説明

流体分離フィルタ構造体及びそれを用いた流体分離モジュール

【課題】
収束体内に収納できるフィルタの密度を高めて、フィルタの中央部から外周部への液体流出、または外周部から中央部への液体流入を円滑にし、液体透過効率を最大限に高めることができるとともに、収束体の構造体としての信頼性が高く、さらに収束体を複数収束することで、コストを低く、かつ容易に大型化でき、流体分離能を保持しつつ長寿命である流体分離フィルタ構造体を提供すること。
【解決手段】
チューブ状で多孔質体のフィルタ2が複数本収束された収束体3を、支持体6に離間させるように、接合材により、それぞれ固定したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水などの液体と、その液体中に含まれる気体、液体または固体を透過、分離するフィルタを備えた流体分離フィルタ構造体及びそれを用いた流体分離モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体中に存在する固体、例えば、水に含まれる有機物等の汚物を選択的に透過、分離することのできるフィルタを備えた、流体分離フィルタ構造体が知られている。
【0003】
この種の流体分離フィルタ構造体としては、例えば、図8に示すように、特許文献1及び特許文献2において、互いに並列して長手方向に延びる多数の流通路38を有する支持体36の各流通路38を区画する隔壁の内周面に、支持体36の細孔径よりも小さい平均細孔径の多孔質のフィルタ32を備え、一端側または両端側から上記各流通路に供給された被処理液体の一部をフィルタ32に透過して上記隔壁内に侵入させ、侵入した被処理液体を同隔壁内に通して支持体36の外部へ流出させるモノリス形セラミック流体分離フィルタ構造体31が提案されている。
【0004】
また、特許文献3では、複数のフィルタを、直接、接合材で接合し封止するとともに、該接合材を上記フィルタの外表面から1.0μm以上の深さの細孔内にまで充填することにより、上記フィルタと上記接合材との接合強度を高めることができることが提案されている。
【特許文献1】特開平6−99039号公報
【特許文献2】特開平11−169679号公報
【特許文献3】特開2001−219037号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2では、互いに並列して長手方向に延びる多数の流通路38を有するハニカム状あるいはモノリスタイプの流体分離フィルタ構造体31であり、流通路38により、被処理液体の流動抵抗を多少緩和できるものの、図8に示すように各フィルタ32が緻密に形成されているために、被処理液体との接触面積が小さく、流体分離フィルタ構造体31全体の隔壁内部の液体拡散、液体移動速度が遅くなり、流体分離フィルタ構造体31の洗浄時において、中央部から外周部への被処理液体の流出する場合や、逆洗浄時における流体分離フィルタ31の外周部から中央部への被処理液体の流入する際に、流体の移動が円滑にはいかず、流体分離フィルタ構造体31全体の液体透過効率が低いといった課題があった。
【0006】
そして、フィルタ32の端面部と上記支持体の端面部が同一面であったことが原因で、ケーシングへの挿入の際に、強度の低いフィルタ32の端面部が損傷することがあった。
【0007】
次に、大型化の要求に対して、特許文献1及び特許文献2のようなハニカム状あるいはモノリスタイプの流体分離フィルタ構造体31では、これを作るためには、大型の押し出し機が必要となり、コストが大きくなるといった課題があった。また、大型化できたとしても、流体分離フィルタ構造体31の中央部が益々十分に機能しなくなり、流体分離フィルタ構造体31全体の液体透過効率が低くなるという課題があった。
【0008】
加えて、これまでの流体分離フィルタ構造体31は、作業中または運転中に、上記フィルタ32にクラックやカケなどの異常が発生し、破損した場合、修正することが困難であり、流体分離フィルタ構造体31全体を交換せざるを得ないといった課題があった。
【0009】
そこで、これらを解決する方法として、特許文献3のガス分離モジュールを流体分離フィルタ構造体として使用することも考えられるが、特許文献3のガス分離モジュールでは、逆洗浄の際、収束体端面部または各フィルタ32内径部に付着したガラスのために、液体に含有された汚物が詰まり、液体透過流動の妨げとなるといった課題があったため、使用することができなかった。
【0010】
また、大型化の要求に対して、複数本フィルタを収束しなければならず、外周部から中央部、あるいは中央部から外周部への被処理液体の流入出が円滑にはいかず、流体分離フィルタ構造体当りの液体透過効率が低くなるといった課題があった。
【0011】
さらに、大型化の要求に対して、中央に貫通孔35を有する支持体36の設計をする際、貫通孔35に固定される複数の隣り合うフィルタ32の累積寸法を考慮しなければならず、設計がより困難となり、また加工に要する工程も長く必要となり、さらに加工コストも大きくなるといった課題があった。
【0012】
従って、本発明の流体分離フィルタ構造体は、上記課題に対してなされたもので、その目的は、収束体内に収納できるフィルタの密度を高めて、液体透過効率を最大限に高めることができるとともに、収束体の構造体としての信頼性が高く、さらに収束体を複数収束することで、コストを低く、かつ容易に大型化することができ、流体分離能を保持しつつ長寿命である流体分離フィルタ構造体を供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の流体分離フィルタ構造体は、チューブ状で多孔質体のフィルタを収束した複数の収束体と、各収束体同士が離間して配置して収束体群を形成するように上記各収束体の両端を接合材を介して支持する支持部材とからなることを特徴とする。
【0014】
また、上記収束体群は、中央長手方向に流通路を有し、該流通路の周囲に沿って複数の上記収束体が配置されていることを特徴とする。
【0015】
上記支持体は複数の貫通孔を有し、該貫通孔に上記収束体の一端を保持してなり、該収束体の端面が、上記支持体の端面よりも内側に入った凹面となっていることを特徴とする。
【0016】
上記貫通孔の少なくとも片側にテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0017】
上記接合材が無機接合材であることを特徴とする。
【0018】
上記無機接合材が、硼珪酸ガラスであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の流体分離モジュールは、上記流体分離フィルタ構造体を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
以上の本発明の流体分離フィルタ構造体によれば、支持体により収束体同士が離間して収束体群を形成しているので、各収束体の隙間に分離液体と分離前液体のいずれかを流通さる被処理液体の流通路を形成することができるので、被処理液体の拡散、被処理液体の移動速度を円滑にすることができ、流体分離フィルタ構造体当りの液体透過効率を上げることができる。
【0021】
また、流体分離フィルタ構造体の大型化の要求に対して、フィルタの本数が多くなっても、上記収束体の配置数が多くなることで、同形状の収束体を、大きさを変えずに複数配置することができ、短工程・低コストとなり有利であり、かつ液体拡散、液体移動速度を円滑にすることができ、流体分離フィルタ構造体当りの液体透過効率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施するための最良の形態について説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る流体分離フィルタ構造体の一実施例を示す斜視図である。そして、図2は図1におけるA方向から見た正面図を示しており、図3(a)は図1におけるX−X断面図を、図4(a)は図1におけるY−Y断面図をそれぞれ示している。また、図3(b)、図4(b)はそれぞれの断面図の拡大断面図をそれぞれ示すものである。
【0024】
また、図6及び図7は、本発明に係る流体分離フィルタ構造体の第2、第3の一実施例を示す収束体端部の概略図である。
【0025】
以下、本発明の流体分離フィルタ構造体の一実施例である図1を用いて説明する。
【0026】
図1によれば、流体分離フィルタ構造体1は、被処理液体中から有機物等の汚物を選択的に透過、分離することのできるチューブ状で多孔質体のフィルタ2を複数本収束した収束体3が、内部に複数の貫通孔5を有する支持体6の貫通孔5内にそれぞれ挿入され、両端部を接合材4によって、封止、固定されて構成されている。ここで、各収束体3は、離間されて形成されている。
【0027】
また、被処理液体が流体分離フィルタ構造体1の外周部から中央部、または中央部から外周部に流入出する際に、液体移動速度を最も円滑にすることができるように、収束体3が、支持体6にハニカム状に形成されていることが好ましい。
【0028】
また、特に流体分離フィルタ構造体1の中央部の液体流動、液体移動速度を円滑にするために、長手方向に一つ以上の大きな流通路8aが存在し、その周囲に沿って複数の上記収束体3が配置されていることが好ましい。
【0029】
ここで、大きな流通路8aとは、流体分離フィルタ構造体1の中央部に位置する最も空間の広い流通路であり、その大きな流通路8aの周囲に各収束体3が配置され、各収束体3間に流通路8bが形成されている、さらに、各収束体3を構成する各フィルタ2間にも小さな流通路8cが形成されている。
【0030】
また、フィルタ2同士の間隔は、フィルタ2の充填密度を高めることや、流体分離フィルタ構造体1の機械的強度を高めるために、実質的に直接接触していることが望ましい。しかしながら、流体分離フィルタ構造体1の被処理液体の流通、拡散を促進して液体透過効率を高めるためには、全てのフィルタ2間の最大距離が0.1〜1mmの範囲で、接合材4を介して接続されている方がよい。
【0031】
ところで、フィルタ2間の最大距離が0.1mm未満の値の場合、液体透過効率が低下するとともに、フィルタ2損傷の際の交換作業が行い難く、また、フィルタ2間の最大距離が1mmよりも大きい値であると、流体分離フィルタ構造体1当りの有効膜面積が小さくなり、さらに、収束体3の強度も低下してしまう。その為、フィルタ2間の距離は0.1〜1mmの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜0.5mmの範囲であることが良い。
【0032】
また、支持体6は貫通孔9を有し、貫通孔9に収束体3の一端を保持してなり、収束体3の端面が、支持体6の端面よりも内側に入った凹面となっていることが好ましい。
【0033】
さらに、貫通孔9の少なくとも片側にテーパ面7が形成されていることが好ましい。
【0034】
ここで、収束体3を構成するフィルタ2の端面2aが、支持体6の端面6aよりも凸面または同一面であった場合、フィルタ2は、収束体3よりも強度が弱い為、収束体3がハウジングと接触した場合に、損傷を起こす危険性がある。
【0035】
さらに、収束体3を構成するフィルタ2の端面2aが、支持体6の端面6aよりも、凸面である場合は、液体の圧力を直接受けることでフィルタ2の劣化が早くなることがある。そのため、支持体6の端面よりも内側に入った凹面となっていることが好ましい。さらに内側に入った凹面の形状としては、貫通孔9の少なくとも片側にテーパ面7を形成するのが良く、この場合の少なくとも片側とは、流体分離フィルタ構造体1の外側にあたる支持体6の端面を指す。これらを形成することにより、エッジによる液体流動の妨害もなく、被処理液体の流入出を円滑にすることが可能となる。
【0036】
また、収束体3の両端部において、接合材4の範囲の合計が、フィルタ2の全長L寸法の30%以下の範囲で、且つ、上記各フィルタの側面のみが封止部であることが好ましく、特に、10%以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0037】
ところで、フィルタ2の全長L寸法の30%以下の範囲としているのは、収束体3及び支持体6が十分な接合力を備えた接合材4により接合・封止されることで、強度的に安定し、収束体3と支持体6の隙間から分離されていない未処理の液体が流出するのを防ぐためである。しかしながら、30%よりも多い範囲で接合・封止されると、有効膜面積が極端に小さくなり、液体透過効率が低くなるため、水質用途で使用するには不適当である。
【0038】
さらに、10%以下の範囲が好ましいのは、上記の理由に加え、接合材4により接合部を減らすことで、処理が可能であるフィルタ2の有効膜面積を増やし、液体透過効率を上げることができるからである。
【0039】
また、フィルタ2同士は、その側面部、特に端部からフィルタ2の全長L寸に対し30%以下の範囲(フィルタ2の片側で見た場合に15%以下の範囲)で接合材4によって接合、封止されているが、フィルタ2の外表面から1.0μm以上、特に1.3μm以上の深さの細孔内に接合材4が充填されることが良く、これによって、フィルタ2内に充填された接合材4がアンカー効果を有することからフィルタ2同士の接着強度を高めて、接合材4により確実に気密封止ができ、取り扱いが良くなり、振動等の影響を受けなくなる。また、封止工程および使用時等かかる熱サイクルによってもフィルタ2と接合材4との間にクラック等が発生して気密性が損なわれることを防止することができる。また、収束体3の強度を向上させ、さらには流体分離フィルタ構造体1の強度を高めることができる。
【0040】
ところで、側面部、特に、端面部からフィルタ2の全長L寸に対し30%以下の範囲としたのは、フィルタ2内壁面及び端面に接合材4が存在すると、逆洗浄時の詰まりの原因となり、液体の流入出の妨げとなるからである。
【0041】
また、本発明の流体分離フィルタ構造体1において、収束体3中のフィルタ2が、最密充填にて収束することによって、フィルタ2の収納本数を多く配置可能であり、そのためフィルタ2の液体透過効率を高める。
【0042】
また、液体の透過拡散を促進するために、収束体3端部の外周部に配設される支持体6の貫通孔5の形状は、収束体3の強度を高め、無機接合材4の容積を小さくする上で、概略六角形状または三角形状であることが望ましい。
【0043】
尚、支持体6の厚みとして好ましいのは1〜20mm、特に、厚み5〜10mmが良い。そして、支持体6の外周の形状としては、ケーシングの内壁形状に合わせて適宜調整されれば良い。
【0044】
また、フィルタ2の材質としては多孔質のアルミナ、ジルコニア、シリカ、コージェライト、チタニア等からなり、機械的強度および分離性能の点で、内径1〜5mm、肉厚0.3〜1mmであることが望ましい。また、フィルタ2は、気孔率20%以上、平均気孔径0.05〜2μm、表面粗さ(Ra)2μm以下であることが望ましい。
【0045】
また、支持体6は、収束体3と接合材4によって接合されており、好ましくは無機接合剤によって接合されるのが良い。例えば、ガラス、セラミック等から選ばれる少なくとも1種によって接合、封止される。
【0046】
ところで、接合材が、有機接合材であった場合、有機接合材から分離された有機系の汚物とが環境温度の上昇などで反応し、流体分離フィルタ構造体1の劣化が早くなる可能性がある。そのため無機接合材4であることが好ましく、特に水処理の分野においては、耐薬品性に優れた硼珪酸ガラスが良い。
【0047】
さらに、接合材4としては、硼珪酸ガラス、鉛ガラス、アルカリ珪酸ガラス、石英ガラス、ビスマス珪酸ガラス等のガラス、特に耐熱性および耐熱衝撃性に優れたガラスを主成分とし、また、所望により、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、コージェライト等のフィラー成分を添加した無機接合材からなり、フィルタ2との熱膨張率±1ppm/℃以内で近似していることが望ましい。
【0048】
また、支持体6は、緻密なアルミナ、シリカ、コージェライト、フォルステライト、ステアタイト、ジルコニア、炭化珪素、窒化珪素、ガラス等から選ばれる少なくとも1種からなるが、フィルタ2との熱膨張率が±1ppm/℃以内で近似していることが望ましい。
【0049】
次に、本発明の流体分離フィルタ構造体1の製造方法について説明する。
【0050】
まず、平均粒径0.05〜10μm、特に平均粒径0.1〜2μmの所定のセラミック粉末に所望の有機バインダを加え、押出し成形、射出成形等の公知の成形手段により所望の形状に成形した後、焼成することによりセラミックからなるフィルタ管2を作製する。
【0051】
一方、上述したセラミックおよび/またはガラス粉末に所望の有機バインダを加え、押出成形、プレス成形、鋳込み成型、射出成形等の公知の成形手段により貫通孔5を有する所望の形状に成形した後、焼成することにより複数個の貫通孔5を有する支持体6を作製する。この支持体6が有する、複数個の貫通孔5の内周に、片面側のみ、全周テーパ面7を形成する。
【0052】
また、平均粒径5μm以下、特に2μm以下、さらに0.5μm以下の上述したガラス粉末、アルミナ、シリカ、ジルコニア、コージェライト等のセラミック粉末と、有機バインダと水やα−テオピネオール等の溶媒とを混合し、接合材4を作製する。
【0053】
そして、上記フィルタ2の側面部を接合材4にて複数本収束、封止した後、上述した2つの支持体6の貫通孔5内に上記収束体3の端部を挿入するとともに、上記支持体6の貫通孔5と上記収束体3の側面部に接合材4を充填する。
【0054】
この時、接合材4をフィルタ2の外表面から少なくとも1.0μm以上の深さの細孔まで充填するため、および接合材4中に気泡が混入することを防止するためには、接合材4の粘度を50Pa・s以下とすることが望ましく、また、超音波振動を付与しながら接合材4を充填すること、接合材4の充填と乾燥を複数回繰り返して行うことにより、さらにフィルタ2の細孔内への接合材4の充填性を高めることができる。
【0055】
そして、上記接合材4にて接合した構造体を、例えば800℃以上、特に接合材4のフィルタ2内への充填深さを大きくする点で1000〜1150℃に加熱して接合材4内のガラス粉末、セラミック粉末を軟化、溶融または焼結させて接合材4とし、フィルタ2と支持体6とを固定、封止することによって、フィルタ2の端部を後で切削する等の負荷をかけることなく、フィルタ2の端部を開口することができる。
【0056】
なお、上記工程において、フィルタ2と接合材4とを同時焼成によって形成することもできるが、接合材4のフィルタ2への充填深さを所定の範囲とするためには、フィルタ2を焼成した後、接合材4を充填することが望ましい。
【0057】
得られた構造体を所定の形状からなるケーシング内に挿入し、固定、封止することにより本発明の流体分離フィルタ構造体1を作製することができる。
【0058】
次に、流体分離モジュール21について、図5を用いて説明する。図5は本発明に係る流体分離モジュール21にかかる一実施例を示す概略断面図である。
【0059】
図5によれば、本発明の流体分離フィルタ構造体1を支持する支持体6は、ハウジング22内に配置された固定部材23にグランドパッキング、金属製や樹脂製またはガム製のガスケット24を介在させて固定、封止されている。これにより流体分離フィルタ構造体1の支持体6によって仕切られる領域の気密性を高めて流体分離性能を向上させることができるとともに、流体分離フィルタ構造体1の脱着が可能となり、かつ流体分離フィルタ構造体1の外部からの機械的振動や衝撃等による影響を低減できる。
【実施例1】
【0060】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこの実施例の内容に限るものではないことは言うまでもない。
【0061】
純度99.9%、平均粒径0.1μmのアルミナ粉末に対して、所定の有機バインダ、潤滑剤、可塑剤および水を添加、混合し、押出成形にて管状の成形体を作製した後、1200℃にて焼成して、外径3.2mm、内径2.3mm、長さ500mmで、平均粒径0.2μm、気孔率39%を有するαアルミナ多孔質管のフィルタ2を作製した。
【0062】
一方、純度99.9%、平均粒径0.1μmのアルミナ粉末に対して、所定の有機バインダ、潤滑剤、可塑剤および水を添加、混合し、押出成形にて管状の成形体を作製した後、1600℃にて焼成して、内周の一辺が70mmの正三角形状の貫通孔5を6個有する外径160mm、厚み10mmの支持体6を作製した。この支持体6が有する、6個の上記貫通孔5の内周に、片面側のみ、全周テーパ面7を1mm形成した。
【0063】
また、平均粒径2μmの硼珪酸ガラス(SiO2−Al23−CaO−BaO−SrO−B23)に有機バインダ、溶剤を添加、混合した接合材4を作製した。なお、ペースト粘度は30Pa・sであった。
【0064】
そして、上記フィルタ2を210本収束し、上記収束体3の両端部深さ20mmをそれぞれ上記接合材4にて充填した後、上記支持体6(両端部、計2個)の各上記貫通孔5内に図1に示すように、上記接合材4を充填し、1100℃に加熱して上記収束体3を上記支持体6の端面よりも凹面となるよう接合、固定し、流体分離フィルタ構造体1を作製した。ここで、SEMによりフィルタ2細孔内への接合材4の充填深さを観察した結果、1.5μmであった。
【0065】
また、流体分離フィルタ構造体1をケーシング20へ固定することで、流体分離モジュール21とした。
【0066】
次に、作製した流体分離フィルタ構造体1を基に、フィルタ2間距離、大きな流通路8aの有無、支持体6の収束体3配置形状を変えたサンプル流体分離フィルタ構造体1を表1に基づき作製した。そして、比較例として、外周が同形状となる特許文献1のモノリスタイプの流体分離フィルタ構造体31を準備した。
【0067】
操作圧力一定(0.3MPa)、実験に使用した水の水質は同質とし、それらの透過流量(m/m/DAY)を測定した。このとき、通常使用される大流量フィルタの合格判定基準として適当な6.0(m3/m2/DAY)以上を合格として○で示し、5.0〜6.0(m3/m2/DAY)の間を△とした。
【0068】
それらの評価結果を表1に示す。
【表1】

【0069】
表1から、フィルタ2間距離は、0.1〜1mm、収束体3の配置形状は、本発明の形状のものが最適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば水などの液体とその液体中に含まれる気体、または液体及び固体を透過、分離するフィルタを備えた流体分離フィルタ構造体に用いることが可能である。
【0071】
また、上記流体分離フィルタ構造体を備えた流体分離モジュールに用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る流体分離フィルタ構造体の一実施例を示す斜視図である
【図2】図1における本発明に係る流体分離フィルタ構造体のA矢視方向から見た正面図である。
【図3】図1における本発明に係る流体分離フィルタ構造体のX−X断面を示しており、(a)は断面図を、(b)はその拡大断面図をそれぞれ示すものである。
【図4】図1における本発明に係る流体分離フィルタ構造体のY−Y断面を示しており、(a)は断面図を、(b)はその拡大断面図をそれぞれ示すものである。
【図5】本発明に係る流体分離フィルタ構造体を備えた流体分離モジュールの一実施例を示す概略断面図である。
【図6】本発明に係る流体分離フィルタ構造体の一実施例を示す概略図である。
【図7】本発明に係る流体分離フィルタ構造体の一実施例を示す概略図である。
【図8】従来のモノリスタイプの流体分離フィルタの概略図である。
【符号の説明】
【0073】
1、31‥‥‥‥流体分離フィルタ構造体
2、32‥‥‥‥フィルタ
3‥‥‥‥収束体
4‥‥‥‥接合材
5、35‥‥‥‥貫通孔
6、36‥‥‥‥支持体
7‥‥‥‥テーパ面
8‥‥‥‥流通路
20‥‥‥ケーシング
21‥‥‥流体分離モジュール
22‥‥‥ハウジング
23‥‥‥固定部材
24‥‥‥ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状で多孔質体のフィルタを収束した複数の収束体と、各収束体同士が離間して配置して収束体群を形成するように上記各収束体の両端を接合材を介して支持する支持部材とからなることを特徴とするフィルタ構造体。
【請求項2】
上記収束体群は、中央長手方向に流通路を有し、該流通路の周囲に沿って複数の上記収束体が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体分離フィルタ構造体。
【請求項3】
上記支持体は複数の貫通孔を有し、該貫通孔に上記収束体の一端を保持してなり、該収束体の端面が、上記支持体の端面よりも内側に入った凹面となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流体分離フィルタ構造体。
【請求項4】
上記貫通孔の少なくとも片側にテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体分離フィルタ構造体。
【請求項5】
上記接合材が無機接合材であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体分離フィルタ構造体。
【請求項6】
上記無機接合材が、硼珪酸ガラスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流体分離フィルタ構造体。
【請求項7】
上記請求項1〜6のいずれかを備えたことを特徴としている流体分離モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−7165(P2006−7165A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191223(P2004−191223)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】