説明

流体機械

【課題】往復運動と回転運動との変換機構、および流体の供給と排出との切替機構が簡素な往復ピストン式流体機械を提供する。
【解決手段】ピストン141とローター13とカム111と摺動部15と流体供給排出部12とを備え、ピストン141と一体的に往復運動する摺動部15がカム111に摺動することによって往復運動と回転運動とが変換され、ピストン141がローター13の外周側に向かって運動する第1行程では、ローター13の供給排出路133が流体供給排出部12の供給路123と連通し、ピストン141が第1行程と反対側に運動する第2行程では、ローター13の供給排出路133が流体供給排出部12の排出路124と連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復運動するピストンを備える流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ピストンを備える流体機械として、特許文献1にはピストンが回転運動するもの(以下、回転ピストン式流体機械と言う。)が記載されている。また、従来、ピストンが往復運動する流体機械(以下、往復ピストン式流体機械と言う。)も公知である。
【0003】
往復ピストン式流体機械では、往復運動と回転運動とを変換するために、クランクやギヤ等の運動変換機構が必要である。また、往復ピストン式流体機械では、シリンダに対する流体の供給と排出とを切り替えるために、バルブ等の切替機構も必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−229846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の往復ピストン式流体機械は、回転ピストン式流体機械と比較してピストンおよびシリンダの構成が簡素であるという利点があるものの、クランクやギヤ等の運動変換機構やバルブ等の切替機構によって全体構成が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、往復運動と回転運動との変換機構、および流体の供給と排出との切替機構が簡素な往復ピストン式流体機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、往復運動をするピストン(141)と、
ピストン(141)が往復摺動するシリンダ穴(132)、およびシリンダ穴(132)に流体を供給・排出するための供給排出路(133)を有し、シリンダ穴(132)の軸線(A2)に対して非平行な回転軸(A1)を中心として回転運動をするローター(13)と、
ローター(13)の外周側に配置されたカム(111、115)と、
ピストン(141)と一体的に往復運動し且つカム(111、115)に摺動する摺動部(15)と、
シリンダ穴(132)に供給される流体が流通する供給路(123、108)、およびシリンダ穴(132)から排出された流体が流通する排出路(124、109)が、ローター(13)の回転運動に伴って供給排出路(133)と交互に連通するように形成された流体供給排出部(12、10)とを備え、
摺動部(15)がカム(111、115)に摺動することによってピストン(141)の往復運動とローター(13)の回転運動とが変換され、
ピストン(141)がローター(13)の外周側に向かって運動する第1行程では、供給排出路(133)が供給路(123、108)と連通し、ピストン(141)が第1行程と反対側に運動する第2行程では、供給排出路(133)が排出路(124、109)と連通することを特徴とする。
【0008】
これによると、ピストン(141)がカム(111、115)に倣って回転することによって往復運動と回転運動とを変換することができる。また、ピストン(141)がカム(111、115)に倣って回転することによって流体の供給と排出との切り替えを自律的に行うことができる。以上のことから、往復運動と回転運動との変換、および流体の供給と排出との切り替えを簡素な構成によって実現できる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の流体機械において、ローター(13)および流体供給排出部(12、10)は、回転軸(A1)と平行な方向に重ねられ、
供給排出路(133)は、供給路(123、108)および排出路(124、109)と、ローター(13)の回転軸(A1)と平行な方向に連通することを特徴とする。
【0010】
これにより、ローター(13)の回転運動に伴って蒸気の供給・排出の切り替えを良好に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の流体機械において、シリンダ穴(132)は、ローター(13)の回転軸(A1)と平行な方向から見た時に軸線(A2)が回転軸(A1)に対してずれるように形成されていることを特徴とする。
【0012】
これにより、ピストン(141)の往復運動とローター(13)の回転運動とを効果的に変換することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の流体機械において、カム(111)は、非円形状に形成されていればよい。
【0014】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の流体機械において、カム(115)は、ローター(13)の回転軸(A1)に対して偏心した円形状に形成されていてもよい。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の流体機械において、ピストン(141)を複数個備え、
ローター(13)は、シリンダ穴(132)および供給排出路(133)をピストン(141)と同数の複数個ずつ有し、
ローター(13)の回転位置にかかわらず、複数個の供給排出路(133)のうち少なくともいずれか1つの供給排出路(133)が供給路(123、108)に連通することを特徴とする。
【0016】
これにより、ローター(13)の回転位置にかかわらず、複数個のシリンダ穴(132)のうち少なくともいずれか1つのシリンダ穴(132)に蒸気が供給されるので、ローター(13)をスムーズに回転させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の流体機械において、シリンダ穴(132)への吸気が開始する位置から、シリンダ穴(132)への吸気が終了する位置までの回転角度(θ)は、常にいずれかのピストン(141)が押されることができる角度以上、ピストン(141)が伸びきるのに必要な角度以下であることを特徴とする。
【0018】
これによると、回転角度(θ)は、常にいずれかのピストン(141)が押されることができる角度以上であるので、いずれのシリンダ穴(132)にも吸気されない位置ができない。そのため、任意の位置から駆動開始できる。
【0019】
また、回転角度(θ)は、ピストン(141)が伸びきるのに必要な角度以下であるので、ピストン(141)が縮むときに吸気されることがない。このため、ピストン(141)が縮むときの抵抗を小さくできる。
【0020】
なお、常にいずれかのピストン(141)が押されることができる角度以上、ピストン(141)が伸びきるのに必要な角度以下とは、例えば請求項5に記載の発明のように、カム(115)がローター(13)の回転軸(A1)に対して偏心した円形状に形成されている場合には、360度をシリンダ穴(132)の個数で割った角度以上、180度以下となる。図7の例では、シリンダ穴(132)の個数が4個であるので、90度以上、180度以下となる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態における流体機械を示す上面図および断面図である。
【図2】図1のベースブロックを示す上面図および断面図である。
【図3】図1のカムブロックを示す上面図および断面図である。
【図4】図1の給排気ブロックを示す上面図および断面図である。
【図5】図1のローターブロックを示す上面図、側面図、下面図および断面図である。
【図6】図1のピストンを示す三面図である。
【図7】本発明の第2実施形態における流体機械を示す上面図である。
【図8】図7のカムブロックを示す上面図および断面図である。
【図9】図7のベースブロックを示す上面図および断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態の流体機械は、流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換するものであり、図1(a)に上面図、図1(b)に図1(a)の断面図を示す。図1(b)中の上下の矢印は、流体機械の設置状態における上下方向(天地方向)を示している。
【0024】
流体機械は、ベースブロック10、カムブロック11、給排気ブロック12、ローター13、ピストン形成部材14およびカムフォロア15を有している。
【0025】
図2は、ベースブロック10の上面図および断面図である。ベースブロック10は、平板状に形成されている。ベースブロック10には、その板厚方向に延びるボルト穴101が形成されている。
【0026】
図3は、カムブロック11の上面図および側面図である。カムブロック11は、略三角形状(非円形状)のカム111を有する筒状に形成されている。本例では、カム111は、内周カム面111aと外周カム面111bとを有する溝カムになっている。カムブロック11には、その軸方向に延びるボルト穴112が形成されている。
【0027】
カムブロック11のボルト穴112は、ベースブロック10のボルト穴101とともに、カムブロック11とベースブロック10との固定に用いられる。具体的には、図1に示すように、カムブロック11は、その軸方向一端面がベースブロック10の一方の平板面に当接した状態でボルト20によってベースブロック10に固定されている。
【0028】
図4は、給排気ブロック12の上面図および断面図である。給排気ブロック12は、平板状に形成されている。給排気ブロック12には、その板厚方向に延びるボルト穴121およびシャフト穴122が形成されている。
【0029】
給排気ブロック12のボルト穴121は、ベースブロック10のボルト穴102とともに、給排気ブロック12とベースブロック10との固定に用いられる。具体的には、図1に示すように、給排気ブロック12は、カムブロック11の内側にてベースブロック10に積層された状態で、ボルト21によってベースブロック10に固定されている。
【0030】
給排気ブロック12には、ローター13に供給される流体が流通する供給路123、およびローター13から排出された流体が流通する排出路124が形成されている。
【0031】
図5は、ローター13の上面図、側面図、下面図および断面図である。なお、図5(a)、(b)では、部分的に断面を示している。
【0032】
ローター13は円柱状に形成されている。ローター13には、その軸方向に延びるシャフト穴131が形成されている。ローター13のシャフト穴131は、給排気ブロック12のシャフト穴122とともに、ローター13の回転支持に用いられる。
【0033】
具体的には、図1に示すように、ローター13は、カムブロック11の内側にて給排気ブロック12に積層された状態でシャフト22、ベアリング23、ベアリングナット24、ナット25等によってローター13に対して回転可能に支持されている。これにより、ローター13は、その軸方向と平行な回転軸A1を中心として、給排気ブロック12およびカムブロック11に対して回転可能になっている。
【0034】
ローター13には、4つ(複数個)のシリンダ穴132が形成されている。具体的には、4つのシリンダ穴132は、ローター13の外周面に、回転軸A1に対して垂直(非平行)な方向に延びて形成されている。
【0035】
図1、図5(a)に示すように、4つのシリンダ穴132は、ローター13の周方向に等間隔(90°間隔)に配置されている。各シリンダ穴132は、回転軸A1と平行な方向から見た時に軸線A2が回転軸A1に対してずれるように形成されている。なお、図1、図5では、4つのシリンダ穴132の軸線A2のうち一部のシリンダ穴132の軸線A2のみ図示している。
【0036】
ローター13には、シリンダ穴132に供給される流体、およびシリンダ穴132から排出された流体の両方が流通する供給排出路133が形成されている。供給排出路133は、シリンダ穴132から給排気ブロック12側に向かって延びて、ローター13のうち給排気ブロック12側の端面に開口している。
【0037】
供給排出路133は、給排気ブロック12の供給路123および排出路124に連通可能になっている。具体的には、ローター13が回転すると、ローター13の供給排出路133が給排気ブロック12の供給路123と排出路124とに交互に連通するようになっている。したがって、給排気ブロック12は、ローター13のシリンダ穴132に対する流体の供給・排出を行う流体供給排出部として機能する。
【0038】
図4に示すように、供給路123は、給排気ブロック12をその板厚方向に貫通している。供給路123のうちローター13側の開口部123aは、3つの円弧状の溝で構成されている。供給路123のうちローター13と反対側の開口部123bは、1つの環状の溝で構成されている。
【0039】
供給路123のうちローター13側の3つの円弧状の開口部123aは、いずれもローター13の回転軸A1を中心とし、半径および円弧長が互いに同じになっていて、ローター13の周方向に等間隔に配置されている。
【0040】
供給路123のうちローター13と反対側の1つの環状の開口部123bは、ベースブロック10に形成された供給孔103と連通している。図2に示すように、供給孔103は、ベースブロック10をその板厚方向に貫通する円形孔で構成されている。供給孔103には、図示しない蒸気発生手段から高温高圧の蒸気が供給されるようになっている。
【0041】
ベースブロック10のうち給排気ブロック12側の平板面には、環状のシール溝104、105が形成されている。図1に示すように、シール溝104、105には、シール部材としてのOリング26、27が配置されている。これにより、ベースブロック10の供給孔103と給排気ブロック12の供給路123の開口部123bとが気密に連通される。
【0042】
図4に示すように、給排気ブロック12の3つの排出路124は、給排気ブロック12のうちローター13側の平板面に形成された台形状の窪みによって形成されている。3つの台形状の排出路124は、互いに同じ形状になっており、ローター13の周方向に等間隔に配置されている。本例では、給排気ブロック12の最外周部に、3つの排出路124同士を繋ぐ環状の窪みが形成されている。
【0043】
図6は、ピストン形成部材14の三面図である。ピストン形成部材14は、ローター13のシリンダ穴132と同数の4つ(複数個)設けられている。ピストン形成部材14は、シリンダ穴132に往復摺動する円柱状のピストン141と、カムフォロア15が組み付けられるブラケット部142とで構成されている。本例では、ブラケット部142は、ピストン141の一端部にてL字平板状に形成されている。
【0044】
図1に示すように、カムフォロア15は、カムブロック11のカム111に接触するように、ピストン形成部材14のブラケット部142に組み付けられている。これにより、カムフォロア15は、ピストン141と一体的に往復運動し且つカム111に摺動する摺動部として機能する。
【0045】
次に、上記構成における作動を説明する。まず、4つのピストン141のうち1つのピストン141に着目して作動を説明する。
【0046】
ローター13の供給排出路133が給排気ブロック12の供給路123のローターブロック側開口部123aと連通している状態において、ベースブロック10の供給孔103に図示しない蒸気発生手段から高温高圧の蒸気が供給されると、供給孔103の蒸気が供給路123および供給排出路133を通じてシリンダ穴132に流入する。
【0047】
すると、シリンダ穴132に流入した蒸気の圧力によってピストン141がローター13の外周側に押し出されるので、ピストン141に組み付けられたカムフォロア15がカムブロック11のカム111を押圧する。このとき、カム111の形状によって、ローター13を回転させる回転駆動力が発生する(第1行程)。
【0048】
回転駆動力によってローター13が所定角度回転すると、ローター13の供給排出路133は給排気ブロック12の供給路123と非連通状態になり、代わって給排気ブロック12の排出路124と連通する。このとき、カム111の形状によって、カムフォロア15がカム111から押圧されてピストン141が押し戻される。これにより、シリンダ穴132の蒸気が供給排出路133および排出路124を通じて排出される(第2行程)。
【0049】
ローター13がさらに所定角度回転することで、ローター13の供給排出路133が給排気ブロック12の排出路124と非連通状態になり、代わって給排気ブロック12の供給路123と連通するので、上記作動(第1行程および第2行程)が繰り返される。
【0050】
上記作動が4つのピストン141で互いに異なるタイミングで行われるので、ローター13を連続的かつスムーズに回転させることができる。
【0051】
ちなみに、カム111が略三角形状に形成され、給排気ブロック12の供給路123のローターブロック側開口部123a、および給排気ブロック12の排出路124が3つずつ形成されているので、ローター13が1回転する間に各ピストン141が3回往復運動することとなる。
【0052】
本実施形態によると、供給された蒸気によって駆動されるピストン141がカム111に倣って回転することによって回転力を生むことができる。すなわち、非常に簡素な機構によって、ピストン141の往復運動をローター13の回転運動に変換することができる。
【0053】
また、本実施形態によると、ローター13が回転するとローター13の供給排出路133が給排気ブロック12の供給路123と排出路124とに交互に連通するので、蒸気の供給・排出の切り替えを自律的に行うことができる。すなわち、非常に簡素な機構によって、蒸気の供給・排出を切り替えることができる。
【0054】
さらに、本実施形態によると、4つのピストン141が互いに振動を打ち消し合い、ローター13を連続的に回転させることができるので、振動が少なく、安定した回転力を得ることができる。すなわち、エネルギーロスの少ない高効率の原動機を実現できる。
【0055】
さらに、本実施形態によると、ローター13が4つのピストン141で均等に押されるので、ローター13の浮き上がりやシャフト22の曲がりを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態によると、ローター13の回転位置にかかわらず、ローター13の4つの供給排出路133のうち少なくともいずれか1つの供給排出路133が給排気ブロック12の供給路123のローターブロック側開口部123aに連通するようになっている。このため、ローター13の回転位置にかかわらず、ローター13の4つのシリンダ穴132のうち少なくともいずれか1つのシリンダ穴132に蒸気が供給されるので、ローター13をスムーズに回転させることができる。
【0057】
また、ローター13および給排気ブロック12は、回転軸A1と平行な方向に重ねられ、ローター13の供給排出路133は、給排気ブロック12の供給路123および排出路124と、回転軸A1と平行な方向に連通しているので、ローター13の回転運動に伴って蒸気の供給・排出の切り替えを良好に行うことができる。
【0058】
また、シリンダ穴132の軸線A2は、回転軸A1と平行な方向から見た時に回転軸A1と重ならないようになっているので、ピストン141の往復運動をローター13の回転運動に効果的に変換することができる。
【0059】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、カム111が略三角形状に形成されているが、本第2実施形態では、図7に示すように、カム115が、ローター13の回転軸A1に対して偏心した円形状に形成されている。
【0060】
図8は、カムブロック11の上面図および断面図である。カムブロック11は、円形状のカム115を有する筒状に形成されており、カム115がローター13の回転軸A1に対して偏心するようにベースブロック10に組み付けられている。本例では、カム115は、内周カム面115aと外周カム面115bとを有する溝カムになっている。
【0061】
図9は、ベースブロック10の上面図および断面図である。本実施形態では、ローター13はベースブロック10に回転支持されており、上記第1実施形態の給排気ブロック12が廃止されている。
【0062】
具体的には、ベースブロック10には、ローター13の回転支持に用いられるシャフト穴107が形成されている。さらに、ベースブロック10には、ローター13の供給排出路133と連通可能な供給路108および排出路109が形成されている。
【0063】
供給路108は、ベースブロック10をその板厚方向に貫通している。具体的には、供給路108のうちローター13側の開口部108aは1つの円弧状の溝で構成されていて、供給路108のうちローター13と反対側の開口部108bは、1つの円形穴で構成されている。
【0064】
排出路109も、ベースブロック10をその板厚方向に貫通している。具体的には、排出路109のうちローター13側の開口部109aは1つの円弧状の溝で構成されていて、排出路109のうちローター13と反対側の開口部109bは、1つの円形穴で構成されている。
【0065】
本実施形態においても上記第1実施形態と同様に作動するので、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
ちなみに本実施形態では、カム115がローター13の回転軸A1に対して偏心した円形状に形成され、ベースブロック10の供給路108のローターブロック側開口部108a、および排出路109のローターブロック側の開口部109aが1つずつ形成されているので、ローター13が1回転する間に各ピストン141が1回往復運動することとなる。
【0067】
図9(b)に示す吸気範囲θは、シリンダ穴132への吸気が開始する位置から、シリンダ穴132への吸気が終了する位置までの回転角度のことである。吸気範囲θは、360度を気筒数で割った角度以上、180度以下に設定されている。
【0068】
以下、吸気範囲θについて説明する。
【0069】
本実施形態の構成においては、1つのピストン141が最も縮んだ状態から伸びきる状態になるまで180度回転する。このため、吸気範囲θを180度にした場合、ピストン141が伸びきるまで吸気され続けるので、ピストン141は常に吸気圧力で押されることになる。
【0070】
一方、θを180度より小さくした場合、ピストン141が伸びきる途中で吸気が中断されることとなる。ピストン141が伸びきる途中で吸気が中断されてもピストン141内の流体に圧力があるので、流体の圧力が外部の圧力よりも高くなっている限り流体の断熱膨脹によってピストン141は伸び続けるが、伸びるに従い流体の圧力が低下していくので、ピストン141の押す力は弱くなる。その代わり吸気が中断されることで流体の消費量を低減できる。
【0071】
つまり、吸気範囲θを大きくすれば高トルクのエンジン、小さくすればエネルギ消費の少ないエンジンとなる。
【0072】
なお、360度を気筒数(シリンダ穴132の個数)で割った角度(例えば4気筒の場合90度)よりも吸気範囲θが小さくなると、いずれのシリンダ穴132にも吸気されずいずれのピストン141も押されない位置ができてしまい、その位置から駆動開始できないことになるので、その角度以上は必要である。換言すれば、気筒数を多くするほど360度を気筒数で割った角度が小さくなるので、吸気範囲を小さくして流体の消費量を減らすことができる。
【0073】
なお、ピストン141が伸びるのに必要な角度(本例では180度)よりも吸気範囲θが大きい場合、ピストン141が縮むときにも吸気されてピストン141が縮むときの抵抗になってしまうので好ましくない。
【0074】
以上のように、吸気範囲θを、360度を気筒数で割った角度以上、180度以下の範囲において適宜設定することによって、流体機械の特性を適宜決定することができる。
【0075】
換言すれば、吸気範囲θを、常にいずれかのピストン141が押されることができる角度以上、ピストン141が伸びきるのに必要な角度以下の範囲において適宜設定することによって、流体機械の特性を適宜決定することができる。
【0076】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、蒸気のエネルギーを機械的エネルギーに変換する例を示したが、蒸気に限定されることなく、種々の流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換することができる。
【0077】
(2)上記各実施形態では、流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換する流体機械に本発明を適用した例を示したが、機械的エネルギーを流体のエネルギーに変換する流体機械にも本発明を適用可能である。すなわち、ローターを外部からの機械的エネルギーで回転駆動することで、シリンダ穴に供給された流体にピストンでエネルギーを与えて排出することができる。
【0078】
なお、上記各実施形態では、カム111、115は内周カム面111a、115aと外周カム面111b、115bとを有する溝カムになっているが、流体のエネルギーを機械的エネルギーに変換する場合であれば、カム111、115は内周カム面111a、115aのみで構成されていても構わない。
【0079】
(3)上記第1実施形態では、カム111が略三角形状に形成され、ローター13が1回転する間に各ピストン141が3回往復運動するようになっており、上記第2実施形態では、カム115が円形状に形成され、ローター13が1回転する間に各ピストン141が1回往復運動するようになっているが、これに限定されるものではない。
【0080】
例えば、カム111が長円形状に形成され、ローター13が1回転する間に各ピストン141が2回往復運動するようになっていてもよい。また、カム111がn角形状に形成され、ローター13が1回転する間に各ピストン141がn回往復運動するようになっていてもよい。
【0081】
ちなみに、ピストン141を複数個にする場合、常にどれかのピストン141が押しているようにするには、ピストン141の個数はローター13が1回転する間の往復数+1以上が必要である。
【0082】
なお、カム111の画数(換言すればローター13が1回転する間の各ピストン141の往復数)が多いほど回転の脈動が小さくスムーズになるという利点がある。
【0083】
(4)上記第2実施形態では、吸気範囲θを、常にいずれかのピストン141が押されることができる角度以上、ピストン141が伸びきるのに必要な角度以下の範囲において適宜設定することによって、流体機械の特性を適宜決定することができるが、このような吸気範囲θの設定の考え方は上記第1実施形態にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
12 給排気ブロック(流体供給排出部)
13 ローター
15 カムフォロア(摺動部)
111 カム
123 供給路
124 排出路
132 シリンダ穴
133 供給排出路
141 ピストン
A1 ローターの回転軸
A2 シリンダ穴の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復運動をするピストン(141)と、
前記ピストン(141)が往復摺動するシリンダ穴(132)、および前記シリンダ穴(132)に流体を供給・排出するための供給排出路(133)を有し、前記シリンダ穴(132)の軸線(A2)に対して非平行な回転軸(A1)を中心として回転運動をするローター(13)と、
前記ローター(13)の外周側に配置されたカム(111、115)と、
前記ピストン(141)と一体的に往復運動し且つ前記カム(111、115)に摺動する摺動部(15)と、
前記シリンダ穴(132)に供給される流体が流通する供給路(123、108)、および前記シリンダ穴(132)から排出された流体が流通する排出路(124、109)が、前記ローター(13)の回転運動に伴って前記供給排出路(133)と交互に連通するように形成された流体供給排出部(12、10)とを備え、
前記摺動部(15)が前記カム(111、115)に摺動することによって前記往復運動と前記回転運動とが変換され、
前記ピストン(141)が前記ローター(13)の外周側に向かって運動する第1行程では、前記供給排出路(133)が前記供給路(123、108)と連通し、前記ピストン(141)が前記第1行程と反対側に運動する第2行程では、前記供給排出路(133)が前記排出路(124、109)と連通することを特徴とする流体機械。
【請求項2】
前記ローター(13)および前記流体供給排出部(12、10)は、前記回転軸(A1)と平行な方向に重ねられ、
前記供給排出路(133)は、前記供給路(123、108)および前記排出路(124、109)と、前記回転軸(A1)と平行な方向に連通することを特徴とする請求項1に記載の流体機械。
【請求項3】
前記シリンダ穴(132)は、前記回転軸(A1)と平行な方向から見た時に前記軸線(A2)が前記回転軸(A1)に対してずれるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の流体機械。
【請求項4】
前記カム(111)は、非円形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項5】
前記カム(115)は、前記回転軸(A1)に対して偏心した円形状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項6】
前記ピストン(141)を複数個備え、
前記ローター(13)は、前記シリンダ穴(132)および前記供給排出路(133)を前記ピストン(141)と同数の複数個ずつ有し、
前記ローター(13)の回転位置にかかわらず、前記複数個の供給排出路(133)のうち少なくともいずれか1つの供給排出路(133)が前記供給路(123、108)に連通することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の流体機械。
【請求項7】
前記シリンダ穴(132)への吸気が開始する位置から、前記シリンダ穴(132)への吸気が終了する位置までの回転角度(θ)は、常にいずれかの前記ピストン(141)が押されることができる角度以上、前記ピストン(141)が伸びきるのに必要な角度以下であることを特徴とする請求項6に記載の流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132433(P2012−132433A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241222(P2011−241222)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】