説明

流体制御弁およびそれを用いた衛生洗浄便座の水流制御装置

【課題】簡単な構成で弁開度に応じた正確な流量が得られ、かつ必要駆動トルクが小さい流体制御弁を提供する。
【解決手段】流入路133と流出路134を有する非弾性材料からなるハウジング132内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体135と、流入路と流出路とを連通または遮断する弁体内部の流路136の出口部137がハウジング132との摺動接触面138に設けられ、出口部に弾性材料により孔形状を含めて形成した接触摺動部材139を設けたものである。弁体の出口部の接触摺動部材が弾性材料でハウジングの内面の摺動接触面に密着して、弁体の出口部の孔形状および弁体の回転位置に応じた正確な開口面積と流量を得ることができ、弁体の他の部分は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき、弁体の回動時に必要な駆動トルクを小さく押さえることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切換えおよび流量制御が可能な流体制御弁および用便後の人体局部の洗浄を行う衛生洗浄便座に好適な水流制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄便座は、用便後の肛門部の洗浄や、小用時、生理時の女性局部の洗浄を目的とする装置であるが、肛門洗浄は強い洗浄力が要求され、ビデ洗浄は、ソフト感等が要求される。これに対応するため専用の2本のノズルを有する衛生洗浄便座がある。この2系統のノズルの選択切替を行うために、次のような流体制御弁が提案されている。
【0003】
例えば、従来のこの種の流体制御弁を使用した衛生洗浄便座(例えば、特許文献1参照)のブロック図を図12に示す。同図において、1は洗浄水の給水路2中に設けた給水ポンプ、3は女性の局部を洗浄するビデ洗浄ノズル、また4は肛門部の洗浄を行う肛門洗浄ノズルであり、5はビデ洗浄ノズル3と肛門洗浄ノズル4を選択する流体制御弁で、6はその切換つまみである。7は温水タンク、8は洗浄つまみ9と連動する電磁弁である。
【0004】
洗浄つまみ9を回すと電磁弁8が開きポンプ1が作動し、給水路の流体がポンプ1の水圧により流体制御弁5へ洗浄水として送られ、流体制御弁5を切換えることによりビデ洗浄ノズル3および肛門洗浄ノズル4から選択的に洗浄水を噴出させてビデ洗浄および肛門洗浄を行う。
【0005】
流体制御弁5は、流入口10とビデ洗浄ノズル3へ通ずる流出口11と肛門洗浄ノズル4へ通ずる流出口12を有するハウジング13と、そのハウジング13の中で回転自在の弁体14とを有し、その弁体14には、ハウジング13と弁体14のシールのため0リング15、0リング16がその溝17、溝18に嵌め込まれている。19は弁蓋で、20は弁体14内部の通水路で、21はその通水路20の出口部である。
【0006】
上記構成において電磁弁8の開成で流れた洗浄水はポンプ1に加圧されて温水器7に入り加熱され、温水となって温水器7より流体制御弁5の流入口10に洗浄水が供給されると、図12のように弁体14内の通水路20を通り、出口部21を経てビデ洗浄ノズル3へと洗浄水が流れてビデ洗浄ノズル3から洗浄水が噴出し、ビデ洗浄が行われる。
【0007】
また、流体制御弁5の切換つまみ6を回すと弁体14が回転し、通水路20の出口部21が肛門洗浄ノズル4への流出口12に切換わり、上記と同様に肛門洗浄ノズル4から洗浄水が噴出し、肛門洗浄が行われる。
【0008】
以上のように流体制御弁5の切換により洗浄ノズル3、4の選択切換えが可能であり、また給水ポンプ1の回転数制御により各ノズルからの洗浄水の吐出流量の調節ができるものである。
【0009】
また、図13(a)に示す衛生洗浄便座も、上記した特許文献1には示されている。この衛生洗浄便座の流体制御弁27は、図12に示す流体制御弁5と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。
【0010】
弁体23の通水路20における出口部24の全周縁を囲むようにその外周に溝25を設け、この溝25に弾性シール部材26を設けている。そして、出口部24と流出口11の横穴29が連通して流体が流れている時に、この流体が流出口12の横穴30へ漏れ出す
のを防ぐ構成にしている。
【0011】
また、従来のこの種の流体制御弁としては、図14に示すもの(例えば、特許文献2参照)も知られている。この流体制御弁5aは、図12に示す流体制御弁5と同じ構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。弁体14aは通水路20の出口部21の全周縁に、ハウジング13の流出口11の全周縁に接する凸部31を弁体14aと一体に樹脂成型し設けている。そして、回転による弁体14aの出口部21が、ハウジング13の流出口11にさしかかる前に、流体がハウジング13と弁体14aの接合面から流出口11へ漏れ出すのを防ぐ構成にしている。
【特許文献1】特開昭60−51237号公報
【特許文献2】特開平7−260019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記したような従来の前者の水流制御装置では、ノズル切換えのための流体制御弁5のハウジング13と弁体14との径隙間22が大きいと、肛門洗浄時の洗浄水は、肛門洗浄ノズル4へ流れているにもかかわらず、その径隙間22の部分からビデ洗浄ノズル3の流出口11の方にも漏れて流れ、肛門洗浄ノズル4で洗浄しているのと同時に、ビデ洗浄ノズル3から洗浄水が漏れたりする。
【0013】
このため、ハウジング13と弁体14との径隙間22を小さくする必要があり、この加工は高精度を要し加工費が高く、かつ良品の歩留まりが悪く生産性を上げられないなどの課題があった。
【0014】
また、ハウジング13と弁体14のシールのためにハウジング13と弁体14との径隙間22を小さくしようとした場合、寸法ばらつきにより弁体14がハウジング13にしまりばめ状態のものが発生し、弁体14を回転駆動する際の必要トルクが大きくなり、切換つまみ6を回転しようとしても固くて回せないものがあるなどの課題があった。
【0015】
上記問題点を解決するために、図13(a)に示す衛生洗浄便座の流体制御弁では、弁体23の出口部24を囲む外周に弾性シール部材26を設けているが、通水路20の出口部24の孔の全周端面から溝25までの間22aはハウジング28の内面に対して隙間があり、シールされないため、弁体23を回転させてシール部材26がハウジング28の横穴29、30との回転相対位置における正確な流量制御をすることができないなどの課題があった。
【0016】
つまり、図13(b)に示す流体制御弁27の要部の展開図で明らかなように、弁体23を回転していくと、弁体23の出口部24が、ハウジング28の流出口11の横穴29、または流出口12の横穴30にさしかかる前に、通水路20の出口部24の孔の全周端面から弾性シール部材26までの間22aにおけるハウジング28と弁体23の接合面(斜線で示す部分)から流出口11の横穴29、または流出口12の横穴30に流出口11へ漏れ出すものであった。
【0017】
従って、回転する弁体23の出口部24が、ハウジング28の流出口11の横穴29にさしかかり、そして出口部24と横穴29が完全に一致するまでの流体の流れる変化量で制御を行うように設定していても、上記した流体の洩れ出ることで正確な流量制御ができなかった。
【0018】
また、上記した図13(a)、(b)に示す流体制御弁27の問題点を解決するための、図14に示す流体制御弁5aでは、弁体14aと一体に樹脂成型した凸部31がハウジ
ング13の摺動接触部32との隙間を小さくするので、弁体14a外周の隙間からの漏れが著しく減少し、簡単な構成で弁開度に応じた流量が得られ、かつ必要駆動トルクが小さい流体制御弁が得られている。
【0019】
しかし、この場合、弁体14aと一体に樹脂成型して設けた凸部31とハウジング13との摺動接触部32の隙間が小さいものの多少の洩れがあり、樹脂成型の寸法精度によっては漏れ量がばらつき、他流路への漏れが派生するという課題があった。例えば、弁体14aが流出口11のみに流すつもりの弁体位置にある場合でも他の流出口12に洩れるといった状況である。一方、凸部31の幅を大きくして摺動接触部32からの流体の洩れ出るのをなくそうとすると、逆に弁体14aを回転させる駆動トルクが大きくなること等が考えられるものであった。
【0020】
上記従来の課題に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、簡単な構成で殆んど洩れがなく弁開度に応じた正確な流量が得られ、かつ必要駆動トルクが小さい流体制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明の流体制御弁は、流入路と流出路を有する非弾性材料からなるハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体と、前記流入路と前記流出路とを連通または遮断する前記弁体内部の流路の出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に孔形状を含めて弾性材料により形成した接触摺動部材を設けたものである。
【0022】
これによって、非弾性材料からなるハウジング内で回動する非弾性材料からなる弁体の出口部に設けられ弾性材料により孔形状を含めて形成した接触摺動部材が、前記ハウジングとの摺動接触面に弾性材料が有する弾力により密着しながら摺動する。したがって、弾性材料からなる前記接触摺動部材がハウジングの摺動接触面との隙間がなく、弁開度に応じた正確な流量を得ることができる。しかも、前記出口部の前記接触摺動部材だけが弾性材料で、弁体の他の部分は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき弁体を回転させるのに必要な駆動トルクが小さい。
【発明の効果】
【0023】
本発明の流体制御弁は、簡単な構成で弁開度に応じた正確な流量が得られ、かつ必要駆動トルクを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
第1の発明は、流入路と流出路を有する非弾性材料からなるハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体と、前記流入路と前記流出路とを連通または遮断する前記弁体内部の流路の出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に孔形状を含めて弾性材料により形成した接触摺動部材を設けた流体制御弁である。
【0025】
この構成により、非弾性材料からなるハウジング内で回動する非弾性材料からなる弁体の出口部に設けられた弾性材料からなる接触摺動部材が、前記ハウジングとの摺動接触面に弾性材料が有する弾力により密着しながら摺動することができるので、弾性材料からなる前記接触摺動部材がハウジングと摺動接触面との隙間をなくして、弁開度に応じた正確な流量を得ることができる。しかも、前記出口部の前記接触摺動部材だけが弾性材料で、他の摺動接触面は非弾性材料で形成してあるため、少ない弾性摺動接触面となり摺動摩擦抵抗を小さくでき弁体を回転させるのに必要な駆動トルクを小さくできる。
【0026】
第2の発明に係る流体制御弁は、特に、第1の発明の接触摺動部材が、ゴムまたはエラストマーである。ゴムまたはエラストマーの接触摺動部材を設けた構成により、非弾性材料からなるハウジング内で回動する非弾性材料からなる弁体の出口部に設けられたゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材は、適度なゴム硬度を選定できるため、前記ハウジングとの摺動接触面に部分的に適度な弾力で密着しながら摺動させることができるので、ゴムまたはエラストマーからなる前記接触摺動部材とハウジングの摺動接触面との隙間をなくして、弁開度に応じた正確な流量を得ることができる。しかも、前記出口部の前記接触摺動部材だけがゴムまたはエラストマーからなる弾性材料で、他の摺動接触面は非弾性材料で形成してあるため、少ない弾性摺動接触面となり摺動摩擦抵抗を小さくでき弁体を回転させるのに必要な駆動トルクを小さくできる。
【0027】
第3の発明に係る流体制御弁は、特に、第2の発明の接触摺動部材を弁体に嵌め込む構成とし、その嵌め合わせ部に糸ビードを設けたことを特徴とするものである。この構成により、非弾性材料からなる弁体の出口部に、糸ビードを有した接触摺動部材を嵌め込むだけで弁体に接触摺動部材を組み付けられ、ゴムの焼付け加工や接着加工が不要であり、かつ、糸ビードによるシールなので、その糸ビードによるシール部が摺動可能にでき、流体圧で接触摺動部材がハウジングに適度に押し付けられながら弁体が回動することができる。
【0028】
つまり、糸ビードによるシール構成によって、接触摺動部材は、ハウジングに適度に押し付けられ密着しながら摺動させることができるので、ゴムまたはエラストマーからなる前記接触摺動部材とハウジングの摺動接触面との隙間をなくして、弁開度に応じた正確な流量を得ることができる。しかも、前記出口部の前記接触摺動部材だけがゴムまたはエラストマーからなる弾性材料で、他の摺動接触面は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき弁体を回転させるのに必要な駆動トルクを小さくできる。
【0029】
第4の発明に係る流体制御弁は、特に、第2の発明の接触摺動部材を弁体に嵌め込む構成とし、その嵌め合わせ方向を規制する方向規制部を設けたことを特徴とするものである。この構成により、例えば弁体の回動角度と流量変化特性の直線性を良くするために、接触摺動部材に設けた出口部を単純な円形ではなくスリット孔などの異形孔にした場合においても、弁体の回動によって流出孔の方向ずれて流量特性がずれてしまうような不具合がなく、いつも安定した流量特性を得ることができる。
【0030】
第5の発明に係る流体制御弁は、特に、第2の発明の接触摺動部材は、弁体の表面に塗布および印刷により形成したことを特徴とするものである。この構成により、ハウジングの摺動接触面との隙間をなくして弁開度に応じた正確な流量を得ることが、弁体の表面に弾性材料を塗布および印刷するだけの簡単な工法で実現することができる。
【0031】
第6の発明に係る流体制御弁は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、接触摺動部材は、動摩擦係数が0.8以下(ISO8295 JIS K7125)の低摩擦特性を備えたことを特徴とするものである。汎用のニトリルゴム(NBR)やエチレンプロピレンゴム(EPDM)の場合は動摩擦係数が1.4〜1.8程度あるのに対し動摩擦係数が0.8以下になる材質あるいは処理した材料を接触摺動部材として構成することで、さらに弁体を回転させるのに必要な駆動トルクを約半分程度に小さくできる。
【0032】
第7の発明に係る流体制御弁は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、接触摺動部材は、低摩擦化成分を反応固定化したゴムまたはエラストマーであることを特徴とするものである。ゴムまたはエラストマーの表面を低摩擦、非粘着にするため単に表面に低摩擦非粘着剤を塗布したものがあるが、この場合その塗布材料が剥がれやすくて、しかも飛躍的な低摩擦効果を持続することが困難であった。
【0033】
それに対し、低摩擦、非粘着の性質を有するポリマー等の低摩擦化成分を反応固定化する方法が近年開発されてきた。例えば、接触摺動部材のゴムやエラストマー表面にカップリング剤や表面グラフト重合を用いて、低摩擦化成分をゴムやエラストマー表面の−SH,−OH,−COOHなどの官能基と反応させて定着させる反応固定化したものにすることで、動摩擦係数を約0.2程度と未処理のゴムに比べて約1/5〜1/8と飛躍的な低摩擦にすることが可能で、しかも長期使用しても低摩擦効果を持続することができ、弁開度に応じた正確な流量を得ることができるとともに、さらに弁体を駆動させるのに必要な駆動トルクを小さくすることができる。
【0034】
第8の発明に係る流体制御弁は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明において、ハウジングは、流入路から各々分岐して設けられた複数の流出路を有するものである。すなわち、複数の流出路を有する前記ハウジング内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体と、前記流入路と前記流出路とを連通または遮断する前記弁体内部の流路の出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に弾性材料により孔形状を含めて形成した接触摺動部材を設けた構成である。
【0035】
この構成により、非弾性材料からなるハウジング内で回動する非弾性材料からなる弁体の出口部に設けられた弾性材料からなる接触摺動部材が、前記ハウジングとの摺動接触面に弾性材料が有する弾力により密着しながら摺動することができるので、弾性材料からなる前記接触摺動部材がハウジングと摺動接触面との隙間をなくして、弁体外周の隙間からの漏れが著しく減少する。このことにより、他方流路への漏れを最小限にでき、複数の流路の選択切換えと、各々の流路における正確な流量制御が可能になる。しかも、前記出口部の前記接触摺動部材だけが弾性材料で、他の摺動接触面は非弾性材料で形成してあるため、少ない弾性摺動接触面となり摺動摩擦抵抗を小さくでき弁体を回転させるのに必要な駆動トルクを小さくできる。
【0036】
第9の発明に係る流体制御弁は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明において、弁体を回動するモータを有する駆動手段と、前記モータの回転角を制御することにより前記複数の流出路の選択切換えと流量制御を行う回転角制御手段を設けたものである。すなわち、複数の流出路を有する前記ハウジング内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体を回転駆動するモータと、そのモータの回転角制御手段を設けたことにより、単一の駆動手段でかつ簡単な構成で所定流路以外への漏れ流量を最小限にでき、かつ必要駆動トルクが小さく、遠隔制御で複数の流路の選択切換えと、各々の流路における流量制御を可能な流体制御弁の、小型化、低コスト化、耐久信頼性の向上が図れる。
【0037】
第10の発明に係る衛生洗浄便座の水流制御装置は、洗浄水を供給する給水路に設け洗浄水を加熱する温水器等の加熱手段と、前記温水器に連通する流入路および前記流入路から各々分岐して設けた複数の流出路を有するハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に設けられた弁体と、前記弁体内部の流路の出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に弾性材料により孔形状を含めて形成した接触摺動部材と、前記弁体を回動するステッピングモータを有する駆動手段から構成される流体制御弁と、前記流体制御弁の第一および第二の流出路に各々連通する第一および第二の洗浄ノズルと、前記第一および第二の洗浄ノズルを選択駆動する洗浄スイッチと水量を調節する水勢調節スイッチを有する操作手段と、前記操作手段の信号により前記ステッピングモータの回転角を制御する回転角制御手段を設けたものである。
【0038】
すなわち、ステッピングモータを駆動手段とし、第一および第二の洗浄ノズルの選択切換えと各々の洗浄ノズルから吐出される洗浄水の流量調節を行う出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に弾性材料により孔形状を含めて形成した接触摺
動部材を有する流体制御弁と、前記流体制御弁の第一および第二の流出路に各々連通する第一および第二の洗浄ノズルと、前記第一および第二の洗浄ノズルを選択駆動する洗浄スイッチと水量を調節する水勢調節スイッチを有する操作手段と、前記操作手段の信号により前記ステッピングモータの回転角を制御する回転角制御手段を設けたものであるので、操作手段からの信号により、ステッピングモータへ供給されるパルス信号が制御され、ビデ洗浄用の第一の洗浄ノズルと、肛門洗浄用の第二の洗浄ノズルを選択的に切換えることが可能で、第一および第二の洗浄ノズルから吐出される洗浄水量(水勢)を操作手段の信号に応じてきめ細かい調節ができるコンパクトな水流制御装置が可能となる。
【0039】
本発明の目的は、第1の発明から第10の発明を実施の形態の要部とすることにより達成できるので、各請求項に対応する実施の形態の詳細を、以下に図面を参照しながら説明し、本発明を実施するための最良の形態の説明とする。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、本実施の形態の説明において、同一構成並びに作用効果を奏するところには同一符号を付して重複した説明を行わないものとする。
【0040】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における流体制御弁131の構成断面図であり、図2(a)〜(c)は図1のA−A断面図である。同図において、132は非弾性材料からなるハウジングであり、流入路133と流出路134を有している。135はハウジング132内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体であり、内部にハウジング132の流入路133と流出路134とを連通または遮断する流路136が形成されている。
【0041】
弁体135の流路136の出口部137は、ハウジング132との摺動接触面138に設けられ、この出口部137の孔形状の縁に、出口部の孔形状を含んで弾性材料からなる輪状の摺動接触部材139が、出口部137の弁体135と一体的に形成されている。140および141はXリングやOリングなどのシールパッキンで、弁体135の軸方向と直交して弁体135の両端部における全周面の溝に嵌め込まれている。142は回転つまみである。
【0042】
以上の構成において本実施の形態の動作について説明する。図2(a)は弁閉止状態を示したものであり、流入路133に連通する流路136は、流出路134とは連通せず、出口部137の孔形状の縁に設けた弾性材料からなる摺動接触部材139が、ハウジング132の内面の摺動接触面138に密着して流出路134への流体の漏れが防止されている。そして、図2(b)は弁半開状態で、図2(c)は弁全開状態をそれぞれ示したものである。
【0043】
このように、ハウジング132の流出路134に弁体135の出口部137を合わすために弁体135を回転していった際に、摺動接触部材139が先に流出路134の孔にさしかかっても、接触摺動部材139が出口部137の孔形状を含めた摺動接触面138に位置しているので、出口部137が流出路134にさしかかる前に摺動接触面138から流出路134に流体が洩れ出ることはなく、出口部137が流出路134にさしかかって初めて流体が流れ始まる。
【0044】
従って、弁体135の出口部137における流出路134の孔との対向度合いにより、正確に流体制御が可能になる。また、弁体135の出口部137の接触摺動部材139だけが弾性材料で、弁体135の他の部分は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき、弁体135の回動時に必要な駆動トルクも小さく押さえることができる。
【0045】
以上述べたように本実施の形態によれば、弁体135の出口部137の孔形状を含めて弾性材料からなる摺動接触部材139を設けたことにより、摺動接触部材139がハウジ
ング132の内面の摺動接触面138に密着して、弁体135の出口部137の孔形状および弁体135の回転位置に応じた正確な開口面積と流量を得ることができる。
【0046】
また、弁体135の出口部137の孔形状に沿って弾性材料からなる摺動接触部材139を設けた構成において、弁体135の出口部137の前記接触摺動部材139だけが弾性材料で、弁体135の他の部分は非弾性材料で形成することによって、非弾性材料に比べ動摩擦係数が大きい弾性材料の摺動接触面積を小さくでき、弁体135を回転させるのに必要な駆動トルクが小さく、前記した弁体135の回転位置に応じた正確な流量を小さい回転操作力で行うことができる。
【0047】
この作用効果は特に、弁体135の出口部137の孔形状を流路136に沿って設けた弾性材料からなる摺動接触部材139の部分だけ、例えば0.1〜0.2ミリメートル程度の僅かな凸部(図示せず)に形成することで、より高い効果を得ることができる。なぜなら、弁体135の弾性材料からなる摺動接触部材139の凸部が、より弾力があってハウジング132内面の摺動接触面138に密着するので、よりシール性が高くなることと、摺動接触する面積が摺動接触部材139の凸部の狭い面積にできるため摺動摩擦抵抗をより小さくできるためである。
【0048】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における流体制御弁143の構成断面図であり、図4(a)〜(d)は図3のB−B断面図である。同図において、144は非弾性材料からなるハウジングであり、流入路145と、第一および第二の流出路146、147を有している。148はハウジング144内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体であり、内部に流入路145と第一あるいは第二の流出路146、147とを選択的に連通または遮断、そして両流出路を遮断する流路149が形成されている。
【0049】
弁体148の流路149の出口部150は、ハウジング144との摺動接触面151に設けられ、この出口部150の孔形状の縁に、出口部の孔形状を含んで弾性材料からなる輪状の摺動接触部材152が、弁体148と一体的に形成されている。153および154はXリングやOリングなどのシールパッキンで、弁体148の軸方向と直交して弁体148の両端部における全周面の溝に嵌め込まれている。155は回転つまみである。
【0050】
以上の構成において本実施の形態の動作について説明する。図4(a)は弁閉止状態を示したものであり、流入路145に連通する流路149は、第一および第二の流出路146、147のいずれにも連通せず、出口部150の孔形状の縁に設けた弾性材料からなる摺動接触部材152が、ハウジング144の内面の摺動接触面151に密着して流体の漏れが防止されている。
【0051】
図4(b)は弁体148を回転し、出口部150がハウジング144の第一の流出路146の方へ向いて第一の流出路146を全開した状態を、図4(c)は弁体148が回転して第二の流出路147を半開した状態を、図4(d)は弁体148をさらに回転して第二の流出路147を全開した状態をそれぞれ示したものである。
【0052】
このように、ハウジング144の第一および第二の流出路146、147に弁体148の出口部150を合わすために弁体148を回転していった際に、摺動接触部材152が先に第一および第二の流出路146、147の孔にさしかかっても、接触摺動部材152が出口部150の孔形状を含めた摺動接触面151に位置しているので、出口部150が第一および第二の流出路146、147の孔にさしかかる前に摺動接触面151から第一および第二の流出路146、147に流体が洩れ出ることはなく、出口部150が第一および第二の流出路146、147にさしかかって初めて流体が流れ始まる。
【0053】
従って、弁体148の出口部150における第一および第二の流出路146、147の孔との対向度合いにより、正確な流体制御が可能になる。また、弁体148の出口部150の接触摺動部材152だけが弾性材料で、弁体148の他の部分は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき、弁体148の回動時に必要な駆動トルクを小さく押さえることができる。
【0054】
以上述べたように本実施の形態によれば、弁体148の出口部150の孔形状を含めて弾性材料からなる摺動接触部材152を設けたことにより、摺動接触部材152がハウジング144の内面の摺動接触面151に密着して、弁体148の出口部150の孔形状および弁体148の回転位置に応じた正確な開口面積と流量を得ることができる。
【0055】
また、弁体148の出口部150の孔形状の縁に、孔形状を含んで弾性材料からなる摺動接触部材152を設けた構成において、弁体148の出口部150の前記接触摺動部材152だけが弾性材料で、弁体148の他の部分は非弾性材料で形成することによって、非弾性材料に比べ動摩擦係数が大きい弾性材料の摺動接触面積を小さくでき、弁体148を回転させるのに必要な駆動トルクが小さく、前記した弁体148の回転位置に応じた正確な流量を小さい回転操作力で行うことができる。この作用効果は特に、弁体148の出口部150の孔形状を流路に沿って設けた弾性材料からなる摺動接触部材152の部分だけ、例えば0.1〜0.2ミリメートル程度の僅かな凸部(図示せず)に形成することで、より高い効果を得ることができる。
【0056】
従って、簡単な構成で第一および第二の流出路146、147における他方流路への漏れ流量を最小限にでき、かつ必要駆動トルクが小さく、複数の流路の選択切換えと、各々の流路における流量制御を可能にする流体制御弁143を提供することができる。
【0057】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3における流体制御弁156の構成断面図であり、図6(a)〜(d)は図5のC−C断面図である。同図において、157は非弾性材料からなるハウジングであり、流入路158と、第一および第二の流出路159、160を有している。161はハウジング157内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる略円筒形の弁体であり、内部に流入路162と第一および第二の流出路159、160とを選択的に連通または遮断、そして両流出路を遮断する流路162が形成されている。
【0058】
弁体161の流路162の出口部163は、ハウジング157との摺動接触面164に設けられ、この出口部163の孔形状の縁に、出口部の孔形状を含んで弾性材料からなる輪状の摺動接触部材165が、弁体161と一体的に形成されている。166および167はXリングやOリングなどのシールパッキンで、弁体161の軸方向と直交して弁体161の両端部における全周面の溝に嵌め込まれている。
【0059】
168は正逆転回転可能なモータにてなる駆動手段である。モータ168の出力軸169は、I形断面形状で弁体161の同じくI形断面形状の穴170に挿入し、モータ168の取付フランジ171の穴径はハウジング157の取付ボス172の径に対し大きく、取付隙間ガタを有し、ハウジング157と弁体161との軸心の偏心を吸収する構成である。なお、ハウジング157の取付ボス172の高さ寸法は、モータ168の取付フランジ171の板厚より大きく、モータ168はビス173、174で締め付け後も、上記した取付隙間ガタの範囲内で偏心を補償する動きの自由度を有する構成である。
【0060】
以上の構成において本実施の形態の動作について説明する。図6(a)は弁体161の弁閉止状態を示したものであり、流入路158に連通する流路162は、第一および第二
の流出路159、160のいずれにも連通せず、そして出口部163の孔形状に沿って弾性材料からなる摺動接触部材165が、ハウジング157の内面の摺動接触面164に密着して流体の漏れが防止されている。
【0061】
図6(b)は弁体161を回転し、出口部163がハウジング157の第一の流出路159の方へ向いて第一の流出路159を全開した状態を、図6(c)は弁体161が回転して第二の流出路160を半開した状態を、図6(d)は弁体161をさらに回転して第二の流出路160を全開した状態をそれぞれ示したものである。
【0062】
このように、ハウジング157の第一および第二の流出路159、160に弁体161の出口部163を合わすために弁体161を回転していった際に、摺動接触部材165が先に第一および第二の流出路159、160の孔にさしかかっても、接触摺動部材165が出口部163の孔形状を含めた摺動接触面164に位置しているので、出口部163が第一および第二の流出路159、160の孔にさしかかる前に摺動接触面164から第一および第二の流出路159、160に流体が洩れ出ることはなく、出口部163が第一および第二の流出路159、160にさしかかって初めて流体が流れ始まる。
【0063】
従って、弁体161の出口部163における第一および第二の流出路159、160の孔との対向度合いにより、正確な流体制御が可能になる。また、弁体161の出口部163の接触摺動部材165だけが弾性材料で、弁体161の他の部分は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき、弁体161の回動時に必要な駆動トルクを小さく押さえることができる。
【0064】
以上述べたように本実施の形態によれば、弁体161の出口部163の孔縁に、孔形状を含んで弾性材料からなる摺動接触部材165を設けたことにより、摺動接触部材165がハウジング157の内面の摺動接触面164に密着して、弁体161の出口部163の孔形状および弁体161の回転位置に応じた正確な開口面積と流量を得ることができる。
【0065】
また、弁体161の出口部163の孔形状を流路に沿って弾性材料からなる摺動接触部材165を設けた構成において、弁体161の出口部163の接触摺動部材165だけが弾性材料で、弁体161の他の部分は非弾性材料で形成することによって、非弾性材料に比べ動摩擦係数が大きい弾性材料の摺動接触面積を小さくでき、弁体161を回転させるのに必要な駆動トルクが小さく、前記した弁体161の回転位置に応じた正確な流量を小さい回転操作力で行うことができる。
【0066】
従って、弁体161を小型で低トルクのモータで回転駆動することができ、コンパクトで安価な流体制御弁156を実現できる。また、必要な駆動トルクを小さくできることにより、駆動手段であるモータ168の減速ギアの減速比を低減できる。これにより切換えや流量調節の応答性を向上できる。
【0067】
つまり、単一の駆動手段で簡単な構成で所定流路以外への漏れ流量を最小限にでき、かつ必要駆動トルクが小さく、複数の流路の選択切換えと、各々の流路における流量制御を可能とし、小型、低コストの優れた流体制御弁156を提供することができる。
【0068】
(実施の形態4)
図7は本発明の実施の形態4における図5に示す流体制御弁を用いた衛生洗浄便座における水流制御装置の構成図である。同図において、7は洗浄水を供給する給水路2に設けられ加熱ヒータ75を有する温水器であり、その温水器7の下流側に、実施の形態5の発明である図5に示した流体制御弁156が設けられている。なお、流体制御弁156の構成と作用効果は図5に示したものと同じなので、詳細な説明を省略する。176および1
77は流体制御弁156の第一、第二の流出路159、160にそれぞれ連通させて設けられた第一、第二の洗浄ノズルであり、第一の洗浄ノズル176は、ビデ洗浄用であり、また第二の洗浄ノズル177は肛門洗浄用である。
【0069】
178は衛生洗浄便座の操作手段であり、第一および第二の洗浄ノズル176、177を選択するための洗浄スイッチ179、180、各々の洗浄において水量を調節する水勢調節スイッチ181、182、選択している水勢を表示するための表示手段183および停止スイッチ184から構成されている。185は操作手段178の信号により流体制御弁156の駆動手段であるステッピングモータ168の回転角を制御する回転角制御手段である。
【0070】
以上の構成において本実施の形態の動作について説明する。使用者が衛生便座(図示せず)に着座して用便後、洗浄スイッチ179、180を選択する、例えば肛門洗浄を行う第二の洗浄ノズル177を駆動させるために洗浄スイッチ180が投入されると、その信号が回転角制御手段185を介してステッピングモータ168が回転駆動され、図6(c)に示した位置、すなわち標準水勢になる位置に弁体161が回転される。
【0071】
これにより洗浄水が給水路2、温水器7などを経て流体制御弁156の流入路158から第二の流出路160へ吐出され、第二の洗浄ノズル177へと流入される。回転角制御手段185は、洗浄スイッチ180が押されると、まず標準水勢となるようにステッピングモータ168を制御し、弁体161を回転する。また水勢調節スイッチ181、182によって好みの水勢を指示することにより、弁体161の回転角が制御され、吐出流量を任意に増減することが可能となる。
【0072】
洗浄動作後、停止スイッチ184を投入すればステッピングモータ168が駆動されて図6(a)に示す位置に弁体161が制御されて水回路が閉止される。また、ビデ洗浄を行う場合は、洗浄スイッチ179を選択すれば、その信号が回転角制御手段185を介してステッピングモータ168が回転駆動され、図6(b)に示した位置、すなわち標準水勢になる位置に弁体161が回転され、これにより洗浄水が給水路2、温水器7などを経て流体制御弁156の流入路158から第一の流出路159へ吐出され、第一の洗浄ノズル176へと流入され、上記した第二の洗浄ノズル177と同様に制御される。
【0073】
以上述べたように本実施の形態によれば、ステッピングモータ168を駆動手段とし、第一および第二の洗浄ノズル176、177の選択切換えと各々の洗浄ノズルから吐出される洗浄水の流量調節を行う流体制御弁156と、洗浄ノズルの操作手段178と、操作手段178の信号によりステッピングモータ168の回転角を制御する回転角制御手段185を設けたものであるので、操作手段178を操作することにより、ステッピングモータ168へ供給されるパルス信号が制御され、ビデ洗浄用の第一の洗浄ノズル176と、肛門洗浄用の第二の洗浄ノズル177を選択的に使用を切換えることが可能となるとともに各々の洗浄ノズルから吐出される洗浄水量(水勢)を操作手段178の信号に応じて任意に調節可能となる。
【0074】
また、弁体161の出口部163の孔形状に沿って弾性材料からなる摺動接触部材165を設けたことにより、弾性材料からなる摺動接触部材165が、ハウジング157の内面の摺動接触面164に密着して、弁体161の外周の隙間からの漏れが著しく減少し、例えば第一の洗浄ノズル176で洗浄しているとき、他方の第二の洗浄ノズルへの漏れ流量は、ほとんど無しといえる最小限レベルにできる。
【0075】
また、弁体161の出口部163の接触摺動部材165だけが弾性材料で、弁体161の他の部分は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき、弁体161を
回転させるのに必要な駆動トルクを小さくでき、小型で低トルクのステッピングモータ168で回転駆動することができ、コンパクトで安価な流体制御弁156を実現できる。さらに、必要駆動トルクを小さくできることにより、駆動手段であるステッピングモータ168の内蔵減速ギアの減速比を低減でき、切換えや流量調節の応答性を向上できる。
【0076】
従って、単一の駆動手段168の簡単な構成で所定流路以外への漏れ流量を最小限にでき、かつ必要駆動トルクが小さく、複数の流路の選択切換えと、各々の流路における流量制御を可能とし、小型、低コストの優れた水流制御装置を提供することができる。
【0077】
また、弁体161の駆動手段としてステッピングモータ168を用いるので、供給するパルス信号により高精度に弁体161の回転角、すなわち弁開度制御が可能となるとともに、正逆転が可能となる。この結果、例えば洗浄水量にゆらぎを与えることが可能となり、強弱水流の繰り返しにより人体局部に付着した汚物の剥離効果が向上して効率的な洗浄ができるとともに、洗浄時の単調感が解消される。
【0078】
つまり、簡単な構成により複数の洗浄ノズルの選択切換えと水勢調節が可能な衛生洗浄便座に好適な水流制御装置を提供することができる。
【0079】
(実施の形態5)
図8は、本発明の実施の形態5における流体制御弁190の構成断面図である。同図において、191は非弾性材料からなる筒状のハウジングであり、流入路192と、第一および第二の流出路193、194、そして第三および第四の流出路195,196をそれぞれ有している。197はハウジング191内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる有底の略円筒形の弁体であり、内部にハウジング191の流入路192と第一、第二、第三、そして第四の流出路193、194、195、196とを選択的に連通または遮断する流路198が形成されている。
【0080】
弁体197の流路198の出口部199は、ハウジング191との摺動接触面200に設けられ、この出口部199の孔形状の縁に、出口部の孔形状を含んで弾性材料からなる全体が円弧面を成している摺動接触部材201が、弁体197と一体的に形成されている。202および203はXリングやOリングなどのシールパッキンで、弁体197の軸方向と直交して弁体197の両端部における全周面の溝に嵌め込まれている。204は弁体197を回転さす駆動手段で、正逆転回転可能なステッピングモータである。
【0081】
また、図9は図8に示す流体制御弁190の弁体197の分解斜視図で、図10は図9の摺動接触部材201だけを拡大した斜視図で、同じく図11はその断面図である。本実施の形態での摺動接触部材201は、図1〜図7に示した実施の形態1〜実施の形態4の各発明において、「弁体の流路の出口部は、ハウジングとの摺動接触面に設けられ、この出口部の孔形状の縁に沿って弾性材料からなる摺動接触部材が、弁体と一体的に形成されている。」と説明した摺動接触部材とは次のように具体構成が異なるものであります。
【0082】
すなわち、ゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材201を、樹脂成型の弁体197の流路198へ通じる嵌め込み口209に気密に嵌め込む構成とし、図10に示すように、その嵌め合わせ部205の全周に非常に細い糸ビード206を設けた構成にしたものである。
【0083】
糸ビード206は、流体圧の加わった接触摺動部材201がハウジング191の摺動接触面200に適度に押し付けられる動きに対応して嵌め込み口209内で僅かに摺動することになる。207は接触摺動部材201の嵌め合わせ方向を規制する方向規制部で、208は弁体197の出口部199を成すスリット孔である。
【0084】
このスリット孔208は、図1〜図7で示す実施の形態1〜実施の形態4の各発明における弁体の流路の出口部では、流路の内径と同一径の円形とし、そして接触摺動部材の内径も流路の出口部の一部を成す構成にしているが、本実施の形態では、出口部199をスリット孔208にしたものである。
【0085】
この構成により、非弾性材料からなる弁体197の出口部199を成す嵌め込み口209に、糸ビード206を有した接触摺動部材201を嵌め込むだけで弁体197に接触摺動部材201を組み付けられ、ゴムの焼付け加工や接着加工が不要であり、かつ、糸ビード206によるシールなので、その糸ビード206によるシール部が上記した内容の摺動可能にでき、流体圧で接触摺動部材201がハウジング191の摺動接触面200に適度に押し付けられながら弁体197が回動することができる。
【0086】
要するに、ゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材201は、樹脂成型の弁体197に嵌め込まれ、かつスリット孔208の構成で、糸ビード206によるシール部が摺動可能なので、弁体197の流路198の流体圧が嵌め込まれた接触摺動部材201に作用して、接触摺動部材201をハウジング191の摺動接触面200に押し付けるように作用する。
【0087】
つまり、部品の寸法精度が多少ラフであっても、流体圧によって接触摺動部材201をハウジング191の摺動接触面200に強すぎず、かつ弱すぎることなく適度に押し付けることが可能にでき、接触摺動部材201は、ハウジング191に適度に押し付けられ密着しながら摺動させることができるので、ゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材201はハウジング191の摺動接触面200との隙間をなくして、弁開度に応じた正確な流量を得ることができる。
【0088】
しかも、出口部199の接触摺動部材201だけがゴムまたはエラストマーからなる弾性材料で、弁体197は非弾性材料で形成してあるため、摺動摩擦抵抗を小さくでき弁体を回転させるのに必要な駆動トルクを小さくできる。
【0089】
なお、上記の作用効果は、弁体197の出口部199に糸ビード206を有した接触摺動部材201を嵌め込んだ構成で説明したが、糸ビード206がない場合でも弁体197と接触摺動部材201との嵌合精度が適切であれば同様の効果を得ることができる。
【0090】
また上記のように、ゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材201を樹脂成型の弁体197に嵌め込んだ構成で、接触摺動部材201はハウジング191の摺動接触面200との隙間をなくして、弁開度に応じた正確な流量を得ることができ、かつ弁体197を回転させるのに必要な駆動トルクを小さく押さえることができることから、図8に示す流体制御弁190にあって、第一,第二,第三あるいは第四の流出路193、194、195、196といった多数の流出路に切替たり、それぞれの流量をコントロールする構成において、他流路への漏れ、そしてステッピングモータ204の大型化などを心配する必要がない。
【0091】
また、図14に示した従来の流体制御弁5aのような弁体14aの出口部21の孔形状に沿って囲むように形成した凸部31を、弁体14aと一体に樹脂成型して設けた場合、凸部31とハウジング13との摺動接触部32の隙間が小さいものの多少の漏れがあり、樹脂成型の寸法精度によっては、漏れ量がばらつくという課題があり、寸法精度を確保するために弁体14aとハウジング13を材料コストが高価なポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂で成型条件も厳密な管理を要し、それでも他流路への漏れが避けられなかった。
【0092】
然るに本実施の形態では、ゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材201を樹脂成型の弁体197に嵌め込んだ構成にすることにより、弁体197やハウジング191を例えばABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)のような低価格の樹脂材料で、特に厳密な成型条件の管理も要することなく、接触摺動部材201はハウジング191の摺動接触面200との隙間をなくして、弁開度に応じた正確な流量を得ることができ、かつ弁体197を回転させるのに必要な駆動トルクも小さく押さえることができる。
【0093】
このように本実施の形態における流体制御弁190は、多数の流出路193、194、195、196に切替えたり、それぞれの流量をコントロールする構成において、他流路への漏れや、ステッピングモータ204の大型化などを心配する必要がないことから、おしり洗浄とビデ洗浄の切替および流量調節だけでなく、おしりノズルやビデノズルの外側を洗浄して清潔に保つなどの機能も1個の流体制御弁190で水や湯をムダにすることなく可能となり、付加価値の高い温水洗浄便座を小型コンパクトに提供するのに好適である。
【0094】
また、図10に示したように、ゴムまたはエラストマーからなる接触摺動部材201を弁体197に嵌め込む構成とし、その嵌め合わせ方向を規制する方向規制部207を設けた構成にしたことより、例えば弁体197の回動角度と流量変化特性の直線性を良くするために、接触摺動部材201に設けた出口部199を単純な円形ではなくスリット孔208などの異形孔にした場合においても、弁体197の回動によって流出孔の方向ずれて流量特性がずれてしまうような不具合がなく、いつも安定した流量特性を得ることができる。
【0095】
ちなみに、図1〜図7で示した摺動接触部材139、152、165は、出口部137、150、163の孔形状に沿ってゴムまたはエラストマーからなる弾性材料を弁体135、148、161に嵌め込んだ構成でもよいし、弁体135、148、161の表面に出口部137、150、163の孔形状に沿ってゴムまたはエラストマーからなる弾性材料を塗布および印刷により形成した構成でも、前記弁体135、148、161とハウジング132、144、157の摺動接触面138、151、164との隙間を無くして弁体外周の隙間からの漏れが著しく減少でき、正確な流量制御が可能になる。
【0096】
また、接触摺動部材は弾性材料を弁体の表面に塗布および印刷により形成する構成により、ハウジングの摺動接触面との隙間をなくして弁開度に応じた正確な流量を得ることが、弁体の表面に弾性材料を塗布および印刷するだけの簡単な工法で実現することができる。
【0097】
また、接触摺動部材139、152、165、201は、動摩擦係数が0.8以下(ISO8295 JIS K7125)の低摩擦特性を備えたものにすることが好ましい。汎用のニトリルゴム(NBR)やエチレンプロピレンゴム(EPDM)の場合は動摩擦係数が1.4〜1.8程度あるのに対し動摩擦係数が0.8以下になる材質あるいは処理した材料を接触摺動部材として構成することで、さらに弁体135、148、161、197を回転させるのに必要な駆動トルクを約半分程度に小さくできる。この場合、駆動手段168、204の必要駆動トルクをさらに小さくでき、長寿命あるいはより小型化または低コスト化が可能になる。
【0098】
さらにまた、接触摺動部材139、152、165、201は、低摩擦化成分を反応固定化したゴムまたはエラストマーにすることがさらに好ましい。ゴムまたはエラストマーの表面を低摩擦、非粘着にするため単に表面に低摩擦非粘着剤を塗布したものがあるが、この場合その塗布材料が剥がれやすくて、しかも飛躍的な低摩擦効果を持続することが困
難であった。
【0099】
それに対し、低摩擦、非粘着の性質を有するポリマー等の低摩擦化成分を反応固定化する方法が近年開発されてきた。例えば、接触摺動部材のゴムやエラストマー表面にカップリング剤や表面グラフト重合を用いて、低摩擦化成分をゴムやエラストマー表面の−SH,−OH,−COOHなどの官能基と反応させて定着させる反応固定化したものにすることで、動摩擦係数を約0.2程度と未処理のゴムに比べて約1/5〜1/8と飛躍的な低摩擦にすることが可能で、しかも長期使用しても低摩擦効果を持続することができ、弁開度に応じた正確な流量を得ることができるとともに、さらに弁体135、148、161、197を駆動させるのに必要な駆動トルクをさらに小さくすることができる。この場合、駆動手段168、204の必要な駆動トルクをさらに小さくでき、長寿命あるいはより小型化または低コスト化が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上のように、本発明にかかる流体制御弁は、簡単な構成で弁開度に応じた正確な流量が得られ、かつ必要駆動トルクを小さくすることができるので、衛生洗浄便座をはじめ他の流体機器等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1における流体制御弁の構成断面図
【図2】同流体制御弁の図1のA−A断面図
【図3】本発明の実施の形態2における流体制御弁の構成断面図
【図4】同流体制御弁の図3のB−B断面図
【図5】本発明の実施の形態3における流体制御弁の構成断面図
【図6】同流体制御弁の図5のC−C断面図
【図7】本発明の実施の形態4における図5に示す流体制御弁を用いた衛生洗浄便座における水流制御装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態5における流体制御弁の構成断面図
【図9】同流体制御弁の弁体の分解斜視図
【図10】同流体制御弁の接触摺動部材の斜視図
【図11】同接触摺動部材の断面図
【図12】従来の水流制御装置の構成図
【図13】従来の他の水流制御装置の構成図
【図14】従来の他の水流制御装置の構成図
【符号の説明】
【0102】
131、143、156、190 流体制御弁
132、144、157、191 ハウジング
133、145、158、192 流入路
134 流出路
135、148、161、197 弁体
136、149、162、198 流路
137、150、163、199 出口部
138、151、164、200 摺動接触面
139、152、165、201 接触摺動部材
146、159、193 第一の流出路(流出路)
147、160、194 第二の流出路(流出路)
168、204 駆動手段
176 第一の洗浄ノズル
177 第二の洗浄ノズル
178 操作手段
179 洗浄スイッチ
180 洗浄スイッチ
181 水勢調節スイッチ
182 水勢調節スイッチ
188 回転角制御手段
195 第三の流出路(流出路)
196 第四の流出路(流出路)
205 嵌め合わせ部
206 糸ビード
207 方向規制部
208 スリット孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入路と流出路を有する非弾性材料からなるハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に設けられた非弾性材料からなる弁体と、前記流入路と前記流出路とを連通または遮断する前記弁体内部の流路の出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に孔形状を含めて弾性材料により形成した接触摺動部材を設けた流体制御弁。
【請求項2】
前記接触摺動部材は、ゴムまたはエラストマーであることを特徴とする請求項1記載の流体制御弁。
【請求項3】
前記接触摺動部材は、弁体に嵌め込む構成とし、その嵌め合わせ部に糸ビードを設けたことを特徴とする請求項2記載の流体制御弁。
【請求項4】
前記接触摺動部材は、弁体に嵌め込む構成とし、その嵌め合わせ方向を規制する方向規制部を設けたことを特徴とする請求項2記載の流体制御弁。
【請求項5】
前記接触摺動部材は、弁体の表面に塗布および印刷により形成したことを特徴とする請求項1記載の流体制御弁。
【請求項6】
前記接触摺動部材は、動摩擦係数が0.8以下の低摩擦特性を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項7】
前記接触摺動部材は、低摩擦化成分を反応固定化したゴムまたはエラストマーであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項8】
ハウジングは、流入路から各々分岐して設けられた複数の流出路を有する請求項1〜7のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項9】
弁体を回動するモータを有する駆動手段と、前記モータの回転角を制御することにより前記複数の流出路の選択切換えと流量制御を行う回転角制御手段を設けた1〜8のいずれかに記載の流体制御弁。
【請求項10】
洗浄水を供給する給水路に設け洗浄水を加熱する温水器等の加熱手段と、前記温水器に連通する流入路および前記流入路から各々分岐して設けた複数の流出路を有するハウジングと、前記ハウジング内に回動可能に設けられた弁体と、前記弁体内部の流路の出口部が前記ハウジングとの摺動接触面に設けられ、前記出口部に弾性材料により孔形状を含めて形成した接触摺動部材と、前記弁体を回動するステッピングモータを有する駆動手段から構成される流体制御弁と、前記流体制御弁の第一および第二の流出路に各々連通する第一および第二の洗浄ノズルと、前記第一および第二の洗浄ノズルを選択駆動する洗浄スイッチと水量を調節する水勢調節スイッチを有する操作手段と、前記操作手段の信号により前記ステッピングモータの回転角を制御する回転角制御手段を設けた衛生洗浄便座の水流制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図14】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−14170(P2009−14170A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−179533(P2007−179533)
【出願日】平成19年7月9日(2007.7.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】