説明

流体圧緩衝器

【課題】リザーバ室内へ流入する作動流体の流速を抑える流体圧緩衝器を提供する。
【解決手段】本流体圧緩衝器1aでは、作動油がシリンダ3内のロッド側油室18からリザーバ室6内に流入する流通路33は、ロッド側油室18と連通する各オリフィス(第1連通孔)30と、リザーバ室6に連通する各連通孔(第2連通孔)32と、各オリフィス30と各連通孔32との間に設けられ両者に連通される環状溝(環状空間)31とを備え、各オリフィス30と各連通孔32とが環状溝31を介して対向しないように配置される。これにより、リザーバ室6内へ流入する作動油の流速を抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や鉄道車両等に使用される流体圧緩衝器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リザーバ室を備えた流体圧緩衝器であって、リザーバ室内に作動流体と、大気圧の空気や高圧の窒素ガス等の気体が封入され、それら気体が圧縮、膨張することでリザーバ室とシリンダ室の作動流体の出入り容積を吸収するものは従来から知られている。また、特許文献1に示されるように、シリンダ内や外部に設けられる減衰力発生機構からリザーバ室内への油液の流入によって生じるキャビテーションやエアレーションの発生を抑制することにより、安定した減衰力を得る流体圧緩衝器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−205571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リザーバ室内へ流入する作動流体の流速を抑え、キャビテーションやエアレーションの発生をさらに抑制する油液の流入構造の開発が求められている。
【0005】
本発明は、リザーバ室内へ流入する作動流体の流速を抑える流体圧緩衝器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段として、本発明は、外筒と、該外筒内に設けられ、内部に作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダと前記外筒との間に画成され、前記シリンダ内と連通し作動流体が封入された環状のリザーバ室と、前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ内を2つの液室に画成するピストンと、軸方向の一側が前記ピストンに取り付けられ、他側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、を備えた流体圧緩衝器であって、作動流体が所定部位から前記リザーバ室内に流入する流通路は、前記所定部位と連通する第1連通孔と、前記リザーバ室に連通する第2連通孔と、前記第1連通孔と前記第2連通孔との間に設けられ両者に連通される環状空間とを備え、前記第1連通孔と前記第2連通孔とは前記環状空間を介して対向しないように配置され、前記第1連通孔の合計面積と比して前記第2連通孔の合計面積を大きくすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の流体圧緩衝器によれば、リザーバ室内へ流入する作動流体の流速を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は、本発明の第2実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である
【図4】図4は、本発明の第3実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である。
【図5】図5は、図4のB−B線に沿う断面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の第5実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である。
【図8】図8は、図7のC−C線に沿う断面図である。
【図9】図9は、本発明の第6実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である。
【図10】図10は、図9のD−D線に沿う断面図である。
【図11】図11は、本発明の第7実施形態に係る流体圧緩衝器を示す断面図である。
【図12】図12は、図11のE−E線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図12に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、本発明の第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aは、外筒2と、該外筒2と同心状に配置されたシリンダ3とを備えている。これら外筒2及びシリンダ3の両端開口は前側端板5及び後側端板4によりそれぞれ閉鎖されている。外筒2の内壁面とシリンダ3の外壁面との間に環状のリザーバ室6が形成される。
なお、説明の便宜のため、以下では図中左側(符号を正立視した場合。以下同じ。)、つまりブラケット13側を前側、図中右側、つまりブラケット14側を後側としてそれぞれ記載する。
【0010】
前側端板5は、外筒2の前端開口を閉鎖する主蓋部材11と、シリンダ3の前端開口を閉鎖する副蓋部材12とからなる分割構造となっている。なお、主蓋部材11には、車体側との連結用のブラケット13が固設されている。
一方、後側端板4は、外筒2及びシリンダ3の後端開口を閉鎖すると共にピストンロッド16のガイド機能も備えたロッドガイド7と、ロッドガイド7の後面に配置されたロックリング8とからなる。ロッドガイド7の前面の径方向中央部に円筒状突出部10が突設される。ロッドガイド7の円筒状突出部10内にシリンダ3の後端が液密的に嵌合している。
【0011】
シリンダ3内には、ピストン15が摺動可能に配設されている。該ピストン15にはピストンロッド16の一端部が連結され、該ピストンロッド16の他端部は後側端板4を液密的に挿通して外筒2の外部へ延びている。なお、ピストンロッド16の他端部には、台車側と連結する連結用のブラケット14が固設されている。
【0012】
シリンダ3内は、ピストン15によってロッド側油室18と反ロッド側油室19とに区画されている。これらのロッド側油室18及び反ロッド側油室19には作動油(作動流体)がそれぞれ封入されている。この作動油はリザーバ室6の容積からスポンジ20の自然状態の体積を引いた量封入されている。また、リザーバ室6内には、ピストンロッド16の縮み行程時に、ピストンロッド16の進入体積分収縮するアキュムレータとしてのスポンジ20が配置される。該スポンジ20は円筒状でありシリンダ3の外周に配置される。
【0013】
ピストン15には、反ロッド側油室19からロッド側油室18への作動油の流通のみを許容する逆止弁22と、伸び行程時にロッド側油室18から反ロッド側油室19への作動油の移動を阻止し、ロッド側油室18内の作動油の圧力が所定圧力に到達した際、その作動油を反ロッド側油室19へリリーフするリリーフ弁21とが配設されている。
また、前側端板5の副蓋部材12には、反ロッド側油室19内の圧力に応じて開弁し該反ロッド側油室19内の作動油をリザーバ室6へ逃がすリリーフ弁24と、リザーバ室6から反ロッド側油室19への作動油の流通のみを許容する逆止弁23とが配設されている。
【0014】
図1及び図2に示すように、シリンダ3の後端部の所定部位としての周壁には、周方向に間隔を置いて複数の第1連通孔としてのオリフィス30が形成される。本実施形態では、オリフィス30は90°ピッチで4箇所形成される。また、ロッドガイド7の円筒状突出部10の内面には、シリンダ3の周壁に設けた各オリフィス30に連通する所定幅の環状溝31が形成される。ロッドガイド7の円筒状突出部10には、環状空間としての該環状溝31に連通すると共にリザーバ室6に連通する連通孔32が周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、各連通孔32は90°ピッチで4箇所形成される。なお、各オリフィス30と各連通孔32とは、環状溝31を介して対向しないように配置される。本実施形態では、各オリフィス30と各連通孔32とはその位置が周方向に互いに45°相違している。また、各連通孔32の内径は各オリフィス30の内径より大きく設定される。
【0015】
このように、第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aでは、作動油がシリンダ3内のロッド側油室18からリザーバ室6内に流入する流通路33は、シリンダ3の周壁に設けた第1連通孔としての各オリフィス30と、ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた、環状空間としての環状溝31及び第2連通孔としての各連通孔32とから構成される。
【0016】
次に、本発明の第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aの作用を説明する。
本発明の実施形態に係る流体圧緩衝器1aは、台車と車体との間に横置き状態で取り付けられており、台車にピストンロッド16側のブラケット14が連結され、車体に外筒2側のブラケット13が連結される。
【0017】
そして、台車と車体とが水平方向へ相対移動すると、本流体圧緩衝器1aのピストンロッド16が伸縮動作する。その結果、ピストンロッド16の伸び行程時には、ロッド側油室18の作動油はピストン15に設けた逆止弁22により反ロッド側油室19には流れないために、流通路33の各オリフィス30、環状溝31及び各連通孔32を経てリザーバ室6に流れ、これに応じて伸び側の減衰力が発生する。なお、この伸び行程時には、ピストンロッド16の退出分の作動油が前側端板5の副蓋部材12に設けた逆止弁23を経てリザーバ室6から反ロッド側油室19へ補給される。
【0018】
一方、ピストンロッド16の縮み行程時には、反ロッド側油室19の作動油がピストン15に設けた逆止弁22を経由してロッド側油室18に流れ、反ロッド側油室19とロッド側油室18とがほぼ同圧力となり、ピストンロッド16の進入分の作動油が流通路33の各オリフィス30、環状溝31及び各連通孔32を経てリザーバ室6に流れ、スポンジ20が収縮し、これに応じて縮み側の減衰力が発生する。
【0019】
また、ピストンロッド16の伸び工程及び縮み工程時、ロッド側油室18の作動油が流通路33の各オリフィス30に流入するが、その際、各オリフィス30から流出する作動油は流速が速く噴流となっている。各オリフィス30からの噴流は、まず、ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた環状溝31の底壁に衝突してその流速が下がり、環状溝31に沿って周方向に流れることで整流される。その後、環状溝31内の作動油は流速が下下がった状態で各連通孔32からリザーバ室6内に流入される。また、各連通孔32の内径は各オリフィス30の内径よりも大きいために、各連通孔32からリザーバ室6内に流入される作動油はその流速がさらに下がる。しかも、流通路33の各連通孔32からリザーバ室6内に流入した作動油は外筒2の内壁面に衝突してさらに流速が下がる。この結果、ロッド側油室18からリザーバ室6内に流入する作動油の流速が速いことによるスポンジ20の損傷を抑えることができ、スポンジ20への影響を最小限に抑えることができる。さらに、ロッド側油室18からリザーバ室6内に流入する作動油の流速が下がることで、エアレーションを抑制することができる。
また、各オリフィス30と各連通孔32とはその位置が周方向に互いに45°相違しているので、オリフィス30から流出した作動油は、環状溝31に沿って周方向に流れる長さを確保することができ、整流の効果を高めることができる。
【0020】
次に、本発明の第2実施形態に係る流体圧緩衝器1bを図3に基づいて説明する。
第2実施形態に係る流体圧緩衝器1bでは、第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aに対して、リザーバ室6内のスポンジ20を省いた構造で構成される。この実施形態の場合、リザーバ室6内には、作動油と、大気圧の空気、あるいは高圧の窒素ガス等が封入される。
第2実施形態に係る流体圧緩衝器1bの作用も第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aと同様である。つまり、第1実施形態ではスポンジ20が収縮することにより作動流体の出入り容積を吸収していたのに換えて、大気圧の空気、あるいは高圧の窒素ガス等が圧縮、膨張することにより作動流体の出入り容積を吸収する。
第2実施形態に係る流体圧緩衝器1bでは、例えば、ブラケット14側を上方にして縦置きで使用された際、流通路33の各連通路32からリザーバ室6に流入する作動油は十分にその流速が下がっており、さらに、外筒2の内壁面に衝突して流速が下がるので、リザーバ室6内で作動油が気中から油面に落ちる際の油面の乱れを抑えることができ、作動油と気体が混合されることにより生じるエアレーションやキャビテーションの発生を抑制することが可能になる。
【0021】
次に、本発明の第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cを図4及び図5に基づいて説明する。
第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cを説明する際には、第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aとの相違点のみを説明する。
第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cでは、シリンダ3内の反ロッド側油室19及びロッド側油室18に、各連通管37、36を介して減衰力発生機構38がそれぞれ連通されている。該減衰力発生機構38はピストン15の摺動によって生じる作動流体の流れを制御して減衰力を発生させるものである。
また、後側端板4の構成であるロッドガイド7の前面の径方向外周端部に円筒状突出部35が突設される。該円筒状突出部35の外壁面が外筒2の内壁面に液密的に当接している。
【0022】
外筒2の周壁には、減衰力発生機構38と連通する第1連通孔40が形成される。ロッドガイド7の円筒状突出部35の外壁面には、第1連通孔40と連通する環状溝41が形成される。また、ロッドガイド7の円筒状突出部35には、該環状溝41に連通すると共にリザーバ室6に連通する第2連通孔42が周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、各第2連通孔42は90°ピッチで4箇所形成される。なお、第1連通孔40と各第2連通孔42とは、環状溝41を介して対向しないように配置される。
【0023】
このように、第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cでは、作動油が減衰力発生機構38からリザーバ室6内に流入する流通路43は、外筒2の周壁に設けた第1連通孔40と、ロッドガイド7の円筒状突出部35に設けた、環状空間としての環状溝41及び各第2連通孔42とから構成される。
【0024】
そして、台車と車体とが水平方向へ相対移動すると、本流体圧緩衝器1cのピストンロッド16が伸縮動作する。その結果、ピストンロッド16の伸び行程時には、ロッド側油室18の作動油はピストン15に設けた逆止弁22により反ロッド側油室19には流れないために、ロッド側油室18の作動油は連通管36を経由して減衰力発生機構38に流れ、減衰力発生機構38から流通路43の第1連通孔40、環状溝41及び各第2連通孔42を経てリザーバ室6に流れる。これに応じて伸び側の減衰力が発生する。なお、この伸び行程時には、ピストンロッド16の退出分の作動油が前側端板5の副蓋部材12に設けた逆止弁23を経てリザーバ室6から反ロッド側油室19へ補給される。
【0025】
一方、ピストンロッド16の縮み行程時には、反ロッド側油室19の作動油がピストン15に設けた逆止弁22を介してロッド側油室18に流れ、反ロッド側油室19とロッド側油室18とがほぼ同圧力となり、ピストンロッド16の進入分の作動油が連通管36を経由して減衰力発生機構38に流れ、減衰力発生機構38から流通路43の第1連通孔40、環状溝41及び各第2連通孔42を経てリザーバ室6に流れると共にスポンジ20に吸収され、これに応じて縮み側の減衰力が発生する。
【0026】
また、ピストンロッド16の伸び工程及び縮み工程時、減衰力発生機構38からの作動油が流通路43の第1連通孔40に流入するが、該第1連通孔40からの噴流は、まず、ロッドガイド7の円筒状突出部35に設けた環状溝41の底壁に衝突してその流速が下がり、環状溝41に沿って周方向に流れることで整流される。その後、環状溝41内の作動油は流速が下がった状態で各第2連通孔42からリザーバ室6内に流入される。しかも、各第2連通孔42からリザーバ室6内に流入した作動油はシリンダ3の外壁面に衝突してさらに流速が下がる。この結果、減衰力発生機構38からリザーバ室6内に流入する作動油によりスポンジ20が損傷することなく、スポンジ20への影響を最小限に抑えることができる。また、減衰力発生機構38からリザーバ室6内に流入する作動油の流速が下がることで、エアレーションを抑制することができる。
【0027】
次に、本発明の第4実施形態に係る流体圧緩衝器1dを図6に基づいて説明する。
第4実施形態に係る流体圧緩衝器1dでは、第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cに対して、リザーバ室6内のスポンジ20を省いた構造で構成される。この実施形態の場合、リザーバ室6内には、リザーバ室6の容積からスポンジ20の自然状態の体積を引いた量が封入される。
第4実施形態に係る流体圧緩衝器1dの作用も第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cと同様である。
第4実施形態に係る流体圧緩衝器1dでは、例えば、ブラケット14側を上方にして縦置きで使用された際、流通路43の各第2連通路42からリザーバ室6内に流入する作動油は十分にその流速が下がっており、さらに、シリンダ3の外壁面に衝突して流速が下がるので、リザーバ室6内で作動油が気中から油面に落ちることによって油面が叩かれることにより生じる油面の乱れを抑えることができ、作動油と気体の混合を抑制することが可能になる。
【0028】
次に、本発明の第5実施形態に係る流体圧緩衝器1eを図7及び図8に基づいて説明する。
第5実施形態に係る流体圧緩衝器1eを説明する際には、第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aとの相違点のみを説明する。
第5実施形態に係る流体圧緩衝器1eでは、ロッドガイド7の円筒状突出部10の外壁面に当接するように円筒体50を設けるようにしている。該円筒体50の内壁面には、ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた各連通孔32に連通する環状溝51が設けられている。また、該円筒体50には、環状溝51に連通すると共にリザーバ室6に連通する連通孔52が周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、各連通孔52は90°ピッチで4箇所形成される。ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた各連通孔32と、円筒体50に設けた各連通孔52とは、円筒体50に設けた環状溝51を介して対向しないように配置される。
【0029】
このように、第5実施形態に係る流体圧緩衝器1eでは、作動油がシリンダ3内のロッド側油室18からリザーバ室6内に流入する流通路53は、シリンダ3の周壁に設けた各オリフィス30と、ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた環状溝31及び各連通孔32と、円筒体50に設けた環状溝51及び各連通孔52とから構成される。
【0030】
そして、ピストンロッド16の伸び工程及び縮み工程時、ロッド側油室18の作動油が流通路53の各オリフィス30に流入し、各オリフィス30からの噴流は、まず、ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた環状溝31の底壁に衝突してその流速が下がり、環状溝31に沿って周方向に流れることで整流される。その後、円筒状突出部10の環状溝31内の作動油は円筒状突出部10の各連通孔32から円筒体50の環状溝51の底壁に衝突して流速がさらに下がり該環状溝51に沿って流れてさらに整流される。その後、円筒体50の環状溝51内の作動油は円筒体50の各連通孔52からその流速が十分に下がった状態でリザーバ室6内に流入される。しかも、円筒体50の各連通孔52からリザーバ室6内に流入した作動油は外筒2の内壁面に衝突してさらに流速が下がる。
【0031】
次に、本発明の第6実施形態に係る流体圧緩衝器1fを図9及び図10に基づいて説明する。
第6実施形態に係る流体圧緩衝器1fを説明する際には、第3実施形態に係る流体圧緩衝器1cとの相違点のみを説明する。
第6実施形態に係る流体圧緩衝器1fでは、ロッドガイド7の円筒状突出部35の内壁面に当接するように円筒体60を設けるようにしている。該円筒体60の外壁面には、ロッドガイド7の円筒状突出部35に設けた各第2連通孔42に連通する環状溝61が設けられている。また、該円筒体60には、環状溝61に連通すると共にリザーバ室6に連通する連通孔62が周方向に間隔を置いて複数形成される。本実施形態では、各連通孔62は90°ピッチで4箇所形成される。ロッドガイド7の円筒状突出部35に設けた各第2連通孔42と、円筒体60に設けた各連通孔62とは、円筒体60に設けた環状溝61を介して対向しないように配置される。
【0032】
このように、第6実施形態に係る流体圧緩衝器1fでは、作動油が減衰力発生機構38からリザーバ室6内に流入する流通路63は、外筒2の周壁に設けた第1連通孔40と、ロッドガイド7の円筒状突出部35に設けた環状溝41及び各第2連通孔42と、円筒体60に設けた環状溝61及び各連通孔62とから構成される。
【0033】
そして、ピストンロッド16の伸び工程及び縮み工程時、減衰力発生機構38からの作動油が流通路63の第1連通孔40に流入し、該第1連通孔40からの噴流は、まず、ロッドガイド7の円筒状突出部35に設けた環状溝41の底壁に衝突してその流速が下がり、環状溝41に沿って周方向に流れることで整流される。その後、円筒状突出部35の環状溝41内の作動油は円筒状突出部35の各第2連通孔42から円筒体60の環状溝61の底壁に衝突して流速がさらに下がり該環状溝61に沿って流れてさらに整流される。その後、円筒体60の環状溝61内の作動油は円筒体60の各連通孔62からその流速が十分に下がった状態でリザーバ室6内に流入される。しかも、円筒体60の各連通孔62からリザーバ室6内に流入した作動油はシリンダ3の外壁面に衝突してさらに流速が下がる。
【0034】
次に、本発明の第7実施形態に係る流体圧緩衝器1gを図11及び図12に基づいて説明する。
第7実施形態に係る流体圧緩衝器1gを説明する際には、第1実施形態に係る流体圧緩衝器1aとの相違点のみを説明する。
第7実施形態に係る流体圧緩衝器1gでは、作動油がシリンダ3内のロッド側油室18からリザーバ室6内に流入する流通路33の、ロッドガイド7の円筒状突出部10に設けた各連通孔32のリザーバ室6側の開口を覆うように、緩衝部材としての金網65がそれぞれ配置される。
【0035】
これにより、流通路33の各連通路32から各金網65を通ってリザーバ室6内に流入した作動油は、その流速がさらに減速されると共に微細化される。
なお、本実施の形態では、流通路33の各連通孔32を覆うように金網65をそれぞれ設けたが、環状の金網65を設けてもよい。また、環状の金網65を、円筒状突出部10に設けた環状溝31の底壁に沿って配置してもよい。
なお、本実施の形態では、アキュムレータとしてスポンジ20を用いたが、それに限らず圧縮、膨張できる部材であれば、例えばゴムボールを用いても良い。
また、本実施の形態では個々の第1連通孔の面積と第2連通孔の面積が同じであるものと、第1連通孔に比して第2連通穴の面積が大きいものを示した。個々の第1連通孔、第2連通孔の面積が同じであるものであっても、第1連通孔、第2連通孔が複数あるものにおいては、全ての第1連通孔に比して全ての第2連通孔の面積が大きければ、流速を下げることができる。
【符号の説明】
【0036】
1a〜1g 流体圧緩衝器,2 外筒,3 シリンダ,6 リザーバ室,15 ピストン,16 ピストンロッド,18 ロッド側油室(一方の液室),19 反ロッド側油室,20 スポンジ(アキュムレータ),30 オリフィス(第1連通孔),31 環状溝(環状空間),32 連通孔(第2連通孔),33 流通路(第1及び第2実施形態),38 減衰力発生機構,40 第1連通孔,41 環状溝(環状空間),42 第2連通孔,43 流通路(第3及び第4実施形態),51 環状溝(環状空間),52 連通孔(第2連通孔),53 流通路(第5実施形態),61 環状溝(環状空間),62 連通孔(第2連通孔),63 流通路(第6実施形態),65 金網(緩衝部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、該外筒内に設けられ、内部に作動流体が封入されたシリンダと、該シリンダと前記外筒との間に画成され、前記シリンダ内と連通し作動流体が封入された環状のリザーバ室と、前記シリンダ内に摺動可能に挿嵌され、該シリンダ内を2つの液室に画成するピストンと、軸方向の一側が前記ピストンに取り付けられ、他側が前記シリンダの外部に突出したピストンロッドと、を備えた流体圧緩衝器であって、
作動流体が所定部位から前記リザーバ室内に流入する流通路は、前記所定部位と連通する第1連通孔と、前記リザーバ室に連通する第2連通孔と、前記第1連通孔と前記第2連通孔との間に設けられ両者に連通される環状空間とを備え、前記第1連通孔と前記第2連通孔とは前記環状空間を介して対向しないように配置され、前記第1連通孔の合計面積と比して前記第2連通孔の合計面積を大きくすることを特徴とする流体圧緩衝器。
【請求項2】
前記所定部位は、前記シリンダ内の一方の液室であることを特徴とする請求項1に記載の流体圧緩衝器。
【請求項3】
前記シリンダ内と連通し、前記ピストンの摺動によって生じる作動流体の流れを制御して減衰力を発生させる減衰力発生機構を備え、
前記所定部位は、前記減衰力発生機構であることを特徴とする請求項1に記載の流体圧緩衝器。
【請求項4】
前記リザーバ室内には、縮み行程におけるロッド進入体積分を吸収するアキュムレータが配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流体圧緩衝器。
【請求項5】
前記流通路の内部または前記リザーバ室側の開口を覆うように、作動流体の流速を減速させる緩衝部材を配置することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体圧緩衝器。
【請求項6】
前記第1連通孔と前記第2連通孔は周方向にそれぞれ同数を均等間隔で形成し、並んで形成される第1連通孔の中間位置に前記第2連通孔が配置されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の流体圧緩衝器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate