説明

流体噴射装置、及び、搬送方法

【課題】流体噴射装置が再現可能な画像の画質について、バリエーションを増やすことである。
【解決手段】媒体と対向し、互いに色が異なる流体を該媒体に噴射する第一ヘッド及び第二ヘッドと、前記媒体を搬送することにより、前記第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送機構と、前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離を変更するための変更機構と、を有する流体噴射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置、及び、搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置としては、紙やフィルム等の媒体に流体(例えば、インク)を噴射して、画像の印刷を行うインクジェットプリンタ等が知られている。このようなプリンタの中には、媒体に対向し、互いに色が異なるインクを噴射する第一ヘッド及び第二ヘッドと、前記媒体を搬送することにより、前記第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送機構と、を有するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−210244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、今日、多様な画質の画像を印刷することが可能なプリンタの実現が求められている。具体的に説明すると、プリンタによって再現される色、質感、及び、光沢感等の画質に関して、バリエーションが増えることが望まれている。また、画質は、インクを媒体に着弾させた後の該インクの状態(具体的には、インクの滲み度合いや、紫外線を受けて硬化するインクであれば硬化度合い)に影響される。したがって、媒体に着弾した後のインクの状態を人為的にコントロールできれば、画質のバリエーションを増やすことが可能になる。
さらに、媒体に着弾した後のインクの状態については、該インクを媒体に着弾させてから別のインク(例えば、他の色のインク)を着弾させるまでの時間(以下、印字間隔とも言う)を調整することによりコントロール可能である。
【0004】
本発明は、上記内容に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、流体噴射装置が再現可能な画像の画質について、バリエーションを増やすことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、主たる発明は、
媒体と対向し、互いに色が異なる流体を該媒体に噴射する第一ヘッド及び第二ヘッドと、
前記媒体を搬送することにより、前記第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送機構と、
前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離を変更するための変更機構と、を有することを特徴とする流体噴射装置である。
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書及び添付図面の記載により少なくとも次のことが明らかにされる。
【0007】
本発明に係る流体噴射装置は、先ず、
媒体と対向し、互いに色が異なる流体を該媒体に噴射する第一ヘッド及び第二ヘッドと、
前記媒体を搬送することにより、前記第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送機構と、
前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離を変更するための変更機構と、を有する。かかる流体噴射装置であれば、前記移動距離を変更することにより、第一ヘッドが流体を噴射してから第二ヘッドが流体を噴射するまでの時間、すなわち、上述の印字間隔を調整することが可能となる。この結果、流体噴射装置が再現可能な画像の画質について、バリエーションが増えることになる。
【0008】
また、上記の流体噴射装置において、
前記第一ヘッド及び前記第二ヘッドの各々が噴射する流体は、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化インクであり、
前記領域に着弾した紫外線硬化インクに紫外線を照射する照射装置を有し、
前記領域が前記照射装置からの紫外線を受ける受光位置は、前記領域が前記第一対向位置から前記第二対向位置へ移動する際の移動経路において、前記第一対向位置と前記第二対向位置との間に位置し、
前記変更機構は、前記移動距離を変更することにより、前記領域が前記受光位置から前記第二対向位置へ位置するまでの時間を変更することとしてもよい。かかる流体噴射装置であれば、第一ヘッドが噴射した紫外線硬化インクの硬化度合いを調整することが可能になり、以って、画質のバリエーションを増やすことが可能になる。
【0009】
また、上記の流体噴射装置において、
ノズルを有し、該ノズルから前記第一ヘッド及び前記第二ヘッドとは色が異なる紫外線硬化インクを前記媒体に噴射する第三ヘッドであって、
紫外線硬化インクを噴射するときに前記第三ヘッドが対向する第三対向位置が、前記移動経路において前記第一対向位置と前記第二対向位置の間に位置する第三ヘッドと、
前記第三ヘッドが紫外線硬化インクを噴射しないときに対向し、前記ノズルを覆うキャップと、を有し、
前記変更機構は、前記第三ヘッドが紫外線インクを噴射するときには、前記移動経路を、前記第三ヘッドを前記媒体と対向させ前記キャップとは対向させない第一移動経路とし、前記第三ヘッドが紫外線硬化インクを噴射しないときには、前記移動経路を、前記第三ヘッドを前記媒体と対向させず前記キャップと対向させる第二移動経路とすることとしてもよい。かかる流体噴射装置では、変更機構が、前記移動距離を変更する機能と、第三ヘッドが対向する被対向物(すなわち、媒体及びキャップ)を切替える機能を兼ね備える。
【0010】
また、上記の流体噴射装置において、
前記領域に着弾した紫外線硬化インクに紫外線を照射し、前記照射装置とは異なる他の照射装置を有し、
前記変更機構が前記移動経路を前記第一移動経路とした場合、前記照射装置が、前記領域に着弾した前記第一ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射した後、前記他の照射装置が、該領域に着弾した前記第三ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射し、
前記変更機構が前記移動経路を前記第二移動経路とした場合、前記照射装置が、前記領域に着弾した前記第一ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射した後、前記他の照射装置が更に、該領域に着弾した前記第一ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射することとしてもよい。かかる流体噴射装置であれば、第三ヘッドが紫外線硬化インクを噴射しない場合にも、他の照射装置を有効に利用することが可能になる。
【0011】
また、上記の流体噴射装置において、
前記媒体は、帯状の連続媒体であり、
前記搬送機構は、
前記連続媒体を繰り出して該連続媒体を送り出す送り出しローラと、
前記送り出しローラが送り出した前記連続媒体を巻き取る巻き取りローラと、
前記送り出しローラと前記巻き取りローラの間に位置し、外周面に前記連続媒体が掛けられた状態で回転することにより、該連続媒体を張りながら搬送する複数のテンションローラと、を有し、
複数の前記テンションローラは、
前記外周面に前記連続媒体が掛けられている位置が前記移動経路において前記第一対向位置と前記第二対向位置の間に位置し、回転する際の軸と交差する方向へ移動自在に支持された移動ローラを有し、
前記変更機構は、前記移動ローラを前記軸と交差する方向へ移動させることにより、前記移動距離を変更することとしてもよい。かかる流体噴射装置であれば、媒体が連続媒体である場合に前記移動距離を確実に変更することが可能になる。
【0012】
また、上記の流体噴射装置において、
前記流体噴射装置は、前記連続媒体に画像を印刷する印刷装置であり、
前記印刷装置が画像の印刷処理を中断している間に、前記変更機構は、前記移動ローラを前記軸と交差する方向へ移動させることにより、前記移動距離を変更し、
前記変更機構が前記移動距離を短くなるように変更した場合、前記巻き取りローラが停止した状態で、前記送り出しローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き戻し、
前記送り出しローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き戻した後に、前記印刷装置は前記印刷処理を再開することとしてもよい。移動距離を短くすると連続媒体に弛みが生じるが、上記の流体噴射装置であれば、連続媒体を無駄に排出することなく前記弛みを解消することが可能である。
【0013】
または、上記の流体噴射装置において、
前記流体噴射装置は、前記連続媒体に画像を印刷する印刷装置であり、
前記印刷装置が画像の印刷処理を中断している間に、前記変更機構は前記移動ローラを前記軸と交差する方向へ移動させることにより、前記移動距離を変更し、
前記変更機構が前記移動距離を短くなるように変更した場合、前記送り出しローラが停止した状態で、前記巻き取りローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き取り、
前記巻き取りローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き取っている間に、前記印刷装置は、前記送り出しローラが停止した状態のままで前記第二ヘッドが前記第二対向位置に位置する前記領域に紫外線硬化インクを噴射することにより、前記印刷処理を再開することとしてもよい。上記の構成は、前記弛みを解消するための他の構成であり、前述の構成(送り出しローラが連続媒体を巻き戻して前記弛みを解消する構成)と比較して、時間的なロスを短縮することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明により、
媒体を搬送することにより、第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第一ヘッドとは色が異なる流体を噴射する第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送方法であって、
前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離を変更することと、
前記第一対向位置に位置する前記領域を変更後の前記移動距離だけ移動させて前記第二対向位置に位置させることと、を有する搬送方法も実現可能である。媒体に画像を形成する際に上記の搬送方法によって前記媒体を搬送すれば、前記画像の画質について、バリエーションを増やすことが可能になる。
【0015】
===本実施形態の流体噴射装置について===
本実施形態では、流体噴射装置の一例としてのインクジェットプリンタ(以下、プリンタ10)について説明する。本実施形態のプリンタ10は、帯状に連続した連続媒体S(例えば、ウェブ状の紙やフィルム)に、流体の一例としてのインクを噴射することにより、該連続媒体Sに画像を印刷する印刷装置である。連続媒体Sのうちの画像が印刷された部分は、後に切り抜かれて印刷物として用いられる。連続媒体Sは、ロール状に巻かれた状態でプリンタ10にセットされ、画像が印刷される際に繰り出される。
【0016】
本実施形態のプリンタ10にて用いられるインクは、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化インク(以下、UVインク)である。UVインクは、紫外線硬化樹脂を含むビヒクル、光重合開始剤、及び、顔料の混合物に、消泡剤等の補助剤を添加して調合されたインクであり、紫外線を受けると、上記紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。なお、本実施形態では、カラー画像を印刷するために、KCMY4色のカラーUVインクが用いられる。
【0017】
また、本実施形態のプリンタ10では、上記4色のカラーUVインクに加えて、白色のUVインク(以下、白インク)が用いられる。この白インクは、例えば、透明フィルムにカラー画像を印刷する際に当該透明フィルム上にベタ打ちされ、白色の背景画像(所謂下地)を印刷するために用いられる。つまり、白インクによって構成される背景画像上にKCMY各色のUVインクを重ね打ちすることにより、当該背景画像の上にカラー画像を印刷することが可能である。
【0018】
さらに、本実施形態のプリンタ10では、上記5色のUVインクの他に、更にクリアインクが用いられる。このクリアインクは、無色透明なUVインクであり、例えば、上記5色のインクにより構成された画像上に塗布されることにより、当該画像の光沢性を高めることが可能である。
【0019】
<<プリンタ10の基本構成>>
プリンタ10の基本構成について、図1乃至図3を参照しながら説明する。図1は、プリンタ10の全体構成を示したブロック図である。図2は、プリンタ10の内部構成を示す模式図である。図3は、各ラインヘッド21に形成されたノズル列の配列を示す図である。
【0020】
プリンタ10は、図1に示すように、ヘッドユニット20、搬送機構としての搬送ユニット30、UV照射ユニット40、メンテナンスユニット50、変更機構としての変更ユニット60を有する。更に、プリンタ10は、上記の各ユニットを制御するコントローラ70と、検出器群80とを有する。
【0021】
ヘッドユニット20は、連続媒体Sに画像を印刷するために該連続媒体Sに各UVインクを噴射するものである。本実施形態に係るヘッドユニット20は、図2に示すように、インク別に設けられた複数(具体的には6つ)のラインヘッド21を有する。同図に示すように、複数のラインヘッド21は、上下方向において略同一位置に固定され、かつ、水平方向において一定間隔毎に並んでいる。そして、各ラインヘッド21は、その下面にて連続媒体Sと対向して、当該下面に形成されたノズルNzからUVインクを連続媒体Sに噴射する。
【0022】
なお、本実施形態では、連続媒体Sが供給される側(上流側)から排出される側(下流側)に向かって、白インクを噴射する白ラインヘッド21W、ブラック(K)のUVインクを噴射するブラックラインヘッド21K、シアン(C)のUVインクを噴射するシアンラインヘッド21C、マゼンタ(M)のUVインクを噴射するマゼンタラインヘッド21M、イエロー(Y)のUVインクを噴射するイエローラインヘッド21Y、クリアインクを噴射するクリアインクラインヘッド21Hの順で並んでいる。但し、各ラインヘッド21の位置関係については、上述の位置関係に限定されるものではない。また、白ラインヘッド21Wやクリアインクラインヘッド21Hについては、設けられていなくてもよい。
【0023】
各ラインヘッド21について詳しく説明すると、当該各ラインヘッド21は、連続媒体Sの幅(図2において紙面を貫く方向の長さ)よりも幾分長い幅を有する長尺のヘッドである。また、各ラインヘッド21の下面には、図3に示すように、当該各ラインヘッド21の長手方向に沿って列状に並ぶ複数のノズルNzが形成されている。なお、各ノズルNzには不図示のインクチャンバ及びピエゾ素子が設けられている。ピエゾ素子が駆動してインクチャンバが収縮・膨張されることにより、各ノズルからUVインクが滴状に噴射される。噴射された滴状のUVインクは、連続媒体Sに着弾するとドットを形成する。以上により、連続媒体S上の領域が各ラインヘッド21の直下(すなわち、各ラインヘッド21が前記領域と対向する位置)を通過する際に、各ラインヘッド21の複数のノズルNzからUVインクが噴射され、前記領域に連続媒体Sの幅分のドットが一度に形成される。
【0024】
搬送ユニット30は、連続媒体Sを搬送することにより、該連続媒体S上の領域を所定の移動経路に沿って移動させるものである。搬送ユニット30は、送り出しローラとしての給紙ローラ31と、巻き取りローラとしての排紙ローラ32と、テンションローラ33と、プラテン34とを有する(図1参照)。
【0025】
給紙ローラ31は、図2に示すように上記移動経路において最も上流側に位置したローラであり、ロール状に巻回された連続媒体Sを繰り出して該連続媒体Sを送り出すローラである。排紙ローラ32は、図2に示すように上記移動経路において最も下流側に位置したローラであり、給紙ローラ31が送り出した連続媒体Sを巻き取るローラである。
【0026】
テンションローラ33は、給紙ローラ31と排紙ローラ32の間に位置したローラであり、図2に示すように複数設けられている。各テンションローラ33は、軸方向が連続媒体Sの幅方向に沿った回転軸を中心にして回転自在に支持されている。そして、各テンションローラ33は、外周面に連続媒体Sが掛けられた状態で回転することにより、該連続媒体Sを張りながら搬送する。また、各テンションローラ33は、連続媒体Sの搬送方向を転換する機能を備えている。プラテン34は、ラインヘッド21の下で連続媒体Sを支持するものであり、図2に示すようにラインヘッド21別に複数設けられている。
【0027】
以上のような構成の搬送ユニット30は、当該搬送ユニット30の各構成要素(すなわち、給紙ローラ31、排紙ローラ32、テンションローラ33、及び、プラテン34)が協働することにより、連続媒体Sを搬送し該連続媒体S上の領域を移動経路の下流側へ移動させる。つまり、搬送ユニット30は、搬送動作を行うことにより、連続媒体S上の、複数のラインヘッド21中の一のラインヘッド21が対向する位置に位置した領域を、当該一のラインヘッド21よりも下流側のラインヘッド21が対向する位置へ移動させる。
【0028】
なお、本実施形態に係るプラテン34は、その長手方向に伸縮自在である。そして、伸張状態にあるプラテン34では、その長手方向一端部(排紙ローラ32側の端部)が、ラインヘッド21よりも搬送方向の下流側に位置する。この結果、図4Aに示すように、プラテン34が伸張状態にある際、該プラテン34の直上位置に位置するラインヘッド21は、該プラテン34に支持された連続媒体Sと対向することとなる。図4Aは、伸張状態にあるプラテン34の周囲の様子を示す図である。他方、収縮状態にあるプラテン34では、前記長手方向一端部がラインヘッド21よりも搬送方向の上流側に位置する。この結果、図4Bに示すように、プラテン34が収縮状態にある際、該プラテン34の直上位置に位置していたラインヘッド21は、連続媒体Sと対向しなくなる(換言すると、連続媒体S上の領域は、前記ラインヘッド21が対向する位置を通過しなくなる)。図4Bは、収縮状態にあるプラテン34の周囲の様子を示す図である。
【0029】
そして、複数のラインヘッド21中のUVインクを噴射する状態(すなわち、印字実行状態)にあるラインヘッド21、の下に位置するプラテン34は伸張状態にあり、UVインクを噴射しない状態(すなわち、印字待機状態)にあるラインヘッド21、の下に位置するプラテン34は収縮状態にある。
【0030】
また、本実施形態では、複数のテンションローラ33が、一定の規則性を以って配列されている。具体的に説明すると、図2に示すように、複数のテンションローラ33のうち、最も上流側に位置する2つのテンションローラ33、及び、最も下流側に位置する3つのテンションローラ33を除くテンションローラ33は、4つ毎に規則的に並んでいる。
【0031】
より詳しく説明すると、各プラテン34の長手方向他端部(給紙ローラ31側の端部)の脇に位置するテンションローラ33(以下、第一テンションローラ33a)と、各プラテン34の長手方向一端部の脇に位置し、連続媒体Sを折り返すように搬送方向を転換するテンションローラ33(以下、第二テンションローラ33b)と、第二テンションローラ33bよりも下流側に位置し、連続媒体Sを斜め下に搬送するように搬送方向を転換するテンションローラ33(以下、第三テンションローラ33c)と、第三テンションローラ33cよりも幾分下方に位置し、略V字状に搬送方向を転換するテンションローラ33(以下、第四テンションローラ33d)と、が組を成した状態で並んでいる。そして、上記4つのテンションローラ33(すなわち、第一テンションローラ33a〜第四テンションローラ33d)の組み合わせは、上記の移動経路に沿って、ラインヘッド21の個数分設けられている。
【0032】
UV照射ユニット40は、各ラインヘッド21が噴射したUVインクが連続媒体Sに着弾してドットを形成した後に、当該ドットを連続媒体Sに定着させるために、連続媒体Sと対向して前記ドット(すなわち、連続媒体Sに着弾したUVインク)に紫外線を照射する。このUV照射ユニット40は、図1に示すようにUV照射機構41を備えている。本実施形態において、UV照射機構41は、ラインヘッド21別に複数設けられている。具体的に説明すると、上記移動経路において各ラインヘッド21の下流側にUV照射機構41が配置されている。また、各UV照射機構41は、図2に図示された予備照射装置41a及び本照射装置41bを備えている。
【0033】
予備照射装置41aは、ラインヘッド21の後方で連続媒体Sと対向し、該ラインヘッド21が噴射したUVインクに紫外線を照射するものである。この予備照射装置41aは、図2に示すように、プラテン34(具体的には、プラテン34の長手方向一端部)の上方に位置し、ラインヘッド21(具体的には、対応するラインヘッド21)と隣り合う位置に固定されている。予備照射装置41aが紫外線を照射する際の照射強度は、当該紫外線を受けたUVインクの硬化がその表面近傍で収まる程度(すなわち、UVインクが半硬化状態になる程度)に弱く設定されている。また、プラテン34が収縮状態にある際、該プラテン34の直上位置に位置していた予備照射装置41aは、連続媒体Sと対向しなくなる(図4B参照)。
【0034】
本照射装置41bは、上記の移動経路において予備照射装置41aよりも下流側に配置され、当該予備照射装置41aからの紫外線を受けたUVインクに更に紫外線を照射するものである。この本照射装置41bは、図2に示すように、プラテン34の下方に位置し、前述の第二テンションローラ33bと第三テンションローラ33cとの間で連続媒体Sと対向する。本照射装置41bが紫外線を照射する際の照射強度は、予備照射装置41aが紫外線を照射する際の照射強度よりも強くなっている。半硬化状態のUVインクは、本照射装置41bが照射する紫外線を受けることにより、徐々に完全な硬化状態へと移行する。また、本照射装置41bは、プラテン34の伸縮状態に関わらず、常に連続媒体Sと対向する(図4A及び図4B参照)。
【0035】
以上のような構成のUV照射ユニット40では、各ラインヘッド21から噴射されたUVインクに対して、当該各ラインヘッド21と対応するUV照射機構41が紫外線を照射する。ここで、ラインヘッド21と対応するUV照射機構41とは、移動経路において当該ラインヘッド21より下流側に配置されたUV照射機構41のうち、最も前記ラインヘッド21に近いUV照射機構41であり、主に前記ラインヘッド21が噴射するUVインクを硬化させるために紫外線を照射する。例えば、ブラックラインヘッド21Kと対応するUV照射機構41は、ブラックラインヘッド21Kの下流側に位置するUV照射機構41のうち、最もブラックラインヘッド21Kに近く、主にブラック(K)のUVインクを硬化させるために紫外線を照射する。
【0036】
なお、UV照射機構41(具体的には、予備照射装置41a及び本照射装置41b)が紫外線を照射する際の光源としては、UV−LED、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ等が使用可能である。
【0037】
メンテナンスユニット50は、各ラインヘッド21に対して、ノズルNzからのインク噴射が良好に維持されるようにメンテナンスを行うものである。メンテナンスユニット50は、図1に示すように、キャップ51と吸引ポンプ52を有する。
【0038】
キャップ51は、上端が開放端となった略箱状の部材であり、図2に示すようにラインヘッド21別に複数設けられている。各キャップ51は、その上端にてラインヘッド21の下面に当接することにより、該ラインヘッド21のノズルNzを覆う。本実施形態に係るキャップ51は、ラインヘッド21に当接して該ラインヘッド21のノズルNzを封止する。これにより、ラインヘッド21が印字待機状態にある間に、該ラインヘッド21のノズルNzの開口近傍におけるUVインクの溶媒蒸発を起因として前記ノズルNzの目詰まりが起こるのを抑制することが可能になる。
【0039】
各キャップ51は、ラインヘッド21の直下に位置し、不図示の駆動機構により上下方向に移動することが可能である。また、各ラインヘッド21は、UVインクを噴射しない際(すなわち、印字待機状態にある際)、当該各ラインヘッド21の直下に位置するキャップ51と対向する。
【0040】
具体的に説明すると、一のラインヘッド21がUVインクを噴射する場合、当該一のラインヘッド21の直下に位置するプラテン34は伸張状態にあり、キャップ51は、前記プラテン34の下に位置し、前記一のラインヘッド21から離間している(図4A参照)。一方、一のラインヘッド21がUVインクを噴射しない場合、当該一のラインヘッド21の直下に位置していたプラテン34が収縮状態となり、それまでキャップ51の上方位置に差し掛かっていた前記プラテン34の長手方向一端部、及び、該プラテン34に支持された連続媒体Sがキャップ51の上方位置から外れるようになる。この結果、前記一のラインヘッド21が、その直下に位置するキャップ51と対向するようになる。かかる状態において、上記キャップ51は、前記一のラインヘッド21の下面と当接する位置まで上昇する(図4B参照)。
【0041】
吸引ポンプ52は、キャップ51に接続されており、該キャップ51がノズルNzを封止した状態で作動する。これにより、前記キャップ51の内空間が負圧状態になり、ノズルNz内のUVインクが吸引されて強制的に排出されるようになる。このように、メンテナンスユニット50は、キャップ51にノズルNzを封止させた状態で吸引ポンプ52を駆動することにより、前記ノズルNz内のインクを強制排出する動作(クリーニング動作)を実行する。かかるクリーニング動作により、ノズルNzからのインク噴射が良好に維持されるようになる。
【0042】
変更ユニット60は、印字間距離を変更するためのものである。印字間距離とは、第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する連続媒体S上の領域が、第二ヘッドが対向する第二対向位置へ移動する際の移動距離のことである。また、第一ヘッド及び第二ヘッドは、連続媒体Sと対向して互いに色が異なるUVインクを噴射するヘッドであり、本実施形態においては互いに異なる2つのラインヘッド21のことである。なお、第一ヘッドは、複数のラインヘッド21のうちの一のラインヘッド21であり、第二ヘッドは、前記領域の移動経路において第一ヘッドに相当するラインヘッド21よりも下流側でUVインクを噴射するラインヘッド21である。そして、本実施形態のプリンタ10では、コントローラ70が変更ユニット60を制御することにより、印字間距離を調整することが可能である。なお、変更ユニット60の詳細については後述する。
【0043】
コントローラ70は、メモリ73に格納されているプログラムに従って、CPU72によりユニット制御回路74を介してプリンタ10の各ユニットを制御する。コントローラ70は、インターフェイス71を介してホストコンピュータ110と通信可能であり、ホストコンピュータ110から印刷データを受信すると、該印刷データに基づいて前記各ユニットを制御して該印刷データに応じた画像を連続媒体Sに印刷する。なお、プリンタ10内の状況は検出器群80によって監視されており、検出器群80は検出結果に応じた信号をコントローラ70に向けて出力する。
【0044】
<<プリンタ10による印刷処理について>>
次に、上記構成のプリンタ10により画像を印刷する印刷処理について説明する。
当該印刷処理は、コントローラ70がホストコンピュータ110から送られる印刷データをインターフェイス71を介して受信するところから始まる。コントローラ70は、受信した印刷データ中の各種コマンドの内容を解析しプリンタ10の各ユニットを制御する。これにより、先ず搬送ユニット30による搬送動作が実行される。具体的に説明すると、給紙ローラ31がロール状に巻回された連続媒体Sを繰り出して該連続媒体Sを送り出し、複数のテンションローラ33が回転しながら前記連続媒体Sを搬送し、排紙ローラ32が前記連続媒体Sを巻き取る。
コントローラ70は、搬送ユニット30による搬送動作を実行する一方で、ヘッドユニット20によるUVインクの噴射動作、及び、UV照射ユニット40による紫外線の照射動作を実行する。この結果、連続媒体S上にカラー画像が印刷される。
【0045】
具体的に説明すると、ブラックラインヘッド21Kが、該ブラックラインヘッド21Kが対向する位置に位置する連続媒体S上の領域に、ブラック(K)のUVインクを噴射する。これにより、前記領域には、ブラック(K)のドットが形成される。なお、前述したように、連続媒体Sの幅分の上記ドットが一度に形成される。
その後、搬送ユニット30が連続媒体Sを搬送することにより、前記領域は、ブラックラインヘッド21Kが対向する位置から下流側へ移動する。これにより、前記領域は、ブラックラインヘッド21Kと対応するUV照射機構41が対向する位置に到達する。
【0046】
より詳しく説明すると、前記領域は、ブラックラインヘッド21Kと対向するUV照射機構41の予備照射装置41aが対向する位置、を通過した後に、前記UV照射機構41の本照射装置41bが対向する位置に至るようになる。そして、予備照射装置41aが対向する位置、及び、本照射装置41bが対向する位置の各々において、前記領域に着弾したUVインク(ブラック(K)のUVインク)に紫外線が照射される。つまり、ブラックラインヘッド21Kから噴射されたUVインクは、前記領域に着弾した後に即座に紫外線を受けるようになる。この結果、上記UVインクにより形成されたドットが前記領域に定着するようになる。
【0047】
その後、前記領域が更に下流側に移動し、やがてシアンラインヘッド21Cが対向する位置に位置するようになる。以降、上記と同様の動作がUVインク毎に繰り返され、前記領域にカラー画像片(カラー画像の一部)が形成される。以上の結果、最終的に連続媒体Sにカラー画像が印刷される。
【0048】
なお、カラー画像の背景画像を形成する場合には、KCMYのラインヘッド21K〜21YがUVインクを噴射する前に、白ラインヘッド21Wが、連続媒体S上の前記カラー画像が形成される部分に白インクをベタ打ちし、白ラインヘッド21Wと対応するUV照射機構41が前記白インクに紫外線を照射する。換言すると、上記背景画像を形成する場合、連続媒体S上の、KCMYのラインヘッド21K〜21Yの各々が対向する位置に位置する領域は、事前に、白ラインヘッド21Wが対向する位置と、白ラインヘッド21Wと対応するUV照射機構41が対向する位置と、を通過していることになる。
【0049】
また、画像上にクリアインクを塗布する場合、連続媒体Sに画像が形成された後に、クリアインクラインヘッド21Hが画像上にクリアインクを噴射し、クリアインクラインヘッド21Hと対向するUV照射機構41が、連続媒体S上の、クリアインクが着弾した部分と対向して当該クリアインクに紫外線を照射する。換言すると、画像上にクリアインクを塗布する場合、前記領域は、KCMYのラインヘッド21K〜21Yが対向する位置に位置した後に、クリアインクラインヘッド21Hが対向する位置と、該クリアインクラインヘッド21Hと対応するUV照射機構41が対向する位置を通過することになる。
【0050】
ところで、コントローラ70が印刷データに基づいて上記一連の動作を実行することにより、連続媒体Sには前記印刷データに応じた画像が印刷されることになる。当該印刷データによっては、プリンタ10に用意された複数種類のUVインクのうち、画像印刷の際に使用されないUVインクが発生する場合がある。換言すると、複数のラインヘッド21中に、UVインクを噴射しないラインヘッド21(すなわち、印字待機状態にあるラインヘッド21)が存在する場合がある。かかる場合、コントローラ70は、印字待機状態のラインヘッド21の下に位置するプラテン34を収縮させる。この結果、印字待機状態のラインヘッド21は、前述したように、連続媒体Sと対向しなくなる一方で、当該ラインヘッド21の直下に位置するキャップ51と対向するようになる。
【0051】
また、印字待機状態のラインヘッド21と対応するUV照射機構41の予備照射装置41aについても、連続媒体Sと対向しなくなる。これに対し、上記UV照射機構41の本照射装置41bは、連続媒体Sと対向し続け、該連続媒体Sに向けて紫外線を照射し続ける。
【0052】
さらに、コントローラ70は、印字待機状態のラインヘッド21の直下に位置するキャップ51を上昇させて、該キャップ51に前記印字待機状態のラインヘッド21のノズルNzを封止させる。そして、コントローラ70は、キャップ51に前記ノズルNzを封止させた状態で吸引ポンプ52を作動することにより、印字待機状態のラインヘッド21に対してクリーニング動作を行う。これにより、印字待機状態のラインヘッド21が再びUVインクを噴射するようになった際に、該ラインヘッド21のノズルNzからのインク噴射が良好に行われるようになる。
【0053】
===変更ユニット60について===
本実施形態のプリンタ10は、上述したように、印字間距離を変更するための変更ユニット60を有する。印字間距離は、既に説明したように、第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する連続媒体S上の領域が、第二ヘッドが対向する第二対向位置へ移動する際の移動距離(つまり、前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離)である。以下、変更ユニット60について詳しく説明する。
【0054】
本実施形態に係る変更ユニット60は、図1に示すように、第一駆動機構61と第二駆動機構62を有する。
【0055】
第一駆動機構61は、複数のテンションローラ33のうち、第四テンションローラ33dを上下方向に移動させるものである。すなわち、本実施形態に係る第四テンションローラ33dは、その回転軸と交差する方向へ移動自在に支持された移動ローラの一例である。本実施形態に係る第一駆動機構61は、上下方向に沿ったガイドレール61aと、当該ガイドレール61aに沿って第四テンションローラ33dを移動させるステッピングモータ61bと、を有する(図5A及び図5B参照)。なお、本実施形態では、前述したように、第四テンションローラ33dが複数(具体的には、6つ)備えられており、ガイドレール61a及びステッピングモータ61bは、第四テンションローラ33d別に複数設けられている。すなわち、第一駆動機構61は、各第四テンションローラ33dを個別に上下移動させることが可能である。
【0056】
第二駆動機構62は、複数のテンションローラ33のうち、第二テンションローラ33bを水平方向(具体的には、連続媒体Sの幅と交差する方向)に移動させるものである。すなわち、本実施形態に係る第二テンションローラ33bも、第四テンションローラ33dと同様、その回転軸と交差する方向へ移動自在に支持された移動ローラの一例である。本実施形態に係る第二駆動機構62は、水平方向に沿ったガイドレール62aと、当該ガイドレール62aに沿って第二テンションローラ33bを移動させるステッピングモータ62bと、を有する(図6A及び図6B参照)。なお、第二テンションローラ33bについても複数(具体的には、6つ)備えられており、ガイドレール62a及びステッピングモータ62bは、第二テンションローラ33b別に複数設けられている。すなわち、第二駆動機構62は、各第二テンションローラ33bを個別に水平移動させることが可能である。
【0057】
以上のような構成の変更ユニット60は、第一駆動機構61に第四テンションローラ33dを移動させることにより、あるいは、第二駆動機構62に第二テンションローラ33bを移動させることにより、連続媒体S上の領域が移動する移動経路を変えて前記印字間距離を変更する。なお、第一駆動機構61及び第二駆動機構62は、それぞれガイドレール61a、62aとステッピングモータ61b、62bとを備えることとしたが、これに限定されるものではなく、駆動対象であるテンションローラ33(第二テンションローラ33bや第四テンションローラ33d)を移動させる限り、他の構成であってもよい。
【0058】
以下、第一駆動機構61及び第二駆動機構62の各々の動作例について説明する。なお、説明を分かり易くするために、第一駆動機構61の動作例については、仮にブラックラインヘッド21Kを第一ヘッドとし、シアンラインヘッド21Cを第二ヘッドとして説明する。第二駆動機構62の動作例については、仮にブラックラインヘッド21Kを第一ヘッドとし、マゼンタラインヘッド21Mを第二ヘッドとして説明する。
【0059】
<<第一駆動機構61の動作例について>>
第一駆動機構61は、コントローラ70による制御の下、ブラックラインヘッド21Kよりも下流側に位置しシアンラインヘッド21Cよりも上流側に位置する第四テンションローラ33dを上下移動させる。当該第四テンションローラ33dは、その外周面に連続媒体Sが掛けられている位置が上記移動経路において第一対向位置(すなわち、ブラックラインヘッド21Kが対向する位置)と第二対向位置(シアンラインヘッド21Cが対向する位置)の間に位置しているテンションローラ33である。
【0060】
そして、第一駆動機構61が上記の第四テンションローラ33dを上下移動させることにより、図5A及び図5Bに示すように、連続媒体S上の領域が第一対向位置から第二対向位置に移動する際の移動経路が変わる。すなわち、ブラックラインヘッド21Kが対向する位置からシアンラインヘッド21Cが対向する位置への前記領域の移動距離、すなわち、印字間距離が変更される。なお、図5A及び図5Bは、第一駆動機構61の動作により印字間距離が変更される様子を示した図である。
【0061】
なお、第一駆動機構61が第四テンションローラ33dを上下移動させる際の移動量(図5B中、記号d1にて示す)は、コントローラ70が印刷データに応じて決定する。これにより、印字間距離は、印刷データに応じた距離となる。
【0062】
ところで、連続媒体S上の領域は、ブラックラインヘッド21Kが対向する位置に位置した後に、該ブラックラインヘッド21Kと対応するUV照射機構41からの紫外線を受ける位置を経由してから、シアンラインヘッド21Cが対向する位置に至る。つまり、前記領域は、第一対向位置を出てから第二対向位置に到達するまでの間に、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の予備照射装置41aからの紫外線を受ける位置、及び、当該UV照射機構41の本照射装置41bからの紫外線を受ける位置を通過する。
【0063】
ここで、第一ヘッド(すなわち、ブラックラインヘッド21K)と対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、本実施形態の照射部に相当する。また、前記領域が当該本照射装置41bからの紫外線を受ける位置は、本実施形態の受光位置に相当し、連続媒体S上の領域が第一対向位置から第二対向位置へ移動する際の移動経路において、該第一対向位置と第二対向位置の間に位置する。
【0064】
さらに、本実施形態では、第一駆動機構61の駆動対象である第四テンションローラ33dが、前記移動経路において前記受光位置よりも下流側で上下移動する。したがって、第一駆動機構61が前記第四テンションローラ33dを上下移動させると、前記印字間距離は、前記受光位置から前記第二対向位置において変化することになる。このため、前記領域が前記受光位置から前記第二対向位置へ移動するまでの時間が変更する。つまり、変更ユニット60は、第一駆動機構61に第四テンションローラ33dを移動させて印字間距離を変更することにより、連続媒体S上の領域が受光位置から第二対向位置に移動するまでの時間を変更する。この結果、前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインク(すなわち、ブラック(K)のUVインク)の硬化度合いを調整することが可能になる。
【0065】
<<第二駆動機構62の動作例について>>
第二駆動機構62は、第三ヘッドがUVインクを噴射するか否かに応じて、第二テンションローラ33bを水平移動させる。ここで、第三ヘッドとは、ノズルNzから第一ヘッド及び第二ヘッドとは色が異なるUVインクを該連続媒体Sに噴射するラインヘッド21である。そして、第一ヘッドが対向する第一対向位置から第二ヘッドが対向する第二対向位置への移動経路において、第三ヘッドが対向する第三対向位置は、前記第一対向位置と前記第二対向位置との間に位置する。なお、本具体例(ブラックラインヘッド21Kを第一ヘッドとし、マゼンタラインヘッド21Mを第二ヘッドとする例)においては、シアンラインヘッド21Cが第三ヘッドに該当する。
【0066】
第二駆動機構62は、コントローラ70による制御の下、ブラックラインヘッド21K及びシアンラインヘッド21Cよりも下流側に位置しマゼンタラインヘッド21Mよりも上流側に位置する第二テンションローラ33bを水平移動させる。当該第二テンションローラ33bは、その外周面に連続媒体Sが掛けられている位置が上記移動経路において第三対向位置(すなわち、シアンラインヘッド21Cが対向する位置)と第二対向位置(マゼンタラインヘッド21Mが対向する位置)の間に位置しているテンションローラ33である。
【0067】
そして、第二駆動機構62が上記の第二テンションローラ33bを水平移動させることにより、図6A及び図6Bに示すように、連続媒体S上の領域が第一対向位置(ブラックラインヘッド21Kが対向する位置)から第二対向位置へ移動する際の移動経路が変わり、前記第一対向位置からから前記第二対向位置への前記領域の移動距離、すなわち、印字間距離が変更される。図6A及び図6Bは、第二駆動機構62の動作により印字間距離が変更される様子を示した図である。
【0068】
具体的に説明すると、第二駆動機構62が上記の第二テンションローラ33bを水平移動させることにより、該第二テンションローラ33bと隣り合うプラテン34が伸縮する。そして、シアンラインヘッド21CがUVインクを噴射する場合、第二駆動機構62は、上記の第二テンションローラ33bを図6Aに示す位置に位置させる。かかる場合、上記の第二テンションローラ33bと隣り合うプラテン34(すなわち、シアンラインヘッド21Cの下に位置するプラテン34)は伸張状態となっている。したがって、上記の第二テンションローラ33bが図6Aに示す位置に位置する際、連続媒体Sは、シアンラインヘッド21Cの下面の下を通過するように搬送される。より詳しく説明すると、シアンラインヘッド21Cの下に位置するプラテン34の長手方向一端部が、該シアンラインヘッド21Cと該シアンラインヘッド21Cの直下に位置するキャップ51との間に差し掛かる。この結果、連続媒体S上の領域は、第三対向位置を通過するようになる。つまり、シアンラインヘッド21Cが連続媒体Sと対向する一方でキャップ51とは対向しないこととなる。
【0069】
一方、シアンラインヘッド21CがUVインクを噴射しない場合、第二駆動機構62は、上記の第二テンションローラ33bを図6Bに示す位置に位置させる。かかる場合、上記の第二テンションローラ33bと隣り合うプラテン34は、収縮状態となる。したがって、上記の第二テンションローラ33bが図6Bに示す位置に位置する際、連続媒体Sは、シアンラインヘッド21Cの下面の下を通過しなくなる。より詳しく説明すると、連続媒体Sの搬送方向がシアンラインヘッド21Cの手前で折り返され、連続媒体Sは、シアンラインヘッド21Cと該シアンラインヘッド21Cの直下に位置するキャップ51との間から退避するようになる。つまり、シアンラインヘッド21Cは、連続媒体Sと対向しない一方で前記キャップ51と対向するようになる。かかる状態において、キャップ51は、シアンラインヘッド21Cの下面に当接するようにシアンラインヘッド21Cに向けて移動する。
【0070】
上記のように、第二駆動機構62は、該第二駆動機構62の駆動対象である第二テンションローラ33bを、第三ヘッドがUVインクを噴射する場合と噴射しない場合とに応じて水平移動させることにより、第一対向位置から第二対向位置への連続媒体S上の領域の移動経路を変える。すなわち、第二駆動機構62は、第三ヘッドがUVインクを噴射するときには、前記移動経路を、該第三ヘッドを連続媒体Sと対向させキャップ51とは対向させない第一移動経路とする。他方、第三ヘッドがUVインクを噴射しないときには、前記移動経路を、該第三ヘッドを連続媒体Sと対向させずキャップ51と対向させる第二移動経路とする。
【0071】
以上のように、第二駆動機構62は、移動経路を切替えて、第一対向位置から第二対向位置への前記領域の移動距離、すなわち、印字間距離を変更する。つまり、実施形態の変更ユニット60(具体的には、第二駆動機構62)は、印字間距離を変更する機能と、第三ヘッドが対向する被対向物(連続媒体S及びキャップ51)を切替える機能とを兼ね備えている。
【0072】
そして、第二駆動機構62も、第一駆動機構61と同様、印字間距離を変更することにより、前記領域が第一ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bからの紫外線を受ける位置(受光位置)から第二対向位置へ移動するまでの時間、を変更する。この結果、前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインク(すなわち、ブラック(K)のUVインク)の硬化度合いを調整することが可能になる。
【0073】
ところで、上記の移動経路が第一移動経路となった場合、第三ヘッド(シアンラインヘッド21C)と対応するUV照射機構41の予備照射装置41a及び本照射装置41bは、双方とも連続媒体Sと対向する(図6A参照)。一方、上記の移動経路が第二移動経路となった場合、上記の予備照射装置41a及び本照射装置41bのうち、予備照射装置41aは、連続媒体Sと対向しないのに対し、本照射装置41bは依然として連続媒体Sと対向する(図6B参照)。このため、上記の移動経路が第二移動経路となった場合(すなわち、第三ヘッドがUVインクを噴射しない場合)、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、第一ヘッド(ブラックラインヘッド21K)と対応するUV照射機構41とともに、連続媒体S上の領域に着弾した第一ヘッドからのUVインク(すなわち、ブラック(K)のUVインク)に紫外線を照射することになる。
【0074】
具体的に説明すると、変更ユニット60(具体的には、第二駆動機構62)が前記移動経路を第一移動経路とした場合、連続媒体S上の領域は、当該領域に第一ヘッドからのUVインクが着弾した後に、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の予備照射装置41a及び本照射装置41bの各々が対向する位置を通過する。ここで、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、前述したように照射装置に相当し、前記領域と対向した際に当該領域に着弾した第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射する。その後、前記領域が第三対向位置を通過する際に第三ヘッドからのUVインクが前記領域に着弾する。前記領域が更に下流側に移動すると、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の予備照射装置41a及び本照射装置41bの各々が対向する位置を通過する。ここで、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、他の照射装置に相当し、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bとは異なるものである。そして、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、前記領域と対向した際に当該領域に着弾した第三ヘッドからのUVインクに紫外線を照射する。
【0075】
一方、変更ユニット60が前記移動経路を第二移動経路とした場合、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bが前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射した後、前記領域は、第三ヘッド、及び、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の予備照射装置41aとは対向せずに、当該UV照射機構41の本照射装置41bが対向する位置に到達する。そして、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射する。このように、前記移動経路が第二移動経路となった場合には、先ず、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41b(照射装置)が、前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射する。その後、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41b(他の照射装置)が更に、前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射する。
【0076】
以上により、本実施形態では、第三ヘッドがUVインクを噴射しない場合にも、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41bを有効に利用することが可能になる。
【0077】
<<印字間距離を変更した場合の付随動作>>
上述した第一駆動機構61及び第二駆動機構62の各々の動作は、プリンタ10が画像の印刷処理を中断している間(例えば、印刷画像を変える際に各ラインヘッド21からのインク噴射が中断している間)に実行される。つまり、プリンタ10が印刷処理を中断している間に、第一駆動機構61が第四テンションローラ33dを移動させ、あるいは、第二駆動機構62が第二テンションローラ33bを移動させる。これにより、変更ユニット60は印字間距離を変更する。
【0078】
そして、変更ユニット60が印字間距離を変更した場合、その後に連続媒体Sを適切に搬送するために、変更ユニット60による印字間距離の変更動作に付随する動作(付随動作)を実行する必要がある。このため、コントローラ70は、下記の付随動作を搬送ユニット30に実行させる。
【0079】
変更ユニット60が第四テンションローラ33d又は第二テンションローラ33bを移動させて印字間距離を長くなるように変更する場合、付随動作として、給紙ローラ31が連続媒体Sを前記印字間距離が長くなる分送り出すことになる。そして、給紙ローラ31が連続媒体Sを前記印字間距離が長くなる分送り出した後に、プリンタ10は印刷処理を再開する。これにより、印字間距離を長くなるように変更した後に連続媒体Sが適切に搬送されるようになり、印刷処理が適切に行われるようになる。
【0080】
一方、変更ユニット60が印字間距離を短くなるように変更した場合、それまで張架された状態にあった連続媒体Sに弛みが生じる。印刷処理を再開するにあたり当該弛みを解消する必要があり、本実施形態では、排紙ローラ32が停止した状態で、給紙ローラ31が連続媒体Sを前記印字間距離が短くなった分巻き戻す。これにより、前記弛みが解消し、連続媒体Sは再び張架された状態に戻る。そして、給紙ローラ31が連続媒体Sを前記印字間距離が短くなった分巻き戻した後に、プリンタ10は印刷処理を再開する。これにより、連続媒体Sを無駄に排出することなく前記弛みが解消される。この結果、印字間距離を短くなるように変更した後に連続媒体Sが適切に搬送されるようになり、印刷処理が適切に行われるようになる。
【0081】
===本実施形態のプリンタ10の有効性について===
本実施形態のプリンタ10は、変更ユニット60を有し、当該変更ユニット60が、第一ヘッドに相当するラインヘッド21が対向する第一対向位置から第二ヘッドに相当するラインヘッド21が対向する第二対向位置へ連続媒体S上の領域が移動する際の移動距離、すなわち、印字間距離を変更する。換言すると、本実施形態に係る連続媒体Sの搬送方法は、該連続媒体Sを搬送することにより、第一対向位置に位置する前記領域を第二対向位置に移動させる搬送方法であって、前記印字間距離を変更することと、前記第一対向位置に位置する前記領域を変更後の前記印字間距離だけ移動させて前記第二対向位置に位置させることと、を有する。以上により、プリンタ10が再現可能な印刷画像の画質について、バリエーションが増えることになる。
【0082】
すなわち、既に発明が解決しようとする課題の項で説明したように、画像の画質は、UVインクを連続媒体Sに着弾させた後の該UVインクの状態(具体的には、硬化度合い)に影響される。このため、着弾後のインクの状態を人為的にコントロールできれば、画質のバリエーションが増えることになる。また、UVインクを連続媒体Sに着弾させた後の該UVインクの状態については、該UVインクを連続媒体Sに着弾させてから他のUVインクを着弾させるまでの時間(印字間隔)を調整することによりコントロール可能である。
【0083】
そして、本実施形態のプリンタ10では、上述したように、変更ユニット60が印字間距離を変更することにより、第一ヘッドに相当するラインヘッド21が連続媒体S上の領域にUVインクを噴射してから第二ヘッドに相当するラインヘッド21が前記領域にUVインクを噴射するまでの印字間隔が変更される。さらに、本実施形態では、印字間隔が変更されることにより、前記領域に着弾した第一ヘッドからのUVインクに紫外線が照射されてから第二ヘッドが前記領域にUVインクを噴射するまでの時間(硬化時間)が変更される。すなわち、本実施形態では、印刷データに基づいて印字間距離を調整すれば、硬化時間を当該印刷データに応じて調整することが可能となる。
【0084】
以上の結果、第一ヘッドに相当するラインヘッド21からのUVインクについて、第二ヘッドに相当するラインヘッド21がUVインクを噴射するまでの間の硬化度合いを調整することが可能になる。以下、より分かり易く説明するために、例えば、第一ヘッドに相当するラインヘッド21から噴射されるUVインク(以下、第一インク)上に第二ヘッドに相当するラインヘッド21から噴射されるUVインク(以下、第二インク)を重ね打ちするケースを想定する。当該ケースでは、図7A及び図7Bに示すように、硬化時間が長くなるほど、第一インクが平滑化(レベリング)した状態で、該第一インク上に第二インクが重ね打ちされる。図7A及び図7Bは、硬化時間を調整することによる効果についての説明図であり、図7Aには硬化時間をより短くしたときの様子が、図7Bには硬化時間をより長くしたときの様子が示されている。
【0085】
そして、第一インクの平滑化の進行具合によって、該第一インクと、その上に重ね打ちされる第二インクとの組み合わせにより再現される色が異なってくる。したがって、変更ユニット60によって印字間距離を調整することにより、印字間隔(より具体的には硬化時間)を調整することが可能となる結果、プリンタ10が印刷する画像の画質について、再現可能な色のバリエーションが増えることになる。
【0086】
また、第一インクの平滑化の進行具合が調整可能になることにより、印刷画像の質感(具体的には、画像の表面の凹凸感)も調整することが可能になる。特に、第一インクがクリアインクである場合には、当該クリアインクにより画像に付与される光沢感を調整することが可能になる。
【0087】
さらに、印刷環境(プリンタ10の内部温度や室内湿度)の変更に伴って各UVインクの物性(例えば、インク粘度)が変わってしまうことにより、同じ印刷データに基づいて画像を印刷しても当該画像の画質が微妙に変化してしまうことがある。かかる場合においても、上位印刷環境の変更に応じて印字間距離を調整すれば、同じ印刷データに基づいて印刷される画像の画質を均一化(安定化)させることが可能になる。
【0088】
===変形例に係るプリンタ10について===
上述した構成のプリンタ10は、本発明に係るプリンタ10の実施形態の一例(以下、本件例)であり、他の構成(以下、変形例)も考えられる。以下、変形例に係るプリンタ10の構成として、第一変形例と第二変形例について説明する。なお、以下の説明中、本件例と重複する構成については、説明を省略する。
【0089】
<<第一変形例について>>
本件例では、複数のラインヘッド21の各々が完全に固定された構成について説明した。そして、変更ユニット60(より具体的には、第二駆動機構62)が各第二テンションローラ33bを移動させて印字間距離を変更することにより、各ラインヘッド21が対向する被対向物(連続媒体S又はキャップ51)が切り替わることとした。これに対し、第一変形例に係るプリンタ10では、複数のラインヘッド21の各々を移動させて前記被対向物を切り替える。以下、図8を参照しながら、第一変形例に係るプリンタ10について説明する。図8は、第一変形例に係るプリンタ10の内部構成を示す模式図である。
【0090】
第一変形例に係るプリンタ10では、図8に示すように、複数のテンションローラ33が、連続媒体Sの領域の移動経路が略矩形波状になるように配置されている。具体的に説明すると、複数のテンションローラ33のうち、最も上流側に位置する2つのテンションローラ33、及び、最も下流側に位置する3つのテンションローラ33を除くテンションローラ33は、4つ毎に規則的に並んでいる。より詳しく説明すると、各プラテン34の両脇で該各プラテン34を挟むように配置された一対のテンションローラ33(以下、一対の第五テンションローラ33e)と、一対の第五テンションローラ33eよりも下方に位置し、上下方向において互いに略同じ位置に位置する一対のテンションローラ33(以下、一対の第六テンションローラ33f)と、が組を成した状態で並んでいる。そして、上記テンションローラ33(すなわち、一対の第五テンションローラ33e、及び、一対の第六テンションローラ33f)の組み合わせは、前記移動経路に沿ってラインヘッド21の個数分設けられている。
【0091】
各一対の第六テンションローラ33fの上方には、図8に示すように、空間が形成されており、当該空間内には、キャップ51が第五テンションローラ33e(一対の第五テンションローラ33eのうち、下流側の第五テンションローラ33e)を挟んでプラテン34と並ぶように配置されている。なお、当該空間内には、本照射装置41bがキャップ51よりも下側で連続媒体Sと対向するように配置されている。
【0092】
そして、第一変形例では、前述したように、複数のラインヘッド21の各々が不図示の駆動機構により水平移動する。具体的に説明すると、図9Aに示すように、UVインクを噴射する状態にあるラインヘッド21は、当該ラインヘッド21と対応するプラテン34の直上位置(当該位置を以下、印字位置と呼ぶ)に位置する。一方、図9Bに示すように、印字待機状態にあるラインヘッド21は、キャップ51と対向する位置(以下、待機位置と呼ぶ)に位置する。すなわち、第一変形例に係る各ラインヘッド21は、印字位置と待機位置との間で水平移動する。なお、図9Aは、印字位置に位置するラインヘッド21の周辺を示す図であり、図9Bは、待機位置に位置するラインヘッド21の周辺を示す図である。
【0093】
一方、第一変形例に係る変更ユニット60は、各一対の第六テンションローラ33fを上下移動させる駆動機構(不図示)を有する。つまり、当該駆動機構が各一対の第六テンションローラ33fを上下移動させることにより、変更ユニット60は印字間距離を変更する(図8参照)。
【0094】
以上のように、第一変形例では、印字間距離を変更するための機構と、各ラインヘッド21が対向する被対向物(連続媒体S若しくはキャップ51)を切替える機構とが、別個独立に設けられている。すなわち、本件例のように変更ユニット60が印字間距離を変更する機能と前記被対向物を切替える機能を兼ね備えていない。なお、第一変更例では各ラインヘッド21を水平移動させるため、正確に画像を印刷する上で各ラインヘッド21を精度良く移動させる(移動後の位置決めを精度良く行う)必要がある。これに対し、本件例では、各ラインヘッド21が固定されているため、移動精度に関する問題は生じない。かかる点においては、本件例の方が第一変形例よりも有利である。
【0095】
ところで、第一変形例では、各ラインヘッド21には予備照射装置41a(詳しくは、当該各ラインヘッド21と対応するUV照射機構41の予備照射装置41a)が固定されている。このため、各ラインヘッド21が印字位置から待機位置へ水平移動すると、当該各ラインヘッド21に固定された予備照射装置41aも連動して水平移動する。そして、各ラインヘッド21が印字位置に位置するとき、当該各ラインヘッド21に固定された予備照射装置41aは連続媒体Sと対向し、各ラインヘッド21が待機位置に位置するとき、当該各ラインヘッド21に固定された予備照射装置41aは連続媒体Sと対向しなくなる。一方、各ラインヘッド21と対応するUV照射機構41の本照射装置41bは、キャップ51の下方位置で固定されているため、前記各ラインヘッド21の位置に関係なく、連続媒体Sと対向する(図9A及び図9B参照)。
【0096】
この結果、第一変形例においても、本件例と同様に、第三ヘッドに相当するラインヘッド21がUVインクを噴射しない場合に、当該ラインヘッド21と対応するUV照射機構41の本照射装置41bを有効に利用することが可能になる。すなわち、第三ヘッドに相当するラインヘッド21がUVインクを噴射しない場合には、第一ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41b(照射装置)が、第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射した後に、第三ヘッドと対応するUV照射機構41の本照射装置41b(他の照射装置)が更に、前記第一ヘッドからのUVインクに紫外線を照射する。
【0097】
<<第二変形例について>>
本件例では、印字間距離の変更動作に付随する付随動作として、該変更ユニット60が前記印字間距離を短くなるように変更した場合に、排紙ローラ32が停止した状態で、給紙ローラ31が連続媒体Sを前記印字間距離が短くなった分巻き戻す場合について説明した。これにより、前記印字間距離を短くした際に連続媒体Sに生じる弛みを解消することが可能となるが、当該弛みを解消する方法は他にも考えられる。第二変形例に係るプリンタ10では、当該弛みを解消するために、上記とは異なる付随動作が実行される。
【0098】
具体的に説明すると、第二変形例では、変更ユニット60が印字間距離を短くなるように変更した場合、給紙ローラ31が停止した状態で、排紙ローラ32が連続媒体Sを前記印字間距離が短くなった分巻き取る。これにより、前記弛みが解消される。なお、第二変形例においても、印字間距離の変更動作は、印刷処理が中断している間に行われる。
【0099】
さらに、第二変形例では、排紙ローラ32が連続媒体Sを印字間距離が短くなった分だけ巻き取っている間に、プリンタ10は、給紙ローラ31が停止したままの状態で第二対向位置に位置する連続媒体S上の領域に第二ヘッドがUVインクを噴射することにより、印刷処理を再開する。つまり、排紙ローラ32が連続媒体Sを印字間距離が短くなった分だけ巻き取ることにより、連続媒体S上の一の領域が第二対向位置に位置するようになる。かかる時点で、前記一の領域には、第二ヘッドに相当するラインヘッド21からのUVインクが着弾していないので、当該ラインヘッド21が前記一の領域にUVインクを噴射するところから印刷処理を再開することが可能である。
【0100】
以上の結果、第二変形例では、印字間距離を短くなるように変更した場合、連続媒体Sに生じた弛みを解消するとともに、印字間距離を変更してから印刷処理を再開するまでの時間を短縮することが可能になる。これに対して、本件例では、給紙ローラ31が連続媒体Sを巻き戻す分、印字間距離を変更してから印刷処理を再開するまでの時間が余計に掛かってしまう。したがって、時間的ロスが短縮される点においては、第二変形例の方が本件例よりも望ましい。一方、本件例では第二変形例よりも簡易な手順により弛みを解消することが可能であるため、印字間距離を変更してから印刷処理を再開するまでの制御についても本件例の方が第二変形例よりも簡易なものとなる。かかる点においては、本件例の方が望ましい。
【0101】
===その他の実施の形態===
以上、上記の実施形態に基づき本発明に係る流体噴射装置、及び、搬送方法について説明したが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0102】
また、上記の実施形態では、第一ヘッド及び第二ヘッドの各々から噴射されるインクは、紫外線を受けて硬化するUVインクであることとしたが、これに限定されるものではない。例えば、一般的な水性インク及び油性インク(すなわち、非紫外線硬化型のインク)であってもよい。第一ヘッド及び第二ヘッドが一般的な水性インク及び油性インクを噴射する場合であっても、印字間距離を変更することにより、画質のバリエーションを増やすことは可能である。具体的に説明すると、上記のインクが第一ヘッドから噴射されて媒体に着弾すると、当該インクは前記媒体上で滲み広がる。当該インクの滲み度合いは、プリンタ10が再現可能な色に影響を及ぼし、また、前記印字間隔を調整することにより調整可能である。したがって、印字間距離を変更して前記印字間隔を調整すれば、インクの滲み度合いが調整される結果、プリンタ10が再現可能な色についてバリエーションを増やすことが可能になる。
【0103】
また、上記の実施形態では、第二テンションローラ33bまたは第四テンションローラ33dを回転軸と交差する方向へ移動させることにより、印字間距離を変更することとした。これにより、画像の被印刷媒体として連続媒体Sを用いる場合に、前記印字間距離を確実に変更することが可能になる。但し、これに限定されるものではなく、例えば、連続媒体Sに当接して該連続媒体Sと交差する方向(具体的には上下方向)に該連続媒体Sを押圧する押圧部材がテンションローラ33間に配置され、当該押圧部材を前記連続媒体Sと交差する方向に移動させることにより前記印字間距離を変更することとしてもよい。
【0104】
また、上記の実施形態では、印刷処理が中断している間に、変更ユニット60による印字間距離の変更動作が行われることとしたが、これに限定されるものではなく、印刷処理中に当該変更動作が行われることとしてもよい。
【0105】
また、上記の実施形態では、画像を印刷する媒体として連続媒体Sを用いるプリンタ10について説明した。但し、これに限定されるものではなく、前記媒体としてはカット紙(単票紙)等、画像印刷に供される媒体であればよい。カット紙を媒体として画像を印刷するプリンタ10の場合、図10に図示されるような搬送ベルト35により前記カット紙を搬送する構成が考えられる。かかる構成では、図10に示すように、搬送ベルト35を張架させながら該搬送ベルト35を駆動させる駆動ローラ35aを移動させて該搬送ベルト35の軌道を変更することにより、印字間距離を変更することが可能である。図10は、カット紙を媒体として画像を印刷するプリンタ10の構成例を示す図である。
【0106】
また、上記実施形態では、媒体(具体的には連続媒体S)の幅分のドットを一度に形成することが可能なラインヘッド21を有するプリンタ10について説明した。但し、これに限定されるものではなく、媒体の幅に沿って移動しながらインクを噴射することにより当該幅に沿うドット列(ラスタライン)を形成するヘッドを有するプリンタ10(所謂シリアルプリンタ)であってもよい。このようなプリンタ10(シリアルプリンタ)にも本発明を具現化することが可能である。
【0107】
また、上記実施形態では、流体噴射装置の一例としてのインク(より具体的には、UVインク)を噴射して画像を印刷するプリンタ10について説明した。但し、これに限定されるものではなく、インク以外の他の液体(液体以外にも、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような液状体を含む)や液体以外の流体(流体として流して噴射できる固体)を噴射したり吐出したりする流体噴射装置に具体化することもできる。例えば、液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む液体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する流体噴射装置であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置、ジェルを噴射する流体噴射装置、トナー等の粉体を例とする固体を噴射する流体噴射装置であってもよい。そして、これらのうちいずれか一種の流体噴射装置に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】プリンタ10の全体構成を示したブロック図である。
【図2】プリンタ10の内部構成を示す模式図である。
【図3】各ラインヘッド21に形成されたノズル列の配列を示す図である。
【図4】図4Aは、伸張状態にあるプラテン34の周囲の様子を示す図である。図4Bは、収縮状態にあるプラテン34の周囲の様子を示す図である。
【図5】図5A及び図5Bは、第一駆動機構61の動作により印字間距離が変更される様子を示した図である。
【図6】図6A及び図6Bは、第二駆動機構62の動作により印字間距離が変更される様子を示した図である。
【図7】図7A及び図7Bは、硬化時間を調整することによる効果についての説明図である。
【図8】第一変形例に係るプリンタ10の内部構成を示す模式図である。
【図9】図9Aは、印字位置に位置するラインヘッド21の周辺を示す図である。図9Bは、待機位置に位置するラインヘッド21の周辺を示す図である。
【図10】カット紙を媒体として画像を印刷するプリンタ10の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
10 プリンタ、20 ヘッドユニット、21 ラインヘッド、
21W 白ラインヘッド、21K ブラックラインヘッド、
21C シアンラインヘッド、21M マゼンタラインヘッド、
21Y イエローラインヘッド、21H クリアインクラインヘッド、
30 搬送ユニット、31 給紙ローラ、32 排紙ローラ、
33 テンションローラ、33a 第一テンションローラ、
33b 第二テンションローラ、33c 第三テンションローラ、
33d 第四テンションローラ、33e 第五テンションローラ、
33f 第六テンションローラ、34 プラテン、35 搬送ベルト、
35a 駆動ローラ、40 UV照射ユニット、
41 UV照射機構、41a 予備照射装置、41b 本照射装置、
50 メンテナンスユニット、51 キャップ、52 吸引ポンプ、
60 変更ユニット、61 第一駆動機構、61a ガイドレール、
61b ステッピングモータ、62 第二駆動機構、62a ガイドレール、
62b ステッピングモータ、70 コントローラ、
71 インターフェイス(I/F)、72 CPU、73 メモリ、
74 ユニット制御回路、80 検出器群、110 ホストコンピュータ、
Nz ノズル、S 連続媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体と対向し、互いに色が異なる流体を該媒体に噴射する第一ヘッド及び第二ヘッドと、
前記媒体を搬送することにより、前記第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送機構と、
前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離を変更するための変更機構と、
を有することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体噴射装置において、
前記第一ヘッド及び前記第二ヘッドの各々が噴射する流体は、紫外線を受けて硬化する紫外線硬化インクであり、
前記領域に着弾した紫外線硬化インクに紫外線を照射する照射装置を有し、
前記領域が前記照射装置からの紫外線を受ける受光位置は、前記領域が前記第一対向位置から前記第二対向位置へ移動する際の移動経路において、前記第一対向位置と前記第二対向位置との間に位置し、
前記変更機構は、前記移動距離を変更することにより、前記領域が前記受光位置から前記第二対向位置へ位置するまでの時間を変更することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体噴射装置において、
ノズルを有し、該ノズルから前記第一ヘッド及び前記第二ヘッドとは色が異なる紫外線硬化インクを前記媒体に噴射する第三ヘッドであって、
紫外線硬化インクを噴射するときに前記第三ヘッドが対向する第三対向位置が、前記移動経路において前記第一対向位置と前記第二対向位置の間に位置する第三ヘッドと、
前記第三ヘッドが紫外線硬化インクを噴射しないときに対向し、前記ノズルを覆うキャップと、を有し、
前記変更機構は、前記第三ヘッドが紫外線インクを噴射するときには、前記移動経路を、前記第三ヘッドを前記媒体と対向させ前記キャップとは対向させない第一移動経路とし、前記第三ヘッドが紫外線硬化インクを噴射しないときには、前記移動経路を、前記第三ヘッドを前記媒体と対向させず前記キャップと対向させる第二移動経路とすることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項4】
請求項3に記載の流体噴射装置において、
前記領域に着弾した紫外線硬化インクに紫外線を照射し、前記照射装置とは異なる他の照射装置を有し、
前記変更機構が前記移動経路を前記第一移動経路とした場合、
前記照射装置が、前記領域に着弾した前記第一ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射した後、前記他の照射装置が、該領域に着弾した前記第三ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射し、
前記変更機構が前記移動経路を前記第二移動経路とした場合、
前記照射装置が、前記領域に着弾した前記第一ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射した後、前記他の照射装置が更に、該領域に着弾した前記第一ヘッドからの紫外線硬化インクに紫外線を照射することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の流体噴射装置において、
前記媒体は、帯状の連続媒体であり、
前記搬送機構は、
前記連続媒体を繰り出して該連続媒体を送り出す送り出しローラと、
前記送り出しローラが送り出した前記連続媒体を巻き取る巻き取りローラと、
前記送り出しローラと前記巻き取りローラの間に位置し、外周面に前記連続媒体が掛けられた状態で回転することにより、該連続媒体を張りながら搬送する複数のテンションローラと、を有し、
複数の前記テンションローラは、
前記外周面に前記連続媒体が掛けられている位置が前記移動経路において前記第一対向位置と前記第二対向位置の間に位置し、回転する際の軸と交差する方向へ移動自在に支持された移動ローラを有し、
前記変更機構は、前記移動ローラを前記軸と交差する方向へ移動させることにより、前記移動距離を変更することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項6】
請求項5に記載の流体噴射装置において、
前記流体噴射装置は、前記連続媒体に画像を印刷する印刷装置であり、
前記印刷装置が画像の印刷処理を中断している間に、前記変更機構は、前記移動ローラを前記軸と交差する方向へ移動させることにより、前記移動距離を変更し、
前記変更機構が前記移動距離を短くなるように変更した場合、前記巻き取りローラが停止した状態で、前記送り出しローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き戻し、
前記送り出しローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き戻した後に、前記印刷装置は前記印刷処理を再開することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項7】
請求項5に記載の流体噴射装置において、
前記流体噴射装置は、前記連続媒体に画像を印刷する印刷装置であり、
前記印刷装置が画像の印刷処理を中断している間に、前記変更機構は前記移動ローラを前記軸と交差する方向へ移動させることにより、前記移動距離を変更し、
前記変更機構が前記移動距離を短くなるように変更した場合、前記送り出しローラが停止した状態で、前記巻き取りローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き取り、
前記巻き取りローラが前記連続媒体を前記移動距離が短くなった分巻き取っている間に、前記印刷装置は、前記送り出しローラが停止した状態のままで前記第二ヘッドが前記第二対向位置に位置する前記領域に紫外線硬化インクを噴射することにより、前記印刷処理を再開することを特徴とする流体噴射装置。
【請求項8】
媒体を搬送することにより、第一ヘッドが対向する第一対向位置に位置する前記媒体上の領域を、前記第一ヘッドとは色が異なる流体を噴射する第二ヘッドが対向する第二対向位置に移動させる搬送方法であって、
前記第一対向位置から前記第二対向位置への前記領域の移動距離を変更することと、
前記第一対向位置に位置する前記領域を変更後の前記移動距離だけ移動させて前記第二対向位置に位置させることと、
を有することを特徴とする搬送方法。

【図1】
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【図3】
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【図10】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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