析試験装置を開示しており、貫通進行流路を備える基板を備える。もしサンプルが所定サイズの液体サンプルを備えるならば、滴が生じ、それは、分析物を結合材料に結合するために、基板を通じて送り込まれ或いは押圧される。基板の下で、サンプルは液滴を形成し、それは、基板を通じて送り戻される。このようにして、サンプル液滴は、結合材料への混合及び/又は結合を向上するために、基板を通じて数回送り込まれる。
【0009】
このシステムの不利点は、柔軟に或いは効率的に使用され得ないことである。サンプルサイズは所定の限界内に良く制御されなければならない。その上、もし滴が基板に落ちるならば、分析は失われ、或いは、少なくとも余り信頼性はない。さらに、基板サイズは、基板を貫通して進む送込みを防止するよう、よって、液体サンプルを迂回するよう構成されなければならない。一部の基板は、湿潤されると高い気泡圧力(bubble pressure)を有し、液体が比較的容易に貫通して送り込まれるが、気体は貫通して送り込まれ得ないことを保証する。他の基板はこの差を示さない。既知の装置はこの多様性を提供しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、より効率的に且つ/或いは柔軟に使用され得る、請求項1の前文に述べられる種類の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に従った装置を備える本発明によって達成される。具体的には、装置は、第一容積と第二容積とを接続することによって、第一容積及び第二容積の一方から第一容積及び第二容積の他方への流れを許容するための、別個の戻り流路と、戻り流路を閉塞し得る戻り流路弁とをさらに含むので、実質的に如何なるサイズの液体サンプルをも基板を通じて送り出し、何回でも別個の戻り通路を通じて基板の反対側に送り戻すことが今や可能である。サンプル液滴は基板から落ちるので、分析を失う危険性はない。よって、装置は、より柔軟な方法の分析を可能にする。さらに、サンプルは如何なるサイズをも有し得るので、それはより容易でより効率的な分析を可能にする。
【0012】
以下に議論される本発明の装置及び方法の助けを受けて、診断された病気の処置のための薬剤の準備のための適切な治療を開発することがより容易である。例えば、よって、生体(例えば、人間)からのサンプル(例えば、血液)中の病原体(例えば、バクテリア)の検出は、診断及び対応する処置(例えば、抗生物質)をもたらし得る。
【0013】
記載、実施態様、及び、請求項中、「第一容積」及び「第二容積」は、2つの容積を識別するはたらきをするに過ぎないので、それらは置換可能であると考えられるべきである。例えば、装置を上下にひっくり返すことによって、或いは、サンプル流体を第二容積に導入することによって、或いは、如何なる他の方法においても、2つの用語は置換可能であり得る。
【0014】
その上、「流体連絡」という表現は、流体(液体又は気体)が、連絡する容器におけるように、(基板を通過することなしに)表面に向かって或いは容積内に単に流れることによって、その表面又はその容積に接触し得ることを意味することが意図されている。表面に接触する或いは容積内に存在する流体が実際に存在する場合に制限されることは意図されていない。
【0015】
さらに、第一容積及び第二容積のそれぞれは、例えば、サンプル流体を異なる結合物質を備える基板の異なる平行部分に或いは1つよりも多くの基板に案内するために、多数の副容積を含み得る。機能的に、並びに、この文献の目的のために、これらの副容積は、第一容積であれ第二容積であれ、1つの容積であると考えられる。
【0016】
戻り流路弁は、弁制御装置、又は、例えば、一方向弁によって制御可能な、活性弁であり得る。
【0017】
「流路」という表現は、本発明の目的のために、一方から他方への直線壁経路のみならず、むしろより一般的に、基板の一端と他端との間の流体のための如何なる物理的経路をも含む。よって、そのような流路は、湾曲又は不規則経路のような無作為な流体経路、分枝基板内の相互接続空孔の集合等も含み得る。よって、基板は、例えば、そのような相互接続空孔を有するスポンジ状材料を含み得るが、繊維管に多数の流体経路を有する不織布等も含み得る。
【0018】
「ポンプ」という表現は、本発明の目的のために、活性ポンプ及び受動ポンプの両方を含むことが明示的に付記される。ここで、受動ポンプは、可撓壁を備えるポンプ容積のような可変容積を備える閉塞室又は類似物を含む装置を意味することが意図される。ここで、そのようなポンプは受動ポンプと呼ばれる。何故ならば、それは活性的に圧力を蓄積せず、他の外部ポンプによってその上に加えられる圧力を次に回す働きをするからである。活性ポンプは、それら自体によって圧力差を構築し得る。換言すれば、本脈絡における「ポンプ」は、部分の容積を変更するための可動部分を備える閉塞空間を指す。全てこれは以下にさらに解明される。
【0019】
使用される多くの基板は、数バールのオーダの気泡圧力を示すのに対し、流体ポンピング圧力は数十ミリバールから数百ミリバールまでのオーダにあるが、もちろん他の値も可能である。そのような圧力は、基板を通じて基板の一方の側に収集されるサンプル流体をその他方の側に送り出すことを可能にする。そこで、サンプル流体は基板から離れ落ちる。換言すれば、基板は他方の側の気体によって接触される。故に、もしいま圧力(差)が逆転されるならば、気体のみが基板を通じて送り出される。しかしながら、そのために必要とされる圧力の故に、これは起こらず、圧力は第二容積内で増大する。換言すれば、基板は、サンプル流体が第二容積から送り出され得るよう、一方向弁として作用する。
【0020】
しかしながら、気泡圧力及び流体ポンピング圧力が実質的に異ならない基板の場合には、これは正しく機能しない。何故ならば、気体はこの基板を比較的容易胃に通過し得るからである。故に、特別な実施態様において、第一容積及び第二容積のうちの少なくとも一方は、基板と直接的に接触する接触容積と、貯蔵容積と、接触容積と貯蔵容積との間の弁とを含む。この実施態様は、分割可能な容積を用いて、サンプルを通じてサンプル流体を送り出すための流体ポンピング圧力に比べて比較的低い所謂気泡圧力を有する基板の使用を可能にする。ここで、気泡圧力は、基板を通じて気体を送り出すために必要とされる基板を横断する気圧差に関係する。それをするために、基板内の流体は、基板の毛管作用に対して変位されなければならない。この気泡圧力は、流体が基板を通過するのを可能にする圧力に導かれる(サンプル)流体ポンピング圧力よりも一層高くあり得る。
【0021】
基板を通じて基板の第二の或いは反対の側の上の容積に向かって送り出されるサンプル流体は、前記第二の或いは反対の側、即ち、接触容積に直接的に接触する容積内に集まらず、ここで時折背接触容積弁と呼ばれる弁を通じて流れ続け、貯蔵容積内に集まる。接触容積弁は、貯蔵容積を閉塞することによって、他の基板の高い気泡圧力の機能を引き継ぎ得る。その場合には、ここに述べられる他の実施態様の全ての他の機能性も、余り異ならないポンピング圧力及び気泡圧力を備える基板に当て嵌まり得る。換言すれば、接触容積と、貯蔵容積と、接触容積弁とを含む第二容積を備える実施態様は、基板の選択についてより一層多角的であるが、より高いパーツ点数が犠牲とされる。
【0022】
特別な実施態様において、基板は、湿潤状態における基板のサンプル流体ポンピング圧力よりも高い、湿潤状態における気泡圧力を有する。上述のように、基板は、例えば、サンプル流体によって湿潤されるときに、高い気泡圧力を有し、基板は、気体バリヤとして作用し得ると同時に、そこを通じるサンプル流体の流れを許容する。そのような基板を備える装置を提供することは、接触容積及び接触容積弁の必要なしに、より単純な設計を可能にする。気泡圧力とサンプル流体ポンピング圧力との間にある、第一容積と第二容積との間に圧力(差)をもたらすことによって、サンプル流体は基板を通じて送り出されるのに対し、気体は依然として基板によって捕捉される。
【0023】
有利に、前記気泡圧力は、前記サンプル流体ポンピング圧力よりも、少なくとも10%高く、好ましくは、少なくとも50%高く、より一層好ましくは、少なくとも200%高い。気泡圧力が、少なくとも10%、より高いとき、サンプル流体ポンピング圧力と気泡圧力との間に適切な圧力差を構築することは比較的容易であり、気体流のない流体流を可能にする。さらに、例えば、基板への結合材料の故に、気泡圧力及びポンピング圧力の一方又は両方の余り重要でない変化は、装置の正しい機能性に影響を及ぼさない。気泡圧力が、少なくとも50%、より高いとき、実用的な圧力差を構築することが容易であるのみならず、圧力差はサンプル流体流速が有用な範囲内にあるよう選択され得る。何故ならば、より高い圧力差はより高い流速を保証するからである。特に、気泡圧力がサンプル流体ポンピング圧力よりも少なくとも200%高いときには、極めて有用なサンプル流速が構築され得る。気泡圧力とサンプル流体ポンピング圧力との間の他の相対的な差は、依然として有用な結果をもたらし得ることに留意のこと。
【0024】
上記の議論において、相対差のみが議論された。代替的に、気泡圧力とサンプル流体ポンピング圧力との間の絶対差が可能な限り高くなるよう、或いは、少なくとも所望の量よりも高くなるよう基板を選択することも可能である。具体的には、制限的ではないが、気泡圧力は、湿潤された基板のために、サンプル流体ポンピング圧力よりも少なくとも100バール、好ましくは、少なくとも1バール高く、上述と類似の利点を伴う。再び、他の差も望ましい結果をもたらし得る。
【0025】
具体的な実施態様において、装置は、第一容積及び第二容積のうちの少なくとも一方の周りに少なくとも部分的に透明な壁を含む。前記少なくとも部分的に透明な壁は、基板を装置から除去する必要なしに、基板上のDNA等の検出を可能にする。もちろん、視覚的な検査も、そのような透明部分によって可能とされ得る。
【0026】
透明は、可視光に対して、並びに、紫外線及び赤外線放射に対して透明であることを少なくとも含むことが意図されるが、他の種類の放射線のための透明であることも想定される。少なくとも部分的に透明な壁は、壁材料自体として、壁の孔内の別個の透明部分(即ち、窓)等として提供され得る。
【0027】
特別な実施態様において、装置は検出系をさらに含む。検出系を設けることは、装置を全体としてより多角的にし、分析装置を検出されるべき特定の製品に一致させることがより容易である。検出装置は、それ自体、透明窓を含み得るし、或いは、窓、壁内の孔等に対して動作的な位置に設けられ得る。
【0028】
検出装置は、光学検出系、例えば、蛍光検出のような、如何なる適切な既知の検出系をも含み得る。所望であれば、分析装置及び/又は検出装置は、その機能性、例えば、結合材料に結合される分析物の検出に必要とされる光源、フィルタ等のような追加的な部分を含み得る。これらの追加的な部分は、分析装置において選択的であるに過ぎない。
【0029】
装置は、ラベル、長さ、機動性、ヌクレオチド配列、質量、又は、それらの組み合わせに基づいて検出し得る。特定の実施態様では、装置は、光学的、電磁的、磁気的原理に基づいて検出し得る。原則的に、従来技術から既知の如何なる適切な検出装置も使用され得る。
【0030】
特定の実施態様において、系は、検出装置から得られるデータを収集するためのデータ収集装置も含む。
【0031】
特定の実施態様において、系は、データを処理するためのデータ処理装置も含む。
【0032】
具体的な実施態様において、本発明に従った分析装置は、サンプル流体導入装置をさらに含む。このサンプル流体導入装置は、特に制限されない。それは、例えば、好ましくは、閉塞弁を備える、単に導入開口及び/又は導入流路を含み得る。サンプルの導入後、前記弁は閉塞され、完全に閉塞された装置が提供され、或いは、少なくとも可能である。サンプル流体導入装置の如何なる他の実施態様、例えば、サンプル流体の(実質的に)無汚染導入を可能にするものも想定される。
【0033】
特別な実施態様において、本発明の装置は実質的に閉塞される。もちろん、サンプル流体の導入中、外側世界との接続はある。しかしながら、分析装置は、装置上又は内に存在する閉塞手段を用いて、少なくとも実質的に完全に閉塞可能であることが意図される。これは、例えば、全ての可能な流路上の弁を環境にもたらすことによって達成され得る。大きな利点は、装置が、例えば、操縦者からの外生DNAを通じて、汚染のより少ない危険性を伴う分析を提供し得ることである。
【0034】
具体的には、本発明は、本発明に従った検出装置を含む実質的に閉塞可能なカセットを提供する。そのようなカセットは、それが原位置での使用のために容易に利用され得るよう、好ましくは、コンパクトで持ち運び可能である。それは、好ましくは、この明細書に記載されたような、或いは、その他の当業者に既知な、流体の貯槽、1つ又はそれよりも多くのポンプ等のような、如何なる他の所望の装置をも含み得る。有利に、そのようなカセットを再使用するときの汚染を防止するために、カセットは使い捨て可能である。しかしながら、本発明に従った最使用可能なカセットを提供することも依然として可能である。
【0035】
具体的な実施態様において、戻り流路は、基板と反対の第一及び/又は第二容積に流入する。これは、例えば、サンプル流体を集めるための重力の最適な使用を可能にし、且つ、サンプル流体の効果的なポンピングを保証する。もし第一容積の周りの壁及び/又は第二容積の周りの壁が、壁のそれぞれの開口に向かって先細り且つそれぞれの容積を戻り流路に接続する形状を有するならば、この効果はさらに一層向上され得る。これはサンプル流体が第一容積又は第二容積内に残るという危険性を低減する。
【0036】
実施態様において、ポンプは、ポンプ室と、可動部分とを含み、ポンプ室は及び可動部分は、第一容積と流体連絡するポンプ容積を定める。原則的に、ポンプはポンプ容積を含めば十分であり、圧力又は圧力差を構築するために、そのサイズは変更され得る。そこに、前記ポンプ容量は、可動部分によって封止され得る。「可動」は、「全体として変位可能」に限定されるべきではなく、可撓、弾性的、又は、類似物も含む。
【0037】
この実施態様において、ポンプ室は、ポンプの筐体を含むと考えられ、「可動」部分は移動し得る。その場合には、ポンプ容積は、ポンプ室及び可動部分によって定められ、或いは、境界付けられる。前記可動部分は、ピストン、膜のような可撓な壁等を含み得る。可動部分は、部分の変位が圧力変化の実際の原因であるよう、活性的に移動可能であり得るが、可動部分は受動的に移動可能な部分でもあってもよく、それはそれを横断する圧力の変化の故に移動し或いは変位等する。後者は、例えば、可撓膜が外部ポンプとの組み合わせで使用される場合である。
【0038】
「第一容積」及び「第二容積」は特定の機能に関係せず、2つを識別する序数であるに過ぎないことに留意のこと。用語は、機能に応じて置換可能であり得る。例えば、第一容積内の圧力蓄積は、圧力が第二容積内で減少すると、或いは、両方の容積内の適切な同時の圧力変化があるとき、第一容積と第二容積との間の圧力差に対して同一の効果を有し得る。
【0039】
特別な実施態様において、ポンプ容積は、第二容積とも流体連絡し、第一ポンプ弁が、第一容積とポンプ容積との間に設けられ、第二ポンプ弁が、第二容積とポンプ容積との間に設けられる。この実施態様は、最小数のポンプを用いて、両方の容積内に圧力に対する完全な制御をもたらす。両方の容積内の圧力は、原則的に、単一のポンプのみを用いて、独立して増減され得る。
【0040】
容量を増大するために、1つよりも多くのポンプを提供可能であり、或いは、容積毎に1つよりも多くのポンプ、例えば、平行ランプを提供することさえも可能である。装置の特別な実施態様は、第二容積に動作的に接続される追加ポンプをさらに含む。そのような実施態様は、両方の容積内の圧力に対する十分な制御も可能にする。しかしながら、追加的に、この実施態様は、2つのポンプのうちの一方が機能不良であるときにも依然として機能し得る。ポンプ及び追加ポンプの両方を第一容積及び第二容積の両方に動作的に接続することも有利であり得る。
【0041】
具体的な実施態様において、追加ポンプは、追加ポンプ室と、追加可動部分とを含み、追加ポンプ室及び追加可動部分は、第二容積と流体連絡する追加ポンプ容積を定める。ポンプのために上述されたように、追加可動部分は全体的に変位可能、可撓等であり得るし、ピストン、可撓膜等を含み得る。全てのそのようなポンプにおいて、可撓膜の使用は、ポンプ又は追加ポンプが気密に作成され得るという利点を有する。それは、例えば、ピストン又は他の変位可能部分を使用するときにはより一層困難である。
【0042】
特別な実施態様において、ポンプの可動部分及び追加ポンプの追加可動部分は、実質的に連続的な可撓膜を含む。この実施態様は、両方のポンプが連続的な膜をそれぞれ含む場合を含むが、両方のポンプの膜が一体に1つの連続的な膜を形成する場合も含む。この後者の実施態様は、単一の気密な膜を提供することによって、装置の気密な設計を保証するのがより一層容易であり、多数の別個の膜の境界の周りの漏洩の危険性がない点で、より一層有利である。
【0043】
第二の特徴において、本発明は、サンプル流体の中の分析物の存在、不存在、又は、量のためにサンプル流体を分析するための分析方法を提供し、分析方法は、本発明に従った分析装置を提供するステップと、第一容積内にサンプル流体を供給するステップと、以下のステップを数回遂行するステップとを含む。即ち、サンプル流体の少なくとも一部が基板を通じて第一容積から第二容積に流れるよう、第一容積と第二容積との間に圧力差を構築するためにポンプを動作するステップ。ここで、戻り流路弁は、閉塞位置にある。サンプル流体の少なくとも一部が戻り流路を通じて第二容積から前記第一容積に流れるよう、第一容積と第二容積との間に圧力差を構築するために、戻り流路弁を開放し、且つ、ポンプを開放するステップ。基板は今や検出ステップのための準備が出来ている。この方法は、サンプル流体が基板を通じて如何なる所望回数送り出され得る点で、本発明に従った装置の有利な使用を可能にする。これは、結合材料に結合される分析物の量を改良することによって、並びに、サンプル流体の構成成分の混合を改良することによって、分析の精度を増大する。ここにおいて、サンプル流体の量は実質的に無関係であり、それは本方法をより多角的に且つ頑丈にする。
【0044】
具体的には、本方法は、第一容積と第二容積との間の圧力を均等化するステップをさらに含む。このようにして、全体的な圧力が増大し続けること、或いは、残留圧力が本方法と干渉することが防止される。圧力を均等化するステップは、例えば、サンプル流体が、基板を通じて、或いは、戻り流路を通じて、第一容積から第二容積に、或いは、その逆に流れた後、或いは、流体を用いて基板を実際に光学的等に分析し或いは検査する直前のように、全てのポンピングステップの1つ又はそれよりも多くの後にのみさえ、遂行され得る。圧力を均等化するステップは、1つ又はそれよりも多くの適切な弁を開放することによって、1つ又はそれよりも多くのポンプを動作すること等によってもたらされ得る。
【0045】
具体的には、所望の回数は2回以上である。ステップの順序を反復的に遂行することは、分析の感度を向上する。10又はそれよりも多くのような如何なる数も可能である。所望の回数は動的に、即ち、本方法を遂行中に決定され得る。例えば、所望の回数は、測定信号の強度又はその不存在に依存して決定され得る。
【0046】
本方法の特別な実施態様では、検出ステップが、第一容積と第二容積との間に依然として存在する基板上で遂行される。換言すれば、可能な汚染を防止するために、基板はポンピング作用後に移動されない。そこで、蛍光検出のような分析を妨害しないために、サンプル流体が少ない或いは存在しない基板の側から検出を遂行することが可能である。記載されるような方法では、これは第二容積側であり得る。代替的に、基板を通じてサンプル流体をポンピングする他のステップを遂行し、基板の第一容積側から分析を遂行することが可能である。所望であれば、提供されるような分析装置は、そのような光学的(又は他の)検出を可能にする窓を含み得る。
【0047】
本方法の特別な実施態様において、分析物は、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリサッカリド、又は、タンパク質を含む。例えば、病原生物又はそのDNA等の存在又は不存在を構築するために、そのような物質の検出は、極めて正確な分析を要求し得る。本方法は、基板を通じたサンプル流体の反復的ポンピングを通じたその感度の増大を用いて、そのような分析のために利点をもたらす。
【0048】
本方法の特別な実施態様において、基板は実質的に水平に配置される。基板の各部分が等しい量のサンプル流体を受容することを保証するのがより容易である点で、これは方法の精度を向上する。
【0049】
本方法の特別な実施態様において、第一容積は、重力の方向に対して基板の上に位置付けられる。これは第二容積に送り出されるサンプル流体が基板の上にある或いは接触する層の中に常に存在することを保証する。これはサンプル流体を通じたポンピングを妨げる気泡の形成の危険性を低減する。基板の気泡圧力は高く、よって、ポンピング作用は、気泡からの反対圧力によって、機械的に妨げられる。さもなければ、気泡圧力が比較的低く、気泡も基板を通じて送り出される場合には、基板はより少ないサンプル流体をそこで受容し、それは装置及び方法の感度を減少する。さらに、この構造は処理されるべきサンプル流体の量における変化のための感度を減少する。
【0050】
一般的な留意点は、サンプル流体を基板を1回通じてポンピングするのに必要な時間は、加えられる圧力差に依存する。前記圧力差を制御することによって、時間は活性的に制御され得る。
【0051】
本発明は、付属の図面を参照して、例示的な実施態様の記載を読んだ後、より明らかに理解され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
図1は、本発明に従った装置1を概略的に示している。ここで、10は、第一表面12と第二表面14とを備える多孔性の基板を指し示している。16は、第一容積16を指し示し、18は、第二容積を指し示している。
【0053】
ポンプが参照番号20によって指し示されている。戻り流路22が、第一開口32及び第二開口30を介して、第一容積16及び第二容積18に接続し、戻り流路弁24を用いて閉塞され得る。
【0054】
サンプル流体導入装置26が、サンプル弁28を用いて閉塞され得る。
【0055】
ポンプ20は、ポンプ容積40と、ポンプ入口44を備える反対容積42とを含み、可撓膜46によって分割されている。
【0056】
多孔性の基板10は、従来技術において既知の如何なる適切な種類の基板でもあり得る。例えば、ガラス又は他の材料の磨かれエッチング処理された中空繊維に基づく不織布の基板、電鋳基板等が使用され得る。好ましくは、基板は、放射線、好ましくは、紫外線、可視光、又は、赤外線のような、光学放射線のために少なくとも部分的に透明である。これは基板のための検出可能性を向上する。
【0057】
基板10は、第一容積16と第二容積18とを接続する貫通進行流路を含む。もし基板が湿潤されるならば、それは高い所謂気泡圧力を示し得る。これは、比較的高い圧力が加えられるときにだけ、気体が基板を通過し得ることを意味する。この気泡圧力は数バールであり得る。逆に、液体は比較的容易に基板を通過し、例えば、たった数ミリバールの適度なポンピング圧力だけを必要とし得るが、基板を通じる流体の流れを増大するために、もちろん、ポンピング圧力は、例えば、0.5バールのように、より高く選択され得る。全てこれは、とりわけ、流路内の毛管圧力に依存する。図1に示される装置1は、高い気泡圧力を備える基板10に特に適している。気泡圧力並びに液体を基板に通過するのに要する圧力がそのような大きな差を示さず、多かれ少なかれ同等である基板10を提供することも必要である。そのような基板に特に適した装置が、以下の図4に示されている。図1並びに図示の他の図面は、原則的に、高い気泡圧力を備える基板に適しているが、それらは、図4におけるような適用と共に必要であるなら、同等の液体ポンピング圧力及び気泡圧力を有する基板のためにも使用され得る。
【0058】
液体及び/又は気体を基板10に通すという上記議論は、特に、基板の実質的に水平な位置決めに当て嵌まる。水平に位置付けられるとき、基板10は均一に湿潤され得るし、液体は基板10を多かれ少なかれ均一に通過する。これは検出の均一性及び正確性に肯定的な影響を有する。それにも拘わらず、基板10は傾斜されて或いは垂直にさえ位置付けられ得るが、これは前記検出の均一性に影響を及ぼし得る。
【0059】
「第一容積」及び「第二容積」という用語は置換可能であることが留意される。これはこれらの用語及び表現が2つの別個の容積16及び18の間を識別するためにのみ使用されることを意味する。それらの機能は、この明細書を通じて置換可能である。
【0060】
サンプル流体導入装置26は、一種の導入流路として極めて概略的に表示されている。原則的に、従来技術において既知の如何なる所望の導入装置も設けられ得る。サンプル流体導入装置26は、サンプル弁28を用いて閉塞可能であり得る。サンプル弁28が閉塞されるとき、装置1は、容積16、18、及び、40を含む完全に閉塞された系を含むことに留意せよ。これは汚染の危険性を大いに低減する。
【0061】
装置1の使用が、図2a乃至2cにおいてより詳細に説明される。しかしながら、第一容積16と第二容積18との間の圧力差が、ポンプ20を用いて確立され且つ/或いは解放され、戻り流路弁24の閉塞及び/又は開放が確立され且つ/或いは解放され得る。例えば、サンプル流体が第一容積16に導入される場合には、これは、第一容積16内の圧力を増大することによって、基板10を通じて第二容積18に送り込まれ得る。そこに、ポンプ20は、例えば、加圧気体をポンプ入口44を通じて反対容積42に導入することによって、可撓膜46をポンプ容積40の方向に移動し得る。ここに、戻り流路弁24及びサンプル弁28は閉塞される。第一容積16内の圧力の増大の影響下で、サンプルは基板を通じて第二容積18に向かって流れる。
【0062】
所望量の流体が基板を通じて送り込まれるとき、圧力は解放される。サンプル流体を第二容積18から第一容積16に送り戻すために、戻り流路弁24は開放され、第一容積16内の圧力は、例えば、反対容積42を排出することによって下げされ、それはポンプ容積40が増大するよう可撓膜46を移動させる。第二開口30付近で、第二容積18の底部で収集される如何なる液体も、戻り流路22を通じて第一容積16に送り出される。これは第二容積内の圧力の存在によって引き起こされ、それは追加されるサンプル流体によって増大されが、気体は基板10を通過し得ないことに留意せよ。もしこの圧力増大がサンプル流体を第一容積16に送り戻すのに十分でないならば、戻り流路弁22を開放する前に、ポンプ20のポンプ作用を逆転することによって、前記第一容積中の圧力が減少され得る。引き続き、戻り流路弁24は閉塞され、周期は反復され得る。
【0063】
ポンプ20は、ここでは、可撓な実質的に気密な膜46の形態の可動部分を含み得る。膜は、ポンプ容積40の容積、故に、第一容積16内の圧力を活性的に変更し得る。代替的に、ポンプ20は、ポンプ入口44を介して、別個のポンプ手段(図示せず)に接続され得る。その場合には、可撓膜又は可動部分は、一般的に、受動部分であり得る。
【0064】
図2a乃至2cは、本発明に従った装置の代替的な実施態様並びにその使用を概略的に示している。
【0065】
図面を通じて、類似部分は同一の参照番号によって指し示されている。故に、関連部分のみが番号を振り直されている。
【0066】
図2aは、追加可撓膜66によって分割された追加ポンプ容積62及び追加反対容積64を有する追加ポンプ60を含む代替的な実施態様を示している。追加ポンプ60を提供することは、第一容積16及び第二容積18の両方において、互いに独立して、圧力が増減され得るという利点を提供する。サンプル流体50が、サンプル流体導入装置26、サンプル弁28、戻り流路22の一部、及び、第一開口32を介して、第一容積16に導入される。戻り流路22によって結合されない別個の導入流路を設けることも可能であることに留意。
【0067】
サンプル流体50は、基板10を通じて送り込まれる準備が出来ている。サンプル流体導入弁28及び戻り流路弁24は閉塞される。サンプル流体50を導入するときに第一容積16から放出される気体の容積をポンプ容積内に収容するために、可撓膜46は反対容積42に向かって移動することに留意。
【0068】
図2bには、本発明に従った第二ステップが概略的に描写されている。
【0069】
ここで、サンプル弁28及び戻り流路弁24は閉塞される。第一容積16と第二容積18との間の圧力差が、サンプル流体50が基板10を通じて第二容積18に向かって流れるよう、ポンプ20及び追加ポンプ60の結合作用によって構築される。
【0070】
圧力差を構築するために、ポンプ20を用いて第一容積16内の圧力を増大することが可能である。ここで、可撓膜46は矢印の方向に移動する。代替的に、或いは、追加的に、追加ポンプ60を用いて、第二容積18内の圧力を減少することが可能である。ここで、追加可撓膜66は表示方向に移動する。もちろん、両方の容積の圧力を増大することも可能であるが、第二容積18内よりも第一容積16内でより多くすること、或いは、類似の方法で圧力を減少することも可能である。
【0071】
もし十分なサンプル流体50、例えば、全てのサンプル流体が基板10を通じて第二容積18に送り込まれるならば、例えば、戻り弁24を開放することによって、或いは、ポンプ20及び/又はポンプ60内の圧力を解放することによって、圧力差は解放される。
【0072】
図2cは、本発明に従った方法の他のステップを概略的に示している。サンプル流体を第二容積18から第一容積16に送り込むために、反対の圧力差が構築される間、戻り流路弁24は開放される。例えば、ポンプ20は、追加ポンプ60によって加えられる第二容積18内の圧力よりも低い圧力を第一容積16に加える。これは、例えば、可撓膜46及び66を表示方向に移動することによって構築され得る。そこに、ポンプ20及び追加ポンプ60のそれぞれの反対容積は相応して加圧され得る。代替的に、ポンプ20及び60の可動部分は、圧力を活性的に構築するために、それら自体が移動される。
【0073】
サンプル流体50は、第二容積18から戻り流路22及び戻り流路弁24を通じて第一容積16に流れる。もし所望量のサンプル流体、例えば、全てのサンプル流体が第一容積16に送り込まれるならば、圧力差は解放され、戻り流路弁24は閉塞される。分析装置は、今や周期を反復する準備が出来ている。
【0074】
このようにサンプル流体を、特に、サンプル10のあらゆる部分を通じて実質的に等しい量において1回以上基板10に通すことによって、基板10の結合材料に結合されるDNA又は他の分析物の量が増大される点で、極めて良好な検出結果を得ることが可能であるのみならず、サンプル流体の構成成分の混合も増大され、それは検出又は分析の正確性のためにも有益である。
【0075】
図3aは、本発明に従った装置の他の実施態様を概略的に示している。関連部分だけが、参照番号で表示されている。
【0076】
ここで、ポンプ20’は、ポンプ容積40’を今や含み、その容積はピストンアーム72に接続されたピストン70を用いて変更され得る。
【0077】
ポンピング容積40’は、第一容積弁74を介して第一容積16と流体連絡し、第二容積弁76を介して第二容積18と流体連絡する。
【0078】
透明窓80が、検出装置82を第一容積16と結合する。
【0079】
図3に示される実施態様は、矢印の方向に移動され得るピストン70及びピストンアーム72を含む異なるポンプ20’を示している。しかしながら、ポンプは、圧力を制御するという同一の目的に貢献し、如何なる他の実施態様における如何なるポンプをも置換し得る。ポンピング容積40’の容積の制御を通じた圧力の機械的制御はより容易であるが、気密なポンピング容積40’を構築することはより困難であり得る。もちろん、図3のポンプ20は、良く制御されるが気密なポンプを得るために、例えば、図1のポンプ20と組み合わせられ得る。さらに、圧電装置、熱膨張ポンプ等のような、他の種類のポンプ装置も考えられ得る。
【0080】
ポンプ容積40’は、独立して、第一容積16及び/又は第二容積18のいずれかと流体連絡して配置され得る。そこに、第一容積弁74及び第二容積弁76が設けられる。それぞれは独立して動作され得る。第一容積弁74が開放され、第二容積弁76が閉塞されるとき、第一容積16内の圧力は、ポンプ20’を動作することによって変更され得る。同様に、第二容積18内の圧力は、弁74及び弁76に対する逆の状況において変更され得る。これは本発明に従った分析方法のために必要とされるステップを遂行することを可能にする。
【0081】
窓80は、例えば、光学放射線のために透明である。これは、例えば、蛍光照明を通じて、結合材料に結合された分析物を含む基板10の分析を可能にする。他の検出方法も可能であり、それは異なる放射線、よって、窓80のための異なる透明性を必要とし得る。同様に設けられているのは、カメラ、CCD、又は、類似物のような検出装置82である。検出装置82は選択的であることに留意せよ。換言すれば、本発明に従った分析装置は、検出装置82なしでも提供され得るが、窓は備えて提供される。よって、検出装置を、しばしば極めて複雑で高価な検出装置82の必要のない使い捨て装置として分析装置を提供することも可能である。
【0082】
図4は、本発明に従った装置の他の実施態様を概略的に示している。この実施態様は、気泡圧力が流体ポンピング圧力と同等である基板10に特に適している。
【0083】
第二容積は、接触容積弁82によって分割された、接触容積90と、貯蔵容積94とを今や含む。追加ポンプ60は、貯蔵容積94と流体連絡している。
【0084】
もし基板10が比較的低く且つ流体ポンピング圧力と同等の気泡圧力を有するならば、基板は気体バリヤとして働かない。これは、例えば、図3の第二容積内の圧力蓄積の場合に、気体が基板10を通じて逃げることを可能にする。サンプル流体が基板10の第一表面12上に存在するとき、図4の第一容積16内の圧力蓄積が依然として防止されることに留意せよ。図4の実施態様では、気体が基板10を通じて加圧された第二容積から第一容積16に向かって流れるために、描写されるような特定の構成が設けられる。
【0085】
先ず、サンプル流体(図示せず)を基板10を通じて第二容積に通すために、第一容積16を加圧するための通常のステップが遂行される。サンプル流体が第二容積、即ち、接触容積90に達すると、それは基板10から液滴状に離れ落ち、接触容積弁92を通じて貯蔵容積94に流れ、サンプル流体は貯蔵容積に収容される。特に、もしその壁が例えばフッ化ポリマ又は類似物で覆われることによって疎水性とされるならば、実質的に如何なるサンプル流体も接触容積90内に残らない。次に、個々の液滴が生じ、それらは、例えば、重力又はあらゆる他の駆動力の影響の下で容易に流れる。
【0086】
次のステップとして、基板10を通じて第一容積16に向かう気体の再流を防止するために、接触容積弁92が閉塞される。今や、第二容積、即ち、この場合には、貯蔵容積94は、追加ポンプ60によって加圧され得る。次に、戻り流路弁24が開放されるとき、サンプル流体は、貯蔵容積94から戻り流路22及び戻り流路弁24を通じて第一容積16に向かって流れる。実質的に如何なる流体又は気体も基板10を通じて直接的に流れない。引き続き、戻り流路弁24を閉塞後、周期は反復し得る。
【0087】
図4に示される実施態様は、比較的低い気泡圧力を伴う基板の使用を可能にする。換言すれば、この実施態様は気泡圧力のための如何なる値をも備える基板の使用を可能にする。
【0088】
代替的に或いは追加的に、並びに、液滴が全く生ぜず、せいぜい薄い流体膜しか生じないよう、接触容積90を作成することによって、例えば蛍光検出による、検出測定値に対する液滴の影響が最小限化される実施態様が得られる。これは、その場合には、接触容積内に、膜のみが形成されるのに対し、液滴は貯蔵容積94内に生じるだけであるためである。膜は個々の液滴よりもより一層薄く作成され得るので、また、膜は、もし存在するならば、多かれ少なかれ連続的で均一な層であるので、そのような検出測定値のための如何なる背景も最小限化され且つ/或いは均一化される。この利点は接触容積弁92が省略されるとしても存在することに留意のこと。
【0089】
図5aは、本発明に従った装置の他の実施態様を概略的に示しており、図5bはその詳細を示している。
【0090】
分析装置100は、基板支持体104によって支持された多孔性の基板102を含む。
【0091】
第一容積106及び第二容積108は、可撓膜108によって分割され、第一圧力入口112及び第二圧力入口114を介してそれぞれ加圧される。
【0092】
116は、光学的に透明な窓であり、118は、遮蔽板である。
【0093】
戻り流路124は、第二容積108の壁120のドレン開口122に開いている。戻り流路弁は126によって指し示されている。
【0094】
サンプル流体導入装置が128によって指し示され、サンプル弁は130によって指し示されている。
【0095】
第一ポンプが、可撓膜110によって分割された、第一ポンプ容積113と、第一反対容積113’とを含み、第二ポンプが、可撓膜110によって分割された、第一ポンプ容積115と、第二反対容積115’とを含む。
【0096】
装置100は、受動ポンプと考えられ得る2つのポンプを含む。第一ポンプは、開口112を介して気体を第一反対容積113’に送り込み或いは送り出すことによって、第一反対容積113’内の圧力を増減することによって機能する。圧力変化は、可撓膜110を図面の左部分にある第一容積108の内外に膨張させ、それによって、第一容積108内の圧力を増減させる。可撓膜110に代えて活性可動部分を提供することによって活性ポンプを提供することも代替的に可能であるが、これは気体漏洩の危険性を増大する。代替的に、追加的可動部分を介して直接的に可撓膜110を駆動することも可能である。これは活性ポンプを構成する。代替的なポンプも可能である。
【0097】
同一の機能性は、可撓膜110によって分割された第二ポンプ容積115と第二反対容積115とを含む第二ポンプ、並びに、その開口114内の第二ポンプにも当て嵌まる。活性可動部分の不存在は、分析装置100が確実に且つ安価に製造されることを可能にする。それを活性ポンプに接続可能な置換可能部分、又は、使い捨て部分として提供することがより容易である。
【0098】
明瞭に見えるのは光学的に透明な窓116であり、それは分析ステップ及びポンピングステップの制御の観点として作用し得るが、検出装置及び/又はそのために必要とされる放射線への光学的アクセスも可能にする。
【0099】
基板102は、それ自体の重量又はサンプル流体の重量の故の、或いは、圧力差の故の基板102のサギングを防止するために、基板支持体104によって支持される。この基板支持体104は、そこを通じて流れるサンプル流体に対する基板の正しい位置付けを保証する。基板102を通じる均一な流れは分析の精度を向上することに留意。精度をさらに改良するために、選択的な遮蔽板118が設けられ得る。遮蔽板118は、ある量のサンプル流体136に由来する放射線を遮断することが意図されている。例えば、もし蛍光検出器が使用されるならば、分析はサンプル流体に由来する蛍光によって影響を受け得る。この寄生蛍光は、少なくとも部分的に透明であり得る基板102を通過し得る。例えば丸められた又は斜めの板の形態の遮蔽板118を提供することによって、その寄生蛍光は効果的に遮断され得る。サンプル流体136の液滴は基板102から遮蔽板188の上に落ち、そこから第二容積108の下方部分に流れ込み得ることに留意のこと。
【0100】
分析器100を使用するための方法が、図5bを記載することによって明瞭にされる。
【0101】
図5bでは、本方法を記載するために関連する部分のみが番号付けられ、類似部分は依然として同一参照番号によって指し示されている。
【0102】
具体的には、126は、戻り流と124内の戻り流路弁を指し示しており、その一部が大きな不規則な矢印によって概略的に表示されている。サンプル流体導入装置は128として示され、サンプル弁130を備える。サンプル流体導入装置128は、単に外部流体サンプルコンテナへの接続であり得る。従来技術において既知なより洗練された導入装置を設けることも可能である。
【0103】
使用中、サンプル流体136は、サンプル流体導入装置128を通じて装置100に導入され、サンプル弁130は開放される。サンプル流体は第一容積106に行き、基板102上の層がそこに形成される。次に、サンプル弁130は閉塞され、それによって、装置100を環境から実質的に封止する。
【0104】
引き続き、例えば、第一ポンプ(図示せず)内の圧力を増大することによって、第一容積106内の圧力は増大され得る。サンプル流体136は基板102を通じて第二容積108に流れ込む。この場合には、基板は、数バールのオーダ、例えば、3バールの比較的高い気泡圧力を有する。流体ポンプ圧力はより一層低く、数10ミリバールから数100ミリバールのオーダ、例えば、30又は300ミリバールである。
【0105】
引き続き、サンプル流体を戻り流路124を通じて第一容積106内に送り戻すために、戻り流路弁126は開放され、第二容積108内の圧力は増大される。本実施態様において、戻り流路124は紙の平面から部分的に出ているので、この戻り流路124は暗い不規則な矢印によって概略的に表示されている。サンプル流体を第一容積106に送り戻した後、戻り流路弁126は閉塞され、周期は反復され得る。
【0106】
周期の数は様々な基準に依存する。例えば、もしサンプル流体136内の分析物と基板102内の結合材料との間に優れた結合があるならば、分析のために単一周期(又は数周期)で足ることが可能である。他の場合には、2、3、又は、それよりも多くのより高い数の周期が必要とされる。周期の数は原則として無制限である。
【0107】
第一容積106に導入されるサンプル流体の液滴を基板に向かって案内するために、本実施態様における第一容積106の形状は、基板102に向かってテーパ状である。この形状は有利であるが、必要ではない。前記案内効果は、第一容積106の表面が疎水性材料又は被覆材料を備えることによってさらに改良され得る。液滴はそのような材料に殆ど付着せず、基板102に向かって容易に流れる。サンプル流体136が第一容積106の壁に付着するのを防止することは有利である。何故ならば、例えば、前記液滴の寄生蛍光が、基板102の分析を妨害し得るからである。
【0108】
図面に示され且つ上記に記載された実施態様は、例示的であり非限定的であることが意図されている。本発明の範囲は、上記の記載の観点から、付属の請求項によって定められる。同様に、請求項中で使用される参照番号は、図示の一部の実施態様の観点から請求項を明瞭にする働きをするに過ぎない。具体的には、それらは、図面に描写されるような実施態様又はそれらの部分へのそのような参照番号を備える請求項又はそれらの部分を制限しない。これは特に第一容積及び第二容積に当て嵌まる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に従った装置の第一実施態様を示す概略図である。
【図2a】本発明に従った方法における代替的な実施態様の使用を示す概略図である。
【図2b】本発明に従った方法における代替的な実施態様の使用を示す概略図である。
【図2c】本発明に従った方法における代替的な実施態様の使用を示す概略図である。
【図3】本発明に従った装置のさらに他の実施態様を示す概略図である。
【図4】本発明に従った装置のさらに他の実施態様を示す概略図である。
【図5a】本発明に従った装置のさらに他の実施態様を示す概略図である。
【図5b】本発明に従った装置のさらに他の実施態様を示す詳細図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル流体の中の分析物の存在、不存在、又は、量のために前記サンプル流体を分析するための分析装置であり、
第一表面と、第二表面とを有し、前記第一表面から前記第二表面への複数の貫通進行流路を有し、前記分析に特有の結合物質を少なくとも部分的に備える基板と、
前記第一表面と流体連絡する第一容積と、
前記第二表面と流体連絡する第二容積と、
前記第一容積と前記第二容積との間に圧力差を構築するためのポンプとを含み、該ポンプは、前記第一容積に動作的に接続される分析装置であって、
当該分析装置は、
前記第一容積と前記第二容積とを接続することによって、前記第一容積及び前記第二容積の一方から前記第一容積及び前記第二容積の他方への前記サンプル流体の流れを許容するための別個の戻り流路と、
該戻り流路を閉塞し得る戻り流路弁とを含むことを特徴とする、
分析装置。
【請求項2】
前記第一容積及び前記第二容積の少なくとも一方は、前記基板と直接的に接触する接触容積と、貯蔵容積と、前記接触容積と前記貯蔵容積との間の弁とを含む、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記基板は、湿潤状態において、前記サンプル流体に対する気泡圧力を有し、該気泡圧力は、湿潤状態において、前記基板のサンプル流体ポンピング圧力よりも高い、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項4】
前記気泡圧力は、前記サンプル流体ポンプ圧力よりも、少なくとも10%高く、好ましくは、少なくとも50%高く、より一層好ましくは、少なくとも200%高い、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記第一容積及び前記第二容積の少なくとも一方の壁を含む、該壁は、少なくとも部分的に透明である、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項6】
検出システムをさらに含む、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項7】
サンプル流体導入装置をさらに含む、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項8】
実質的に閉塞可能である、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項9】
前記戻り流路は、基板と反対の前記第一容積及び/又は前記第二容積に流れ出る、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項10】
前記ポンプは、ポンプ室と、可動部分とを含み、前記ポンプ室及び前記可動部分は、前記第一容積と流体連絡するポンプ容積を定める、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項11】
前記ポンプ容積は、前記第二容積とも流体連絡し、第一ポンプ弁が、前記第一容積と前記ポンプ容積との間に設けられ、第二ポンプ弁が、前記第二容積と前記ポンプ容積との間に設けられる、請求項10に記載の分析装置。
【請求項12】
前記第二容積に動作的に接続される追加ポンプをさらに含む、上記請求項のいずれかに記載の分析装置。
【請求項13】
前記追加ポンプは、追加ポンプ室と、追加可動部分とを含み、前記追加ポンプ室及び前記追加可動部分は、前記第二容積と流体連絡する追加ポンプ容積を定める、請求項12に記載の分析装置。
【請求項14】
前記ポンプの前記可動部分及び前記追加ポンプの前記追加可動部分は、実質的に連続的な可撓膜を含む、請求項13に記載の分析装置。
【請求項15】
サンプル流体の中の分析物の存在、不存在、又は、量のために前記サンプル流体を分析するための分析方法であって、
当該分析方法は、
請求項1乃至14のうちのいずれか1項に従った分析装置を提供するステップと、
前記第一容積内にサンプル流体を供給するステップとを含み、
以下のステップ、即ち、
前記戻り流路弁が閉塞位置にあるときに、前記サンプル流体の少なくとも一部が前記基板を通じて前記第一容積から前記第二容積に流れるよう、前記第一容積と前記第二容積との間に圧力差を構築するためにポンプを動作するステップと、
前記サンプル流体の少なくとも一部が前記戻り流路を通じて前記第二容積から前記第一容積に流れるよう、前記第一容積と前記第二容積との間に圧力差を構築するために、前記戻り流路弁を開放するステップと前記ポンプを開放するステップとを、
所望回数遂行するステップとを含む、
方法。
【請求項16】
前記第一容積と前記第二容積との間の前記圧力を等化するステップをさらに含む、請求個う15に記載の方法。
【請求項17】
前記所望回数は、2又はそれよりも多い数である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
検出ステップが、前記第一容積と前記第二容積との間に依然として存在する基板の上で遂行される、請求項15乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記分析物は、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリサッカリド、又は、タンパク質を含む、請求項15乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記基板は、実質的に水平に配置される、請求項15乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第一容積は、重力の方向に対して前記基板の上に位置付けられる、請求項15乃至20のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【公表番号】特表2009−500602(P2009−500602A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519046(P2008−519046)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052060
【国際公開番号】WO2007/004102
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】