説明

流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法

【課題】メンテナンス性に優れた流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法を提供すること。
【解決手段】流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、搬送される媒体と、前記流体噴射ヘッドから前記媒体外に排出された前記流体を受ける受部とを備え、複数の前記ノズルは、前記媒体及び前記受け部に噴射する流体と前記受け部にのみ噴射する第1の流体とを切り替えて噴射する第1ノズルと、前記受け部にのみ噴射する第2の流体を噴射する第2ノズルとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射装置は、流体を噴射可能な噴射ヘッドを備え、この噴射ヘッドから各種の流体を被記録材等に向けて噴射する装置である。流体噴射装置の代表的なものとして、例えば、インクジェット式噴射ヘッド(以下、単に噴射ヘッドという)を備え、この噴射ヘッド(噴射ヘッド)のノズルから液体状のインク(流体)をインク滴として記録媒体等の記録媒体に向けて噴射、着弾させドットを形成することで記録を行うインクジェット式記録装置が知られている。
【0003】
流体噴射装置では、噴射ヘッドから噴射される流体の良好な噴射状態を維持又は回復するため、当該噴射ヘッドのメンテナンスを定期的に行っている。その具体的なメンテナンス動作として、例えばキャップ部で噴射ヘッドを覆い噴射ヘッドを吸引する吸引動作や、噴射ヘッドからキャップ部やフラッシング受部などにインクを排出させ、ノズルの詰まりを防ぐフラッシング動作などが挙げられる(例えば、特許文献1)。フラッシング動作においては、例えばクリアインクと呼ばれる洗浄用インクを一部のノズルから吐出させることにより、記録時に用いるインクの消費量を低減しつつノズルの詰まりを防ぐことができる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−174766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、フラッシング動作や吸引動作を行っていくうちに、例えばキャップ部やフラッシング受部やキャップ部などのインク受部にインクの堆積が形成されてしまう場合がある。インクの堆積が形成されてしまうと、当該堆積物を除去する作業が必要になり、メンテナンス性が悪くなってしまう。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明は、メンテナンス性に優れた流体噴射装置及び流体噴射装置のメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体噴射装置は、流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、搬送される媒体と、前記流体噴射ヘッドから前記媒体外に排出された前記流体を受ける受部とを備え、複数の前記ノズルは、前記媒体及び前記受け部に噴射する流体と前記受け部にのみ噴射する第1の流体とを切り替えて噴射する第1ノズルと、前記受け部にのみ噴射する第2の流体を噴射する第2ノズルとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、搬送される媒体と、流体噴射ヘッドから媒体外に排出された流体を受ける受部とを備え、複数のノズルが、媒体及び受け部に噴射する流体と受け部にのみ噴射する第1の流体とを切り替えて噴射する第1ノズルと、受け部にのみ噴射する第2の流体を噴射する第2ノズルとを有することにより、上記流体、第1の流体及び第2の流体を目的に応じて使い分けることができるので、各流体を効率的に使用しつつ流体溜まりが形成されるのを抑制することができる。これにより、メンテナンス性に優れた流体噴射装置を得ることができる。
【0009】
上記の流体噴射装置は、前記流体噴射ヘッドは、複数の前記ノズルによって形成されるノズル列を複数有し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、それぞれ異なる前記ノズル列に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、流体噴射ヘッドが複数のノズルによって形成されるノズル列を複数有し、第1ノズル及び第2ノズルがそれぞれ異なるノズル列に配置されていることにより、ノズル列ごとに上記流体、第1の流体及び第2の流体を使い分けることができる。これにより、効率的な噴射動作を行うことができる。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルのうち一方が、端列から奇数番目の前記ノズル列に配置されており、他方が前記端列から偶数番目の前記ノズル列に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1ノズル及び第2ノズルのうち一方が端列から奇数番目のノズル列に配置されており、他方が端列から偶数番目のノズル列に配置されていることにより、第1ノズル及び第2ノズルから噴射される流体の着弾位置をばらつかせることができる。これにより、より広い範囲で洗浄を行うことができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記受部の位置に対応する前記ノズル列に配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、第1ノズル及び第2ノズルが受部の位置に対応するノズル列に配置されていることにより、受部上を確実に洗浄することができる。これにより、効率的なメンテナンスが可能となる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記第1の流体及び前記第2の流体として、同一の洗浄用流体が用いられることを特徴とする。
本発明によれば、第1の流体及び第2の流体として同一の洗浄用流体が用いられることにより、例えば受部洗浄時に第1の流体を噴射させることができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記第1の流体及び前記第2の流体は、同一の供給源から供給されることを特徴とする。
本発明によれば、第1の流体及び第2の流体として同一の洗浄用流体を用いる場合、当該洗浄用流体が同一の供給源から供給されることにより、洗浄用流体の供給動作を簡単化させることができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記流体噴射ヘッドから排出される前記第1の流体を用いて前記受部を洗浄させる制御装置を更に備えることを特徴とする。
本発明によれば、流体噴射ヘッドから排出される第1の流体を用いて受部を洗浄させる制御装置を備えることとしたので、装置の動作状態に応じて柔軟なメンテナンス動作を行うことができる。
【0015】
本発明に係る流体噴射装置のメンテナンス方法は、流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドから排出された前記流体を受ける受部とを備える流体噴射装置のメンテナンス方法であって、複数の前記ノズルは、前記流体と前記第1の流体とを切り替えて噴射する第1ノズル及び前記第2の流体を噴射する第2ノズルを有し、前記第1ノズル及び前記第2ノズルから、それぞれ前記第1の流体と前記第2の流体とを切り替えて噴射することで、前記受部を洗浄することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、第1ノズル及び第2ノズルから、それぞれ第1の流体と第2の流体とを切り替えて噴射することで受部を洗浄することにより、第1の流体及び第2の流体を均等に用いて受部を洗浄することができる。これにより、流体噴射装置のメンテナンスを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るインクジェットプリンタの構成を示す概略図。
【図2】記録ヘッドの構成を示す断面図。
【図3】記録ヘッドのノズル面の構成を示す図。
【図4】インクカートリッジの構成を示す図。
【図5】記録ヘッドの構成を示す図。
【図6】プリンタの電気的な構成を示すブロック図。
【図7】インクジェットプリンタのフラッシング動作を示す図。
【図8】同、動作図。
【図9】同、動作図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明に係るインクジェットプリンタ(流体噴射装置)1の概略構成を示す一部分解図である。
【0019】
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、図1に示すように、諸部材を収容するプリンタ本体5を備えている。プリンタ本体5には、記録ヘッド(流体噴射ヘッド)3を備えたヘッドユニット2を往復移動させるヘッドユニット移動機構16と、インク供給チューブ14を介して記録ヘッド3に供給するインク(流体)を貯留したインクカートリッジ6と、記録ヘッド3の噴射特性を維持するためのクリーニング動作等に用いられるメンテナンス装置7と、本実施形態における特徴的構成要素でありメンテナンス装置7内に溜まった廃インクを回収する廃液回収機構20などが設けられている。
【0020】
このプリンタ本体5には、記録媒体を搬送する不図示の搬送機構が設けられている。この搬送機構は、記録媒体をY方向に搬送する。搬送モータやこの搬送モータによって回転駆動される搬送ローラ(いずれ不図示)等から構成され、記録媒体を記録(印字・印刷)動作に連動させてプラテン13の上に順次送り出すようになっている。記録媒体としては、例えば紙やPET、銀PETなどが挙げられる。
【0021】
ヘッドユニット移動機構16は、プリンタ本体5の幅方向に架設されたガイド軸8と、パルスモータ9と、パルスモータ9の回転軸に接続されてこのパルスモータ9によって回転駆動される駆動プーリー10と、駆動プーリー10とはプリンタ本体5の幅方向の反対側に設けられた遊転プーリー11と、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたタイミングベルト12を有して構成されている。
【0022】
ヘッドユニット2は、プラテン13上に送り出された記録媒体に向けてインクを噴射する記録ヘッド3と、記録媒体の幅方向に沿って移動可能なキャリッジ4とを有して構成されている。
【0023】
キャリッジ4には記録ヘッド3が搭載されている。キャリッジ4は、側部の中央部に設けられた接続部42にタイミングベルト12の一部が取り付けられることでタイミングベルト12に接続されている。このようなキャリッジ4を備えたヘッドユニット2は、図1に示すパルスモータ9の駆動によって回動するタイミングベルト12の動きに従い、ガイド軸8に沿って主走査方向に往復移動する。
【0024】
図2は、記録ヘッド3の概略構成を示す断面図である。
同図に示すように、記録ヘッド3は、ヘッドケース18と、流路ユニット19と、アクチュエータユニット20とを有している。
【0025】
ヘッドケース18は合成樹脂製の中空箱状部材であり、ヘッドケース18の内部にはケース流路25及び収容空部37が形成されている。ケース流路25はヘッドケース18の高さ方向を貫通するように形成されている。ケース流路25の上端は導入針ユニット(不図示)に接続されている。ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通されている。
【0026】
アクチュエータユニット20は、収容空部37内に収容されている。アクチュエータユニット20は、櫛歯状に配列された複数の圧電振動子38と、この圧電振動子38が接合される固定板39と、プリンタ本体側からの駆動信号を圧電振動子38に供給する配線部材としてのフレキシブルケーブル40とから構成される。各圧電振動子38は固定端部側が固定板39上に接合され自由端部側が固定板39の先端面よりも外側に突出しており、いわゆる片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。アクチュエータユニット20は、収容空部37を区画するケース内壁面に固定板39の背面を接着することで収容空部37内に収納、固定されている。
【0027】
流路ユニット19は、振動板(封止板)41、流路基板42及びノズル基板43を有している。これら振動板41、流路基板42及びノズル基板43はこの順に積層された状態になっており、不図示の接着剤で接合され一体化されている。振動板41、流路基板42及びノズル基板43は、共通インク室44からインク供給口45及び圧力室46を通り、ノズル47に至るまでの一連のインク流路を形成する部材である。
【0028】
圧力室46は、ノズル47の配列方向に対して直交する方向に細長い空間として形成されている。共通インク室44は、ケース流路25と連通されており、インク導入針22側からのインクが導入される空間である。共通インク室44に導入されたインクは、インク供給口45を通じて各圧力室46に分配されるようになっている。
【0029】
ノズル基板43は、例えばステンレス鋼などの金属からなる板材であり、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で配列された複数のノズル47が形成されている。ノズル基板43と振動板41との間に配置される流路基板42は、インク流路となる流路部、具体的には、共通インク室44、インク供給口45及び圧力室46となる空部が区画形成された板状の部材である。流路基板42は例えば結晶性を有する基材であるシリコンウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。
【0030】
振動板41は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板41の圧力室46に対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子38の先端面が接合される島部48が形成されている。この島部48は、ダイヤフラム部として機能する。
【0031】
振動板41は、圧電振動子38の作動に応じて島部48の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されており、流路基板42の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部49として機能するようにもなっている。このコンプライアンス部49に相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板が除去され弾性フィルムだけが残った状態になっている。
【0032】
図3は、本実施形態におけるヘッドユニットの噴射面の構成を示す図である。
記録ヘッド3は、図3に示すように複数のノズル47が形成されたノズル面3Aを図中−Z方向に突出させた状態で搭載されている。記録ヘッド3は、複数のノズル47によってノズル列Lが形成されている。ノズル列Lは、記録媒体の搬送方向に沿ってY方向に形成されている。本実施形態では、ノズル列LがX方向に複数配置された構成となっている。具体的には、一対のノズル列LがX方向に5組設けられた構成となっている。以下、図中−X側から+X側にかけて、それぞれ順にノズル列L1〜L10と表記して説明する。
【0033】
メンテナンス装置7は、図1に示すように、記録ヘッド3の各ノズルから増粘したインクを吸引する吸引動作等に用いられるキャッピング機構CP、記録ヘッド3のノズル面3Aに付着したインクを払拭するワイピング動作に用いられるワイピング機構WPなどを有して構成されており、ホームポジションに配置されている。ここで、ホームポジションは、ヘッドユニット2の移動範囲内であって記録領域よりも外側の端部領域に設定され、電源オフ時や長時間に亘って記録が行われなかった場合にヘッドユニット2が移動する場所である。
【0034】
ホームポジションにヘッドユニット2が位置する場合には、メンテナンス装置7により記録ヘッド3に対するメンテナンス処理(インク吸引動作、ワイピング動作など)が行われる。記録ヘッド3からメンテナンス装置7側に排出された廃インクは、廃液回収機構(不図示)において回収される。
【0035】
図4は、インクカートリッジ6の構成を模式的に示す図である。
インクカートリッジ6は、カラーインクカートリッジ6A、白色インクカートリッジ6B及びクリアインクカートリッジ6Cを有している。
【0036】
カラーインクカートリッジ6Aは、異なる色のカラーインクを個別に収容するカートリッジである。8色のカラーインクとして、本実施形態では、例えばイエロー(Y)、ライトイエロー(LY)、マゼンタ(M)、ライトマゼンタ(LM)、シアン(C)、ライトシアン(LC)、ブラック(Bk)及びライトブラック(LB)が用いられている。カラーインクカートリッジ6Aには、それぞれインク供給チューブ14Aが接続されている。
【0037】
白色インクカートリッジ6Bは、白色インクを収容するカートリッジである。白色インクの構成材料としては、例えば顔料系などが用いられている。一般的に、白色インクとして用いられる顔料の粒径(例えば、約600nm)は、他色のインクとして用いられる顔料の粒径(例えば、約100nm)に比べて大きいことが知られている。白色インクカートリッジ6Bには、インク供給チューブ14Bが接続されている。
【0038】
クリアインクカートリッジ6Cは、洗浄用のクリアインクを収容するカートリッジである。クリアインクカートリッジ6Cには、インク供給チューブ14C及び14Dが接続されている。
【0039】
図5は、記録ヘッド3とインク供給チューブ14(14A〜14D)とが接続されている様子を示す図である。
同図に示すように、インク供給チューブ14は、ヘッド内の流路51Aを介してノズル47に接続されている。このうち、インク供給チューブ14Aは、それぞれ1本のインク供給チューブ14Aが流路51Aを介してノズル列L3〜L8に接続されている。したがって、ノズル列L3〜L8は、カラーインクカートリッジ6Aに対応する色のインクを噴射するようになっている。
【0040】
インク供給チューブ14Dは、流路51Cを介してノズル列L2に接続されている。したがって、ノズル列L2は、クリアインクカートリッジ6Cに収容されるクリアインクを噴射するようになっている。当該ノズル列L2は、主としてフラッシング動作時に排出されるインクを洗い流す洗浄用インクとしてクリアインクを噴射するようになっている。
【0041】
一方、インク供給チューブ14B及び14Cについては、セレクタ50を介してインク供給チューブ14Eに接続されている。セレクタ50は、インク供給チューブ14B及び14Cのいずれか一方を選択的にインク供給チューブ14Eに接続させる切り替え弁を有している。当該切り替え弁は、制御装置CONT(図6)の制御に基づいて作動するようになっている。
【0042】
インク供給チューブ14Eは、記録ヘッド3内の流路51Bを介してノズル列L1に接続されている。したがって、ノズル列L1は、白色インクカートリッジ6Bに収容される白色インク及びクリアインクカートリッジ6Cに収容されるクリアインクを選択的に噴射するようになっている。ノズル列L1から噴射されるクリアインクは、当該ノズル列L1に設けられるノズル47の目詰まりを防ぐためにノズル47内を洗浄する洗浄用インクとして噴射されるようになっている。
【0043】
本実施形態では、クリアインクの噴射されるノズル列Lがノズル列L1及びL2となるように構成されている。このうち、白色インクとクリアインクとを切り替えて噴射させるノズル列Lがノズル列L1(奇数列)に配置され、クリアインクのみを単独で噴射させるノズル列Lがノズル列L2(偶数列)に配置されている。
【0044】
図6は、インクジェットプリンタ1の電気的な構成を示すブロック図である。
本実施形態におけるインクジェットプリンタ1は、全体の動作を制御する制御装置CONTを備えている。制御装置CONTには、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を入力する入力装置59、インクジェットプリンタ1の動作に関する各種情報を記憶した記憶装置60、記録媒体を搬送する記録媒体搬送機構35、記録ヘッド3に対してメンテナンス処理を実行するメンテナンス装置7などが接続されている。また、インクジェットプリンタ1は、圧電振動子38を含む駆動ユニットに入力する駆動信号を発生する駆動信号発生器62を備えている。駆動信号発生器62は、制御装置CONTに接続されている。
【0045】
駆動信号発生器62には、記録ヘッド3の圧電振動子38に入力する吐出パルスの電圧値の変化量を示すデータ、及び吐出パルスの電圧を変化させるタイミングを規定するタイミング信号が入力される。駆動信号発生器62は、入力されたデータ及びタイミング信号に基づいて吐出パルス等の駆動信号を発生する。
【0046】
次に、上記のように構成されたプリンタ1の動作を説明する。
外部からの印刷データに基づく記録動作を行う場合、制御装置60は、印刷データをドットパターンに対応した噴射データに展開し、展開した噴射データの駆動信号を記録ヘッド3へ供給する。記録動作においては、印刷データに白色が含まれない場合、記録ヘッド3のノズル列L3〜L10を用いて記録動作が行われる。印刷データに白色が含まれる場合、ノズル列L3〜L10に加えて、ノズル列L1を用いて記録動作が行われる。
【0047】
制御装置CONTは、記録動作に用いるノズル列Lに対応した圧電振動子38に噴射データの駆動信号を供給する。当該駆動信号により、この圧電振動子38が素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部48が圧力室46に近接する方向あるいは離隔する方向に移動する。
【0048】
島部48の移動によって圧力室46の容積が変化し、圧力室46内のインクに圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル47からインク滴Dが吐出される。制御装置60は、記録ヘッド3を走査させながらインク滴Dを吐出させることで、記録紙などに画像や文字を記録する。
【0049】
記録動作の後、制御装置CONTは、メンテナンス処理を開始する。メンテナンス処理は、例えば次の記録処理が開始されるまでの間に行われる。制御装置CONTは、メンテナンス処理として、例えばフラッシング動作を行わせる。フラッシング動作においては、制御装置CONTは、記録ヘッド3をホームポジションへ移動させ、キャッピング機構CPに記録ヘッド3を近接させる。
【0050】
キャッピング機構CPに記録ヘッド3を近接させた後、制御装置CONTは、記録ヘッド3からキャッピング機構CPへインクを吐出(噴射)するフラッシング動作を実行させる。記録ヘッド3は、使用時間によってノズル47内のインク増粘、あるいはノズル47開口近傍へのゴミの付着によって吐出不良が生じてくるおそれがある。そのため、非記録処理時にノズル47からインクを予備噴射させて増粘したインクやゴミ等を排出させるフラッシング動作を行うことで、記録ヘッド3の噴射特性を維持或いは回復させる。
【0051】
制御装置CONTは、5組のノズル列Lについて、組ごとに順にキャッピング機構CPへとインクを噴射させる。例えば制御装置CONTは、図7に示すように、上記の記録動作で用いたノズル列L3及びL4の組について、キャッピング機構CPの中央でノズル47からインクを噴射させる。次に、制御装置CONTは、図8に示すように、ノズル列L5及びL6の組についてインクを噴射させる。制御装置CONTは、当該噴射に先立ち、ノズル列L5及びL6がキャッピング機構CPの中央に配置されるよう、記録ヘッド3を移動させておく。この動作を、ノズル列L7及びL8の組、ノズル列L9及びL10の組について順に行わせる。記録動作で用いた上記の4組について漏れなくフラッシング動作を行わせる必要は無く、例えばフラッシング動作毎にインクを吐出させるノズル列Lの組を変更させることもできる。
【0052】
フラッシング動作の後、制御装置CONTは、例えばキャッピング機構CPをノズル面3Aに接触させ、記録ヘッド3とキャッピング機構CPとの間に気密室を形成した後、気密室を負圧状態にし、各ノズル47から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制的に吸引する処理を行ってもよい。以上の動作が完了したら、制御装置CONTは、再び記録媒体を搬送し、記録ヘッド3からインクを噴射して記録処理を行う。
【0053】
フラッシング動作や吸引動作を行っていくうちに、例えばキャッピング機構CPにインク溜まりが形成されてしまう場合がある。これに対して、本実施形態では、制御装置CONTは、ノズル列L1及びL2の組のノズル47からクリアインクを噴射させてフラッシング動作を行わせ、キャッピング機構CPを洗い流すようにすることで、キャッピング機構CPにインクが堆積しないように制御する。
【0054】
例えば、記録動作時に外部から供給される印刷データが白色を用いないカラーデータのみの場合、インクの噴射を行わせる前にインク供給チューブ14Dとインク供給チューブ14Eとが接続されるようにセレクタ50を制御する。この制御により、ノズル列L1にはクリアインクカートリッジ6Cが接続されることになり、ノズル列L1からはクリアインクが噴射されるように設定される。当該記録動作は、白色インクを用いない動作であるため、ノズル列L1に白色インクカートリッジ6Bを接続させなくても、問題なく記録動作を行うことができる。記録動作終了後、フラッシング動作を開始する際、ノズル列L1とクリアインクカートリッジ6Cとが接続された状態となっているため、特段の設定を要することなく記録動作からフラッシング動作へとスムーズに移行されることとなる。
【0055】
外部から供給される印刷データが白色を用いるカラーデータの場合、記録動作時にはインク供給チューブ14Cとインク供給チューブ14Eとが接続されるようにセレクタ50を制御する。フラッシング動作の開始時にセレクタ50を制御し、インク供給チューブ14Dとインク供給チューブ14Eとを接続させれば良い。
【0056】
図9に示すように、フラッシング動作時においては、制御装置CONTは、記録動作で用いたノズル列L3〜L10に加えて、ノズル列L1及びL2の組についてもクリアインクの噴射を行わせる。この制御により、ノズル列L3〜L10のノズル47から噴射されるカラーインクがキャッピング機構CP上で洗い流されることになる。したがって、キャッピング機構CPにおいてインクの堆積が抑制されることとなる。この場合、クリアインクをフラッシング動作の最後に噴射させる必要は無い。クリアインクと他のインクとがキャッピング機構CP上で混合させることにより、インクの堆積を抑制することができる。
【0057】
制御装置CONTは、フラッシング動作を行う度に、ノズル列L1及びL2からクリアインクを噴射させるか否かを選択することができる。例えば、一定時間が経過するまではノズル列L1及びL2の組には噴射を行わせないようにし、一定時間を経過した後、ノズル列L1及びL2の組からクリアインクを噴射させるようにするという制御も可能である。クリアインクの噴射のタイミングとして、フラッシング動作の回数、フラッシング動作によるインクの吐出量などをパラメータとしても構わない。
【0058】
制御装置CONTは、フラッシング動作において、ノズル列L1及びL2の組のノズル47に噴射させる場合、両方からクリアインクを噴射させる必要は無く、一方のみを噴射させるようにしても構わない。また、例えばノズル列L1とノズル列L2の噴射量を同一にする必要も無く、ノズル列L1とノズル列L2とで異なる噴射量としてクリアインクを噴射させることもできる。
【0059】
例えば記録動作において白色インクを用いた場合、制御装置CONTは、ノズル列L1からは目詰まり防止のために少量のクリアインクを噴射させ、ノズル列L2からはキャッピング機構CPのインク洗い流しのため比較的多量のクリアインクを噴射させることもできる。
【0060】
以上のように、本実施形態によれば、白色インクとクリアインクとを切り替えて噴射するノズル列L1と、キャッピング機構CPを洗浄するクリアインクを噴射するノズル列L2とを有することにより、カラーインク及びクリアインクを目的に応じて使い分けることができるので、各インクを効率的に使用しつつインク溜まりが形成されるのを抑制することができる。これにより、メンテナンス性に優れたインクジェットプリンタ1を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、クリアインクを噴射するノズル47が異なるノズル列L1及びL2に配置されていることにより、ノズル列L1及びL2ごとにクリアインクの内訳を行うことができる。
【0062】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、フラッシング動作を行う際、例えば隣接する2列のノズル列L毎に2列同時にインクを噴射させる動作としたが、これに限られることは無く、例えばノズル列Lを1列毎に順にインクを噴射させるようにしても構わない。
【0063】
また、上記実施形態においては、フラッシング動作の際、インクの着弾位置が重なるように噴射する動作を例に挙げて説明したが、これに限られることは無く、異なる組のノズル列Lから噴射されるインクが混合するのであれば、インクの着弾位置がずれていても構わない。
【0064】
また、上記実施形態においては、フラッシング動作の際、インクを受ける受部としてキャッピング機構CPを用いる構成としたが、これに限られることは無く、例えば別途フラッシング受部などが設けられた構成としても構わない。
【0065】
また、上記実施形態においては、白色インクとクリアインクとを切り替えて噴射するノズル列L1と、キャッピング機構CPを洗浄するクリアインクを噴射するノズル列L2とについて、一方のノズル列(L1)が奇数列、他方のノズル列(L2)が偶数列に配置された構成としたが、これに限られることは無く、例えば両方が奇数列、両方が偶数列に配置される構成としても構わない。この場合、フラッシング動作を行う際の記録ヘッド3の位置を調整することで、クリアインクを他のインクに混合させることができる。
【0066】
上記実施例は、インクジェット式のプリンタと、インクカートリッジが採用されているが、インク以外の他の流体を噴射したり吐出したりする流体噴射装置と、その流体を収容した流体容器を採用しても良い。微小量の液滴を吐出させる流体噴射ヘッド等を備える各種の流体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記流体噴射装置から吐出される流体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう流体とは、流体噴射装置が噴射させることができるような材料であれ良い。
【0067】
例えば、物質が液相であるときの状態のものであれば良く、粘性の高い又は低い液状態、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状態、また物質の一状態としての流体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散または混合されたものなどを含む。また、流体の代表的な例としては上記実施例の形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インクおよび油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種流体組成物を包含するものとする。
【0068】
流体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルタの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散または溶解のかたちで含む流体を噴射する流体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する流体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる流体を噴射する流体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサ等であってもよい。
【0069】
さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する流体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する流体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する流体噴射装置を採用しても良い。そして、これらのうちいずれか一種の噴射装置および流体容器に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
47…ノズル(第1ノズル、第2ノズル) 3…記録ヘッド(流体噴射ヘッド) CP…キャッピング機構(受部) L1〜L10…ノズル列 CONT…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、
搬送される媒体と、
前記流体噴射ヘッドから前記媒体外に排出された前記流体を受ける受部と
を備え、
複数の前記ノズルは、
前記媒体及び前記受け部に噴射する流体と前記受け部にのみ噴射する第1の流体とを切り替えて噴射する第1ノズルと、
前記受け部にのみ噴射する第2の流体を噴射する第2ノズルと
を有する
ことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記流体噴射ヘッドは、複数の前記ノズルによって形成されるノズル列を複数有し、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、それぞれ異なる前記ノズル列に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルのうち一方が、端列から奇数番目の前記ノズル列に配置されており、他方が前記端列から偶数番目の前記ノズル列に配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記第1ノズル及び前記第2ノズルは、前記受部の位置に対応する前記ノズル列に配置されている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記第1の流体及び前記第2の流体として、同一の洗浄用流体が用いられる
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記第1の流体及び前記第2の流体は、同一の供給源から供給される
ことを特徴とする請求項5に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記流体噴射ヘッドから排出される前記第1の流体を用いて前記受部を洗浄させる制御装置を更に備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
流体を噴射するノズルを複数有する流体噴射ヘッドと、前記流体噴射ヘッドから排出された前記流体を受ける受部とを備える流体噴射装置のメンテナンス方法であって、
複数の前記ノズルは、前記流体と前記第1の流体とを切り替えて噴射する第1ノズル及び前記第2の流体を噴射する第2ノズルを有し、
前記第1ノズル及び前記第2ノズルから、それぞれ前記第1の流体と前記第2の流体とを切り替えて噴射することで、前記受部を洗浄する
ことを特徴とする流体噴射装置のメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−214712(P2010−214712A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62929(P2009−62929)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】