流体注入ボーラスの患者へ送達及び有害流体を取り扱う装置及び方法
【解決手段】有害流体輸送容器及び有害流体送達システムを開示する。有害流体輸送容器は、少なくとも一部分がシールドされた囲いを囲むハウジングを含んでいる。第1流体経路要素と第2流体経路要素は、互いに流体接続され、ハウジング内に配備されている。第1及び第2流体経路要素からの流体を、所望により、第3流体経路要素に分配するポンプユニットを配備することができる。また、有害流体輸送容器をプライミングする方法及び層流注入ボーラスの拡がりを軽減する方法を開示する。また、シリンジ又は他の容器に用いられる放射性流体輸送容器を開示する。放射性流体輸送容器により、注入処理に用いられるシリンジ又は容器は、取り外すことなく使用が可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の記載>
本願は、2009年4月21日に出願された米国特許出願第61/171,240号、発明の名称“Apparatus and Methods for Delivery of Fluid Injection Boluses to Patients and Handling Harmful Fluids”、2009年2月17日に出願された米国特許出願第61/153,070号、発明の名称“Apparatus and Methods for Delivery of Fluid Injection Boluses to Patients and Handling Harmful Fluids”及び2008年6月6日に出願された米国特許出願第61/059,384号、発明の名称“Apparatus and Methods for Delivery of Fluid Injection Boluses to Patients”の利益を主張する。
【0002】
<発明の分野>
この出願は、引用を以て、2007年12月28日に出願されたPCT/US07/89101(WO 2008/083313)、発明の名称“Methods and Systems for Integrated Radiopharmaceutical Generation, Preparation, Transportation, and Administration”が組み込まれるものとし、前記PCT/US07/89101は、2007年4月9日に出願された米国仮特許出願第60/910,810号、発明の名称“Methods and Systems for Integrated Radiopharmaceutical Generation, Preparation”、2007年1月1日に出願された米国仮特許出願第60/878,334号、発明の名称“Methods and Equipment for Handling Radiopharmaceuticals”及び" と、2007年1月1日に出願された米国仮特許出願第60/878,333号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
ここで開示される発明は、医薬用物質、典型的には、人及び動物に対して本質的に有害又は毒性の医薬性物質(例えば、放射性薬剤として一般的に知られている放射性医薬用物質)の取扱い及び投与に関するもので、さらに具体的には、人及び動物に対する流体放射性医薬物質の取扱いと投与を行なうための装置、方法、これらに関連する部品に関するものである。また、ヒト及び動物に送給される化学療法剤及び他の流体の取扱い及び投与を行なう方法及び装置を含んでいる。
【0004】
<関連技術の詳細>
身体の内部構造(骨、血管、臓器、臓器系及び他の組織などが挙げられるが、それらに限定されるものではない)及び/又は機能の情報又は像を提供するために、医薬分野では、放射性薬剤と一般的に呼ばれる放射性医薬用物質又は薬剤を投与することがしばしば行われている。さらに、放射性薬剤は、癌細胞等の標的細胞又は標的組織の成長を停止又は阻害するための治療薬としても使われる。しかしながら、イメージング処理及び治療処理で使用される放射性薬剤は、典型的には、半減期が短い高度に放射性の核種を含んでおり、医療従事者に有害である。医療従事者(例えば臨床医、画像技術者、看護婦及び薬剤師)は放射性薬剤に繰り返し曝されるので、放射性薬剤は、これらの者に対して、有毒であり、肉体的及び又は化学的影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、個々の患者に対しては、典型的な放射性薬剤は半減期が短く、曝露が少量であるので、放射能曝露の危険性があっても、利点の方が受け入れられる。しかしながら、医療従事者の場合、長期間に亘って放射性薬剤からの放射能を絶えず繰り返し受けるため、核医学分野における深刻な問題である。
【0005】
医療分野では、放射性薬剤の作成、取扱い、輸送(transport)、用量調合及び放射性薬剤の患者への投与に関与する医療従事者の放射能曝露を低減するために、多くの技術が用いられている。これらの技術には、医療従事者の曝露時間を最小にすること、医療従事者と放射線源との距離を維持すること、及び/又は医療従事者を放射線源からシールドすることのうちの1つ又は複数が含まれる。医療従事者が放射性薬剤の作成、調製及び患者への投与を行なう際、また、これら患者の世話をする際に、医療従事者と放射性薬剤との間では、放射性薬剤を受け取る患者を含めて、非常に接近することはある程度不可避であるので、核医療分野では、放射線のシールドを行なうことは非常に重要である。簡単な患者用放射線ガードは、一例として、米国特許第3,984,695号(Collica et al.)に開示されている。放射医薬品容器(ボトル、バイアル等)の一般的な取扱及び移送のための“ピッグ(pig)”として知られているシールドされた容器を用いたり、放射性薬剤容器から放射性薬剤を取り出し、取り出された放射性薬剤を個々の患者に投与するためにシールドされたシリンジを用いることは広く知られている。放射性薬剤移送用ピッグもまた、シリンジを運搬できる形状に作られるいる。シールドされた移送用ピッグの例は、米国特許第5,274,239号(Lane et al.)及び米国特許第6,425,174号(Reich)に開示されており、これらの特許は引用を以て本明細書に組み込まれるものとする。シールドされたシリンジの例として、米国特許第4,307,713号(Galkin et al.)があり、この特許は引用を以て本明細書に組み込まれる。他の遮蔽されたシリンジの例として、米国特許第6,589,158号(Winkler)、米国特許第7,351,227号(Lemer)及び米国特許第6,162,198号(Coffey et al.)があり、引用を以て、本明細書に組み込まれる。
【0006】
核医療分野において広く知られているように、放射線は、放射能物質から全ての方向に放射されるため、放射性物質を収容している容器がシールドされていないと、放射線は容器からあらゆる方向に放射される。放射線は、散乱又は偏向するが、それでも容器内の活性レベルが非常に高くない場合、医療従事者は、放射線の直接の“シャイン(shine)”からは十分に保護される。放射性薬剤容器(ボトル、バイアル、シリンジ等)を収容する移送用ピッグには、様々な形状のものがある。その一形態は、収容された放射性薬剤容器の取外し可能なカバーを含んでおり、米国特許第7,537,560号(Powers et al)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。容器は、バイアル内の形態であり、弾性(例えばゴム)のストッパー又は隔壁が設けられ、バイアル内に放射性薬剤が収容される。ピックカバーが所定位置にあるとき、放射線曝露は容認できる。カバーが開くか又は取り除かれると、開口から、放射線“シャイン”が放出される。容器から放射性薬剤を除去するための一般的な無菌移送処置として、弾性ストッパまたは隔壁が、シリンジの消毒針で突き刺される。一般的に、ストッパまたは隔壁の曝露表面は、シリンジの無菌針でストッパまたは隔壁を突き刺す前に、アルコール消毒で殺菌される。一般的に、これは、クリーンフードの中で、薬局方で推奨の手順に基づいて行われる<797>。
【0007】
シリンジは、放射性薬剤を充填する間及び一旦放射性薬剤が充填されると、シリンジシールド及びシールドされたグローブボックス又は容器を介して取り扱われるが、前述したように、適当な形状の輸送ピッグの中に入れて移送される。シリンジシールドは、一般的に、シリンジの円筒本体を収容する中空円筒形構造であり、鉛又はタングステンから作られ、鉛ガラスの窓が設けられ、該窓を通じて、操作者は、シリンジ内のシリンジプランジャー及び液体量を観察することができる。円筒形状であるので、シリンジ本体の長さに沿う方向に放射された放射線に対しては、シリンジシールドが保護するが、シリンジシールドの2つの開口端部からは、“シャイン”放射線が発せられるので、開口端部は、操作者を保護しない。装置は、シリンジ内に放射性薬剤を抽出することが知られている。例えば、米国特許第5,927,351号(Zhu et al)は、シリンジ内で放射性薬剤を取り扱うための取出しステーションを開示しており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。放射性薬剤の送達については、医療従事者の放射線曝露を最少にするために、放射性物質を遠隔から投与する装置が米国特許第5,514,071号(Sielaff Jr et al)又は第3,718,138号(Alexanddrov et al)に開示されている。放射性物質の投与を自動制御する装置は、米国特許第5,472,403号(Cornacchia et al)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。放射性物質を患者注入するために用いられるインジェクターを制御するシステムが米国特許公開第2008/0242915号に開示されている。
【0008】
危険な放射性物質の導入困難性に加えて、放射性物質の短い半減期が、患者への適切な薬剤の投与をさらに複雑なものにしている。単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)及びポジトロン放出断層撮影法(PET)画像処理などでトレーサとして用いられている放射性薬剤の放射能レベルは、例えば、放射能薬剤師または核医学技術者のような医薬関係者によって測定され、診断治療において、個人に投与される放射線量が決められる。放射線量は、放射線が個人の中に注入される時の放射性薬剤の半減期及び放射性薬剤の初期放射線レベルをなどの多くの要因に依存する。既知の解決法の1つは、放射性薬剤の初期放射能を測定し、注入時間を測定することで、放射能の所望投与量が送達される(放射性薬剤の半減期から算出される)。放射線レベルは、米国特許出願公開第2006/0151048号(Tochon-Ganguy et al)に開示されているように、分配又は容器充填プロセスの一部として決定されるか、又は米国特許第7,151,267号(Lemer)又は第7,105,846号(Egushi)に記載された放射性薬剤容器を受けることができるように構成されたスタンドアロン型装置によって測定される。放射線検出器は、シリンジシールドの上に載置され、放射性薬剤移送システムとインラインに配置される。例えば、米国特許第4,401,108号(Galkin et al)には、放射性薬剤の取出し、測定及び注入の間に使用されるシリンジシールドを開示されている。このシリンジシールドは、シリンジの中に取り出された放射性薬剤の放射能投与量を検出し、測定する放射線検出器を含んでいる。輸送用ピッグに関して、米国特許第4,401,108号(Galkin et al)に開示されたものと同様な機構が、日本特許公開JP2005-283431(出願人 Sumitomo Heavy Industries)に開示されている。米国特許第4,562,829号(Bergner)及び第4,585,009号(Barker et al)は、ストロンチウムールビジウム注入システム及びそこで使用される線量測定システムを開示しており、これらの特許は引用を以て本願に組み込まれるものとする。注入システムは、ストロンチウム−ルビジウム放射性薬剤発生器が、加圧生理食塩水供給用シリンジと流体接続されている。ポンプにより、ストロンチウム−ルビジウム発生器から取り出された生理食塩水は、発生器を出て、患者又は廃棄物収集部のどちらかに送られる。発生器と患者の間で一列のチュービングは、線量測定プローブの前を通り、発生する崩壊の数が数えられる。検出器の幾何学的な効率(又は較正)、チュービングを通る流量、チュービングの体積は知られているので、患者に送達sれる全活性を測定することは可能である(例えば、ミリキュリー)。同様に、放射線測定が、患者の体内を流れる血液量に基づいて実施される。例えば、米国特許第4,409,966号(Lambrecht et al)は、患者から放射線検出器への血液流の分流を開示している。核医学画像デバイス及び手法についての情報は、PCT国際公開WO 2006/051531A2およびPCT国際公開公報WO2007/010534A2(Specttrum Dynamics LLC.)に記載されており、両方とも引用を以て本願に組み込まれるものとする。ポータブル式の流体送達ユニットは、米国特許第6,773,673号(Layfield et al)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。
【0009】
前述したように、診断画像処理における放射性薬剤の使用例として、ポジトロン放出断層撮影(PET)および単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)があり、それらは、非侵襲式の三次元画像処理であり、患者の生理学的および生化学的プロセスに関する情報が提供される。実際には、放射性薬剤は、標的領域と相互作用するトレーサとして機能する。例えば、血管系、臓器および臓器系、腫瘍及び/又は他の標的組織のPET画像又はSPECT画像を生成する最初のステップは、患者に、1回分の放射性試薬を注入することである。放射性薬剤は、対象の身体構造内のある組織又は細胞の上又は傍に吸収され、この領域で濃縮する。一例として、フルオロデオキシグルコース(FDG)は、グルコースの正常分子、細胞の基本エネルギー燃料を僅かに改質し、分子の原子の1つの置換として放射性核種を容易に受け入れる。FDPは、代謝作用が高い細胞(例えば、癌細胞、炎症、活動筋又は活性ニューロン等)により、優先的に取り込まれる傾向がある。放射性薬剤“トレーサ”は、陽電子を放出し、該陽電子は、組織が様々な角度でスキャンされ、光子が検出器列(detector array)を通過するときに検出可能な光子を生成する。コンピュータは、選択された組織構造の三次元カラートレーサ像を再構築するのに使用される。
【0010】
前記背景に関して、放射性医薬の生成、調製及び投与について現在のプラクティスの例を説明する。米国における典型的な放射性薬剤治療処理は、放射性薬剤が、治療処理場所、典型的には病院から離れた場所で、外部核医薬設備によりまず作成され、治療処理場所に送られて、さらなる調製、例えば特定の人に投薬及び投与が行われる。治療処理場所(例えば、病院)は、特定患者に対して、特定の放射性物質が特定時間に用意することを指令する。これらの物質は、外部の核医薬設備により、標的時間に所定の放射能レベルを有することができるように調製される。例えば、外部の核医薬供給者が所有する設備には、例えば、鉛でシールドされた囲いの中にサイクロトロン又は放射性同位体発生器が装備されており、放射性薬剤、即ち、放射性同位体が生成又は作られる。さらなる精製又は投薬準備段階では、治療処理場所から離れたところで、放射性同位体が注入可能な形態に準備される。このようにして、外部供給者は、所望の放射能レベルを有する放射性医薬物質を、治療処理場所に、標的時間に提供することができる。放射性薬剤の“個々の(individual)”投与準備は、治療処理場所で行われる。或いはまた、外部供給者が、特定患者に対し、所定時間に、注入の準備ができて“仕上がった(finished)”状態の放射性薬剤を供給することもできる。この場合、治療処理場所にいる医療従事者は、例えば、前述のスタンドアロン型放射線量測定装置の中にある放射性薬剤が正しい投与量であることを確認するだけでよい。前記プロセスが行われる間、医療従事者は、放射性物質に近接近することがしばしば起こるため、処理及び移送をシールドする装置が医療従事者を保護するために必要である。
【0011】
移送用ピッグは、個々の患者のために個々の投与量が準備された放射性薬剤を輸送するのに一般的に用いられている。処理施設において、各単位投与量に関するデータは、施設のコンピュータの中に入力されるが、これは、手操作によるか、又は移送用ピッグ若しくは放射性薬剤容器に添付されたバーコード、フロッピー(登録商標)ディスクその他同様なデータフォーマットのいずれかを読み出すことにより入力される。特定の患者に、所定の単位投与量を供給する時間がきたとき、処理施設の医療従事者は、例えば、移送用ピッグから放射性医薬が入ったシリンジを取り除いて、シリンジ内の薬剤が、患者に規定された範囲内のものであることを確認しなければならない。或いはまた、医療従事者は、前もって特定し確認した投与量の放射性薬剤を、シールドされたシリンジに移し替えなければならない。もしその投与量が多すぎると、一部は、シールドされた廃棄物容器に廃棄しなければならない。投与量が少なすぎると、異なるシリンジを使用するか、及び/又は、可能な場合は、追加の薬剤がシリンジ内に充填される。医療従事者は、投与量のの調製に関与することがあるため、典型的な米国のプラクティスでは、所望の放射能レベルを有する放射性薬剤が、所定時間に送達されることになっている。治療処理場所で放射性薬剤を手動操作することは制限されている。それでも、特定の患者に対し、正しい投与量の放射性薬剤を注入する準備が整っていることを確認するために、様々な手操作によるチェックが必要である。これらの手操作チェックは、前述したように、目視検査と放射能測定を含んでいる。
【0012】
前述の例として、PETイメージングでは、注入可能な放射性医薬(例えば、FDG(フルオロデオキシグルコース))、外部核医薬施設のシクロトロンデバイス内で調製される。その後、FDGは、放射性薬剤の形態となるように加工された後、個々の投与用容器(バイアル、ボトル、シリンジ等)及び移送用ピッグに詰め込まれた容器の中に移され、医療従事者(放射線技師、技術者及び、シクロトロンサイトからPET作像サイトへFDGの生成、取扱い及び輸送に携わるドライバー)に対する不必要な放射線曝露は防止される。FDGの半減期は短いので(例えば、約110分)、FDGをPET作像サイトへ素早く移送する必要がある。輸送に要した時間と製造時のFDGの最初の放射能レベルによっては、FDGの放射能レベルを、PET作像サイトを再測定する必要がある。一例として、もし放射能レベルが高すぎると、PET作像サイトにいる放射線技師は、FDGを、希釈剤(例えば、食塩水溶液)で希釈し、体積の一部を除去したり流体を抽出することで、患者への注入前に放射能を少なくする必要がある。プロセス全体を通じて、FDGの生成から患者への注入までの取扱いを、完全に手動で行うこともできる。この処理の間、医療従事者をFDGからシールドするために、前述したように、生成物をシールド(例えば、移送用ピッグ、シリンジシールド、L−ブロック等)することが行われている。シールドすることにより、放射線技師の放射能曝露は減少するが、それでも、所定の投与量を得るために、手操作による混合、体積の調節及び/又は希釈工程中に放射性薬剤からの放射に曝露される。注入後、また、場合によっては、放射性薬剤が人体の所定部位へ到着し吸収されるのをさらに遅延させた後、一般的には、移動可能ベッドの上に載せられる。ベッドは、遠隔制御により、画像スキャナーのガントリーと称される円形開口部の中に滑り込められる。円形開口の周囲及びガントリーの内部には、放射線検出器の幾つかのリングが配置される。放射線検出器の1つのタイプとして、検出器に、患者の体内で放射線核種から放出されるガンマ線がぶつかる毎に、光の短いパルスを放出するものがある。光パルスは、光電子増倍管によって増幅されて電子信号に転換され、情報は、装置を制御し画像データを記録するコンピュータに送られる。
【0013】
米国では、放射性薬剤を複数回投与の要領で治療処理サイトに送給されることも行われている。結果として、複数回投与の場合、個々の患者に対し、治療処理サイトで単一投与に分配しなければならない。この分配作業を注入又は投与地点で行なうことは可能であるが、より一般的には、放射能薬剤師又は核医薬技師が治療処理設備の“ホットラボ(hot lab)”の中で分配作業を行うことがより多くなる。治療処理施設の“ホットラボ”には、クリーンフード、シールディング、投与量測定器などが装備され、これらは全て高価な耐久性設備である。所定投与量の放射性薬剤は個々に治療処理施設内の投与場所へ移送され、特定の患者に所定量が投薬される。
【0014】
欧州では、放射性薬剤の生成及び所定投与量の準備の作業が、一般的には、治療処理施設(例えば病院)の“ホットラボ”で行われるという点において、米国とは異なる。例えば、病院自体が、一般に、ホットラボ内のシールドされた場所に、シクロトロン又はアイソトープ発生器(例えば、Mallinckrodt Inc.,St.Louis,MO; Amersham Healthcare,2636 South Clearbrook Drive,Arlington Heights, Illinois 60005; 又はGE Healthcare Limited,Amersham Place,Little Chalfont, Buckinghamshire, United Kingdomの製造によるテクネチウム発生器)を有している。シールドされたグローブボックスの二つの製品は、イタリアのComercer及びフランスのLamer Paxである。病院の医療従事者は、1日の早い段階で、放射性同位体を生成又は抽出し、放射性薬剤を調製するのに必要な追加の化学的工程を実施し、放射性薬剤を患者に注入する直前に、個々の患者用の単位投与量を準備する。病院内の“ホットラボ”は、危険性物質の輸送を最小にし、内部情報伝達が向上するが、様々な段階で放射能レベルの測定が必要であるため、病院の医療従事者に対し、追加の時間及び放射能負荷が課せられる。測定に際し、容器(バイアル、ボトル又はシリンジ等)は投与量測定器に手操作で挿入し、所定レベルに達するまで、放射能を繰り返し調整せねばならない。単位投与量の放射能レベルは、一般的に、手作業で又はプリンタにより記録される。
【0015】
先行技術の中には、有害な流体を移送するシステムが、例えば米国特許第6,767,319号(Reilly et al.)及び米国特許出願公開第2004/0254525号(Uber, III)に開示されており、その開示は、引用を以て本願に組み込まれる。患者に放射性液体を注入する他のシステムが、日本出願公開第2000-350783号(米国特許出願公開第2005/0085682号(Sasaki et al.)、譲受人:Sumitomo Heavy Industries.)に記載されている。この公開された特許出願は、放射能測定ユニットにあるコイル状“薬剤容器”の中に放射性流体を分配するシステムを開示している。所定の放射線量がコイル状容器(coiled container)に蓄積されると、別のシリンジにより、コイル状容器から食塩水が押し出され、患者に送られる。同じような装置と方法が、日本出願公開第2002-306609号(譲受人:Sumitomo Heavy Industries.)に開示されている。これらの日本の公開公報はそれぞれが引用を以て本願へ組み込まれる。
【0016】
線量測定による放射能の連続測定を不要とする方法は、国際公開第WO 2004/004787(譲受人:Universite Libre De Bruxelles - Hospital Erasme)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。開示された方法は、初期較正ステップを必要とするが、その後、放射線量は、放射能の予測可能な減衰に基づいて、時間の関数として算出される。日本出願公開第2004- 290455号(譲受人:Nemoto Kyorindo KK)には、予め充填されたシリンジからFDGを引き出し、食塩水等の他の流体を投与することができる放射能シールドされた注入システムが記載されている。ヨーロッパ出願公開第EP1616587号(譲受人:University of Zurich)は、食塩を注入する前に、放射線投与量測定器内のチュービングにFDGを押し込み、FDGを患者に投与する放射性流体分配装置が開示されている。米国特許出願公開第2005/0203329号及び第2005/0203330号(Muto et al.)は、放射性流体を、バイアル又はバルク容器から幾つかの単位投与量シリンジに抽出する自動ロボット化システムを開示している。このシステムは、病院薬剤部用として適用される。米国特許出願公開第2005/0277833(Williams, 譲受人:E-Z-EM, Inc.)は、放射性薬剤の混合物を取り扱い、混合し、分配し、注入する注入システムを開示している。放射能投与量は、装置の幾つかの場所で、別個の検出器によってモニターされる。
【発明の概要】
【0017】
一実施例において、有害流体の輸送容器を開示する。該輸送容器は、別個の囲いを取り囲むハウジングと、別個の囲いの中に配備され、少なくとも一部分は第1流体が満たされた第1流体経路要素と、ハウジング内に配備され、第1流体経路要素に接続された第2流体経路要素とを具えている。第2流体径路要素は、少なくとも一部分は、第2流体が満たされている。第1流体経路要素は、第2流体経路要素と制御可能に流体接続されており、流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングの外側からアクセスされる(accessed)ことができるように構成される。
【0018】
別個の囲いは、放射線がシールドされる。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられる(paid outward)コイル状チュービングを具えている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに、流体検出器が連繋されている。流体検出器は、放射線検出器又は空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている。第1流体経路要素と第2流体経路要素との流体接続を制御する制御バルブを具えることができる。
【0019】
他の実施例において、有害流体の送達システムを開示する。該送達システムは、少なくとも一部分が放射線シールドされた囲いを囲むハウジングと、シールドされた囲いの中に配置され、少なくとも一部分が第1流体で満たされた第1流体経路要素と、ハウジング内に配置され、第1流体経路要素と流体接続された第2流体経路要素とを具えている。第2流体経路要素は、少なくとも一部分は、第2流体が満たされている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素から流体を分配するためのポンプユニットが、好ましくは、第1流体経路要素と第2流体経路要素の一方又は両方と制御可能に流体接続されている。
【0020】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外側に向けられるコイル状チュービングを具えている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに、流体検出器が連繋されている。流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている。
【0021】
有害流体送達システムを液体でプライミングする方法についても詳細に記載する。該プライミング方法は、流体経路要素を具える流体送達システムを準備し、第1液体を流体経路要素に送給し、分離用流体を流体経路要素に送給し、第2液体を流体経路要素に送給することを含んでおり、第1液体と第2液体は分離用流体によって分離される。第1液体は、非有害液体を含んでおり、第2液体は有害液体を含んでいる。有害液体は、例えば、放射性液体である。分離用流体は、例えば二酸化炭素のような気体であるが、液体でもよい。固体部材(例えば小球)を、分離用液体内に配備することもできる。
【0022】
他の実施例において、層流注入ボーラスの拡がり(spreading)を軽減する(mitigating)方法を開示する。該方法は、第1流体を第1ルーメンを通って流体流れ経路に注入し、第2流体を、第1ルーメンの周りに同心に配備された第2ルーメンを通って流体流れ経路に注入することを含んでいる。第1流体は、流体流れ経路内の層流の略中心部を移動し、第2流体は、流体流れ経路内の第1流体の周りを略同心状に移動する。第1流体は、第1ルーメン下流の流体経路の層流の中心部から、軸心にある出口ルーメンを介して取り出される。第2流体は、軸心にある出口ルーメンから同心円状外側の流体流れ経路から取り除かれる。
【0023】
さらに、放射性薬剤輸送容器を開示する。該輸送容器は、内部コンパートメントを画定し、該内部コンパートメントの少なくとも一部分が放射線シールドされている容器本体と、該容器本体に連繋され、内部コンパートメントを囲む閉鎖蓋(closure lid)とを具えている。容器本体と閉鎖蓋の一方又は両方に、内部コンパートメントに通じる入口開口と出口開口が設けられる。シリンジと該シリンジの出口に連繋された流体経路組(fluid path set)が容器内に配備されることができる。流体経路組は、入口流体経路要素と出口流体経路要素を具えている。シリンジは、内部コンパートメントに配備され、流体経路組の入口流体経路要素の少なくとも一部分は、入口開口を通って延びており、出口流体経路要素の少なくとも一部分は、出口開口を通って延びている。閉鎖蓋には、放射線シールドされた窓部を設けることができる。入口チェックバルブが流体経路組の入口流体経路要素に連繋され、出口チェックバルブが流体経路組の出口流体経路要素に連繋されることができる。流体経路組の入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、入口開口及び出口開口を通して、容器本体から外方へ向けられるよう構成されることができる。流体経路組の入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、医療用コイル状チュービングから形成されることができる。
【0024】
さらなる実施例は、有害流体を充填及び輸送するシステムに関するもので、有害流体輸送容器と、該容器に連繋された充填システムとを具えている。流体輸送容器は、別個の囲いを囲むハウジングと、別個の囲いの中に配備された第1流体経路要素と、ハウジング内に配備され、第1流体経路要素と流体接続された第2流体経路要素とを具えている。充填システムは、少なくとも第1流体流れ経路要素と制御可能に流体接続され、少なくとも第1流体源と第2流体源を具えている。少なくとも1つの流体ポンプが、第1流体源及び第2流体源に連繋されており、第ポンプにより、第1流体源及び第2流体源からの流体は第1流体経路要素に分配され、次に第2流体経路要素に分配される。
【0025】
別個の囲いは放射線シールドされている。流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられるコイル状チュービングを具えている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに、流体検出器が連繋されている。流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている。充填システムと第1流体経路要素との流体接続部を制御する制御バルブを具えることができる。
【0026】
さらなる詳細と利点については、添付の図面と以下の詳細な説明により、明確になるであろう。なお、図面中、同じ部品については同じ番号又は文字が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、患者に、放射性流体を注入する手動操作システムの概略図である。
【0028】
【図2】図2は、患者に、放射性流体を注入する流体送達システムの一部として用いられる流体輸送容器の一実施例の概略断面図である。
【0029】
【図3】図3は、図2に示されている流体輸送容器の概略斜視図である。
【0030】
【図4】図4は、図2の流体輸送容器に放射性流体を充填する充填システムであって、流体分配システム又はプラットフォームとしても用いられる充填システムの概略図である。
【0031】
【図5A】図5Aは、図2の流体輸送容器が内蔵されており、放射性流体を患者に注入する流体輸送システムの概略図である。
【0032】
【図5B】図5Bは、図5Aの流体輸送システムの変形例の概略図である。
【0033】
【図5C】図5Cは、図5Aの流体輸送システムの他の実施例の概略図である。
【0034】
【図6A】図6Aは、幾つかの実施例で用いられた第1流体と第2流体であって、第1流体と第2流体が同心円状と導入される実施例の概略図である。
【0035】
【図6B】図6Bは、図6Aと同様な図であって、複数流体が同心円状に導入される他の実施例の概略図である。
【0036】
【図7】図7は、本発明の装置及び方法によってもたらされるボーラス注入の好ましい流体速度プロファイルの一実施例を示す図である。
【0037】
【図8A】図8Aは、複数流体に対して好ましい流体速度プロファイルを達成するのに用いられる複数のルーメン管路を示す図である。
【0038】
【図8B】図8Bは、図8Aに示され複数ルーメン管路によって達成されるボーラス注入の流体速度プロファイルの一実施例を示す図である。
【0039】
【図9A】図9Aは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9B】図9Bは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9C】図9Cは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9D】図9Dは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9E】図9Eは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9F】図9Fは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9G】図9Gは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9H】図9Hは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9I】図9Iは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【0040】
【図10A】図10Aは、幾種類かの流体を、所望の注入順序で患者に注入できるように構成された流体送達システムである。
【0041】
【図10B】図10Bは、図10Aのシステムによって提供され、複数種流体を注入する順序の1つの可能例をグラフ表示した図である。
【0042】
【図11】図11は、放射性流体のこぼれを吸収し関係者に警告を発することができるよう構成された有害流体収集用マットの一実施例の斜視図である。
【0043】
【図12】図12は、有害流体輸送容器の例示的実施例の斜視図である。
【0044】
【図13】図13は、図12の有害流体輸送容器を開いた状態を示す斜視図である。
【0045】
【図14】図14は、図12−図13の有害流体輸送容器によって運搬されることができる有害流体シリンジと該シリンジに連繋された流体経路組の一実施例を示す斜視図である。
【0046】
【図15A】図15Aは、図12−図13に示される有害流体輸送容器の他の実施例の断面図である。
【0047】
【図15B】図15Bは、図15Aに示される有害流体輸送容器の変形例を示す断面図である。
【0048】
【図16】図16は、チュービングを含む流体経路組の中の放射性流体の放射能を検出する一実施例の概略図である。
【0049】
【図17A】図17Aは、図16に示される放射能検出装置の他の実施例の概略図である。
【図17B】図17Bは、図16に示される放射能検出装置の他の実施例の概略図である。
【図17C】図17Cは、図16に示される放射能検出装置の他の実施例の概略図である。
【0050】
【図18】図18は、幾つかの実施例で有用な流体経路内で異なる2種類の流体を分離する分離用機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明中、実施例で使用される空間的方向に関する語は、添付の図面に示された向きを指すものとし、図示されていない場合は、以下の説明に記載された向きを言うものとする。なお、以下に記載する実施例は多くの可能な変形及び形態を前提としたものであることは理解されるべきである。また、添付の図面に示され、以下の説明に記載される具体的な装置、特徴及び構成要素は、単なる例示であって、これらに限定されるものでないことは理解されるべきである。
【0052】
従来のファーストパス心臓イメージング研究は、核医薬トレーサー又は放射性同位体を、患者の静脈に接続されたチュービングの中に、手操作で速やかに注入し、次に、所定量の食塩水を速やかに注入し、患者の静脈とチューブから放射性同位体を洗い流すものである。同位体が、右心臓、肺動脈、肺、肺静脈、左心臓及び大動脈を通って流れるとき、一連の画像が撮影される。この研究を最も有用ななものとするため、核医薬トレーサは、“タイト(tight)”ボーラス、又は“コンパクト(compact)”ボーラスの中にあるのが望ましく、時間放射能曲線に2つのピークがないことが特に望ましい。注入されるトレーサの量は、例えば、ミリリットル分の1乃至数ミリリットルである。タイトボーラスを用いると、ファーストパス画像及び後の分析に用いられるデータはより良好なものが得られる。タイトボーラスは、コンパクトで、複数のピークがなく、有意に徐々に上昇又は低下することが望ましい。ここでの開示は、シールドその他の要件を必要とする核医薬の他、放射線シールド又は放射線測定態様を必要としないあらゆる薬剤流体送達にも適用可能である。タイト又はコンパクトボーラスを維持することの障害が、流体送達段階で、また、患者自身に起こることがある。この開示は、ファーストパス心臓法を、本発明の様々な概念及び手順を説明するための背景として用いており、この明細書で説明する様々な概念及び方法は、特定の用途に限定するものと解するべきではない。限定しない他の用途についても同様に記載するが、医療分野の専門家には既知である。さらに、核トレーサを注入し、コック栓を回し、次に食塩水フラッシュを注入するプロセスを手操作で行なうと、技術者は、放射性薬剤からの放射線に曝露されることになる。
【0053】
ボーラス注入の長時間化、汚れ(smearing)、ゆがみ(distorting)をもたらす幾つかの要因のあることが知られている。これらの要因には、流体要素内での層流又は乱流、乱流又は混合を注入流れに導入するチュービング移行部、ベンド及び粗さ、圧力低下の後収縮する圧力下で医療用チュービング等の膨張可能要素の体積膨張である容量(capacitance)又は“デッドスペース”が含まれる。容量効果に対して、この開示が提供する解決策は、薬剤流体の注入を開始する前に、流体送給システムの膨張可能部材を予め加圧することを含んでいる。流体流れ経路に関しては、移行部、ベンド及び内部粗さが、ボーラス注入の最初と終わりに混合を生じさせる乱流を最小に減じることができる。
【0054】
層流条件において、ストレート管の中心にある流体は、流体プロファイルの平均速度の2倍で移動し、流体速度は、略放物線形状であり、壁面での速度は0である。それゆえ、本発明の放射性薬剤の用途では、流体が、ある種類の薬剤から、他の薬剤に変化すると、新しい薬(第2液体)は、速やかに、チュービングの中心から下方へ移動するが、壁面近くのチューブから出た第1流体をゆっくりと洗い流す。医療用流体送達用途で一般に用いられる内径(ID's)は小さいから、医療用流体送達システムは、一般的に、層流の形で動作する。この開示の中の一態様において、薬剤ボーラスは、固体又は気体の“プラグ”によって、薬剤ボーラスを分離することが望ましい。
【0055】
ボーラスに影響を及ぼす他の要素は、患者の固有のものであり、例えば、静脈の体積、洗浄が不十分になる静脈分岐(例えば、血流速度において、流入の高速化、流出の低下)、静脈の拡張又は怒張、悪性静脈弁、逆流などがある。人体の静脈体積及び静脈分岐には個人差による自然変動があることは知られている。また、静脈は分岐構造を有しているので、血液は、それらが通過する筋肉の緊張又は弛緩状態とは独立して、心臓に戻ってくることも知られている。次の表1は、成人の典型的な静脈セグメントに対するおおよその血液量を示している。
【表1】
【0056】
前掲の表より、通常の肘前注入部位と上大静脈(SVC)の間では、静脈中の血液はかなりの量であることを理解することができる。もし注入後のフラッシュ量が、ボーラス注入を上大静脈内に押し出すのに十分でない場合、注入を一旦停止し、ボーラスを血液の流速まで下げて、上大静脈内をさらにゆっくりと外へ移動させる。それゆえ、ここでの開示では、通常の成人に対しては、20mlを超えるフラッシュ量、好ましくは40〜60mlとすることが好ましく、子供の場合は少なくする。
【0057】
静脈分岐は、この体積効果をさらに悪化させる。場合によっては、二重ピークのボーラスを避けることができなくなる。その理由は、1つのブランチを通る流体経路は他のブランチを通る流体経路よりも長いことによる。例えば、手の甲の静脈に注入すると、静脈の追加と分岐が前腕で起こるため、この影響はさらに大きくなる。
【0058】
静脈は、圧力下で膨張し、圧力下にないときは崩れた状態になる(collapse)という点では、キャンバス製消火ホースと同様である。もし静脈が、一部又は全部が崩れた状態になると、最初の注入量の多くは静脈の拡大に供されるため、前進運動が遅れる。また、静脈には、通常、心臓への一方向の流れが確実に行われるようにする弁を有してるので、静脈が、移動によって圧迫されると、血液を心臓に戻すポンプ作用となる。もしこれらの静脈弁が損傷すれば、注入流体の流れは静脈内の上流に移動することになる。それゆえ、この開示では、所定薬剤(本実施例では放射性流体)を注入する前に、十分な生理食塩水を注入することが望ましい。
【0059】
もし機械的なパワーインジェクターを流体投与手段として使用する場合、慣性作用により、機械部品の加速が制限され、流体注入ボーラスの立上り時間(rise time)が制限される。また、パワーインジェクション状態では、駆動モータは、モータの力が機械的ギヤを通じて伝達されようにある程度移動し、流体を駆動させるための圧力を発生させなければならないので、リバース運動からフォワード運動へ切り替わるとき、機械的スラックが顕著になる。この慣性による制約は、注入ボーラス特性に悪影響を与えることになる。
【0060】
明細書に開示した特徴は、時間が重要な画像作成研究において、改良された流体注入システム及び関連する方法に関するものである。流体注入システムの望ましい成果は、注入流体を“タイト”ボーラス又は“コンパクト”ボーラスを送達して、ファーストパス画像及び対応するデータを作成又は向上させる能力である。しかしながら、非常に“シャープな”ボーラス注入が必要でない場合もある。また、例えば、核医薬計数率(濃度)の制限が、ボーラスに対して好ましい時間幅があることを意味する場合、また、大静脈及び右心臓内での流れ又は混合効果により、腕に注入された無限タイトボーラスでさえも、目的領域に到達する前に有意に分散されるように、ボーラスの注入を十分にゆがめることができる場合には、この“シャープな”ボーラス注入が好ましい。非常にシャープなボーラスを送達するこのシステムの利点は、医療従事者の希望又は医薬手順の必要性に応じて、コンピュータ制御システム(この明細書に記載)を用いて、シャープでないボーラス又はさらに複雑な任意形状のボーラスを制御しながら繰り返し行なえることである。以下の説明は、ファーストパス核医薬の用途に関するものであるが、その概念は、限定するものではないが、核医薬灌流の定量化、数mlの小容量で10フィートの距離を越えて送給される過分極C−13、コンピュータ断層撮影(CT)試験ボーラス(典型的には20mlの造影剤)、磁気共鳴血管撮影法及び機能的画像化(典型的には、10−30mlの薬剤)、薬物動態学的研究又は薬理学研究、受容体動力学研究、動物注入(薬剤1mlよりもはるかに少ないことが多い)、及び高粘度血管造影(明細書の中に記載するように、高粘度造影流体を囲む低粘度流体により潤滑される)にも適している。高粘度血管造影に関しては、造影を小さな“ランプ(lump)”又は“スラッグ(slug)”とすることで、血管を通それらの動きが追跡されることができ、血液流の測定を補助するために用いられることができる。
【0061】
図1は、従来の一般的な手操作式流体送達システムを示しており、該システムは、ストップ栓(1030)に接続され、核医薬トレーサ(1011)を収容するシリンジ(1010)(一般的には3mlシリンジ)を含んでいる。また、生理食塩水(1021)で満たされたシリンジ(1020)(一般的には20mlシリンジ)は、ストップ栓(1030)に接続される。生理食塩水(1021)を用いて、IVカテーテルへの接続部(1050)で終端する接続チュービング(1040)を含む流体経路からプライミング(例えば、空気の除去)される。システムがプライミングされた後、既に患者の中へ挿入されているIVカテーテルに接続される。
【0062】
タイトボーラスを送達する1つの課題は、シリンジ(1010)(1020)の手作業を、迅速かつ均一に行なうことである。少量のトレーサ(1011)を速やかに押すことは、比較的容易である。しかしながら、ストップ栓(1030)を回転させなければならないので、チュービング(1040)内の流れを停止させねばならず、洗浄用生理食塩水が迅速に送達される。生理食塩水フラッシュは、一般的に、20〜25mlのシリンジ(1020)内で15〜20mlである。例えば、そのように大きなシリンジ(1020)を使用すると、例えば22ゲージIVカテーテルを通じて速やかにボーラスを送給するのに十分な圧力を生成することが困難になる。もしチュービング(1040)の容積が、シリンジ(1010)内にトレーサ(1011)(流体又は薬)の全部を含むのに十分であれば、生理食塩水(1021)(又は他の流体又は薬剤)によって押されるまで、患者への注入は開始されない。それゆえ、この場合には、ストップ栓(1030)を回すのが遅れても、ボーラスは患者の腕(1060)にまだに入っていないから、ボーラスをゆがめることはない。接続チュービング(1040)は比較的短い他の例では、トレーサ(1011)又は他の流体の容積は、少なくとも1ミリリットル以上であるから、ストップ栓(1030)の回転の時間遅延は問題となる。また、追加の薬剤(アデノシン等の心臓のストレッサ)がある場合、接続チュービング(1040)の長さの一部又は全部を通って注入される。この場合、追加の薬剤の例として、心臓のストレッサであり、具体的には、アデノシンがある。この場合、注入ストリームの中に入るトレーサ(1011)が、他の薬剤がその注入速度で注入されるとき、他の薬剤に沿って運搬され、注入ボーラスを拡大させる。
【0063】
図2は、薬剤輸送容器(1100)の一実施例を示しており、タイトボーラスを達成するために、1又は複数の障害を克服するために、図4−5に関連して明細書に記載した流体注入システムの一部である。薬剤輸送容器(1100)及び図4−5に関連して記載したシステムは、タイトボーラス注入を対象薬剤の患者に実施するのに適しており、薬剤輸送容器(1100)とシステムは、明細書の中で特定された手順に用いられることができる。薬剤輸送容器(1100)及び関連する図4−5のシステムは、ヒト及び動物の流体注入におけるタイトボーラス達成に関連する制限要因に対して既に特定された様々な“解決”を実行する。薬剤輸送容器(1100)は、ハウジング又は囲い(1110)を含んでいる。薬剤輸送容器(1100)は、医療用接続チュービング形態の流体経路要素(1150)(1160)(1165)を含むんでいる。流体経路要素(1160)(1165)は両方で、流体経路要素(1150)を形成する。この明細書において、示された実施例の特徴を説明するために、流体経路要素(1160)は第1流体経路要素と言い、流体経路要素(1150)は第2流体経路要素と言い、流体経路要素(1165)を第3流体経路要素と言うものとする。図示の如く、流体経路要素(1150)(1160)(1165)の望ましい一形態は、コイル状チュービングであるが、別個の入口及び出口を有し、流体量が流体流れにより管路を通って下流に運ばれるものであればどんな流体管路でもよい。これらの流体経路要素は、トレイ又は容器に、物理的に取り付けられるか一体化されており、使用者は、それらを単一ユニットとして輸送容器(1100)の中に配置することができる。なお、この明細書では、流体経路要素(1150)(1160)(1165)は別個の構成として示しているが、これは、発明の特徴を説明するための例示であって、これら要素を組み合わせたり省略しても、同等の流体運搬用流れ経路を作り得ることは、流体伝達分野の当業者にとって明らかであろう。流体経路要素(1150)(1160)(1165)のうちの1又は複数の要素は、各要素を具えるコイル状チュービングにより、ハウジング(1110)から外側に向けられることもできる。図4−5において、流体経路要素(1150)(1160)(1165)は、明瞭化の目的のために図示を省略している。
【0064】
流体経路要素(1160)には放射性薬剤が入れられ、十分な厚さのシールド要素(1120)(1121)(1122)に囲まれている。シールド要素は、タングステン、鉛又は他のシール材料から作られ、流体経路要素(1160)内の放射性薬剤から放出される放射能から医療従事者を保護する。シールド部(1120)は、流体経路要素(1160)を囲む囲いの形態が望ましい。流体経路コネクタ(1192)(1193)は、夫々、流体経路要素(1165)(1160)を上流の流体源に接続し、流体コネクタ(1191)は、流体経路要素(1150)を患者に挿入されるカテーテルに接続する。上流流体源は、例えば、放射性医薬(この明細書では、放射性薬剤とも称する)と生理食塩水を含んでいる。所望により、流量制御用薬剤輸送容器(1100)の中に、弁要素(1170)(1180)が用いられる。弁要素は、流体経路要素(1150)(1160)(1165)内で液体の拡散及び/又は重力による移動を防ぐもので、例えば、一方向チェック弁又はスリットシリコーンダイヤフラム弁である。また、弁要素(1170)及び/又は(1180)は、通常は閉じられた電子的又は機械的作動式の制御弁(例えば、ピンチ弁又は回転弁)である。センサ要素(1201)(1202)(1203)(例えば、超音波センサ又は赤外線センサ)は、流体経路要素(1150)(1165)(1160)が、それぞれ、液体又はガスを含んでいるかどうかを検出するために用いられる。所望により、センサ要素(1201)(1202)(1203)を組み込むこともでき、例えば、放射性薬剤専用の放射線センサであり、投与量の取出し又は送達の態様又は状態が測定される。センサ(1203)が放射線センサの場合、センサ(1203')として示され、流体経路要素(1160)の一部又は全部からの放射能を測定することが可能である。好ましくは、容器ハウジング(1110)には、1又は複数の情報タグ又はコード化メモリユニットが取り付けられており、これらはデータ格納デバイス又は情報タグ(1899)として示され、輸送容器(1100)の1又は複数の要素に連繋されている。図3は、閉じられた蓋と容器(1110)担持用ハンドルを有する薬剤輸送容器(1100)の外側外観図である。好ましくは、蓋(1112)と容器ハウジングの基部に、シールド(図示せず)が配備される。このように、蓋(1112)が閉じられているとき、薬剤輸送容器(1100)から放出される放射線は殆ど無い。
【0065】
図4は、充填及び/又は投与量分配システム(1300)を示しており、これは、薬剤輸送容器(1100)に連繋して、該薬剤輸送容器(1100)に、放射性薬剤、生理食塩水及び/又は他の流体を充填するよう構成されている。充填システムは、米国特許第5,806,519号(Evans, III, et al.)に開示されたシステムと同様であり、該米国特許は引用を以て本願に組み込まれるものとする。この例では、プライミング用流体及びフラッシュ用流体(この例では、両方とも生理食塩水)との混合を防止するのに、放射性薬剤の所望ボーラスを分離するのにバブル(CO2が好ましい)が用いられる。図18で示されているように、CO2バブル(600)は、例えば、流体経路要素(1160)内にある2種類の流体(602)(604)(ここでは生理食塩水と放射性流体)を分離するために用いられる。これら流体は、患者の静脈に少量進入したとしても、有害性は比較的少ないからである。ボーラスが最大のシャープさ(sharpness)を得られるようにするために、流体分離用としてCO2バブルが好ましいが、この明細書では、これに限定するものではない。好ましくは、流体経路要素(1150)(1160)(1165)は、あらゆるドリップをキャッチできるトレイを具えたカセットの中に予め構成され、ハウジング(1110)の中に入れられており、流体経路要素(1160)は、内部シールド用ハウジング(1120)の中にある。コネクタ要素(1192)(1193)は、夫々、連結用コネクタ(1392)(1393)を介して、充填システム(1300)に接続されている。充填操作を開始するには、所定量の生理食塩水が、流体ポンプ(1410b)により、関連データ格納/メモリ要素(1899a)を具える生理食塩水源容器(1411b)から送出され、管路(1352)を通り、ポートa-bが接続接続された制御バルブ(1342)を通り、ポートb-cが接続された制御バルブ(1343)を通り、流体経路要素(1160)に入る。制御バルブ(1342)の操作によりポートa-cが接続され、バルブ(1341)が開いて、CO2源管路からCO2が流体経路要素(1160)の中にに流れ込む。CO2源は、例えば、低圧レギュレータを具えるタンクである。ラインに入るCO2の量は、圧力と、制御バルブ(1341)が開く時間の関数である。送達される量は、典型的には、1ml未満である。次に、制御バルブ(1341)は閉じられて、制御バルブ(1343)の操作により、ポートa-cが接続される。所定量の放射性薬剤が投与されるように計算された量は、流体ポンプ(1410a)により送出され、関連データ格納/メモリ要素(1899b)を有する放射性薬剤源容器(1411)から、管路(1353)を通って、流体経路要素(1160)に入る。その前に、食塩水とCO2が押圧される。所定量の放射性薬剤が、流体経路要素(1160)に供給された後、制御バルブ(1343)の操作により、ポートb-cが接続され、制御バルブ(1341)が開いて、1ml未満のCO2を流体経路要素(1160)に供給される。次に制御バルブ(1341)が閉じられる。流体経路要素(1160)は、2つのCO2ボーラスを最大量含むことができ、放射性薬剤の予想最大量を含むことができる。所望により、流体経路要素(1160)に送られた放射性薬剤の投与量を測定し又は確認するために、放射線センサ(1203')を用いることができる。流体経路要素(1160)の充填を完了するには、制御バルブ(1342)の操作によりポートa-bを接続し、最初のCO2“バブル”のリーディングエッジが、センサ(1203)(この例では、空気センサ)に到達するまで、生理食塩水が流体経路要素(1160)に送り込まれる。流体経路要素(1160)内の最初の生理食塩水は、リーディングエッジが流体経路要素(1150)の中に移動できる十分な量を有している。或いはまた、センサを用いないで、チュービング(1150)までずっと液体(バブルではなく)を送達するのに必要な量を、コンピュータ制御システム又は制御ユニット(1442)によって、計算し、送達することもできる。プライミングプロセスを完了するには、制御バルブ(1342)の操作してポートa-cを接続し、食塩水が食塩水源(1352)から送り出され、流体経路要素(1165)(1150)を満たす。オーバーフローは、流体コネクタ(1191)から流出することができ、所望により、コネクタ(1391)を通して、使い捨て式廃棄物容器(1359)の中に集めることもできる。或いはまた、プライミング用チューブは、MEDRAD Stellant(登録商標)インジェクター(米国特許第7,018,363号(Cowan, et al.)及び 米国特許出願公開第2004/0064041号(Lazzaro)及び第2005/0113754号(Cowan)を参照)に連繋されたものと同様のものでもよい。プライミング用チュービングは、操作者が、コネクタ(1191)を患者に接続する準備ができるまで、キャップとして、コネクタ(1191)に取り付けられたままにすることができる。
【0066】
いったん充填されると、薬剤輸送容器(1100)をインジェクションサイトに搬送されることができる。インジェクションサイトは、例えば、ファーストパスカメラ(例えば、Wexford PAのCDL)を有する心臓ストレスルーム、一般的にFDGで処理される静かなインジェクションルーム、又はインジェクションと共に又はインジェクション直後に開始するイメージングルームがある。或いは、薬剤輸送容器(1100)は、パワーインジェクタ(例えば、国際特許出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)の図2A-2B又は図18に示されている)の非可搬性部分又は選択的可搬性部分でもよい。
【0067】
薬剤輸送容器(1100)からの放射性薬剤の送達は、図5A−5Bから容易に理解されることができるであろう。なお、図4−5では、これら図における主要事項の説明を明確化するために、センサ要素(1201)(1202)(1203)の図示を省略している。流体送達システム又はプラットフォームは、薬剤輸送容器(1100)がポンプユニット又は流体ポンプシステム(1400)と結合されるときに形成される。ポンプユニット又は流体ポンプシステム(1400)は、ポンプユニット(1410)、システム制御バルブ(1420)、生理食塩水源(1401)の他、図示はしていないが、コンピュータ、電源、ユーザインターフェース(制御、繰り返し、同期化に用いられる)等の他の態様を含んでいる。流体コネクタ(1192)(1193)は、ポンプ出口コネクタ(1432)(1433)に接続される。ターミナル又はエンドコネクタ(1191)と流体経路要素(1150)は、“プル式”又は薬剤輸送容器(1100)のハウジング(1110)から外側に向けられるものが好ましく、コネクタ(1191)は、患者Pの静脈に予め挿入されているIVカテーテルCに接続するのに用いられる。流体経路要素(1150)(1160)(1165)の各々は、コイル状チュービングである、ハウジング(1110)から外方に引き出されるか、又は繰り出される。流体経路要素(1150)(1160)(1165)に沿ってストッパーが配備され、各流体経路要素は、ハウジング(1110)から過剰に引き出され又は繰り出されることはない。これは、放射性薬剤を含む流体経路要素(1160)のどのセグメントも、シールドされた輸送容器(1100)の中から引き出さることがなくなるという利点がある。流体経路要素(1150)は、患者のIVカテーテルCに届き、接続されることができる十分な長さである。一実施例において、患者へのIV挿入の開通性を確認するために、試験インジェクションとして、少量の流体が投与される(数ミリリットルを数秒)。挿入の確認が行われると、次に注入が行なわれる。薬剤輸送容器(1100)は、図5Bの流体ポンプシステム(1400a)と共に用いられることができる。図5Bでは、二つの独立したシリンジポンプ(1410a(1)),(1402a(2))により、流体は二つの流体経路要素(1160)(1165)の中を送給される。例えば、これら二つのシリンジポンプは、例えば、MEDRAD Stellant(商標名)のデュアルインジェクター、又はMEDRAD Spectris Solaris EP(商標名)のインジェクターである。この明細書全体において、インジェクター又はポンプは、コンピュータ制御され、流体流れのプログラミング及び制御を、当業者に公知の手段を通じて行なうことができるユーザインターフェイスを有している。この明細書では、“ポンプ”、“ポンプユニット”及び“圧力装置”は、医療分野で知られているあらゆる種類のポンプ装置であってよく、例えば、図5Bに示されているシリンジポンプ、蠕動ポンプ、回転ベーンポンプ、容積型ポンプ又は医療若しくは流体運動分野で一般的に用いられる他のポンプを挙げることができる。コントロールユニット(1442)は、薬剤輸送容器(1100)のデータ格納/メモリデバイス(1899)と相互作用して、薬剤送給に有用な情報を収集し、その後の送達に有用な情報を、送達、保存又は記録することができる。
【0068】
前述したように、ボーラス注入をゆがめる(distort)効果の1つは、静脈の膨らみ又は膨張である。また、機能不全の静脈弁がどれかでもあると、パワーインジェクションが行われるとき、流体が、静脈の中を逆流することがあり、薬剤の供給がさらに遅延する。変動性及びボーラス拡大のこれらの源の影響を低減するために、薬剤の供給直前に、薬物送達の全流量で所定量の生理食塩水を注入して、静脈を膨張させ充填することが望ましい。これは、制御バルブ(1420)及び該制御バルブ(1420)のポートa-cを通じてポンプユニット(1410)を接続し、プログラムされた流量の10〜40mlの生理食塩水(例えば、4ml/s)を送給することによって行なうことが望ましい。次に、制御バルブ(1420)を速やかに操作して、ポートa-cを接続することにより、生理食塩水は、好ましくは同じ流量で、患者Pに再び送り出される。この時、放射性薬剤は、流体経路要素(1150)を通り、流体経路要素(1160)から放射性薬剤を洗い流し、患者Pに送られる。十分な量の追加の生理食塩水フラッシュ(例えば20〜60m)が送給され、放射性薬剤は、末梢静脈からフラッシュされ、中央循環に入る。注入が完了した後、流体経路要素(1150)(1060)(1065)を取り囲む前述の“カセット”又は“トレイ”及びあらゆる関連機械的アッセンブリにより、これら要素は、使い捨てユニットとして、容器ハウジング(1110)から取り除くことができる。所望により、流体経路要素(1160)(1165)は複数の患者のために使用され、各患者に対してターミナル又は終端流体経路要素(1150)若しくはその十分なセグメントは処分されることができる。例えば、流体経路要素(1150)の患者側端部は、逆流を防ぐために分離用チェックバルブを含むことができ、そのようなチェックバルブの上流に追加のコネクタを組み込むことにより、追加のコネクタの下流でチェックバルブを含むチュービングの遠位側の短い長さ部分を、患者毎に交換することが可能である。
【0069】
図5Cは他の実施例を示しており、図5A−5Bは流体送達システムを示している。前述した流体取扱い容器(1100)の流体経路要素(1160)が、端部近傍のコネクタ(1193)を通る薬剤で満たされると、インジェクションボーラスをそれが充填された同じ端部から排出され、所望により短いチューブを通って患者に送られるので、ボーラス流れ拡大の多くは排除される。この構成により、ボーラス注入は、チュービングの全長を移動させる必要性がなくなる。図5Cのシステムを用いて、前述したように、流体取扱い容器(1100)から流体を送給することができる。薬剤輸送容器(1100)は、患者Pの近傍に配置されることができ、コネクタ(1193)(1192)は、入力流体コネクタ要素(1195)(1196)(夫々、流体コネクタ(1193)(1192)に結合されている)を含むY-コネクタ(1194)を介して、及び、患者IVカテーテルCに接続された出口流体コネクタ(1197)又は患者IVカテーテルCに接続された簡単な短いチューブを介して、患者に接続されることができる。長い流体経路要素(1440)(例えばチューブ)を、ポンプユニット(1410)及び生理食塩水源(1401)に接続されることができる。この実施例において、好ましくは、バルブ(1170)(1180)は、流体ポンプシステム(1400)内の流体ポンプユニット(1410)を制御するコントロールユニット(1442)により制御される電子制御バルブである。或いはまた、バルブ(1170)(1180)は、コンピュータ制御されたストップ栓に置き換えることができ、例えば、前述した制御バルブ(1420)と同様のものでもよい。例えば、生理食塩水を流体経路要素(1165)を通して注入することにより、注入前に、静脈を充填することができる。次に、バルブ(1170)(1180)は切換え可能であるから、流体は、流体経路要素(1160)を通り、薬剤及び十分な量のフラッシュ流体を送給して、前述の実施例の全ての利点をもたらすことができる。この実施例の利点の1つは、薬剤は流体コネクタを投入され、次に、同じ流体コネクタを介して取り出されることができることであり、流体セパレータは、流体経路要素(1160)内の固体球であってよく、分離用のガス(例えば、CO2)を必要でない。そのような分離用球は、流体経路要素(160)の下方へに移動できるように、十分に小さい。分離用球は、流体コネクタ(1193)の中及び流体経路要素(1160)と流体経路要素(1440)の接合部で、スクリーン要素又は同様な捕獲機構により、流体経路要素(1160)の中に滞留させられ、流体がスクリーンによって停止すると、流体は玉の周りを流れることができる。一般に、この発明の実施例において、薬剤とフラッシュ用流体は、好ましくは、流体経路要素の中又は管路の中で分離され、注入される薬剤のタイトボーラスを提供する。分離用流体という語は、十分な量のガス、非混和性又はプラグ流として十分に作用し得る高粘度などの物理的特性を有する液体、又は前述した流体経路要素の中でプラグとして流れる大きさの固体要素(例えば、球)を含むものである。それゆえ、図18において、CO2バブル(600)は、液体のスラグと置き換え可能であり、流体経路要素内の流体の流れに沿って運ばれる玉等の固体部材でもよい。
【0070】
前述した図5A−5Cの流体送達システムの変形例において、インジェクション工程を生理食塩水で開始することを所望せず、放射性薬剤を移動させることなく生理食塩水を送達することを所望しない場合は、流体経路要素(1165)は不要である。例えば、図5Aの制御バルブ(1420)、又は図5CのY−コネクタ(1194)を、薬剤輸送容器(1100)内に組み込むことができる。さらに、生理食塩水源(1401)、流体ポンプユニット(1410)及びコントロールユニット(1440)を含むポンピング機構全体が、他の変形例における1ユニット内の中に物理的に組み込まれることができる。
【0071】
図5A−5Cの前記流体送達システムの変形例において、インジェクション工程を生理食塩水で開始することを所望せず、放射性薬剤を移動させることなく生理食塩水を送達することを所望しない場合は、流体経路要素(1165)は不要である。例えば、図5Aの制御バルブ(1420)、又は図5CのY−コネクタ(1194)を、薬剤輸送容器(1100)内に組み込むことができる。さらに、生理食塩水源(1401)、流体ポンプユニット(1410)及びコントロールユニット(1440)を含むポンピング機構全体が、他の変形例における1ユニット内の中に物理的に組み込まれることができる.
【0072】
図5Cのシステムの利点は、患者と薬剤の近接可能性にある。図4の充填又は分配システムにおいて、薬剤は、流体経路要素(1150)から最も遠い流体経路要素(1160)(1165)の端部に充填される。流体を、コネクタ要素(夫々、コネクタ(1192)(1191))を介して分配し充填することにより、ボーラス注入の分散を少なくすることができる。そのような送達は、図5Cの流体送達システムによって行なうことができる。国際特許出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)に開示された実施例では、インジェクターシステムの薬剤と選択的な幾つかの態様が、患者の腕又はその近傍に備え付けられている。本発明は、インジェクターシステムの薬剤及び幾つかの関連態様は、患者が装着しているベストに備え付けられる ことを想定しており、選択的に、必要なECGの幾つかの態様を含んでいる。或いはまた、薬剤量を支持するインジェクターシステムの態様としては、患者が着用するホルスター等の構造、例えば、肩掛けホルスター又はウェストに取付られたホルスター機構によって保持される。
【0073】
患者が、複数薬剤の連続注入を受けたい場合、追加の流体経路要素を追加し、患者流体経路要素(1150)との共通の接合部又は一連の接合部で合流させることで、それらの内容物は流体経路要素(1150)を介して、患者に送達されることができる。例えば、幾つかの撮像法は、テクネチウムとタリウム2種類の放射性同位体を使用する。医療分野、特に核医薬分野の当業者にとって明らかなように、流体輸送容器、充填及び送達システム及び図2−5の夫々の装置は、所望により、複数種類の薬剤を、制御可能に準備及び送達する能力を獲得するために、前述と同様な追加要素及び装置を含むことができる。さらに、多くの核医薬手法及び多くの他の医療手法は、成功を収めるために非常にタイトなボーラスは必要としない。これらの場合、前述のCO2“バブル分離”は必要ではなく、この明細書に記載されている他の利点の相当部分を維持しつつ、様々な実施例の具体的特徴は緩和され又不要にすることができる。
【0074】
この明細書の全体を通じて、システム、デバイス及び技術は、迅速に獲得されたファーストパス情報又はデータが重要な様々な画像作成又は他の医療手法に使用されることができる。心臓のファーストパス核医薬については、かなり詳細に記載した。例えば、肺や腎臓を含む他の核医薬ファーストパス研究がある。PET作像研究の中には、時々、長時間持続情報に加えて、ファーストパス情報に使用するものがある。CT血管造影(CTA)は、ファーストパス研究として好適に行われる。様々な放射性同位体及び/又は分子は、単独で、又は組み合わせて、用いられることができる。
【0075】
過分極されたC-13及び同様な原子は、分子の中に組み込みまれるか、又、磁気共鳴映像法(MRI)において、造影剤として直接用いられることができる。一般的に、原子は、画像用マグネットからはある距離がおかれている。その理由は、プロセスはイメージャと同じ様に高磁場を必要とするからであり、二つのフィールドは、米国特許第6,453,188号(Ardenkjaer-Larsen, et al.の図2参照)に開示されるように、互いに干渉してはならないからである。数ミリリットルの薬剤が入れられたシリンジを、ポラライザーから患者へ速やかに移動させるか、長いチューブが用いられる。長いチュービングが用いられる場合、前述した注入ボーラスの多く又は全部に広がり(歪み)現象が生じることがあり、前述の対策を有効利用することができる。例えば、コイル状管を有する投与容器の中に薬剤を貯蔵するよりもむしろ、薬剤は、薬剤の分極位置とは離間位置にある前記流体経路要素(1150)を通って効果的に輸送され、患者のIVカテーテルCに送達される。過分極C-13の場合、材料は、運搬用チュービングの壁との接触により脱分極される問題がある。本発明では、詳細に説明した同心流れ機構(concentric flow arrangement)により、この問題を低減又は防止することができる。
【0076】
CT画像化において、試験ボーラスは、患者の体の反応を測定又は評価するのに用いられることができ、最適なイメージングを行なうのに、特別に設計されたイメージングボーラス又は大量のものが与えられる。例えば、CT血管造影(CTA)研究において、ボーラス注入は、ルーメンが正確に視覚化されるように、冠状動脈内に十分な造影剤を有するように設計されるが、観察されるルーメンは、石灰化がルーメンに混乱を与えるほど多くの造影剤を含んではいない。右心臓において、造影剤は血液を筋肉と区別するのに十分でなければならないが、線状又はビームハードニングアーティフアクトを生じさせるほど多くはない。最適なイメージング用ボーラスプロファイルを得るのに、試験ボーラス注入の適当な量の造影剤は、約20 ml以下である。この試験ボーラスの一連の画像は、次に、最適なイメージングボーラスを設計するのに用いられる。前述したように、試験ボーラスを遅延させたりゆがめることができる要因は数多くある。イメージングボーラス注入が、ゆがめられた試験ボーラスの結果を用いて設計されると、イメージングボーラス注入は、最適結果は得られないであろう。本願のシステム、装置及び方法を用いることにより、試験ボーラスの歪みを最小にし、イメージング用注入ボーラスのシャープさが向上する。
【0077】
MR血管造影とMRI機能画像において、単一ボーラスで患者に送達されることができるインジェクションは、10ml、又は20ml、又は30mlのオーダである。MR血管造影の場合、目標は、血管内の血液の混濁(opacification)である。機能イメージングにおいて、目標は、患者の様々な体積要素(voxels)における濃度対時間曲線を作成することである。これらの曲線は、組織の灌流を計算するのに使用されることができる。例えば、脳においては、灌流の増加は、特定タスクによって生じる活性の増加を示す。歪みのあるボーラスは、濃度対時間曲線を歪ませることにもなり、分析を困難、不正確又は不可能にする。前術したように、試験ボーラスを遅延させたり歪ませることができる多くの要因がある。本願のシステム、装置及び方法を用いることにより、試験ボーラスのゆがみは最小化され、イメージングボーラスのシャープさが向上する。
【0078】
国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)に記載されているように、ネズミの血液量は、約2mlであり、0.2mlより多く注入すると、致死に到る虞れがある。注入量は、一般的に25〜50μl(0.02ml〜0.05ml)である。チュービングの長さ及び内径(ID)は、一般的に、可能な限り小さいことが好ましいが、チュービング長さを12〜18インチ未満にすることは困難である。もっとも一般的な小径IDチュービングはPE10であり、IDは0.010インチである。このチュービングは、1.57μl/インチ長さであるので、18インチのチュービングピースでは、体積が28μlであり、これはおよその注入量である。本発明では、チュービング内にガス気泡を使用しており、これは、注入ボーラスが送達されるときに、ラインからプライミング用の大部分を“引き込む(suck)”複経路と共に用いる状況下では大きな利点となるであろう(国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)の図7を参照)。
【0079】
この発明の実施形態は、一般的に、流体を動物及び人間へ送達することに関するものである。この状況では、流体及び流体と接触する部材は、消毒され、清潔で、有害な汚染物質又は発熱物質を含まない必要がある。米国の医療実務において、これは、一回使用、前包装、消毒済みで使い捨て式の流体経路要素、1回使用、単一患者用流体源を用いることにより達成される。しかしながら、これらは、コストの上昇、廃棄物の増加の他、送達システムの準備作業が必要になり、さらには準備中のエラー発生を招く虞れがある。MEDRAD,Inc.による複数の米国特許の中に、複数患者用の送達システムとして、流体のバルク容器及び流体経路要素の選択された要素の使用が可能なシステムが開示されている。使用後は患者で汚染されるので、これらのシステムは、1人の患者に使用後は廃棄される使い捨て式のものを含んでおり、消毒済みが保証されたデバイス又は機構を含んでいる。これは、例えば米国特許第5569181号に記載されており、該特許は、引用を以て本願に組み込まれるものとする。例えば、図4の分配又は充填システム(1300)の流体経路要素および流体容器は、複数患者又は複数回使用し、定期的(例えば、1日の終わり)に廃棄されるが、流体源が空になるか又は交換されるまで、次の患者に使用される。同様に、図5、10及び13の送達又はポンピングシステム(1400)の流体経路要素は、複数の患者に優先的に使用可能な流体経路要素部及び流体容器を有することもできる。また、輸送容器(1110)の内部において、流体経路要素(1150)の遠位側セグメントの大部分が、各患者への使用後、交換され、放棄され、又は処分され、消毒済みが保証された装置又は機構が、複数回使用又は再使用による汚染の防止が含まれている場合、選択された流体経路要素又は部材のセグメント(例えば(1160)(1165)(1150))は、複数の患者に使用されることができる。例えば、図10Aにおいて、流体経路要素(1150)(1152)のセグメントは、各患者の使用後に処分されることができ、1又は複数の一方向チェックバルブ等の消毒済み保証装置を含んでいる。
【0080】
次に図9A−9Iを参照すると、パワーインジェクターの使用例を示しており、インジェクターサーボシステムは、当該分野で知られているように、注入用シリンジ内のプランジャー動作を制御するのに、閉ループを使用する。図9Aに例示したパワーインジェクターシステム(1500)は、パワーインジェクターと流体流路(1502)を含んでいる。図9Bの上側グラフに示されるように、タイトな四角形状のボーラス注入を得ることが好ましい。しかしながら、様々なファクターが、ボーラス注入特性に影響を及ぼし、歪ませることができる。そのような要因には、前述したように、注入流体(例えば、図9Bに示されるX-線造影剤)の生理化学特性、コンプライアンス等のシステム要素、及び患者ファクターを含んでいる。ボーラス注入に歪みが含まれることは、定常流速までの時間が増加し、短イメージャのスキャン用窓の中で定常流速を得られないので好ましくなく、タイト注入ボーラス特性には、機能性灌流イメージングアルゴリズムが最も良く機能すると考えられる。
【0081】
前記に鑑みると、アルゴリズム的アプローチは、患者への流体注入ボーラスの流れプロフィールの制御を向上させるのに用いられることができる。このアルゴリズムは、例えば、前述したように、図5A−5Cの夫々の流体送達システム内のポンプユニット(1410),(1410a)及び制御バルブ(1420)の動作を制御するのに用いられることができる。このアルゴリズムアプローチは、図9A中、破線で示される流体流れ経路(1502)のデータ駆動型の、ユーザ毎モデルに基づくことが望ましい。システム中の流体経路要素の全てについて、データの獲得を簡素化し、データの精度を向上させるために、データ格納デバイス(1899)(例えば、バーコード、メモリデバイス又はRFID)を、米国特許第5,739,508号(Uber, III)に記載され、好適にはIVカテーテルCを含む様々な流体経路要素に連繋されることができる。このようなデータス格納デバイスは、前述した薬剤輸送容器(1100)に連繋されることができる。これは、、例えば、容器(1100)のハウジング(1110)と連繋されることにより、また、流体経路要素(1150)、又は(1160)、又は(1165)、又はこれら要素を含む“カセット”と連繋されることができる。このようなデータ格納デバイスのさらなる例は、有害流体輸送容器に関する国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)に記載されている。これらデバイスは、制御コンピュータに配備され、様々な流体経路要素に関する必要な情報を用いてアルゴリズムを実行し、存在する流体経路要素にアルゴリズム又はモデルを適合させる。これらのデバイスは、流体経路要素の内容物及び状態に関する情報の転送又は確認に用いられることもできる。さらに、これらのデバイスは、処理の前後において、個々の患者、又は病院の記録、又はより広範な使用のために、患者及び処理に関する情報を、獲得及び転送するのに用いられることもできる。これは、例えば、米国特許第7,457,804号(Uber, III, et al.)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。
【0082】
図9Aは、そのような流体流れ流路の包括的な一例であり、図5A−5Cは、他の例である。図9Cに示す構造は、流速が例えば0ml/s〜2ml/sのときのデジタル制御システム(例えば、PIDコントローラ)を包含している。図9Cは、図9Aの流体送達システム(1500)の操作を制御する閉ループ制御システムを示しており、ここで、コントローラのエラー信号は、所望の流速から推測出力流速を差し引いたものであり、流体流れモデル入力は、インジェクタモータ速度測定値である。
【0083】
図9Aに示される基本的な流体送達システムの実験テストを、図9Dに記載された試験セットアップを用いて実施した。複数の試験を実施し、インジェクタ(1501)のモータ速度の測定値と流体流れ経路(1502)の遠位側流速を記録した。流体送達システムの制御又は訂正された動作をモデリングするアルゴリズム(1510)(図9E参照)は、図9E−9Fに示されたモデル化流体送達システムを制御するものであり、後で説明する。
【表2】
【0084】
この試験結果は、前記アルゴリズムによる制御訂正が行われない流体送達システムの操作結果と比較される。図9Gは、制御が行われない流体送達システム(1500)からのボーラス注入結果をグラフ表示したものであり、図9Hは、前記アルゴリズムによる制御が行われた流体送達システム(1500)からのボーラス注入結果をグラフ表示したものである。図9Iは、1つのグラフに、図9G−図9Hに結果(制御されたものと制御されていないもの)を1つのグラフに表したものである。図9G−9Hの試験結果を比較すると、流体送達システム(1500)のアルゴリズム制御操作を行なうことにより、体内に入るボーラス注入の立ち上がりエッジがシャープになることがわかる。このように制御操作により、よりタイトで、より四角に近いボーラスが得られ、これは、診断や治療処置の多くの場合に好ましい。また、このような能力を有することは、たとえそのボーラスが潜在的に達成可能な最もシャープなものではなくても、この能力を有することは、前述したように、所望のシャープさ及びプロファイルを有するボーラスの制御性及び繰返し性を向上させることができる。前記の制御モデル(例えば、アルゴリズム)は、流体経路要素の容量及び流体流路(1520)からの実際の流体流れを考慮に入れているので、シリンジプランジャーの位置以外でも、流体送達システム(1500)からの流れが制御される。
【0085】
他の実施例において、流体経路要素内の層流又は乱流により、またある程度は流体経路要素内での移動又はデッドスペースの存在により自然に起こる分散又混合に対処するために、様々なセパレータによって様々な流体を分離することもできる。セパレータは、ガス、又は固体、又はある程度高い粘性を有し非混和性の液体である。層流ボーラスが拡がる問題に対処する他の例は、図6Aに示されているように、薬剤を、フラッシュ用流体の中で同心円状に導入することである。薬剤(4000)は、放射性薬剤又は所望のあらゆる医療用流体であり、薬剤ルーメン(4001)を通って送り込まれ、外部ルーメンを通り、流体経路の中心部を下流側に移動する。なお、フラッシュ用流体は、外側ルーメン(4002)を通り、流体経路の外側を囲むように注入される。フラッシュ用流体を、入口ポートを介して、外側ルーメン(4002)に送給される。なお、層流は、端部よりも中心部の流れが遙かに速いチューブにおいて、層部の流れと中心部の流れとの間に混合がないことが理想的である。この概念を利用して、流れの中心部に薬剤(4000)を存在させることで、薬剤(4000)が外側ルーメン(4002)の全体に充填された場合と比べて、薬剤をより早く移動させることができる。より重要なことは、薬剤(4000)の流れが停止するとき、薬剤(4000)の後端にあるものは、長さ部分の下流側に向けてより速やかに移動し、外側ルーメン(4002)から出て行くことである。この実施形態は、薬剤輸送容器(1100)の中で用いられ、流体経路要素(1160)は薬剤用ルーメン(4001)を通って流れて、流体経路要素(1165)が入口ポート(4003)を通って流れる。流体経路要素(1150)は、チューブ又は管路であり、その下流側に向けて2種類の流体が流れる。この例は、好ましくは、図5Bの薬剤送達システムに使用することにより、薬剤と生理食塩水は、同時に流れることができる。
【0086】
所望により、フラッシュ用流体が、図6Bに示される外側ルーメン(4002)の端部に達したとき、フラッシュ用流体を薬剤(4000)から分離することもできる。図6Bにおいて、フラッシュ用流体は、入口ポート(4003)を介して外側ルーメン(4002)へ送達され、出口ポート(4004)を介して、外側ルーメン(4002)から分配される。外側ルーメン(4002)の出口(4005)は、外側ルーメン(4002)から外部へ薬剤(4000)運ぶ。フラッシュ用流体が、入口(4003)を介してルーメン(4002)に注入されるのと同じ割合で、出口ポート(4004)を通って引き出されるとき、フラッシュ用流体がルーメン出口(4005)で引き出されるされる前に、フラッシュ用流体は薬剤(4000)を運ぶから、ルーメン壁との接触は防止される。これは、小動物の注入のように、動物に与える総注入量が非常に少ない、小さい動物に注入する場合に有益である。ボーラス注入の終わりに、薬剤流量が減少し、フラッシュ用流量が増加しても、総流量は同じままである。薬剤(4000)は、図7で示されるような放物線形状になると考えられる。これは、ルーメンLの長さがトラバースされるものに適しており、注入ボーラスの後端部に関する図8Bに示されるように、ボーラスがチューブの長さ部分を移動するとき、中心部にある注入ボーラスのテール部は、ボーラスの主要部に“追いつく(catch up)”であろう。次に、薬剤(4000)は、タイトなプロファイル、理想的には矩形プロファイルで出て行く。
【0087】
核医薬又は他のイメージング処理又はその開発に用いられる分子又は薬剤の中には、様々なプラスチックに粘着性又は接着性を有するものがある。前述したように、薬剤の位置をボーラスの中心部にすることは、チュービングの壁に付着して損失となる薬剤が少なくなり、薬剤の減少を防止できる利点がある。
【0088】
他の適用例として、チューブの中心部を下流へ流れる薬剤が血管造影の例や、非常に粘性のある造影剤が狭いカテーテルを通って送達される例では、大きな利点がもたらされる。粘性の高いX線造影剤の外側に適当量の生理食塩水又は他の低粘性流体が流れるようにすることにより、流れの圧力低下が小さくなるので、これに対応して流れ量は増加する。さらなる適用例として、骨折治療のために、骨セメントの厚いペーストが脊柱の骨に注入される椎体形成術がある。さらなる適用例として、一般的に脳内での動脈瘤の充填する例、又は、硬質材料又は粘性材料を血流の中へ選択的に注入することにより、所望の血管を封鎖して有害組織を塞栓する例を挙げることができる。
【0089】
チュービングの長さに比べてボーラスが小さい場合、図8Aに示されるように、同心の3つの入口を有することが有利であり、各ルーメンの流速は独立して制御可能である。フラッシュ用流体は、第1ルーメン(4011)及び第3ルーメン(4013)を通じて注入され、薬剤(4000)は、第2又は中央のルーメン(4012)を通って注入される。使用に際し、フラッシュ用流体は、第1ルーメン(4011)及び第3ルーメン(4013)を通って注入され、薬剤(4000)は注入されない。第1及び第3ルーメン(4011)(4013)内の流れの比率は、薬剤ボーラスの所望の初期半径の関数である。次に、薬剤ルーメン(4012)を通って注入された薬剤(4000)の流量が増加するにつれて、ルーメン(4011)を通るフラッシュ用流体の注入量は、ルーメン(4011)を通る流れがゼロになるまで減少し、図8Bに示されるような放物線プロファイル(4014)が作成される。この放物線テールプロファイル(4014)は、チューブ又はルーメンLの下流へ移動するので、中心部(4015)は、端部(4016)に追いつく。前述したように、ボーラス注入の終わりには、薬剤(4000)の流量は、プログラム制御により減少するが、フラッシュ用流体の流量は増加して、薬剤(4000)に対して放物線プロファイル(4014)が作成される。これらのプロファイルの制御により、注入ボーラスは、ルーメン内の所望位置、一般的にはルーメンLを形成するチュービングの端部にて、注入ボーラスの始まりと終わりの両方でシャープエッジを生じることができる。
【0090】
図10A−10Bを参照すると、図10Aに示される流体送達システムを用いて心臓のファーストパスイメージングを行なう間、患者の心臓は、トレッドミル又は自転車での運動により、又は数分間のストレス試薬(例えば、容器に入れられたアデノシン)の注入により、ストレスが加えられる。図10Aは、前述したように、図5Cの流体送達システムに加えられる追加の特徴を示している。図10Aにおいて、薬剤源(1402)は、患者の流体経路要素(1152)に接続された流体経路要素(1151)を介して、流体ポンプ(1190)により、非常に遅い速度(一般的には4〜6分で60ml)で注入されるアデノシンを含んでいる。この注入は、流体又は薬剤輸送容器(1100)に入れられた流体と、流体ポンプシステム(1400)及び流体経路要素(1152)を介して、患者の流体経路(1152)へ毎秒数ミリリットルの割合で注入される生理食塩水とは対照をなす。速い生理食塩水又は注入薬剤ボーラスが、患者の流体経路要素(1152)に流入するとき、重大な問題が起こる可能性がある。この注入ボーラスは、薬剤源(1402)から全てのアデノシンを押し出し、患者の流体経路要素(1152)の中及び患者の腕静脈の中をゆっくりと移動し、定常流れに代わる1つの大きなボーラスとして中心循環部の中を流れる。アデノシンのこの大ボーラスは、患者に対して過度のストレスを与えることになる。図10Aのシステムは、ポンプユニット(1190)によるアデノシンストレッサ注入の制御と、薬剤輸送容器(1100)からの流体及び流体ポンプシステム(1400)により生理食塩水源(1401)から供給される生理食塩水とを一体化することにより、この問題を克服する。図10Aに示されているように、プログラマブル制御ユニット(1442)は、アデノシンポンプユニット(1190)、生理食塩水及び流体注入ポンプユニット(1410)、及び制御バルブ(1420)の操作を制御する。プログラマブル制御ユニット(1440)によりもたらされる流れプロファイル(縮尺とおりに示されていない)の例が、図10Bに示されている。
【0091】
段階1(図10Bで特定される)において、ポンプユニット(1190)により、薬剤源(1402)からアデノシンが、流体経路要素(1151)(1152)を介してゆっくりと注入され、患者の心臓にストレスを与える。心拍が殆ど十分になると、段階2が開始される。段階2において、薬剤源(1402)からのアデノシンの流れが停止し、生理食塩水源(1401)からの生理食塩水の流れが開始する。生理食塩水源(1401)からの生理食塩水は、最初は、アデノシン注入と同じ速度であり、アデノシンは、患者の流体経路要素(1152)から押し出される。生理食塩水の量が十分となり、患者の流体経路要素(1152)からアデノシンの大部分が除去されると、段階3が開始する。生理食塩水源(1401)からの生理食塩水の流量は、このとき、薬剤の流量であり、患者の静脈を充填するのに十分である。段階3において、薬剤源(1402)からアデノシンの注入は、前述の遅い流速で再開される。アデノシンは、生理食塩水によって速やかに運ばれるが、生理食塩水の速い流速が開始する前に、患者の流体経路要素は除去されているため、アデノシンの大きなボーラス又はスラッグはない。十分な量の生理食塩水が送達されると、段階4が開始する。段階4において、ポンプユニット(1410)が、流体経路要素(1160)を通じて、生理食塩水源(1401)からの生理食塩水を送達し、例えば、薬剤輸送容器(1100)内の放射性薬剤を患者Pへ速やかに押し出す。段階4の間、ゆっくりとしたアデノシン注入は、ポンプユニット(1190)により継続して行われる。段階5において、薬剤が送給された後、ポンプユニット(1410)が、生理食塩水源(1401)から生理食塩水の送り出しを継続し、薬剤を患者の静脈から外へ洗い流す。生理食塩水の洗浄が、十分な量の送達後に直ちに停止されると、流体経路要素(1152)内の流体は、このとき、大部分が生理食塩水であるので、アデノシンの送給にギャップが生じる。送給されるアデノシンのこの急落を避けるために、生理食塩水流量は徐々に減少させる。或いはまた、この処理に関して、患者の流体経路要素(1152)が主としてアデノシンで充填されるまで、アデノシンの流量は増加することができる。次に、生理食塩水のフラッシュ工程は停止され、段階7に示されているように、アデノシンの残部が送給される。
【0092】
本発明のシステム及び装置は、プログラミングと動作にフレキシビリティを有するため、他の流れプロファイルを本発明のシステム及び装置と共に用いることもできるので、それらは本発明の範囲内である。或いは、レガデノソン(regadenoson)として知られ、定常注入を必要とせず、注入ボーラスとして送給されることができる新しい薬剤ストレス剤を利用可能である。レガデノソンをと共に使用される例示的実施例として、流体経路要素(1150)(1160)(1165)の全てを生理食塩水でプライミングし、次に、標準注入量である5mlのリガデノソンを流体経路要素(1165)の中に送給し、その後、放射性薬剤を流体経路要素(1160)の中に送給することを含んでいる。流体分配又は流体送達システム(1300)の場合、追加の流体経路要素又はブランチが追加のレガデノソンを分配する。図5の流体送達システム(1400)の場合、物理的に同じであるが、操作は異なる。流体経路要素(1165)は、速やかに分配され、続いて十分な量の生理食塩水がフラッシュされる。次に、薬剤の投与を適当に遅延させた後、流体経路要素(1160)ら放射性薬剤が分配される。なお、選択的に、放射性薬剤分配の前に生理食塩水が追加され、その後、十分な量の生理食塩水のフラッシュが行われる。
【0093】
一時的に過剰送給又は過少送給になるのを防ぐため、様々な薬剤の流速を変えることは、同心円の流れ機構を用いたこの実施例においても、使用可能である。この場合、他の薬剤(例えばアデノシン)を食塩水と混合させることができる。食塩水は、中心部の薬剤の外側を流れる。或いはまた、アデノシンが十分に希釈される場合、外側をフラッシュ用流体、中心部を薬剤として用いられることができ、生理食塩水を別個に送給する必要はない。
【0094】
本発明の更なる特徴は、図11に示されるように、マット又はパッド(200)に使い捨て式布を使用することである。図5A〜図5Cの流体送給システムのある位置では、全ての流体接続位置の下又は周囲で用いられ、起こり得る可能性のあるあらゆる放射性“ドリップ(drips)”を吸収又はキャッチする。図11に示されるように、マット又はパッド(200)は、吸収性のマトリックス繊維(202)であり、例えば、使い捨て式布オムツを作るのに用いられる材料である。マット又はパッド(200)の特徴は、放射線検出器(204)を、ディスプレイ薬量計(206)に電子的に接続されたマトリックス繊維(202)の中に分配させることが望ましい。この目的に適した薬量計は、米国特許第5,274,239号(Lane et al.)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。また、マット又はパッド(200)を取り扱うのに、使い捨て式吸収性布を含む手持ち式のシールドされた拭取り用繊維を用いることもできる。マット又はパッド(200)を形成する吸収性繊維(202)は、どんな液体を吸収したときも色が変化する着色剤を含むことができる。また、マトリックス繊維(202)を、グローブ形態に形成し、ミニ薬量計(206)に連繋させることで、医療従事者が放射性液体に接触したとき直ちに気付くようにすることもできる。そのようなグローブは、着用者を保護するために、全部又は一部分が放射線シールドされている。薬量計は、この状況を音声で警告し、及び/又は、例えば、点滅モード又は光の色変化により視覚的に警告することもでき、グローブ着用者に、放射線曝露の可能性があることを知らせる。このようなグローブは、放射線シールドされており、医療従事者への放射線曝露を制限することができる。必要に応じて、eV Products of Saxonburg PA製のものと同様なポータブル式カメラを用いて、マット(200)をスキャンしたり、汚染物を発見したり、量を測定したり、放射線源を特定するのに用いることができる。
【0095】
放射性医薬品産業で広く知られているように、シールド部を設けることは、放射性医薬物質の作製、精製、輸送及び送達などの従事者を保護するために、特に重要である。放射性流体及びその他の有害流体の取扱いに関わる人達をシールドする多くの技術があることは、既に記載した通りである。例えば、放射性流体は、図14に示されるシールドされたシリンジ装置(300)に装填されて輸送される。シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、放射性薬剤が入れられたシリンジ(302)と、シールド(304)を具えている。シリンジ(302)は、出口(305)を含んでいる。このように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、当該分野で広く知られており、その代表例は米国特許第4,968,305号(Takahashi, et al.)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。既に述べたように、放射性薬剤用シリンジの代表的なシリンジサイズは、容量が約3mlで、フラッシュ用シリンジ(例えば、生理食塩水)は、容量が約20ml〜40mlである。大容量シリンジには、例えば、アデノシン等の薬剤を装填することもできる。フラッシュ用生理食塩水やアデノシンがどちらも放射性でない場合、それらが入ったシリンジに、特別なシールドを施す必要はない。放射性薬剤産業における目標は、放射性薬物の従事者が放射線に曝露される状況を最小にすることである。例えば、特別なシールドが施された放射性薬物用シリンジの輸送に、例えば、ピッグなどの輸送容器を用いることが知られている。医薬設備又は核医薬室の中で、鉛ライニングが施されたシリンジキャリヤ(例えば、Pinestar of Greenville, PA製)が広く用いられている。これらのキャリヤは、一般的に小さなランチボックス型で、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)が収容され、その中に放射性薬物が入れられている。輸送用ピッグ又はシールドされたキャリヤを用いたとしても、医薬従事者は、シールドされたシリンジを操作して、放射線較正作業(radiation calibration activities)の他、放射性薬剤を患者に注入するために、シールドされたシリンジを、流体送達システムへ接続する作業を行う必要がある。このような作業の間、医療従事者は、シリンジシールドのシールドされていない端部から、放射線に曝露される。また、放射性薬物の充填、プライミング、注入及びフラッシング作業を行う間、シールドされたシリンジを取り扱う者は、シールドされていない針、チュービングライン及びその他の流体経路要素(例えば、バルブ等)からの放射線に曝露されることがある。
【0096】
この明細書の他の箇所でも記載しているように、シールドされたシリンジアッセンブリを、患者へのチュービングライン及び生理食塩水で満たされたシリンジに接続されたストップ栓に接続することが一般的に行われており、放射性薬物を手操作で注入した後、速やかに食塩水でフラッシュされ、及び/又は、放射性薬剤の全部又はほぼ全部が、シリンジ(302)及び流体経路から取り除かれる。手操作による注入を行ない、ストップ栓を回す過程において、操作者は、流体経路中の薬剤からのイオン放射に曝露される。また、バルブの操作と注入を手操作で行うため、注入に不一致が生じる。
【0097】
前述の背景情報に鑑み、本発明は、図12〜図15に示されるシールドされた輸送容器(330)の実施例を提供するものであり、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路セット(fluid path set)(306)を、例えば、シールドされたシリンジユニット(300)が流体送達システム(パワーインジェクターユニット等)に容易に接続され得る場所へ安全に輸送するのに用いられることができる。シールドされた輸送容器(330)の利点として、例えば、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)をシールドされた輸送容器(330)から取り外すことなく、流体経路セット(306)をシールドされたシリンジアッセンブリ(300)までプライミングできることである。このシステムの他の利点は、患者にタイトボーラス注入を行なった後、速やかにフラッシュが行われることであり、その際、操作者又は技術者への放射線投与を最少にできること、また、放射性薬剤が通常は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の中に入れられ、操作者及びその近くにいる者への放射線曝露を少なくできることである。
【0098】
システムの操作に際しては、放射性薬物が入れられたシールドシリンジアッセンブリ(300)が、プライミングされた流体経路セット(306)に接続される(プライミングは、シリンジ(302)に接続する前でも後でもどちらでもよい)。プライミングは、例えば、製造場所、ホットラボ、患者への注入場所のどこでも行うことができる。流体経路セット(306)は患者に接続され、次にインジェクタシステム(400)に接続され、十分な流体容量が速やかに供給され、放射性薬剤が患者の中でフラッシュされる。シールドされた輸送容器(330)は、インジェクターと物理的にドッキングされるか、患者が装着できるよう構成されることができる。図13の実施例において、操作者は、容器(330)の蓋を開け、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)から放射性薬剤を流体経路セット(306)に手操作で注入し、蓋を速やかに閉じる。操作者が曝露されるのは、この短い時間に限られる。操作者は、患者への注入を待つ間、又は流体経路セット(306)のフラッシュを行なう間、シールドされたシリンジ(300)を保持していない。流体経路セット(306)の容量は、インジェクターシステム(400)から生理食塩水によるフラッシュが行われるまで、放射性薬物がシールドされたシールド輸送容器(330)から出ていかないように選択される。放射性薬剤が患者に送達されるには、インジェクターシステムをトリガし、フラッシュ用生理食塩水を、流体経路セット(306)の中へ制御しながら押し込み、流体経路セット(306)を通過させ、流体経路セット(306)の中にある前述のプライミングされた流体を制御しながらフラッシュした後、放射性薬剤、最終的にはフラッシュ用流体の一部を患者に送る。他の実施例において、機械的プッシュロッド(380)又は他の構成を用いることができ、その一例を図15に示している。操作者が蓋を開けて、放射性薬物をシリンジ(302)から流体経路要素(306)に移す際の放射線曝露は、皆無ではないまでも、更に低減されることができる。プッシュロッド(380)は、シールドを施すのに十分な材料からつくることができるし、シールド用部材(386)を組み入れることにより、操作者への曝露を低減することができる。プッシュロッド(380)が誤って作動するのを防止するために、シールドされた輸送容器(330)は、所望により、プッシュロッド(380)を固定する装置(381)を有することができる。この特徴は、図15Bでは、つまみネジとして示されている。また、プッシュロッド(380)は、シールドされた輸送容器(330)と螺合することもできる。この場合、プッシュロッド(380)を取り外す前に、ある程度の回転を加えることにより前方に移動させて、流体をシリンジ(302)から押し出すことができる。また、プッシュロッド(380)をパワーインジェクションシステムに直接接続することにより、手操作の介入無しで操作を行うことができる。
【0099】
シールドされた輸送容器(330)を用いることで、輸送中にドリップや漏れが起こり得るシールドされたシリンジアッセンブリ(300)用として、携帯性及び可搬性が非常に高い収容ユニットが提供される。シールドされた輸送容器(330)は、図12〜図13では単純な箱型として示されているが、これは例示であって、本発明の範囲内でパワーインジェクター装置(例えば、MEDRAD Stellant(登録商標))のハウジング及び/又は支持構造に直接接続することもできる。この明細書で、“接続(interface)”とは、シールドされた輸送容器(330)が、インジェクター装置に物理的にドッキングされた状態、シールドされた輸送容器(330)が、インジェクター又はその流体取扱い部材に連繋された支持構造(例えば、従来のインジェクター支持ツリー又はIV極)に支持された状態を含んでいる。図示されたインジェクター(400)は単なる例示であって、前述した関連支持構造を含んでいない。或いはまた、シールドされた輸送容器(330)は、インジェクター装置(400)の近傍に配置されることもできる。インジェクター装置(400)からは、入口チェックバルブ(318)を含む入口接続部(314)までチュービングラインが延びている。更なる取付け及び一体化方法、構造、装置及びシステムについては、例えば、国際公開公報WO2008/011401A2(PCT/US2007/073673)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。
【0100】
すでに述べたようにパワーインジェクターは、専用の支持スタンド/構造を有することができ、シールドされた輸送容器(330)を、そのような支持スタンド/構造に接続することができる。インジェクター装置と物理的に一体化させる場合、物理的一体化構造に固有であり、及び/又はシールドされたシリンジアッセンブリ(300)に入れられた有害流体に適応可能なインジェクター装置に追加の構成部材(図示せず)を連繋することもできる。例えば、シールドされた輸送容器(330)がインジェクターと物理的にドッキングされる時を特定するセンサーを有することができる。この情報はオンボード又は外部に配置され、インジェクター操作を制御するコントロールユニット(1442)に供給されることができる。この明細書中で説明するように、薬量計をインジェクターに配備することができるし、例えば、シールドされた輸送容器の穴又は開口に接続することもでき、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の放射能を読み取り、例えば、インジェクターコントロールユニット(内部又は外部にある)に送られる。また、シールドされた輸送容器(330)に識別体(例えば、バーコード等)を付したり、他の識別/データ格納又は記憶装置(1899)(例えば、RFID又はメモリ)を設け、インジェクターのセンサーにより読み出し及び/又は書き込みを行ない、インジェクターコントロールユニットに送信することができる。このようにして、インジェクター操作は、このスキャン又は検知された情報に基づいてコントロールユニットにより制御されることができる。また、インジェクター(400)又はコントロールユニット(1442)は、情報を識別/データ格納装置(1899)に書き込み又は記録し、これを用いて、患者が受け取る手順又は投与量に関する情報を伝達することができる。一般的に、シールドされた輸送容器(330)は、インジェクター及び/又はその支持構造に合わせて適用できるように構成されているから、インジェクターに連繋された流体経路要素に合わせて作られた流体接続部の追加又は置換を行なうことができるのは勿論である。
【0101】
シールドされた輸送容器(330)の本体の材料は、例えば、鉛、タングステン、タングステン担持プラスチック、鉛アクリルなどの従来のシールド用材料が用いられることができる。また、シールドされた輸送容器(330)は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の形状、流体経路セット(306)の変動、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)と流体経路セット(306)が共同するイメージャ又は患者施設の変動、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)と流体経路セット(306)が相互接続されるインジェクターに合わせて構成することもできる。例えば、シールドされた輸送容器(330)は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の形状を表すように作ることで、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を結合した状態で受けることができる。このように、シールドされた輸送容器は、例えば、曲げ加工された鉛、所望形状に鋳造された鉛、及び射出成形された放射線シールド用材料から成形することにより、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を受け入れることができるように作ることができる。或いはまた、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、シールドされた輸送容器(330)に合わせて作ることもできる。
【0102】
シールド輸送容器(330)は、一般的には、内部コンパートメント(334)を画定する容器本体部(332)と、内部コンパートメント(334)を囲む閉鎖蓋(336)とを具えている。容器本体部(332)によって画定された内部コンパートメント(334)は、シールドされた1又は複数のシリンジアッセンブリ(300)の形状と結合できる大きさに作られ、及び/又は、そのように作られた内部構造を含むことができる。この場合、内部構造の“結合(mating)”とは、シールドされた輸送容器(330)を形成する囲み構造が、シールドされていない状態で材料をシールドすることを含む。内部コンパートメント(334)の中の放射能を読み取るために、シールドされた輸送容器(330)の中に、“オンボード(on-board)”の薬量計(dosimeter)を設けることもできる。これについては、国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)及び米国特許第5274239号(Lane et.al.)に記載されている。好ましくは、内部放射能の読み値は、パワーインジェクター(400)及びシールドされた輸送容器(330)を含む流体送達システムの操作者に転送され、例えば、シールドされた輸送容器(330)の本体のディスプレイ又はインジェクター(400)及び/又はインジェクター(400)に連繋されたコントロールユニットのディスプレイに表示される。このような薬量計は、入力をインジェクターコントロールユニットに供給し、測定された放射能レベルに基づいて、シールドされたシリンジユニット(300)の内容物を特定することができる。また、シールドされた輸送容器(330)に放射線シールドされた窓(338)を設けることで、医療従事者は、シールドされた輸送容器(330)の内容物の他にも、内部コンパートメント(334)に配備され、例えば、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)に連繋されたあらゆる流体接続要素を視覚的に検査することができる。万一、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)に関するプライミング作業でシールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路要素から空気を十分にパージできない場合、このような視覚チェックができることは、空気バブル検出の分野において重要である。内部コンパートメント(334)には、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路部材の視覚検査を補助するために、内部照明(図示せず)を設けることもできる。
【0103】
シールドされた輸送容器(330)の他の特徴は、図13に符号(335)で示されるような使い捨て式で着脱可能な内トレイを設けることである。或いはまた、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の内容物が患者に分配され、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)から取り除かれた後で有害医薬廃棄物として簡単に廃却できる同様な構造物を内部コンパートメント(334)の中に設けることである。着脱可能なトレイ又は構造(335)は、内壁(355)などの支持要素を含んでおり、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を支持し、及び/又は、流体経路セット(306)を内部コンパートメント(334)の中に閉じ込めることができる。図11に示されるように、流体接続位置の周囲には、マット又はパッド(200)を用いることにより、起こり得る可能性のある放射性“ドリップ”を吸収又はキャッチすることができる。このような、マット又はパッド(200)は、トレイの形態で作られ、内部コンパートメント(334)の中に配備されて、漏れ、ドリップ、こぼれ等を吸収する。このような、使い捨て式トレイは、シールドされた輸送容器から取り出され、適当な放射線シールドされた医薬廃棄物容器に入れられる。また、放射性薬剤流体等の有害流体の漏洩を防ぐため、容器本体部(332)と閉鎖蓋(336)の間に、液密シールを設けることが望ましい。また、マット又はパッド(200)によって形成されたトレイは、流体経路セット(306)の様々な流体経路要素や、シリンジ(300)及びシールド(304)を、図4に関して既述したのと同じ機械的方式で収容し固定(幾何学的又は空間的に)固定することができる。
【0104】
容器閉鎖蓋(336)の前部リム(344)の両端に、一対の開口(340)(342)が形成される。開口(340)(342)、容器本体部(332)のリム(350)に形成された同様な開口(346)(348)に対応する。容器本体部(332)には、シールドされた輸送容器(330)の運搬を容易にするためのハンドル(352)が設けられることができる。
【0105】
図13−図14に示されるように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、一般的には、放射性薬剤用シリンジ(302)及び周囲のシリンジシールド(304)を具えている。このような構成部材は、放射性医薬産業において広く知られている。流体経路セット(306)は、シリンジ(302)の出口(305)に接続され、チェックバルブT−コネクタ(308)を具えており、該T−コネクタには、チェックバルブ(320)が配備され、流体はシリンジ(302)から流体経路要素(310)(312)に流れることはできるが、シリンジ(302)には戻ることはできないようになっており、入口コネクタ(314)が入口流体経路要素(310)に接続され、出口コネクタ(316)が出口流体経路要素(312)に接続されている。具体的な流体経路セットは、前述したものとほぼ同様であり、例えば、MEDRAD, Inc.(Pittsburgh, PA)の製品で、チェックバルブ付きのMRI Integral“T”、カタログ番号SIT 96Tがある。このような入口コネクタ(314)及び出口コネクタ(316)は、好ましくは従来のルアー型コネクタであり、入口コネクタ(314)はチェックバルブ(318)を具えており、流体経路要素(310)及び流体経路要素(312)の中へは流れるが、逆方向には流れないようにしている。チェックバルブ(318)は亀裂圧力が十分に高いものが選択され、流体は、重力作用では流れず、入口チェックバルブ(318)に接続されたインジェクター(400)等の加圧装置から送り出されるフラッシュ用流体によってのみ流れることができるようにしている。チェックバルブ(318)は、出口側の出口コネクタ(316)に連繋されることができるし、流体経路セット(306)に沿うどの位置に設けることもできる。所望により、チェックバルブは、幾らかの余裕を与えるために、両端に設けることもできるし、経路に沿って複数設けることもできる。これにより、放射性材料のドリップの発生は最少にすることができる。チェックバルブ(320)は、T−コネクタ(308)を経てシリンジ(302)の中へ流体が流れるのを防止する。T−コネクタ(308)は、出口チェックバルブ(320)を具えており、シリンジ出口(305)から出口流体経路要素(312)へ流れることができるようにしている。消毒済みの端部キャップ(322)(324)は、夫々、入口チェックバルブ(318)及び出口コネクタ(314)(316)に夫々連繋されることができる。
【0106】
図13に示されるように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)がシールドされた輸送容器(330)の内部に配置されると、入口流体経路要素(310)は、対応する入口側開口(340)(346)に連繋され、出口流体経路要素(312)は、対応する出口側開口(342)(348)に連繋されることにより、入口及び出口コネクタ(314)(316)は、シールドされた輸送容器(330)の外部からアクセス可能となる。出口流体経路要素(312)は、シールドされた輸送容器(330)の内側であるセグメント(312b)と、輸送容器(330)の外部であるセグメント(312a)との2つの部品を有している。セグメント(312b)は、放射性薬剤を入れるために用いられ、シリンジ(302)から押し出されて、患者へ送給され、その後フラッシュされる。この動作は、送給用の放射性薬剤が入れられた図2の流体経路要素(1160)と同様である。この実施例では、流体経路要素(1165)と同様な流体経路要素はないが、前述した実施例の全ての機能を得たい場合には追加することもできる。出口流体経路要素(312)用にコイル状医療用チュービングを用いることで、医療従事者は、流体経路セット(306)を、例えば患者留置カテーテル又はIVラインに接続するのに必要なだけチュービングを引き出すことができる。所望により、入口流体経路要素(310)は、コイル状医療用チュービングを具え、それを、遠隔にあるインジェクターまで引き延ばすことができる。出口流体経路要素(312)のコイル状セグメントは、最初は、シールドされた輸送容器(330)の中にきちんと都合良く収納されており、使用者は、必要なだけチュービングを引き出すことができる。また、出口側開口(342)(348)は、出口流体経路要素(312)のチュービングが、シールドされた輸送容器(330)から外方にどれくらい速やかに引き出されるかを規定できるサイズに作られ、及び/又は、エラストマーのブレーキライニングを含んでいる。好ましくは、出口流体経路要素(312)に連繋されたストッパーがあり、内側チュービングセグメント(312b)のどの部分も、シールドされた輸送容器(330)から引き出されることができる。このような特徴は、対応する入口側の開口(340)(346)についても同様に設けられることができる。
【0107】
所望により、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)と流体経路セット(306)は、一体のカセット又はカートリッジとして設けられることができ、容器本体部(332)によって画定される内部コンパートメント(334)の受け構造(図示せず)の中に差し込まれる。このようなカセット又はカートリッジは、識別体(例えば、バーコード等)を付したり、他の識別装置(例えば、RFIDタグ)を設けることができ、内部コンパートメント(334)内のセンサーにより読み出しを行ない、有線又は無線接続により、例えば、パワーインジェクターに連繋されたコントロールユニットに送信されることができる。このようにして、インジェクター操作は、少なくとも一部分は、内部コンパートメント(334)内のカセット又はカートリッジの内容物に関するスキャン又は検知された情報によって制御されることができる。内部コンパートメント(334)内のこのような内部センサーは、その他のアクションを行なうことができる。該アクションには、カセット又はカートリッジの存在を決定すること、流体経路セット(306)等の流体経路セットが存在するかどうかを特定し、さらには流体経路セットに連繋されたバルブ及びコネクタが正しく配置され接続されていることを特定することを含んでいる。一実施例において、内部センサーは、例えば、開口(340)(346)及び開口(342)(348)に連繋された空気検出器又は空気バブル検出器であり、入口流体経路要素(310)及び出口流体経路要素(312)の中の空気バブルの存在が検出される。また、医療従事者による空気又は空気バブルの検出、及び、前述した生理食塩水等のプライミング用流体で流体経路セット(306)のプライミングを行なう等のアクションを容易にするために、開口(340)(346)及び開口(342)(348)に照明を設けることもできる。
【0108】
所望により、容器本体部(332)の中の内部コンパートメント(334)を分割して、シリンジ(302)及びそれに付随するシリンジシールド(304)は1つの分割された領域に配備され、前述した流体経路セット(306)の構成部材は、シリンジ(302)及びシリンジシールド(304)から分離した領域に配備されることができる。この場合、閉鎖蓋(336)は分岐されるようになし、シリンジ(302)、シリンジシールド(304)、流体経路セット(306)の別個の内部領域が別個にアクセスされ得るようにする。また、前記説明は、一般的には、シールドされた輸送容器(330)内の単一のシールドされたシリンジアッセンブリ(300)のハウジングに関するものであるが、これは、発明の範囲をそのような単一用途に限定するものと解するべきではない。また、シールドされた輸送容器(330)には、同じか又は異なる有害流体、例えば、単一患者の核医薬研究に用いられるテクネチウム及びタリウム等の複数種の同位体が入れられ、幾つかのシールドされたシリンジアッセンブリ(300)を取り囲むことができるように構成されることが好ましい。容器本体部(332)の内部コンパートメント(334)は、シールドされた複数のシリンジアッセンブリ(300)を受け入れることができるように構成され、シリンジ(302)/シリンジシールド(304)及び流体経路セット(306)用として分割された内部領域を有している。このように、シールドされた輸送容器(330)は、容器本体部(332)と閉鎖蓋(336)を具えており、複数の流体経路セット(306)を収容するために、複数組の開口(340)(346)及び開口(342)(348)を有している。このような複数の流体経路セット(306)は、平行で、例えば、患者内留置カテーテル等のように指定された下流側接続位置で接続されることができ、或いは、シールドされた輸送容器(330)を出て行く前に接続されることができる。
【0109】
図12−13に示されるシールドされた輸送容器(330)はボックス形状であるが、この形状に限定するものと解するべきではない。図示した“ランチボックス型”形状以外にも、他の形態は可能であり、例えば、Syncor Iternationalに譲渡された米国特許第6,425,174号(Reich)に開示されたクラムシェル形状又は輸送ピッグ形状がある。この米国特許は、前述のように、引用を以て本願に組み込まれるものとする。図15Aは、前記Reich特許に記載された基本の輸送ピッグの変形例であり、本発明に係る“ピッグ型”のシールドされた輸送容器(330)である。Reich特許は、従来の輸送ピッグの基本的構成を開示しており、その構造に修正を加えて、図15Aに示されるピッグシールドされた輸送容器(330)が得られる。図15Aにおいて、シールドされる流体経路セット(306)の内部チュービングセグメント(312b)は、輸送ピッグ内の針に割り当てられる内部空間にコイル状に設けられ、輸送ピッグは、流体経路セット(306)の2つの端部に入り組んだ内部経路となり、輸送ピッグを出て行くことができるように修正が加えられる。流体経路セット(306)のコイル状外部チュービングセグメント(312a)は、図15Aに示されるように、“ピッグ”シールドされた輸送容器(330)の外側周囲でコイル状である。
【0110】
図15Aに示されるピッグシールドされた輸送容器(330)は、Reich特許の基本の輸送ピッグに修正を加えて、下シェル(360)の側壁に開口(340)(346)を含めることができる。下シェル(360)は、ネジ接続により、上シェル又は閉鎖蓋(362)と接続するよう構成される。下シェル(360)及び上シェル(362)の中には、夫々、放射線シールド部(364)(366)がある。同じように、下側シールド用部材(364)は、開口(340)(342)を画定する。図15Aに示されるように、入口流体経路要素(310)は、入口開口(340)(346)中を通り、出口流体経路要素(312)は、出口開口(342)(348)の中を通る。本発明の実施例において、放射線シールド部は、構成部材(364)(366)によってもたらされるので、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、シリンジ(302)に連繋された別個の放射線シールド(304)を必ずしも必要としない。ピッグシールドされた輸送容器(330)は単独で十分なシールドをもたらすので、シリンジ(302)は輸送容器(330)から除去される必要はない。
【0111】
前述したように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)とシールドされた輸送容器(330)の組合せによる好ましい特徴は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を、例えばパワーインジェクターユニット(400)に接続する前に、投与の準備が行われる核医薬ラボ等の中で、流体経路セット(306)をプライミング用流体(生理食塩水等)でプライミングできる能力である。特に、入口流体経路要素(310)は、入口コネクタ(314)及びチェックバルブ(318)を介して生理食塩水等のプライミング用流体源に接続されることができる。入口チェックバルブ(318)は重力下では生理食塩水の流入が阻止され、インジェクター(400)又は手動シリンジによる加圧下で供給される流体だけが、入口コネクタ(314)を通ってT−コネクタ(308)の中に導入される。生理食塩水は、T−コネクタ(308)(出口チェックバルブ(320)があるのでシリンジ(302)には入らない)を通り、出口流体経路要素(312)はプライミング用流体で満たされる。出口流体経路要素(312)が生理食塩水でプライミングされると、端子エンドキャップ(324)が出口コネクタ(316)に配備され、出口流体経路要素(312)が密閉される。プライミング操作が完了すると、医療従事者は、シールドされた輸送容器(330)を、患者への注入が行われるルームへ運ぶことができる。シリンジ(302)及び流体経路セット(306)は、シールド容器(330)の中にそのままあることが望ましい。或いはまた、必要に応じて、操作者は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路(306)を取り外して、それらを、十分又は適当なシールドが施されたパワーインジェクターに取り付ける。出口エンドキャップ(324)を取り外し、出口コネクタ(316)は、患者に接続されたカテーテル又はIVラインに接続されることができる。出口コネクタ(316)は患者に接続され、入口コネクタ(314)はインジェクター(400)に接続される。操作者は、シリンジ(302)から全ての放射性薬剤をチュービングセグメント(312b)の中に注入し、シールドされた輸送容器(330)の蓋を閉じる。その後、操作者がパワーインジェクター(400)をトリガすると、シリンジ(302)内の放射性医薬流体又はその他の有害流体の注入が開示される。放射性薬剤が入れられたシリンジ(302)は、プライミングが行われる間、シールドされた輸送容器(330)の中に保持されるので、プライミング中の放射線曝露は最少に抑えられる。また、シリンジ(302)内の放射性薬剤流体の注入後、流体経路セット(306)に設けられたチェックバルブにより、入口流体経路要素(310)及び出口流体経路要素(312)を含む流体経路セット(306)は、生理食塩水又は他の流体で洗い流されるので、出口流体経路要素(312)内の残留放射性薬剤流体は全て患者の名かに押し込まれる。入口流体経路要素(310)は、フラッシュ用生理食塩水源及びポンプ装置(蠕動ポンプ等)に接続されており、ポンプ装置により、生理食塩水が加圧下で流体経路セット(306)に供給され、放射性薬剤流体は患者の中に洗い流される。このようなポンプ装置は、前述したプライミング作業を実行するのに用いられることもできる。或いはまた、流体経路セット(306)は、プライミングされていない流体経路セグメント(310)(312)へ輸送されることもできる。入口コネクタ(314)は、次に、インジェクターに接続され、流体経路セグメント(310)(312)は、出口コネクタ(316)が患者に接続される前にプライミングされる。シールドされた輸送容器(330)は、図12−図14ではボックス型構造として示されているが、前述したように、図15Aに示される輸送用ピッグ構造等の所望形状にすることもできる。
【0112】
シールドされたシリンジ(302)に流体経路セット(306)の囲いシールド(304)を接続し、このシリンジを用いて、放射性薬剤ボーラスの一端又は両端に小バブルを生成し、前述の実施例においてCO2を用いたのと同じように、薬剤がチュービングの長さ部分を通って流れるとき、ボーラスの拡がりを低減することができる。核医薬分野における現在のプラクティスでは、シリンジは、針を用いてゴム隔壁に穴をあけることでバイアルから充填され、放射性薬剤が針の中に入れられる。本発明の実施例では、このようなシリンジが流体経路セット(306)に接続される前に、針は除去されなければならない。この実施例では、針の中の流体は、ミリリットル単位の空気とともにシリンジの中に引き込まれることが望ましい。これにより、針は確実に空になり、前述の態様に係る流体分離“バブル”の一つをもたらす。次に、針は除去され、安全に廃棄される。シールド(304)付きシリンジ(302)又はシールドされていないシリンジ(302)を流体経路セット(306)に接続するとき、T−コネクタ(308)のルアーコネクタ(典型的には雌)及びシリンジ(302)のルアーコネクタ(典型的には雄)の中に、小さなバブルがある。それゆえ、何か特別なことがなされない場合、流体が最初にシリンジ(302)から押されると、小さな空気バブルが流体経路要素(312b)の中に注入される。次に、流体をシリンジ(302)から送給する間、好ましくはシリンジ(302)のルアーコネクタを下に向けながらシリンジを垂直に保持することで、先にシリンジの中へ引き込まれた空気の小バブルが流体経路要素(312b)に注入される。この手順が行われる間、空気の小バブルは、薬剤のボーラスを囲むので、患者に到るまでの途中、様々な流体経路要素を通って移動するとき、鋭いボーラスプロファイルを維持するのに役立つ。この手順は、図4に関する実施例においてCO2が用いられた方法と同様である。
【0113】
本開示において、“トレイ”要素又は同様な構成部材の使用に関する様々な記載は大変有益であり、チュービングセグメント又は同様な流体経路要素(例えば、流体経路セット(306)の一部又は全部)は空間的に固定し、使用者が設置し易い交換式モジュール又はカセットを作成するものである。また、この配置は、放射線の線量計又は線量計計測要素又は装置に関連して使用されるときに有利である。放射性の物質及び流体が存在する多くの装置及び方法において、典型的には、中空円筒形のイオンチャンバーを用いた投与量較正器(dose calibration)がしばしば用いられ、投与量の放射線が入れられた被測定容器が該イオンチャンバーの中心部に挿入される。このようなイオンチャンバーは、例えば、オランダのVeenstra Instrumenten B.V.製のものがある。MEDRAD, Inc.製のIntego(商標名)PET Infusion Systemでは、流体経路要素、チューブが単一トレイの上にコイル状(この場合は円筒状)に巻かれており、イオンチャンバーの中空部に配置されて、投与量の測定が行われる。中空イオンチャンバーを投与量較正器として用いる利点は、チャンバー内に入れられた物質から発せられる放射線の大部分を効果的に感知することであり、測定が中空空間内の放射線放出物質の正確な位置から実質的に独立していることである。それゆえ、イオンチャンバーは、合理的なサイズ範囲にあるシリンジ、又はバイアル、又はコイル状チューブ内の放射線の測定にはうまく機能することができるが、このタイプの放射線検知器は大きくて高価である。
【0114】
或いはまた、前述の米国特許第4,562,829号(Bergner)、第4,585,009号(Bergner)、米国特許出願公開第2005/0,277,833号(Williams)において、局所化された小型放射線検知器が使用されている。Bergner特許では、送給される放射線の一部だけが一度に計測されるという欠点がある。Williams公報では、1地点の放射線源のみでシリンジの中の放射線計測を行なうため、読み出しエラーが生じる。既に引用を以て本願に組み込まれた国際出願第PCT/US07/89101号(WO 2008/083,313)では、幾つかの小型放射線センサーと幾何学的情報を用いて、シリンジ内の放射線を計測する実施例が開示されている。この特定の実施例は、この開示におけるシステム、装置及び方法で使用できる。
【0115】
中空円筒状イオンチャンバーの投与較正器の他の実施例である放射線検出システム(2000)が、図16に示されている。コイル状のチュービングセグメント(2001)は、トレイ(2002)により保持されてモジュール(2003)が作成され、該モジュールは、略円筒形の簡易な放射線検出器(2010)の上に配置されることができる。この種幾何学的形状の放射線検出器は、例えば、ガイガーチューブ、イオンチャンバー、ソリッドステート結晶検知器などが挙げられ、一般的に用いられている。全体のチュービングセグメント(2001)がほぼ同濃度の放射能の流体を含む場合、システム(2000)はうまく機能する。或いはまた、薬剤が一定の流速でチュービングセット全体を通じて流れるときに投与量の全体だけを計測しさえすれば、システム(2000)はうまく機能する。外部シールド(図示されていない)を用いることにより、作業者を保護し、放射能が他の装置に影響を及ぼすことを防止し、放射能がこの装置に進入して装置に影響を及ぼすことを防止する。しかしながら、前述した“タイト”な注入ボーラスはコイル状チュービングセグメント(2001)の長さと比べて短いため、それだけでコイル状チュービングセグメント(2001)の体積の相当な部分を占める場合、又は層状の流れが注入ボーラスを拡げるため、濃度がコイル状チュービングセグメント(2001)の長さ全体を通じて一様でない場合、又は流れが一様でない場合、又は測定対象が輸送時間全体における全投与量以外の何かである場合には問題が生じる可能性がある。図16の実施例において、放射線検出器は、あるコイルセグメントが他のコイルセグメントに比べて放射能に対する感受性が大きく、例えば、コイルセグメント(2001b)に対する感受性よりもコイルセグメント(2001a)に対する感受性の方が大きい。それゆえ、コイル状流体経路の中にあるか、又はチュービングセグメント(2001)の中にあるかによって、放射性薬剤の量が同じでも、それに対する反応は不均一になる。
【0116】
放射線検出システム(2000')のこの問題を解消させるために、本発明の実施例では、図17A、17B及び17Cに示されるように、トレイ(2002')は、流体経路セグメント又はコイル状チュービングセグメント(2001')を保持できる形状に作られており、コイルは、放射線検出器(2010')に対する“感受性が等しい(equal sensitivity)”表面に沿っている。説明の簡素化のために、図17A、17B及び17Cに示される放射線検出器(2010')及び個々の幾何学的形状は対称な円筒形としているが、その形状に限定するものと解するべきではない。各放射線検出器(2010')の幾何学的形状は、表面がR軸及びZ軸の関数であるから、該表面のどの位置でも、少量の放射性流体は、放射線検出器(2010')で同じ放射能測定値を与えることになる。図17Aにおいて、コイル状チュービングセグメント(2001')の中心コイル要素は、放射線検出器(2010')の表面から少しだけ戻され、この効果が達成される。放射線検出器(2010')が小型の球状検出器である場合、感受性が等しい表面は、図17Bに示されるように、放射線検出器(2010')の中心の周りの球面である。図17Cは、キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')を示しており、放射線検出器(2010')の上方に置かれている。この形状は、トレイ(2003')の設置を容易に行なうことができ、システム(2000')の流体経路構造全体がより容易く平面的カセットの形にされ得るから、製造、組立及び使用者の接続を容易に行なうことができる利点がある。図17Cに示されるように、このトレイは、容器本体(332)の中に入れられ、薬量計又は放射線検出器(2010')は、容器本体(332)の一部分であるか、又は薬量計が容器を貫通し、流体経路要素(2003')の中で投与量を測定できるように開口された容器本体(332)の孔である。開口は、測定のために使用されていないときはシールドすることによって被覆され、操作者がどんな放射線にも曝露されることなく開閉できるように構成される。
【0117】
コイル状チュービングセグメント(2001')が放射線検出器(2010')の等感受性表面上となるように構成されるときでも、この表面の幾何学形状は、放射線検出器によって変動があり、流体経路の幾何学的形状も、トレイ(2002')又はコイル状チュービングセグメント(2001')に製造時の変動があるため、モジュール(2003')によって変動がある。コイル状チュービングセグメント(2001')内の小さな注入ボーラスでこの変動を解消させる1つの方法は、コイル状チュービングセグメント(2001')内で2又は3以上の位置での放射線を測定し、読み値を平均してエラーを平均化することである。この操作は、注入ボーラスを所定位置に移動させ、停止して測定を行ない、他の位置へ移動させ、停止して再び測定すること等であり、所望数の測定が行われるまで行われる。或いはまた、この操作は、注入ボーラスをコイル状チュービングセグメント(2001')の中をゆっくりと移動させ、注入ボーラスがコイル状チュービングセグメント(2001')の中を流れるときに時系列測定を行なうことによって達成されることができる。
【0118】
放射性流体を患者に注入する前、又は放射性薬剤を例えば有害流体輸送容器(1100)又は(330)の中に投入する前に放射能を測定する他の実施例は、放射性流体の既知で画定された体積及び画定された容積及び形状から発せられる放射線を測定することである。この濃度が一旦知られると、画定された容積から投与量を測定することにより、分配又は送給される放射線投与量は、送達された容積によって拡大された濃度に比例する。シールドされた輸送容器(330)に関しては、図15Bにおいて最も簡単に示されている。図15Bでは、図15Aに関して記載した基本の構成部材を有しており、放射線検出器又はセンサー(2010)が、放射線シールド部(366)内の小孔(2020)の背後に配備されている。放射線検出器(2010)が外部放射による影響を受けないように、シールド部(364')が放射線検出器の全体を取り囲んでいる。小孔(2020)は、シリンジ(302)のネック部からの放射線だけが放射線検出器(2012)に衝突するように配備される。シリンジ(302)は、例えば、戻り止め(detents)、クリップ又は同様な構造要素(図示せず)により、シールドされた輸送容器(330)内で、繰返し可能な幾何学的位置に保持される。操作において、シールドされた輸送容器(330)が、インジェクター又は他の流体送給用流体加圧装置に連繋されると、図5に示されるように、放射線検出器(2012)の出力は、インジェクター又は他の加圧装置に連繋されたコントロールユニット(1442)に送られ、放射線検出値は、既知の感受性較正を用いて、放射線濃度に変換される。インジェクターのコントロールユニット(1442)により、所望量の薬剤は、例えば、ピストンプッシュロッド(380)を制御可能に移動させることにより、流体経路セット(306)の中に注入され、次に患者に送給される。薬剤の全量が手操作で送給される場合、記録のために、送給時の濃度を表示することができる。コントロールユニット(1442)は、前述したデータ格納装置/メモリユニット(1899)からの情報を読み出し、所望次第で書き込むことができる。或いはまた、放射線検出器(2012)及びそれに連繋された機械的構成部材及びシールド部(364')は、コントロールユニット(1442)に連繋された装置の再使用可能な要素でもよく、また、シールドされた輸送容器(330)に設けられる孔は、カバーされた開口(図17Cに関連した説明を参照)と同じ様に、放射線検出器(2012)に連繋される時以外はシールドされている。放射性薬剤の濃度測定は、シリンジ(302)のネック部に限られるものではなく、他の流体経路要素の部位、例えば、検出器に関する幾何学的形状が一定である部位や、近傍の流体容器要素からの放射が最も少なくて干渉が最少となる部位などで行なうこともできる。放射線濃度の測定により、送達されるべき放射性薬剤の量を正確に推測することができる。合計投与量を測定することができ、必要に応じて、流体送給後に訂正されることもできる。
【0119】
この明細書に開示した様々な実施例を組み合わせて又は個々に用いることは、放射性薬剤及びその他あらゆる医療用流体のあらゆる送達において利点を有する。例えば、図6及び図9に示されるように、ボーラスを鋭くする技術は、前述の国際公開PCT/US07/89101(WO2008/083313)の開示と組み合わせて用いられることができ、よりタイトなボーラス性能が得られる。
【0120】
前述のシステム、装置及び方法の実施例を、組み合わせて又は個々に用いることにより、試験ボーラス注入の歪みを最小にし、イメージング用ボーラス注入のシャープさを向上させることができ、さらには、有害流体(例えば、放射性薬剤流体)の安全かつ効率的な取扱いのために、当該分野の専門家であれば、発明の範囲及び精神から逸脱することなく、これら実施例に変形及び変更を加えることができる。この明細書に記載した実施例は、放射性薬剤及び他の医療用流体のあらゆる送達において利点を有する。それゆえ、上記説明は、例示的なものであって、限定的なものではない。上記発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の意味及び均等物の範囲内に含まれる全ての変更は本発明の範囲に含まれるものである。
【技術分野】
【0001】
<関連出願の記載>
本願は、2009年4月21日に出願された米国特許出願第61/171,240号、発明の名称“Apparatus and Methods for Delivery of Fluid Injection Boluses to Patients and Handling Harmful Fluids”、2009年2月17日に出願された米国特許出願第61/153,070号、発明の名称“Apparatus and Methods for Delivery of Fluid Injection Boluses to Patients and Handling Harmful Fluids”及び2008年6月6日に出願された米国特許出願第61/059,384号、発明の名称“Apparatus and Methods for Delivery of Fluid Injection Boluses to Patients”の利益を主張する。
【0002】
<発明の分野>
この出願は、引用を以て、2007年12月28日に出願されたPCT/US07/89101(WO 2008/083313)、発明の名称“Methods and Systems for Integrated Radiopharmaceutical Generation, Preparation, Transportation, and Administration”が組み込まれるものとし、前記PCT/US07/89101は、2007年4月9日に出願された米国仮特許出願第60/910,810号、発明の名称“Methods and Systems for Integrated Radiopharmaceutical Generation, Preparation”、2007年1月1日に出願された米国仮特許出願第60/878,334号、発明の名称“Methods and Equipment for Handling Radiopharmaceuticals”及び" と、2007年1月1日に出願された米国仮特許出願第60/878,333号の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
ここで開示される発明は、医薬用物質、典型的には、人及び動物に対して本質的に有害又は毒性の医薬性物質(例えば、放射性薬剤として一般的に知られている放射性医薬用物質)の取扱い及び投与に関するもので、さらに具体的には、人及び動物に対する流体放射性医薬物質の取扱いと投与を行なうための装置、方法、これらに関連する部品に関するものである。また、ヒト及び動物に送給される化学療法剤及び他の流体の取扱い及び投与を行なう方法及び装置を含んでいる。
【0004】
<関連技術の詳細>
身体の内部構造(骨、血管、臓器、臓器系及び他の組織などが挙げられるが、それらに限定されるものではない)及び/又は機能の情報又は像を提供するために、医薬分野では、放射性薬剤と一般的に呼ばれる放射性医薬用物質又は薬剤を投与することがしばしば行われている。さらに、放射性薬剤は、癌細胞等の標的細胞又は標的組織の成長を停止又は阻害するための治療薬としても使われる。しかしながら、イメージング処理及び治療処理で使用される放射性薬剤は、典型的には、半減期が短い高度に放射性の核種を含んでおり、医療従事者に有害である。医療従事者(例えば臨床医、画像技術者、看護婦及び薬剤師)は放射性薬剤に繰り返し曝されるので、放射性薬剤は、これらの者に対して、有毒であり、肉体的及び又は化学的影響を及ぼす可能性がある。しかしながら、個々の患者に対しては、典型的な放射性薬剤は半減期が短く、曝露が少量であるので、放射能曝露の危険性があっても、利点の方が受け入れられる。しかしながら、医療従事者の場合、長期間に亘って放射性薬剤からの放射能を絶えず繰り返し受けるため、核医学分野における深刻な問題である。
【0005】
医療分野では、放射性薬剤の作成、取扱い、輸送(transport)、用量調合及び放射性薬剤の患者への投与に関与する医療従事者の放射能曝露を低減するために、多くの技術が用いられている。これらの技術には、医療従事者の曝露時間を最小にすること、医療従事者と放射線源との距離を維持すること、及び/又は医療従事者を放射線源からシールドすることのうちの1つ又は複数が含まれる。医療従事者が放射性薬剤の作成、調製及び患者への投与を行なう際、また、これら患者の世話をする際に、医療従事者と放射性薬剤との間では、放射性薬剤を受け取る患者を含めて、非常に接近することはある程度不可避であるので、核医療分野では、放射線のシールドを行なうことは非常に重要である。簡単な患者用放射線ガードは、一例として、米国特許第3,984,695号(Collica et al.)に開示されている。放射医薬品容器(ボトル、バイアル等)の一般的な取扱及び移送のための“ピッグ(pig)”として知られているシールドされた容器を用いたり、放射性薬剤容器から放射性薬剤を取り出し、取り出された放射性薬剤を個々の患者に投与するためにシールドされたシリンジを用いることは広く知られている。放射性薬剤移送用ピッグもまた、シリンジを運搬できる形状に作られるいる。シールドされた移送用ピッグの例は、米国特許第5,274,239号(Lane et al.)及び米国特許第6,425,174号(Reich)に開示されており、これらの特許は引用を以て本明細書に組み込まれるものとする。シールドされたシリンジの例として、米国特許第4,307,713号(Galkin et al.)があり、この特許は引用を以て本明細書に組み込まれる。他の遮蔽されたシリンジの例として、米国特許第6,589,158号(Winkler)、米国特許第7,351,227号(Lemer)及び米国特許第6,162,198号(Coffey et al.)があり、引用を以て、本明細書に組み込まれる。
【0006】
核医療分野において広く知られているように、放射線は、放射能物質から全ての方向に放射されるため、放射性物質を収容している容器がシールドされていないと、放射線は容器からあらゆる方向に放射される。放射線は、散乱又は偏向するが、それでも容器内の活性レベルが非常に高くない場合、医療従事者は、放射線の直接の“シャイン(shine)”からは十分に保護される。放射性薬剤容器(ボトル、バイアル、シリンジ等)を収容する移送用ピッグには、様々な形状のものがある。その一形態は、収容された放射性薬剤容器の取外し可能なカバーを含んでおり、米国特許第7,537,560号(Powers et al)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。容器は、バイアル内の形態であり、弾性(例えばゴム)のストッパー又は隔壁が設けられ、バイアル内に放射性薬剤が収容される。ピックカバーが所定位置にあるとき、放射線曝露は容認できる。カバーが開くか又は取り除かれると、開口から、放射線“シャイン”が放出される。容器から放射性薬剤を除去するための一般的な無菌移送処置として、弾性ストッパまたは隔壁が、シリンジの消毒針で突き刺される。一般的に、ストッパまたは隔壁の曝露表面は、シリンジの無菌針でストッパまたは隔壁を突き刺す前に、アルコール消毒で殺菌される。一般的に、これは、クリーンフードの中で、薬局方で推奨の手順に基づいて行われる<797>。
【0007】
シリンジは、放射性薬剤を充填する間及び一旦放射性薬剤が充填されると、シリンジシールド及びシールドされたグローブボックス又は容器を介して取り扱われるが、前述したように、適当な形状の輸送ピッグの中に入れて移送される。シリンジシールドは、一般的に、シリンジの円筒本体を収容する中空円筒形構造であり、鉛又はタングステンから作られ、鉛ガラスの窓が設けられ、該窓を通じて、操作者は、シリンジ内のシリンジプランジャー及び液体量を観察することができる。円筒形状であるので、シリンジ本体の長さに沿う方向に放射された放射線に対しては、シリンジシールドが保護するが、シリンジシールドの2つの開口端部からは、“シャイン”放射線が発せられるので、開口端部は、操作者を保護しない。装置は、シリンジ内に放射性薬剤を抽出することが知られている。例えば、米国特許第5,927,351号(Zhu et al)は、シリンジ内で放射性薬剤を取り扱うための取出しステーションを開示しており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。放射性薬剤の送達については、医療従事者の放射線曝露を最少にするために、放射性物質を遠隔から投与する装置が米国特許第5,514,071号(Sielaff Jr et al)又は第3,718,138号(Alexanddrov et al)に開示されている。放射性物質の投与を自動制御する装置は、米国特許第5,472,403号(Cornacchia et al)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。放射性物質を患者注入するために用いられるインジェクターを制御するシステムが米国特許公開第2008/0242915号に開示されている。
【0008】
危険な放射性物質の導入困難性に加えて、放射性物質の短い半減期が、患者への適切な薬剤の投与をさらに複雑なものにしている。単光子放出コンピュータ断層撮影法(SPECT)及びポジトロン放出断層撮影法(PET)画像処理などでトレーサとして用いられている放射性薬剤の放射能レベルは、例えば、放射能薬剤師または核医学技術者のような医薬関係者によって測定され、診断治療において、個人に投与される放射線量が決められる。放射線量は、放射線が個人の中に注入される時の放射性薬剤の半減期及び放射性薬剤の初期放射線レベルをなどの多くの要因に依存する。既知の解決法の1つは、放射性薬剤の初期放射能を測定し、注入時間を測定することで、放射能の所望投与量が送達される(放射性薬剤の半減期から算出される)。放射線レベルは、米国特許出願公開第2006/0151048号(Tochon-Ganguy et al)に開示されているように、分配又は容器充填プロセスの一部として決定されるか、又は米国特許第7,151,267号(Lemer)又は第7,105,846号(Egushi)に記載された放射性薬剤容器を受けることができるように構成されたスタンドアロン型装置によって測定される。放射線検出器は、シリンジシールドの上に載置され、放射性薬剤移送システムとインラインに配置される。例えば、米国特許第4,401,108号(Galkin et al)には、放射性薬剤の取出し、測定及び注入の間に使用されるシリンジシールドを開示されている。このシリンジシールドは、シリンジの中に取り出された放射性薬剤の放射能投与量を検出し、測定する放射線検出器を含んでいる。輸送用ピッグに関して、米国特許第4,401,108号(Galkin et al)に開示されたものと同様な機構が、日本特許公開JP2005-283431(出願人 Sumitomo Heavy Industries)に開示されている。米国特許第4,562,829号(Bergner)及び第4,585,009号(Barker et al)は、ストロンチウムールビジウム注入システム及びそこで使用される線量測定システムを開示しており、これらの特許は引用を以て本願に組み込まれるものとする。注入システムは、ストロンチウム−ルビジウム放射性薬剤発生器が、加圧生理食塩水供給用シリンジと流体接続されている。ポンプにより、ストロンチウム−ルビジウム発生器から取り出された生理食塩水は、発生器を出て、患者又は廃棄物収集部のどちらかに送られる。発生器と患者の間で一列のチュービングは、線量測定プローブの前を通り、発生する崩壊の数が数えられる。検出器の幾何学的な効率(又は較正)、チュービングを通る流量、チュービングの体積は知られているので、患者に送達sれる全活性を測定することは可能である(例えば、ミリキュリー)。同様に、放射線測定が、患者の体内を流れる血液量に基づいて実施される。例えば、米国特許第4,409,966号(Lambrecht et al)は、患者から放射線検出器への血液流の分流を開示している。核医学画像デバイス及び手法についての情報は、PCT国際公開WO 2006/051531A2およびPCT国際公開公報WO2007/010534A2(Specttrum Dynamics LLC.)に記載されており、両方とも引用を以て本願に組み込まれるものとする。ポータブル式の流体送達ユニットは、米国特許第6,773,673号(Layfield et al)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。
【0009】
前述したように、診断画像処理における放射性薬剤の使用例として、ポジトロン放出断層撮影(PET)および単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)があり、それらは、非侵襲式の三次元画像処理であり、患者の生理学的および生化学的プロセスに関する情報が提供される。実際には、放射性薬剤は、標的領域と相互作用するトレーサとして機能する。例えば、血管系、臓器および臓器系、腫瘍及び/又は他の標的組織のPET画像又はSPECT画像を生成する最初のステップは、患者に、1回分の放射性試薬を注入することである。放射性薬剤は、対象の身体構造内のある組織又は細胞の上又は傍に吸収され、この領域で濃縮する。一例として、フルオロデオキシグルコース(FDG)は、グルコースの正常分子、細胞の基本エネルギー燃料を僅かに改質し、分子の原子の1つの置換として放射性核種を容易に受け入れる。FDPは、代謝作用が高い細胞(例えば、癌細胞、炎症、活動筋又は活性ニューロン等)により、優先的に取り込まれる傾向がある。放射性薬剤“トレーサ”は、陽電子を放出し、該陽電子は、組織が様々な角度でスキャンされ、光子が検出器列(detector array)を通過するときに検出可能な光子を生成する。コンピュータは、選択された組織構造の三次元カラートレーサ像を再構築するのに使用される。
【0010】
前記背景に関して、放射性医薬の生成、調製及び投与について現在のプラクティスの例を説明する。米国における典型的な放射性薬剤治療処理は、放射性薬剤が、治療処理場所、典型的には病院から離れた場所で、外部核医薬設備によりまず作成され、治療処理場所に送られて、さらなる調製、例えば特定の人に投薬及び投与が行われる。治療処理場所(例えば、病院)は、特定患者に対して、特定の放射性物質が特定時間に用意することを指令する。これらの物質は、外部の核医薬設備により、標的時間に所定の放射能レベルを有することができるように調製される。例えば、外部の核医薬供給者が所有する設備には、例えば、鉛でシールドされた囲いの中にサイクロトロン又は放射性同位体発生器が装備されており、放射性薬剤、即ち、放射性同位体が生成又は作られる。さらなる精製又は投薬準備段階では、治療処理場所から離れたところで、放射性同位体が注入可能な形態に準備される。このようにして、外部供給者は、所望の放射能レベルを有する放射性医薬物質を、治療処理場所に、標的時間に提供することができる。放射性薬剤の“個々の(individual)”投与準備は、治療処理場所で行われる。或いはまた、外部供給者が、特定患者に対し、所定時間に、注入の準備ができて“仕上がった(finished)”状態の放射性薬剤を供給することもできる。この場合、治療処理場所にいる医療従事者は、例えば、前述のスタンドアロン型放射線量測定装置の中にある放射性薬剤が正しい投与量であることを確認するだけでよい。前記プロセスが行われる間、医療従事者は、放射性物質に近接近することがしばしば起こるため、処理及び移送をシールドする装置が医療従事者を保護するために必要である。
【0011】
移送用ピッグは、個々の患者のために個々の投与量が準備された放射性薬剤を輸送するのに一般的に用いられている。処理施設において、各単位投与量に関するデータは、施設のコンピュータの中に入力されるが、これは、手操作によるか、又は移送用ピッグ若しくは放射性薬剤容器に添付されたバーコード、フロッピー(登録商標)ディスクその他同様なデータフォーマットのいずれかを読み出すことにより入力される。特定の患者に、所定の単位投与量を供給する時間がきたとき、処理施設の医療従事者は、例えば、移送用ピッグから放射性医薬が入ったシリンジを取り除いて、シリンジ内の薬剤が、患者に規定された範囲内のものであることを確認しなければならない。或いはまた、医療従事者は、前もって特定し確認した投与量の放射性薬剤を、シールドされたシリンジに移し替えなければならない。もしその投与量が多すぎると、一部は、シールドされた廃棄物容器に廃棄しなければならない。投与量が少なすぎると、異なるシリンジを使用するか、及び/又は、可能な場合は、追加の薬剤がシリンジ内に充填される。医療従事者は、投与量のの調製に関与することがあるため、典型的な米国のプラクティスでは、所望の放射能レベルを有する放射性薬剤が、所定時間に送達されることになっている。治療処理場所で放射性薬剤を手動操作することは制限されている。それでも、特定の患者に対し、正しい投与量の放射性薬剤を注入する準備が整っていることを確認するために、様々な手操作によるチェックが必要である。これらの手操作チェックは、前述したように、目視検査と放射能測定を含んでいる。
【0012】
前述の例として、PETイメージングでは、注入可能な放射性医薬(例えば、FDG(フルオロデオキシグルコース))、外部核医薬施設のシクロトロンデバイス内で調製される。その後、FDGは、放射性薬剤の形態となるように加工された後、個々の投与用容器(バイアル、ボトル、シリンジ等)及び移送用ピッグに詰め込まれた容器の中に移され、医療従事者(放射線技師、技術者及び、シクロトロンサイトからPET作像サイトへFDGの生成、取扱い及び輸送に携わるドライバー)に対する不必要な放射線曝露は防止される。FDGの半減期は短いので(例えば、約110分)、FDGをPET作像サイトへ素早く移送する必要がある。輸送に要した時間と製造時のFDGの最初の放射能レベルによっては、FDGの放射能レベルを、PET作像サイトを再測定する必要がある。一例として、もし放射能レベルが高すぎると、PET作像サイトにいる放射線技師は、FDGを、希釈剤(例えば、食塩水溶液)で希釈し、体積の一部を除去したり流体を抽出することで、患者への注入前に放射能を少なくする必要がある。プロセス全体を通じて、FDGの生成から患者への注入までの取扱いを、完全に手動で行うこともできる。この処理の間、医療従事者をFDGからシールドするために、前述したように、生成物をシールド(例えば、移送用ピッグ、シリンジシールド、L−ブロック等)することが行われている。シールドすることにより、放射線技師の放射能曝露は減少するが、それでも、所定の投与量を得るために、手操作による混合、体積の調節及び/又は希釈工程中に放射性薬剤からの放射に曝露される。注入後、また、場合によっては、放射性薬剤が人体の所定部位へ到着し吸収されるのをさらに遅延させた後、一般的には、移動可能ベッドの上に載せられる。ベッドは、遠隔制御により、画像スキャナーのガントリーと称される円形開口部の中に滑り込められる。円形開口の周囲及びガントリーの内部には、放射線検出器の幾つかのリングが配置される。放射線検出器の1つのタイプとして、検出器に、患者の体内で放射線核種から放出されるガンマ線がぶつかる毎に、光の短いパルスを放出するものがある。光パルスは、光電子増倍管によって増幅されて電子信号に転換され、情報は、装置を制御し画像データを記録するコンピュータに送られる。
【0013】
米国では、放射性薬剤を複数回投与の要領で治療処理サイトに送給されることも行われている。結果として、複数回投与の場合、個々の患者に対し、治療処理サイトで単一投与に分配しなければならない。この分配作業を注入又は投与地点で行なうことは可能であるが、より一般的には、放射能薬剤師又は核医薬技師が治療処理設備の“ホットラボ(hot lab)”の中で分配作業を行うことがより多くなる。治療処理施設の“ホットラボ”には、クリーンフード、シールディング、投与量測定器などが装備され、これらは全て高価な耐久性設備である。所定投与量の放射性薬剤は個々に治療処理施設内の投与場所へ移送され、特定の患者に所定量が投薬される。
【0014】
欧州では、放射性薬剤の生成及び所定投与量の準備の作業が、一般的には、治療処理施設(例えば病院)の“ホットラボ”で行われるという点において、米国とは異なる。例えば、病院自体が、一般に、ホットラボ内のシールドされた場所に、シクロトロン又はアイソトープ発生器(例えば、Mallinckrodt Inc.,St.Louis,MO; Amersham Healthcare,2636 South Clearbrook Drive,Arlington Heights, Illinois 60005; 又はGE Healthcare Limited,Amersham Place,Little Chalfont, Buckinghamshire, United Kingdomの製造によるテクネチウム発生器)を有している。シールドされたグローブボックスの二つの製品は、イタリアのComercer及びフランスのLamer Paxである。病院の医療従事者は、1日の早い段階で、放射性同位体を生成又は抽出し、放射性薬剤を調製するのに必要な追加の化学的工程を実施し、放射性薬剤を患者に注入する直前に、個々の患者用の単位投与量を準備する。病院内の“ホットラボ”は、危険性物質の輸送を最小にし、内部情報伝達が向上するが、様々な段階で放射能レベルの測定が必要であるため、病院の医療従事者に対し、追加の時間及び放射能負荷が課せられる。測定に際し、容器(バイアル、ボトル又はシリンジ等)は投与量測定器に手操作で挿入し、所定レベルに達するまで、放射能を繰り返し調整せねばならない。単位投与量の放射能レベルは、一般的に、手作業で又はプリンタにより記録される。
【0015】
先行技術の中には、有害な流体を移送するシステムが、例えば米国特許第6,767,319号(Reilly et al.)及び米国特許出願公開第2004/0254525号(Uber, III)に開示されており、その開示は、引用を以て本願に組み込まれる。患者に放射性液体を注入する他のシステムが、日本出願公開第2000-350783号(米国特許出願公開第2005/0085682号(Sasaki et al.)、譲受人:Sumitomo Heavy Industries.)に記載されている。この公開された特許出願は、放射能測定ユニットにあるコイル状“薬剤容器”の中に放射性流体を分配するシステムを開示している。所定の放射線量がコイル状容器(coiled container)に蓄積されると、別のシリンジにより、コイル状容器から食塩水が押し出され、患者に送られる。同じような装置と方法が、日本出願公開第2002-306609号(譲受人:Sumitomo Heavy Industries.)に開示されている。これらの日本の公開公報はそれぞれが引用を以て本願へ組み込まれる。
【0016】
線量測定による放射能の連続測定を不要とする方法は、国際公開第WO 2004/004787(譲受人:Universite Libre De Bruxelles - Hospital Erasme)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。開示された方法は、初期較正ステップを必要とするが、その後、放射線量は、放射能の予測可能な減衰に基づいて、時間の関数として算出される。日本出願公開第2004- 290455号(譲受人:Nemoto Kyorindo KK)には、予め充填されたシリンジからFDGを引き出し、食塩水等の他の流体を投与することができる放射能シールドされた注入システムが記載されている。ヨーロッパ出願公開第EP1616587号(譲受人:University of Zurich)は、食塩を注入する前に、放射線投与量測定器内のチュービングにFDGを押し込み、FDGを患者に投与する放射性流体分配装置が開示されている。米国特許出願公開第2005/0203329号及び第2005/0203330号(Muto et al.)は、放射性流体を、バイアル又はバルク容器から幾つかの単位投与量シリンジに抽出する自動ロボット化システムを開示している。このシステムは、病院薬剤部用として適用される。米国特許出願公開第2005/0277833(Williams, 譲受人:E-Z-EM, Inc.)は、放射性薬剤の混合物を取り扱い、混合し、分配し、注入する注入システムを開示している。放射能投与量は、装置の幾つかの場所で、別個の検出器によってモニターされる。
【発明の概要】
【0017】
一実施例において、有害流体の輸送容器を開示する。該輸送容器は、別個の囲いを取り囲むハウジングと、別個の囲いの中に配備され、少なくとも一部分は第1流体が満たされた第1流体経路要素と、ハウジング内に配備され、第1流体経路要素に接続された第2流体経路要素とを具えている。第2流体径路要素は、少なくとも一部分は、第2流体が満たされている。第1流体経路要素は、第2流体経路要素と制御可能に流体接続されており、流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングの外側からアクセスされる(accessed)ことができるように構成される。
【0018】
別個の囲いは、放射線がシールドされる。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられる(paid outward)コイル状チュービングを具えている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに、流体検出器が連繋されている。流体検出器は、放射線検出器又は空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている。第1流体経路要素と第2流体経路要素との流体接続を制御する制御バルブを具えることができる。
【0019】
他の実施例において、有害流体の送達システムを開示する。該送達システムは、少なくとも一部分が放射線シールドされた囲いを囲むハウジングと、シールドされた囲いの中に配置され、少なくとも一部分が第1流体で満たされた第1流体経路要素と、ハウジング内に配置され、第1流体経路要素と流体接続された第2流体経路要素とを具えている。第2流体経路要素は、少なくとも一部分は、第2流体が満たされている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素から流体を分配するためのポンプユニットが、好ましくは、第1流体経路要素と第2流体経路要素の一方又は両方と制御可能に流体接続されている。
【0020】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外側に向けられるコイル状チュービングを具えている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに、流体検出器が連繋されている。流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている。
【0021】
有害流体送達システムを液体でプライミングする方法についても詳細に記載する。該プライミング方法は、流体経路要素を具える流体送達システムを準備し、第1液体を流体経路要素に送給し、分離用流体を流体経路要素に送給し、第2液体を流体経路要素に送給することを含んでおり、第1液体と第2液体は分離用流体によって分離される。第1液体は、非有害液体を含んでおり、第2液体は有害液体を含んでいる。有害液体は、例えば、放射性液体である。分離用流体は、例えば二酸化炭素のような気体であるが、液体でもよい。固体部材(例えば小球)を、分離用液体内に配備することもできる。
【0022】
他の実施例において、層流注入ボーラスの拡がり(spreading)を軽減する(mitigating)方法を開示する。該方法は、第1流体を第1ルーメンを通って流体流れ経路に注入し、第2流体を、第1ルーメンの周りに同心に配備された第2ルーメンを通って流体流れ経路に注入することを含んでいる。第1流体は、流体流れ経路内の層流の略中心部を移動し、第2流体は、流体流れ経路内の第1流体の周りを略同心状に移動する。第1流体は、第1ルーメン下流の流体経路の層流の中心部から、軸心にある出口ルーメンを介して取り出される。第2流体は、軸心にある出口ルーメンから同心円状外側の流体流れ経路から取り除かれる。
【0023】
さらに、放射性薬剤輸送容器を開示する。該輸送容器は、内部コンパートメントを画定し、該内部コンパートメントの少なくとも一部分が放射線シールドされている容器本体と、該容器本体に連繋され、内部コンパートメントを囲む閉鎖蓋(closure lid)とを具えている。容器本体と閉鎖蓋の一方又は両方に、内部コンパートメントに通じる入口開口と出口開口が設けられる。シリンジと該シリンジの出口に連繋された流体経路組(fluid path set)が容器内に配備されることができる。流体経路組は、入口流体経路要素と出口流体経路要素を具えている。シリンジは、内部コンパートメントに配備され、流体経路組の入口流体経路要素の少なくとも一部分は、入口開口を通って延びており、出口流体経路要素の少なくとも一部分は、出口開口を通って延びている。閉鎖蓋には、放射線シールドされた窓部を設けることができる。入口チェックバルブが流体経路組の入口流体経路要素に連繋され、出口チェックバルブが流体経路組の出口流体経路要素に連繋されることができる。流体経路組の入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、入口開口及び出口開口を通して、容器本体から外方へ向けられるよう構成されることができる。流体経路組の入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、医療用コイル状チュービングから形成されることができる。
【0024】
さらなる実施例は、有害流体を充填及び輸送するシステムに関するもので、有害流体輸送容器と、該容器に連繋された充填システムとを具えている。流体輸送容器は、別個の囲いを囲むハウジングと、別個の囲いの中に配備された第1流体経路要素と、ハウジング内に配備され、第1流体経路要素と流体接続された第2流体経路要素とを具えている。充填システムは、少なくとも第1流体流れ経路要素と制御可能に流体接続され、少なくとも第1流体源と第2流体源を具えている。少なくとも1つの流体ポンプが、第1流体源及び第2流体源に連繋されており、第ポンプにより、第1流体源及び第2流体源からの流体は第1流体経路要素に分配され、次に第2流体経路要素に分配される。
【0025】
別個の囲いは放射線シールドされている。流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられるコイル状チュービングを具えている。第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに、流体検出器が連繋されている。流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている。充填システムと第1流体経路要素との流体接続部を制御する制御バルブを具えることができる。
【0026】
さらなる詳細と利点については、添付の図面と以下の詳細な説明により、明確になるであろう。なお、図面中、同じ部品については同じ番号又は文字が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、患者に、放射性流体を注入する手動操作システムの概略図である。
【0028】
【図2】図2は、患者に、放射性流体を注入する流体送達システムの一部として用いられる流体輸送容器の一実施例の概略断面図である。
【0029】
【図3】図3は、図2に示されている流体輸送容器の概略斜視図である。
【0030】
【図4】図4は、図2の流体輸送容器に放射性流体を充填する充填システムであって、流体分配システム又はプラットフォームとしても用いられる充填システムの概略図である。
【0031】
【図5A】図5Aは、図2の流体輸送容器が内蔵されており、放射性流体を患者に注入する流体輸送システムの概略図である。
【0032】
【図5B】図5Bは、図5Aの流体輸送システムの変形例の概略図である。
【0033】
【図5C】図5Cは、図5Aの流体輸送システムの他の実施例の概略図である。
【0034】
【図6A】図6Aは、幾つかの実施例で用いられた第1流体と第2流体であって、第1流体と第2流体が同心円状と導入される実施例の概略図である。
【0035】
【図6B】図6Bは、図6Aと同様な図であって、複数流体が同心円状に導入される他の実施例の概略図である。
【0036】
【図7】図7は、本発明の装置及び方法によってもたらされるボーラス注入の好ましい流体速度プロファイルの一実施例を示す図である。
【0037】
【図8A】図8Aは、複数流体に対して好ましい流体速度プロファイルを達成するのに用いられる複数のルーメン管路を示す図である。
【0038】
【図8B】図8Bは、図8Aに示され複数ルーメン管路によって達成されるボーラス注入の流体速度プロファイルの一実施例を示す図である。
【0039】
【図9A】図9Aは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9B】図9Bは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9C】図9Cは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9D】図9Dは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9E】図9Eは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9F】図9Fは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9G】図9Gは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9H】図9Hは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【図9I】図9Iは、流体流れの閉ループ制御部を具え、所望のボーラス注入プロファイルを達成する流体送達システムの概略図である。
【0040】
【図10A】図10Aは、幾種類かの流体を、所望の注入順序で患者に注入できるように構成された流体送達システムである。
【0041】
【図10B】図10Bは、図10Aのシステムによって提供され、複数種流体を注入する順序の1つの可能例をグラフ表示した図である。
【0042】
【図11】図11は、放射性流体のこぼれを吸収し関係者に警告を発することができるよう構成された有害流体収集用マットの一実施例の斜視図である。
【0043】
【図12】図12は、有害流体輸送容器の例示的実施例の斜視図である。
【0044】
【図13】図13は、図12の有害流体輸送容器を開いた状態を示す斜視図である。
【0045】
【図14】図14は、図12−図13の有害流体輸送容器によって運搬されることができる有害流体シリンジと該シリンジに連繋された流体経路組の一実施例を示す斜視図である。
【0046】
【図15A】図15Aは、図12−図13に示される有害流体輸送容器の他の実施例の断面図である。
【0047】
【図15B】図15Bは、図15Aに示される有害流体輸送容器の変形例を示す断面図である。
【0048】
【図16】図16は、チュービングを含む流体経路組の中の放射性流体の放射能を検出する一実施例の概略図である。
【0049】
【図17A】図17Aは、図16に示される放射能検出装置の他の実施例の概略図である。
【図17B】図17Bは、図16に示される放射能検出装置の他の実施例の概略図である。
【図17C】図17Cは、図16に示される放射能検出装置の他の実施例の概略図である。
【0050】
【図18】図18は、幾つかの実施例で有用な流体経路内で異なる2種類の流体を分離する分離用機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の説明中、実施例で使用される空間的方向に関する語は、添付の図面に示された向きを指すものとし、図示されていない場合は、以下の説明に記載された向きを言うものとする。なお、以下に記載する実施例は多くの可能な変形及び形態を前提としたものであることは理解されるべきである。また、添付の図面に示され、以下の説明に記載される具体的な装置、特徴及び構成要素は、単なる例示であって、これらに限定されるものでないことは理解されるべきである。
【0052】
従来のファーストパス心臓イメージング研究は、核医薬トレーサー又は放射性同位体を、患者の静脈に接続されたチュービングの中に、手操作で速やかに注入し、次に、所定量の食塩水を速やかに注入し、患者の静脈とチューブから放射性同位体を洗い流すものである。同位体が、右心臓、肺動脈、肺、肺静脈、左心臓及び大動脈を通って流れるとき、一連の画像が撮影される。この研究を最も有用ななものとするため、核医薬トレーサは、“タイト(tight)”ボーラス、又は“コンパクト(compact)”ボーラスの中にあるのが望ましく、時間放射能曲線に2つのピークがないことが特に望ましい。注入されるトレーサの量は、例えば、ミリリットル分の1乃至数ミリリットルである。タイトボーラスを用いると、ファーストパス画像及び後の分析に用いられるデータはより良好なものが得られる。タイトボーラスは、コンパクトで、複数のピークがなく、有意に徐々に上昇又は低下することが望ましい。ここでの開示は、シールドその他の要件を必要とする核医薬の他、放射線シールド又は放射線測定態様を必要としないあらゆる薬剤流体送達にも適用可能である。タイト又はコンパクトボーラスを維持することの障害が、流体送達段階で、また、患者自身に起こることがある。この開示は、ファーストパス心臓法を、本発明の様々な概念及び手順を説明するための背景として用いており、この明細書で説明する様々な概念及び方法は、特定の用途に限定するものと解するべきではない。限定しない他の用途についても同様に記載するが、医療分野の専門家には既知である。さらに、核トレーサを注入し、コック栓を回し、次に食塩水フラッシュを注入するプロセスを手操作で行なうと、技術者は、放射性薬剤からの放射線に曝露されることになる。
【0053】
ボーラス注入の長時間化、汚れ(smearing)、ゆがみ(distorting)をもたらす幾つかの要因のあることが知られている。これらの要因には、流体要素内での層流又は乱流、乱流又は混合を注入流れに導入するチュービング移行部、ベンド及び粗さ、圧力低下の後収縮する圧力下で医療用チュービング等の膨張可能要素の体積膨張である容量(capacitance)又は“デッドスペース”が含まれる。容量効果に対して、この開示が提供する解決策は、薬剤流体の注入を開始する前に、流体送給システムの膨張可能部材を予め加圧することを含んでいる。流体流れ経路に関しては、移行部、ベンド及び内部粗さが、ボーラス注入の最初と終わりに混合を生じさせる乱流を最小に減じることができる。
【0054】
層流条件において、ストレート管の中心にある流体は、流体プロファイルの平均速度の2倍で移動し、流体速度は、略放物線形状であり、壁面での速度は0である。それゆえ、本発明の放射性薬剤の用途では、流体が、ある種類の薬剤から、他の薬剤に変化すると、新しい薬(第2液体)は、速やかに、チュービングの中心から下方へ移動するが、壁面近くのチューブから出た第1流体をゆっくりと洗い流す。医療用流体送達用途で一般に用いられる内径(ID's)は小さいから、医療用流体送達システムは、一般的に、層流の形で動作する。この開示の中の一態様において、薬剤ボーラスは、固体又は気体の“プラグ”によって、薬剤ボーラスを分離することが望ましい。
【0055】
ボーラスに影響を及ぼす他の要素は、患者の固有のものであり、例えば、静脈の体積、洗浄が不十分になる静脈分岐(例えば、血流速度において、流入の高速化、流出の低下)、静脈の拡張又は怒張、悪性静脈弁、逆流などがある。人体の静脈体積及び静脈分岐には個人差による自然変動があることは知られている。また、静脈は分岐構造を有しているので、血液は、それらが通過する筋肉の緊張又は弛緩状態とは独立して、心臓に戻ってくることも知られている。次の表1は、成人の典型的な静脈セグメントに対するおおよその血液量を示している。
【表1】
【0056】
前掲の表より、通常の肘前注入部位と上大静脈(SVC)の間では、静脈中の血液はかなりの量であることを理解することができる。もし注入後のフラッシュ量が、ボーラス注入を上大静脈内に押し出すのに十分でない場合、注入を一旦停止し、ボーラスを血液の流速まで下げて、上大静脈内をさらにゆっくりと外へ移動させる。それゆえ、ここでの開示では、通常の成人に対しては、20mlを超えるフラッシュ量、好ましくは40〜60mlとすることが好ましく、子供の場合は少なくする。
【0057】
静脈分岐は、この体積効果をさらに悪化させる。場合によっては、二重ピークのボーラスを避けることができなくなる。その理由は、1つのブランチを通る流体経路は他のブランチを通る流体経路よりも長いことによる。例えば、手の甲の静脈に注入すると、静脈の追加と分岐が前腕で起こるため、この影響はさらに大きくなる。
【0058】
静脈は、圧力下で膨張し、圧力下にないときは崩れた状態になる(collapse)という点では、キャンバス製消火ホースと同様である。もし静脈が、一部又は全部が崩れた状態になると、最初の注入量の多くは静脈の拡大に供されるため、前進運動が遅れる。また、静脈には、通常、心臓への一方向の流れが確実に行われるようにする弁を有してるので、静脈が、移動によって圧迫されると、血液を心臓に戻すポンプ作用となる。もしこれらの静脈弁が損傷すれば、注入流体の流れは静脈内の上流に移動することになる。それゆえ、この開示では、所定薬剤(本実施例では放射性流体)を注入する前に、十分な生理食塩水を注入することが望ましい。
【0059】
もし機械的なパワーインジェクターを流体投与手段として使用する場合、慣性作用により、機械部品の加速が制限され、流体注入ボーラスの立上り時間(rise time)が制限される。また、パワーインジェクション状態では、駆動モータは、モータの力が機械的ギヤを通じて伝達されようにある程度移動し、流体を駆動させるための圧力を発生させなければならないので、リバース運動からフォワード運動へ切り替わるとき、機械的スラックが顕著になる。この慣性による制約は、注入ボーラス特性に悪影響を与えることになる。
【0060】
明細書に開示した特徴は、時間が重要な画像作成研究において、改良された流体注入システム及び関連する方法に関するものである。流体注入システムの望ましい成果は、注入流体を“タイト”ボーラス又は“コンパクト”ボーラスを送達して、ファーストパス画像及び対応するデータを作成又は向上させる能力である。しかしながら、非常に“シャープな”ボーラス注入が必要でない場合もある。また、例えば、核医薬計数率(濃度)の制限が、ボーラスに対して好ましい時間幅があることを意味する場合、また、大静脈及び右心臓内での流れ又は混合効果により、腕に注入された無限タイトボーラスでさえも、目的領域に到達する前に有意に分散されるように、ボーラスの注入を十分にゆがめることができる場合には、この“シャープな”ボーラス注入が好ましい。非常にシャープなボーラスを送達するこのシステムの利点は、医療従事者の希望又は医薬手順の必要性に応じて、コンピュータ制御システム(この明細書に記載)を用いて、シャープでないボーラス又はさらに複雑な任意形状のボーラスを制御しながら繰り返し行なえることである。以下の説明は、ファーストパス核医薬の用途に関するものであるが、その概念は、限定するものではないが、核医薬灌流の定量化、数mlの小容量で10フィートの距離を越えて送給される過分極C−13、コンピュータ断層撮影(CT)試験ボーラス(典型的には20mlの造影剤)、磁気共鳴血管撮影法及び機能的画像化(典型的には、10−30mlの薬剤)、薬物動態学的研究又は薬理学研究、受容体動力学研究、動物注入(薬剤1mlよりもはるかに少ないことが多い)、及び高粘度血管造影(明細書の中に記載するように、高粘度造影流体を囲む低粘度流体により潤滑される)にも適している。高粘度血管造影に関しては、造影を小さな“ランプ(lump)”又は“スラッグ(slug)”とすることで、血管を通それらの動きが追跡されることができ、血液流の測定を補助するために用いられることができる。
【0061】
図1は、従来の一般的な手操作式流体送達システムを示しており、該システムは、ストップ栓(1030)に接続され、核医薬トレーサ(1011)を収容するシリンジ(1010)(一般的には3mlシリンジ)を含んでいる。また、生理食塩水(1021)で満たされたシリンジ(1020)(一般的には20mlシリンジ)は、ストップ栓(1030)に接続される。生理食塩水(1021)を用いて、IVカテーテルへの接続部(1050)で終端する接続チュービング(1040)を含む流体経路からプライミング(例えば、空気の除去)される。システムがプライミングされた後、既に患者の中へ挿入されているIVカテーテルに接続される。
【0062】
タイトボーラスを送達する1つの課題は、シリンジ(1010)(1020)の手作業を、迅速かつ均一に行なうことである。少量のトレーサ(1011)を速やかに押すことは、比較的容易である。しかしながら、ストップ栓(1030)を回転させなければならないので、チュービング(1040)内の流れを停止させねばならず、洗浄用生理食塩水が迅速に送達される。生理食塩水フラッシュは、一般的に、20〜25mlのシリンジ(1020)内で15〜20mlである。例えば、そのように大きなシリンジ(1020)を使用すると、例えば22ゲージIVカテーテルを通じて速やかにボーラスを送給するのに十分な圧力を生成することが困難になる。もしチュービング(1040)の容積が、シリンジ(1010)内にトレーサ(1011)(流体又は薬)の全部を含むのに十分であれば、生理食塩水(1021)(又は他の流体又は薬剤)によって押されるまで、患者への注入は開始されない。それゆえ、この場合には、ストップ栓(1030)を回すのが遅れても、ボーラスは患者の腕(1060)にまだに入っていないから、ボーラスをゆがめることはない。接続チュービング(1040)は比較的短い他の例では、トレーサ(1011)又は他の流体の容積は、少なくとも1ミリリットル以上であるから、ストップ栓(1030)の回転の時間遅延は問題となる。また、追加の薬剤(アデノシン等の心臓のストレッサ)がある場合、接続チュービング(1040)の長さの一部又は全部を通って注入される。この場合、追加の薬剤の例として、心臓のストレッサであり、具体的には、アデノシンがある。この場合、注入ストリームの中に入るトレーサ(1011)が、他の薬剤がその注入速度で注入されるとき、他の薬剤に沿って運搬され、注入ボーラスを拡大させる。
【0063】
図2は、薬剤輸送容器(1100)の一実施例を示しており、タイトボーラスを達成するために、1又は複数の障害を克服するために、図4−5に関連して明細書に記載した流体注入システムの一部である。薬剤輸送容器(1100)及び図4−5に関連して記載したシステムは、タイトボーラス注入を対象薬剤の患者に実施するのに適しており、薬剤輸送容器(1100)とシステムは、明細書の中で特定された手順に用いられることができる。薬剤輸送容器(1100)及び関連する図4−5のシステムは、ヒト及び動物の流体注入におけるタイトボーラス達成に関連する制限要因に対して既に特定された様々な“解決”を実行する。薬剤輸送容器(1100)は、ハウジング又は囲い(1110)を含んでいる。薬剤輸送容器(1100)は、医療用接続チュービング形態の流体経路要素(1150)(1160)(1165)を含むんでいる。流体経路要素(1160)(1165)は両方で、流体経路要素(1150)を形成する。この明細書において、示された実施例の特徴を説明するために、流体経路要素(1160)は第1流体経路要素と言い、流体経路要素(1150)は第2流体経路要素と言い、流体経路要素(1165)を第3流体経路要素と言うものとする。図示の如く、流体経路要素(1150)(1160)(1165)の望ましい一形態は、コイル状チュービングであるが、別個の入口及び出口を有し、流体量が流体流れにより管路を通って下流に運ばれるものであればどんな流体管路でもよい。これらの流体経路要素は、トレイ又は容器に、物理的に取り付けられるか一体化されており、使用者は、それらを単一ユニットとして輸送容器(1100)の中に配置することができる。なお、この明細書では、流体経路要素(1150)(1160)(1165)は別個の構成として示しているが、これは、発明の特徴を説明するための例示であって、これら要素を組み合わせたり省略しても、同等の流体運搬用流れ経路を作り得ることは、流体伝達分野の当業者にとって明らかであろう。流体経路要素(1150)(1160)(1165)のうちの1又は複数の要素は、各要素を具えるコイル状チュービングにより、ハウジング(1110)から外側に向けられることもできる。図4−5において、流体経路要素(1150)(1160)(1165)は、明瞭化の目的のために図示を省略している。
【0064】
流体経路要素(1160)には放射性薬剤が入れられ、十分な厚さのシールド要素(1120)(1121)(1122)に囲まれている。シールド要素は、タングステン、鉛又は他のシール材料から作られ、流体経路要素(1160)内の放射性薬剤から放出される放射能から医療従事者を保護する。シールド部(1120)は、流体経路要素(1160)を囲む囲いの形態が望ましい。流体経路コネクタ(1192)(1193)は、夫々、流体経路要素(1165)(1160)を上流の流体源に接続し、流体コネクタ(1191)は、流体経路要素(1150)を患者に挿入されるカテーテルに接続する。上流流体源は、例えば、放射性医薬(この明細書では、放射性薬剤とも称する)と生理食塩水を含んでいる。所望により、流量制御用薬剤輸送容器(1100)の中に、弁要素(1170)(1180)が用いられる。弁要素は、流体経路要素(1150)(1160)(1165)内で液体の拡散及び/又は重力による移動を防ぐもので、例えば、一方向チェック弁又はスリットシリコーンダイヤフラム弁である。また、弁要素(1170)及び/又は(1180)は、通常は閉じられた電子的又は機械的作動式の制御弁(例えば、ピンチ弁又は回転弁)である。センサ要素(1201)(1202)(1203)(例えば、超音波センサ又は赤外線センサ)は、流体経路要素(1150)(1165)(1160)が、それぞれ、液体又はガスを含んでいるかどうかを検出するために用いられる。所望により、センサ要素(1201)(1202)(1203)を組み込むこともでき、例えば、放射性薬剤専用の放射線センサであり、投与量の取出し又は送達の態様又は状態が測定される。センサ(1203)が放射線センサの場合、センサ(1203')として示され、流体経路要素(1160)の一部又は全部からの放射能を測定することが可能である。好ましくは、容器ハウジング(1110)には、1又は複数の情報タグ又はコード化メモリユニットが取り付けられており、これらはデータ格納デバイス又は情報タグ(1899)として示され、輸送容器(1100)の1又は複数の要素に連繋されている。図3は、閉じられた蓋と容器(1110)担持用ハンドルを有する薬剤輸送容器(1100)の外側外観図である。好ましくは、蓋(1112)と容器ハウジングの基部に、シールド(図示せず)が配備される。このように、蓋(1112)が閉じられているとき、薬剤輸送容器(1100)から放出される放射線は殆ど無い。
【0065】
図4は、充填及び/又は投与量分配システム(1300)を示しており、これは、薬剤輸送容器(1100)に連繋して、該薬剤輸送容器(1100)に、放射性薬剤、生理食塩水及び/又は他の流体を充填するよう構成されている。充填システムは、米国特許第5,806,519号(Evans, III, et al.)に開示されたシステムと同様であり、該米国特許は引用を以て本願に組み込まれるものとする。この例では、プライミング用流体及びフラッシュ用流体(この例では、両方とも生理食塩水)との混合を防止するのに、放射性薬剤の所望ボーラスを分離するのにバブル(CO2が好ましい)が用いられる。図18で示されているように、CO2バブル(600)は、例えば、流体経路要素(1160)内にある2種類の流体(602)(604)(ここでは生理食塩水と放射性流体)を分離するために用いられる。これら流体は、患者の静脈に少量進入したとしても、有害性は比較的少ないからである。ボーラスが最大のシャープさ(sharpness)を得られるようにするために、流体分離用としてCO2バブルが好ましいが、この明細書では、これに限定するものではない。好ましくは、流体経路要素(1150)(1160)(1165)は、あらゆるドリップをキャッチできるトレイを具えたカセットの中に予め構成され、ハウジング(1110)の中に入れられており、流体経路要素(1160)は、内部シールド用ハウジング(1120)の中にある。コネクタ要素(1192)(1193)は、夫々、連結用コネクタ(1392)(1393)を介して、充填システム(1300)に接続されている。充填操作を開始するには、所定量の生理食塩水が、流体ポンプ(1410b)により、関連データ格納/メモリ要素(1899a)を具える生理食塩水源容器(1411b)から送出され、管路(1352)を通り、ポートa-bが接続接続された制御バルブ(1342)を通り、ポートb-cが接続された制御バルブ(1343)を通り、流体経路要素(1160)に入る。制御バルブ(1342)の操作によりポートa-cが接続され、バルブ(1341)が開いて、CO2源管路からCO2が流体経路要素(1160)の中にに流れ込む。CO2源は、例えば、低圧レギュレータを具えるタンクである。ラインに入るCO2の量は、圧力と、制御バルブ(1341)が開く時間の関数である。送達される量は、典型的には、1ml未満である。次に、制御バルブ(1341)は閉じられて、制御バルブ(1343)の操作により、ポートa-cが接続される。所定量の放射性薬剤が投与されるように計算された量は、流体ポンプ(1410a)により送出され、関連データ格納/メモリ要素(1899b)を有する放射性薬剤源容器(1411)から、管路(1353)を通って、流体経路要素(1160)に入る。その前に、食塩水とCO2が押圧される。所定量の放射性薬剤が、流体経路要素(1160)に供給された後、制御バルブ(1343)の操作により、ポートb-cが接続され、制御バルブ(1341)が開いて、1ml未満のCO2を流体経路要素(1160)に供給される。次に制御バルブ(1341)が閉じられる。流体経路要素(1160)は、2つのCO2ボーラスを最大量含むことができ、放射性薬剤の予想最大量を含むことができる。所望により、流体経路要素(1160)に送られた放射性薬剤の投与量を測定し又は確認するために、放射線センサ(1203')を用いることができる。流体経路要素(1160)の充填を完了するには、制御バルブ(1342)の操作によりポートa-bを接続し、最初のCO2“バブル”のリーディングエッジが、センサ(1203)(この例では、空気センサ)に到達するまで、生理食塩水が流体経路要素(1160)に送り込まれる。流体経路要素(1160)内の最初の生理食塩水は、リーディングエッジが流体経路要素(1150)の中に移動できる十分な量を有している。或いはまた、センサを用いないで、チュービング(1150)までずっと液体(バブルではなく)を送達するのに必要な量を、コンピュータ制御システム又は制御ユニット(1442)によって、計算し、送達することもできる。プライミングプロセスを完了するには、制御バルブ(1342)の操作してポートa-cを接続し、食塩水が食塩水源(1352)から送り出され、流体経路要素(1165)(1150)を満たす。オーバーフローは、流体コネクタ(1191)から流出することができ、所望により、コネクタ(1391)を通して、使い捨て式廃棄物容器(1359)の中に集めることもできる。或いはまた、プライミング用チューブは、MEDRAD Stellant(登録商標)インジェクター(米国特許第7,018,363号(Cowan, et al.)及び 米国特許出願公開第2004/0064041号(Lazzaro)及び第2005/0113754号(Cowan)を参照)に連繋されたものと同様のものでもよい。プライミング用チュービングは、操作者が、コネクタ(1191)を患者に接続する準備ができるまで、キャップとして、コネクタ(1191)に取り付けられたままにすることができる。
【0066】
いったん充填されると、薬剤輸送容器(1100)をインジェクションサイトに搬送されることができる。インジェクションサイトは、例えば、ファーストパスカメラ(例えば、Wexford PAのCDL)を有する心臓ストレスルーム、一般的にFDGで処理される静かなインジェクションルーム、又はインジェクションと共に又はインジェクション直後に開始するイメージングルームがある。或いは、薬剤輸送容器(1100)は、パワーインジェクタ(例えば、国際特許出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)の図2A-2B又は図18に示されている)の非可搬性部分又は選択的可搬性部分でもよい。
【0067】
薬剤輸送容器(1100)からの放射性薬剤の送達は、図5A−5Bから容易に理解されることができるであろう。なお、図4−5では、これら図における主要事項の説明を明確化するために、センサ要素(1201)(1202)(1203)の図示を省略している。流体送達システム又はプラットフォームは、薬剤輸送容器(1100)がポンプユニット又は流体ポンプシステム(1400)と結合されるときに形成される。ポンプユニット又は流体ポンプシステム(1400)は、ポンプユニット(1410)、システム制御バルブ(1420)、生理食塩水源(1401)の他、図示はしていないが、コンピュータ、電源、ユーザインターフェース(制御、繰り返し、同期化に用いられる)等の他の態様を含んでいる。流体コネクタ(1192)(1193)は、ポンプ出口コネクタ(1432)(1433)に接続される。ターミナル又はエンドコネクタ(1191)と流体経路要素(1150)は、“プル式”又は薬剤輸送容器(1100)のハウジング(1110)から外側に向けられるものが好ましく、コネクタ(1191)は、患者Pの静脈に予め挿入されているIVカテーテルCに接続するのに用いられる。流体経路要素(1150)(1160)(1165)の各々は、コイル状チュービングである、ハウジング(1110)から外方に引き出されるか、又は繰り出される。流体経路要素(1150)(1160)(1165)に沿ってストッパーが配備され、各流体経路要素は、ハウジング(1110)から過剰に引き出され又は繰り出されることはない。これは、放射性薬剤を含む流体経路要素(1160)のどのセグメントも、シールドされた輸送容器(1100)の中から引き出さることがなくなるという利点がある。流体経路要素(1150)は、患者のIVカテーテルCに届き、接続されることができる十分な長さである。一実施例において、患者へのIV挿入の開通性を確認するために、試験インジェクションとして、少量の流体が投与される(数ミリリットルを数秒)。挿入の確認が行われると、次に注入が行なわれる。薬剤輸送容器(1100)は、図5Bの流体ポンプシステム(1400a)と共に用いられることができる。図5Bでは、二つの独立したシリンジポンプ(1410a(1)),(1402a(2))により、流体は二つの流体経路要素(1160)(1165)の中を送給される。例えば、これら二つのシリンジポンプは、例えば、MEDRAD Stellant(商標名)のデュアルインジェクター、又はMEDRAD Spectris Solaris EP(商標名)のインジェクターである。この明細書全体において、インジェクター又はポンプは、コンピュータ制御され、流体流れのプログラミング及び制御を、当業者に公知の手段を通じて行なうことができるユーザインターフェイスを有している。この明細書では、“ポンプ”、“ポンプユニット”及び“圧力装置”は、医療分野で知られているあらゆる種類のポンプ装置であってよく、例えば、図5Bに示されているシリンジポンプ、蠕動ポンプ、回転ベーンポンプ、容積型ポンプ又は医療若しくは流体運動分野で一般的に用いられる他のポンプを挙げることができる。コントロールユニット(1442)は、薬剤輸送容器(1100)のデータ格納/メモリデバイス(1899)と相互作用して、薬剤送給に有用な情報を収集し、その後の送達に有用な情報を、送達、保存又は記録することができる。
【0068】
前述したように、ボーラス注入をゆがめる(distort)効果の1つは、静脈の膨らみ又は膨張である。また、機能不全の静脈弁がどれかでもあると、パワーインジェクションが行われるとき、流体が、静脈の中を逆流することがあり、薬剤の供給がさらに遅延する。変動性及びボーラス拡大のこれらの源の影響を低減するために、薬剤の供給直前に、薬物送達の全流量で所定量の生理食塩水を注入して、静脈を膨張させ充填することが望ましい。これは、制御バルブ(1420)及び該制御バルブ(1420)のポートa-cを通じてポンプユニット(1410)を接続し、プログラムされた流量の10〜40mlの生理食塩水(例えば、4ml/s)を送給することによって行なうことが望ましい。次に、制御バルブ(1420)を速やかに操作して、ポートa-cを接続することにより、生理食塩水は、好ましくは同じ流量で、患者Pに再び送り出される。この時、放射性薬剤は、流体経路要素(1150)を通り、流体経路要素(1160)から放射性薬剤を洗い流し、患者Pに送られる。十分な量の追加の生理食塩水フラッシュ(例えば20〜60m)が送給され、放射性薬剤は、末梢静脈からフラッシュされ、中央循環に入る。注入が完了した後、流体経路要素(1150)(1060)(1065)を取り囲む前述の“カセット”又は“トレイ”及びあらゆる関連機械的アッセンブリにより、これら要素は、使い捨てユニットとして、容器ハウジング(1110)から取り除くことができる。所望により、流体経路要素(1160)(1165)は複数の患者のために使用され、各患者に対してターミナル又は終端流体経路要素(1150)若しくはその十分なセグメントは処分されることができる。例えば、流体経路要素(1150)の患者側端部は、逆流を防ぐために分離用チェックバルブを含むことができ、そのようなチェックバルブの上流に追加のコネクタを組み込むことにより、追加のコネクタの下流でチェックバルブを含むチュービングの遠位側の短い長さ部分を、患者毎に交換することが可能である。
【0069】
図5Cは他の実施例を示しており、図5A−5Bは流体送達システムを示している。前述した流体取扱い容器(1100)の流体経路要素(1160)が、端部近傍のコネクタ(1193)を通る薬剤で満たされると、インジェクションボーラスをそれが充填された同じ端部から排出され、所望により短いチューブを通って患者に送られるので、ボーラス流れ拡大の多くは排除される。この構成により、ボーラス注入は、チュービングの全長を移動させる必要性がなくなる。図5Cのシステムを用いて、前述したように、流体取扱い容器(1100)から流体を送給することができる。薬剤輸送容器(1100)は、患者Pの近傍に配置されることができ、コネクタ(1193)(1192)は、入力流体コネクタ要素(1195)(1196)(夫々、流体コネクタ(1193)(1192)に結合されている)を含むY-コネクタ(1194)を介して、及び、患者IVカテーテルCに接続された出口流体コネクタ(1197)又は患者IVカテーテルCに接続された簡単な短いチューブを介して、患者に接続されることができる。長い流体経路要素(1440)(例えばチューブ)を、ポンプユニット(1410)及び生理食塩水源(1401)に接続されることができる。この実施例において、好ましくは、バルブ(1170)(1180)は、流体ポンプシステム(1400)内の流体ポンプユニット(1410)を制御するコントロールユニット(1442)により制御される電子制御バルブである。或いはまた、バルブ(1170)(1180)は、コンピュータ制御されたストップ栓に置き換えることができ、例えば、前述した制御バルブ(1420)と同様のものでもよい。例えば、生理食塩水を流体経路要素(1165)を通して注入することにより、注入前に、静脈を充填することができる。次に、バルブ(1170)(1180)は切換え可能であるから、流体は、流体経路要素(1160)を通り、薬剤及び十分な量のフラッシュ流体を送給して、前述の実施例の全ての利点をもたらすことができる。この実施例の利点の1つは、薬剤は流体コネクタを投入され、次に、同じ流体コネクタを介して取り出されることができることであり、流体セパレータは、流体経路要素(1160)内の固体球であってよく、分離用のガス(例えば、CO2)を必要でない。そのような分離用球は、流体経路要素(160)の下方へに移動できるように、十分に小さい。分離用球は、流体コネクタ(1193)の中及び流体経路要素(1160)と流体経路要素(1440)の接合部で、スクリーン要素又は同様な捕獲機構により、流体経路要素(1160)の中に滞留させられ、流体がスクリーンによって停止すると、流体は玉の周りを流れることができる。一般に、この発明の実施例において、薬剤とフラッシュ用流体は、好ましくは、流体経路要素の中又は管路の中で分離され、注入される薬剤のタイトボーラスを提供する。分離用流体という語は、十分な量のガス、非混和性又はプラグ流として十分に作用し得る高粘度などの物理的特性を有する液体、又は前述した流体経路要素の中でプラグとして流れる大きさの固体要素(例えば、球)を含むものである。それゆえ、図18において、CO2バブル(600)は、液体のスラグと置き換え可能であり、流体経路要素内の流体の流れに沿って運ばれる玉等の固体部材でもよい。
【0070】
前述した図5A−5Cの流体送達システムの変形例において、インジェクション工程を生理食塩水で開始することを所望せず、放射性薬剤を移動させることなく生理食塩水を送達することを所望しない場合は、流体経路要素(1165)は不要である。例えば、図5Aの制御バルブ(1420)、又は図5CのY−コネクタ(1194)を、薬剤輸送容器(1100)内に組み込むことができる。さらに、生理食塩水源(1401)、流体ポンプユニット(1410)及びコントロールユニット(1440)を含むポンピング機構全体が、他の変形例における1ユニット内の中に物理的に組み込まれることができる。
【0071】
図5A−5Cの前記流体送達システムの変形例において、インジェクション工程を生理食塩水で開始することを所望せず、放射性薬剤を移動させることなく生理食塩水を送達することを所望しない場合は、流体経路要素(1165)は不要である。例えば、図5Aの制御バルブ(1420)、又は図5CのY−コネクタ(1194)を、薬剤輸送容器(1100)内に組み込むことができる。さらに、生理食塩水源(1401)、流体ポンプユニット(1410)及びコントロールユニット(1440)を含むポンピング機構全体が、他の変形例における1ユニット内の中に物理的に組み込まれることができる.
【0072】
図5Cのシステムの利点は、患者と薬剤の近接可能性にある。図4の充填又は分配システムにおいて、薬剤は、流体経路要素(1150)から最も遠い流体経路要素(1160)(1165)の端部に充填される。流体を、コネクタ要素(夫々、コネクタ(1192)(1191))を介して分配し充填することにより、ボーラス注入の分散を少なくすることができる。そのような送達は、図5Cの流体送達システムによって行なうことができる。国際特許出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)に開示された実施例では、インジェクターシステムの薬剤と選択的な幾つかの態様が、患者の腕又はその近傍に備え付けられている。本発明は、インジェクターシステムの薬剤及び幾つかの関連態様は、患者が装着しているベストに備え付けられる ことを想定しており、選択的に、必要なECGの幾つかの態様を含んでいる。或いはまた、薬剤量を支持するインジェクターシステムの態様としては、患者が着用するホルスター等の構造、例えば、肩掛けホルスター又はウェストに取付られたホルスター機構によって保持される。
【0073】
患者が、複数薬剤の連続注入を受けたい場合、追加の流体経路要素を追加し、患者流体経路要素(1150)との共通の接合部又は一連の接合部で合流させることで、それらの内容物は流体経路要素(1150)を介して、患者に送達されることができる。例えば、幾つかの撮像法は、テクネチウムとタリウム2種類の放射性同位体を使用する。医療分野、特に核医薬分野の当業者にとって明らかなように、流体輸送容器、充填及び送達システム及び図2−5の夫々の装置は、所望により、複数種類の薬剤を、制御可能に準備及び送達する能力を獲得するために、前述と同様な追加要素及び装置を含むことができる。さらに、多くの核医薬手法及び多くの他の医療手法は、成功を収めるために非常にタイトなボーラスは必要としない。これらの場合、前述のCO2“バブル分離”は必要ではなく、この明細書に記載されている他の利点の相当部分を維持しつつ、様々な実施例の具体的特徴は緩和され又不要にすることができる。
【0074】
この明細書の全体を通じて、システム、デバイス及び技術は、迅速に獲得されたファーストパス情報又はデータが重要な様々な画像作成又は他の医療手法に使用されることができる。心臓のファーストパス核医薬については、かなり詳細に記載した。例えば、肺や腎臓を含む他の核医薬ファーストパス研究がある。PET作像研究の中には、時々、長時間持続情報に加えて、ファーストパス情報に使用するものがある。CT血管造影(CTA)は、ファーストパス研究として好適に行われる。様々な放射性同位体及び/又は分子は、単独で、又は組み合わせて、用いられることができる。
【0075】
過分極されたC-13及び同様な原子は、分子の中に組み込みまれるか、又、磁気共鳴映像法(MRI)において、造影剤として直接用いられることができる。一般的に、原子は、画像用マグネットからはある距離がおかれている。その理由は、プロセスはイメージャと同じ様に高磁場を必要とするからであり、二つのフィールドは、米国特許第6,453,188号(Ardenkjaer-Larsen, et al.の図2参照)に開示されるように、互いに干渉してはならないからである。数ミリリットルの薬剤が入れられたシリンジを、ポラライザーから患者へ速やかに移動させるか、長いチューブが用いられる。長いチュービングが用いられる場合、前述した注入ボーラスの多く又は全部に広がり(歪み)現象が生じることがあり、前述の対策を有効利用することができる。例えば、コイル状管を有する投与容器の中に薬剤を貯蔵するよりもむしろ、薬剤は、薬剤の分極位置とは離間位置にある前記流体経路要素(1150)を通って効果的に輸送され、患者のIVカテーテルCに送達される。過分極C-13の場合、材料は、運搬用チュービングの壁との接触により脱分極される問題がある。本発明では、詳細に説明した同心流れ機構(concentric flow arrangement)により、この問題を低減又は防止することができる。
【0076】
CT画像化において、試験ボーラスは、患者の体の反応を測定又は評価するのに用いられることができ、最適なイメージングを行なうのに、特別に設計されたイメージングボーラス又は大量のものが与えられる。例えば、CT血管造影(CTA)研究において、ボーラス注入は、ルーメンが正確に視覚化されるように、冠状動脈内に十分な造影剤を有するように設計されるが、観察されるルーメンは、石灰化がルーメンに混乱を与えるほど多くの造影剤を含んではいない。右心臓において、造影剤は血液を筋肉と区別するのに十分でなければならないが、線状又はビームハードニングアーティフアクトを生じさせるほど多くはない。最適なイメージング用ボーラスプロファイルを得るのに、試験ボーラス注入の適当な量の造影剤は、約20 ml以下である。この試験ボーラスの一連の画像は、次に、最適なイメージングボーラスを設計するのに用いられる。前述したように、試験ボーラスを遅延させたりゆがめることができる要因は数多くある。イメージングボーラス注入が、ゆがめられた試験ボーラスの結果を用いて設計されると、イメージングボーラス注入は、最適結果は得られないであろう。本願のシステム、装置及び方法を用いることにより、試験ボーラスの歪みを最小にし、イメージング用注入ボーラスのシャープさが向上する。
【0077】
MR血管造影とMRI機能画像において、単一ボーラスで患者に送達されることができるインジェクションは、10ml、又は20ml、又は30mlのオーダである。MR血管造影の場合、目標は、血管内の血液の混濁(opacification)である。機能イメージングにおいて、目標は、患者の様々な体積要素(voxels)における濃度対時間曲線を作成することである。これらの曲線は、組織の灌流を計算するのに使用されることができる。例えば、脳においては、灌流の増加は、特定タスクによって生じる活性の増加を示す。歪みのあるボーラスは、濃度対時間曲線を歪ませることにもなり、分析を困難、不正確又は不可能にする。前術したように、試験ボーラスを遅延させたり歪ませることができる多くの要因がある。本願のシステム、装置及び方法を用いることにより、試験ボーラスのゆがみは最小化され、イメージングボーラスのシャープさが向上する。
【0078】
国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)に記載されているように、ネズミの血液量は、約2mlであり、0.2mlより多く注入すると、致死に到る虞れがある。注入量は、一般的に25〜50μl(0.02ml〜0.05ml)である。チュービングの長さ及び内径(ID)は、一般的に、可能な限り小さいことが好ましいが、チュービング長さを12〜18インチ未満にすることは困難である。もっとも一般的な小径IDチュービングはPE10であり、IDは0.010インチである。このチュービングは、1.57μl/インチ長さであるので、18インチのチュービングピースでは、体積が28μlであり、これはおよその注入量である。本発明では、チュービング内にガス気泡を使用しており、これは、注入ボーラスが送達されるときに、ラインからプライミング用の大部分を“引き込む(suck)”複経路と共に用いる状況下では大きな利点となるであろう(国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)の図7を参照)。
【0079】
この発明の実施形態は、一般的に、流体を動物及び人間へ送達することに関するものである。この状況では、流体及び流体と接触する部材は、消毒され、清潔で、有害な汚染物質又は発熱物質を含まない必要がある。米国の医療実務において、これは、一回使用、前包装、消毒済みで使い捨て式の流体経路要素、1回使用、単一患者用流体源を用いることにより達成される。しかしながら、これらは、コストの上昇、廃棄物の増加の他、送達システムの準備作業が必要になり、さらには準備中のエラー発生を招く虞れがある。MEDRAD,Inc.による複数の米国特許の中に、複数患者用の送達システムとして、流体のバルク容器及び流体経路要素の選択された要素の使用が可能なシステムが開示されている。使用後は患者で汚染されるので、これらのシステムは、1人の患者に使用後は廃棄される使い捨て式のものを含んでおり、消毒済みが保証されたデバイス又は機構を含んでいる。これは、例えば米国特許第5569181号に記載されており、該特許は、引用を以て本願に組み込まれるものとする。例えば、図4の分配又は充填システム(1300)の流体経路要素および流体容器は、複数患者又は複数回使用し、定期的(例えば、1日の終わり)に廃棄されるが、流体源が空になるか又は交換されるまで、次の患者に使用される。同様に、図5、10及び13の送達又はポンピングシステム(1400)の流体経路要素は、複数の患者に優先的に使用可能な流体経路要素部及び流体容器を有することもできる。また、輸送容器(1110)の内部において、流体経路要素(1150)の遠位側セグメントの大部分が、各患者への使用後、交換され、放棄され、又は処分され、消毒済みが保証された装置又は機構が、複数回使用又は再使用による汚染の防止が含まれている場合、選択された流体経路要素又は部材のセグメント(例えば(1160)(1165)(1150))は、複数の患者に使用されることができる。例えば、図10Aにおいて、流体経路要素(1150)(1152)のセグメントは、各患者の使用後に処分されることができ、1又は複数の一方向チェックバルブ等の消毒済み保証装置を含んでいる。
【0080】
次に図9A−9Iを参照すると、パワーインジェクターの使用例を示しており、インジェクターサーボシステムは、当該分野で知られているように、注入用シリンジ内のプランジャー動作を制御するのに、閉ループを使用する。図9Aに例示したパワーインジェクターシステム(1500)は、パワーインジェクターと流体流路(1502)を含んでいる。図9Bの上側グラフに示されるように、タイトな四角形状のボーラス注入を得ることが好ましい。しかしながら、様々なファクターが、ボーラス注入特性に影響を及ぼし、歪ませることができる。そのような要因には、前述したように、注入流体(例えば、図9Bに示されるX-線造影剤)の生理化学特性、コンプライアンス等のシステム要素、及び患者ファクターを含んでいる。ボーラス注入に歪みが含まれることは、定常流速までの時間が増加し、短イメージャのスキャン用窓の中で定常流速を得られないので好ましくなく、タイト注入ボーラス特性には、機能性灌流イメージングアルゴリズムが最も良く機能すると考えられる。
【0081】
前記に鑑みると、アルゴリズム的アプローチは、患者への流体注入ボーラスの流れプロフィールの制御を向上させるのに用いられることができる。このアルゴリズムは、例えば、前述したように、図5A−5Cの夫々の流体送達システム内のポンプユニット(1410),(1410a)及び制御バルブ(1420)の動作を制御するのに用いられることができる。このアルゴリズムアプローチは、図9A中、破線で示される流体流れ経路(1502)のデータ駆動型の、ユーザ毎モデルに基づくことが望ましい。システム中の流体経路要素の全てについて、データの獲得を簡素化し、データの精度を向上させるために、データ格納デバイス(1899)(例えば、バーコード、メモリデバイス又はRFID)を、米国特許第5,739,508号(Uber, III)に記載され、好適にはIVカテーテルCを含む様々な流体経路要素に連繋されることができる。このようなデータス格納デバイスは、前述した薬剤輸送容器(1100)に連繋されることができる。これは、、例えば、容器(1100)のハウジング(1110)と連繋されることにより、また、流体経路要素(1150)、又は(1160)、又は(1165)、又はこれら要素を含む“カセット”と連繋されることができる。このようなデータ格納デバイスのさらなる例は、有害流体輸送容器に関する国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)に記載されている。これらデバイスは、制御コンピュータに配備され、様々な流体経路要素に関する必要な情報を用いてアルゴリズムを実行し、存在する流体経路要素にアルゴリズム又はモデルを適合させる。これらのデバイスは、流体経路要素の内容物及び状態に関する情報の転送又は確認に用いられることもできる。さらに、これらのデバイスは、処理の前後において、個々の患者、又は病院の記録、又はより広範な使用のために、患者及び処理に関する情報を、獲得及び転送するのに用いられることもできる。これは、例えば、米国特許第7,457,804号(Uber, III, et al.)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。
【0082】
図9Aは、そのような流体流れ流路の包括的な一例であり、図5A−5Cは、他の例である。図9Cに示す構造は、流速が例えば0ml/s〜2ml/sのときのデジタル制御システム(例えば、PIDコントローラ)を包含している。図9Cは、図9Aの流体送達システム(1500)の操作を制御する閉ループ制御システムを示しており、ここで、コントローラのエラー信号は、所望の流速から推測出力流速を差し引いたものであり、流体流れモデル入力は、インジェクタモータ速度測定値である。
【0083】
図9Aに示される基本的な流体送達システムの実験テストを、図9Dに記載された試験セットアップを用いて実施した。複数の試験を実施し、インジェクタ(1501)のモータ速度の測定値と流体流れ経路(1502)の遠位側流速を記録した。流体送達システムの制御又は訂正された動作をモデリングするアルゴリズム(1510)(図9E参照)は、図9E−9Fに示されたモデル化流体送達システムを制御するものであり、後で説明する。
【表2】
【0084】
この試験結果は、前記アルゴリズムによる制御訂正が行われない流体送達システムの操作結果と比較される。図9Gは、制御が行われない流体送達システム(1500)からのボーラス注入結果をグラフ表示したものであり、図9Hは、前記アルゴリズムによる制御が行われた流体送達システム(1500)からのボーラス注入結果をグラフ表示したものである。図9Iは、1つのグラフに、図9G−図9Hに結果(制御されたものと制御されていないもの)を1つのグラフに表したものである。図9G−9Hの試験結果を比較すると、流体送達システム(1500)のアルゴリズム制御操作を行なうことにより、体内に入るボーラス注入の立ち上がりエッジがシャープになることがわかる。このように制御操作により、よりタイトで、より四角に近いボーラスが得られ、これは、診断や治療処置の多くの場合に好ましい。また、このような能力を有することは、たとえそのボーラスが潜在的に達成可能な最もシャープなものではなくても、この能力を有することは、前述したように、所望のシャープさ及びプロファイルを有するボーラスの制御性及び繰返し性を向上させることができる。前記の制御モデル(例えば、アルゴリズム)は、流体経路要素の容量及び流体流路(1520)からの実際の流体流れを考慮に入れているので、シリンジプランジャーの位置以外でも、流体送達システム(1500)からの流れが制御される。
【0085】
他の実施例において、流体経路要素内の層流又は乱流により、またある程度は流体経路要素内での移動又はデッドスペースの存在により自然に起こる分散又混合に対処するために、様々なセパレータによって様々な流体を分離することもできる。セパレータは、ガス、又は固体、又はある程度高い粘性を有し非混和性の液体である。層流ボーラスが拡がる問題に対処する他の例は、図6Aに示されているように、薬剤を、フラッシュ用流体の中で同心円状に導入することである。薬剤(4000)は、放射性薬剤又は所望のあらゆる医療用流体であり、薬剤ルーメン(4001)を通って送り込まれ、外部ルーメンを通り、流体経路の中心部を下流側に移動する。なお、フラッシュ用流体は、外側ルーメン(4002)を通り、流体経路の外側を囲むように注入される。フラッシュ用流体を、入口ポートを介して、外側ルーメン(4002)に送給される。なお、層流は、端部よりも中心部の流れが遙かに速いチューブにおいて、層部の流れと中心部の流れとの間に混合がないことが理想的である。この概念を利用して、流れの中心部に薬剤(4000)を存在させることで、薬剤(4000)が外側ルーメン(4002)の全体に充填された場合と比べて、薬剤をより早く移動させることができる。より重要なことは、薬剤(4000)の流れが停止するとき、薬剤(4000)の後端にあるものは、長さ部分の下流側に向けてより速やかに移動し、外側ルーメン(4002)から出て行くことである。この実施形態は、薬剤輸送容器(1100)の中で用いられ、流体経路要素(1160)は薬剤用ルーメン(4001)を通って流れて、流体経路要素(1165)が入口ポート(4003)を通って流れる。流体経路要素(1150)は、チューブ又は管路であり、その下流側に向けて2種類の流体が流れる。この例は、好ましくは、図5Bの薬剤送達システムに使用することにより、薬剤と生理食塩水は、同時に流れることができる。
【0086】
所望により、フラッシュ用流体が、図6Bに示される外側ルーメン(4002)の端部に達したとき、フラッシュ用流体を薬剤(4000)から分離することもできる。図6Bにおいて、フラッシュ用流体は、入口ポート(4003)を介して外側ルーメン(4002)へ送達され、出口ポート(4004)を介して、外側ルーメン(4002)から分配される。外側ルーメン(4002)の出口(4005)は、外側ルーメン(4002)から外部へ薬剤(4000)運ぶ。フラッシュ用流体が、入口(4003)を介してルーメン(4002)に注入されるのと同じ割合で、出口ポート(4004)を通って引き出されるとき、フラッシュ用流体がルーメン出口(4005)で引き出されるされる前に、フラッシュ用流体は薬剤(4000)を運ぶから、ルーメン壁との接触は防止される。これは、小動物の注入のように、動物に与える総注入量が非常に少ない、小さい動物に注入する場合に有益である。ボーラス注入の終わりに、薬剤流量が減少し、フラッシュ用流量が増加しても、総流量は同じままである。薬剤(4000)は、図7で示されるような放物線形状になると考えられる。これは、ルーメンLの長さがトラバースされるものに適しており、注入ボーラスの後端部に関する図8Bに示されるように、ボーラスがチューブの長さ部分を移動するとき、中心部にある注入ボーラスのテール部は、ボーラスの主要部に“追いつく(catch up)”であろう。次に、薬剤(4000)は、タイトなプロファイル、理想的には矩形プロファイルで出て行く。
【0087】
核医薬又は他のイメージング処理又はその開発に用いられる分子又は薬剤の中には、様々なプラスチックに粘着性又は接着性を有するものがある。前述したように、薬剤の位置をボーラスの中心部にすることは、チュービングの壁に付着して損失となる薬剤が少なくなり、薬剤の減少を防止できる利点がある。
【0088】
他の適用例として、チューブの中心部を下流へ流れる薬剤が血管造影の例や、非常に粘性のある造影剤が狭いカテーテルを通って送達される例では、大きな利点がもたらされる。粘性の高いX線造影剤の外側に適当量の生理食塩水又は他の低粘性流体が流れるようにすることにより、流れの圧力低下が小さくなるので、これに対応して流れ量は増加する。さらなる適用例として、骨折治療のために、骨セメントの厚いペーストが脊柱の骨に注入される椎体形成術がある。さらなる適用例として、一般的に脳内での動脈瘤の充填する例、又は、硬質材料又は粘性材料を血流の中へ選択的に注入することにより、所望の血管を封鎖して有害組織を塞栓する例を挙げることができる。
【0089】
チュービングの長さに比べてボーラスが小さい場合、図8Aに示されるように、同心の3つの入口を有することが有利であり、各ルーメンの流速は独立して制御可能である。フラッシュ用流体は、第1ルーメン(4011)及び第3ルーメン(4013)を通じて注入され、薬剤(4000)は、第2又は中央のルーメン(4012)を通って注入される。使用に際し、フラッシュ用流体は、第1ルーメン(4011)及び第3ルーメン(4013)を通って注入され、薬剤(4000)は注入されない。第1及び第3ルーメン(4011)(4013)内の流れの比率は、薬剤ボーラスの所望の初期半径の関数である。次に、薬剤ルーメン(4012)を通って注入された薬剤(4000)の流量が増加するにつれて、ルーメン(4011)を通るフラッシュ用流体の注入量は、ルーメン(4011)を通る流れがゼロになるまで減少し、図8Bに示されるような放物線プロファイル(4014)が作成される。この放物線テールプロファイル(4014)は、チューブ又はルーメンLの下流へ移動するので、中心部(4015)は、端部(4016)に追いつく。前述したように、ボーラス注入の終わりには、薬剤(4000)の流量は、プログラム制御により減少するが、フラッシュ用流体の流量は増加して、薬剤(4000)に対して放物線プロファイル(4014)が作成される。これらのプロファイルの制御により、注入ボーラスは、ルーメン内の所望位置、一般的にはルーメンLを形成するチュービングの端部にて、注入ボーラスの始まりと終わりの両方でシャープエッジを生じることができる。
【0090】
図10A−10Bを参照すると、図10Aに示される流体送達システムを用いて心臓のファーストパスイメージングを行なう間、患者の心臓は、トレッドミル又は自転車での運動により、又は数分間のストレス試薬(例えば、容器に入れられたアデノシン)の注入により、ストレスが加えられる。図10Aは、前述したように、図5Cの流体送達システムに加えられる追加の特徴を示している。図10Aにおいて、薬剤源(1402)は、患者の流体経路要素(1152)に接続された流体経路要素(1151)を介して、流体ポンプ(1190)により、非常に遅い速度(一般的には4〜6分で60ml)で注入されるアデノシンを含んでいる。この注入は、流体又は薬剤輸送容器(1100)に入れられた流体と、流体ポンプシステム(1400)及び流体経路要素(1152)を介して、患者の流体経路(1152)へ毎秒数ミリリットルの割合で注入される生理食塩水とは対照をなす。速い生理食塩水又は注入薬剤ボーラスが、患者の流体経路要素(1152)に流入するとき、重大な問題が起こる可能性がある。この注入ボーラスは、薬剤源(1402)から全てのアデノシンを押し出し、患者の流体経路要素(1152)の中及び患者の腕静脈の中をゆっくりと移動し、定常流れに代わる1つの大きなボーラスとして中心循環部の中を流れる。アデノシンのこの大ボーラスは、患者に対して過度のストレスを与えることになる。図10Aのシステムは、ポンプユニット(1190)によるアデノシンストレッサ注入の制御と、薬剤輸送容器(1100)からの流体及び流体ポンプシステム(1400)により生理食塩水源(1401)から供給される生理食塩水とを一体化することにより、この問題を克服する。図10Aに示されているように、プログラマブル制御ユニット(1442)は、アデノシンポンプユニット(1190)、生理食塩水及び流体注入ポンプユニット(1410)、及び制御バルブ(1420)の操作を制御する。プログラマブル制御ユニット(1440)によりもたらされる流れプロファイル(縮尺とおりに示されていない)の例が、図10Bに示されている。
【0091】
段階1(図10Bで特定される)において、ポンプユニット(1190)により、薬剤源(1402)からアデノシンが、流体経路要素(1151)(1152)を介してゆっくりと注入され、患者の心臓にストレスを与える。心拍が殆ど十分になると、段階2が開始される。段階2において、薬剤源(1402)からのアデノシンの流れが停止し、生理食塩水源(1401)からの生理食塩水の流れが開始する。生理食塩水源(1401)からの生理食塩水は、最初は、アデノシン注入と同じ速度であり、アデノシンは、患者の流体経路要素(1152)から押し出される。生理食塩水の量が十分となり、患者の流体経路要素(1152)からアデノシンの大部分が除去されると、段階3が開始する。生理食塩水源(1401)からの生理食塩水の流量は、このとき、薬剤の流量であり、患者の静脈を充填するのに十分である。段階3において、薬剤源(1402)からアデノシンの注入は、前述の遅い流速で再開される。アデノシンは、生理食塩水によって速やかに運ばれるが、生理食塩水の速い流速が開始する前に、患者の流体経路要素は除去されているため、アデノシンの大きなボーラス又はスラッグはない。十分な量の生理食塩水が送達されると、段階4が開始する。段階4において、ポンプユニット(1410)が、流体経路要素(1160)を通じて、生理食塩水源(1401)からの生理食塩水を送達し、例えば、薬剤輸送容器(1100)内の放射性薬剤を患者Pへ速やかに押し出す。段階4の間、ゆっくりとしたアデノシン注入は、ポンプユニット(1190)により継続して行われる。段階5において、薬剤が送給された後、ポンプユニット(1410)が、生理食塩水源(1401)から生理食塩水の送り出しを継続し、薬剤を患者の静脈から外へ洗い流す。生理食塩水の洗浄が、十分な量の送達後に直ちに停止されると、流体経路要素(1152)内の流体は、このとき、大部分が生理食塩水であるので、アデノシンの送給にギャップが生じる。送給されるアデノシンのこの急落を避けるために、生理食塩水流量は徐々に減少させる。或いはまた、この処理に関して、患者の流体経路要素(1152)が主としてアデノシンで充填されるまで、アデノシンの流量は増加することができる。次に、生理食塩水のフラッシュ工程は停止され、段階7に示されているように、アデノシンの残部が送給される。
【0092】
本発明のシステム及び装置は、プログラミングと動作にフレキシビリティを有するため、他の流れプロファイルを本発明のシステム及び装置と共に用いることもできるので、それらは本発明の範囲内である。或いは、レガデノソン(regadenoson)として知られ、定常注入を必要とせず、注入ボーラスとして送給されることができる新しい薬剤ストレス剤を利用可能である。レガデノソンをと共に使用される例示的実施例として、流体経路要素(1150)(1160)(1165)の全てを生理食塩水でプライミングし、次に、標準注入量である5mlのリガデノソンを流体経路要素(1165)の中に送給し、その後、放射性薬剤を流体経路要素(1160)の中に送給することを含んでいる。流体分配又は流体送達システム(1300)の場合、追加の流体経路要素又はブランチが追加のレガデノソンを分配する。図5の流体送達システム(1400)の場合、物理的に同じであるが、操作は異なる。流体経路要素(1165)は、速やかに分配され、続いて十分な量の生理食塩水がフラッシュされる。次に、薬剤の投与を適当に遅延させた後、流体経路要素(1160)ら放射性薬剤が分配される。なお、選択的に、放射性薬剤分配の前に生理食塩水が追加され、その後、十分な量の生理食塩水のフラッシュが行われる。
【0093】
一時的に過剰送給又は過少送給になるのを防ぐため、様々な薬剤の流速を変えることは、同心円の流れ機構を用いたこの実施例においても、使用可能である。この場合、他の薬剤(例えばアデノシン)を食塩水と混合させることができる。食塩水は、中心部の薬剤の外側を流れる。或いはまた、アデノシンが十分に希釈される場合、外側をフラッシュ用流体、中心部を薬剤として用いられることができ、生理食塩水を別個に送給する必要はない。
【0094】
本発明の更なる特徴は、図11に示されるように、マット又はパッド(200)に使い捨て式布を使用することである。図5A〜図5Cの流体送給システムのある位置では、全ての流体接続位置の下又は周囲で用いられ、起こり得る可能性のあるあらゆる放射性“ドリップ(drips)”を吸収又はキャッチする。図11に示されるように、マット又はパッド(200)は、吸収性のマトリックス繊維(202)であり、例えば、使い捨て式布オムツを作るのに用いられる材料である。マット又はパッド(200)の特徴は、放射線検出器(204)を、ディスプレイ薬量計(206)に電子的に接続されたマトリックス繊維(202)の中に分配させることが望ましい。この目的に適した薬量計は、米国特許第5,274,239号(Lane et al.)に開示されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。また、マット又はパッド(200)を取り扱うのに、使い捨て式吸収性布を含む手持ち式のシールドされた拭取り用繊維を用いることもできる。マット又はパッド(200)を形成する吸収性繊維(202)は、どんな液体を吸収したときも色が変化する着色剤を含むことができる。また、マトリックス繊維(202)を、グローブ形態に形成し、ミニ薬量計(206)に連繋させることで、医療従事者が放射性液体に接触したとき直ちに気付くようにすることもできる。そのようなグローブは、着用者を保護するために、全部又は一部分が放射線シールドされている。薬量計は、この状況を音声で警告し、及び/又は、例えば、点滅モード又は光の色変化により視覚的に警告することもでき、グローブ着用者に、放射線曝露の可能性があることを知らせる。このようなグローブは、放射線シールドされており、医療従事者への放射線曝露を制限することができる。必要に応じて、eV Products of Saxonburg PA製のものと同様なポータブル式カメラを用いて、マット(200)をスキャンしたり、汚染物を発見したり、量を測定したり、放射線源を特定するのに用いることができる。
【0095】
放射性医薬品産業で広く知られているように、シールド部を設けることは、放射性医薬物質の作製、精製、輸送及び送達などの従事者を保護するために、特に重要である。放射性流体及びその他の有害流体の取扱いに関わる人達をシールドする多くの技術があることは、既に記載した通りである。例えば、放射性流体は、図14に示されるシールドされたシリンジ装置(300)に装填されて輸送される。シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、放射性薬剤が入れられたシリンジ(302)と、シールド(304)を具えている。シリンジ(302)は、出口(305)を含んでいる。このように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、当該分野で広く知られており、その代表例は米国特許第4,968,305号(Takahashi, et al.)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。既に述べたように、放射性薬剤用シリンジの代表的なシリンジサイズは、容量が約3mlで、フラッシュ用シリンジ(例えば、生理食塩水)は、容量が約20ml〜40mlである。大容量シリンジには、例えば、アデノシン等の薬剤を装填することもできる。フラッシュ用生理食塩水やアデノシンがどちらも放射性でない場合、それらが入ったシリンジに、特別なシールドを施す必要はない。放射性薬剤産業における目標は、放射性薬物の従事者が放射線に曝露される状況を最小にすることである。例えば、特別なシールドが施された放射性薬物用シリンジの輸送に、例えば、ピッグなどの輸送容器を用いることが知られている。医薬設備又は核医薬室の中で、鉛ライニングが施されたシリンジキャリヤ(例えば、Pinestar of Greenville, PA製)が広く用いられている。これらのキャリヤは、一般的に小さなランチボックス型で、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)が収容され、その中に放射性薬物が入れられている。輸送用ピッグ又はシールドされたキャリヤを用いたとしても、医薬従事者は、シールドされたシリンジを操作して、放射線較正作業(radiation calibration activities)の他、放射性薬剤を患者に注入するために、シールドされたシリンジを、流体送達システムへ接続する作業を行う必要がある。このような作業の間、医療従事者は、シリンジシールドのシールドされていない端部から、放射線に曝露される。また、放射性薬物の充填、プライミング、注入及びフラッシング作業を行う間、シールドされたシリンジを取り扱う者は、シールドされていない針、チュービングライン及びその他の流体経路要素(例えば、バルブ等)からの放射線に曝露されることがある。
【0096】
この明細書の他の箇所でも記載しているように、シールドされたシリンジアッセンブリを、患者へのチュービングライン及び生理食塩水で満たされたシリンジに接続されたストップ栓に接続することが一般的に行われており、放射性薬物を手操作で注入した後、速やかに食塩水でフラッシュされ、及び/又は、放射性薬剤の全部又はほぼ全部が、シリンジ(302)及び流体経路から取り除かれる。手操作による注入を行ない、ストップ栓を回す過程において、操作者は、流体経路中の薬剤からのイオン放射に曝露される。また、バルブの操作と注入を手操作で行うため、注入に不一致が生じる。
【0097】
前述の背景情報に鑑み、本発明は、図12〜図15に示されるシールドされた輸送容器(330)の実施例を提供するものであり、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路セット(fluid path set)(306)を、例えば、シールドされたシリンジユニット(300)が流体送達システム(パワーインジェクターユニット等)に容易に接続され得る場所へ安全に輸送するのに用いられることができる。シールドされた輸送容器(330)の利点として、例えば、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)をシールドされた輸送容器(330)から取り外すことなく、流体経路セット(306)をシールドされたシリンジアッセンブリ(300)までプライミングできることである。このシステムの他の利点は、患者にタイトボーラス注入を行なった後、速やかにフラッシュが行われることであり、その際、操作者又は技術者への放射線投与を最少にできること、また、放射性薬剤が通常は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の中に入れられ、操作者及びその近くにいる者への放射線曝露を少なくできることである。
【0098】
システムの操作に際しては、放射性薬物が入れられたシールドシリンジアッセンブリ(300)が、プライミングされた流体経路セット(306)に接続される(プライミングは、シリンジ(302)に接続する前でも後でもどちらでもよい)。プライミングは、例えば、製造場所、ホットラボ、患者への注入場所のどこでも行うことができる。流体経路セット(306)は患者に接続され、次にインジェクタシステム(400)に接続され、十分な流体容量が速やかに供給され、放射性薬剤が患者の中でフラッシュされる。シールドされた輸送容器(330)は、インジェクターと物理的にドッキングされるか、患者が装着できるよう構成されることができる。図13の実施例において、操作者は、容器(330)の蓋を開け、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)から放射性薬剤を流体経路セット(306)に手操作で注入し、蓋を速やかに閉じる。操作者が曝露されるのは、この短い時間に限られる。操作者は、患者への注入を待つ間、又は流体経路セット(306)のフラッシュを行なう間、シールドされたシリンジ(300)を保持していない。流体経路セット(306)の容量は、インジェクターシステム(400)から生理食塩水によるフラッシュが行われるまで、放射性薬物がシールドされたシールド輸送容器(330)から出ていかないように選択される。放射性薬剤が患者に送達されるには、インジェクターシステムをトリガし、フラッシュ用生理食塩水を、流体経路セット(306)の中へ制御しながら押し込み、流体経路セット(306)を通過させ、流体経路セット(306)の中にある前述のプライミングされた流体を制御しながらフラッシュした後、放射性薬剤、最終的にはフラッシュ用流体の一部を患者に送る。他の実施例において、機械的プッシュロッド(380)又は他の構成を用いることができ、その一例を図15に示している。操作者が蓋を開けて、放射性薬物をシリンジ(302)から流体経路要素(306)に移す際の放射線曝露は、皆無ではないまでも、更に低減されることができる。プッシュロッド(380)は、シールドを施すのに十分な材料からつくることができるし、シールド用部材(386)を組み入れることにより、操作者への曝露を低減することができる。プッシュロッド(380)が誤って作動するのを防止するために、シールドされた輸送容器(330)は、所望により、プッシュロッド(380)を固定する装置(381)を有することができる。この特徴は、図15Bでは、つまみネジとして示されている。また、プッシュロッド(380)は、シールドされた輸送容器(330)と螺合することもできる。この場合、プッシュロッド(380)を取り外す前に、ある程度の回転を加えることにより前方に移動させて、流体をシリンジ(302)から押し出すことができる。また、プッシュロッド(380)をパワーインジェクションシステムに直接接続することにより、手操作の介入無しで操作を行うことができる。
【0099】
シールドされた輸送容器(330)を用いることで、輸送中にドリップや漏れが起こり得るシールドされたシリンジアッセンブリ(300)用として、携帯性及び可搬性が非常に高い収容ユニットが提供される。シールドされた輸送容器(330)は、図12〜図13では単純な箱型として示されているが、これは例示であって、本発明の範囲内でパワーインジェクター装置(例えば、MEDRAD Stellant(登録商標))のハウジング及び/又は支持構造に直接接続することもできる。この明細書で、“接続(interface)”とは、シールドされた輸送容器(330)が、インジェクター装置に物理的にドッキングされた状態、シールドされた輸送容器(330)が、インジェクター又はその流体取扱い部材に連繋された支持構造(例えば、従来のインジェクター支持ツリー又はIV極)に支持された状態を含んでいる。図示されたインジェクター(400)は単なる例示であって、前述した関連支持構造を含んでいない。或いはまた、シールドされた輸送容器(330)は、インジェクター装置(400)の近傍に配置されることもできる。インジェクター装置(400)からは、入口チェックバルブ(318)を含む入口接続部(314)までチュービングラインが延びている。更なる取付け及び一体化方法、構造、装置及びシステムについては、例えば、国際公開公報WO2008/011401A2(PCT/US2007/073673)に記載されており、引用を以て本願に組み込まれるものとする。
【0100】
すでに述べたようにパワーインジェクターは、専用の支持スタンド/構造を有することができ、シールドされた輸送容器(330)を、そのような支持スタンド/構造に接続することができる。インジェクター装置と物理的に一体化させる場合、物理的一体化構造に固有であり、及び/又はシールドされたシリンジアッセンブリ(300)に入れられた有害流体に適応可能なインジェクター装置に追加の構成部材(図示せず)を連繋することもできる。例えば、シールドされた輸送容器(330)がインジェクターと物理的にドッキングされる時を特定するセンサーを有することができる。この情報はオンボード又は外部に配置され、インジェクター操作を制御するコントロールユニット(1442)に供給されることができる。この明細書中で説明するように、薬量計をインジェクターに配備することができるし、例えば、シールドされた輸送容器の穴又は開口に接続することもでき、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の放射能を読み取り、例えば、インジェクターコントロールユニット(内部又は外部にある)に送られる。また、シールドされた輸送容器(330)に識別体(例えば、バーコード等)を付したり、他の識別/データ格納又は記憶装置(1899)(例えば、RFID又はメモリ)を設け、インジェクターのセンサーにより読み出し及び/又は書き込みを行ない、インジェクターコントロールユニットに送信することができる。このようにして、インジェクター操作は、このスキャン又は検知された情報に基づいてコントロールユニットにより制御されることができる。また、インジェクター(400)又はコントロールユニット(1442)は、情報を識別/データ格納装置(1899)に書き込み又は記録し、これを用いて、患者が受け取る手順又は投与量に関する情報を伝達することができる。一般的に、シールドされた輸送容器(330)は、インジェクター及び/又はその支持構造に合わせて適用できるように構成されているから、インジェクターに連繋された流体経路要素に合わせて作られた流体接続部の追加又は置換を行なうことができるのは勿論である。
【0101】
シールドされた輸送容器(330)の本体の材料は、例えば、鉛、タングステン、タングステン担持プラスチック、鉛アクリルなどの従来のシールド用材料が用いられることができる。また、シールドされた輸送容器(330)は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の形状、流体経路セット(306)の変動、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)と流体経路セット(306)が共同するイメージャ又は患者施設の変動、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)と流体経路セット(306)が相互接続されるインジェクターに合わせて構成することもできる。例えば、シールドされた輸送容器(330)は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の形状を表すように作ることで、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を結合した状態で受けることができる。このように、シールドされた輸送容器は、例えば、曲げ加工された鉛、所望形状に鋳造された鉛、及び射出成形された放射線シールド用材料から成形することにより、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を受け入れることができるように作ることができる。或いはまた、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、シールドされた輸送容器(330)に合わせて作ることもできる。
【0102】
シールド輸送容器(330)は、一般的には、内部コンパートメント(334)を画定する容器本体部(332)と、内部コンパートメント(334)を囲む閉鎖蓋(336)とを具えている。容器本体部(332)によって画定された内部コンパートメント(334)は、シールドされた1又は複数のシリンジアッセンブリ(300)の形状と結合できる大きさに作られ、及び/又は、そのように作られた内部構造を含むことができる。この場合、内部構造の“結合(mating)”とは、シールドされた輸送容器(330)を形成する囲み構造が、シールドされていない状態で材料をシールドすることを含む。内部コンパートメント(334)の中の放射能を読み取るために、シールドされた輸送容器(330)の中に、“オンボード(on-board)”の薬量計(dosimeter)を設けることもできる。これについては、国際出願PCT/US07/89101(WO 2008/083313)及び米国特許第5274239号(Lane et.al.)に記載されている。好ましくは、内部放射能の読み値は、パワーインジェクター(400)及びシールドされた輸送容器(330)を含む流体送達システムの操作者に転送され、例えば、シールドされた輸送容器(330)の本体のディスプレイ又はインジェクター(400)及び/又はインジェクター(400)に連繋されたコントロールユニットのディスプレイに表示される。このような薬量計は、入力をインジェクターコントロールユニットに供給し、測定された放射能レベルに基づいて、シールドされたシリンジユニット(300)の内容物を特定することができる。また、シールドされた輸送容器(330)に放射線シールドされた窓(338)を設けることで、医療従事者は、シールドされた輸送容器(330)の内容物の他にも、内部コンパートメント(334)に配備され、例えば、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)に連繋されたあらゆる流体接続要素を視覚的に検査することができる。万一、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)に関するプライミング作業でシールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路要素から空気を十分にパージできない場合、このような視覚チェックができることは、空気バブル検出の分野において重要である。内部コンパートメント(334)には、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路部材の視覚検査を補助するために、内部照明(図示せず)を設けることもできる。
【0103】
シールドされた輸送容器(330)の他の特徴は、図13に符号(335)で示されるような使い捨て式で着脱可能な内トレイを設けることである。或いはまた、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)の内容物が患者に分配され、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)から取り除かれた後で有害医薬廃棄物として簡単に廃却できる同様な構造物を内部コンパートメント(334)の中に設けることである。着脱可能なトレイ又は構造(335)は、内壁(355)などの支持要素を含んでおり、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を支持し、及び/又は、流体経路セット(306)を内部コンパートメント(334)の中に閉じ込めることができる。図11に示されるように、流体接続位置の周囲には、マット又はパッド(200)を用いることにより、起こり得る可能性のある放射性“ドリップ”を吸収又はキャッチすることができる。このような、マット又はパッド(200)は、トレイの形態で作られ、内部コンパートメント(334)の中に配備されて、漏れ、ドリップ、こぼれ等を吸収する。このような、使い捨て式トレイは、シールドされた輸送容器から取り出され、適当な放射線シールドされた医薬廃棄物容器に入れられる。また、放射性薬剤流体等の有害流体の漏洩を防ぐため、容器本体部(332)と閉鎖蓋(336)の間に、液密シールを設けることが望ましい。また、マット又はパッド(200)によって形成されたトレイは、流体経路セット(306)の様々な流体経路要素や、シリンジ(300)及びシールド(304)を、図4に関して既述したのと同じ機械的方式で収容し固定(幾何学的又は空間的に)固定することができる。
【0104】
容器閉鎖蓋(336)の前部リム(344)の両端に、一対の開口(340)(342)が形成される。開口(340)(342)、容器本体部(332)のリム(350)に形成された同様な開口(346)(348)に対応する。容器本体部(332)には、シールドされた輸送容器(330)の運搬を容易にするためのハンドル(352)が設けられることができる。
【0105】
図13−図14に示されるように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、一般的には、放射性薬剤用シリンジ(302)及び周囲のシリンジシールド(304)を具えている。このような構成部材は、放射性医薬産業において広く知られている。流体経路セット(306)は、シリンジ(302)の出口(305)に接続され、チェックバルブT−コネクタ(308)を具えており、該T−コネクタには、チェックバルブ(320)が配備され、流体はシリンジ(302)から流体経路要素(310)(312)に流れることはできるが、シリンジ(302)には戻ることはできないようになっており、入口コネクタ(314)が入口流体経路要素(310)に接続され、出口コネクタ(316)が出口流体経路要素(312)に接続されている。具体的な流体経路セットは、前述したものとほぼ同様であり、例えば、MEDRAD, Inc.(Pittsburgh, PA)の製品で、チェックバルブ付きのMRI Integral“T”、カタログ番号SIT 96Tがある。このような入口コネクタ(314)及び出口コネクタ(316)は、好ましくは従来のルアー型コネクタであり、入口コネクタ(314)はチェックバルブ(318)を具えており、流体経路要素(310)及び流体経路要素(312)の中へは流れるが、逆方向には流れないようにしている。チェックバルブ(318)は亀裂圧力が十分に高いものが選択され、流体は、重力作用では流れず、入口チェックバルブ(318)に接続されたインジェクター(400)等の加圧装置から送り出されるフラッシュ用流体によってのみ流れることができるようにしている。チェックバルブ(318)は、出口側の出口コネクタ(316)に連繋されることができるし、流体経路セット(306)に沿うどの位置に設けることもできる。所望により、チェックバルブは、幾らかの余裕を与えるために、両端に設けることもできるし、経路に沿って複数設けることもできる。これにより、放射性材料のドリップの発生は最少にすることができる。チェックバルブ(320)は、T−コネクタ(308)を経てシリンジ(302)の中へ流体が流れるのを防止する。T−コネクタ(308)は、出口チェックバルブ(320)を具えており、シリンジ出口(305)から出口流体経路要素(312)へ流れることができるようにしている。消毒済みの端部キャップ(322)(324)は、夫々、入口チェックバルブ(318)及び出口コネクタ(314)(316)に夫々連繋されることができる。
【0106】
図13に示されるように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)がシールドされた輸送容器(330)の内部に配置されると、入口流体経路要素(310)は、対応する入口側開口(340)(346)に連繋され、出口流体経路要素(312)は、対応する出口側開口(342)(348)に連繋されることにより、入口及び出口コネクタ(314)(316)は、シールドされた輸送容器(330)の外部からアクセス可能となる。出口流体経路要素(312)は、シールドされた輸送容器(330)の内側であるセグメント(312b)と、輸送容器(330)の外部であるセグメント(312a)との2つの部品を有している。セグメント(312b)は、放射性薬剤を入れるために用いられ、シリンジ(302)から押し出されて、患者へ送給され、その後フラッシュされる。この動作は、送給用の放射性薬剤が入れられた図2の流体経路要素(1160)と同様である。この実施例では、流体経路要素(1165)と同様な流体経路要素はないが、前述した実施例の全ての機能を得たい場合には追加することもできる。出口流体経路要素(312)用にコイル状医療用チュービングを用いることで、医療従事者は、流体経路セット(306)を、例えば患者留置カテーテル又はIVラインに接続するのに必要なだけチュービングを引き出すことができる。所望により、入口流体経路要素(310)は、コイル状医療用チュービングを具え、それを、遠隔にあるインジェクターまで引き延ばすことができる。出口流体経路要素(312)のコイル状セグメントは、最初は、シールドされた輸送容器(330)の中にきちんと都合良く収納されており、使用者は、必要なだけチュービングを引き出すことができる。また、出口側開口(342)(348)は、出口流体経路要素(312)のチュービングが、シールドされた輸送容器(330)から外方にどれくらい速やかに引き出されるかを規定できるサイズに作られ、及び/又は、エラストマーのブレーキライニングを含んでいる。好ましくは、出口流体経路要素(312)に連繋されたストッパーがあり、内側チュービングセグメント(312b)のどの部分も、シールドされた輸送容器(330)から引き出されることができる。このような特徴は、対応する入口側の開口(340)(346)についても同様に設けられることができる。
【0107】
所望により、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)と流体経路セット(306)は、一体のカセット又はカートリッジとして設けられることができ、容器本体部(332)によって画定される内部コンパートメント(334)の受け構造(図示せず)の中に差し込まれる。このようなカセット又はカートリッジは、識別体(例えば、バーコード等)を付したり、他の識別装置(例えば、RFIDタグ)を設けることができ、内部コンパートメント(334)内のセンサーにより読み出しを行ない、有線又は無線接続により、例えば、パワーインジェクターに連繋されたコントロールユニットに送信されることができる。このようにして、インジェクター操作は、少なくとも一部分は、内部コンパートメント(334)内のカセット又はカートリッジの内容物に関するスキャン又は検知された情報によって制御されることができる。内部コンパートメント(334)内のこのような内部センサーは、その他のアクションを行なうことができる。該アクションには、カセット又はカートリッジの存在を決定すること、流体経路セット(306)等の流体経路セットが存在するかどうかを特定し、さらには流体経路セットに連繋されたバルブ及びコネクタが正しく配置され接続されていることを特定することを含んでいる。一実施例において、内部センサーは、例えば、開口(340)(346)及び開口(342)(348)に連繋された空気検出器又は空気バブル検出器であり、入口流体経路要素(310)及び出口流体経路要素(312)の中の空気バブルの存在が検出される。また、医療従事者による空気又は空気バブルの検出、及び、前述した生理食塩水等のプライミング用流体で流体経路セット(306)のプライミングを行なう等のアクションを容易にするために、開口(340)(346)及び開口(342)(348)に照明を設けることもできる。
【0108】
所望により、容器本体部(332)の中の内部コンパートメント(334)を分割して、シリンジ(302)及びそれに付随するシリンジシールド(304)は1つの分割された領域に配備され、前述した流体経路セット(306)の構成部材は、シリンジ(302)及びシリンジシールド(304)から分離した領域に配備されることができる。この場合、閉鎖蓋(336)は分岐されるようになし、シリンジ(302)、シリンジシールド(304)、流体経路セット(306)の別個の内部領域が別個にアクセスされ得るようにする。また、前記説明は、一般的には、シールドされた輸送容器(330)内の単一のシールドされたシリンジアッセンブリ(300)のハウジングに関するものであるが、これは、発明の範囲をそのような単一用途に限定するものと解するべきではない。また、シールドされた輸送容器(330)には、同じか又は異なる有害流体、例えば、単一患者の核医薬研究に用いられるテクネチウム及びタリウム等の複数種の同位体が入れられ、幾つかのシールドされたシリンジアッセンブリ(300)を取り囲むことができるように構成されることが好ましい。容器本体部(332)の内部コンパートメント(334)は、シールドされた複数のシリンジアッセンブリ(300)を受け入れることができるように構成され、シリンジ(302)/シリンジシールド(304)及び流体経路セット(306)用として分割された内部領域を有している。このように、シールドされた輸送容器(330)は、容器本体部(332)と閉鎖蓋(336)を具えており、複数の流体経路セット(306)を収容するために、複数組の開口(340)(346)及び開口(342)(348)を有している。このような複数の流体経路セット(306)は、平行で、例えば、患者内留置カテーテル等のように指定された下流側接続位置で接続されることができ、或いは、シールドされた輸送容器(330)を出て行く前に接続されることができる。
【0109】
図12−13に示されるシールドされた輸送容器(330)はボックス形状であるが、この形状に限定するものと解するべきではない。図示した“ランチボックス型”形状以外にも、他の形態は可能であり、例えば、Syncor Iternationalに譲渡された米国特許第6,425,174号(Reich)に開示されたクラムシェル形状又は輸送ピッグ形状がある。この米国特許は、前述のように、引用を以て本願に組み込まれるものとする。図15Aは、前記Reich特許に記載された基本の輸送ピッグの変形例であり、本発明に係る“ピッグ型”のシールドされた輸送容器(330)である。Reich特許は、従来の輸送ピッグの基本的構成を開示しており、その構造に修正を加えて、図15Aに示されるピッグシールドされた輸送容器(330)が得られる。図15Aにおいて、シールドされる流体経路セット(306)の内部チュービングセグメント(312b)は、輸送ピッグ内の針に割り当てられる内部空間にコイル状に設けられ、輸送ピッグは、流体経路セット(306)の2つの端部に入り組んだ内部経路となり、輸送ピッグを出て行くことができるように修正が加えられる。流体経路セット(306)のコイル状外部チュービングセグメント(312a)は、図15Aに示されるように、“ピッグ”シールドされた輸送容器(330)の外側周囲でコイル状である。
【0110】
図15Aに示されるピッグシールドされた輸送容器(330)は、Reich特許の基本の輸送ピッグに修正を加えて、下シェル(360)の側壁に開口(340)(346)を含めることができる。下シェル(360)は、ネジ接続により、上シェル又は閉鎖蓋(362)と接続するよう構成される。下シェル(360)及び上シェル(362)の中には、夫々、放射線シールド部(364)(366)がある。同じように、下側シールド用部材(364)は、開口(340)(342)を画定する。図15Aに示されるように、入口流体経路要素(310)は、入口開口(340)(346)中を通り、出口流体経路要素(312)は、出口開口(342)(348)の中を通る。本発明の実施例において、放射線シールド部は、構成部材(364)(366)によってもたらされるので、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)は、シリンジ(302)に連繋された別個の放射線シールド(304)を必ずしも必要としない。ピッグシールドされた輸送容器(330)は単独で十分なシールドをもたらすので、シリンジ(302)は輸送容器(330)から除去される必要はない。
【0111】
前述したように、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)とシールドされた輸送容器(330)の組合せによる好ましい特徴は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)を、例えばパワーインジェクターユニット(400)に接続する前に、投与の準備が行われる核医薬ラボ等の中で、流体経路セット(306)をプライミング用流体(生理食塩水等)でプライミングできる能力である。特に、入口流体経路要素(310)は、入口コネクタ(314)及びチェックバルブ(318)を介して生理食塩水等のプライミング用流体源に接続されることができる。入口チェックバルブ(318)は重力下では生理食塩水の流入が阻止され、インジェクター(400)又は手動シリンジによる加圧下で供給される流体だけが、入口コネクタ(314)を通ってT−コネクタ(308)の中に導入される。生理食塩水は、T−コネクタ(308)(出口チェックバルブ(320)があるのでシリンジ(302)には入らない)を通り、出口流体経路要素(312)はプライミング用流体で満たされる。出口流体経路要素(312)が生理食塩水でプライミングされると、端子エンドキャップ(324)が出口コネクタ(316)に配備され、出口流体経路要素(312)が密閉される。プライミング操作が完了すると、医療従事者は、シールドされた輸送容器(330)を、患者への注入が行われるルームへ運ぶことができる。シリンジ(302)及び流体経路セット(306)は、シールド容器(330)の中にそのままあることが望ましい。或いはまた、必要に応じて、操作者は、シールドされたシリンジアッセンブリ(300)及びそれに連繋された流体経路(306)を取り外して、それらを、十分又は適当なシールドが施されたパワーインジェクターに取り付ける。出口エンドキャップ(324)を取り外し、出口コネクタ(316)は、患者に接続されたカテーテル又はIVラインに接続されることができる。出口コネクタ(316)は患者に接続され、入口コネクタ(314)はインジェクター(400)に接続される。操作者は、シリンジ(302)から全ての放射性薬剤をチュービングセグメント(312b)の中に注入し、シールドされた輸送容器(330)の蓋を閉じる。その後、操作者がパワーインジェクター(400)をトリガすると、シリンジ(302)内の放射性医薬流体又はその他の有害流体の注入が開示される。放射性薬剤が入れられたシリンジ(302)は、プライミングが行われる間、シールドされた輸送容器(330)の中に保持されるので、プライミング中の放射線曝露は最少に抑えられる。また、シリンジ(302)内の放射性薬剤流体の注入後、流体経路セット(306)に設けられたチェックバルブにより、入口流体経路要素(310)及び出口流体経路要素(312)を含む流体経路セット(306)は、生理食塩水又は他の流体で洗い流されるので、出口流体経路要素(312)内の残留放射性薬剤流体は全て患者の名かに押し込まれる。入口流体経路要素(310)は、フラッシュ用生理食塩水源及びポンプ装置(蠕動ポンプ等)に接続されており、ポンプ装置により、生理食塩水が加圧下で流体経路セット(306)に供給され、放射性薬剤流体は患者の中に洗い流される。このようなポンプ装置は、前述したプライミング作業を実行するのに用いられることもできる。或いはまた、流体経路セット(306)は、プライミングされていない流体経路セグメント(310)(312)へ輸送されることもできる。入口コネクタ(314)は、次に、インジェクターに接続され、流体経路セグメント(310)(312)は、出口コネクタ(316)が患者に接続される前にプライミングされる。シールドされた輸送容器(330)は、図12−図14ではボックス型構造として示されているが、前述したように、図15Aに示される輸送用ピッグ構造等の所望形状にすることもできる。
【0112】
シールドされたシリンジ(302)に流体経路セット(306)の囲いシールド(304)を接続し、このシリンジを用いて、放射性薬剤ボーラスの一端又は両端に小バブルを生成し、前述の実施例においてCO2を用いたのと同じように、薬剤がチュービングの長さ部分を通って流れるとき、ボーラスの拡がりを低減することができる。核医薬分野における現在のプラクティスでは、シリンジは、針を用いてゴム隔壁に穴をあけることでバイアルから充填され、放射性薬剤が針の中に入れられる。本発明の実施例では、このようなシリンジが流体経路セット(306)に接続される前に、針は除去されなければならない。この実施例では、針の中の流体は、ミリリットル単位の空気とともにシリンジの中に引き込まれることが望ましい。これにより、針は確実に空になり、前述の態様に係る流体分離“バブル”の一つをもたらす。次に、針は除去され、安全に廃棄される。シールド(304)付きシリンジ(302)又はシールドされていないシリンジ(302)を流体経路セット(306)に接続するとき、T−コネクタ(308)のルアーコネクタ(典型的には雌)及びシリンジ(302)のルアーコネクタ(典型的には雄)の中に、小さなバブルがある。それゆえ、何か特別なことがなされない場合、流体が最初にシリンジ(302)から押されると、小さな空気バブルが流体経路要素(312b)の中に注入される。次に、流体をシリンジ(302)から送給する間、好ましくはシリンジ(302)のルアーコネクタを下に向けながらシリンジを垂直に保持することで、先にシリンジの中へ引き込まれた空気の小バブルが流体経路要素(312b)に注入される。この手順が行われる間、空気の小バブルは、薬剤のボーラスを囲むので、患者に到るまでの途中、様々な流体経路要素を通って移動するとき、鋭いボーラスプロファイルを維持するのに役立つ。この手順は、図4に関する実施例においてCO2が用いられた方法と同様である。
【0113】
本開示において、“トレイ”要素又は同様な構成部材の使用に関する様々な記載は大変有益であり、チュービングセグメント又は同様な流体経路要素(例えば、流体経路セット(306)の一部又は全部)は空間的に固定し、使用者が設置し易い交換式モジュール又はカセットを作成するものである。また、この配置は、放射線の線量計又は線量計計測要素又は装置に関連して使用されるときに有利である。放射性の物質及び流体が存在する多くの装置及び方法において、典型的には、中空円筒形のイオンチャンバーを用いた投与量較正器(dose calibration)がしばしば用いられ、投与量の放射線が入れられた被測定容器が該イオンチャンバーの中心部に挿入される。このようなイオンチャンバーは、例えば、オランダのVeenstra Instrumenten B.V.製のものがある。MEDRAD, Inc.製のIntego(商標名)PET Infusion Systemでは、流体経路要素、チューブが単一トレイの上にコイル状(この場合は円筒状)に巻かれており、イオンチャンバーの中空部に配置されて、投与量の測定が行われる。中空イオンチャンバーを投与量較正器として用いる利点は、チャンバー内に入れられた物質から発せられる放射線の大部分を効果的に感知することであり、測定が中空空間内の放射線放出物質の正確な位置から実質的に独立していることである。それゆえ、イオンチャンバーは、合理的なサイズ範囲にあるシリンジ、又はバイアル、又はコイル状チューブ内の放射線の測定にはうまく機能することができるが、このタイプの放射線検知器は大きくて高価である。
【0114】
或いはまた、前述の米国特許第4,562,829号(Bergner)、第4,585,009号(Bergner)、米国特許出願公開第2005/0,277,833号(Williams)において、局所化された小型放射線検知器が使用されている。Bergner特許では、送給される放射線の一部だけが一度に計測されるという欠点がある。Williams公報では、1地点の放射線源のみでシリンジの中の放射線計測を行なうため、読み出しエラーが生じる。既に引用を以て本願に組み込まれた国際出願第PCT/US07/89101号(WO 2008/083,313)では、幾つかの小型放射線センサーと幾何学的情報を用いて、シリンジ内の放射線を計測する実施例が開示されている。この特定の実施例は、この開示におけるシステム、装置及び方法で使用できる。
【0115】
中空円筒状イオンチャンバーの投与較正器の他の実施例である放射線検出システム(2000)が、図16に示されている。コイル状のチュービングセグメント(2001)は、トレイ(2002)により保持されてモジュール(2003)が作成され、該モジュールは、略円筒形の簡易な放射線検出器(2010)の上に配置されることができる。この種幾何学的形状の放射線検出器は、例えば、ガイガーチューブ、イオンチャンバー、ソリッドステート結晶検知器などが挙げられ、一般的に用いられている。全体のチュービングセグメント(2001)がほぼ同濃度の放射能の流体を含む場合、システム(2000)はうまく機能する。或いはまた、薬剤が一定の流速でチュービングセット全体を通じて流れるときに投与量の全体だけを計測しさえすれば、システム(2000)はうまく機能する。外部シールド(図示されていない)を用いることにより、作業者を保護し、放射能が他の装置に影響を及ぼすことを防止し、放射能がこの装置に進入して装置に影響を及ぼすことを防止する。しかしながら、前述した“タイト”な注入ボーラスはコイル状チュービングセグメント(2001)の長さと比べて短いため、それだけでコイル状チュービングセグメント(2001)の体積の相当な部分を占める場合、又は層状の流れが注入ボーラスを拡げるため、濃度がコイル状チュービングセグメント(2001)の長さ全体を通じて一様でない場合、又は流れが一様でない場合、又は測定対象が輸送時間全体における全投与量以外の何かである場合には問題が生じる可能性がある。図16の実施例において、放射線検出器は、あるコイルセグメントが他のコイルセグメントに比べて放射能に対する感受性が大きく、例えば、コイルセグメント(2001b)に対する感受性よりもコイルセグメント(2001a)に対する感受性の方が大きい。それゆえ、コイル状流体経路の中にあるか、又はチュービングセグメント(2001)の中にあるかによって、放射性薬剤の量が同じでも、それに対する反応は不均一になる。
【0116】
放射線検出システム(2000')のこの問題を解消させるために、本発明の実施例では、図17A、17B及び17Cに示されるように、トレイ(2002')は、流体経路セグメント又はコイル状チュービングセグメント(2001')を保持できる形状に作られており、コイルは、放射線検出器(2010')に対する“感受性が等しい(equal sensitivity)”表面に沿っている。説明の簡素化のために、図17A、17B及び17Cに示される放射線検出器(2010')及び個々の幾何学的形状は対称な円筒形としているが、その形状に限定するものと解するべきではない。各放射線検出器(2010')の幾何学的形状は、表面がR軸及びZ軸の関数であるから、該表面のどの位置でも、少量の放射性流体は、放射線検出器(2010')で同じ放射能測定値を与えることになる。図17Aにおいて、コイル状チュービングセグメント(2001')の中心コイル要素は、放射線検出器(2010')の表面から少しだけ戻され、この効果が達成される。放射線検出器(2010')が小型の球状検出器である場合、感受性が等しい表面は、図17Bに示されるように、放射線検出器(2010')の中心の周りの球面である。図17Cは、キャップ形状に構成されたコイル状チュービングセグメント(2001')を示しており、放射線検出器(2010')の上方に置かれている。この形状は、トレイ(2003')の設置を容易に行なうことができ、システム(2000')の流体経路構造全体がより容易く平面的カセットの形にされ得るから、製造、組立及び使用者の接続を容易に行なうことができる利点がある。図17Cに示されるように、このトレイは、容器本体(332)の中に入れられ、薬量計又は放射線検出器(2010')は、容器本体(332)の一部分であるか、又は薬量計が容器を貫通し、流体経路要素(2003')の中で投与量を測定できるように開口された容器本体(332)の孔である。開口は、測定のために使用されていないときはシールドすることによって被覆され、操作者がどんな放射線にも曝露されることなく開閉できるように構成される。
【0117】
コイル状チュービングセグメント(2001')が放射線検出器(2010')の等感受性表面上となるように構成されるときでも、この表面の幾何学形状は、放射線検出器によって変動があり、流体経路の幾何学的形状も、トレイ(2002')又はコイル状チュービングセグメント(2001')に製造時の変動があるため、モジュール(2003')によって変動がある。コイル状チュービングセグメント(2001')内の小さな注入ボーラスでこの変動を解消させる1つの方法は、コイル状チュービングセグメント(2001')内で2又は3以上の位置での放射線を測定し、読み値を平均してエラーを平均化することである。この操作は、注入ボーラスを所定位置に移動させ、停止して測定を行ない、他の位置へ移動させ、停止して再び測定すること等であり、所望数の測定が行われるまで行われる。或いはまた、この操作は、注入ボーラスをコイル状チュービングセグメント(2001')の中をゆっくりと移動させ、注入ボーラスがコイル状チュービングセグメント(2001')の中を流れるときに時系列測定を行なうことによって達成されることができる。
【0118】
放射性流体を患者に注入する前、又は放射性薬剤を例えば有害流体輸送容器(1100)又は(330)の中に投入する前に放射能を測定する他の実施例は、放射性流体の既知で画定された体積及び画定された容積及び形状から発せられる放射線を測定することである。この濃度が一旦知られると、画定された容積から投与量を測定することにより、分配又は送給される放射線投与量は、送達された容積によって拡大された濃度に比例する。シールドされた輸送容器(330)に関しては、図15Bにおいて最も簡単に示されている。図15Bでは、図15Aに関して記載した基本の構成部材を有しており、放射線検出器又はセンサー(2010)が、放射線シールド部(366)内の小孔(2020)の背後に配備されている。放射線検出器(2010)が外部放射による影響を受けないように、シールド部(364')が放射線検出器の全体を取り囲んでいる。小孔(2020)は、シリンジ(302)のネック部からの放射線だけが放射線検出器(2012)に衝突するように配備される。シリンジ(302)は、例えば、戻り止め(detents)、クリップ又は同様な構造要素(図示せず)により、シールドされた輸送容器(330)内で、繰返し可能な幾何学的位置に保持される。操作において、シールドされた輸送容器(330)が、インジェクター又は他の流体送給用流体加圧装置に連繋されると、図5に示されるように、放射線検出器(2012)の出力は、インジェクター又は他の加圧装置に連繋されたコントロールユニット(1442)に送られ、放射線検出値は、既知の感受性較正を用いて、放射線濃度に変換される。インジェクターのコントロールユニット(1442)により、所望量の薬剤は、例えば、ピストンプッシュロッド(380)を制御可能に移動させることにより、流体経路セット(306)の中に注入され、次に患者に送給される。薬剤の全量が手操作で送給される場合、記録のために、送給時の濃度を表示することができる。コントロールユニット(1442)は、前述したデータ格納装置/メモリユニット(1899)からの情報を読み出し、所望次第で書き込むことができる。或いはまた、放射線検出器(2012)及びそれに連繋された機械的構成部材及びシールド部(364')は、コントロールユニット(1442)に連繋された装置の再使用可能な要素でもよく、また、シールドされた輸送容器(330)に設けられる孔は、カバーされた開口(図17Cに関連した説明を参照)と同じ様に、放射線検出器(2012)に連繋される時以外はシールドされている。放射性薬剤の濃度測定は、シリンジ(302)のネック部に限られるものではなく、他の流体経路要素の部位、例えば、検出器に関する幾何学的形状が一定である部位や、近傍の流体容器要素からの放射が最も少なくて干渉が最少となる部位などで行なうこともできる。放射線濃度の測定により、送達されるべき放射性薬剤の量を正確に推測することができる。合計投与量を測定することができ、必要に応じて、流体送給後に訂正されることもできる。
【0119】
この明細書に開示した様々な実施例を組み合わせて又は個々に用いることは、放射性薬剤及びその他あらゆる医療用流体のあらゆる送達において利点を有する。例えば、図6及び図9に示されるように、ボーラスを鋭くする技術は、前述の国際公開PCT/US07/89101(WO2008/083313)の開示と組み合わせて用いられることができ、よりタイトなボーラス性能が得られる。
【0120】
前述のシステム、装置及び方法の実施例を、組み合わせて又は個々に用いることにより、試験ボーラス注入の歪みを最小にし、イメージング用ボーラス注入のシャープさを向上させることができ、さらには、有害流体(例えば、放射性薬剤流体)の安全かつ効率的な取扱いのために、当該分野の専門家であれば、発明の範囲及び精神から逸脱することなく、これら実施例に変形及び変更を加えることができる。この明細書に記載した実施例は、放射性薬剤及び他の医療用流体のあらゆる送達において利点を有する。それゆえ、上記説明は、例示的なものであって、限定的なものではない。上記発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲の意味及び均等物の範囲内に含まれる全ての変更は本発明の範囲に含まれるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害流体を輸送する容器であって、
別個の囲いを取り囲むハウジングと、
別個の囲いの中に配備され、少なくとも一部分は第1流体が満たされている第1流体経路要素と、
ハウジング内に配備された第2流体経路要素であって、第1流体経路要素に接続され、少なくとも一部分は第2流体が満たされている第2流体経路要素と、を具えており、
第1流体経路要素は、第2流体経路要素と制御可能に流体接続され、流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングの外側からアクセスされることができるよう構成される、有害流体輸送容器。
【請求項2】
別個の囲いは、放射線シールドされている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項3】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられるよう構成されたコイル状チュービングを具えている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項4】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに連繋された流体検出器をさらに具えている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項5】
流体検出器は、放射線検出器又は空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている、請求項4に記載の有害流体輸送容器。
【請求項6】
第1流体経路要素と第2流体経路要素とを制御可能に流体接続する制御バルブを具えている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項7】
有害流体を送達するシステムであって、
少なくとも一部分が放射線シールドされた囲いを囲むハウジングと、
シールドされた囲いの中に配備され、少なくとも一部分が第1流体で満たされた第1流体経路要素と、
ハウジング内に配備された第2流体経路要素であって、第1流体経路要素と流体接続され、少なくとも一部分は第2流体が満たされている第2流体経路要素と、
第1流体経路要素及び第2流体経路要素の一方又は両方と制御可能に流体接続され、第1流体経路要素及び第2流体経路要素から流体を分配するポンプユニットとを具えている、有害流体送達システム。
【請求項8】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外側に向けられるコイル状チュービングを具えている、請求項7に記載の有害流体送達システム。
【請求項9】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに連繋された流体検出器をさらに具えている、請求項7に記載の有害流体送達システム。
【請求項10】
流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている、請求項8に記載の有害流体送達システム。
【請求項11】
有害流体送達システムを液体でプライミングする方法であって、
流体経路要素を具える流体送達システムを準備し、
第1液体を流体経路要素に送給し、
分離用流体を流体経路要素に送給し、
第2液体を流体経路要素に送給することを含んでおり、第1液体と第2液体は分離用流体によって分離される、方法。
【請求項12】
第1液体は非有害液体を含み、第2液体は有害液体を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有害液体は放射性液体を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
分離用流体は気体を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
分離用流体は二酸化炭素を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分離用流体は液体を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
分離用液体内に配備された固体部材をさらに含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
層流注入ボーラスの拡がりを軽減する方法であって、
第1流体を第1ルーメンを通って流体流れ経路に注入し、
第2流体を、第1ルーメンの周りに同心に配備された第2ルーメンを通って流体流れ経路に注入することを含んでおり、
第1流体は、流体流れ経路内の層流の略中心部を移動し、第2流体は、流体流れ経路内の第1流体の周りを略同心状に移動する、方法。
【請求項19】
第1流体を、第1ルーメン下流の流体経路にて、軸心にある出口ルーメンを介して、層流の中心部から取り出すことをさらに含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2流体を、軸心にある出口ルーメンにより、同心円状外側の流体流れ経路から取り除くことをさらに含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
放射性薬剤流体を輸送する容器であって、
内部コンパートメントを画定し、該内部コンパートメントの少なくとも一部分が放射線シールドされている容器本体と、
該容器本体に連繋され、内部コンパートメントを囲む閉鎖蓋とを具えており、
容器本体、又は閉鎖蓋、又は容器本体と閉鎖蓋の両方に、内部コンパートメントに通じる入口開口と出口開口が設けられており、
シリンジと、
該シリンジの出口に連繋され、入口流体経路要素及び出口流体経路要素を有する流体経路セットとを具えており、
シリンジは、内部コンパートメントに配備されており、流体経路セットの入口流体経路要素の少なくとも一部分は、入口開口を通って延びており、出口流体経路要素の少なくとも一部分は、出口開口を通って延びている、放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項22】
流体経路セットの入口流体経路要素に連繋された入口チェックバルブと、流体経路セットの出口流体経路要素に連繋された出口チェックバルブとをさらに具えている、請求項21に記載の放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項23】
流体経路セットの入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、入口開口及び出口開口を通して、容器本体から外方へ向けられるよう構成される、請求項21に記載の放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項24】
流体経路セットの入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、医療用コイル状チュービングから形成される、請求項23に記載の放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項25】
有害流体を充填及び輸送するシステムであって、有害流体輸送容器と該容器に連繋された充填システムとを具えており、
前記流体輸送容器は、
別個の囲いを囲むハウジングと、
別個の囲いの中に配備された第1流体経路要素と、
ハウジング内に配備され、第1流体経路要素に流体接続された第2流体経路要素とを具えており、
前記充填システムは、少なくとも第1流体源と第2流体源を有し、少なくとも第1流体流れ経路要素と制御可能に流体接続されており、第1流体源及び第2流体源に連繋され、第1流体源及び第2流体源からの流体を第1流体経路要素に分配し、次に第2流体経路要素に分配する少なくとも1つの流体ポンプをさらに具えている、有害流体充填及び輸送システム。
【請求項26】
別個の囲いは放射線シールドされている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項27】
流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられるコイル状チュービングを具えている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項28】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに連繋された流体検出器をさらに具えている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項29】
流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている、請求項28に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項30】
充填システムと第1流体経路要素との間の流体接続部を制御する制御バルブをさらに具えている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項1】
有害流体を輸送する容器であって、
別個の囲いを取り囲むハウジングと、
別個の囲いの中に配備され、少なくとも一部分は第1流体が満たされている第1流体経路要素と、
ハウジング内に配備された第2流体経路要素であって、第1流体経路要素に接続され、少なくとも一部分は第2流体が満たされている第2流体経路要素と、を具えており、
第1流体経路要素は、第2流体経路要素と制御可能に流体接続され、流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングの外側からアクセスされることができるよう構成される、有害流体輸送容器。
【請求項2】
別個の囲いは、放射線シールドされている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項3】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられるよう構成されたコイル状チュービングを具えている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項4】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに連繋された流体検出器をさらに具えている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項5】
流体検出器は、放射線検出器又は空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている、請求項4に記載の有害流体輸送容器。
【請求項6】
第1流体経路要素と第2流体経路要素とを制御可能に流体接続する制御バルブを具えている、請求項1に記載の有害流体輸送容器。
【請求項7】
有害流体を送達するシステムであって、
少なくとも一部分が放射線シールドされた囲いを囲むハウジングと、
シールドされた囲いの中に配備され、少なくとも一部分が第1流体で満たされた第1流体経路要素と、
ハウジング内に配備された第2流体経路要素であって、第1流体経路要素と流体接続され、少なくとも一部分は第2流体が満たされている第2流体経路要素と、
第1流体経路要素及び第2流体経路要素の一方又は両方と制御可能に流体接続され、第1流体経路要素及び第2流体経路要素から流体を分配するポンプユニットとを具えている、有害流体送達システム。
【請求項8】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つは、ハウジングから外側に向けられるコイル状チュービングを具えている、請求項7に記載の有害流体送達システム。
【請求項9】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに連繋された流体検出器をさらに具えている、請求項7に記載の有害流体送達システム。
【請求項10】
流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている、請求項8に記載の有害流体送達システム。
【請求項11】
有害流体送達システムを液体でプライミングする方法であって、
流体経路要素を具える流体送達システムを準備し、
第1液体を流体経路要素に送給し、
分離用流体を流体経路要素に送給し、
第2液体を流体経路要素に送給することを含んでおり、第1液体と第2液体は分離用流体によって分離される、方法。
【請求項12】
第1液体は非有害液体を含み、第2液体は有害液体を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
有害液体は放射性液体を含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
分離用流体は気体を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
分離用流体は二酸化炭素を含んでいる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
分離用流体は液体を含んでいる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
分離用液体内に配備された固体部材をさらに含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
層流注入ボーラスの拡がりを軽減する方法であって、
第1流体を第1ルーメンを通って流体流れ経路に注入し、
第2流体を、第1ルーメンの周りに同心に配備された第2ルーメンを通って流体流れ経路に注入することを含んでおり、
第1流体は、流体流れ経路内の層流の略中心部を移動し、第2流体は、流体流れ経路内の第1流体の周りを略同心状に移動する、方法。
【請求項19】
第1流体を、第1ルーメン下流の流体経路にて、軸心にある出口ルーメンを介して、層流の中心部から取り出すことをさらに含んでいる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第2流体を、軸心にある出口ルーメンにより、同心円状外側の流体流れ経路から取り除くことをさらに含んでいる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
放射性薬剤流体を輸送する容器であって、
内部コンパートメントを画定し、該内部コンパートメントの少なくとも一部分が放射線シールドされている容器本体と、
該容器本体に連繋され、内部コンパートメントを囲む閉鎖蓋とを具えており、
容器本体、又は閉鎖蓋、又は容器本体と閉鎖蓋の両方に、内部コンパートメントに通じる入口開口と出口開口が設けられており、
シリンジと、
該シリンジの出口に連繋され、入口流体経路要素及び出口流体経路要素を有する流体経路セットとを具えており、
シリンジは、内部コンパートメントに配備されており、流体経路セットの入口流体経路要素の少なくとも一部分は、入口開口を通って延びており、出口流体経路要素の少なくとも一部分は、出口開口を通って延びている、放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項22】
流体経路セットの入口流体経路要素に連繋された入口チェックバルブと、流体経路セットの出口流体経路要素に連繋された出口チェックバルブとをさらに具えている、請求項21に記載の放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項23】
流体経路セットの入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、入口開口及び出口開口を通して、容器本体から外方へ向けられるよう構成される、請求項21に記載の放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項24】
流体経路セットの入口流体経路要素及び出口流体経路要素のうちの少なくとも1つは、医療用コイル状チュービングから形成される、請求項23に記載の放射性薬剤流体輸送容器。
【請求項25】
有害流体を充填及び輸送するシステムであって、有害流体輸送容器と該容器に連繋された充填システムとを具えており、
前記流体輸送容器は、
別個の囲いを囲むハウジングと、
別個の囲いの中に配備された第1流体経路要素と、
ハウジング内に配備され、第1流体経路要素に流体接続された第2流体経路要素とを具えており、
前記充填システムは、少なくとも第1流体源と第2流体源を有し、少なくとも第1流体流れ経路要素と制御可能に流体接続されており、第1流体源及び第2流体源に連繋され、第1流体源及び第2流体源からの流体を第1流体経路要素に分配し、次に第2流体経路要素に分配する少なくとも1つの流体ポンプをさらに具えている、有害流体充填及び輸送システム。
【請求項26】
別個の囲いは放射線シールドされている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項27】
流体経路要素の少なくとも1つは、ハウジングから外方に向けられるコイル状チュービングを具えている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項28】
第1流体経路要素及び第2流体経路要素のうちの少なくとも1つに連繋された流体検出器をさらに具えている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項29】
流体検出器は、放射線検出器及び空気検出器のうちの少なくとも1つを具えている、請求項28に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【請求項30】
充填システムと第1流体経路要素との間の流体接続部を制御する制御バルブをさらに具えている、請求項25に記載の有害流体充填及び輸送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図9G】
【図9H】
【図9I】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図18】
【公表番号】特表2011−522623(P2011−522623A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512697(P2011−512697)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046437
【国際公開番号】WO2009/149367
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(500483817)メドラッド インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Medrad,Inc.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/046437
【国際公開番号】WO2009/149367
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(500483817)メドラッド インコーポレーテッド (43)
【氏名又は名称原語表記】Medrad,Inc.
【Fターム(参考)】
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