説明

流体操作式制御システムの制御のための方法及び装置

本発明は少なくとも1個の圧力媒体源(1)、加圧流体が供給される少なくとも2個のアクチュエータ(2、3)及び流体操作式制御システムの制御のための制御装置(5)を有する例えば自動車用油圧又は空気圧制御自動又は自動化トランスミッション(15)の制御のための流体操作式制御システムの制御方法及びこの方法を実施するための装置に関する。アクチュエータ(2、3)の制御のために同時に操作される弁(V1−V8)の個数及び電流消費を最小化し、かつアクチュエータ(1、2)の機械的負荷を減少するために、本発明に基づき補助制御モジュール(4)が利用される。補助制御モジュール(4)は少なくとも1つの現在の制御動作に関する信号を読み取り、オフ状態のアクチュエータ(2又は3)への加圧作動流体の供給を行わせる信号を所定のパターン及び/又は計算規則及び/又はモデルに従って発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体操作式制御システムの制御、特にアクチュエータの位置の確定のための請求項1の上位概念に基づく方法及び装置並びに上記方法の実施のための請求項11の上位概念に基づく装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体操作式制御システム(以下では略して流体システムとも称する)、特に自動車の自動又は自動化トランスミッションのためのこの種の制御システムには、今日高い要求が求められる。ほかならぬ乗用車では、小さな重量と同時に高い信頼性、長寿命及び少ないメンテナンスに関する特別の要求の他に、装置部品に原因する振動や騒音をなるべく回避するか、又は少なくとも可能な限り抑制しなければならない。さらに例えばギヤチェンジに原因する駆動力の中断はなるべく短時間でなければならないから、制御されるアクチュエータの作動速度に対して特別の要求がある。同時に流体システムはなるべく安価に製造され、組み立てられ、かつ、使用時にエネルギー消費が少なくなければならない。
【0003】
従来、流体操作式トランスミッションでは1つの制御動作、即ち少なくとも1個の流体操作式アクチュエータの位置の変化に続いて、圧力が供給された単数個又は複数個のアクチュエータへの圧力を遮断するか、又は少なくとも圧力が供給された部品の所望の状態を維持するのに十分な低い圧力に引き下げるのが普通である。これによって圧力媒質系及びアクチュエータの圧力媒質管及びその他の圧力被給部分の負担を軽減することが可能であり、こうして全流体系の負荷を減少し、それに応じてより薄くより軽量に設計することが可能となるか、あるいは有効寿命を高めることが可能になる。それとともに、制御動作が実際に始まるときだけ系に高圧を供給することは、圧力の発生及び電動弁の制御に要するエネルギーに関して有利であり、かつこの系の漏れの流体損失率に関して有利である。
【0004】
制御動作中は、この制御動作時にオフ状態又は不動のアクチュエータも、可能な望ましくない変位の防止又は減少のための再作動時間を含む全接続時間の間に一貫して圧力が供給され、こうしてその位置が確定され、ほとんど不可避の局部的又は一時的圧力変動による偶発的な変位が防止される。
【0005】
この明細書で制御動作とは、別に明示しない限り、制御装置の制御命令に基づき少なくとも1つのアクチュエータの位置を、制御又は調整される系に対して所期の効果をもたらすように変化する流体操作式制御システムの動作を意味する。この場合アクチュエータの位置とは、例えばシリンダの中の変位可能なピストンの移動を意味する。なお同時に又は少なくとも時間的に近接して行われる複数の動作は、1つの動作とみなす。
【0006】
従ってピストンを例えばクラッチのレリーズレバー又はシフト用爪の移動装置又はシャフト上に移動可能に支承された歯車と連結することができるピストン・シリンダ機構の作動シリンダの制御は、例えばクラッチライニングの位置の所期の変化、かみ合いクラッチの連結又は切断もしくは2個の歯車のかみ合いをもたらすか又は少なくとも目指すのであれば、1つの制御動作である。クラッチの締結、かみ合いクラッチの連結又はシャフト上の歯車の移動が例えばギヤチェンジの過程でほぼ同時に行われるならば、これらの動作を1つの制御動作「ギヤXの挿入」に統合することができる。上記の説明に従って操作されるアクチュエータを以下でオン状態のアクチュエータと呼ぶ。
【0007】
但し、制御動作は、このアクチュエータの制御が単数個又は複数個のアクチュエータの位置を確定する目的で行われる場合をも意味するものとする。アクチュエータの確定とは、その位置を変化せずに維持するか、又はアクチュエータをその位置に保持するか、又は場合によっては事前にとった若しくはとろうとした位置の方向へ、アクチュエータの隣接する機能位置の間の距離より明かに小さな距離だけ変位させることを目的としたアクチュエータの制御を意味する。例えば僅かな距離だけはね返ったピストンを再びストッパに当接させようとして、アクチュエータに圧力を供給することがこれに含まれる。
【0008】
例えば移動可能なアクチュエータ−ピストンの位置が例えば振動又は外力により所定の位置から離脱させられること、又は加圧作動流体を適当に作用させることによって防止しない限り移動させられるであろうことをセンサで確かめることができる。上記の説明に従って操作されるアクチュエータを、以下ではオフ状態又は未接続のアクチュエータと呼ぶ。
【0009】
従来一部で複数のアクチュエータを有する流体系に関して、例えばメインバルブにより行われる制御動作で、作動時間又は再接続時間からなる標準化された期間のあいだ所定の圧力を全圧力系に加え、アクチュエータに属する弁の調整を事前又は同時に行い、こうして単数個又は複数個のオン状態のアクチュエータもしくはその可動部材を所望の位置に置き、一方、オフ状態のアクチュエータ又はその可動部材は圧力供給によりその位置に保持するのが有利であると判断された。
【0010】
ところがアクチュエータはその近くに取り付けられた制御弁によって運転中常に標準使用圧下の圧力媒質管及びより低圧の圧力媒質管又は無圧管に接続されているから、例えば弁を適当に制御してアクチュエータを操作するために、故意にこのアクチュエータを標準期間のあいだ使用圧下に置くことがよくある。この場合はこのアクチュエータの位置を確定するために、オフ状態のアクチュエータに属する弁もそれぞれ同様に操作される。なお空気圧系では、圧力媒質管を環境への簡単な排気施設に置き換えることができることはもちろんである。
【0011】
オフ状態のアクチュエータにも上記のように圧力を供給することは原則として有意義であり、系の確実な機能のために大いに寄与するが、この処置は従来の形では下記の欠点を伴う。
【0012】
オン状態又はオフ状態のすべてのアクチュエータに加圧流体を同時に又は少なくともほぼ同時に供給することによって、短時間に必要な流体流量が比較的大きくなる。このことは特に空気圧式流体系に、また程度は低いが油圧式流体系にも当てはまる。
【0013】
弁及びアクチュエータの無駄時間が異なり、種々の流体管の幾何学的形状が異なることによって供給時期の僅かな時間的広がりが生じるが、しかしこれはごく僅かであり、いわゆる「汚れ効果」であって、流体系の所期の最適化のための手段ではない。
【0014】
その直接の帰結として、高圧の作動流体のために比較的かさ高な、大きな重量の貯蔵タンクを用意しなければならないか、又は圧力媒質源が適当に強力に設計された圧力媒質ポンプとして適当に高い出力を供給しなければならない。いずれの変法も大きな重量とコストの増加をもたらす。
【0015】
例えば安全性の考慮に基づき、圧力媒質ポンプの故障の場合の流体系の非常運転特性に関連して、いずれにせよ適当な貯蔵タンクが設けられていても、個々のアクチュエータへの圧力媒質管、特に複数のアクチュエータへの供給のための圧力媒質本管は必要な大きな流体流量に対して適宜に小さな流れ抵抗しか働かせないように大きく設計しなければならない。このことは必要な横断面を拡大し、例えば自由空間が限られた自動車での圧力媒質管の配管やこの管路の配管のための様々な周辺条件に関して制限をもたらす。
【0016】
短時間に必要な大きな圧力媒質流量という上記の問題に似た問題は、アクチュエータに属する弁の電気的制御に関するものである。これらの弁はそれぞれ所望の位置で同時に作動させるようになっているから、その結果弁の無駄時間がほぼ等しく、弁を同時に制御することになる。このことは通常使用される電気制御弁で電力消費の大きなピークをもたらし、費用のかかる対策によって防止しなければ、他のシステムを敏感に妨げる可能性がある。さらに弁の同時通電は少なくとも幾つかの弁の不要に長引く使用時間を意味し、それとともに一方ではエネルギーの浪費、他方では弁の負担の増加を意味する。
【0017】
またすべてのアクチュエータに加圧流体を同時に供給することによって、系に比較的大きな衝撃圧が発生され、それが流体媒質系のすべての圧力伝達要素に大きな負荷を生じるだけでなく、系又は系の一部の機械的振動を生じ及び/又は固有振動を励起する恐れがある。ほかならぬ自動車分野、特に乗用車で望ましくない騒音放出が生じる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
こうした背景のもとで本発明の根底にあるのは、例えば自動車用自動又は自動化トランスミッションのための流体媒質系の、上記の欠点が全く無いか或いは甚だ少ない制御方法を提示するという課題である。特にアクチュエータを短時間だけ必要に応じて確定することを可能にするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題の解決策は独立請求項の特徴で明かであり、一方、本発明の有利な実施態様と改良が当該の従属請求項に見られる。
【0020】
本発明の根底にあるのは、オフ状態のアクチュエータへの時間的に同調させた短時間の、必要に応じた圧力供給によって、上記の欠点を取り除き、又は少なくとも大幅に減少することができるという認識である。
【0021】
それによれば本発明は例えば自動車用油圧又は空気圧制御自動又は自動化トランスミッションの制御のための流体操作式制御システムの制御方法から出発する。流体操作式制御システムは少なくとも1個の圧力源又は圧力媒質源と、加圧流体が供給される少なくとも2個のアクチュエータと、流体操作式制御システムの制御のための装置を有する。
【0022】
その場合、流体操作式制御システムとは、例えば制御装置により電気的に制御される弁によってアクチュエータを適宜に作動させ、所望の目標位置に置き、又はそこに保持することができる油圧又は空気圧系を意味する。
【0023】
上記の課題の解決のために、補助制御モジュールが少なくとも現在の制御動作に関する信号を読み取り、それから所定のパターン及び/又は計算規則及び/又はモデルに従って、オフ状態のアクチュエータに加圧作動流体を供給する信号を発生するようになっている。その場合考えられるのは、基準圧力と異なる、アクチュエータの確定に適した圧力であることはもちろんである。
【0024】
この場合、制御モジュールが流体操作式制御システムの在来の制御装置と同じものであり、任意の制御動作でオン状態のアクチュエータと同時に、常にすべての又は少なくとも大多数のオフ状態のアクチュエータに加圧作動流体を供給するというパターンの陳腐なやり方をとらないのは自明のことである。
【0025】
先行技術による方法と比較して、本発明に基づく方法は例えば油圧制御式自動車トランスミッションの場合、ギヤチェンジ操作又はその部分操作を制御動作とみなし、可能なギヤチェンジの都度それぞれ接続されるアクチュエータのほかに、ギヤチェンジの過程で偶発的に別の位置に移動させられる可能性がある未接続のアクチュエータを固定することもできる。この例ではこうした危険がないアクチュエータには圧力が供給されず、従って衝撃圧及び発生する最大体積流量及びアクチュエータの制御のために必要な電気的ピーク負荷が減少される。
【0026】
また図表式のこの制御パターンと比較して、先行の例えば2つの制御動作の際に圧力が供給されなかったオフ状態の各アクチュエータに対して、このアクチュエータの可動部の位置のゆるやかな移動を生じさせないために、圧力を供給することが可能である。
【0027】
発明の第1の好ましい実施形態では、制御モジュールが少なくとも単数個又は複数個の、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ及びこれに加圧作動流体を供給する時期に関する情報を含む信号を発生し、又は適当な信号によりこの制御を直接行わせるようになっている。
【0028】
このようにして圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータに対して供給の開始時期を様々に選定し、時期の適宜な選択によって系の最大必要体積流量を大幅に減少し、さらには恒常化することができる。接続時のピークを時間的に配分することができるから、制御される弁が必要とするピーク電力にも同じことが当てはまる。圧力供給の開始時期を長い期間に配分し、こうして例えば標準化した圧力供給期間中に個々のアクチュエータの少なくとも一部に時間的に逐次に供給することも可能である。
【0029】
本発明思想に関連して、制御モジュールが当該の信号をアクチュエータの弁に直接に又は場合によっては信号増幅を介在して送出するか、あるいは例えば適当なデータを含む情報をプロトコルにより例えば制御装置に送り、そこで制御装置がこのデータを適当に考慮して弁の制御を引き受け又は行わせるかの区別はもちろんない。
【0030】
発明の第2の好ましい実施形態は、制御モジュールが少なくとも単数個又は複数個の、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ及びこれへの加圧作動流体の供給期間に関する情報を含む信号を発生し、又は適当な信号によってこの制御を直接行わせるものである。
【0031】
圧力供給の期間を決定することが可能であることから、一方ではオフ状態のアクチュエータの圧力供給期間を例えば構造又は機能に従って最小化することができ、他方ではオフ状態のアクチュエータへの圧力供給に段階を設け、目的に応じて時間的に配分することが可能である。その場合、圧力供給の開始時期と終了時期の設定が期間の設定であることはもちろんである。
【0032】
その場合、上記のように異なるアクチュエータ及び/又は異なる制御動作に対して及び/又はその他のパラメータに基づいて、異なる期間を設定するのは自明のことである。すべてのアクチュエータに対して常に同じ期間を設定する陳腐なやり方をしないのはもちろんである。
【0033】
本発明方法の改良に基づき制御モジュールがさらに制御モジュール外又は制御モジュール内の発生源からの別の情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ及び/又はそれへの圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮するならば、別の有利な可能性が生まれる。
【0034】
例えば老化により可動部の位置の偶発的な変位が起こる傾向があるアクチュエータに対して、過去に生じた過誤状態に応じて圧力供給の頻度を増加し、又は作動流体の温度、それとともにアクチュエータの軽快性を併せて考慮することができる。特に考慮することが好ましいその他の情報及びそれから生じる可能性を以下で簡単に紹介する。
【0035】
第1の変法に基づき制御モジュールがさらにアクチュエータの位置の確定又は保持の優先順位に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ及び/又はそれへの圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮するならば、制御動作の過程でその位置が特に問題なオフ状態のアクチュエータに優先的に圧力を供給することが可能になる。不正位置は例えばトランスミッション内の種々の部材の衝突を招く恐れがあるからである。
【0036】
第2の変法は、制御モジュールがさらに電気エネルギーの利用可能性に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ及び/又はそれへの圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮するものである。
【0037】
これによって例えば回路網の一時的過負荷又は蓄電池の低い充電度の場合に、電圧の急落に対して、特定のオフ状態のアクチュエータへの圧力供給を故意に中止し、又は圧力供給の期間を短縮することができる。
【0038】
制御モジュールが補足的に読み取り、圧力を供給すべき未制御のアクチュエータ及び/又はそれへの圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮する情報が、圧力の利用可能性及び/又は作動流体の体積流量に関する情報であるならば、この分野に生じ又は目立つ隘路を早急に又は予測に基づいて緩和し、又は少なくとも考慮することができる。
【0039】
別の変法に基づき制御モジュールがさらに少なくとも1個の未制御のアクチュエータの実際位置に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきアクチュエータ及び/又はそれへの圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮するならば、オフ状態のアクチュエータの圧力供給を一層最適化することができる。
【0040】
一方では実際位置と目標位置のあいだに万一生じる偏差から、例えばアクチュエータの可動部の移動傾向、即ちその位置を無秩序に変える傾向を推定することができる。この場合は例えばこのアクチュエータが無制御の場合にこれに圧力を供給して、再び目標位置に持ってゆく回数を増加することができる。目標位置と検出された実際位置のあいだの偏差が持続する場合は、所望の位置に確実に到達するために、例えば圧力供給を延長することができる。目標位置に到達するとともに圧力供給を遮断することによって、圧力供給を最小時間に短縮することができる。
【0041】
エラー報告を発生して送出し、又はオフ状態のアクチュエータへの圧力供給を実際位置と目標位置のある差への到達又は超過にあらかじめ従属させることも可能である。後者の処置は特に電気エネルギー、圧力又は圧力媒質の体積流量の急激な欠乏という上記ですでに説明した場合に有意義である。
【0042】
ところがアクチュエータの可動部の実際位置の知識は既知の目標位置に関して有意義であるだけでなく、さらに作動したアクチュエータの作動速度又はオフ状態のアクチュエータの移動速度又は振動の決定のために使用することもできる。
【0043】
この変法の一つの改良は、アクチュエータの可動部の実際位置と目標位置との偏差に関する情報があるときに、制御モジュールが制御動作を起動するものである。例えば実際位置と目標位置の比較によってアクチュエータの位置偏差が認められたとき、制御モジュールが起動する制御動作は、このアクチュエータがその目標位置に正確に戻されるようにすることができる。例えば位置データの時間的解析によってアクチュエータの可動部の望ましくない強い振動が認められるならば、制御動作がこのアクチュエータに所望の位置変化に達するまで持続的に圧力を供給して、確実に目標位置に固定することができる。
【0044】
最後に、制御モジュールがオフ状態のアクチュエータへの加圧作動流体の脈動的供給をもたらす信号を発生するならば好都合である。これによって例えばピストン・シリンダ機構として構成されたアクチュエータのピストンが僅かに引掛り又は動きが重い場合に、引掛りを招く付着摩擦を簡単に克服することができるからである。
【0045】
次に本発明に基づく方法の実施に適した装置を簡単に説明する。
【0046】
この装置は、作動流体に高圧を供給するための少なくとも1個の圧力媒質源と高圧の作動流体によって制御される少なくとも2個のアクチュエータを有する流体操作式制御システムを包含する。さらに流体操作式制御システムの種々の部分の圧力の制御及び/又は調整のための弁を制御する制御装置が設けられている。
【0047】
装置は上記の変法及び改良の少なくとも1つによる方法を実施するために、さらに制御モジュールを備えている。制御モジュールは現在の制御動作に関する少なくとも1つの情報を読み取ることができ、さらに所定のパターン及び/又は計算規則及び/又はモデルを考慮して、オフ状態のアクチュエータへの加圧作動流体の供給をもたらす信号を発生することができるように設計されている。
【0048】
なお現在の制御動作とは、すでに開始され、例えば制御モジュールがセンサにより認識することができる制御動作、もしくはその存在について例えば制御装置により又は例えばセレクタスイッチの信号により制御モジュールに知らせることができる、近い将来に差し迫った又は予定された又は準備中の制御動作を意味する。
【0049】
制御装置と制御モジュールのあいだの信号技術的連係は差当たり些細なことである。例えば制御装置は制御動作に関する信号をデータ回線又は制御回線を経て制御モジュールに送ることができる。制御モジュールは圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ及び例えばそれへの圧力供給の時期と期間を決定し、この情報を再処理、信号増幅及び当該の弁の制御のために制御装置に返送する。しかし制御モジュールが当該の弁の制御を直接に又は別の手段を介して行わせることも同様に考えられる。
【0050】
制御モジュールは構造的にかつソフトウエアに関連して制御装置に組み込むことができ、又は独立のデバイスをなし、もしくは全体又は一部を他のデバイス又はモジュールに組み込むことができる。またこの場合、例えばファジー論理又は自己学習パターン認識法に基づくモデル、計算規則又はその他のパターンが制御モジュールの内部に格納されているか、又は外部から読み取られるかは、差当たり重要でない。最後に、制御モジュールに例えば電気エネルギーの供給、センサ信号、エラー報告及びその他の情報のための入力及び出力が存在しうることはもちろんである。この場合、信号技術的入出力領域をバス方式で構成するのが適当である。
【0051】
流体操作式制御システムは例えば油圧系として構成することができる。油圧系は油圧作動流体の非圧縮性に基づき、とりわけ衝撃圧の重複を回避する点で有利である。その代案として流体操作式制御システムを空気圧系として形成することができる。空気圧系は作動媒質の圧縮性に基づき、特に共振の回避という点で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
本発明を実施例に基づき詳述する。そのために明細書に図面を添付した。図面には本発明に基づく流体操作式制御システムが示されている。この制御システムはこの場合油圧ポンプとして構成された圧力媒質源1、2個のアクチュエータ2及び3、圧力媒質源1から出る又はこれに通じる圧力供給管又は圧力排出管を制御する弁V1ないしV8からなる。弁V1ないしV8は制御モジュール4によって電気的に制御される。この制御モジュール4は、操作されるアクチュエータ2及び3の当該の制御データを含む、制御動作に関する情報を在来の制御装置5から受領する。
【0053】
アクチュエータ2及び3はそれぞれピストン・シリンダ機構として構成され、シリンダ側のストップA1とA4又はA3とA4のあいだで移動可能なそれぞれ1個の可動ピストン7又は8を有する。可動ピストン7及び8はピストンロッド9又は10及びそれぞれ1個の方向転換装置11又は12を介して自動化トランスミッション15の部材と結合されている。方向転換装置11又は12は作動されると、トランスミッション15の入力軸13と出力軸14のあいだの変速比の変更をもたらす。
【0054】
オン状態のアクチュエータの被制御弁の制御データは、制御モジュール4によって場合によってはさらに個別信号に分解され、被制御弁V1ないしV8への出力のために増幅され、こうして制御モジュール4を実質的に通過するだけであるが、制御モジュール4は制御装置5から受領した情報及びその他のデータ又は電子装置及び/又はセンサの信号6に基づき、かつ計算規則、モデル又は最も簡単な場合には表によって、オフ状態のアクチュエータ2又は3について、これらのアクチュエータを当該の弁V1ないしV8の適当な制御により作動方向に操作すべきか、場合によってはいつ、どれだけの期間のあいだ操作すべきかを決定する。
【0055】
制御装置5が現在のデータに基づき自動化トランスミッション15の入力軸13と出力軸14のあいだの変速比の変更を起動し、そのためにアクチュエータ2は変位可能なピストン7がストップA2に接した図示の初期位置からストップA1に接した目標位置へ移されるように制御されるとしよう。
【0056】
制御装置5は当面する制御動作のためにこれらのデータを編集して、制御モジュール4に伝送する。制御モジュール4は当面する制御動作を認識し、オフ状態のアクチュエータ、この場合はアクチュエータ3の位置を確定すべきか、場合によってはそれがどのアクチュエータであるかを決定する。アクチュエータ3のピストン8はこの制御動作の際に偶発的に変位する傾向があり、従って十分な期間のあいだ適当な圧力供給によってストップA4に接したその位置を確定し又は保持しなければならないとしよう。
【0057】
そこで制御モジュール4はこの場合制御モジュール内に記憶された計算規則と表によって、この場合オフ状態のアクチュエータ3の弁V3、V4、V7及びV8の作動の時期及び期間を決定し、制御装置5が設定し、かつ制御モジュール4が決定したデータにより弁V1ないしV8を制御する。こうしてアクチュエータ3のピストン8はストップA4に確実に接しており、一方、アクチュエータ2のピストン7はストップA1へ移動させられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に基づく流体操作式制御システムが示された図。
【符号の説明】
【0059】
1 圧力媒質源、ポンプ
2 第1のアクチュエータ
3 第2のアクチュエータ
4 制御モジュール
5 在来の制御装置
6 その他の信号、制御モジュールの入力又は出力
7 第1のアクチュエータのピストン
8 第2のアクチュエータのピストン
9 第1のアクチュエータのピストンロッド
10 第2のアクチュエータのピストンロッド
11 第1のアクチュエータのピストンロッドの方向転換装置
12 第2のアクチュエータのピストンロッドの方向転換装置
13 自動化トランスミッションの入力軸
14 自動化トランスミッションの出力軸
15 自動化トランスミッション
V1−V8 弁
A1−A4 アクチュエータの移動可能なピストンのストップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個の圧力媒体源(1)、加圧流体が供給される少なくとも2個のアクチュエータ(2、3)及び流体操作式制御システムの制御のための制御装置(5)を有する例えば自動車用油圧又は空気圧制御自動又は自動化トランスミッション(15)の制御のための流体操作式制御システムの制御方法において、
少なくとも1つの現在の制御動作に関する信号を読み取り、それから所定のパターン及び/又は計算規則及び/又はモデルに従って、オフ状態のアクチュエータ(2又は3)への加圧作動流体の供給を行わせる信号を発生する補助制御モジュール(4)を利用することを特徴とする方法。
【請求項2】
制御モジュール(4)が少なくとも単数個又は複数個の圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)及びその圧力供給の時期に関する情報を含む信号を発生し、又は適当な信号によりこの制御を直接行わせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
制御モジュール(4)が少なくとも単数個又は複数個の圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)及びその圧力供給の期間に関する情報を含む信号を発生し、又は適当な信号によりこの制御を直接行わせることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の方法。
【請求項4】
制御モジュール(4)がさらに別の情報(6)を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)並びに/もしくはその圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮することを特徴とする請求項1から3のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
制御モジュール(4)がさらにアクチュエータ(2、3)の位置の確定の優先順位に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)並びに/もしくはその圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮することを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
制御モジュール(4)がさらに電気エネルギーの利用可能性に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)並びに/もしくはその圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮することを特徴とする請求項4または5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
制御モジュール(4)がさらに作動流体の圧力及び/又は体積流量の利用可能性に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)並びに/もしくはその圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮することを特徴とする請求項4から6のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
制御モジュール(4)がさらに少なくとも1つのアクチュエータ(2、3)の実際位置に関する情報を読み取り、圧力を供給すべきオフ状態のアクチュエータ(2、3)並びに/もしくはその圧力供給の時期及び/又は期間の決定の際に考慮することを特徴とする請求項4から7のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
オフ状態のアクチュエータ(2、3)の実際位置と目標位置の間の偏差に関する情報があるときは、制御モジュール(4)がスイッチ操作を起動することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
制御モジュール(4)が、オフ状態のアクチュエータ(2、3)への加圧作動流体の脈動的供給をもたらす信号を発生することを特徴とする請求項1から9のうちのいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
高圧の作動流体を供給するための少なくとも1個の圧力媒体源(1)、高圧の作動流体により制御される少なくとも2個のアクチュエータ(2、3)及び流体操作式制御システムの種々の部分の圧力を制御及び/又は調整する弁(V1ないしV8)の制御のための制御装置(5)を有する、請求項1から10のうちのいずれか1つに記載の方法の実施のための流体操作式制御システムにおいて、
現在の制御動作に関する少なくとも1つの情報を読み取ることができ、さらに所定のパターン及び/又は計算規則及び/又はモデルを考慮して、オフ状態のアクチュエータへの加圧作動流体の供給もたらす信号を発生することができるように設計された制御モジュール(4)が設けられていることを特徴とする流体操作式制御システム。
【請求項12】
流体操作式制御システムが油圧系又は空気圧系であることを特徴とする請求項11に記載の流体操作式制御システム。
【請求項13】
制御モジュール(4)が現在の制御動作に関する情報を送るために、データ回線又は制御回線を経て制御装置(5)に、また別のデータ回線又はセンサ回線を経て(別の信号6)別の電子装置又はセンサに接続されていることを特徴とする請求項11または12に記載の流体操作式制御システム。

【図1】
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【公表番号】特表2009−532646(P2009−532646A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503556(P2009−503556)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053137
【国際公開番号】WO2007/115958
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(500045121)ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト (312)
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
【Fターム(参考)】