説明

流体押圧装置

【課題】シリンダ内の流体がピストン側に漏れることを抑制する。
【解決手段】射出機構では、ピストン18の押圧部20の外周に、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54、第2外リング58及びリングストッパ60が配置されており、ピストン18が移動された際に、シリンダ内の材料による圧力によって、ピストン18の係止軸36、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58が互いに密着されて、第2外リング58と内リング54との間、内カラー52と第2外リング48との間、第2外リング48と第1外リング44との間及び第1外リング44と係止軸36との間に材料16が侵入することが抑制される。このため、材料がピストン18側に漏れることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内に設けられたピストンが移動されてシリンダ内の流体を押圧する流体押圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたセラミックポンプでは、シリンダ内のピストンが移動されることで、シリンダ内の溶湯が、ピストンによって押圧されて、送出される。さらに、ピストンの外周に凹凸部が形成されている。
【0003】
ここで、このようなセラミックポンプでは、シリンダ内の溶湯がピストン側に漏れることを抑制できるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−39775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、シリンダ内の流体がピストン側に漏れることを抑制できる流体押圧装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の流体押圧装置は、内部に流体が供給されるシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、前記ピストンの外周に設けられ、前記ピストンが移動された際に前記シリンダ内の流体の圧力によって互いに密着される複数の外周体と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の流体押圧装置は、請求項1に記載の流体押圧装置において、前記外周体を環状にしている。
【0008】
請求項3に記載の流体押圧装置は、内部に流体が供給されるシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、前記ピストンの外周に設けられ、分離部が設けられて周方向において分離されると共に、前記分離部において周方向に閉塞された外周体と、を備えている。
【0009】
請求項4に記載の流体押圧装置は、内部に流体が供給されるシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、前記ピストンの外周に設けられ、分離部が設けられて周方向において分離されると共に、前記分離部の周方向位置を互いに異ならせて配置された複数の外周体と、を備えている。
【0010】
請求項5に記載の流体押圧装置は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の流体押圧装置において、前記外周体は前記シリンダ又は前記ピストンに密着する。
【0011】
請求項6に記載の流体押圧装置は、内部に流体が供給されるシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、前記ピストンの外周に設けられ、環状にされた環状外周体と、前記ピストンの外周に設けられると共に、前記環状外周体の前記ピストン移動方向側及び前記ピストン移動方向とは反対側に配置され、分離部が設けられて周方向において分離された複数の分離外周体と、を備えている。
【0012】
請求項7に記載の流体押圧装置は、内部に流体が供給されるシリンダと、前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、前記ピストンの外周に設けられ、環状にされた環状外周体と、前記ピストンの外周に設けられ、前記シリンダに弾性密着する外弾性外周体と、前記ピストンの外周に設けられ、前記ピストンに弾性密着する内弾性外周体と、を備えている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の流体押圧装置では、シリンダ内にピストンが設けられており、シリンダ内に流体が供給されると共に、ピストンが移動されることで、ピストンがシリンダ内の流体を押圧する。
【0014】
ここで、ピストンの外周に複数の外周体が設けられており、ピストンが移動された際に、シリンダ内の流体の圧力によって複数の外周体が互いに密着される。このため、シリンダ内の流体が、外周体と外周体との間を介して、外周体とシリンダ又はピストンとの間に侵入することを抑制できる。これにより、シリンダ内の流体がピストン側に漏れることを抑制できる。
【0015】
請求項2に記載の流体押圧装置では、外周体が環状にされている。このため、シリンダ内の流体が外周体とシリンダ又はピストンとの間に侵入することを一層抑制でき、シリンダ内の流体がピストン側に漏れることを一層抑制できる。
【0016】
請求項3に記載の流体押圧装置では、シリンダ内にピストンが設けられており、シリンダ内に流体が供給されると共に、ピストンが移動されることで、ピストンがシリンダ内の流体を押圧する。
【0017】
さらに、ピストンの外周に外周体が設けられており、外周体は、分離部が設けられて周方向において分離されている。
【0018】
ここで、外周体は、分離部において、周方向に閉塞されている。このため、シリンダ内の流体が外周体の分離部を介してピストン側に漏れることを抑制できる。しかも、外周体とシリンダ又はピストンとの間に流体が侵入する場合には、当該流体が外周体の分離部を介してピストン側に漏れることを抑制できる。
【0019】
請求項4に記載の流体押圧装置では、シリンダ内にピストンが設けられており、シリンダ内に流体が供給されると共に、ピストンが移動されることで、ピストンがシリンダ内の流体を押圧する。
【0020】
さらに、ピストンの外周に複数の外周体が設けられており、外周体は、分離部が設けられて周方向において分離されている。
【0021】
ここで、複数の外周体は、分離部の周方向位置を互いに異ならせて、配置されている。このため、シリンダ内の流体が複数の外周体の分離部を介してピストン側に漏れることを抑制できる。しかも、外周体とシリンダ又はピストンとの間に流体が侵入する場合には、当該流体が外周体の分離部を介してピストン側に漏れることを抑制できる。
【0022】
請求項5に記載の流体押圧装置では、外周体がシリンダ又はピストンに密着する。これにより、シリンダ内の流体がピストン側に漏れることを一層抑制できる。
【0023】
請求項6に記載の流体押圧装置では、シリンダ内にピストンが設けられており、シリンダ内に流体が供給されると共に、ピストンが移動されることで、ピストンがシリンダ内の流体を押圧する。
【0024】
さらに、ピストンの外周に環状外周体及び複数の分離外周体が設けられており、環状外周体は、環状にされると共に、分離外周体は、分離部が設けられて周方向において分離されている。
【0025】
ここで、環状外周体のピストン移動方向側及びピストン移動方向とは反対側に、分離外周体が配置されている。このため、シリンダ内の流体が複数の分離外周体の分離部を介してピストン側に漏れることを抑制できる。しかも、環状外周体又は分離外周体とシリンダ又はピストンとの間に流体が侵入する場合には、当該流体が分離外周体の分離部を介してピストン側に漏れることを抑制できる。
【0026】
請求項7に記載の流体押圧装置では、シリンダ内にピストンが設けられており、シリンダ内に流体が供給されると共に、ピストンが移動されることで、ピストンがシリンダ内の流体を押圧する。
【0027】
さらに、ピストンの外周に環状外周体、外弾性外周体及び内弾性外周体が設けられている。
【0028】
ここで、環状外周体が環状にされ、かつ、外弾性外周体がシリンダに弾性密着すると共に、内弾性外周体がピストンに弾性密着する。このため、シリンダ内の流体が環状外周体、外弾性外周体又は内弾性外周体とシリンダ又はピストンとの間を介してピストン側に漏れることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンを示す側面図であり、(A)は、ピストンの分解図であり、(B)は、ピストンの組付図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンのピストン本体を示す側面図である。
【図3】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンの第1外リングを示す図であり、(A)は、第1外リングの側面図であり、(B)は、第1外リングの平面図である。
【図4】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンの第2外リングを示す図であり、(A)は、第2外リングの側面図であり、(B)は、第2外リングの平面図である。
【図5】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンの内カラーを示す図であり、(A)は、内カラーの側面図であり、(B)は、内カラーの平面図である。
【図6】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンの内リングを示す図であり、(A)は、内リングの側面図であり、(B)は、内リングの平面図である。
【図7】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンのリングストッパを示す図であり、(A)は、リングストッパの側面図であり、(B)は、リングストッパの平面図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る鋳造機の主要部を示す一部破断した側面図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンの下方移動開始時からの経過時間とピストンの下方移動ストロークとの関係を示すグラフである。
【図10】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る鋳造機におけるピストンの第1外リングの別例を示す図であり、(A)は、当該第1外リングの側面図であり、(B)は、当該第1外リングの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図8には、本発明の実施の形態に係る鋳造機12(ホットチャンバ)の主要部が一部破断した側面図にて示されている。
【0031】
図8に示す如く、本実施の形態に係る鋳造機12は、収容部としての収容槽14が設けられており、収容槽14内には、流体としての材料16(金属(例えば亜鉛、アルミニウム、マグネシウム))が加熱されて溶融された(液体である溶湯にされた)状態で収容されている。
【0032】
収容槽14には、流体押圧装置としての射出機構10が設けられている。
【0033】
射出機構10の上下方向中間部内には、ピストン18が上下方向へ移動可能に設けられており、射出機構10が駆動されることで、ピストン18が初期位置から下方(一側)へ所定距離L移動されると共に、ピストン18の下方への移動状態が維持され、かつ、ピストン18の下方への移動開始時から所定時間T後にピストン18が上方(他側)へ移動されて初期位置に復帰される(図9参照)。また、ピストン18の下部には、略円軸状の押圧部20が設けられている。
【0034】
射出機構10の下側部分には、ブロック状の送出体22が設けられている。送出体22の下側部分には、筒状のシリンダ24が形成されており、送出体22のシリンダ24を含む下側部分の全体は、収容槽14内の材料16に浸漬されている。
【0035】
シリンダ24内は、円柱状にされて上下方向へ延伸されており、シリンダ24の下面は、閉鎖されている。シリンダ24の上面は、開放されており、シリンダ24内の上部には、ピストン18の押圧部20が嵌入されている。シリンダ24の上部近傍には、ピストン18の押圧部20の直下において、連通路26が貫通形成されており、シリンダ24内には、連通路26を介して、収容槽14内の材料16が侵入している(供給されている)。
【0036】
送出体22の下側部分には、シリンダ24の側方において、送出路28が形成されており、送出路28は、上下方向へ延伸されている。送出路28の下端は、シリンダ24内の下端に連通されており、送出路28の上端は、開放されている。
【0037】
送出体22の側方には、管状の連通管30が設けられており、連通管30の一端内は、送出体22の送出路28上端に連通されると共に、連通管30の他端内は、送出対象としての金型32内に連通されている。
【0038】
射出機構10が駆動されてピストン18が初期位置から下方へ所定距離L移動された際には、シリンダ24内の材料16がピストン18の押圧部20によって下方へ押圧される(圧力を付与される)ことで、当該材料16が、溶融された状態のまま、シリンダ24内の下端から送出路28及び連通管30内を介して、金型32内に送出(充填)される。これにより、金型32内に送出された材料16が、凝固されて、所定の製品形状に成形される。なお、射出機構10の駆動によってピストン18の下方への移動状態が維持されることで、シリンダ24内の材料16に圧力が付与された状態が維持される。
【0039】
図1(A)、図1(B)及び図2に示す如く、ピストン18には、略円軸状のピストン本体34が設けられている。
【0040】
ピストン本体34の下部近傍には、係止部としての円軸状の係止軸36が形成されており、係止軸36の外径はシリンダ24の内径に比し小さくされて、係止軸36の外周面とシリンダ24の内周面との間に小さな隙間が形成されている。
【0041】
ピストン18の係止軸36より下側の部分は、上記押圧部20を構成している。
【0042】
ピストン本体34の下部には、係止軸36の直下において、配置部としての円軸状の配置軸38が形成されており、配置軸38は、係止軸36の径に比し小さくされている。
【0043】
ピストン本体34の下端には、配置軸38の直下において、係合部としての円軸状の係合軸40が形成されており、係合軸40は、配置軸38の径に比し小さくされている。係合軸40には、円状の係合孔42が貫通形成されており、係合孔42は、係合軸40の径方向に沿って配置されている。
【0044】
ピストン本体34の配置軸38の外周には、上端位置において、外周体、分離外周体及び外弾性外周体(外シール体)としての略円環状の第1外リング44(図3の(A)及び(B)参照)が配置されており、第1外リング44は、周部が断面矩形状にされると共に、ピストン本体34に対し上下方向(軸方向)へ移動可能にされている。
【0045】
第1外リング44の内径は、ピストン本体34の配置軸38の外径に比し大きくされており、第1外リング44内には、配置軸38が上側から挿入されると共に、第1外リング44の内周面と配置軸38の外周面との間には、小さな隙間が形成されている。
【0046】
第1外リング44の内径は、ピストン本体34の係止軸36の外径に比し小さくされており、第1外リング44のピストン本体34に対する上側への移動が係止軸36によって係止可能にされている。第1外リング44の外径は、係止軸36の外径に比し大きくされており、第1外リング44は、係止軸36に対し、径方向外側へ突出されている。
【0047】
第1外リング44には、分離部としての第1外分離部46が形成されており、第1外リング44は、第1外分離部46において周方向に分離されて、径方向への弾性を有している。第1外リング44の外径は、シリンダ24の内径に比し大きくされており、第1外リング44の外周面は、シリンダ24の内周面に弾性密着されている。
【0048】
第1外リング44の第1外分離部46には、矩形柱状の閉塞部46Aが一対配置されており、一方の閉塞部46Aは、第1外リング44の第1外分離部46より周方向一側の上側部分から延出されると共に、他方の閉塞部46Aは、第1外リング44の第1外分離部46より周方向他側の下側部分から延出されている。一対の閉塞部46Aは、上下方向(第1外リング44の軸方向)において、互いに接触されており、第1外リング44は、第1外分離部46において、一対の閉塞部46Aによって周方向に閉塞されている。一対の閉塞部46Aは、第1外リング44の周方向に沿って湾曲されて、第1外リング44を構成しており、一対の閉塞部46Aは、シリンダ24の内周面に弾性密着されている。
【0049】
ピストン本体34の配置軸38の外周には、第1外リング44の直下において、外周体、分離外周体及び外弾性外周体(外シール体)としての略円環状の第2外リング48(図4の(A)及び(B)参照)が配置されており、第2外リング48は、周部が断面矩形状にされると共に、ピストン本体34に対し上下方向(軸方向)へ移動可能にされている。
【0050】
第2外リング48の内径は、ピストン本体34の配置軸38の外径に比し大きくされており、第2外リング48内には、配置軸38が上側から挿入されると共に、第2外リング48の内周面と配置軸38の外周面との間には、小さな隙間が形成されている。
【0051】
第2外リング48の内径及び外径は、それぞれ第1外リング44の内径及び外径と同一にされており、第2外リング48のピストン本体34に対する上側への移動が第1外リング44を介してピストン本体34の係止軸36によって係止可能にされると共に、第2外リング48は係止軸36に対し径方向外側へ突出されている。
【0052】
第2外リング48には、分離部としての第2外分離部50が形成されており、第2外リング48は、第2外分離部50において周方向に分離されて、径方向への弾性を有している。第2外リング48の外径は、シリンダ24の内径に比し大きくされており、第2外リング48の外周面は、シリンダ24の内周面に弾性密着されている。
【0053】
ピストン本体34の配置軸38の外周には、第2外リング48の直下において、外周体及び環状外周体(内シール体)としての円筒状(円環筒状)の内カラー52(図5の(A)及び(B)参照)が配置されており、内カラー52は、周部が断面矩形状にされると共に、ピストン本体34に対し上下方向(軸方向)へ移動可能にされている。
【0054】
内カラー52の内径は、ピストン本体34の配置軸38の外径と略同一にされており、内カラー52内には、配置軸38が上側から嵌入されると共に、内カラー52の内周面と配置軸38の外周面との間には、ほぼ隙間が形成されていない。
【0055】
内カラー52の内径は、第1外リング44及び第2外リング48の内径に比し小さくされると共に、内カラー52の外径は、第1外リング44及び第2外リング48の外径に比し小さくされている。これにより、内カラー52のピストン本体34に対する上側への移動が第2外リング48及び第1外リング44を介してピストン本体34の係止軸36によって係止可能にされると共に、内カラー52に対し第1外リング44及び第2外リング48が径方向外側へ突出されている。
【0056】
内カラー52の外径は、シリンダ24の内径に比し小さくされており、内カラー52の外周面とシリンダ24の内周面との間には、小さな隙間が形成されている。
【0057】
ピストン本体34の配置軸38の外周には、内カラー52の直下において、外周体、分離外周体及び内弾性外周体(内シール体)としての略円環状の内リング54(図6の(A)及び(B)参照)が配置されており、内リング54は、周部が断面矩形状にされると共に、ピストン本体34に対し上下方向(軸方向)へ移動(摺動)可能にされている。
【0058】
内リング54には、分離部としての内分離部56が形成されており、内リング54は、内分離部56において周方向に分離されて、径方向への弾性を有している。内リング54の内径は、ピストン本体34の配置軸38の外径に比し小さくされており、内リング54は、弾性拡径された状態で内部に配置軸38が上側から嵌入されると共に、内リング54の内周面は、配置軸38の外周面に弾性密着されている。
【0059】
内リング54の内径は、内カラー52の内径に比し小さくされると共に、内リング54の外径は、内カラー52の外径と略同一にされている。これにより、内リング54のピストン本体34に対する上側への移動が内カラー52、第2外リング48及び第1外リング44を介してピストン本体34の係止軸36によって係止可能にされると共に、内リング54に対し第1外リング44及び第2外リング48が径方向外側へ突出されている。
【0060】
内リング54の外径は、シリンダ24の内径に比し小さくされており、内リング54の外周面とシリンダ24の内周面との間には、小さな隙間が形成されている。
【0061】
ピストン本体34の配置軸38の外周には、内リング54の直下において、外周体、分離外周体及び外弾性外周体(外シール体)としての第2外リング58が配置されており、第2外リング58は、上記第2外リング48と同様の構成にされている(図4の(A)及び(B)参照)。
【0062】
このため、第2外リング58内には、ピストン本体34の配置軸38が上側から挿入されており、第2外リング58は、ピストン本体34に対し上下方向(軸方向)へ移動可能にされている。また、第2外リング58の内周面と配置軸38の外周面との間には、小さな隙間が形成されると共に、第2外リング58の外周面は、シリンダ24の内周面に弾性密着されている。
【0063】
第2外リング58の内径は、内リング54の内径に比し大きくされると共に、第2外リング58の外径は、内カラー52及び内リング54の外径に比し大きくされている。これにより、第2外リング58のピストン本体34に対する上側への移動が内リング54、内カラー52、第2外リング48及び第1外リング44を介してピストン本体34の係止軸36によって係止可能にされると共に、第2外リング58が内カラー52及び内リング54に対し径方向外側へ突出されている。
【0064】
ピストン本体34の係合軸40の外周には、第2外リング48の直下において、ストッパ部材としての円環状のリングストッパ60(図7の(A)及び(B)参照)が配置されており、リングストッパ60は、周部が断面矩形状にされている。
【0065】
リングストッパ60の内径は、ピストン本体34の係合軸40の外径と略同一にされており、リングストッパ60内には、係合軸40が上側から嵌入されると共に、リングストッパ60の内周面と係合軸40の外周面との間には、ほぼ隙間が形成されていない。
【0066】
リングストッパ60には、円状のストッパ孔62が貫通形成されており、ストッパ孔62は、リングストッパ60の径方向に沿って配置されている。リングストッパ60のストッパ孔62と係合軸40の係合孔42とは、ピストン18周方向位置が一致された状態で、係合部材としての円軸状のノックピン64が圧入されており、これにより、ノックピン64によって、リングストッパ60のピストン本体34(係合軸40)に対する移動(スライド及び回転)が係止されて、リングストッパ60のピストン本体34からの脱落が防止されている。
【0067】
リングストッパ60の上面は、ピストン本体34の配置軸38の下面に面接触されると共に、リングストッパ60の外径は、配置軸38の外径と第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58の内径とに比し大きくされている。これにより、リングストッパ60によって、ピストン本体34に対する第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58の下側への移動が係止可能にされて、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58のピストン本体34からの脱落が防止されている。
【0068】
ピストン本体34の配置軸38の軸方向長さは、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58の軸方向長さの合計に比し、長くされており、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58は、ピストン本体34に対して、上下方向(軸方向)へ小さく移動可能にされている。
【0069】
リングストッパ60の外径は、シリンダ24の内径に比し小さくされており、リングストッパ60の外周面とシリンダ24の内周面との間には、小さな隙間が形成されている。
【0070】
ピストン本体34の配置軸38に対する第1外リング44、第2外リング48、内リング54及び第2外リング58の回転は、好ましくは係止されており、第1外リング44の第1外分離部46、第2外リング48の第2外分離部50、内リング54の内分離部56及び第2外リング58の第2外分離部50は、それぞれピストン18周方向位置を互いに異ならせて配置されている。
【0071】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0072】
以上の構成の鋳造機12では、射出機構10が駆動されることで、ピストン18が初期位置から下方へ所定距離L移動されて、シリンダ24内の溶融された材料16がピストン18下部の押圧部20によって下方へ押圧される。このため、当該材料16が、溶融された状態のまま、シリンダ24内の下端から送出路28及び連通管30内を介して、金型32内に送出される。これにより、金型32内に送出された材料16が、凝固されて、所定の製品形状に成形される。
【0073】
ピストン18下部の押圧部20では、ピストン本体34の配置軸38の外周に、上から順に第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58が配置されると共に、ピストン本体34の係合軸40の外周に、リングストッパ60が配置されている。
【0074】
第1外リング44、第2外リング48及び第2外リング58の内周面と配置軸38の外周面との間には、小さな隙間が形成されており、第1外リング44、第2外リング48及び第2外リング58の外周面がシリンダ24の内周面に弾性密着されて、第1外リング44、第2外リング48及び第2外リング58とシリンダ24との間がシールされている。
【0075】
内カラー52及び内リング54の外周面とシリンダ24の内周面との間には、小さな隙間が形成されており、内カラー52の内周面と配置軸38の外周面との間にほぼ隙間が形成されないと共に、内リング54の内周面が配置軸38の外周面に弾性密着されて、内カラー52及び内リング54とピストン本体34(配置軸38)との間がシールされている。
【0076】
ここで、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58は、ピストン本体34(配置軸38)に対して、上下方向へ小さく移動可能にされており、ピストン18が初期位置から下方へ所定距離L移動された際には、シリンダ24内の溶融された材料16による上側への圧力によって、ピストン本体34の係止軸36、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58が上下方向で互いに密着される(図1(B)参照)。
【0077】
このため、仮に、リングストッパ60と第2外リング58との間や第2外リング58の第2外分離部50から配置軸38と第2外リング58との間に材料16が侵入しても、第2外リング58と内リング54との間を介して内リング54及び内カラー52とシリンダ24との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0078】
さらに、仮に、配置軸38と第2外リング58との間から内リング54の内分離部56を介して内リング54及び内カラー52とシリンダ24との間に材料16が侵入しても、内カラー52と第2外リング48との間及び第2外リング48と第1外リング44との間を介して配置軸38と第2外リング48及び第1外リング44との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0079】
しかも、仮に、第2外リング48の第2外分離部50や第1外リング44の第1外分離部46から配置軸38と第2外リング48及び第1外リング44との間に材料16が侵入しても、第2外リング48と第1外リング44との間及び第1外リング44と係止軸36との間を介して係止軸36とシリンダ24との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0080】
また、内リング54の内分離部56と第2外リング58の第2外分離部50とが、ピストン18周方向位置を互いに異ならせて配置されている。このため、仮に、第2外リング58の第2外分離部50から配置軸38と第2外リング58との間に材料16が侵入しても、当該材料16が内リング54の内分離部56に侵入する圧力が低減されて、内リング54の内分離部56を介して内リング54及び内カラー52とシリンダ24との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0081】
さらに、内リング54の内分離部56と第2外リング48の第2外分離部50とが、ピストン18周方向位置を互いに異ならせて配置されている。このため、仮に、内リング54の内分離部56から内リング54及び内カラー52とシリンダ24との間に材料16が侵入しても、当該材料16が第2外リング48の第2外分離部50に侵入する圧力が低減されて、第2外リング48の第2外分離部50を介して配置軸38と第2外リング48及び第1外リング44との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0082】
しかも、第2外リング48の第2外分離部50と第1外リング44の第1外分離部46とが、ピストン18周方向位置を互いに異ならせて配置されている。このため、仮に、第2外リング48の第2外分離部50から配置軸38と第2外リング48及び第1外リング44との間に材料16が侵入しても、当該材料16が第1外リング44の第1外分離部46に侵入する圧力が低減されて、第1外リング44の第1外分離部46を介して係止軸36とシリンダ24との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0083】
さらに、第1外リング44の第1外分離部46では、一対の閉塞部46Aが上下方向において互いに接触されており、第1外リング44は、第1外分離部46において、一対の閉塞部46Aによって周方向に閉塞されている。このため、仮に、配置軸38と第2外リング48及び第1外リング44との間に材料16が侵入しても、第1外リング44の第1外分離部46を介して係止軸36とシリンダ24との間に材料16が侵入することが抑制される。
【0084】
また、内カラー52が円環筒状にされている。このため、仮に、内リング54及び内カラー52とシリンダ24との間に材料16が侵入しても、内カラー52を介して配置軸38と内カラー52との間に材料16が侵入することが防止される。
【0085】
以上により、図9に示す如く、ピストン18が初期位置から下方へ所定距離L移動された後に射出機構10の駆動によってピストン18の下方への移動状態が維持されても、ピストン18が更に下方へ移動されることが抑制されるため、シリンダ24内の溶融された材料16がピストン18の押圧部20より下側から上側(第2外リング58より下側から第1外リング44より上側)に漏れることを抑制できる。
【0086】
また、ピストン本体34の配置軸38を第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58に上側から挿入した後に、ピストン本体34の係合軸40の係合孔42とリングストッパ60のストッパ孔62とにノックピン64を圧入することで、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58が、リングストッパ60に係止されて、ピストン本体34に取り付けられる。
【0087】
一方、ピストン本体34の係合軸40の係合孔42及びリングストッパ60のストッパ孔62からノックピン64を取り外した後に、ピストン本体34の配置軸38から第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58を取り外すことで、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58がピストン本体34から取り外される。
【0088】
以上により、第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58のピストン本体34に対する取り付け及び取り外しを容易にできる。
【0089】
なお、本実施の形態では、ピストン本体34の配置軸38の外周に、上から順に第1外リング44、第2外リング48、内カラー52、内リング54及び第2外リング58を配置した構成としたが、ピストン本体34の配置軸38の外周に配置する第1外リング44、第2外リング48、58、内カラー52及び内リング54の配置数(0を含む)及び配置位置を変更した構成としてもよい。
【0090】
例えば、内リング54を設けない構成としてもよい。この場合、内カラー52の軸方向長さを例えば内リング54の軸方向長さだけ長くするのが好ましい。
【0091】
さらに、内カラー52を所定数(例えば2つ)の内リング54に代えた構成としてもよい。
【0092】
また、第2外リング48及び第2外リング58の少なくとも一方を第1外リング44に代えた構成や、第1外リング44を第2外リング48(第2外リング58)に代えた構成としてもよい。
【0093】
しかも、ピストン本体34の配置軸38外周の上側部分に第1外リング44又は第2外リング48(第2外リング58)を合計複数配置すると共に、ピストン本体34の配置軸38外周の下側部分に第1外リング44又は第2外リング48(第2外リング58)を合計複数配置した構成としてもよい。
【0094】
さらに、本実施の形態では、内カラー52の内周面とピストン本体34の配置軸38の外周面との間にほぼ隙間を形成しない構成としたが、内カラー52の内周面とピストン本体34の配置軸38の外周面との間に小さな隙間を形成した構成としてもよい。
【0095】
また、本実施の形態では、第1外リング44の第1外分離部46において一対の閉塞部46Aを上下方向に互いに接触させて第1外リング44を第1外分離部46において一対の閉塞部46Aによって周方向に閉塞した構成としたが、これと共に又はこれに代えて、例えば図10の(A)及び(B)に示す如く、第1外リング44の第1外分離部46において一対の閉塞部46Aを第1外リング44径方向に互いに接触させて第1外リング44を第1外分離部46において一対の閉塞部46Aによって周方向に閉塞した構成としてもよい。
【0096】
図10の(A)及び(B)に示す第1外リング44では、第1外分離部46に配置される一対の閉塞部46A(第1外リング44径方向外側の閉塞部46Aを閉塞部46Bとし、第1外リング44径方向内側の閉塞部46Aを閉塞部46Cとする)が略三角柱状にされており、閉塞部46Bは、第1外リング44の第1外分離部46より周方向一側部分から第1外リング44径方向肉厚を徐々に小さくされつつ延出されると共に、閉塞部46Cは、第1外リング44の第1外分離部46より周方向他側部分から第1外リング44径方向肉厚を徐々に小さくされつつ延出されている。一対の閉塞部46B、46Cは、第1外リング44径方向において、互いに弾性接触されており、第1外リング44は、第1外分離部46において、一対の閉塞部46B、46Cによって周方向に閉塞されている。一対の閉塞部46B、46Cは、第1外リング44の周方向に沿って湾曲されて、第1外リング44を構成しており、閉塞部46Bは、シリンダ24の内周面に弾性密着されている。
【0097】
このため、第1外リング44とピストン本体34の配置軸38との間に侵入した材料16が閉塞部46Cを第1外リング44径方向外側へ押圧すると共に、閉塞部46Bがシリンダ24の内周面に係止された状態で閉塞部46Cによって第1外リング44径方向外側へ押圧されることで、一対の閉塞部46B、46Cが互いに接触されて、第1外リング44が第1外分離部46において周方向に適切に閉塞される。さらに、ピストン本体34の係止軸36の直下に第1外リング44が配置される場合には、材料16による上側への圧力によって、係止軸36と第1外リング44(一対の閉塞部46B、46Cを含む)とが上下方向で互いに密着される。これにより、第1外リング44と配置軸38との間に侵入した材料16が第1外リング44の第1外分離部46や第1外リング44と係止軸36との間を介して係止軸36とシリンダ24との間に侵入することを適切に抑制できる。
【0098】
さらに、本実施の形態では、第1外リング44を第1外分離部46において一対の閉塞部46Aによって周方向に閉塞した構成としたが、内リング54を内分離部56において例えば一対の閉塞部46Aによって周方向に閉塞した構成としてもよい。
【0099】
また、本実施の形態では、ピストン18(押圧部20)が移動されてシリンダ24内の液体(材料16)を押圧する構成としたが、例えば車両のエンジンにおいて、ピストン18(押圧部20)が移動されてシリンダ24内の気体を押圧する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0100】
10 射出機構(流体押圧装置)
16 材料(流体)
18 ピストン
24 シリンダ
44 第1外リング(外周体、分離外周体、外弾性外周体)
46 第1外分離部(分離部)
48 第2外リング(外周体、分離外周体、外弾性外周体)
50 第2外分離部(分離部)
52 内カラー(外周体、環状外周体)
54 内リング(外周体、分離外周体、内弾性外周体)
56 内分離部(分離部)
58 第2外リング(外周体、分離外周体、外弾性外周体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体が供給されるシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、前記ピストンが移動された際に前記シリンダ内の流体の圧力によって互いに密着される複数の外周体と、
を備えた流体押圧装置。
【請求項2】
前記外周体を環状にした請求項1記載の流体押圧装置。
【請求項3】
内部に流体が供給されるシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、分離部が設けられて周方向において分離されると共に、前記分離部において周方向に閉塞された外周体と、
を備えた流体押圧装置。
【請求項4】
内部に流体が供給されるシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、分離部が設けられて周方向において分離されると共に、前記分離部の周方向位置を互いに異ならせて配置された複数の外周体と、
を備えた流体押圧装置。
【請求項5】
前記外周体は前記シリンダ又は前記ピストンに密着する請求項1〜請求項4の何れか1項記載の流体押圧装置。
【請求項6】
内部に流体が供給されるシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、環状にされた環状外周体と、
前記ピストンの外周に設けられると共に、前記環状外周体の前記ピストン移動方向側及び前記ピストン移動方向とは反対側に配置され、分離部が設けられて周方向において分離された複数の分離外周体と、
を備えた流体押圧装置。
【請求項7】
内部に流体が供給されるシリンダと、
前記シリンダ内に設けられ、移動されることで前記シリンダ内の流体を押圧するピストンと、
前記ピストンの外周に設けられ、環状にされた環状外周体と、
前記ピストンの外周に設けられ、前記シリンダに弾性密着する外弾性外周体と、
前記ピストンの外周に設けられ、前記ピストンに弾性密着する内弾性外周体と、
を備えた流体押圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−122476(P2011−122476A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278779(P2009−278779)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】