説明

流体分析装置

【課題】互いに流体連結し、液圧的に密封された複数の別々の金属セル本体を使用することが可能になる、改善された流体試料分析装置を提供する。
【解決手段】流体試料を収容し、分析するための流体分析装置10は、互いに流体連通した複数の別個の部分15,16を有するセル本体組立体を備え、その別個の部分は、セル本体組立体の複数の別個の部分の隣接するものの間22,32に挿入された1つ又は複数の弾性的なガスケット62の使用によって互いに液圧的に密封される。1つ又は複数の弾性的なガスケットによって、隣接する別個の部分の液圧的な密封と、流体分析装置による流体連結及び経路選択との両方が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に流体分析組立体に関し、より詳細には、分光測光で使用するフロー・セルなどの分析化学の用途で流体を分析するための装置に関する。本発明は、そのような装置を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
様々な流体分析セル組立体が、特に分析化学の用途で流体試料を分析に使用するために、設計され実施されてきた。そのような流体セル組立体は、分析する流体の予め指示された体積の流体を静止して保持するように構成され、又はその代わりに、一般的に流体試料を分析室を通して移送するために使用されるフロー・セルとして構成される。
【0003】
フロー・セル・アレンジメントにおいては、流体試料は一般に、放射エネルギー源と放射エネルギー検出器の間に配置された室を通って移送され、その検出器は、流体試料を貫通する、関連する放射エネルギー波長吸収又は伝達を測定する。そのような検出器の例には、分光光度計がある。次いで、様々な分析的な機器が、関連する流体試料の成分を決定するために、伝達放射エネルギーに対する吸収放射エネルギーを利用する。
【0004】
しかし、分析室内で流体試料を通る放射エネルギーを効率的に通過させるために、流体収容室を画定する壁が流体試料の屈折率よりも少ない屈折率を有する材料であることが好ましい。流体試料と分析室の壁の間のそのような屈折率の関係によって、放射エネルギー波が流体試料の分析室を通って内部で反射し、それによって伝播するのを助ける。この現象の記載は、本出願の同じ譲受人に譲渡され、参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,678,051号、及び米国特許第6,734,961号に見られる。
【0005】
したがって、水溶性の流体試料を最も良く利用する目的で、水の屈折率よりも少ない屈折率を有する、少なくとも流体分析室の壁のライナを形成するための材料が必要である。そのような材料の1つが、Teflon AF(登録商標)の商品名でデラウエア州ウイルミントンのE.I.デュポン社によって販売されているフッ化ポリマー製品である。したがって、分光光度法の用途での効率的な放射エネルギー伝播を可能にするために、その中にTeflon AF(登録商標)又はその他の屈折率の低い材料の層を組み込むことが本発明の流体分析セルの望ましい態様である。
【0006】
様々なそのような流体試料分析セル及び組立体が現在この分野で使用されているが、いくつかの操作上及び実施上の欠陥が存在する。たとえば、複数ユニットのフロー・セル組立体では、バルク(bulk)セル本体部品の製造でステンレス鋼などの比較的剛直な材料が望まれる場合に、互いに液圧的に密封されることが困難であることが確認された。さらに、放射エネルギー案内要素をそのようなフロー・セル、特にステンレス鋼から製造されたフロー・セルに実装するための方法は、限られた成功を生むか、又は比較的に効率が悪く、実施するのに費用がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,678,051号
【特許文献2】米国特許第6,734,961号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の主な目的は、互いに流体連結し、液圧的に密封された複数の別々の金属セル本体を使用することが可能になる設計上の特徴を有する、改善された流体試料分析装置を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、放射エネルギー案内部材を流体分析セル本体に実装するための組立方法論を提供することである。
【0010】
本発明の別の目的は、放射エネルギー伝達部材を流体分析セル本体に実装するための組立方法論を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、その中に軸方向に位置合わせされた複数のユニットのフロー・セル組立体を摩擦的に固定するための外側ハウジングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によって、放射エネルギー案内部材の構造を簡略化し、取付け精度の信頼性を高める、改善された流体試料分析装置が提供される。流体分析セル構造の向上した精度と反復性が、対応して、そうしたセルの中で分析される流体試料の分光光度法における達成可能な精度を向上させる。
【0013】
特定の実施例では、本発明の流体分析装置は、互いに流体連通し、光学的に連通する第1及び第2の別個の部分を有するセル本体組立体を備え、各第1及び第2の部分が、互いに隣接して向き合った関係で配置されたそれぞれの第1の端部を有する。そのような別個になった第1及び第2の部分の間の液圧的な密封を可能にするために、第1の弾性的なガスケットがそれらの間に挿入され、それは、Kapton(登録商標)又は被覆された金属基材の弾性的な組合せから製造されることが好ましく、そのような金属基材はPTFE、フッ化ウレタン、及びそれらの組合せから選択された被覆材料を有する。
【0014】
第1の弾性的なガスケットは、第1の放射エネルギー孔を備えることが好ましく、それは、第1の部分の放射エネルギー入口、及び第2の部分の流体試料分析室と位置合わせされた状態になっている。ガスケットはさらに、第1及び第2の部分のそれぞれの第1及び第2の流体試料出口と位置合わせされた第2の流体試料出口孔を備える。さらに、ガスケットは、第1の放射エネルギー孔に対して第1の部分の流体試料入口と位置合わせされたガスケットの流体試料入口部分から延在する流体試料移動溝を備える。
【0015】
本発明の特定の実施例、特に中央の長手方向軸線に沿って測定して比較的長いセル本体組立体での実施例では、セル本体組立体を少なくとも部分的に囲むために外側ハウジングが設けられる。外側ハウジングは、第1のベース部分及びそこから延在する実質的に円筒形の側壁を備えることが好ましい。側壁は、セル本体組立体を少なくとも部分的に同心状に囲むことが好ましく、側壁の内径が特にセル本体組立体の外周を摩擦的に係合するように寸法を決められている。
【0016】
別の実施例では、流体分析装置で放射エネルギー伝達部材を実装するための方法は、少なくとも部分的にそこを通って延びる開放ボアを有するセル本体組立体を第1に提供する工程を含み、開放ボアが第1及び第2の両側の開放端部を有する。放射エネルギー伝達部材の外径とほぼ等しい内径、及び開放ボアの第1の直径寸法よりもわずかに大きい、応力を加えられていない外径を有する圧縮性の中空のフェルールがさらに設けられる。方法はさらに、フェルールを放射エネルギー伝達部材の第1の端部の周りに装着する工程と、放射エネルギー伝達部材の第2の端部をフェルールがその中に係合される程度に開放ボアの第1の端部に挿入する工程とを含む。フェルールの挿入は、フェルールを放射エネルギー伝達部材の周りで径方向に内側に圧縮させ、それによって放射エネルギー伝達部材を開放ボア内に摩擦的に係合させ、固定する。
【0017】
開放ボアは、第1の直径寸法よりも小さい第2の直径寸法を有することが好ましく、第2の直径寸法が開放ボアの第2の端部からフェルールの長さ寸法に少なくとも等しい距離だけその第1の端部から間隔を置いた位置に延在する。開放ボアの第1及び第2の寸法の接合点は、フェルールが開放ボアに過剰に挿入されるのを阻止するストップ・ショルダを形成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の流体分析装置の組立体断面図である。
【図2】図1に示された流体分析装置の一部分の分離断面図である。
【図3】図1に示された流体分析装置の一部分の分離断面図である。
【図4】図1に示された流体分析装置の一部分の分離上面図である。
【図5】図1に示された流体分析装置の一部分の拡大断面図である。
【図6】図1に示された流体分析装置の一部分の組立て前の概略断面図である。
【図7】図1に示された流体分析装置の一部分の分離上面図である。
【図8】本発明の流体分析装置の断面図である。
【図9】本発明の流体分析装置の断面図である。
【図10】放射エネルギー伝達部材を流体分析装置の開放ボア内に実装する好ましい技術をさらに示す、図1に示された流体分析装置の一部分の分離断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明によって示されたその他の目的、特徴、及び向上と共に上記に挙げた目的及び利点が、本発明の様々な可能な構成を表すように意図された添付の図面を参照して説明される詳細な実施例によって示される。本発明のその他の実施例及び態様は、当業者の理解の範囲内にあるものとして理解される。
【0020】
次に図面を参照し、先ず図1を参照すると、本発明の流体分析装置10が断面図で示され、流体内に配置され、互いに光学的に連通する第1及び第2の部分15、16を有するセル本体組立体12を備えている。図1に示されるように、第1及び第2の部分15、16は、互いに軸線方向に隣接した関係で配置された互いに独立したユニットであることが好ましい。
【0021】
第1の部分15は、第1の端部22、及び実質的に反対側にある第2の表面24を備えている。さらに、第2の部分16は、第1の端部32及び実質的に反対側にある第2の端部34を備え、第1の部分15の第1の端部22が第2の部分16の第1の端部32と向き合った関係で配置されている。
【0022】
図2の分離図に最も良く示されるように、第1の部分15は、入口ボア26、第1の出口ボア28、及び放射エネルギー入口ボア30を備えている。入口チューブ42は、入口ボア26内に配置されることが好ましい。そのようなチューブ42は、PEEK、PTFEなどの不活性材料から製造されることが好ましい。入口チューブ42は、その中を流れる流体を第1の部分15の第1の端部22に流すように第1の部分15の軸線方向長さ「L1」全体にわたって延在している。
【0023】
第1の出口ボア28は、第1の部分15の長さ「L1」全体にわたって軸線方向に延在することが好ましい。好ましくは、出口チューブ44は、第1の出口ボア28及び第2の出口ボア38を介して、第2の部分16の第2の端部34から第1の部分15を通って延在する一体型の配管である。出口チューブ44は、PEEK、PTFEなどの不活性材料から製造されることが好ましい。入口チューブ42は、第1の部分15の入口ボア26内で圧縮的に摩擦嵌合していることが好ましい。出口チューブ44は、第2の部分16の第1の出口ボア38内で圧縮的に摩擦嵌合していることが好ましく、一方、第1の部分15の第1の出口ボア28内で摩擦嵌合していないことが好ましい。しかし、別法として、入口チューブ42及び出口チューブ44の第1の部分15及び第2の部分16のそれぞれのボア内での摩擦嵌合は、接着剤、点溶接等を利用することによって向上させることができる。
【0024】
好ましくは、放射エネルギー伝達部材31は、第1の部分15の放射エネルギー入口ボア30に配置される。放射エネルギー伝達部材31は、放射エネルギーを軸線方向に通して効率的に伝播させる実質的に透明な要素であることが好ましい。したがって、放射エネルギー伝達部材31は、第1の端部22から第2の端部25にわたって第1の部分15全体にわたって軸線方向に延在するボア30内に固定された光ファイバー素子であることが好ましい。
【0025】
ボア30内に放射エネルギー伝達部材31を固定するための好ましい方法が、図10に示される装置によって例示されている。図中に示されるように、フェルール35は、放射エネルギー伝達部材31の第1の端部33の周りに配置されることが好ましく、フェルール35は端部33の周りに比較的緊密に嵌合している。フェルール35は、ある程度圧縮性の材料から製造されることが好ましく、具体的な例はPEEKである。応力を加えられていない状態で、フェルール35は、ボア30の第1の直径寸法Nよりわずかに大きい外径を有する。その結果、フェルール35がその周りに配置された放射エネルギー伝達部材31の挿入は、フェルール35を放射エネルギー伝達部材31の周りに径方向内側に圧縮させる。そうすることで、放射エネルギー伝達部材31は、開放ボア30内に摩擦的に固定される。
【0026】
開放ボア30内にフェルール35を圧縮的に嵌合するのを可能にするために、フェルール35の外径は、ボア30の第1の内側の寸法Nよりも約0.0254mm(0.001インチ)から0.1524mm(0.006インチ)大きい。フェルール35を開放ボア30に挿入することによってフェルール35に誘起された圧縮動作は、フェルール35と放射エネルギー伝達部材31の間に緊密な静水圧的な密封を形成するように、フェルール35の内径をわずかに減少させる。好ましい実施例では、開放ボア30は第1の直径寸法Nよりも小さい第2の直径寸法Nを有し、その直径寸法Nは開放ボア30の第2の端部25から少なくともフェルール35の長さ寸法「P」と等しい距離だけその第1の端部22から間隔を置いた位置に延在している。その結果、フェルール34の開放ボア30内への完全な挿入は、フェルール35の端部37を開放ボア30の第1の寸法N及び第2の寸法Nの接合点に形成されるストップ・ショルダ39と接触させる。したがって、ストップ・ショルダ39は、フェルール35が開放ボア30に過剰に挿入されるのを阻止する働きをする。
【0027】
特定の実施例では、放射エネルギー伝達部材31の端部表面41に光学的な仕上げを形成することが好ましい。そのような表面は、開放ボア30の第1の端部22から延びるフェルール35及び/又は放射エネルギー伝達材料31の過剰な材料をラップ仕上げし、研磨することによって形成できる。放射エネルギー伝達部材31の予め仕上げられた光学的表面41が設けられる実施例では、フェルール35を開放ボア30の第1の端部22と同一平面になるように押し込むことができる。したがって、本発明の方法により、放射エネルギー伝達部材31が破損又は位置ずれする大きな危険を伴わずに、それを開放ボア30に実装するための比較的単純な技術が可能になる。
【0028】
放射エネルギー伝達部材31を開放ボア30に実装する従来の方法は、実装する前に放射エネルギー伝達部材31の周りのポリマーのスリーブの熱処理を含む。次いで、従来の技術での部分的に溶融したスリーブは、開放ボア30内に実装することに続いて放射エネルギー伝達部材31の周りに再整形される。しかし、そのような熱処理は、放射エネルギー伝達部材31への熱応力を誘起するという良くない影響を有し、ラップ仕上げ及び/又は研磨工程が着手された場合、その熱応力によって破断を生じる恐れがある。さらに、従来技術の熱処理の使用は、Teflon AF(登録商標)が被覆された光ファイバー材料の一貫した使用を阻み、その代わりに、Teflon AF(登録商標)被覆の光ファイバー材料の所望の光学的な特性を有していないポリイミド被覆の光ファイバーに依存した。
【0029】
放射エネルギー伝達部材31は、放射エネルギーを放射エネルギー源(図示されない)から受取り、そのような放射エネルギーを第1の部分15全体にわたって軸線方向に効果的に伝達することが好ましい。放射エネルギー伝達部材31に対しては光ファイバー要素が好ましいが、当業者によって理解されるように、その他の放射エネルギー伝達材料が代わりに利用されてもよい。
【0030】
図3の分離図に最も良く示されるように、第2の部分16は、第1の出口ボア28と位置合わせされた、第2の出口ボア38を備えることが好ましい。したがって、第2の出口ボア38は、第2の部分16の長さ「L2」全体にわたって軸線方向に延在する。そのような様式で、出口チューブ44は、第1の出口ボア28及び第2の出口ボア38それぞれを通って軸線方向に延在する。さらに、第2の部分16は、流体試料分析室46を備えることが好ましく、その室46は、第2の部分16全体にわたって軸線方向に延在し、第1の部分15の放射エネルギー入口ボア30と軸線方向に位置合わせされたボアを備えている。特に、流体試料分析室46の中心軸線47は、第1の部分15の放射エネルギー入口ボア30の中心軸線と実質的に一致していることが好ましい。したがって、第1の部分15を通って伝達された放射エネルギーは、流体分析室46の第1の端部48に供給される。
【0031】
好ましくは、放射エネルギー案内部材52は、流体試料分析室46を画定する軸線方向ボア内で軸線方向に配置される。図3に示されるように、放射エネルギー案内部材52は、流体試料分析室46の中心軸線47の周りに径方向に配置されたチューブを形成することが好ましい。そのようにして、放射エネルギー案内部材52は、中心軸線47によって画定されるように、放射エネルギー伝達部材31及び流体試料分析室46を通る放射エネルギーの軸線を同心状に囲む。したがって、放射エネルギーは、放射エネルギー案内部材52の内径53によって画定される領域内の流体試料分析室46に入ることができる。
【0032】
上記したように、放射エネルギー案内部材52は、その光学的特性、特に放射エネルギー伝播特性に関して選択された材料から製造されることが好ましい。放射エネルギーが流体フィールドを通って伝播している、本発明によって企図されたような用途では、流体試料及び放射エネルギーを閉じ込めるチャネル壁を形成する材料が、分析されている流体試料の屈折率よりも小さな屈折率を有することが望ましい。特定の用途では、本発明の装置によって分析される流体試料は水溶性であるので、放射エネルギー案内部材52は、水の屈折率より少ない屈折率を有する材料から製造されることが好ましい。特に好ましいそうした材料の1つの例が、Teflon AF(登録商標)2400の商品名でE.I.デュポン社によって製造され、販売されているフッ化ポリマー製品である。出願人は、Teflon AF(登録商標)2400から製造された放射エネルギー案内部材52が、本発明の装置での所望の放射エネルギー伝播特性をもたらすことを明らかにした。したがって、放射エネルギー案内部材52は、中心軸線47の周りに径方向に配置され、Teflon AF(登録商標)2400から製造されたチューブの形をとることができる。
【0033】
本発明の実施例のいくつかでは、放射エネルギー案内部材52は、スリーブ部材56の中に少なくとも部分的に同軸的に収容され、そのスリーブ部材56は、流体試料分析室46を画定するボア内に放射エネルギー案内部材52を中心に位置合わせし、且つ放射エネルギー案内部材52を流体試料分析室46に挿入するのを助ける。好ましくは、スリーブ部材56は、TEFZEL(登録商標)、FEP、又はPTFEなどの比較的に弾性的なポリマー材料から製造される。TEFZEL(登録商標)は、デラウエア州ウイルミントンのE.I.デュポン社より入手可能である。
【0034】
上に示したように、放射エネルギー案内部材52は、その内壁53によって画定される内部チャネルを通って放射エネルギーを伝播させるような働きをすることが好ましい。放射エネルギー案内部材52に使用するために現在市販されている材料は、一般に実質的に透明である。したがって、たとえば放射エネルギー案内部材52の第1の端部48の上に衝突する放射エネルギーは、放射エネルギー案内部材52の側壁を軸線方向に通過し、その第2の端部50に到達することができる。流体試料分析室46を通過する放射エネルギーのある部分が、分析される流体試料を通過していないことにより、そうした放射エネルギーの通過は、スペクトロフォレシス(spectrophoresis)流体分析の精度に悪影響を及ぼす可能性のある「迷光」と見なされる。したがって、放射エネルギーを効果的に遮蔽し、或いは放射エネルギーが、分析される流体試料を第1に通過せずに流体試料分析室46を通過することを防止することが、本発明の流体試料分析室46の重要な態様である。そのような迷光を遮蔽する1つの方法は、流体試料分析室46の第1の端部48に配置された物理的な遮蔽要素を製造し、実装することであり、そのような遮蔽要素はその中に配置された孔を有し、その孔は、放射エネルギーが放射エネルギー案内部材52の側壁に入ることができないように、放射エネルギー案内部材52によって画定される開放チャネルと位置合わせされる。流体試料分析室46を通って迷光が伝達するのを効果的に防止するための別の方法は、放射エネルギー案内部材52及びスリーブ部材56の少なくとも一部分を不透光にすることである。不透光の放射エネルギー案内部材52を使用することにより迷光を遮断するための方法が、本発明と同じ譲受人に譲渡され、その内容が参照によって本明細書に援用される米国特許第6,734,961号に記載されている。
【0035】
図1に戻って参照すると、流体分析装置10は、セル本体組立体12の第1及び第2の部分15、16のそれぞれの第1端部22、32の間に挿入された第1の弾性的なガスケット62をさらに備えることが好ましい。弾性的なガスケット62は、第1及び第2の部分15、16を互いに流体的に連結し、液圧的に密封するように働くことが好ましい。図4の分離上面図に最も良く示されるように、弾性的なガスケット62は、放射エネルギー入口ボア30及び流体試料分析室46と位置合わせされ、より具体的には、放射エネルギー伝達部材31及び放射エネルギー案内部材52の内部壁53によって画定される中央チャネルと位置合わせされた流体分析装置10に装着された第1の放射エネルギー孔64を備える。したがって、放射エネルギーは、放射エネルギー伝達部材31から孔64を通過して、放射エネルギー案内部材52によって画定されたチャネル内に到達することができる。上述したように、本発明の特定の態様は、放射エネルギー伝達部材31によって供給された放射エネルギーが、放射エネルギー案内部材52の側壁に入るのを防止し、そうでなければ遮蔽することである。したがって、弾性的なガスケット62の第1の放射エネルギー孔64は、第1の放射エネルギー孔64と放射エネルギー案内部材52によって画定されたチャネルとの間で実質的に直径の一致が可能な寸法公差のものであることができる。そのような実施例では、弾性的なガスケット62は、実質的に不透光な材料から製造されることが好ましい。したがって、第1の放射エネルギー孔64の直径サイズが放射エネルギー案内部材52によって画定されたチャネルに実質的に等しい場合に、弾性的なガスケット62と流体分析装置10との位置合わせは困難である可能性があるので、本発明の特定の実施例は、特に、放射エネルギーが案内部材52の側壁を通って通過できないように、上記に参照された米国特許第6,734,961号にしたがって放射エネルギー案内部材52が不透光にされた場合、放射エネルギー案内部材52によって画定されたチャネルの直径よりもある程度大きな直径を有する第1の放射エネルギー孔64を備える。
【0036】
弾性的なガスケット62は、第1及び第2の部分15、16のそれぞれの第1及び第2の出口ボア28、38と位置合わせされた流体分析装置10に好ましく実装された、第2の流体試料出口孔66をさらに備えることが好ましい。したがって、流体試料出口チューブ44は、第1の弾性的なガスケット62の第2の流体試料出口孔66を通って延在することが好ましい。流体試料出口チューブ44が一体である結果、第2の流体試料出口孔66の直径寸法は、第1及び第2の流体出口ボア28、38のそれぞれの直径よりも大きくなっていることができる。実際には、本発明の好ましい態様は、第1の弾性的なガスケット62を流体分析装置10内に配置及び位置合わせするのが容易になるように、第1及び第2の出口ボア28、38より実質的に大きい直径を有する第2の流体試料出口孔66を設けることである。第2の流体試料孔66は、少なくとも直径が約0.254mm(約0.010インチ)であることが好ましく、直径が約0.254mm(約0.010インチ)と約1.524mm(0.060インチ)の間であることがさらに好ましい。
【0037】
図4に示されるように、第1の弾性的なガスケット62は、流体試料入口部分70から第1の放射エネルギー孔64に延在する流体試料移動溝68をさらに備えることが好ましい。第1の弾性的なガスケット62の流体試料入口部分70は、第1の部分15の入口ボア26と位置合わせされ、特に入口ボア26を通って延在する入口チューブ42と位置合わせされた流体分析装置10に実装されることが好ましい。その結果、第1の部分15の第1の端部22にある入口チューブ42から出る流体試料は、流体試料移動溝68を通って第1の放射エネルギー孔64に向けられる。次いで、入口の試料流体は、弾性的なガスケット62の放射エネルギー孔64を通って流体試料分析室46内に入る。
【0038】
本発明の好ましい実施例では、流体試料移動溝68は、図4Aの端部断面図に示されるように、第1の弾性的なガスケット62の厚さ寸法の一部分のみにわたって延在する。溝68を弾性的なガスケット62の厚さ寸法「T」の一部分のみにわたって延在させる1つの目的は、放射エネルギー伝達部材31から進入する放射エネルギーが放射エネルギー案内部材52の側壁内に漏洩しないように、孔64及び孔66を除く全ての位置で弾性的なガスケット62の不透光性を維持することである。しかし、不透光の放射エネルギー案内部材52を利用する実施例では、流体試料移動溝68が第1の弾性的なガスケット62の厚さ寸法「T」の全体にわたって延在する。さらに、流体試料入口部分70は、用途ごとに望まれるように第1の弾性的なガスケット62の厚さ寸法「T」の一部分又は全体にわたって延在することができる。
【0039】
本発明の特に好ましい実施例では、セル本体組立体12の第1及び第2の部分15、16は、ステンレス鋼などの不活性金属材料から製造される。本発明が対処する従来の流体分析システムの欠陥は、セル本体組立体12の第1及び第2の部分15、16の液圧的な密封などの、別個の金属構成要素の互いの液圧的な密封にある。従来の設計は、比較的高い内部流体圧力の下で動作する場合に、流体の漏洩を防止するために第1及び第2の部分15、16などの金属の構成要素を互いに液圧的に密封することができない。しかし、第1の弾性的なガスケット62は、比較的高く想定された動作流体圧力の下でも液圧的な密封を維持するように、第1及び第2の部分15、16の互いの液圧的な密封を十分な程度まで可能にする。同様な態様で、第2の弾性的なガスケット92は、第2の部分16をセル・ウインドウ96に対して液圧的に密封できるようにする。そのような液圧的な密封を可能にするために、ガスケット62は、弾性的且つ順応性を有するものであるが、第1の部分15と第2の部分16の間でプレス嵌めされるとき、その構造上の一体性及び動作上の位置合わせの特性を維持する材料から製造されることが好ましい。本発明のガスケット62及び92に有用な例としての材料には、Kapton(登録商標)、又はPTFE若しくはフッ化ウレタンなどの弾性的な材料が主要な表面71、72の片方若しくは両方に被覆されたステンレス鋼金属基材などの被覆された金属基材が含まれる。本発明のガスケット62、92の局所的な被覆の適用に有用なフッ化ウレタンは、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーの21st Century Coatingsから入手可能であり、又は1999年Hougham等による「Fluoropolymers 1,Synthesis」に記載されているような直接合成法によって使用できる。
【0040】
ガスケット62は、厚さ寸法「T」が約50μmであることが好ましい。ガスケット62が被覆された金属基材である実施例では、金属基材は約50μmの厚さであり、弾性的な材料の被覆は、各主要な表面71、72で約1μmと40μmの間の厚さである。
【0041】
第1又は第2のガスケット62、92は、不透光でない材料、又は仕上げ加工されたガスケットがその比較的薄い厚さから不透光にならない材料から製造される場合、放射エネルギー孔64は、たとえば、その円周の周りに径方向に配置された金属化被覆を含むことができることが好ましい。そのような金属化被覆は、孔64の周りに放射エネルギー案内部材52の側壁に入る迷光を遮断するのに十分な程度に径方向に延在するのが好ましい。したがって、金属化被覆は、孔64の外周寸法を越えて約100μmと500μmの間延在する。或いは、非金属材料の不透光な被覆が孔64の周囲に配置されてもよい。しかし、そのような不透光な被覆は、上述したように、放射エネルギー案内部材52が放射エネルギーを遮断する不透光部分を備える場合には必要でない。
【0042】
本発明の特定の態様では、ガスケット62、92の厚さ寸法「T」により、孔64の既知の移動領域長さ65がもたらされ、そこを通って試料流体及び放射エネルギーが同時に移動する。動作の際には、試料流体が移動領域の長さ65全体にわたって孔64を満たし、それによって放射エネルギーが、放射エネルギー案内部材52のない、流体で満たされた移動領域65を通過すると、計算可能な放射エネルギー損失を生じる。その結果、孔64に入る放射エネルギーは、移動領域65によって画定される体積全体にわたって分散できるようになり、放射エネルギーの部分的な拡散又は損失を生じる。比較的高い屈折率を有する流体によって、比較的低い屈折率を有する流体と比較して移動領域65内での放射エネルギー損失の程度はより大きくなる。この関係は、本出願の同じ譲受人に譲渡され、参照によって本明細書に援用される、米国特許第6,678,051号に記載されている。
【0043】
そのような関係を使用して、本発明のセル本体組立体12の製造者は、第1及び第2のガスケット62、92のうちの1つ又は複数に関する適切な厚さ寸法「T」を選択し、それによって、孔64を通過する際の放射エネルギー損失の計算可能な量に対応する所望の移動領域寸法65を定義することができる。そのような制御可能な変数によって、製造者は、周知の厚さ寸法「T」の1つ又は複数のガスケット62、92を実装することができ、それは異なる屈折率を有する種々の流体と共に利用される時、装置10全体のエネルギー損失を効果的に較正する。そのような態様で、装置10全体の放射エネルギー損失は、適切に較正する厚さ「T」のガスケット62、92を割り当てることによって様々な流体と共に使用するために標準化される。
【0044】
たとえば、孔64内に配置された比較的高い屈折率の流体は、比較的高い屈折率の流体によって生じる比較的高い程度の放射エネルギー損失を相殺するために、比較的少ない厚さ寸法「T」を有する1つ又は複数のガスケット62、92と共に利用されることが好ましい。それに対応して、ガスケット62、92に関する比較的大きな厚さ寸法「T」は、比較的小さい屈折率の流体が装置10で利用される場合に使用できる。そのような方法論によって、装置10を通って伝達される放射エネルギーに曝されたそれぞれの流体に関して適切な固有のガスケットの組合せが利用できる。
【0045】
図1に戻って参照すると、流体分析装置10は、ベース部分84及び側壁86の組合せによって画定される境界内にセル本体組立体12を少なくとも部分的に同心状に囲むように、第1のベース部分84及びベース部分84から延在する実質的に円筒形の側壁86を有する外側ハウジング82備えることが好ましい。好ましくは、側壁86の内径「D」は、第1及び第2の部分15、16が、約5と約20μmの間の円周方向の間隙を有するベース部分84及び側壁86によって画定される室に挿入できるように特に寸法を決められている。セル本体組立体12を構成する複数の別個のユニットの間を精密に軸線方向に位置合わせする動作上の利点は、別個の外側ハウジングユニット82を組み込むことによって促進されることが出願人によって明らかにされた。したがって、少なくとも第1及び第2の部分15、16は、外側ハウジング82の少なくとも部分的な範囲内にそうした第1及び第2の部分15、16を実装することによって、互いに単純に精密に軸線方向に位置合わせされる。
【0046】
これまでは、セル本体組立体12を構成するそうした別個の要素の間の正確な軸線方向の位置合わせを確かにするために、セル本体組立体12を構成する複数の個別の部分の効率の悪い手による位置合わせが必要であった。本発明の外側ハウジング82は、所定の寸法の区画を備えることによってこの効率の悪い手順をなくし、その区画は、セル本体12をその中に密着して固定する。そのような効用は、比較的長い全長寸法「L3」を有するセル本体組立体12に特に適用可能である。好ましくは、ナット14を含むセル本体組立体12は、約2mmと約100mmの間の全長「L3」を有し、セル本体組立体12の特に好ましい実施例が全長「L3」で3mm、5mm、10mm、25mm及び75mmになっている。
【0047】
本発明のいくつかの実施例では、外側ハウジング82は、第1の部分15内に対応して構成されたノッチ79と係合するための側壁86に配置された回転防止部材88を備える。しかし、そうしたノッチ79は、その代わりに第2の部分16に配置されてもよい。さらに、複数の回転防止部材/ノッチの組合せが本発明の流体分析装置10に組み込まれてもよい。
【0048】
図1にさらに示されるように、第2の弾性的なガスケット92が第2の部分16の第2の端部34と外側ハウジング82のベース部分84との間に挿入されることが好ましい。第2の弾性的なガスケット92は第1の弾性的なガスケット62と同一であることが好ましいが、第1の弾性的なガスケット62の流体試料入口部分70が第2の弾性的なガスケット92の第2の流体試料出口部分としての働きをする必要がある。したがって、流体試料入口部分70は、第2の弾性的なガスケット92のために厚さ寸法「T」全体にわたって延びる孔を備えることができる。そのように構成されると、第2の弾性的なガスケット92の第2の流体試料出口孔70が第2の部分16の第2の出口ボア38と位置合わせされた流体分析装置10に実装される。そのようにして、流体試料分析室46から出る流体試料は、第2の出口ボア38内に流され、特に第2の弾性的なガスケット92の第2の流体試料出口孔70を介して流体試料出口チューブ44内に流される。
【0049】
第2の弾性的なガスケット92は、第2の部分16と、外側ハウジング82のベース部分84に配置されたウインドウ96との間に液圧的な密封をもたらすように、第2の部分16の第2の端部34に設けられることが好ましい。当技術分野で知られるように、ウインドウ96は、装置10に利用されるたとえば溶融シリカ、ダイアモンド、サファイア、又は放射エネルギー波長に対して透過性のその他の不活性材料から製造でき、流体試料分析室46から出て放射エネルギー検出器(図示されない)に到達する放射エネルギーを伝達するのに利用される。第2の弾性的なガスケット92は、第1の弾性的なガスケット62を言及して上述したような材料から製造されることが好ましい。さらに、第2の弾性的なガスケット92は、移動溝68がウインドウ96と向き合った関係であり、それによって流体的に押し流されない体積を減らすように向けられていることが好ましい。
【0050】
好ましくは、第3のガスケット99がウインドウ96とベース部分84の間に配置され、それによって第2の部分16の第2の表面34とウインドウ96の間の適切な位置合わせを確実にするのを助ける。第3のガスケット99は、ベース部分84を通ってウインドウ96から出ていく放射エネルギーの遮断又は干渉を回避するのに十分に大きな寸法の孔101を有するものとして図7に示される。第3のガスケット99は、ナット14が第1及び第2の部分15、16をベース部分84に向かって駆動する結果として圧力が第2の部分16からウインドウ96に加えられる時、ウインドウ96とベース部分84の間で圧縮される弾性的な材料から製造されることが好ましい。そのような圧縮可能な第3のガスケット99は、ウインドウ96と第2の部分16の第2の表面34との間のような、それぞれの実質的に平坦な表面が、外側本体82内でナット14の締付けを介してウインドウ96に対して第2の部分16を軸線方向に装着することによって互いに平行に位置合わせできるようにするのを助ける。最も好ましくは、第3のガスケット99は、FEP、TEFZEL(登録商標)などの透明な不活性材料から製造されることが好ましい。
【0051】
図5に示された第2の部分16の実施例では、第1の固定構造112が流体試料分析室46に設けられ、流体試料分析室46の第1の端部48に隣接して配置される。第1の固定構造112は、好ましくはセル本体組立体12の第2の部分16の設計詳細であり、放射エネルギー案内部材52を流体試料分析室46内に動作可能且つ静止して固定するように特別に構成されている。第1の固定構造112は、第2の部分16に対する放射エネルギー案内部材52とスリーブ部材56の組合せの間の相対運動を防止するように働く。そのような運動に対する抵抗は、スリーブ部材56が室壁49に対して流体試料分析室46内に堅固に圧縮的に嵌合することにより、第1の固定構造112とスリーブ部材56の間の境界面で発生する摩擦抵抗力のみによって生じる。さらに、放射エネルギー案内部材52は、下記に述べられる過程によってスリーブ部材56に摩擦的に固定される。したがって、第1の固定構造112は、スリーブ部材56と第2の部分16との間の相対運動に対する比較的大きな程度の摩擦抵抗を生成するための焦点をもたらし、それによって放射エネルギー案内部材52を流体試料分析室46内に固定可能に保持する。
【0052】
好ましくは、流体試料分析室46は、流体試料分析室46の第1の長さxにわたって延在する第1の直径寸法D、及び流体試料分析室46の第2の長さxにわたって延びる第2の直径寸法Dを有する。図5に示されるように、第2の直径寸法Dは、第1の固定構造112にスリーブ部材56と第2の部分16の間の相対運動に対する摩擦抵抗の適切な焦点をもたらすのに十分な量だけ第1の直径寸法Dよりある程度大きいことが好ましい。好ましくは、第1の直径寸法Dが約0.762mm(約0.03インチ)になって、第2の直径寸法Dが約0.0254mm(約0.001インチ)だけ第1の直径寸法Dよりも大きい。第1の固定構造112での流体試料分析室46の直径寸法の変更により、好ましくは室壁49に対して角度を付けて向けられる第1の移行セグメント118が形成される。
【0053】
図5に示されるように、第2の部分16は、それと共に形成された第2の移行セグメント120を有する第2の固定構造114をさらに備えることができる。図5に示される実施例は、第1及び第2の固定構造112、114に関する様々な構成を代表するものである。たとえば、第1及び第2の移行セグメント118、120は、或いは、異なる構成を一緒に反映させることができる。さらに、代わりに、第2の直径寸法Dは、第1の直径寸法Dより小さく、又は第1及び第2の固定構造112、114の間で交互になることができる。さらに、出願人によって企図された範囲内にとどまりながら、1つ又は複数のそうした固定構造112、114を本発明の装置に組み込むことができる。本明細書に示され、述べられた実施例は、スリーブ56と室49の間の摩擦抵抗の1つ又は複数の焦点を形成するように、流体試料分析室46の直径寸法の内部的な変更の例を表すに過ぎない。
【0054】
放射エネルギー案内部材52を流体試料分析室46に堅固に実装するための好ましい方法には、スリーブ部材56の弾性的な性質を利用するスリーブ圧縮技術が含まれる。上述のようなスリーブ部材56は、TEFZEL(登録商標)などの比較的弾性的な材料から製造されることが好ましく、流体試料分析室46の第2の直径寸法Dよりわずかに大きい、応力を加えられていない外径、及び放射エネルギー案内部材52の外径と実質的に等しいがそれよりもわずかに大きい内径寸法とを有するチューブとして形成される。最初に、放射エネルギー案内部材52は、図6に示されるようにスリーブ部材56によって画定されたチャネルに挿入される。スリーブ部材56は、スリーブ部材56を把持し、流体試料分析室46に引き入れ、その中に通すための第2の端部51の場所をもたらすように放射エネルギー案内部材52より最初はある程度長くなっていることが好ましい。
【0055】
スリーブ部材56は、方向「Y」に沿って細長くなっていることが好ましく、そのように細長くすることによって、スリーブ部材56の内径及び外径の両方を縮小し、そうして流体試料分析室46を通して供給されるのに十分に小さいようにする。スリーブ部材56の直径をそのように縮小することは、さらに放射エネルギー案内部材52をその中に強固に摩擦係合するように働く。しかし、実装手順の間、スリーブ部材56の弾性限界を超えてはならない。スリーブ部材56と放射エネルギー案内部材52との組合せが流体試料分析室46内の定位置に置かれた後に、その組合せはその固有の弾性回復力の下で弛緩することができ、それによってスリーブ部材56を室壁49に摩擦的に係合させ、固定する。
【0056】
図5に示された構成の中へのスリーブ部材56と放射エネルギー案内部材52が物理的に弛緩するのをさらに向上させ、助けるために、第2の部分16内でスリーブ部材56と放射エネルギー案内部材52の実装された組合せに1つ又は複数の熱処理サイクルが行われる。熱サイクルは、約10分の間、約80℃と約100℃の間へその組合せを囲む温度環境を上昇させることを表す。増加及び低下の比率は、温度サイクルの実施に対して過度に重要なものではないが、1分間当り10℃の温度上昇率、及び1分間当り20℃の温度低下率が好ましいことが見出されている。本発明の特定の実施例では、スリーブ部材56と放射エネルギー案内部材52を完全に弛緩させて、図5に示された構成と整合する室壁49と摩擦係合させるために、周囲温度と約80℃の最大熱処理温度との間で4サイクルがその組合せに行われる。温度サイクルが完了した後に、流体試料分析室46から延在する過剰な材料が、たとえばミクロトミング手順を使用して切断される。
【0057】
そのような実施例では、第1のガスケット62は、全ての迷光がスリーブ部材56及び光案内部材52の両方に入らないように遮蔽するように構成されるので、放射エネルギー案内部材52が実質的に透明な本体のままにされると、スリーブ部材56を半透明の材料を使用して製造することもできる。放射エネルギー案内部材52が上記したように不透光にされた環境では、スリーブ部材56も不透光な材料から製造される限り、第1のガスケット62は迷光を遮蔽する必要はない。スリーブ部材56及び放射エネルギー案内部材52の両方が、迷光がそこを通るのを防止するのに必要な程度まで不透光である実施例では、第1のガスケット62は、セル本体組立体12の隣接する部分の間で流体を方向付ける要素、間隔を作る要素、及び順応性を有する密封要素として働く必要があるだけである。
【0058】
本発明の別の実施例において、及び図8に示されるように、装置210は外側本体282内に配置されたセル本体組立体212を備える。ナット214は、外側本体282内で第1、第2、及び第3の部分215、216、217を強固に実装するために、外側本体282内にねじ込み可能に挿入可能であり、ばねワッシャ213を押し付けることが好ましい。図8に示されるように、セル本体組立体212は、第1の部分215、第2の部分216、及び第3の部分217を備える。第1の部分215は入口ボア226を備え、その中に入口配管242が配置されるが、装置10の第1の部分15の符号28を参照して述べられるような第1の出口ボアを組み込まない。その代わりに、第3の部分217は、試料流体を装置210から除去できるようにするための流体出口ボア229及び出口配管233を備える。第3の部分217に出口ボア229及び出口配管233を備えることにより、第2の部分216は、装置10の第1の出口ボア38を参照して述べられるような、その中に配置された出口ボアを備えないことが好ましい。
【0059】
第3の部分217は、放射エネルギー出口ボア281をさらに備えることが好ましく、その中に放射エネルギーを流体分析室246から放射エネルギー検出器(図示せず)に伝達するために、光ファイバー要素282が配置されている。したがって、図8に示された実施例では、放射エネルギーを装置210から外に伝達するのに第3の部分217が装置10のウインドウ96の代わりに使用される。さらに、第1及び第2の弾性的なガスケット62、92を参照して上記したように、セル本体組立体212は、第1及び第2の弾性的なガスケット262、292を利用することが好ましい。しかし、第2の弾性的なガスケット292は、流体分析室246を出ていく流体が外側配管233に流されるように、流体分析室246と第3の部分217の出口ボア229の間に移動溝268を位置合わせするように向けられることが好ましい。図8に示された実施例のさらなる態様は、第1及び第3の部分215、217の両方が実質的に同一な構成要素として製造でき、流体試料と放射エネルギーの両方をセル本体組立体212の中に入れ、そこから外に排出するのを遂行するために、装置210内で互いに対して反対の向きに配置される必要があるだけのものである。
【0060】
本発明のさらなる実施例が図9に示され、装置310が、装置10の第1の部分15を参照して上記した第1の部分315と、装置10の第2の部分16にしたがって構成された第2の部分316と、装置10の第1及び第2の弾性的なガスケット62、92にしたがって製造され、構成された第1及び第2の弾性的なガスケット362、392とを備える。しかし、装置310は、装置10のウインドウ96に代わって機能的に配置された第3の部分317を備えることが好ましく、第3の部分317は、放射エネルギーを流体分析室346から放射エネルギー検出器(図示されない)に伝達するためにその中に配置された出口放射エネルギー伝達部材383を有する放射エネルギー出口ボア381を備える。第3の部分317は、その間に配置された第2の弾性的なガスケット392と圧縮嵌めすることによって第2の部分316対して液圧的に密封されることが好ましい。
【0061】
図1に戻って参照すると、セル本体組立体12は、定位置に外側ハウジング82によって径方向に固定されることが好ましい。しかし、セル本体組立体12の第1及び第2の部分15、16などの複数の別個の部分は、第1及び第2の別個の部分15、16を互いに軸線方向に連結するためのナット14などの締結具をさらに必要とすることができる。たとえば、セル本体組立体12のそれぞれの構成要素を定位置に固定するその他の手段には、締付けデバイス、接着剤等が含まれる。図1にさらに示されるように、ベース部分84は、ねじ128を介して外側ハウジング82の側壁86に固定されることが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の分析中にそうした流体を収容するためにその中に配置された室を有するセル本体であって、前記室が第1の端部、第2の端部、及びその間に延在する中心軸線を有するセル本体と、
前記室の前記第1の端部に隣接して配置された第1の固定構造であって、前記第1の固定構造が、放射エネルギー案内部材を前記室内に動作可能且つ静止して固定し、前記放射エネルギー案内部材と前記第1の固定構造との間の相対運動に対する摩擦抵抗のみによって前記中心軸線の周りに径方向に配置されるように特に構成された第1の固定構造とを備える流体分析装置。
【請求項2】
流体分析セル本体内に放射エネルギー案内部材を堅固に実装する方法であって、前記実装方法が、
(a)前記セル本体にそこを通って延在する開放室を設ける工程であって、前記開放室が第1の開放端部、第2の開放端部、及びその間に延在する中心軸線を有する工程と、
(b)前記開放室の第1の直径寸法よりもわずかに大きい、応力を加えられていない外径、及び前記放射エネルギー案内部材の外径に実質的に等しいが、それよりもわずかに大きい内径を有するチューブの形の圧縮スリーブ部材を提供する工程と、
(c)前記放射エネルギー案内部材を前記圧縮スリーブ部材によって画定されるチャネルに挿入する工程と、
(d)前記圧縮スリーブ部材と前記放射エネルギー案内部材の組合せを前記開放室に引き込む工程であって、そのように引き込むことによって、前記放射エネルギー案内部材の周りで前記圧縮スリーブ部材が細長くなり、且つ細くなり、それによって前記圧縮スリーブ部材及び前記放射エネルギー案内部材が互いに摩擦的に係合し、固定する工程と、
(e)前記圧縮スリーブ部材と前記放射エネルギー案内部材の前記組合せが、前記開放室内で弛緩し、延伸できるようにする工程であって、そのような延伸によって、前記圧縮スリーブ部材が前記セル本体に摩擦的に係合し、固定する工程とを含む方法。
【請求項3】
流体試料を収容し、分析するための流体分析装置に放射エネルギー伝達部材を実装する方法であって、前記方法が、
(a)少なくとも部分的にそこを通って延びる開放ボアを有するセル本体組立体を提供する工程であって、前記開放ボアが第1及び第2の両側の開放端部を有する工程と、
(b)前記放射エネルギー伝達部材の外径と実質的に等しい内径、及び前記開放ボアの第1の直径寸法よりもわずかに大きい、応力を加えられていない外径を有する圧縮性の中空のフェルールを提供する工程と、
(c)前記フェルールを前記放射エネルギー伝達部材の第1の端部の周りに装着する工程と、
(d)前記放射エネルギー伝達部材の第2の端部を前記フェルールがその中に係合される程度に前記開放ボアの前記第1の端部に挿入する工程であって、前記フェルールをそのように挿入することによって、前記フェルールが前記放射エネルギー伝達部材の周りで径方向に内側に圧縮され、それによって前記放射エネルギー伝達部材を前記開放ボア内に摩擦的に係合し、固定する工程とを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−8143(P2012−8143A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196230(P2011−196230)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【分割の表示】特願2007−549370(P2007−549370)の分割
【原出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506150940)レオダイン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (4)
【氏名又は名称原語表記】RHEODYNE,LLC
【Fターム(参考)】