説明

流体加熱装置

【課題】配置空間の有効利用を図ることができ、ヒータ部からのエネルギーを効率的に加熱部に与えることができる流体加熱装置、更には、加熱部の膨張を抑制することができる流体加熱装置を提供する。
【解決手段】不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成された、流体を加熱する二つの面状加熱部2A,2Bと、透明石英ガラス板から形成され、前記面状加熱部の間に挟まれたヒータ部3と、前記ヒータ部に電力を供給する封止端子部4A,4Bとを備え、更に、前記面状加熱部2A,2Bは、流体を導入する導入口2A2,2B2と、前記流体導入口からの流体が流通する流路2A1,2B1と、前記流路の内部に配設された、通過するガスの抵抗となる充填物2Dと、前記流路内の流体を導出する流体導出口2A3,2B3を備え、前記ヒータ部は収容部3Aに収容されるカ−ボンワイヤー発熱体Wを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスもしくは液体である流体を加熱する流体加熱装置に関し、例えば、半導体製造工程中で使用される各種半導体加熱処理炉に接続され、前記半導体加熱処理炉に供給されるガスの温度を昇降制御する流体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、例えば、不純物拡散炉、酸化炉、アニール炉、薄膜製造装置、エッチング装置等において種々の半導体加熱処理炉が用いられている。これら半導体加熱処理炉には、その目的、用途に応じ、枚葉式、縦型、横型バッチ式等のタイプのものが存在している。これら半導体加熱処理炉において、ウエハに生成される膜厚、膜質を均一になすために、反応ガスを炉内に導入する前に加熱装置を用いて加熱し、半導体加熱処理炉の処理温度に見合う所定温度に予熱昇温して、炉内温度分布の均一化を図ることがなされている。
【0003】
本出願人は、先に、この種の加熱装置として特許文献1(特開2003−294312号公報)において流体加熱装置を提案している。この提案した流体加熱装置を図10に基づいて説明する。
図10に示すように、この流体加熱装置100は、ガス供給源から供給されるガスを加熱する加熱管101と、前記加熱管101の外周囲に螺旋状に形成されたヒータ部102と、前記加熱管101とヒータ部102とが収納された石英ガラス製の熱遮蔽体103とを備えている。また、前記熱遮蔽体103を収容するハウジング104と、熱遮蔽体103とハウジング104との間に設けられた高純度な断熱材105と、一端がガス供給源に接続されると共に他端が加熱管101に接続されたガス導入管である接続管106と、一端が加熱管101に接続されると共に他端が半導体加熱処理炉(図示せず)に接続されたガス導出管である接続管107とを備えている。
【0004】
前記加熱管101の内部には、図11に示すように通過するガスの抵抗となる充填物108および拡散板109が配設されている。前記充填物108として、短柱状の透明石英ガラスビーズを融着して形成された成形体が用いられる。
また、拡散板109には、複数の貫通穴109aが形成されている。この貫通穴109aは中心部から外周部に行くにしたがって、数多くの貫通穴が設けられている。即ち、単位面積あたりの開口率が、中心部より外周部の方が大きく形成されている。
【0005】
また、前記ヒータ部102は、その発熱部がカーボンファイバー束からなるカ−ボンワイヤー発熱体(図示せず)を封入した石英ガラス管からなり、前記加熱管101の表面を螺旋状にように配設されている。
このヒータ部102は、図10に示すように、螺旋状の石英ガラス管102aと、前記螺旋状の石英ガラス管102aの両端に夫々設けられた、一対の石英ガラス製の直管102bとから構成されている。
【0006】
また、前記石英ガラス製の直管102bの夫々には、封止端子部110が設けられている。そして、夫々の封止端子部110には接続線110aが設けられ、電力が供給されるように構成されている。尚、図10には、一方の石英ガラス製の直管102b、封止端子部110、接続線110aのみ図示されている。
【0007】
この流体加熱装置100にあっては、接続管106を介して加熱管101の内部に導入されたガスは、拡散板109によって中心部から外周部へ拡散され、充填物108の上流側面の全面から内部に流入する。そして、前記ガスは充填物108の全領域を流れるしたがって、加熱、昇温し、接続管107を介して半導体加熱処理炉(図示せず)に導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−294312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記流体加熱装置は、充填物の間を流体が流れるように構成されているため、流体の滞留性を向上させることができ、熱交換効率を向上させることができる。また、カーボンワイヤー発熱体が用いられているために、高純度炭化珪素製ヒータに比較して熱容量が小さく、半導体ウエハに有害な金属汚染やパーティクルの生成、不純物ガスの発生等を抑制できる。
【0010】
しかしながら、前記した流体加熱装置は、全体として円柱形状に形成されるため、その配置空間が大きくなり、空間の有効利用を図ることができないという課題があった。
また、前記した流体加熱装置では、熱、光の外方への拡散を抑制するために、螺旋状に形成されたヒータ部の外側を石英ガラス製の熱遮蔽体で覆い、更に熱遮蔽体とハウジングとの間に高純度な断熱材で覆い、外部への熱、光の拡散を抑制している。
しかしながら、実際には熱、光が外方への拡散し、ヒータ部からのエネルギーを加熱管に効率的に与えることができず、エネルギーの損失が大きいという課題があった。
【0011】
更に、加熱管における流体導入側と流体導出側の温度を比べると、導入側よりも導出側の温度が高くなり、加熱管全体の温度が均一にならないという課題があった。このように加熱管全体が均一な温度にならない場合には、加熱管内の融着された充填物の剥がれ等によってパーティクルを発生させ、また加熱管がヒータ部に接触すること等によって破損するという課題があった。
【0012】
本発明は、上記技術的課題を解決するためになされたものであり、配置空間の有効利用を図ることができ、ヒータ部からのエネルギーをより効率的に加熱部に与えることができる流体加熱装置を提供することを目的とする。更には、加熱管全体をより均一な温度とすることができる流体加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる流体加熱装置は、不透明石英ガラス板、あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成された、流体を加熱する二つの面状加熱部と、透明石英ガラス板から形成され、前記面状加熱部の間に挟まれたヒータ部と、前記ヒータ部に電力を供給する封止端子部とを備え、前記面状加熱部は、流体を導入する導入口と、前記流体導入口からの流体が流通する流路と、前記流路の内部に配設された、通過するガスの抵抗となる充填物と、前記流路内の流体を導出する流体導出口とを有し、前記ヒータ部は、収容部に収容されるカ−ボンワイヤー発熱体を有することを特徴としている。
【0014】
このように、面状加熱部とヒータ部が石英ガラス板から形成されているため、全体として、板形状に形成でき、配置空間の有効利用を図ることができる。
また、面状加熱部を不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板で形成し、ヒータ部を透明石英ガラス板で形成し、更に流路の内部に通過するガスの抵抗となる充填物を配設したため、ヒータ部からのエネルギーをより効率的に加熱部に与えることができる。
【0015】
上記目的を達成するためになされた本発明にかかる流体加熱装置は、流体を加熱する少なくとも四つの面状加熱部と、前記面状加熱部に挟まれた少なくとも二つのヒータ部と、前記ヒータ部に電力を供給する封止端子部とを備え、前記面状加熱部は、流体を導入する導入口と、前記流体導入口からの流体が流通する流路と、前記流路の内部に配設された、通過するガスの抵抗となる充填物と、前記流路内の流体を導出する流体導出口とを有し、前記ヒータ部は、収容部に収容されるカ−ボンワイヤー発熱体を有し、かつ前記面状加熱部の中で外側に配置される二つの面状加熱部は、不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成され、内側に配置される面状加熱部及びヒータ部は透明石英ガラス板から形成されていることを特徴としている。
【0016】
この流体加熱装置においても、面状加熱部とヒータ部が石英ガラス板から形成されているため、全体として、板形状に形成でき、配置空間の有効利用を図ることができる。
また、面状加熱部の中で外側に配置される二つの面状加熱部は、不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成され、内側に配置される面状加熱部及びヒータ部は透明石英ガラス板から形成され、更に流路の内部に通過するガスの抵抗となる充填物を配設したため、ヒータ部からのエネルギーをより効率的に加熱部に与えることができる。
【0017】
ここで、前記二つの第1の面状加熱部と、透明石英ガラス板から形成され、前記第1の面状加熱部の間に挟まれた第1のヒータ部と、透明石英ガラス板から形成され、前記第1の面状加熱部の間に挟まれた第2のヒータ部と、透明石英ガラス板から形成され、前記第1及び第2のヒータ部の間に挟まれた第2の面状加熱部とを備え、前記第1の面状加熱部の流体導入口に対応する位置に、前記第2の面状加熱部の流体導出口が形成され、前記第1の面状加熱部の流体導出口に対応する位置に、前記第2の面状加熱部の流体導入口が形成されていることが望ましい。
このように、記第1の面状加熱部の流体導入口に対応する位置に、前記第2の面状加熱部の流体導出口が形成され、前記第1の面状加熱部の流体導出口に対応する位置に、前記第2の面状加熱部の流体導入口が形成され、流体の流れ方向が反対方向に形成されるため、加熱管全体の温度をより均一になすことができる。
【0018】
また、前記四つの面状加熱部における、前記外側に配置される第1または第4の面状加熱部の流体導入口に対応する位置に、前記内側に配置される第2または第3の面状加熱部の流体導出口が形成され、前記第1または第4の面状加熱部の流体導出口に対応する位置に、前記第2または第3の面状加熱部の流体導入口が形成されていることが望ましい。
このように、前記第1または第4の面状加熱部の流体導入口に対応する位置に、前記第2または第3の面状加熱部の流体導出口が形成され、前記第1または第4の面状加熱部の流体導出口に対応する位置に、前記第2または第3の面状加熱部の流体導入口が形成され、流体の流れ方向が反対方向に形成されるため、加熱管全体の温度をより均一になすことができる。
【0019】
また、前記面状加熱部の流路ができるだけ長くなるように屈曲して形成されると共に、前記ヒータ部の収容部と前記流路とが対向して形成されていることが望ましい。
このように、前記ヒータ部の収容部と前記流路とが対向している場合には、ヒータ部からのエネルギーをより効率的に加熱部に与えることができる。
【0020】
前記流路の凹部の内壁面はファイアポリッシュ処理され、面状加熱部及びヒータ部の接触面は、ミラーポリッシュ処理またはファイアポリッシュ処理されていることが望ましい。
前記流路の凹部の内壁面がファイアポリッシュ処理されることにより、機械加工時に生じたマイクロクラックなどを除去することができ、パーティクル等の発生を抑制することができる。
また、面状加熱部及びヒータ部の接触面が、ファイアポリッシュ処理されることにより、機械加工時に生じたマイクロクラックなどを除去することができ、またミラーポリッシュ処理された場合には、接触面同士の接着強度が高められ、かつ、その未接着面の発生(気泡残り)を防止することができる。
【0021】
また、前記流体導入口及び流体導出口が側面に形成され、前記ヒータ部の封止端子部は正面及び背面に形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、配置空間の有効利用を図ることができ、ヒータ部からのエネルギーをより効率的に加熱部に与えることができる流体加熱装置を得ることができ、更には加熱管全体の温度をより均一になすことができる流体加熱装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明にかかる流体加熱装置の第1の実施形態を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のI−I断面図である。
【図3】図3は、図1に示した実施形態の分解図である。
【図4】図4は、図1に示したヒータ部の変形例を示す断面図である。
【図5】図5は、図4に示したヒータ部の分解図である。
【図6】図6は、図1に示した面状加熱部の変形例を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明にかかる流体加熱装置の第2の実施形態を示す断面図である。
【図8】図8は、図7に示した実施形態の分解図である。
【図9】図9は、本発明にかかる流体加熱装置の第3の実施形態を示す断面図である。
【図10】図10は、従来の流体加熱装置を示す断面図である。
【図11】図11は、図10に示す加熱部を示す透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明にかかる流体加熱装置の第1の実施形態について、図1乃至図3に基づいて説明する。尚、図1は、本発明にかかる流体加熱装置の第1の実施形態を示す正面図、図2は、図1のI−I断面図、図3は、図1に示した実施形態の分解図である。
【0025】
図1、2に示すように、流体加熱装置1は、気体、液体の流体供給源から供給される流体を加熱する二つの面状加熱部2A、2Bと、前記面状加熱部2A、2Bに挟まれたヒータ部3と、前記ヒータ部3に電力を供給する封止端子部4A,4Bとを備えている。
【0026】
先ず、この流体加熱装置1の面状加熱部2A、2Bについて説明する。
この面状加熱部2A、2Bは不透明石英ガラス板から構成され、この不透明石英ガラス板の一面に、流体が流通する流路2A1,2B1が形成されている。この流路2A1,2 B1は、図2に示すように、断面矩形状の凹部(溝部)形状として形成される。
尚、面状加熱部2A、2Bは流路2A1,2B1同士を隔てる流路壁のみ透明石英ガラス板で構成し、その他の部分を不透明石英で構成しても良い。また、面状加熱部2A、2Bは透明石英ガラス板で形成し、その後、その外表面をサンドブラスト加工しても良い。
【0027】
また、前記流路2A1,2B1は、図1に示すように、ヒータ部3のカーボンワイヤー発熱体の配置と対向して、流体導入口2A2,2B2から流体導出口2A3,2B3まで、流路長が長くなるよう蛇腹状に屈曲して形成されている。
この流路2A1,2B1は、蛇腹状に屈曲して形成されているため、より長い時間、伝熱により、流体を加熱することができる。特に、流路をマシニング加工により、間隔L1,L2寸法(図1参照)を短く形成することにより、石英板面積を最大限利用した流路長を確保することができる。そのため、より長い時間伝熱により流体を加熱することができ、熱交換効率がより向上させることができる。
【0028】
また、前記流路2A1,2B1の凹部(溝部)の内壁面は、ファイアポリッシュ加工が施される。このファイアポリッシュ加工とは、機械加工により形成された凹部(溝部)の内壁面の表面を加熱し、その表面を溶解して、つや出しする加工方法である。
このように、流路2A1,2B1の凹部(溝部)の内壁面にファイアポリッシュ加工が施されると、機械加工時に生じたマイクロクラックなどを除去することができ、パーティクル等の発生を抑制することができる。
【0029】
また、前記流路2A1の内部には、図2に示すように通過する流体の抵抗となる充填物2Dが配設されている。前記充填物2Dとして、短柱状の透明石英ガラスビーズを融着して形成された成形体が用いられる。この充填物2Dは、前記流路2A1,2B1の凹部(溝部)の側壁に融着して取り付けられているのが好ましい。これにより、流路内2A1,2Bに充填物12の一部(石英ガラスビーズ)が脱落することもなく、それに伴うパーティクル等の発生を防止することができる。
【0030】
また、前記充填物2Dの石英ガラスビーズの形状としては、輻射熱を吸収して通過する流体に有効に熱を付与できる形状のものであれば、必ずしも球状に限定されるものではなく、短柱状、回転楕円体状、短柱円筒状、鞍型形状等のものを随意採用して差し支えない。
しかしながら、融着時に歪みを生じ、取り扱い時、使用時等に割れや欠けが生じ易いものは好ましくなく、またできるだけ安価で、かつ形状加工が容易な点等から球状、短柱円柱形状のものが好ましい。
【0031】
この充填物2Dによって、流路2A1,2B1内に複雑に屈曲交差する微細な流路が形成され、この微細な流路を流体が通過することによって、適度な滞留時間が付与される。
また、前記カーボンワイヤー発熱体Wからの輻射熱は、前記充填物2Dの内部で、複雑に透過、屈折、散乱、反射を繰り返す。その結果、導入された流体に充分な熱量を付与することができるため、熱交換効率が優れる。
【0032】
前記面状加熱部2Aの流体導入口2A2に対向する位置に、面状加熱部2Bの流体導出口2B3が形成され、面状加熱部2Aの流体導出口2A3に対向する位置に、面状加熱部2Bの流体導入口2B2が形成されている。
【0033】
前記流体導入口2A2から導入された流体は、流体導入口2A2から流体導出口2A3に向けて徐々に温度が上昇する。一方、流体導入口2B2から導入された流体は、流体導入口2B2から流体導出口2B3に向けて徐々に温度が上昇する。
【0034】
前記面状加熱部2A内の流路2A1における流体の流れは、面状加熱部2B内の流路2B1における流体の流れと反対方向に形成されるため、面状加熱部2A内の温度上昇が面状加熱部2Bによって抑制され、一方、面状加熱部2B内の温度上昇が面状加熱部2Aによって抑制される。その結果、面状加熱部2A、2B全体として、均一な温度状態となる。
尚、前記流路2A1における流体の流れが、流路2B1における流体の流れと反対方向になされれば良いため、流体導入口2A2と流体導出口2B3の位置が対向する位置から多少ずれても良く、同様に流体導出口2A3と流体導入口2B2の位置も、対向する位置から多少ずれても良い。即ち、流体導入口2A2と流体導出口2B3の位置が対応する位置にあり、同様に流体導出口2A3と流体導入口2B2の位置も、対応する位置にあれば良い。
【0035】
前記ヒータ部3は透明石英ガラス板から構成され、一面には、カーボンファイバー束からなるカ−ボンワイヤー発熱体Wを収容する収容部3Aが形成されている。
この収容部3Aは、断面矩形状の凹部(溝部)形状として形成され、流路2A1,2B1の配置と対向して、一方の封止端子部4Aから他方の封止端子部4Bまで、蛇腹状に屈曲して形成されている。このように収容部3Aがこの流路2A1,2B1に対向して、蛇腹状に屈曲して形成されているため、より長い時間伝熱により、流体を加熱することができる。
【0036】
また、前記収容部3Aの凹部(溝部)を塞ぐ覆板5が、前記ヒータ部3の一面に形成されている。この覆板5は透明石英ガラス板で形成されている。なお、覆板5は図2において、ヒータ部3よりも薄く記載されているが、ヒータ部3と同じもしくは厚くしても良い。面状加熱部2Aと面状加熱部2Bの流体を加熱条件を同じにするために、ヒータ部3と同じ厚さとすることが好ましい。
更に、ヒータ部3から延長されたカ−ボンワイヤー発熱体Wは、夫々の封止端子部4A,4Bにおいて接続線6A,6Bと接続され、電力が供給されるように構成されている。
【0037】
この面状流体加熱装置1の製作方法について図3に基づいて説明する。
先ず、矩形の板状の不透明石英ガラス板に、断面矩形状の凹部(溝部)を蛇腹状に機械加工により形成する。そして、図3に示すように、面状加熱部2A,2Bの流路内2A1,2B1内に充填物2Dを充填する。この充填物2Dは、短柱状の透明石英ガラスビーズを融着して形成された成形体であり、前記流路2A1,2B1の側壁に融着して収容されている。
これにより、流路内2A1,2Bでの充填物のずれが抑制され、パーティクルの発生を抑制することができる。
【0038】
前記面状加熱部2A,2Bと同様に、矩形の板状の透明石英ガラス板に、断面矩形状の凹部(溝部)を蛇腹状に機械加工により形成し、凹部(溝部)にカ−ボンワイヤー発熱体Wを収容し、ヒータ部3を製作する。また、矩形の板状の透明石英ガラス体から覆板5を製作する。
【0039】
そして、図3に示すように、面状加熱部2A,覆板5、ヒータ部3、面状加熱部2Bを融着し、一体化する。面状加熱部2A,覆板5、ヒータ部3、面状加熱部2Bの融着面(接触面)は、ミラーポリッシュ処理またはファイアポリッシュ処理が施されるのが好ましい。
このミラーポリッシュ加工とは、面状加熱部2A,覆板5、ヒータ部3、面状加熱部2Bの接触面を研磨し、鏡面状態(表面粗さRaで1.5nm以下、平面度で0.03mm以下)になす加工である。
【0040】
その後、ヒータ部3に封止端子部4A,4Bを形成する。この封止端子部4A,4Bを形成することにより、カ−ボンワイヤー発熱体Wと接続線6A,6Bが電気的に接続される。
この封止端子部4A,4Bの形成後、窒素ガス(不活性ガス)をヒータ部3の充填口(図示せず)から導入し、ヒータ部3の内部を窒素ガスで充填し、密封する。
このように窒素ガス(不活性ガス)でヒータ部3の内部を密封するのは、カ−ボンワイヤー発熱体Wの酸化を抑制するためである。
【0041】
このように構成された面状流体加熱装置1は、接続線6A,6Bから電力を供給し、カ−ボンワイヤー発熱体Wを加熱する。このとき、前記したように、面状加熱部2A内の流路2A1における流体は、面状加熱部2B内の流路2B1における流体と反対方向に流れる。
そのため、面状流体加熱装置1全体として略均一な温度とすることができ、流路2A1,2B1内の充填物2Dである、例えばビーズ剥がれによるパーティクルの増加、あるいはまた面状加熱部2A,2Bとヒータ部3との接触等による破損を抑制することができる。
【0042】
また、この面状流体加熱装置1は、全体形状が板状に形成されているため、その配置空間を有効に利用することができる。
また、ヒータ部3は、前記面状加熱部2A、2Bに挟まれているため、外部への熱、光の拡散を抑制できる。特に、外側に配置される面状加熱部2A、2Bが不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工された石英ガラス板で形成されるため、熱、光が外部へ逃げるのを防止することができる。一方、前記ヒータ部3、覆板5は透明石英ガラスで形成されているため光が透過し易い。
その結果、ヒータ部からのエネルギーを面状加熱部2A、2Bに効率的に与えることができ、エネルギーの効率をより向上させることができる。
【0043】
次に、第1の実施形態の第1の変形例を図4、図5に示す。この変形例は、カ−ボンワイヤー発熱体Wを収容する収容部3Aの断面形状を凸型形状になし、この凸型形状の収容部3Aに2本のカ−ボンワイヤー発熱体Wを収容したものである。このように、2本のカ−ボンワイヤー発熱体Wを収容することにより、流体の昇温速度を速めることができる。
【0044】
この凸型形状の収容部3Aを形成するには、断面が凹部形状(溝部)をヒータ部3に形成すると共に、前記収容部3Aの凹部(溝部)を塞ぐ覆板5に、断面が凹部(溝部)5aを形成する。このヒータ部3と、覆板5を融着することによって、断面形状が凸型形状の収容部3Aが形成される。
【0045】
また、第1の実施形態の第2の変形例を図6に示す。前記第1の実施形態における面状加熱部2A、2Bにあっては、流体が流通する流路2A1,2B1を蛇腹状に屈曲して形成した場合を例にとって説明した。
しかしながら、流体導入口2A2,2B2から流体導出口2A3,2B3に向かう、一つの凹部を形成し、この凹部を流路2A4,2B4としても良い。この流路2A4,2B4内には、石英ガラスビーズのような充填物2Dが収容される。また、流体が通過する貫通孔を有する拡散板(図示せず)を配置しても良い。
【0046】
このような流体加熱装置であっても、全体として略均一な温度とすることができる。また、全体形状が板状に形成されているため、その配置空間を有効に利用することができる。更には、ヒータ部3は、前記面状加熱部2A、2Bに挟まれているため、外部への熱、光の拡散を抑制できる。
【0047】
次に、第2の実施形態を図7、図8に基づいて説明する。尚、図7は、本発明にかかる流体加熱装置の第2の実施形態を示す断面図、図8は、図7に示した実施形態の分解図である。また、第1の実施形態と同一、あるいは相当する部材は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
この第2の実施形態は、第1の実施形態と比べて、面状加熱部2A,2B,2Cが配置され、面状加熱部2A,2Bに挟まれるように、ヒータ部3が設けられ、面状加熱部2B,2Cに挟まれるように、ヒータ部7が設けられている点において異なる。
このように面状加熱部2B、ヒータ部3,7が中央に配置されているため、面状加熱部2Bの流体導入口2B2及び流体導出口2B3、前記ヒータ部3の封止端子部4A,4Bおよび前記ヒータ部7の端子部8A,8Bは側面に形成され、前記面状加熱部2Aの流体導入口2A2及び流体導出口2A3は、面状流体加熱装置の背面に形成される。一方、前記面状加熱部2Cの流体導入口2C2及び流体導出口2C3は、面状流体加熱装置の正面に形成される。
【0049】
また、面状加熱部2A,2Cは、外部への熱、光の拡散を抑制するため、不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成される。一方、面状加熱部2B、ヒータ部3,7、覆板5は、光を透過し易くするために、透明石英ガラスが用いられている。
その結果、ヒータ部3,7からのエネルギーを面状加熱部に効率的に与えることができ、エネルギーの効率が良い。尚、第2の実施形態において、図4、図5に示すような凸型形状の収容部を形成しても良い。また図6に示すように一つの凹部を形成し、この凹部を流路としても良い。
【0050】
次に、第3の実施形態を図9に基づいて説明する。尚、図9は、本発明にかかる流体加熱装置の第3の実施形態を示す断面図である。図9において、矢印は流体の流れを示している。
この第3の実施形態は、第1の実施形態の流体加熱装置を重ね合わせたものであり、第1段目の流体加熱部X1として、面状加熱部2A、覆板5、ヒータ部3、面状加熱部2Bが配置され、第2段目の流体加熱部X2として、面状加熱部9A、ヒータ部7、面状加熱部9Bが配置される。
【0051】
ここで、面状気体加熱装置の正面、及び背面に位置する面状加熱部2A,9Bは、外部への熱、光の拡散を抑制するため、不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成される。
一方、内部のヒータ部3,7、面状加熱部2B,9A、覆板5は、光を透過し易くするために、透明石英ガラスが用いられている。
その結果、ヒータ部からのエネルギーを面状加熱部に効率的に与えることができ、エネルギーの効率が良い。尚、第3の実施形態において、図4、図5に示すような凸型形状の収容部を形成しても良い。また図6に示すように一つの凹部を形成し、この凹部を流路としても良い。
【0052】
また、各面状加熱部2A,2B,9A,9Bの各流路における流体の通過方向は、図9に示すように、前記面状加熱部2A内の流路2A1における流体の流れ(流体導入口2A2から流体導出口2A3に至る流れ)と、面状加熱部2B内の流路2B1における流体の流れ(流体導入口2B2から流体導出口2B3に至る流れ)とは反対方向とする。また、前記面状加熱部2B内の流路2B1における流体の流れと、面状加熱部9A内の流路9A1における流体の流れ(流体導入口9A2から流体導出口9A3に至る流れ)とは反対方向とする。更に、前記面状加熱部9A内の流路9A1における流体の流れと、面状加熱部9B内の流路9B1における流体の流れ(流体導入口9B2から流体導出口9B3に至る流れ)とは反対方向とする。
これにより、面状加熱部2A内の温度上昇が面状加熱部2Bによって抑制され、面状加熱部2B内の温度上昇が面状加熱部9Aによって抑制され、面状加熱部9A内の温度上昇が面状加熱部9Bによって抑制される。その結果、面状加熱部2A,2B,9A,9B全体として、均一な温度上昇となる。
【0053】
また、図示しないが、各面状加熱部2A,2B,9A,9Bの各流路における流体の通過方向を、前記面状加熱部2A内の流路2A1における流体の流れと、面状加熱部2B内の流路2B1における流体の流れとは反対方向とする。また、前記面状加熱部2B内の流路2B1における流体の流れと、面状加熱部9A内の流路9A1における流体の流れとは同方向とする。更に、前記面状加熱部9A内の流路9A1における流体の流れと、面状加熱部9B内の流路9B1における流体の流れとは反対方向とする。
これにより、面状加熱部2A内の温度上昇が面状加熱部2Bによって抑制され、面状加熱部9A内の温度上昇が面状加熱部9Bによって抑制される。その結果、面状加熱部2A,2B,9A,9B全体として、均一な温度上昇となる。
【0054】
上記第1〜第3の実施形態にあっては、正面視上、矩形形状に形成された流体加熱装置を例にとって説明したが、本発明は特にこれに限定されるものでなく、正面視上、円形状、三角形状等の形状に形成された流体加熱装置であっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 流体加熱装置
2A 面状加熱部
2A1 流路
2A2 流体導入口
2A3 流体導出口
2A4 流路
2B 面状加熱部
2B1 流路
2B2 流体導入口
2B3 流体導出口
2B4 流路
2C 面状加熱部
2C1 流路
2C2 流体導入口
2C3 流体導出口
2D 充填物
3 ヒータ部
3A 収容部
4A 封止端子部
4B 封止端子部
5 覆板
6A 接続線
6B 接続線
7 ヒータ部
8A 封止端子部
8B 封止端子部
9A 面状加熱部
9A1 流路
9A2 流体導入口
9A3 流体導出口
9B 面状加熱部
9B1 流路
9B2 流体導入口
9B3 流体導出口
W カ−ボンワイヤー発熱体
X1 第1段目の流体加熱部
X2 第2段目の流体加熱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不透明石英ガラス板、あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成された、流体を加熱する二つの面状加熱部と、透明石英ガラス板から形成され、前記面状加熱部の間に挟まれたヒータ部と、前記ヒータ部に電力を供給する封止端子部とを備え、
前記面状加熱部は、流体を導入する導入口と、前記流体導入口からの流体が流通する流路と、前記流路の内部に配設された、通過するガスの抵抗となる充填物と、前記流路内の流体を導出する流体導出口とを有し、
前記ヒータ部は、収容部に収容されるカ−ボンワイヤー発熱体を有することを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
流体を加熱する少なくとも四つの面状加熱部と、前記面状加熱部に挟まれた少なくとも二つのヒータ部と、前記ヒータ部に電力を供給する封止端子部とを備え、
前記面状加熱部は、流体を導入する導入口と、前記流体導入口からの流体が流通する流路と、前記流路の内部に配設された、通過するガスの抵抗となる充填物と、前記流路内の流体を導出する流体導出口とを有し、
前記ヒータ部は、収容部に収容されるカ−ボンワイヤー発熱体を有し、かつ前記面状加熱部の中で外側に配置される二つの面状加熱部は、不透明石英ガラス板あるいはサンドブラスト加工させた石英ガラス板から形成され、内側に配置される面状加熱部及びヒータ部は透明石英ガラス板から形成されていることを特徴とする流体加熱装置。
【請求項3】
前記二つの第1の面状加熱部と、透明石英ガラス板から形成され、前記第1の面状加熱部の間に挟まれた第1のヒータ部と、透明石英ガラス板から形成され、前記第1の面状加熱部の間に挟まれた第2のヒータ部と、透明石英ガラス板から形成され、前記第1及び第2のヒータ部の間に挟まれた第2の面状加熱部とを備え、
前記第1の面状加熱部の流体導入口に対応する位置に、前記第2の面状加熱部の流体導出口が形成され、前記第1の面状加熱部の流体導出口に対応する位置に、前記第2の面状加熱部の流体導入口が形成されていることを特徴とする請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項4】
前記四つの面状加熱部における、前記外側に配置される第1または第4の面状加熱部の流体導入口に対応する位置に、前記内側に配置される第2または第3の面状加熱部の流体導出口が形成され、前記第1または第4の面状加熱部の流体導出口に対応する位置に、前記第2または第3の面状加熱部の流体導入口が形成されていることを特徴とする請求項2記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記面状加熱部の流路が屈曲して形成されると共に、前記ヒータ部の収容部と前記流路とが対向して形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の流体加熱装置。
【請求項6】
前記流路の凹部の内壁面はファイアポリッシュ処理され、面状加熱部及びヒータ部の接触面は、ミラーポリッシュ処理またはファイアポリッシュ処理されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の流体加熱装置。
【請求項7】
前記流体導入口及び流体導出口が側面に形成され、前記ヒータ部の封止端子部は正面及び背面に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の流体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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