説明

流体噴射装置

【課題】流体の飛散を抑えることが可能な流体噴射装置を提供すること。
【解決手段】流体を噴射する流体噴射ヘッドと、平面視で角部を有し、前記流体噴射ヘッドの所定領域を覆うキャップ部と、前記角部に設けられ、前記流体噴射ヘッドとの近接部分に付着した前記流体を誘導する流体誘導部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を噴射する流体噴射装置として、例えばインクジェット式記録装置などが知られている。インクジェット式記録装置は、記録媒体に文字や画像等を記録する装置である。インクジェット式記録装置は、記録ヘッド(噴射ヘッド)に設けられたノズルから記録媒体にインクが噴射される構成になっている。
【0003】
インクジェット式記録装置には、キャップ部などのメンテナンス機構が設けられている。キャップ部は、当該記録ヘッドのノズル形成領域を覆う(キャッピング)ことでノズル内の乾燥を防止する。キャッピング状態を解除する際には、キャップ部と噴射ヘッドとを相対的に移動させることで両者を引き離す構成が一般的である。
【0004】
キャッピング状態において、ノズルから排出されたインクがキャップ部に付着する場合がある。キャップ部にインクが付着した状態で両者を引き離すと、当該インクが飛散して記録ヘッドに付着する虞がある。インクが噴射ヘッドのノズルに付着すると、ノズルの詰まりが発生し、吐出不良を引き起こすことになる。これに対して、例えば記録ヘッドとキャップ部とを相対的に傾けながら徐々に引き離すことにより、インクの飛散を抑制する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3159149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、記録ヘッドとキャップ部とを徐々に引き離す場合、インクの表面張力によって当該インクがキャップ部上を伝わって角部に集まりやすくなる。記録ヘッドとキャップ部とを相対的に傾けた場合であっても角部のインクが飛散する虞があり、記録ヘッドにインクが付着する可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、流体の飛散を抑えることが可能な流体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る流体噴射装置は、流体を噴射する流体噴射ヘッドと、平面視で角部を有し、前記流体噴射ヘッドの所定領域を覆うキャップ部と、前記角部に設けられ、前記流体噴射ヘッドとの近接部分に付着した前記流体を誘導する流体誘導部とを備えることを特徴とする。
【0009】
流体噴射ヘッドとキャップ部との間を引き離す際、キャップ部の平面視角部において、流体噴射ヘッドとの近接部分に付着した流体が特に飛散しやすいことを本発明者は発見した。これに対して、本発明によれば、流体噴射ヘッドとの近接部分に付着した流体は流体誘導部によって誘導されるため、当該近接部分は流体が配置されにくい状態となる。これにより、流体噴射ヘッドとキャップ部との間を引き離す際、キャップ部の平面視角部における流体の飛散を確実に抑えることができる。また、構成上の特徴により流体の飛散を抑えることができるので、メンテナンス時のシーケンスについては当該飛散を考慮する必要性が少なくなる。これにより、メンテナンス時のシーケンスの自由度を向上させることができるという利点もある。
【0010】
上記の流体噴射装置は、前記キャップ部は、前記所定領域に当接する枠部を有し、前記流体誘導部は、前記枠部のうち前記角部に対応する位置に設けられていることを特徴とする。
流体噴射ヘッドに当接する部分は、流体が付着しやすい部分であると同時に、付着された流体が伝わって流れる部分でもある。本発明によれば、所定領域に当接する枠部のうち上記角部に対応する位置に流体誘導部が設けられているので、枠部に付着した流体及び枠部を伝わって流れてきた流体を確実に誘導することができる。これにより、角部における流体の飛散をより確実に抑制することができる。
【0011】
上記の流体噴射装置は、前記流体誘導部は、複数設けられており、複数の前記流体誘導部は、前記角部において他の部分よりも高密度で配置されていることを特徴とする。
本発明によれば、流体誘導部が複数設けられているので、より確実に流体を誘導することができる。加えて、角部において他の部分よりも高密度で流体誘導部が配置されているので、角部において流体の誘導をより確実に行わせることができる。
【0012】
上記の流体噴射装置は、前記角部は、複数設けられ、前記流体誘導部は、複数の前記角部について設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、角部が複数設けられ、流体誘導部が複数の角部について設けられていることとしたので、複数の角部を有するキャップ部を用いる場合であっても、流体の飛散を確実に抑制することができる。
【0013】
上記の流体噴射装置は、前記キャップ部は、前記枠部に囲まれた部分に流体吸収部を有し、前記流体誘導部は、前記流体吸収部に接続されていることを特徴とする。
本発明によれば、キャップ部が枠部に囲まれた部分に流体吸収部を有し、流体誘導部が流体吸収部に接続されていることとしたので、枠部に付着する流体を確実に流体吸収部に吸収させることができる。
【0014】
上記の流体噴射装置は、前記キャップ部は、前記所定領域と前記枠部とで囲まれる空間を吸引する吸引部を有し、前記流体誘導部は、前記吸引部に接続されていることを特徴とする。
本発明によれば、キャップ部が所定領域と枠部とで囲まれる空間を吸引する吸引部を有し、流体誘導部が吸引部に接続されていることとしたので、流体を吸引部へと誘導することができる。流体誘導部による誘導及び吸引部による吸引の2つの作用が流体に働くことになるため、一層確実に流体の飛散を防ぐことができる。
【0015】
上記の流体噴射装置は、前記流体誘導部は、溝部を有することを特徴とする。
本発明によれば、流体誘導部が溝部を有することとしたので、当該溝部を伝わらせることで流体を確実に誘導することができる。
【0016】
上記の流体噴射装置は、前記流体誘導部は、凸部を有することを特徴とする。
本発明によれば、流体誘導部が凸部を有することとしたので、当該凸部を伝わらせることで流体を確実に誘導することができる。
【0017】
上記の流体噴射装置は、前記流体誘導部が設けられた前記角部は、前記流体噴射ヘッドと前記キャップ部とを徐々に引き離す際に最後に引き離される角部であることを特徴とする。
流体噴射ヘッドとキャップ部とを徐々に引き離す際、流体の飛散は最後に引き離される部分で最も起こりやすくなる。本発明によれば、流体誘導部が設けられた角部を、流体噴射ヘッドとキャップ部とを徐々に引き離す際に最後に引き離す部分としたので、確実に流体の飛散を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの概略構成図。
【図2】ヘッド周辺の要部平面図。
【図3】キャップ部の斜視図。
【図4】キャップ部の断面図。
【図5】キャップ部の平面図。
【図6】プリンタの動作を示す動作図。
【図7】同、動作図。
【図8】同、動作図。
【図9】同、動作図。
【図10】本発明の第2実施形態に係るプリンタのキャップ部の構成を示す平面図。
【図11】本発明の第3実施形態に係るプリンタのキャップ部の構成を示す平面図。
【図12】本発明の第4実施形態に係るプリンタのキャップ部の構成を示す平面図。
【図13】本発明の第5実施形態に係るプリンタのキャップ部の構成を示す断面図。
【図14】本発明の第6実施形態に係るプリンタのキャップ部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るプリンタ1の構成を概略的に示す斜視図である。
同図に示すように、プリンタ1は、液体噴射ヘッドの一種であるヘッド2を搭載すると共に液体貯留部材の一種であるインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、ヘッド2の下方に配設され記録紙6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を記録紙6の紙幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、記録紙6を紙送り方向に搬送する紙送り機構8とを有する構成となっている。加えて、プリンタ1は、当該プリンタ1全体の動作を制御する制御装置(図示しない)を有している。上記紙幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記紙送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
【0020】
インクカートリッジ3としては、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものには限らず、プリンタ1の筐体側に装着してインク供給チューブを介してヘッド2に供給するタイプのものを採用してもよい。
【0021】
ガイドロッド9は、主走査方向に架設された支持部材である。キャリッジ4は、このガイドロッド9に支持された状態で取り付けられている。このキャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するようになっている。リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上の位置を検出する。この検出信号は、位置情報として制御部(図示せず)に送信されるようになっている。制御部は、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてヘッド2の走査位置を認識し、ヘッド2による記録動作(吐出動作)等を制御するようになっている。
【0022】
ヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、ヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、キャッピング機構11が設けられている。キャッピング機構11は、キャップ部60によってヘッド2のノズル開口形成面を封止し、インク溶媒の蒸発を防止する。このキャッピング機構11は、封止状態のノズル開口面に負圧を与えてインクを強制的に吸引排出するクリーニング動作等にも用いられる。
【0023】
図2は、ヘッド2の構成を概略的に示す断面図である。
同図に示すように、ヘッド2は、インク導入針13を立設する導入針ユニット14と、複数の圧電振動子15を有する振動子ユニット16と、インク流路が形成された流路ユニット17と、振動子ユニット16や流路ユニット17が固定されるヘッドケース18と、ガラスエポキシからなり圧電振動子15に駆動信号を供給するための回路基板28とを有する構成になっている。
【0024】
インク導入針13は、合成樹脂で成型された中空針状の部材である。インク導入針13の内部空間は、図示しないインクカートリッジやサブタンク等の液体貯留部材内のインクが導入される針流路20となっている。インク導入針13の尖端部分には、針流路20との間で連通する導入孔21が設けられている。インク導入針13が液体貯留部材の内部に挿入された状態において、この導入孔21を通じて液体貯留部材内のインクが針流路20内に導入されるようになっている。
【0025】
導入針ユニット14は、インク導入針13と同様に合成樹脂によって成型されている。
導入針ユニット14の内部には、インク導入針13に対応したインク導入路22が形成されている。インク導入路22の上流端部は、導入針の取り付け位置に向けて徐々に拡径された形状になっている。インク導入路22の開口部分には、インク内の異物を除去するフィルタ23が設けられている。針流路20の下側の開口とインク導入路22の上側の開口とが平面視で重なるようにインク導入針13が導入針ユニット14上に固定されており、導入針ユニット14のインク導入路22とインク導入針13の針流路20とがフィルタ23を介して連通するようになっている。
【0026】
振動子ユニット16は、圧電振動子15と、当該圧電振動子15が接合される固定板27と、上記回路基板28からの駆動信号を圧電振動子15に供給するフレキシブル基板29とを有している。圧電振動子15は、圧電体を電極で挟んで積層し、細長い櫛歯状に切り分けられた積層型の圧電振動子である。この圧電振動子15は、縦方向に伸縮可能な縦振動方式の圧電振動子として構成されている。各圧電振動子15は、固定端部が固定板27上に接合されており、自由端部が固定板27の先端縁よりも外側に突出した状態になっている。
【0027】
圧電振動子15の表面には、個別外部電極30と共通外部電極31とが設けられている。個別外部電極30は、圧電振動子15の先端面部と、圧電振動子15における積層方向の一側面である配線接続面(フレキシブル基板29が接続される面)とに亘って形成された電極であり、圧電振動子15内部の個別内部電極(図示せず)に電気的に接続されている。共通外部電極31は、圧電振動子15の基端面部と、圧電振動子15における積層方向の他側面である固定板取付面とに亘って形成された電極であり、圧電振動子15内部の共通内部電極(図示せず)に電気的に接続されている。
【0028】
これらの外部電極のうち、一方の個別外部電極30はフレキシブル基板29の個別端子に電気的に接続されており、他方の共通外部電極31はフレキシブル基板29の接地端子に電気的に接続されている。フレキシブル基板29からの駆動信号が個別外部電極30を介して圧電振動子15に供給され、個別外部電極30と共通外部電極31との電位差により圧電体が変形するようになっている。
【0029】
流路ユニット17は、ノズルプレート33と、流路形成基板34と、封止板35とを有しており、これらノズルプレート33、流路形成基板34及び封止板35が一体的に網けられた構成になっている。この流路ユニット17は、ノズルプレート33が流路形成基板34の一方の表面に配置され、封止板35がノズルプレート33とは反対側となる流路形成基板34の他方の表面に配置されている。
【0030】
ノズルプレート33は、ノズル領域33aに複数のノズル開口37を列状に開設したステンレス鋼製の薄い板材である。流路形成基板34は、例えばシリコンウェハーから作製された板状部材であり、共通インク室38、インク供給口39及び圧力室40からなる一連のインク流路となる流路基部を有している。圧力室40は、ノズル開口37の配列方向(ノズル開口列方向)に直交する方向が長手方向になっている。インク供給口39は、圧力室40と共通インク室38との間を連通する流路幅の狭い狭窄部(オリフィス)として形成されている。共通インク室38は、インク導入針13から導入されインク導入路22及びケース流路25を介して供給されるインクを一時的に貯留する室である。共通インク室38に貯留されたインクは、インク供給口39を介して各圧力室40に供給されるようになっている。
【0031】
封止板35は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等の絶縁性を有する可撓性フィルムから作製された弾性体膜46をステンレス鋼等の導電性を有する支持基板45にラミネート加工した二重構造の複合板材である。弾性体膜46側の面が流路形成基板34に、支持基板45側の面がヘッドケース18の底面に、それぞれ接合されるようになっている。この封止板35は、圧力室40の一方の開口面を封止してこの圧力室40の容積を変動させるためのダイヤフラム部47が形成されている。ダイヤフラム部47は、圧電振動子15の先端面を接合するための島部49が各圧力室40に対応して設けられている。島部49は、ノズル開口37の列設方向と直交する方向に細長いブロック状に形成されている。
【0032】
ヘッドケース18は、合成樹脂製の中空のブロック状部材であり、流路ユニット17に接合されている。ヘッドケース18の内部には、振動子ユニット16を収容する収容室53と、導入針ユニット14側からのインクを流路ユニット17側に供給するケース流路25とが設けられている。収容室53は、ヘッドケース18の高さ方向を貫通するように、流路ユニット取付面となるヘッドケース18の底面から導入針ユニット14や回路基板28が取り付けられる上面に亘って形成されている。収容室53の底面開口内には、封止板35のダイヤフラム部47が配置されている。ケース流路25は、インク導入穴50を介して上記共通インク室38に連通する状態になっている。ヘッドケース18の底面は、封止板35の支持基板45側の面に接着されている。
【0033】
このヘッドケース18には、パッキン24を介在させた状態で導入針ユニット14が取り付けられている。導入針ユニット14のインク導入路22は、このパッキン24を介してヘッドケースのケース流路25と連通されている。
また、ヘッドケース18の上面には、回路基板28が配置されている。この回路基板28は、接合部70においてフレキシブル基板29に接合されている。
【0034】
図3は、キャッピング機構11の一部であるキャップ部60の構成を示す斜視図である。図4は、図3におけるA−A断面に沿った図である。図5は、キャップ部60の構成を示す平面図である。
これらの図に示すように、キャップ部60は、ヘッド2のノズル形成領域の一部を覆うキャップ部材61と、キャップ部材61内に固定された吸収部材64とを備えた構成となっている。
【0035】
キャップ部材61は、例えばプラスチックなどの樹脂からなり、平面視矩形に形成されている。このため、キャップ部60は、平面視で4つの角部71を有する構成となっている。キャップ部材61は、底部62及び枠部63を有している。底部62は、平面視矩形に形成されており、ヘッド2に対向配置されるようになっている。枠部63は、底部62の周縁に設けられており、平面視で矩形枠状に形成されている。枠部63の上端63tには例えばエラストマなどから構成されるリップ部材63aが設けられている。当該リップ部材63aがヘッド2に当接することで、ヘッド2のノズル形成領域が密閉されるようになっている。
【0036】
枠部63の内面63bには、インク誘導部70が形成されている。本実施形態では、インク誘導部70は、枠部63の上端63tから底部62へ向けて直線状に形成された溝部である。このため、枠部63の上端63tに配置されるインクは、インク誘導部70によって底部62へと流れるように誘導されるようになっている。
【0037】
インク誘導部70は、枠部63の内面63bに複数形成されている。インク誘導部70は、4つの角部71のうち例えば図5中左上の角部71Aに対応する位置に設けられている。具体的には、枠部63の4側面のうち角部71Aに接続する2つの側面に設けられている。本実施形態では、角部71Aと対向する角部71Bに接続する2つの側面には、インク誘導部70は形成されていない。
【0038】
インク誘導部70は、角部71Aにおいて他の部分よりも高密度で配置されている。具体的には、角部71Aに近づくにつれて、溝部(インク誘導部70)のピッチが徐々に小さくなっている。各インク誘導部70は、枠部63を半円形に刳り貫いた溝として形成されている。勿論、インク誘導部70の形状はこの形状に限られず、他の形状(例えば枠部63を矩形に刳り貫いた形状など)であっても構わない。インク誘導部70は、平面視で一部がリップ部材63aに重なるように形成されている。具体的には、枠部63の刳り貫かれた部分が、リップ部材63aの下部まで食い込んだ状態になっている。
【0039】
底部62には、吸引用の開口部67が設けられている。開口部67は、例えば底部62の平面視中央部に配置されている。開口部67は、吸引管67aを介してポンプなどの吸引機構80に接続されている。吸引機構80は、吸引管80aを介して、例えば廃インク機構に接続されている。
【0040】
次に、上述の構成を有するプリンタ1の動作の一例を説明する。ここでは、吸引動作を含むメンテナンス部の動作を中心に説明する。
外部から印刷データが送信されると、制御装置は、ドットパターンに対応した噴射データに展開してヘッド2に送信する。そして、ヘッド2では、受信した噴射データに基づき、記録(印字・印刷)処理、すなわち記録紙に対するインク滴の噴射を実行する。
【0041】
記録処理の後、動作を継続すると判断した場合、予め設定されている時間が経過すると、定期メンテナンス処理を開始する。また、記録処理の後、動作を継続しないと判断した場合、プリンタ1の処理を終了する。以下、動作を継続すると判断した場合について、説明する。
【0042】
定期メンテナンス処理が開始されると、ヘッド2をメンテナンス位置まで下降させ、ヘッド2とキャップ部60のリップ部材63aとが対向するように、キャップ部60にヘッド2を近接させる。この状態で、図6に示すように、キャップ部60のリップ部材63aをヘッド2に当接させる。これにより、キャップ部60とヘッド2との間には密閉された空間Kが形成され、キャップ部60によってノズル領域33aが覆われた状態になる。
【0043】
続いて、キャップ部60をヘッド2に沿って移動させる。キャップ部60の移動と同時に吸引機構80を駆動させ、空間Kを負圧状態とし、これによってヘッド2の内部からインクを吸引する。空間Kを負圧状態にすることで、図7に示すように、ヘッド2内のインクDが排出される。排出されたインクDは、吸収部材64によって吸収されると共に、開口部67に吸い寄せられる。
【0044】
吸引動作によって吸い寄せられたインクDは気泡の状態になっていることがあり、この場合には当該気泡状態のインクDが収容されることになる。例えば図7に示すように、気泡状態のインクDの一部は、例えばリップ部材63aとヘッド2とが当接した際の当接面及びその近傍の部分90(ヘッド2との近接部分)に付着する場合がある。
【0045】
その後、吸引機構80を逆駆動することによって、キャップ部60とヘッド2との間に形成されている負圧の空間Kを大気開放する。大気開放の後、ヘッド2を上昇させてキャップ部60とヘッド2とを引き離す。本実施形態では、キャップ部60に対してヘッド2を傾けながら引き離すようにする。
【0046】
具体的には、まず図8に示すように、キャップ部60のうち、インク誘導部70が形成されていない方の角部71(71B)からヘッド2を引き離していく。図8は断面図であるため、ヘッド2の引き離し方向がキャップ部60の辺に沿って図中右辺側から左辺側に引き離す場合と区別がつかないように示されているが、実際には、図5の破線矢印に示す方向に引き離している。ヘッド2を角部71Bから引き離していくと、上端63tに付着したインクQが、ヘッド2を引き離す際の表面張力により当該上端63tを伝わって角部71A側へ流れる。このインクQは、インク誘導部70を伝わって吸収部材64に吸収される。
【0047】
更にヘッド2を引き離していくと、枠部63のうち角部71A側の上端63tでは、付着したインクQの一部がインク誘導部70を伝わって吸収部材64へと流れ、当該吸収部材64によって吸収される。残りのインクQは、ヘッド2との間の表面張力によって角部71Aへと流れていき、一定量のインクQが角部71Aに溜まった状態となる。
【0048】
角部71Aに溜まったインクQは、図9に示すように、枠部63に高ピッチで配置されているインク誘導部70を伝わって吸収部材64へと流れていく。このため、角部71Aの上端63tにはほとんどインクQが残らない状態となる。この状態から、角部71Aにおいてヘッド2とリップ部材63aを引き離しても、インクQの飛散がほとんど発生すること無く、ヘッド2とリップ部材63aとが完全に引き離されることになる。その後、制御装置は、ヘッド2を用いて記録紙に対する記録動作を再開する。
【0049】
キャップ部60のヘッド2から引き離す際、キャップ部60の4つの角部71は、最も流体の飛散が起こりやすい部分となる。例えば、本実施形態のようにキャップ部60に対してヘッド2を傾けるように両者を引き離す場合、表面張力によって最後に離れる部分(例えば角部71A)にインクQが流れ込み、インクQが溜まった状態で引き離されることとなる。このため、インクQが飛散しやすくなる。
【0050】
これに対して、本発明によれば、キャップ部60の角部71Aに付着したインクQを、インク誘導部70によって吸収部材64側へと誘導することができる。このため、インクQの飛散が起こりやすいキャップ部60の角部71において、インクQが溜まった状態を解消することができる。このため、ヘッド2とキャップ部60との引き離し時にインクQが飛散するのを効果的に防ぐことができる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を説明する。
本実施形態では、キャップ部の一部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の部分については第1実施形態と同一の構成となっている。以下、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すこととし、相違点となる部分を中心に説明する。
【0052】
図10は、本実施形態に係るプリンタ101のキャップ部160の構成を示す平面図である。
同図に示すように、キャップ部160の枠部63には、例えば第1実施形態と同一の位置にインク誘導部70が形成されている。インク誘導部70の構成は、例えば第1実施形態と同様に溝状の構成とすることができる。キャップ部160の底部62には、吸引機構(第1実施形態の符号80に相当)に接続された開口部(吸引部)67が形成されている。
【0053】
加えて、本実施形態では、キャップ部160の底部62に、インク誘導部70と開口部67とを接続する接続溝168が形成されている。接続溝168は、各インク誘導部70についてそれぞれ設けられている。各インク誘導部70を介して誘導されたインクは、接続溝168によって更に開口部67へと誘導されることとなる。したがって、接続溝168は、インク誘導部70と共に、本発明の流体誘導部を構成する。
【0054】
このような構成によれば、インク誘導部70が接続溝168を介して開口部67に接続されていることとしたので、インクを開口部67へと誘導することができる。インク誘導部70と接続溝169とによるインクの誘導作用及び開口部67を介して行われる吸引作用の2つの作用がインクに働くことになるため、一層確実にインクを誘導させることができる。これにより、インクの飛散をより効果的に防ぐことができる。
【0055】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を説明する。
本実施形態では、キャップ部の一部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の部分については第1実施形態と同一の構成となっている。以下、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すこととし、相違点となる部分を中心に説明する。
【0056】
図11は、本実施形態に係るプリンタ201のキャップ部260の構成を示す平面図である。
同図に示すように、キャップ部260の枠部63の内面63bには、ほぼ全面に亘って溝状のインク誘導部70が形成されている。インク誘導部70は、キャップ部260の4つの角部71A、71B、71C及び71Dについて設けられており、当該4つの角部71A、71B、71C及び71Dにおいて他の部分よりも高密度となるように配置されている。
【0057】
このように、本実施形態によれば、インク誘導部70が4つの角部71A、71B、71C及び71Dについて設けられていることとしたので、インクの飛散を確実に抑制することができる。また、ヘッド2(第1実施形態参照)とキャップ部260との間を徐々に引き離していく場合、これら4つの角部71A、71B、71C及び71Dのどの部分を最後に引き離すようにしても良いため、メンテナンスの制御性を向上させることができる。
【0058】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態を説明する。
本実施形態では、キャップ部の一部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の部分については第1実施形態と同一の構成となっている。以下、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すこととし、相違点となる部分を中心に説明する。
【0059】
図12は、本実施形態に係るプリンタ301のキャップ部360の構成を示す平面図である。
同図に示すように、枠部63の内面63bに溝状のインク誘導部70が複数形成されている。このインク誘導部70に加えて、キャップ部360の平面視角部71Aでは、枠部63の角部においてもインク誘導部370が形成されている。インク誘導部370の形状としては、例えば枠部63の内側の角を溝状に刳り貫く計上とすることができる。本実施形態のように、枠部63の角部にインク誘導部370を設ける構成としても、インクの飛散を効果的に抑制することができる。
【0060】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態を説明する。
本実施形態では、キャップ部の一部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の部分については第1実施形態と同一の構成となっている。以下、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すこととし、相違点となる部分を中心に説明する。
【0061】
図13は、本実施形態に係るプリンタ401のキャップ部460の構成を示す断面図である。
同図に示すように、枠部63の内面63bには複数のインク誘導部470が形成されている。これらのインク誘導部470は、第1実施形態と同様、例えば溝状に形成されており、枠部63の上端63tから底部62にかけて徐々に幅(図中左右方向の寸法)が小さくなるように形成されている。
【0062】
このように、インク誘導部470の幅を徐々に小さくすることで、上端63tから底部62にインクを流れやすくすることができるので、上端63tに付着したインクを効率的に誘導することができる。これにより、インクの飛散を一層効果的に抑制することができる。
【0063】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態を説明する。
本実施形態では、キャップ部の一部の構成が第1実施形態とは異なっており、他の部分については第1実施形態と同一の構成となっている。以下、第1実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付すこととし、相違点となる部分を中心に説明する。
【0064】
図14は、本実施形態に係るキャップ部560の構成を示す断面図である。
同図に示すように、キャップ部560の枠部63の内面63bには、溝状のインク誘導部570が複数形成されている。インク誘導部570の平面視での配置については、第1実施形態と同様である。インク誘導部570は、枠部63の上端63tから吸収部材64に掛かる部分まで形成されている。
【0065】
本実施形態のように、インク誘導部570が底部62に到達していなくても、吸収部材64に掛かるように形成されているため、枠部63の上端63tに付着したインクを吸収部材64へと誘導することができる。これにより、インクの飛散を確実に抑制することができる。
【0066】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記各実施形態では、流体誘導部(インク誘導部及び接続溝)の構成を、底部62又は枠部63を刳り貫いた形状の溝部であるとして説明したが、これに限られることは無く、例えば底部62又は枠部63に対して凸部である構成としても構わない。流体誘導部が凸部であっても、インクを伝わらせることができるため、インクを誘導する効果を得ることができる。
【0067】
また、上記各実施形態では、ヘッド2とキャップ部60とのキャッピングを解除する際に、ヘッド2を移動させることで解除する動作を説明したが、これに限られることは無く、例えばキャップ部60側を移動させることでキャッピングを解除する動作を行うようにしても構わない。
【符号の説明】
【0068】
1…プリンタ(流体噴射装置) 2…ヘッド(噴射ヘッド) 33a…ノズル領域(所定領域) 60…キャップ部 70…流体誘導部 71(71A〜71D)…角部 90…部分(近接部分) Q…インク(流体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を噴射する流体噴射ヘッドと、
平面視で角部を有し、前記流体噴射ヘッドの所定領域を覆うキャップ部と、
前記角部に設けられ、前記流体噴射ヘッドとの近接部分に付着した前記流体を誘導する流体誘導部と
を備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記キャップ部は、前記所定領域に当接する枠部を有し、
前記流体誘導部は、前記枠部のうち前記角部に対応する位置に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体誘導部は、複数設けられており、
複数の前記流体誘導部は、前記角部において他の部分よりも高密度で配置されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記角部は、複数設けられ、
前記流体誘導部は、複数の前記角部について設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記キャップ部は、前記枠部に囲まれた部分に流体吸収部を有し、
前記流体誘導部は、前記流体吸収部に接続されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記キャップ部は、前記所定領域と前記枠部とで囲まれる空間を吸引する吸引部を有し、
前記流体誘導部は、前記吸引部に接続されている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記流体誘導部は、溝部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記流体誘導部は、凸部を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記流体誘導部が設けられた前記角部は、前記流体噴射ヘッドと前記キャップ部とを徐々に引き離す際に最後に引き離される部分である
ことを特徴とする請求項1から請求項8のうちいずれか一項に記載の流体噴射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate