説明

流体加熱装置

【課題】電磁誘導によって流体を加熱するときに、簡単且つコンパクトな構成で所定の温度まで加熱させることを目的とする。
【解決手段】本発明の流体加熱装置1は、電磁誘導の誘導加熱によって加熱され、流体の流路を内部に形成する直線状の流体通路管10を並列に複数配置した被加熱部2と、誘導加熱によって各流体通路管10を発熱させる誘導コイル42と、流体通路管10のうち1つと連通する開口部32および1つの流体通路管10と他の流体通路管10との流路を連結する連結溝33を1または複数形成した蓋部4と、を備えている。蓋部4に連絡溝33を形成することにより、簡単且つコンパクトな構成で流体通路管10を通過する流体は被加熱部2を複数回通過させることができ、所望の温度まで短時間で流体加熱を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導を利用して流体の加熱を行う流体加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低温水を加熱して高温水を生成する手段としては主に燃焼ガスを用いる方法が用いられている。ただし、エネルギー効率や安全性の観点等から、近年では電磁誘導によって磁性体を発熱させて低温水を加熱する手法が用いられるようになっている。電磁誘導によって低温の流体を加熱する技術が特許文献1に開示されている。電磁誘導による流体加熱は磁性管の内部流路に流体を流して、所定間隔離間させた位置に設けた誘導コイルに交流電流(誘導電流)を流すことにより行う。誘導コイルに交流電流が流れると、磁界強度が変化して、磁性管に渦電流が発生する。この渦電流が磁性管を流れることによりジュール熱が発生し、磁性管が発熱をする。これにより、内部を流れる流体を加熱している。
【0003】
そして、特許文献1の技術では、流体の流路となる管に湾曲部を設けて、誘導コイルの内側において管を複数回通過させるようにしている。これにより、誘導コイルの内側の領域を流体が往復するように流れ、1本の長い管および誘導コイルを使用した場合と同等の発熱量を管および誘導コイルを短くして得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の図3には、直線状の磁性管を固定支持する管支えに凹部を設けて、この凹部の中に2つの磁性管を連通させる筒状に構成した接続部を設けた構造が開示されている。これにより、2つの磁性管が連通して誘導コイルの内側を流体が往復するようにしている。特許文献1にも記載のあるように、筒状の接続部は外部空間に流体を漏らさないようにするために設けたものであり、つまり接続部には確実なシール効果を持たせている。
【0006】
一方、装置全体のコンパクト化を図る場合には、磁性管の長さを短く構成する。ただし、磁性管の長さを短く構成すると、流体の流速が極端に低速であるならばともかく、所定の流速を必要とする場合には、加熱時間が短くなり、所望の温度まで流体を加熱することはできない。特許文献1では誘導コイルの内側の領域を流体が往復するようにしているものの、1回程度の往復では、やはり所望の流体加熱効果を得ることができなくなる。往復回数を増加させるためには、確実なシール効果を持たせた専用の接続部を凹部の複数箇所に形成しなければならず、部品点数の増加並びに構成の複雑化を招来することになる。
【0007】
そこで、本発明は、部品点数の増加や構成の複雑化を招来することなく、流体を電磁誘導により所望の温度にまで加熱することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の流体加熱装置は、電磁誘導の誘導加熱によって加熱され、流体の流路を内部に形成した直線状の流体通路管を並列に複数配置した被加熱部と、前記誘導加熱によって各流体通路管を発熱させる誘導加熱部と、前記流体通路管のうち1つと連通する厚み方向に貫通した開口部および1つの流体通路管と他の流体通路管との流路を連通させる複数の連通溝を有する蓋部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この流体加熱装置によれば、蓋部に連通溝を形成するだけで2つの流体通路管を連通させることができるようになる。単に蓋部に溝を掘るだけで流体を往復させることができるようになり、部品点数を増加させることなく、簡単且つコンパクトな構成で流体を複数回往復させることができるようになる。これにより、流体通路管の長さがそれほど長くない場合でも、十分に流体加熱を行うことができるようになる。
【0010】
本発明の第2の流体加熱装置は、第1の流体加熱装置であって、前記流体通路管の両端を固定して支持する固定部と、前記蓋部と前記固定部との間に形成される嵌合部に挿嵌され、この嵌合部の深さよりも厚みを大きく構成した前記固定部および前記蓋部よりも剛性が低く且つ熱膨張率の大きいシール部と、前記嵌合部に前記シール部を挿嵌した前記蓋部と前記固定部とを固着する固着手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この流体加熱装置によれば、固定部と蓋部との間にシール部を介在させていることから、シール効果により流体が外部に漏れることがなくなる。シール部を剛性が低く且つ熱膨張率が高い部材で構成することにより、確実なシール効果が得られるようになる。
【0012】
本発明の第3の流体加熱装置は、第2の流体加熱装置であって、前記流体通路管の一端側に設けた蓋部と他端側に設けた蓋部とは、同じ箇所に前記開口部および前記連通溝を形成しており、且つ相互に角度を回転させていることを特徴とする。
【0013】
この流体加熱装置によれば、流体通路管の両端側に設けられる2つの蓋部は、単に取り付け角度を回転させているだけで同一物を用いることができる。これにより、部品の共通化を図ることができ、別個の構成の蓋部を用意する必要がなくなる。
【0014】
本発明の第4の流体加熱装置は、第3の流体加熱装置であって、外周側に前記誘導加熱部が設けられ、内周側は前記被加熱部を内包して密閉した断熱性のカバー部材と、前記カバー部材の内部空間に充填される伝熱性の充填伝熱部材と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
この流体加熱装置によれば、カバー部材の内部に充填伝熱部材を充填させている。カバー部材の断熱効果により内部空間を極めて高い温度状態に維持することができる。隣接する流体通路管の間には空気層が介在していることから空気の断熱効果があるが、充填伝熱部材を充填させることにより、各流体通路管の加熱温度を均一化して偏りのない流体加熱を実現している。
【0016】
本発明の第5の流体加熱装置は、第4の流体加熱装置であって、前記カバー部材の外周側にらせん状に巻き付けられ、前記開口部に連通させて流体を前記被加熱部に供給し、電磁誘導によって誘導加熱される流体供給配管と、らせん状に巻きつけられた前記流体供給配管が相互に接触しないように、前記流体加熱配管に取り付けた絶縁部材と、を特徴とする。
【0017】
この流体加熱装置によれば、カバー部材の外周に誘導加熱される流体供給配管を巻き付けていることで、流体が加熱される。流体を予め加熱しておくことで、流体をより高温で加熱することができるようになる。また、流体供給配管に絶縁部材を取り付けていることで、流体供給配管同士の接触による放電を防止することができるようになる。
【0018】
本発明の第6の流体加熱装置は、第5の流体加熱装置であって、前記流体供給配管の発熱効率よりも前記流体通路管の発熱効率が高くなるように前記カバー部材と前記流体通路管との間隔を設定し、且つこの間隔よりも前記カバー部材と前記流体供給配管との間隔を短く設定したことを特徴とする。
【0019】
この流体加熱装置によれば、流体通路管の加熱効率を高くすることができ、且つ流体供給配管による予備的な加熱効率をそれよりも低くしている。被加熱部で行う本加熱は加熱効率を高くし、予備加熱はそれよりは低い加熱効率に抑制しつつ、且つ全体のコンパクト化を図るようにしている。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、複数の流体通路管を並列に配置して、被加熱部の内部で流体を複数回往復させて加熱させているため、所望の温度にまで流体を加熱することができる。蓋部に複数の溝(連通溝)を形成するだけで、流体通路管を連通させることができ、部品点数を増加させることなく、簡単且つコンパクトな構成で流体加熱を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】流体加熱装置の基本構成の断面図である。
【図2】固定部の上面図である。
【図3】蓋部の上面図である。
【図4】シール部材の断面図である。
【図5】流体通路管と蓋部との関係を示す図である。
【図6】流体加熱装置の断面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】流体通路管と蓋部との関係を示す他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、以下に説明する実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意の構造を採用することができる。図1は本発明の流体加熱装置1の基本構造の断面図を示しており、流体加熱装置1の基本構造は被加熱部2と固定部3と蓋部4とを備えて概略構成している。
【0023】
被加熱部2は複数の流体通路管10を並列に配置して構成している。各流体通路管10は等長(例えば、300mm程度)であり、その両端が開口している。流体通路管10は1方向に延在させた管であり、その素材は導電性の磁性体(磁性管)になっている。流体通路管10の内部には流体の流路が形成されており、内部の流路を1方向に向けて流体が流れる。流体通路管10の内径および厚みは任意に設定することができる。例えば、内径を7mm程度、厚みを0.5mm程度(つまり、外径が8mm程度)の円筒状の管構造とすることができる。勿論、円筒状以外の形状、つまり細長の四角柱や三角柱等の形状としてもよい。
【0024】
被加熱部2に配置される流体通路管10の本数は任意に設定してもよい。ただし、偶数本ではなく奇数本に設定することが望ましい。ここでは、7本の流体通路管10(10−1〜10−7)として設定する。配置の態様としては、流体通路管10−4を中心として、円周状に6本の流体通路管10を配置している。円周状に配置した各流体通路管10は隣接する流体通路管10と等間隔に配置しているが、等間隔でなくてもよい。
【0025】
固定部3は7本の流体通路管10の両端を固定支持している。固定部3は所定厚みを有する剛性の高い円盤状の金属部材で構成している(素材としては例えばステンレス等を用いることができる)。図2は固定部3の上面図である。図2に示すように、固定部3には複数の管挿入部21と複数のネジ孔22とを形成している。管挿入部21は固定部3の厚み方向に貫通させた円筒状の貫通孔であり、流体通路管10が管挿入部21に挿入される。固定部3には流体通路管10−1〜10−7に対応して、7つの管挿入部21(21−1〜21−7)を形成している。管挿入部21の内径は流体通路管10の外径と一致させており、これにより流体通路管10と管挿入部21との間が隙間なく密着するようにしている。なお、図示はしていないが、管挿入部21に挿入後の流体通路管10を固定部3から脱落しないように、流体通路管10を固定部3に固定する別途の脱落防止手段を設けることが望ましい。
【0026】
固定部3には蓋部4が固着される。図3は蓋部4の上面図を示している。蓋部4は所定厚みを有する剛性の高い円盤状の金属部材である(素材としては例えばステンレス等を用いることができる)。蓋部4と固定部3とは共に円板状に構成しているが、その外径は蓋部4の方を小さくしている。蓋部4は各流体通路管10の両端からの流体を閉塞するように設けており、ここでは固定部3に蓋部4を固着している。蓋部4は嵌合部31と開口部32と複数の連通溝33と複数のネジ孔34とを有して構成している。
【0027】
連通溝33の個数は流体通路管10の個数から1を減じた値を2で除算した個数になる。従って、ここでは3個(=(7−1)/2個)になる。蓋部4の中心領域には所定深さの断面が円形となる凹部を形成しており、これを嵌合部31としている。つまり、蓋部4の一面に円形の嵌合部31が窪んでいる状態になっている。この嵌合部31に開口部32および3つの連通溝33(33−1〜33−3)を形成している。開口部32は蓋部4を厚み方向に貫通した円筒状の孔であり、1つの管挿入部21が開口部32に位置に臨むように設けている。開口部32の内径は流体通路管10の外径とほぼ同じに構成しており、開口部32には配管接続部35が接続される。
【0028】
3つの連通溝33はそれぞれ2つの管挿入部21が臨む位置に設けている。連通溝33は蓋部4の厚み方向に溝を掘って構成しており、当該連通溝33を介して2つの管挿入部21が連通される。なお、連通溝33は各管挿入部21のうち最も近接した2つの管挿入部21を連通するようにしている。管挿入部21は流体通路管10に連通しており、従って流体通路管10を流れる流体が連通溝33に流れる。連通溝33は2つの管挿入部21を連通させているため、1つの流体通路管10の流体がもう1つの流体通路管10に向けて流れるようになる。
【0029】
従って、連通溝33は2つの流体通路管10を連通させるために設けた溝になっており、過剰な流体圧とならないように、溝の断面積は管挿入部21の断面積とほぼ同程度かそれ以上に形成することが望ましい。
【0030】
ネジ孔34はネジ孔22と同数を設けており、ここでは6つを設けるようにしているが、勿論任意の数を設けるようにしてもよい。ネジ孔34およびネジ孔22には固着手段としてのネジ36が螺挿されてネジ締めがされる。これにより、蓋部4が固定部3に強力に固着されるようになる。ネジ孔34、ネジ孔22およびネジ36は円盤状の蓋部4と固定部3との間に均等な固着力を作用させるために、円周状に等間隔で配置するようにすることが望ましい。
【0031】
蓋部4の嵌合部31には図4に示すシール部材37が挿嵌される。シール部材37は所定の厚みを有する円柱状の金属部材である。ただし、固定部3や蓋部4よりは剛性が低く且つ熱膨張率の大きい金属部材になっており、例えばアルミニウムをその素材として適用できる。従って、シール部材37は押圧力を作用させるとある程度は変形することが可能になっており、且つ高温状態になると大きく熱膨張をしようとする。シール部材37の外径は嵌合部31の内径と一致させている。これにより、シール部材37を嵌合部31に挿嵌すると、シール部材37と嵌合部31との間に隙間がなくなる。
【0032】
シール部材37の蓋部4に当接する側の面(当接面)と蓋部4に設けた連通溝33とによりトンネル状の通路が形成される。このトンネル状の通路を介して2つの流体通路管10が連通される。そして、シール部材37の厚みは嵌合部31の深さよりも大きくしている。これにより、嵌合部31にシール部材37を挿嵌したときに、蓋部4の面よりもシール部材37が突出した状態になる。
【0033】
シール部材37には貫通孔38を7箇所に形成している。これは、管挿入部21に対応して形成したものになる。よって、管挿入部21と貫通孔38とは連通する。そして、管挿入部21に対応する位置に開口部32および連通溝33が設けられているため、流体通路管10と管挿入部21と貫通孔38と開口部32または連通溝33とが連通するようになる。これにより、流体通路管10の流体を連通する流体通路管10に向けて流すようにすることができる。
【0034】
前述したように、蓋部4は固定部3にネジ36によりネジ締めされて強力に固着される。このとき、嵌合部31にシール部材37を嵌合させて蓋部4と固定部3とをネジ締めして固着すると、ネジ締め力によりシール部材37には強力な押圧力が作用する。シール部材37は剛性の低い金属部材であり変形が可能になっているため、蓋部4と固定部3との間は隙間なく密着させることができるようになる。また、シール部材37は熱膨張率の大きな金属素材になっており、高温状態で大きく熱膨張をしようとする。後述する誘導加熱によりシール部材37は高温状態になるため、嵌合部31の中でシール部材37は大きく熱膨張をしようとする。これにより、管挿入部21と開口部32または連通溝33との間は極めて密閉性を高くすることができ、流体に漏れを生じなくすることができる。つまり、シール部材37が高いシール効果を奏するようになる。
【0035】
固定部3および蓋部4は流体通路管10の両端側に設けられているが、両端側の固定部3および蓋部4は異なる構成のものを用いるのではなく、同一物を用いて部品の共通化を図っている。ただし、相互に所定角度を回転して設けるようにしている。ここでは、固定部3Aと3Bとの間、および蓋部4Aと4Bとの間は相対的に角度を180度回転させるようにしている。従って、相対角度関係が180度回転した状態で取り付けられるように、ネジ孔22、ネジ孔34およびネジ36を設けるようにする。
【0036】
図5(a)は流体通路管10と一端側の蓋部4Aとの関係について、同図(b)は流体通路管10と他端側の蓋部4Bとの関係について示している。同図において、番号1〜7を付しているのが流体通路管10−1〜10−7であり、各流体通路管10に開口部32または連通溝33が臨んでいる。蓋部4Aと4Bとは同一構造であり、開口部32および連通溝33は同様の構成になっている。蓋部4A、4Bのそれぞれについて開口部32Aおよび連通溝33A、開口部32Bおよび連通溝33Bとして説明する。
【0037】
開口部32A、32Bにはそれぞれ配管接続部35が設けられている。配管接続部35は流体の供給または流体の排出を行うために設けているものであり、ここでは開口部32Aが流体の供給、31Bが流体の排出を行うものとする。従って、開口部32Aから所定の流体圧で流体が供給される。開口部32Aは流体通路管10−1と連通しており、蓋部4Bに向けて流体が流れる。
【0038】
蓋部4Bでは流体通路管10−1に連通溝33Bが設けられており、流体通路管10−2と連通している。従って、流体通路管10−1を流れた流体は次に流体通路管10−2を蓋部4Aに向けて流れる。そして、蓋部4Aの連通溝33Aにより次の流体通路管10−3に向けて流体が流れるようになっている。つまり、連通溝33A、33Bを形成して、各流体通路管10を連通させることにより、流体通路管10−1から順番に10−7まで流体が流れるようになる。
【0039】
そして、流体通路管10−7は開口部32Bに臨んでおり、開口部32Bに設けた配管接続部35から外部に排出される。従って、開口部32Aから供給された流体は7本の流体通路管10を通過して、最終的に外部に排出される。流体通路管10は被加熱部2を構成しており、従って被加熱部2を流体が7回通過して往復するような構成となっている。以上が流体加熱装置1の内部の基本構造となっている。次に、被加熱部2の外周側の構成について説明する。
【0040】
図6は被加熱部2の外周側を構成する各種機構を示しており、図7は図6のA−A断面図を示している。被加熱部2の各流体通路管10の外周側には断熱性のカバー部材41を設けている。その素材としては断熱性に優れた珪酸カルシウム等を用いることができる。勿論、断熱性の素材であれば任意の素材を用いてもよい。カバー部材41は円筒形状をしており、固定部3Aと3Bとの間に設けられる。カバー部材41の長さを固定部3Aと3Bとの間隔と一致させることで、固定部3Aと3Bとの間にカバー部材41を隙間なく設けることができる。これにより、カバー部材41の内部空間(各流体通路管10を内包している空間)を密閉空間とすることができ、且つカバー部材41の断熱効果により外気温の影響を排除できる。
【0041】
カバー部材41の外周側にはらせん状に誘導加熱部としての誘導コイル42が巻き付けられている。誘導コイル42は両端が交流電源43と接続されている。交流電源43は所定の交流電流を発生させる電源装置(例えば、200ボルトの電圧を発生)であり、これにより誘導コイル42に交流電流が流れる。誘導コイル42に交流電流を流すことにより、強度の変化する磁界を発生させることができる。また、交流電源の電圧(または電流)を適宜変化させることで、流体通路管10の発熱温度を変化させることができ、流体の加熱温度を適宜に調整することができる。
【0042】
カバー部材41の内部空間には7本の流体通路管10が配置されており、カバー部材41の外周側に誘導コイル42をらせん状に巻き付けている。流体通路管10は導電性の磁性管で構成しており、誘導コイル42に交流電流を流すことによる磁界強度の変化により、各流体通路管10に渦電流が流れる。これにより、流体通路管10にはジュール熱が発生して発熱する。
【0043】
従って、流体通路管10が発熱して、流体通路管10の内部を流れる流体が加熱される。そして、カバー部材41が外気温から遮熱しており、流体通路管10の温度が外部に放熱されることを回避している。ただし、各流体通路管10は相互に所定の間隔をおいて配置されていることから、流体通路管10と流体通路管10との間には所定の空気層が介在する。この空気層の断熱効果により熱伝達効率が低下し、各流体通路管10によって熱分布が偏在化する。
【0044】
そこで、流体通路管10の内部に充填伝熱部材としてスチールウール45を充填する。スチールウール45は熱伝導性に優れている素材であり、これをカバー部材41の内部空間に充填することにより、空気層の断熱効果を生じないようにする。これにより、カバー部材41の内部空間の熱分布を均一化し、各流体通路管10に温度差を生じなくすることができる。これにより、流体に対して偏りのない高温加熱を行うことができるようになる。
【0045】
カバー部材41の外周側には保護部材46を設けている。カバー部材41は断熱性に優れた素材であるが、負荷に対する耐性はそれほど高くない。カバー部材41の外周側には流体供給配管47を巻き付けており、この巻き付け力によりカバー部材41に大きな負荷が与えられる。そこで、カバー部材41を保護するための保護部材46をカバー部材41の外周側に巻き付けている。保護部材46は簾構造になっており、複数の棒状部材を相互に概略平行に配置して、各棒状部材を編み重ねて構成している。棒状部材としては竹や木等で構成し、各棒状部材は糸や紐等のようなもので編み重ねるようにする。ここでは、棒状部材としては曲げ方向の外力が作用しても弾性復元性を持つ竹を用い、その形状を細長の三角柱として、各三角柱の竹を糸により編み重ねるようにしている。
【0046】
保護部材46の外周側には流体供給配管47をらせん状に巻き付けており、この流体供給配管47の周囲には絶縁部材48を取り付けている。流体供給配管47は図示しない流体を供給する流体源と蓋部4Aの開口部32Aとを接続しており、流体源の流体を供給する経路となっている。流体供給配管47は導電性の磁性管で構成しており、従って渦電流により配管自体が発熱するようになっている。
【0047】
カバー部材41に巻きつけられた誘導コイル42に交流電流を流すと、誘導コイル42を中心にして磁力線が変化する。つまり、流体通路管10だけではなく流体供給配管47にも渦電流が流れてジュール熱が発生する。これにより、流体供給配管47が加熱され、内部流路の流体も加熱がされる。流体供給配管47は配管接続部35と接続されており、流体源からの流体を被加熱部2の流体通路管10に導くようにしている。
【0048】
流体供給配管47は磁性管で構成しており、しかも保護部材46にらせん状に巻き付けられていることから、流体供給配管47同士が接触するおそれがある。特に、流体供給配管47が加熱される領域を長くして加熱を行うために、らせん状に巻き付けた流体供給配管47同士の間隔はできる限り近接させるようにしている。これにより、接触の可能性が高くなる。磁性管同士が接触すると放電の危険性を生じる。そこで、誘導コイル42には絶縁部材48を取り付けている。
【0049】
絶縁部材48は流体供給配管47に満遍なく取り付けるようにする。このため、流体供給配管47にスパイラル状に取り付けるポリプロピレン素材のスパイラルカバー、或いはプラスチック製の収縮チューブ等を絶縁部材48として適用する。これにより、流体供給配管47の接触による放電は生じなくなる。
【0050】
以上が流体加熱装置1の全体の概略構成になっている。次に、この流体加熱装置1を用いた流体加熱について説明する。ここでは、低温水(15℃近傍)の流体を高温水(45℃近傍)になるまで短時間で加熱を行うようにしているが、勿論任意の温度から任意の温度に上昇させるものであってよい。図示しない流体源は所定圧で低温水を圧送するようにしている。圧送された低温の流体の流速は高速になっており、これにより短時間で流体を排出するようにしている。
【0051】
流体源から圧送された流体は流体供給配管47により供給される。流体供給配管47は保護部材46にらせん状に巻きつけられており、保護部材46の内周側には誘導コイル42が巻き付けられている。誘導コイル42に交流電流を流すことにより磁界強度に変化を生じ、流体供給配管47に対しても誘導加熱が作用する。これにより、内部の流体がある程度加熱される。
【0052】
ここで、流体供給配管47による加熱はあくまでも予備的な加熱(予備加熱)であり、流体の加熱(本加熱)は被加熱部2を構成する流体通路管10により行う。誘導コイル42に交流電流を流すことにより磁性管が発熱をするが、磁性管に発生するジュール熱は誘導コイル42と磁性体との距離(間隔)によって変化する。従って、磁性管と誘導コイル42との間隔が過剰に近接している場合および過剰に離間している場合には、発熱効果が低くなる。換言すれば、最適な間隔に設定することにより、高い発熱効果を得ることができる。
【0053】
そこで、誘導コイル42と流体通路管10との間隔を最も高い発熱効率が得られるような間隔に設定し、この間隔よりも短い間隔に流体供給配管47と誘導コイル42との間隔を設定している。このために、カバー部材41の外周側に巻き付けた誘導コイル42と内部空間に設けた流体通路管10との間隔が最も高い発熱効率が得られるような間隔となるようにカバー部材41の厚みを構成する。つまり、カバー部材41は外気温との断熱を図る機能の他に、流体通路管10と誘導コイル42との間の間隔を最適に設定するスペーサとしての機能も果たしている。
【0054】
これにより、流体通路管10では極めて高い発熱効果が得られるが、流体供給配管47の発熱効果はそれよりも低くなる。ただし、流体供給配管47による加熱はあくまでも予備加熱であり、本加熱を補完する程度の加熱でよいため、格別な問題とはならない。逆に、誘導コイル42との間隔を短くすることで、流体加熱装置1の全体のサイズ(円周方向のサイズ)のコンパクト化を図っている。
【0055】
一方、被加熱部2における流体の加熱温度は高温になり、カバー部材41により密閉した空間となっていることから、内部空間の温度は極めて高温状態になっている。カバー部材41は断熱性に優れているものの、内部空間の熱を完全に断熱できない場合にはカバー部材41の最外層の温度が高温になる。そこで、流体供給配管47をらせん状に巻きつけ、且つ取り付けた絶縁部材48と絶縁部材48との間に隙間が生じないようにすることで、流体加熱装置1の最外層の温度は流体供給配管47の温度(常温を予備加熱した程度の温度)にすることができ、安全性を確保することができる。
【0056】
流体供給配管47から配管接続部35を介して蓋部4Aの開口部32Aから流体通路管10−1に予備加熱がされた流体が流れる。流体通路管10−1は誘導コイル42による誘導加熱により発熱する。しかも、誘導コイル42と流体通路管10−1との間の間隔は最も高い発熱効果が得られるように設定しているため、流体通路管10−1は高温で発熱する。そして、カバー部材41により内部空間にはスチールウール45を充填していることから空気層の断熱効果がないことから均等な高温加熱がされ、流体通路管10−1の熱により内部流路を流れる流体に対して大きな熱量が与えられる。
【0057】
前述したように、短時間で高温水を生成するために、流体の流速は高速になっている。よって、流体通路管10−1の長さを過剰に長くしなければ、内部流路を流れる流体の加熱時間は短くなる。このため、低温水の流体を所望の温度(45℃近傍)まで加熱することができない。本発明では、流体通路管10−1を流れた流体は蓋部4Bの連通溝33を介して流体通路管10−2に流すようにしている。これにより、被加熱部2の領域(つまり誘導コイル42により加熱される領域)に流体を往復させることができ、2回分の加熱を行うことができる。
【0058】
ただし、流体加熱装置1のサイズのコンパクト化を図るため、流体通路管10の長さは短く構成している。このため、低温水の流体に被加熱部2の領域を1回往復させた程度では加熱時間としては不足し、所望の温度になるまで加熱させることができない。そこで、複数回往復させるようにする。流体通路管10−1から10−7まで順番に通過させることで、合計3.5回の往復をさせることができるようになる。これにより、流体通路管10の長さをそれほど長くすることなく、高速に流れる流体を長時間にわたって加熱させることができる。これにより、開口部32Bおよび配管接続部25Bから排出される流体は、所望の高温水として排出させることができるようになる。しかも、流速を高速にすることができることから、短時間で高温水を生成できるようになる。
【0059】
従って、流体通路管10を短く構成することができるため、コンパクトな構成で所望温度まで流体を加熱することができるようになる。そして、蓋部4A、4Bに単に溝(連通溝33)を掘っただけの構成で実現できるため、極めて簡単な構成で流体加熱を行うことができるようになる。
【0060】
ここで、各流体通路管10は被加熱部2の内部で非接触に配置されており、相互に所定の間隔で配置されている。このとき、誘導コイル42による誘導加熱に支障のない程度に各流体通路管10をそれぞれ集中配置するようにすることが望ましい。各流体通路管10を近接させて集中的に配置することで、流体加熱装置1(の円周方向)のサイズがコンパクト化する。しかも、蓋部4に形成する連通溝33は2つの流体通路管10を連通させるために設けており、流体通路管10同士を近接させることで、連通溝33も短い間隔で形成することができる。これにより、蓋部4に僅かな溝を掘るだけで流体を連通させることができることから、その構成を極めて簡単なものにすることができる。
【0061】
また、各流体通路管10の配置を集中させることで、各流体通路管10の温度に偏りがなくなる。各流体通路管10の発熱温度の偏在化をなくすためにスチールウール45をカバー部材41の内部空間に充填しているが、各流体通路管10を集中的に配置することで、発熱温度の均一化の相乗効果を得ることができる。ただし、連通溝33同士が連通しない程度に集中配置を行う。
【0062】
前述した流体通路管10を固定部3から脱落することを防止する脱落防止手段から取り外すことにより、またネジ36のネジ締め力を解除することにより、各部品に分解することができる。これにより、流体通路管10を単体の状態にすることができる。各流体通路管10は直線状の管になっており、内部流路のメンテナンスは極めて簡単に行うことができ、良好なメンテナンス性を得ることができる。また、蓋部4やカバー部材41等の他の部品についても取り外すことができるため、良好なメンテナンス性が得られる。
【0063】
カバー部材41の内部空間にはスチールウール45を充填しているが、内部空間を充填できれば任意のものを適用してもよい。例えば、カバー部材41の内径と同じ外径を有する円柱状の金属部材を用いることができる。この金属部材には流体通路管10の外径と同じ内径を有する貫通孔を7箇所に設けるようにして、各貫通孔に流体通路管10を挿入する。これにより、スチールウール45を充填した場合と同じ効果を得ることができる。ただし、充填伝熱部材としての金属部材は誘導加熱がされないように、非磁性体で構成する。
【0064】
また、嵌合部31は蓋部4に設けてシール部材37を挿嵌するようにしているが、嵌合部31は固定部3に設けるようにしてもよいし、蓋部4と固定部3との両者に設けるようにしてもよい。要は、固定部3と蓋部4との間に所定の嵌合部31の領域が形成され、この嵌合部31にシール部材37を挿嵌してネジ締めをするものであればよい。ただし、形成した嵌合部31の深さはシール部材37の厚みよりも小さく構成する。
【0065】
図1〜図7の例は、流体通路管10が7本の場合を説明した。流体通路管10の長さを十分確保できないような場合には、被加熱部2を7回通過させたとしても所望の温度にまで加熱することができない場合がある。そこで、図8(a)および(b)のように、流体通路管10を9本配置するようにしてもよい。この場合には、流体の往復回数4.5回とすることができ、流体通路管10の長さを十分確保できないような場合でも、長時間の加熱を行うことができ、所望温度にまで加熱することができる。勿論、その本数は11本、或いはそれ以上であってもよい。
【0066】
前述したように、流体通路管10の本数は奇数本が望ましい。偶数本の場合でも、被加熱部2に流体を往復させることができるが、この場合には同じ側の固定部3(3Aまたは3B)に配管接続部35を設けるようにしなければならなくなる。この場合には、固定部3の構成の配置態様に余裕がなくなる。一方、奇数本にすることにより、異なる側の固定部3にそれぞれ配管接続部35が設けられるため、余裕をもった配置態様とすることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 流体加熱装置
2 被加熱部
3 固定部
4 蓋部
10 流体通路管
21 管挿入部
22 ネジ孔
25 スチールウール
31 嵌合部
32 開口部
33 連通溝
34 ネジ孔
35 配管接続部
36 ネジ
37 シール部材
38 貫通孔
41 カバー部材
42 誘導コイル
43 交流電源
45 スチールウール
46 保護部材
47 流体供給配管
48 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導の誘導加熱によって加熱され、流体の流路を内部に形成した直線状の流体通路管を並列に複数配置した被加熱部と、
前記誘導加熱によって各流体通路管を発熱させる誘導加熱部と、
前記流体通路管のうち1つと連通する厚み方向に貫通した開口部および1つの流体通路管と他の流体通路管との流路を連通させる複数の連通溝を有する蓋部と、
を備えたことを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
前記流体通路管の両端を固定して支持する固定部と、
前記蓋部と前記固定部との間に形成される嵌合部に挿嵌され、この嵌合部の深さよりも厚みを大きく構成した前記固定部および前記蓋部よりも剛性が低く且つ熱膨張率の大きいシール部と、
前記嵌合部に前記シール部を挿嵌した前記蓋部と前記固定部とを固着する固着手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1記載の流体加熱装置。
【請求項3】
前記流体通路管の一端側に設けた蓋部と他端側に設けた蓋部とは、同じ箇所に前記開口部および前記連通溝を形成しており、且つ相互に角度を回転させていること
を特徴とする請求項2記載の流体加熱装置。
【請求項4】
外周側に前記誘導加熱部が設けられ、内周側は前記被加熱部を内包して密閉した断熱性のカバー部材と、
前記カバー部材の内部空間に充填される伝熱性の充填伝熱部材と、
を備えていることを特徴とする請求項3記載の流体加熱装置。
【請求項5】
前記カバー部材の外周側にらせん状に巻き付けられ、前記開口部に連通させて流体を前記被加熱部に供給し、電磁誘導によって誘導加熱される流体供給配管と、
らせん状に巻きつけられた前記流体供給配管が相互に接触しないように、前記流体加熱配管に取り付けた絶縁部材と、
を特徴とする請求項4記載の流体加熱装置。
【請求項6】
前記流体供給配管の発熱効率よりも前記流体通路管の発熱効率が高くなるように前記カバー部材と前記流体通路管との間隔を設定し、且つこの間隔よりも前記カバー部材と前記流体供給配管との間隔を短く設定したこと
を特徴とする請求項5記載の流体加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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