説明

流体噴射装置

流体噴射装置が、複数の流体チャネル160を有する基板120、120’と、基板によって支持されると共に、流体チャネルそれぞれの長さをそれぞれ延びる複数の可撓性膜部分132を含む可撓性膜130と、可撓性膜部分それぞれの第1の部分134上にそれぞれ設けられると共に、可撓性膜部分それぞれの第1の部分を流体チャネルのそれぞれに対して撓ませるように構成されている複数のアクチュエータ140と、可撓性膜上に設けられると共に可撓性膜部分それぞれの第2の部分136を支持する補強部材150とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、本願と同日付けで出願され、代理人整理番号が200602422であり、本発明の譲受人に譲渡され、参照によって本明細書に援用される米国特許出願第11/520,876号に関し、また、本願と同日付けで出願され、代理人整理番号が200602825であり、本発明の譲受人に譲渡され、参照によって本明細書に援用される米国特許出願第11/520,877号に関する。
【背景技術】
【0002】
流体噴射システムの一実施の形態としてのインクジェットプリントシステムは、プリントヘッドと、プリントヘッドに液体インクを供給するインク供給源と、プリントヘッドを制御する電子コントローラとを含み得る。流体噴射装置の一実施の形態としてのプリントヘッドは、複数のノズル又はオリフィスを通して、紙のシート等のプリント媒体に向かってインク滴を噴射することによってプリント媒体にプリントする。通常、オリフィスは1つ又は複数の列すなわちアレイで配置され、このことによって、プリントヘッド及びプリント媒体が互いに対して移動しながら、インクが適切に順序付けてオリフィスから噴射されて、文字又は他の画像がプリント媒体上にプリントされる。
【0003】
1つのタイプのプリントヘッドとして、ピエゾ作動式プリントヘッドが挙げられる。ピエゾ作動式プリントヘッドは、流体チャンバを画定する基板と、流体チャンバ上に基板によって支持される可撓性膜と、可撓性膜上に設けられるアクチュエータとを含む。1つの構成では、アクチュエータは、電圧が印加されると変形する圧電材料を含む。したがって、圧電材料が変形すると、可撓性膜が撓むことによって、流体が流体チャンバから、当該流体チャンバと連通しているオリフィスを通って噴射される。そのようなプリントヘッドの作製及び動作は種々の課題を呈する。これらの理由及び他の理由から、本発明が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一態様は流体噴射装置を提供する。流体噴射装置は、複数の流体チャネルを有する基板と、基板によって支持されると共に、流体チャネルそれぞれの長さをそれぞれ延びる複数の可撓性膜部分を含む可撓性膜と、可撓性膜部分それぞれの第1の部分上にそれぞれ設けられると共に、可撓性膜部分それぞれの第1の部分を流体チャネルのそれぞれに対して撓ませるようになっている複数のアクチュエータと、可撓性膜上に設けられると共に可撓性膜部分それぞれの第2の部分を支持する補強部材とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本発明によるインクジェットプリントシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明によるプリントヘッドアセンブリの一部の一実施形態を示す概略図である。
【図3】図2のプリントヘッドアセンブリの一部の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【図4】本発明によるプリントヘッドアセンブリの一部の一実施形態を示す概略的な分解斜視図である。
【図5】本発明によるプリントヘッドアセンブリの一部の一実施形態を示す概略的な図である。
【図6】図5のプリントヘッドアセンブリの一部の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【図7A】本発明によるプリントヘッドアセンブリの動作の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【図7B】本発明によるプリントヘッドアセンブリの動作の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【図7C】本発明によるプリントヘッドアセンブリの動作の一実施形態を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を成し、本発明を実施することができる特定の実施形態の例として示される添付の図面を参照する。これに関して、方向を示す用語、例えば、「上」、「下」、「前」、「後」、「先端」、「後端」等は、説明されている図(複数可)の向きに関して用いられる。本発明の実施形態の構成要素は複数の異なる向きで位置決めすることができるため、方向を示す用語は、例示のために用いられ、決して限定するものではない。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態を使用し、構造的又は論理的な変更を行ってもよいことを理解されたい。したがって、以下の詳細な説明は、限定するものとして捉えられるべきではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって規定される。
【0007】
図1は、本発明によるインクジェットプリントシステム10の一実施形態を示す。インクジェットプリントシステム10は、プリントヘッドアセンブリ12等の流体噴射装置と、インク供給アセンブリ14等の流体供給源とを含む、流体噴射システムの一実施形態を構成する。図示の実施形態では、インクジェットプリントシステム10はまた、取り付けアセンブリ16と、媒体搬送アセンブリ18と、電子コントローラ20とを含む。
【0008】
流体噴射装置の一実施形態としてのプリントヘッドアセンブリ12は、本発明の一実施形態に従って形成され、1つ又は複数のカラーインクを含むインク滴を、複数のオリフィス又はノズル13を通して噴射する。以下の説明はプリントヘッドアセンブリ12からのインクの噴射に言及するが、他の液体、流体又は流動性材料をプリントヘッドアセンブリ12から噴射してもよいことが理解される。
【0009】
一実施形態では、滴は、プリント媒体19の媒体上にプリントするためにプリント媒体19等の方へ向けられる。通常、ノズル13は一実施形態では1つ又は複数の列又はアレイで配置され、このことによって、プリントヘッドアセンブリ12及びプリント媒体19が互いに対して移動しながらインクが適切に順序付けてノズル13から噴射されて、文字、記号及び/又は他の図形若しくは画像がプリント媒体19上にプリントされる。
【0010】
プリント媒体19には、例えば紙、カードストック、封筒、ラベル、透明フィルム、厚紙、剛性パネル等が挙げられる。一実施形態では、プリント媒体19は、一続きの形態すなわち一続きのウェブのプリント媒体19である。したがって、プリント媒体19は、プリントされていない紙の一続きのロールを含み得る。
【0011】
流体供給源の一実施形態としてのインク供給アセンブリ14は、プリントヘッドアセンブリ12にインクを供給し、インクを貯蔵するリザーバ15を含む。したがって、インクはリザーバ15からプリントヘッドアセンブリ12へ流れる。一実施形態では、インク供給アセンブリ14及びプリントヘッドアセンブリ12は再循環インク送出システムを形成する。したがって、インクはプリントヘッドアセンブリ12からリザーバ15へ流れて戻る。一実施形態では、プリントヘッドアセンブリ12及びインク供給アセンブリ14は、インクジェットカートリッジ又は流体ジェットカートリッジ、すなわちペン内に共に収容されている。別の実施形態では、インク供給アセンブリ14は、プリントヘッドアセンブリ12から分離されており、供給管(図示せず)等のインタフェース接続を通してプリントヘッドアセンブリ12にインクを供給する。
【0012】
取り付けアセンブリ16は、媒体搬送アセンブリ18に対してプリントヘッドアセンブリ12を位置決めし、媒体搬送アセンブリ18は、プリントヘッドアセンブリ12に対してプリント媒体19を位置決めする。したがって、プリントヘッドアセンブリ12がインク滴を堆積させるプリントゾーン17が、プリントヘッドアセンブリ12とプリント媒体19との間の領域においてノズル13に隣接して画定される。プリント媒体19は、プリント中、媒体搬送アセンブリ18によってプリントゾーン17を通って前進する。
【0013】
一実施形態では、プリントヘッドアセンブリ12は走査型プリントヘッドアセンブリであり、取り付けアセンブリ16は、プリント媒体19へのスワスのプリント中、媒体搬送アセンブリ18及びプリント媒体19に対してプリントヘッドアセンブリ12を移動させる。別の実施形態では、プリントヘッドアセンブリ12は非走査型プリントヘッドアセンブリであり、取り付けアセンブリ16は、プリント媒体19へのスワスのプリント中に媒体搬送アセンブリ18がプリント媒体19を所定位置を越えて前進させるときに、プリントヘッドアセンブリ12を媒体搬送アセンブリ18に対してこの所定位置に固定する。
【0014】
電子コントローラ20は、プリントヘッドアセンブリ12、取り付けアセンブリ16、及び媒体搬送アセンブリ18と通信を行う。電子コントローラ20は、コンピュータ等のホストシステムからデータ21を受信し、データ21を一時的に記憶するメモリを含む。通常、データ21は、電子的経路、赤外線経路、光学的経路又は他の情報伝達経路に沿ってインクジェットプリントシステム10に送信される。データ21は、例えばプリントする文書及び/又はファイルを表す。したがって、データ21は、インクジェットプリントシステム10のプリントジョブを形成し、1つ又は複数のプリントジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータを含む。
【0015】
一実施形態では、電子コントローラ20は、インク滴をノズル13から噴射するためのタイミング制御を含む、プリントヘッドアセンブリ12の制御を提供する。したがって、電子コントローラ20は、プリント媒体19上に文字、記号、及び/又は他の図形若しくは画像を形成する、噴射されるインク滴のパターンを画定する。タイミング制御、したがって噴射されるインク滴のパターンは、プリントジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータによって決定される。一実施形態では、電子コントローラ20の一部を形成する論理及び駆動回路がプリントヘッドアセンブリ12に位置する。別の実施形態では、電子コントローラ20の一部を形成する論理及び駆動回路はプリントヘッドアセンブリ12から離れて位置する。
【0016】
図2〜図4は、プリントヘッドアセンブリ12の一部の一実施形態を示す。流体噴射装置の一実施形態としてのプリントヘッドアセンブリ12は、基板120と、可撓性膜130と、アクチュエータ140と、補強部材150とを含む。基板120、可撓性膜130、アクチュエータ140、及び補強部材150は、以下で説明するように、プリントヘッドアセンブリ12から流体滴を噴射するように配置されると共に相互作用する。
【0017】
一実施形態では、基板120には複数の流体チャネル160が画定されている。流体チャネル160は流体の供給源と連通し、一実施形態では、流体入口162と、流体プレナム164と、流体噴射チャンバ166と、流体出口168とをそれぞれ含む。したがって、流体プレナム164は流体入口162と連通し、流体噴射チャンバ166は流体プレナム164と連通し、流体出口168は流体噴射チャンバ166と連通する。一実施形態では、流体入口162、流体プレナム164、流体噴射チャンバ166、及び流体出口168は同軸である。一実施形態では、流体チャネル160は実質的に矩形のプロファイルを有し、流体プレナム164及び流体噴射チャンバ166がそれぞれ平行な側壁によって形成されている。
【0018】
一実施形態では、基板120はシリコン基板であり、流体チャネル160はフォトリソグラフィ技法及びエッチング技法を用いて基板120に形成される。
【0019】
一実施形態では、流体の供給源は、流体供給通路170を介して各流体チャネル160の流体入口162に分散しており、これらと連通している。一実施形態では、流体供給通路170は、各流体チャネル160の流体入口162と連通している単一すなわち共通の流体供給通路である。したがって、流体は、流体供給通路170から流体入口162を通ってプレナム164に分散し、また流体プレナム164を通って各流体チャネル160の流体噴射チャンバ166に分散する。一実施形態では、各流体チャネル160の流体出口168は、プリントヘッドアセンブリ12の流体ノズル又はオリフィスを形成し、それによって、以下で説明するように、流体が流体噴射チャンバ166から流体出口/ノズル168を通って噴射されるようにする。
【0020】
一実施形態では、流体チャネル160はそれぞれ狭窄部165を含む。一実施形態では、狭窄部165は、各流体チャネル160を流体プレナム164と流体噴射チャンバ166との間で狭くすることによって形成される。より詳細には、一実施形態では、狭窄部165における流体チャネル160の幅は、流体プレナム164及び流体噴射チャンバ166に沿う流体チャネル160の幅よりも小さい。したがって、一実施形態では、狭窄部165は、各流体チャネル160において流体プレナム164と流体噴射チャンバ166との間に首部を形成する。
【0021】
一実施形態では、各流体チャネル160の狭窄部165は、各流体チャネル160内に突出する1対の対向する突出部169によって形成される。一実施形態では、突出部169の高さは流体チャネル160の深さと実質的に等しい。よって、一実施形態では、以下で説明するように、突出部169、したがって狭窄部165は可撓性膜130と接触し、流体プレナム164と流体噴射チャンバ166との間で可撓性膜130を支持する。突出部169の形状及びサイズは、例えば、図示されているもののような弓形形状から、台形形状、又は可撓性膜130を機械的に十分に支持する他の水力学的に好ましい形状までさまざまであり得る。
【0022】
一実施形態では、狭窄部165の幅、したがって突出部169の幅は、流体チャネル160から噴射される滴の滴速度及び滴サイズ等の特性に実質的に影響を与えないように選択される。例示的な一実施形態では、流体チャネル160の深さは約90ミクロンであり、流体チャネル160の幅は約300ミクロン〜約600ミクロンの範囲内にあり、(流体チャネル160の側壁に対して垂直に測定した)各突出部169の幅は約100ミクロンである。
【0023】
一実施形態では、流体チャネル160はそれぞれ収束部167を含む。一実施形態では、収束部167は流体噴射チャンバ166と流体出口168との間に設けられている。したがって、収束部167は、流体を、流体噴射チャンバ166から流体出口168へ向ける。したがって収束部167は、流体すなわち流れを収束させる構造を形成する。プリントヘッドアセンブリ12の動作中、収束部167は、流体チャネル160が直角のみによって形成された場合に生成されるであろう可能性のある乱流を低減する。加えて、収束部167は、流体出口168内への空気の取り込みを防止する。
【0024】
一実施形態では、図2に示すように、収束部167は、それぞれ流体噴射チャンバ166の側壁から約45の角度で延びて流体出口168に向かって収束する2つの面によって形成される。別の実施形態では、図4に示すように、収束部167は、流体噴射チャンバ166の側壁から流体出口168に向かって延びる弓状のセクションによって形成される。
【0025】
図2〜図4の実施形態に示すように、可撓性膜130は、基板120によって支持されると共に流体チャネル160上に延びる。一実施形態では、可撓性膜130は、複数の流体チャネル160上に延びる単一の膜である。一実施形態では、可撓性膜130は流体チャネル160の長さを延びる。したがって、可撓性膜130は、各流体チャネル160の流体入口162から流体出口168まで延びる。
【0026】
一実施形態では、可撓性膜130はそれぞれ1つの流体チャネル160上に画定されている可撓性膜部分132を含む。一実施形態では、各可撓性膜部分132は、それぞれの流体チャネル160の長さを延びる。したがって、各可撓性膜部分132は、流体噴射チャンバ166上に延びる第1の部分134と、流体プレナム164上に延びる第2の部分136とを含む。この場合、可撓性膜部分132の第1の部分134は流体チャネル160の狭窄部165から第1の方向に延び、可撓性膜部分132の第2の部分136は、流体チャネル160の狭窄部165から第1の方向とは反対の第2の方向へ延びる。
【0027】
一実施形態では、それぞれの流体チャネル160の長さをそれぞれ延びる可撓性膜部分132の場合、可撓性膜部分132はそれぞれ、流体出口168に隣接する第1の位置及び流体入口162と流体出口168との間又はこれらの中間の第2の位置においてそれぞれの流体チャネル160に沿って支持される。例えば、上述したように、可撓性膜部分132はそれぞれ、流体入口162と流体出口168との間で狭窄部165によって支持されている。より詳細には、可撓性膜部分132は、それぞれの流体チャネル160の流体プレナム164と流体噴射チャンバ166との間に設けられている狭窄部165によってそれぞれ支持されている。したがって、狭窄部165は、流体プレナム164と流体噴射チャンバ166との間で可撓性膜部分132を支持する。
【0028】
一実施形態では、可撓性膜130は、例えば窒化ケイ素若しくは炭化ケイ素の可撓性薄膜、又はケイ素の可撓性薄層等、可撓性材料から形成される。例示的な一実施形態では、可撓性膜130はガラスから形成される。一実施形態では、可撓性膜130は、陽極接合又は同様の技法によって基板120に取り付けられる。
【0029】
図2〜図4の実施形態に示すように、アクチュエータ140は可撓性膜130上に設けられる。より詳細には、各アクチュエータ140はそれぞれの可撓性膜部分132の第1の部分134上に設けられる。一実施形態では、アクチュエータ140は、可撓性膜130の、流体チャネル160とは反対の側上に設けられるか又は形成される。したがって、アクチュエータ140は、流体チャネル160内に収容されている流体と直接接触していない。したがって、腐食又は電気的短絡等の、流体がアクチュエータ140と接触して影響を与える可能性が低減する。
【0030】
一実施形態では、アクチュエータ140は、電気信号に応答して形状を変える(例えば拡張及び/又は収縮する)圧電材料を含む。したがって、電気信号に応答して、アクチュエータ140はそれぞれの可撓性膜部分132に力を加え、この力によって、可撓性膜部分132、より詳細には可撓性膜部分132の第1の部分134が撓む。圧電材料の例としては、酸化亜鉛、又は圧電セラミック材料、例えばチタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)若しくはチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)が挙げられる。アクチュエータ140は、静電気アクチュエータ、静磁気アクチュエータ、及び/又は熱膨張アクチュエータを含む、可撓性膜部分132の移動又は撓みを引き起こす任意のタイプの装置を含み得ることが理解される。
【0031】
一実施形態では、図4に示すように、アクチュエータ140は単一すなわち共通の圧電材料から形成される。より詳細には、単一すなわち共通の圧電材料は可撓性膜130上に設けられ、圧電材料の選択的な部分を除去することによって圧電材料の残りの部分がアクチュエータ140を画定するようにする。
【0032】
一実施形態では、以下で説明するように、アクチュエータ140は、可撓性膜部分132、より詳細には可撓性膜部分132の第1の部分134を撓ませる。したがって、可撓性膜130の可撓性膜部分132が撓むと、流体滴がそれぞれの流体出口168から噴射される。
【0033】
図2及び図3の実施形態に示すように、補強部材150が可撓性膜130上に設けられると共に流体チャネル160上に延びる。より詳細には、補強部材150は可撓性膜部分132の第2の部分136上に設けられ、流体チャネル160の流体プレナム164上に延びる。一実施形態では、補強部材150は、可撓性膜130の、流体チャネル160とは反対の側上に設けられる。したがって、補強部材150は、可撓性膜部分132の第2の部分136を流体チャネル160の流体プレナム164上で支持する。より詳細には、補強部材150は、可撓性膜部分132の第2の部分136を支持するか又は強化することによって、プリントヘッドアセンブリ12の動作中に、撓性膜130の第2の部分136の撓み又は振動が低減されるか又は防止される。
【0034】
一実施形態では、補強部材150は、可撓性膜130と、流体チャネル160の流体入口162とを越えて延びる。したがって、補強部材150は流体供給通路170にわたって延びる。よって、一実施形態では、補強部材150は、流体供給通路170の一部若しくは境界を形成するか又は画定する。一実施形態では、補強部材150は、複数の可撓性膜部分132の第2の部分136を支持する単一の部材である。
【0035】
図5及び図6は、プリントヘッドアセンブリ12の別の実施形態を示す。図5及び図6の実施形態では、プリントヘッドアセンブリ12’は、基板120’と、基板120’の両側に設けられている可撓性膜130と、可撓性膜130上に設けられているアクチュエータ140と、可撓性膜130上に設けられている補強部材150と、支持構造体180内に画定されている流体供給通路170とを含む。
【0036】
基板120’は、上記で示し説明したように、第1の側及び第2の側に形成され、且つ流体供給通路170と連通する流体チャネル160と同様の流体チャネルを含む。加えて、可撓性膜130は、可撓性膜130及び基板120を参照して上記で示し説明したものと同様の、基板120’の第1の側及び第2の側上に設けられると共にこれらによって支持される。さらに、アクチュエータ140は、上記で示し説明したように可撓性膜130上に設けられ、補強部材150は、上記で示し説明したように可撓性膜130上に設けられる。
【0037】
一実施形態では、基板120’、可撓性膜130、アクチュエータ140及び補強部材150は、流体供給通路170と連通し、一実施形態では流体供給通路170をさらに画定するように、補強部材150において支持構造体180と接合される。よって、補強部材150は、支持構造体180への取り付けを容易にする。したがって、プリントヘッドアセンブリ12’の構成は、流体を噴射する2列の流体ノズルすなわちオリフィスを提供する。
【0038】
図7A〜図7Cは、プリントヘッドアセンブリ12(プリントヘッドアセンブリ12’を含む)の動作の一実施形態を示す。一実施形態では、図7Aに示すように、プリントヘッドアセンブリ12を動作させるために、可撓性膜130は最初に撓んだ状態にある。より詳細には、可撓性膜130の第1の部分134は流体チャネル160に向かって内方へ撓んでいる。一実施形態では、上述したように、アクチュエータ140への電気信号の印加によって可撓性膜130が撓む。一実施形態では、上述したように、可撓性膜130の第2の部分136上に設けられている補強部材150を用いて、可撓性膜130の第2の部分136の撓みが、プリントヘッドアセンブリ12の動作中に低減するか又は防止される。
【0039】
次に、図7Bの実施形態に示すように、プリントヘッドアセンブリ12の動作は可撓性膜130が撓んでいない状態を確立することを含む。一実施形態では、アクチュエータ140への電気信号の印加を中断することによって可撓性膜130の撓んでいない状態がもたらされる。一実施形態では、可撓性膜130が撓んでいない状態に戻ると、負圧パルス(すなわち真空)が流体噴射チャンバ166内に生成される。したがって、負圧波が流体入口162に達すると、負圧波が流体チャネル160を通って伝播するとき、流体が流体入口162から流体チャネル160内へ引き込まれる。この場合、プリントヘッドアセンブリ12は発射前充填モードで動作する。一実施形態では、負圧波は、流体入口162から反射されることによって流体チャネル160内に反射正圧波を生成する。
【0040】
次いで、図7Cの実施形態に示すように、プリントヘッドアセンブリ12の動作は、可撓性膜130の第2の撓み状態を確立することによって続く。より詳細には、可撓性膜130の第1の部分134は流体チャネル160に向かって内方へ撓んでいる。一実施形態では、上述したように、アクチュエータ140へ電気信号を印加することによって可撓性膜130が撓んだ状態をもたらす。可撓性膜130が撓んだ状態をとるか又は確立するため、流体噴射チャンバ166内で正圧パルスが生成される。したがって、正圧波が流体チャネル160を通って伝播する。
【0041】
一実施形態では、正圧パルスのタイミングは、正圧波が、(可撓性膜が非撓み状態に戻ったときに開始する)先に生成された反射正圧波と一体化され、流体噴射チャンバ166内で一体化された正圧波を生じるようなものである。したがって、一体化された正圧波は流体噴射チャンバ166を通って伝播し、このことによって、一体化された正圧波が流体出口168に達すると流体滴が流体出口168から噴射される。図7A及び図7Cの実施形態に示される可撓性膜130の撓みの程度は、本発明を分かりやすくするために誇張されていることが理解される。
【0042】
補強部材150を可撓性膜部分132の第2の部分136上に設けることによって、補強部材150は、可撓性膜130が流体プレナム164上で振動するのを防止し、流体入口162の流体供給通路170への境界面で正反射が起こることを確実にする。さらに、補強部材150を可撓性膜部分132の第2の部分136上に設けることによって、負圧パルス又は反射正圧パルスを弱めるコンプライアンスが存在しないことも確実にする。
【0043】
可撓性膜130が流体プレナム164上で振動することを防止することに加えて、補強部材150はまた、基板120、可撓性膜130及びアクチュエータ140を含むサブアセンブリと、サブアセンブリの支持構造体180(図5及び図6)とが共に接合されるときに、これらの異なる材料(したがって熱膨張係数が異なる)に対応する中間材料を提供する。例えば、上述したように、基板120及び可撓性膜130はシリコン及び/又はガラスから形成されてもよく、支持構造体180はプラスチックから形成されてもよい。したがって、例えば温度負荷下で結合することによってサブアセンブリ及び支持構造体を共に接合する場合、支持構造体のプラスチックは、基板120及び可撓性膜130のシリコン及び/又はガラスとは異なって変形し、それによって、シリコン及び/又はガラス内で応力を誘起し得る。したがって、一実施形態では、基板120並びに可撓性膜130のシリコン及び/又はガラスと、支持構造体のプラスチックとの間に配置される補強部材150は、この応力を吸収するのに役立つ。
【0044】
本明細書において示し説明するように、流体チャネル160の構造は、低い流体抵抗及び比較的均等な流体流を生成するため、流体流は、流体の通常の流れを妨げる可能性のある水圧反射を生じない。したがって、より高い動作周波数及び滴噴射周波数が可能になる。加えて、本明細書において示し説明するように、流体チャネル160の構造は、隣接する流体チャネル間のクロストークを低減する。さらに、本明細書において示し説明するように、例えば狭窄部165による可撓性膜130の支持は、特定の支持されていないセクションに加わる応力を低減するため、膜の亀裂によって生じる故障を低減する。したがって、プリントヘッドアセンブリ12の生産収率が高まる。加えて、本明細書において示し説明するように、プリントヘッドアセンブリ12の作製は、動作中にピエゾ駆動電圧が低下することを可能にする。
【0045】
特定の実施形態を本明細書において示し説明したが、当業者は、さまざまな代替的及び/又は均等な実施態様を、本発明の範囲から逸脱することなく、示し説明した特定の実施形態の代わりに用いてもよいことを理解するであろう。本願は、本明細書において説明されている特定の実施形態のいかなる適合形態又は変形形態も包含することが意図される。したがって、本発明は、特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の流体チャネル(160)を有する基板(120、120’)と、
前記基板によって支持されると共に、前記流体チャネルそれぞれの長さをそれぞれ延びる複数の可撓性膜部分(132)を含む可撓性膜(130)と、
前記可撓性膜部分それぞれの第1の部分(134)上にそれぞれ設けられると共に、前記可撓性膜部分それぞれの前記第1の部分を前記流体チャネルのそれぞれに対して撓ませるように構成されている複数のアクチュエータ(140)と、
前記可撓性膜上に設けられると共に前記可撓性膜部分それぞれの第2の部分(136)を支持する補強部材(150)とを備えることを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
前記可撓性膜は、第1の側と、前記第1の側と対向する第2の側とを有し、
前記可撓性膜の前記第1の側は前記流体チャネルと連通し、
前記複数のアクチュエータ及び前記補強部材は前記可撓性膜の前記第2の側上に設けられることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項3】
前記流体チャネルのそれぞれは、流体入口(162)と、前記流体入口と連通する流体プレナム(164)と、前記流体プレナムと連通する流体噴射チャンバ(166)と、前記流体噴射チャンバと連通する流体出口(168)とを含むことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項4】
前記可撓性膜部分はそれぞれ、前記流体チャネルそれぞれの前記流体入口から前記流体出口まで延びることを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
前記可撓性膜部分それぞれの前記第1の部分は前記流体チャネルそれぞれの前記流体噴射チャンバにわたって延び、前記可撓性膜部分それぞれの前記第2の部分は前記流体チャネルそれぞれの前記流体プレナムにわたって延びることを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
前記補強部材は、前記流体チャネルそれぞれの前記流体プレナムにわたって、前記可撓性膜及び前記流体チャネルそれぞれの前記流体出口を越えて延びることを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項7】
前記流体チャネルそれぞれの前記流体入口と連通する流体供給通路(170)をさらに備え、
前記補強部材は前記流体供給通路にわたって延びることを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項8】
前記補強部材は、前記流体供給通路の境界を画定することを特徴とする請求項7に記載の流体噴射装置。
【請求項9】
前記流体チャネルはそれぞれ、前記流体プレナムと前記流体噴射チャンバとの間に狭窄部(165)を含み、
前記狭窄部は、前記可撓性膜部分それぞれの前記第1の部分と前記第2の部分との間で前記可撓性膜部分のそれぞれを支持することを特徴とする請求項3に記載の流体噴射装置。
【請求項10】
前記狭窄部の高さは、前記流体チャネルそれぞれの深さと略等しいことを特徴とする請求項9に記載の流体噴射装置。
【請求項11】
前記アクチュエータはそれぞれ、前記可撓性膜部分のそれぞれを第1の方向に撓ませるように構成されており、
前記流体噴射装置は、前記第1の方向に対して略垂直な第2の方向に流体滴を噴射するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
【請求項12】
前記基板は、第1の側に第1の複数の流体チャネルと、第2の側に第2の複数の流体チャネルとを有し、
前記可撓性膜は、前記基板の前記第1の側上に設けられる第1の可撓性膜と、前記基板の前記第2の側上に設けられる第2の可撓性膜とを含み、
前記アクチュエータは、前記第1の可撓性膜上に設けられる第1の複数のアクチュエータと、前記第2の可撓性膜上に設けられる第2の複数のアクチュエータとを含み、
前記補強部材は、前記第1の可撓性膜上に設けられる第1の補強部材と、前記第2の可撓性膜上に設けられる第2の補強部材とを含むことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2010−503556(P2010−503556A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528266(P2009−528266)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/019782
【国際公開番号】WO2008/033380
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】