説明

流体濾過システム

吸着媒体を含む濾材中で使用するプラズマ処理した結合剤が提供される。プラズマ処理は、シラン、酸素、又はその両方を利用できる。プラズマ処理した結合剤は、抗菌剤を添加することにより電荷修飾することができる。濾材を用いてマトリクス及びシステムを製造することができる。その製造法及び利用法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、流体濾過システム並びに濾過マトリクス及び濾材に関し、濾材には、例えばプラズマ処理した高分子結合剤が含まれる。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の家庭用水濾過システムが市販されている。従来は、水から金属及び/又は有機物質を除去するには、遊動状態の炭素粒子床が用いられてきた。複合ブロックは、吸着性活性炭などの吸着性材料と、超高分子量ポリエチレン(UHMW PE)などの高分子結合剤との混合物から製造することができ、これらは加熱及び加圧下で共に焼結されており、浄水技術において有用である。例えば炭素ブロック技術は、粒子が落下したりスペースを取りすぎたりすることなく、遊動床炭素粒子に匹敵する機能性をもたらす。炭素ブロック技術では、吸着性材料の量が増えた結果、ブロック全体の圧力低下が大きくなることがある。更に、炭素ブロックを熱や圧力に曝露するため、ブロック中で使用可能な吸着性材料の種類が制限される場合がある。例えば、炭素ブロック技術は、一般に、イオン交換樹脂などの熱劣化しやすい吸着性媒体を使用しない。
【0003】
現在の技術の制約は、クリプトスポリジウムシストやその他の微小粒子を除去するフィルターを製造するために、極めて小さな粒子を必要とすることである。極めて小さな活性炭粒子を使用すると、より細かい結合剤粒子及びより多くの結合剤が必要となる。炭素が細かいと取り扱いが難しくなり、制御された粒径の製造は更に難しい。また、極めて細かい吸着剤及び結合剤粒子を使用すると、圧力低下が大きく、水の流量がより低いフィルターとなる。
【0004】
関連する問題として、極めて細かい媒体粒子を有するブロックは、比較的大量のUHMW PE結合剤を必要とすることである。高結合剤含量は、良好な機械的強度を有するブロックを与え、粒子落下を最小限にするのに必要である。市販のシスト除去可能と認められた(cyst-rated)水フィルターブロックの典型的な結合剤量は、25質量%〜55質量%の範囲である。ポリエチレンはいかなる吸着機能も持たないため、より多くの量の結合剤を使用すると、鉛、VOC、及び塩素などの水中汚染物質の除去に対してブロックの性能が制限される。
【0005】
現在の複合ブロックの製造方法における他の問題は、炭素媒体−高分子結合剤ブレンドは低い流動性を呈することである。このため、炭素ブロックの製造用成形型は、通常最適には充填されない。成形型が最大密度まで充填されない場合、媒体粒子を互いに保持するのにより多くの結合剤が必要となる。また、充填剤と充填密度との違いは、フィルターの流動性の変動及び特性の変動の原因となる。一般的な問題点は、炭素−ポリマーブレンドは、混合工程と成形型充填工程との間に、脱気と凝集が起こる傾向があることである。成形型の充填の際に炭素−ポリマーブレンドが凝集していると、成形型が最適密度まで充填されず、充填度が変動する。
【0006】
微粒子としてのシリカは、粉末流動助剤として以前から使用されている。例えば、製薬業界では、錠剤成形プロセスで少量のヒュームドシリカを粉末ブレンドに添加する。珪藻土から作られる水用フィルターブロックの製造にヒュームドシリカ流動助剤を使用すると、強度が低下したブロックの原因となりうる。
【0007】
現在の技術における更に別の制約は、ブロックの機械的強度である。水用フィルターには、より小さいサイズ及びより早い流動性といった要望の傾向があるため、壁をより薄く、かつ外径をより小さくする必要性がある。こうしたブロックは梁強度が低く、製造プロセス中又は操作及び運搬中の不良の原因となる場合がある。
【0008】
現在の技術における更なる別の制約は、粒状媒体(100メッシュ超の大きさ)を用いる炭素ブロックの製造能である。現在の技術では、325メッシュの炭素粒子(<43マイクロメートル)と80×325メッシュの粒子(43〜175マイクロメートル)との配合物を用いる。典型的な平均粒径は、90マイクロメートル未満である。より大きい粒子から製造される低圧力低下のブロックの必要性がある。しかし、より大きい粒径、例えば50×200メッシュ(75〜295マイクロメートル)の粒状炭素でブロックを製造することは困難な場合がある。
【0009】
現在の技術の考えうるデメリットは、結合剤として用いられるUHMW PEが疎水性であることである。これによりフィルターが湿潤しにくくなる。低湿潤性のフィルターは、重力流濾過などの低圧での適用においてデメリットとなりうる。
【0010】
システム全体において圧力低下を起こさずに、活性物質が高度に充填される水濾過システムを提供する必要性が引き続き存在する。より大きい粒状炭素及びより少量の結合剤材料を用いることが更に望ましいと思われる。また、容易に湿潤できるフィルターを提供する必要性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
提供されるのは、プラズマ処理した結合剤粒子を吸着性媒体と共に利用する、液体浄化用の濾材、濾過マトリクス、及び濾過システムである。ある態様では、提供されるのは、吸着性媒体及びプラズマ処理した高分子結合剤粒子を含む濾材である。ある実施形態では、プラズマ処理した高分子結合剤粒子の表面は、オキシド、シリコン、又はその両方を含む。他の実施形態では、吸着性媒体には活性炭が含まれる。詳細な実施形態では、活性炭には45マイクロメートル以上の平均粒径を有する粒子が含まれる。別の実施形態では、高分子結合剤粒子は、その表面上にグラフトされた抗菌剤を更に含む。1つ以上の実施形態では、高分子結合剤粒子は、媒体の5〜30重量%の範囲の量で存在する。いくつかの実施形態では、プラズマ処理されなかった結合剤粒子を更に含んでもよい。
【0012】
詳細な実施形態では、濾材は、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、シストの捕集量増加をもたらすのに効果的である。別の詳細な実施形態では、濾材は、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、揮発性有機成分の捕集量増加をもたらすのに効果的である。更なる実施形態では、濾材は、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、増加した梁強度を有する。別の実施形態では、濾材は、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、増加した親水性を有する。
【0013】
1つ以上の実施形態では、高分子結合剤粒子にはポリエチレンが含まれる。他の実施形態では、ポリエチレンは、超高分子量ポリエチレンを含む。更なる実施形態では、高分子結合剤粒子は、不規則な波型の表面を有する粒子を含む。特定の実施形態では、不規則な波型の表面を有する粒子は、超高分子量ポリエチレンから形成された。いくつかの実施形態では、高分子結合剤粒子は、実質的に球状の粒子を更に含む。
【0014】
別の態様では、活性炭と、活性炭に付着するプラズマ処理した超高分子量ポリエチレン結合剤と、を含む、濾過マトリクスを提供する。詳細な実施形態では、活性炭は50〜85重量%の範囲の量で存在し、ポリエチレン結合剤は、10〜30重量%の範囲の量で存在する。ある実施形態では、ポリエチレン結合剤は、不規則な波型の表面を有する粒子を含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレン結合剤は、その表面上にグラフトされた抗菌剤を更に含む。
【0015】
詳細な実施形態では、濾材は、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾過マトリクスと比べ、増加した親水性を有する。
【0016】
更なる態様では、提供されるのは、吸着性媒体及びプラズマ処理した高分子結合剤から形成された濾過マトリクスと、濾材を取り囲むハウジングと、流入口と、流出口と、を含む濾過システムである。ある実施形態では、吸着性媒体は活性炭を含み、高分子結合剤は不規則な波型の表面を有する超高分子量ポリエチレン粒子を含み、高分子結合剤の表面はオキシド、シリコン、又はその両方を含む。
【0017】
別の態様では、流体を、吸着性媒体及びプラズマ処理した高分子結合剤を含む濾材と接触させることを含む、濾過方法が提供される。詳細な実施形態では、濾材は、プラズマ処理した結合剤を含まない比較濾材と比べ、増加したシストの捕集量を有する。1つ以上の実施形態では、かかる方法は、重力流濾過装置に濾材を設置することを更に含む。
【0018】
別の態様では、提供されるのは、濾過システムの製造方法であり、かかる方法は、プラズマで高分子結合剤粒子を処理してプラズマ処理済み高分子結合剤を形成することと、処理した粒子と吸着性媒体とを接触させて媒体混合物を形成することと、媒体混合物を加熱して濾過マトリクスを形成することと、濾過ブロックをハウジング内に挿入して濾過システムを形成することと、を含む。一実施形態では、かかる方法は、プラズマ処理した高分子結合剤に抗菌剤をグラフトすることを更に含む。詳細な実施形態では、処理工程は、高分子結合剤粒子をチャンバ内に供給することと、チャンバを真空にすることと、粒子をガスにさらすことと、無線周波数パルスを粒子に適応することと、を含む。1つ以上の実施形態では、ガスには、シラン、酸素、又はその両方が含まれる。他の実施形態では、グラフト工程は、プラズマ処理した結合剤を抗菌剤の水溶液と混合して混合物を形成することと、その混合物を乾燥することと、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
提供されるのは、プラズマ処理した結合剤粒子を吸着性媒体と共に利用する、液体浄化用の濾材、濾過マトリクス、及び濾過システムである。プラズマ処理した結合剤粒子を、シラン又は酸素又はその両方などのプラズマガスで処理し、例えば、親水性かつより粘着性になるように、結合剤粒子を修飾する。粒子は、活性炭及び/又は珪藻土などの吸着性媒体と混合され、この混合物は続いて焼結され、ブロック又は素子に形成される。吸着性媒体を高度に(例えば、最大約90重量%)充填することが可能である。更に、結合剤粒子の表面にシリカを付加することにより、結合プロセスに干渉することなく、流動性を向上すると思われる。
【0020】
「流体処理ユニット」又は「流体濾過システム」とは、濾材と、未処理水などの未加工流体を処理済流体から分離する方法とを含むシステムが含まれる。これは、典型的には、フィルター素子用のフィルターハウジングと、フィルターハウジングから処理済流体を適切な方法で流し出す出口とを含む。
【0021】
「バルク濡れ特性」は、水を吸収し吸い上げる物品の傾向を意味する。親水性を向上することで、物品が濡れる時間を短縮できる。
【0022】
「多孔質物品」は、表面から内部まで開いた蛇行経路を有する物品を意味する。
【0023】
「プラズマ処理」は、高周波電界又は高周波磁界を用い、結合剤が存在する雰囲気下で特定のガスのフリーラジカルを生じさせるプロセスを意味する。フリーラジカルは、結合剤の表面を修飾し、場合によりその性能を向上する。プラズマ処理は、結合剤表面を「官能化」するこの用語は、結合剤表面の、例えば親水性などの特性を変えることができる、その他任意のプラズマ誘発性化学反応又は物理的反応を包含することができる。
【0024】
「TMS」とは、プラズマ処理に用いられるガスである、テトラメチルシランガスを意味する。
【0025】
「国立衛生財団(National Sanitation Foundation)」つまり「NSF」は、水濾過システム及び濾過システムで用いられる材料を認定する民間機関を指す。本明細書で用いるとき、NSF規格42及び53は、飲料水の美的観点及び健康への影響の両方を改良するための水濾過システムに対する、試験方法及び許容基準が明記される公表規格である。
【0026】
用語「インパルス充填」又は「インパルスの印加」は、成形型中の少なくとも一部の粒子の運動を誘発する、別個の、実質的に垂直の変位の原因となり、成形型中で圧縮された向きとなる粒子の原因となる、力を成形型に加えることを意味する。これには、成形型が固定されたテーブルに、ハンマーを打ち付けたり、空気圧シリンダーから衝撃を与えたりするなどの間接法と、一連のゆさぶり運動で成形型を動かす、任意の好適な直接法が挙げられる。いくつかの実施形態では、インパルス充填は、成形型にかけられる一連の別個の変位(すなわちインパルス)を含む。インパルス充填は、変位の間で移動がない、又は移動が少ない時間があるため、振動とは異なる。変位の間隔は、典型的には少なくとも0.5(いくつかの実施形態では、少なくとも1、2、3、5、又は更には少なくとも10)秒である。成形型にかけられる変位は、垂直要素を有する。いくつかの好ましい実施形態では、垂直要素(水平要素の対語として)は、成形型の運動の大部分(いくつかの実施形態では、実質的に大部分(>75%)、又は更にはほぼ全て(>90%))を占める。
【0027】
用語「UHMW PE」は、分子量が、例えば少なくとも750,000の超高分子量ポリエチレンを意味し、これは同一所有者の米国特許第7,112,280号(ヒューズ(Hughes)ら)に記載されており、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0028】
用語「不規則な波型の表面を有する粒子」は、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,112,272号(ヒューズ(Hughes)ら)に記載される特有の形態を有する粒子を意味し、実質的に球状の粒子と比較するとき、表面積がより大きく、嵩密度がより小さい。
【0029】
詳細な実施形態では、高分子結合剤は、超高分子量ポリエチレンを含む。他の実施形態では、高分子結合剤は、一般に球状で多孔性でない構造を有する粒子を更に含む。特定の実施形態では、不規則な波型の表面を有する粒子は、10〜120(又は20〜50、又は更に30〜40)マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。他の特定の実施形態では、一般に球状で多孔性でない構造を有する粒子は、10〜100(又は20〜80、又は更に30〜65)マイクロメートルの範囲の平均粒径を有する。波型「小」粒子とは、平均30マイクロメートル及び0.25g/ccの密度を一般に有する粒子が含まれる。波型「大」粒子とは、平均120マイクロメートル及び0.23g/ccを一般に有する粒子が含まれる。球状「小」粒子とは、平均60マイクロメートル及び0.45g/ccを一般に有する粒子が含まれる。
【0030】
用語「導電学的吸着」には、微粒子(吸着質と呼ばれる)が、クーロン力又はその他静電相互作用により固体、又は極めてまれには液体(吸着剤と呼ばれる)の表面上に堆積し、それにより分子フィルム又は原子フィルムを形成するときに起こるプロセスが含まれる。
【0031】
用語「吸着性媒体」には、異なる吸着メカニズムにより粒子を吸着する能力を有する材料(吸着剤と呼ばれる)が含まれる。これらの媒体は、流体力学的直径が約0.01〜10mmの、例えば球状ペレット状、棒状、繊維状、成型粒子状、又はモノリス状の形状とすることができる。そのような媒体が多孔質である場合、これにより、露出面積がより大きくかつ吸着能がより高くなる。吸着剤は、粒子の移送を早く、かつ流動抵抗を低くできる、ミクロ細孔及びマクロ細孔構造の組み合わせを有してよい。「比較濾材」とは、プラズマ処理されていない材料から形成された濾材を意味する。つまり、比較濾材で用いられる結合剤は、どの部分も、プラズマガス、例えばTMS、O、又はその両方で処理されていない。「比較濾過マトリクス」とは、比較濾過マトリクスが、プラズマ処理されていない結合剤を含有することを意味する。
【0032】
標準的な炭素ブロック処方でプラズマ処理した結合剤を使用すると、従来技術よりある程度の改良がもたらされた。例えば、クリプトスポリジウムシストの減少に関するNSF53試験において、ブロックの除去性能の向上が得られた。更に、プラズマ処理した結合剤を用いると、強度及び一体性を保持しながらも、結合剤含量をより低下させ、それによりブロック中により多くの活性媒体を含むことができる。これにより、より高性能の、体積基準でブロックあたり3.8リットル(1ガロン)の揮発性有機化合物(VOC)の除去が可能になる。プラズマ処理した結合剤を使用すると、良好な機械的強度を有する粒状炭素(平均粒径>100マイクロメートル)を用いたブロックの成型能をももたらす。ブロックの破断強度は、一般的に、プラズマ処理した結合剤を用いると改善される。更に、より親水性特性を有するブロックはプラズマ処理した結合剤により得られ、同様に、初期濡れ性を改善する。
【0033】
多孔質材料のプラズマ処理法は、米国特許第6,878,419号及び同第7,125,603号に記載され、また、粒子のプラズマ処理法及び装置は、米国特許第6,015,597号及び同第6,197,120号に記載されており、これらの開示は本明細書に参考として組み込まれる。一般的な用語では、プラズマ処理は、例えば、テトラメチルシラン(TMS)などの形状のシラン、又は酸素(O)などのガスと真空下で結合剤を処理することにより達成される。TMS処理では、TMSを流速約100cc/分で30分間ガラスチャンバ内に投入した。酸素処理では、酸素ガスを流速約180cc/分で30分間チャンバ内に投入した。複合処理では、TMS及びO処理を連続して30分間ずつ行った。通常は、チャンバ内にTMS又は酸素ガスが存在していたとき、圧力は約133Pa(1トル)を超えなかった。チャンバ内の材料を、次いでパルスモードの無線周波数プラズマにさらした。パルスを用いて、気相重合で生じる粉塵の形成を最小限にした。結合剤をTMS雰囲気下で最初に、続いてO雰囲気で処理した処理法においては、理論に束縛されるものではないが、シリコンオキシドがポリマー結合剤の表面上に堆積されると考えられる。Oガスのみの処理では、理論に束縛されるものではないが、ポリマー表面が酸化されると考えられる。TMSの後のO処理に類似する利点が、O処理のみでもみられた。TMSガスのみの処理においては、親水性作用以外は他の処理法と類似の利点がみられた。
【0034】
プラズマ処理が2工程で行われる場合、第1のプラズマは、sp結合、sp結合、又はsp C−H結合であってよい、少なくとも1つのC−H結合を有する少なくとも1つのオルガノシランを含む成分由来である。典型的には、オルガノシランは複数のC−H結合、例えば少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも9、及び/又は更に少なくとも12、又はそれ以上のC−H結合を有する。典型的には、オルガノシランは、プラズマが形成されたプラズマ処理条件下で十分な蒸気圧を持つように選択される。
【0035】
代表的な少なくとも1つのC−H結合を有するオルガノシランとして、例えば、テトラメチルシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、ジエチルシラン、ジエチルメチルシラン、プロピルシラン、トリメチルシラン、及びエチルシランなどのアルキルシラン類、例えば、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)及びテトラメチルシクロテトラシロキサン(TMCTS)などのアルコキシシラン類及びシロキサン類、例えば、ジシラノメタン、ビス(メチルシラノ)メタン、1,2−ジシラノエタン、1,2−ビス(メチルシラノ)エタン、2,2−ジシラノプロパン、ジメチルジシラノエタン、ジメチルジシラノプロパン、テトラメチルジシラノエタン、及びテトラメチルジシラノプロパンなどのアルキレンポリシラン類、例えば、ビニルメチルシラン、及びジビニルジメチルシランなどのアルケニルシラン類、例えば、フェニルシラン、フェニルジメチルシラン、及びフェニルトリメチルシランなどのアリールシラン類、例えば、1,1,2,2−テトラメチルジシラン、ヘキサメチルジシラン、1,1,2,2,3,3−ヘキサメチルトリシラン、及び1,1,2,3,3−ペンタメチルトリシランなどのアルキルポリシラン類、が挙げられる。オルガノシランの混合物も用いることができる。第1のプラズマ処理の効果が減少する傾向があるものの、オルガノシランは、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基、及び/又はハロ(例えば、フルオロ、ブロモ、クロロ)基などの置換基(susbtituent)を有してよい。更に、第1のプラズマ処理の効果が減少する傾向があるものの、第1のプラズマは、例えば、酸素、窒素、二酸化窒素、亜酸化窒素、アンモニア、及び二酸化イオウからなる群から選択されるガス状成分を更に含有してよい。
【0036】
プラズマ処理した結合剤は、更に抗菌剤とグラフトすることができる。1つ以上の実施形態では、炭素ブロックは、最初にTMSで、続いてOでプラズマ処理された結合剤で製造され、次いで抗菌剤とグラフトされた。抗菌剤は、ミシガン州ミッドランド(Midland)のアージス(Aegis)からAEM 5700の商標名で市販される、3−トリメトキシシリルプロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドの形状のオルガノシリコン第四級アンモニウム化合物である。抗菌剤をグラフトするために、抗菌剤を含有する水溶液を調製し、プラズマ処理した結合剤上に混合しながら噴霧した。続いて、窒素ガス流下、85℃の対流式オーブン内で材料を一晩乾燥した。最初にTMSで、続いてOでプラズマ処理し、次いでオルガノシリコン第四級アンモニウム化合物とグラフトした結合剤により、濁度の低減において、著しく改善された性能を有する炭素ブロックが得られることが判明した。特定の理論に束縛されるものではないが、このプロセスで結合剤に付与された正電荷が、帯電した微粒子の捕集を改善すると仮定される。
【0037】
炭素ブロック処方にプラズマ修飾結合剤を用いると、クリプトスポリジウムシストの除去効率が著しく改善することが判明した。我々の試験では、シスト除去が不良(ANSI/NSF 53規格に不適)の炭素ブロック処方を変更し、プラズマ処理した結合剤を用いた。市販の結合剤を、TMS、酸素(O)、又はその両方を用いるプラズマプロセスで官能化した同一の結合剤で置き換えた。これ以外は、処方及びプロセスは同一とした。TMS後O処理された結合剤を用いると、ブロックは、排水が検出可能な粒子を含まないほど、驚くほど確実なシスト除去を示した。
【0038】
シスト捕集能の向上により、より大きい炭素粒子を有するブロックの製造が可能になる。現状の商業的炭素ブロック技術では、シスト保持ブロックは、主に325メッシュ(43マイクロメートル)未満の粒径の活性炭粒子を含有する。官能化結合剤では、主に80〜325メッシュ(45〜175マイクロメートル)の炭素粒子で、ブロックがシストを保持するようになる。この利点により、圧力低下がより少ないシスト保持ブロックの製造が可能になる。また、結合剤をより少なく、活性媒体をより多く使用することも可能になる。更に、炭素超微粒子は、粒径分布が密になるよう加工し、製造することが難しいため、製造法を改善できる。
【0039】
プラズマ処理した結合剤を用いると、ブロックの機械的強度を顕著に増加させることができる。修飾されていない同一の市販結合剤の代わりにプラズマ処理(TMS、O2、又は両方)した結合剤を用いた同一処方のブロックでは、梁たわみ力がほぼ2倍に増加している。梁たわみ力(BDF)又は破断強度は、ブロックが輸送及び取り扱い中に破損しないように十分に強いことを保証するための規格として一般的に用いられる。より高い梁強度のブロックを製造することで、直径がより小さく、かつ壁厚がより薄いブロックの製造が可能になる。水用フィルターブロックに対する要望において現在の傾向は、狭い空間(例えば、冷蔵庫及び蛇口)に適合するより小さいブロックに向かっている。その他の傾向としては、圧力低下がより小さい、水の流速がより高いものである。これは、より薄い壁のブロックを用いることにより可能とすることができる。
【0040】
プラズマ修飾結合剤の使用は、必要とされる結合剤含量が低下させ、それにより、より活性媒体を多く用いることができる。現在の炭素ブロック技術では、代表的な処方は、約50質量%の含量の結合剤、約50質量%の含量の活性媒体を含む。プラズマ官能化結合剤を用いると、ブロックは、10質量%まで低い結合剤含量で製造されている。これらの低結合剤含量は、成形しにくい形状(例えば、内径2.8cm(1.1インチ)×内径1.4cm(9/16インチ)×長さ15.2cm(6インチ))のブロックに対して用いられている。
【0041】
低結合剤含量で製造されたブロックは、ブロック体積単位あたりの最大容積をリットル(ガロン)で表すVOC除去能において、著しく改善されていた。現在市販されている炭素ブロックのVOC最大容積よりも、2〜4倍高い容積を達成した。例えば、直径2.8cm(1.1インチ)、長さ12.7cm(5インチ)のブロックは、水605.7L(160ガロン)(>10.4L/cm(45ガロン/インチ))をはるかに上回るVOC耐用年数(NSF規格53による)を達成した。最も市販されている水用フィルターブロックは、4.6L/cm(20ガロン/インチ)未満のVOC最大容積を有する。
【0042】
プラズマ処理した結合剤を用いると、粒状炭素(>100マイクロメートル平均)からブロックを製造することができる。亀裂がなく、粒子落下が最低限の80×200メッシュ、及び50×200メッシュの炭素で、シリカ改良結合剤を含有するブロックが利用されている。これは、シリカ修飾されていない同一の結合剤で製造されたブロックに対する、明確な違いである。標準的な結合剤を用い、これらの粒径で製造されたブロックでは、亀裂及び実質的な粒子落下が非常に高頻度でみられていた。
【0043】
本発明の別の有用性は、炭素ブロック中の結合剤の濡れを向上することである。炭素ブロック中のその他構成成分(活性炭、鉛低減媒体など)は、ポリエチレンよりも親水性が高い。改善された湿潤性を有するブロックは、水差し用途などの重力流濾過用途では、迅速に媒体が濡れることが重要であり、この用途において利点があるだろう。
【0044】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用された成分の量、特性(例えば分子量、反応条件など)を表す全ての数は、全ての例において、「約」という用語により修飾されることを理解されたい。その結果、反対に指示がない限り、以下の明細書及び添付特許請求の範囲に明記される数値パラメーターは、本開示により得られようとする所望の特性により変わる場合がある近似値である。少なくとも、特許請求の範囲に対し均等論の適用を制限しようとするものではないが、各数値パラメーターは、報告された有効数字を考慮し、通常の丸め手法を適用することにより、少なくとも解釈すべきである。
【0045】
本開示の広い範囲に記載される数値範囲及びパラメーターが近似値であるにも関わらず、特定の実施例に記載される数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、各試験測定値にみられる標準偏差から必然的に生じる一定の誤差を本質的に含む。
【実施例】
【0046】
実施例1
波型小粒子(ティコナ(Ticona)GUR 2126)及び球状小粒子(ティコナ(Ticona)GUR 4150−3)のUHMW PE結合剤を、テトラメチルシラン(TMS)のみ、酸素のみ、及びTMS後酸素、の3つのうち1つの方法を用いて表面修飾した。そのブロックにおいて空気流試験、BDF試験、及びシスト試験を行った。
【0047】
通常は、結合剤を、約1500gずつ数回に分けて試験反応装置内で処理した。試験反応装置は、電磁界内の回転ガラスチューブを備えた。試験反応装置内での混合を促すため、約500mLの不活性ビーズを結合剤に加えた。結合剤をガラスチューブ内に設置した時点で、ガス内部を圧力約40Pa(0.3トル)まで排気した。ガラスチャンバ上のローターを約8rpmで回転するように設定した。テトラメチルシラン処理では、TMSを、流速約100cc/分で30分間チャンバ内に投入した。酸素処理では、酸素ガスを流速約180cc/分で30分間チャンバ内に投入した。複合処理では、上記TMSガス及びO処理を連続して30分間ずつ行った。処理チャンバ内にTMS又は酸素ガスが存在していたとき、圧力は約133Pa(1トル)を超えなかった。
【0048】
所望の雰囲気が設定された時点で、進行波約200W、反射波約40Wで無線周波数パルスを開始した。処理が完了すると、結合剤を反応装置から取り出し、篩を用いて不活性ビーズを除去した。
【0049】
3種の異なる処理それぞれと、未処理の結合剤を用いた1種の比較例において、24個のブロック(外径2.8cm(1.1インチ)×長さ11.4cm(4.5インチ))のバッチを製造した。ブロックの処方は以下のとおりとした。
【0050】
【表1】

【0051】
長さ15.2cm(6インチ)×外径2.8cm(1.1インチ)の成形型でブロックを製造した。成形型にはインパルス充填により充填し、最大密度を達成した。成形型を177℃の対流式オーブン内で1時間、1度に8個を焼き固めた。対流式オーブンから取り出した後、ブロックを成形型内で約490N(50lbf)の力で圧縮した。ブロックは、2.8cm(1.1インチ)の外径、0.95cm(0.375インチ)の内径を有しており、長さ11.4cm(4.5インチ)に切断された。ブロックの重量は約37〜39グラムであった。ブロックの末端部を保護し、各試験へランダムに割り付けた。BDF試験のサンプルサイズは16であり、その結果を表1aに示す。シスト試験のサンプルサイズは8であり、その結果を表1bに示す。
【0052】
【表2】

【0053】
【表3】

【0054】
BDFデータより、未処理のブロックと比較して、3種の処理法のいずれにおいても処理済みブロックの強度が改善されていることが示唆される。酸素プラズマ処理したブロックが最も強かった。
【0055】
シスト試験のデータは、プラズマ処理した結合剤(酸素、TMS、又はTMS後O)で製造したブロックにおいて、全てのブロックが少なくとも99.95%の効率を有して合格したことを示す。未処理ポリマーで製造したブロックは、試験したブロックのうち12%がシスト試験に合格しなかった。
【0056】
実施例2
TMS後Oで処理した結合剤を用い、表2aの処方に従って炭素ブロックを製造した。
【0057】
【表4】

【0058】
材料をボール盤ミキサーで2分間混合した。成形型(外径2.8cm(1.1インチ)×内径0.95cm(3/8インチ)×長さ30.5cm(12インチ))にはインパルス充填により充填し、最大密度を達成した。成形型を180℃の対流式オーブン内で45分間焼き固めた。焼成後、981N(100lbf)の一定力のピストンを用いて、30秒間ブロックを圧縮した。ブロックを冷却し成形型から取り外した。ブロックを長さ10.2cm(4インチ)に切断して末端保護した。
【0059】
表2bはこの方法で製造された8個のブロックのデータを示す。
【0060】
【表5】

【0061】
ブロック2−D及び2−Gにおいて試験を実施し、これらのブロックの水のシスト除去能を測定した。これらの試験は、代用試験塵を用いるNSF規格53試験法に従った。ブロック2−D及び2−Gの両方とも確実なシスト除去能を示した。つまり、ブロックは>99.95の効率を示した。排出液中の3〜4マイクロメートルの粒子を計測したところ、試験の間検出されなかった。
【0062】
実施例3
比較例
ポリエチレン結合剤(プラズマ処理せず)を用い、表3aの処方に従って炭素ブロックを製造した。
【0063】
【表6】

【0064】
実施例2の方法に従って製造したブロックを試験したところ、表3bの性能を有していた。
【0065】
【表7】

【0066】
示されるように、実施例3では、ブロック質量及び空気流抵抗における標準偏差は、プラズマ処理した結合剤で製造したブロックの2倍以上であった。また、実施例2のブロックの平均空気流抵抗及び平均ブロック質量は、実施例3より高かった。これらは、修飾された結合剤は成形型への充填を改善し、それにより、より高くより再現可能な充填密度が得られることを示す。
【0067】
代用試験塵を用いるNSF規格53試験法に従い、ブロック3−A及び3−Dにおいて試験を実施し、これらのブロックの水のシスト除去能を測定した。修飾されなかった結合剤で製造された両ブロックともシスト除去試験に合格しなかった。
【0068】
実施例4
比較例
ポリエチレン結合剤(プラズマ処理せず)を用い、表4aの処方に従って炭素ブロックを製造した。実施例3と比較し、より微細な炭素を添加することにより処方を少し変え、シスト捕集能を向上させた。
【0069】
【表8】

【0070】
実施例2の方法に従って製造したブロックを試験したところ、表4bの性能を有していた。
【0071】
【表9】

【0072】
プラズマ未処理結合剤から製造されたこれらのブロックにおいて、「不合格」とした試験では、99.95%未満の効率を示し、NSF 53基準に合致しなかった。「かろうじて合格」とした試験では、NSFによる規定のサンプリングポイントでは効率が99.95%を超えていたが、試験中の別のポイントでは効率が99.95%を下回った。また、「かろうじて合格」とした試験では、排出液中に検出可能な粒子が測定された。
【0073】
実施例5
TMS後Oで処理した結合剤を用い、表5aの処方に従って炭素ブロックを製造した。
【0074】
【表10】

【0075】
実施例2の方法に従って製造したブロックを試験したところ、表5bの性能を有していた。
【0076】
【表11】

【0077】
梁たわみ力は、両端を保持し、ブロックの末端から等距離の点からブロックに対して垂直に力をかけるとき、ブロックを破壊するのに必要な力として定義される。ブロック強度の測定に通常使われる方法であり、輸送及び取り扱い中にブロックが破損しないことを保証する規格として用いられる。
【0078】
実施例6
比較例
ポリエチレン結合剤(プラズマ処理せず)を用い、表6aの処方に従って炭素ブロックを製造した。
【0079】
【表12】

【0080】
実施例2の方法に従って製造したブロックを試験したところ、表6bの性能を有していた。
【0081】
【表13】

【0082】
示されるように、実施例6では、梁たわみ力は通常の場合、プラズマ処理済み結合剤なしで製造されたブロックについて、実施例5のブロックと比較して低かった。これは、修飾された結合剤は梁たわみ力が改善されていることを示す。
【0083】
実施例7
TMS後Oで処理した結合剤を用い、表7aの処方に従って炭素ブロックを製造した。
【0084】
【表14】

【0085】
実施例2の方法に従って製造したブロックを試験した。これらのブロックは亀裂がなく完全な状態であった。機械的強度及び粒子落下量は、水濾過用途に許容できるものと思われた。ブロック総結合剤含量は10%であった。総活性媒体含量は90%であった。
【0086】
実施例8
第1にTMSで、続いてOでプラズマ処理した結合剤を用いて製造されたブロックを、2.8cm(1.1インチ)の外径を有する実施例2、表2aの処方に従って製造した。表8に、これらのブロックの初期VOC試験の結果をまとめる。300ppbのクロロホルムを含む水を負荷したときの、排水中クロロホルム(CHCl)濃度の測定値は、処理された水の量(リットル(ガロン))の関数として得られる。NSF 53試験法では、フィルターは、定格耐用年数の間、流出したCHCl濃度が15ppb(95%除去)を下回るよう維持されなければならない。
【0087】
【表15】

【0088】
これらの結果は、ブロック長さ11.4cm(4.5インチ)において、>606リットル(160ガロン)のVOC最大容積が達成されたことを示す。12.7cm(5インチ)のブロックでは、VOCのために処理された水の量は、単位ブロック体積あたり>10.4L/cm(45ガロン/インチ)であった。
【0089】
実施例9
TMS後Oで処理した結合剤を用い、表9の処方に従って炭素ブロックを製造した。上記実施例では微粒子炭素であったのに対し、用いた炭素は粒状であった。
【0090】
【表16】

【0091】
外径8.9cm(3.5インチ)×内径1.9cm(0.75インチ)×長さ50.8cm(20インチ)の寸法のブロックを、より大きな成形型で熱伝導を可能にするため焼成時間をより長く(約2時間)した以外は、実施例2の方法に従って製造した。
【0092】
全てのブロックは完全な状態(亀裂なし)であり、最小限の粒子落下を示した。この大きさの炭素粒子を用い、かつこのブロック形状のブロックを製造するこれまでの試みは全て、欠陥(亀裂)のあるブロックを得ていた。
【0093】
実施例10
より粗な粒径分布を示す炭素で形成された炭素ブロックを、TMS後Oで処理された結合剤を用い、表10aの処方に従って製造した。
【0094】
【表17】

【0095】
表10bに、実施例2の方法に従って製造された4個のブロックにおけるデータを示す。
【0096】
【表18】

【0097】
これらのブロックにおいて試験を実施し、これらのブロックの水のシスト除去能を測定した。これらの試験は、代用試験塵を用いるNSF規格53試験法に従った。ブロック10−A〜10−Dの全てのブロックにおいて確実なシスト除去能を示した。
【0098】
実施例11
TMS後Oで処理した結合剤を用い、表11aの処方に従ってディスクを製造した。
【0099】
【表19】

【0100】
上記成分を混合し、ディスク(直径11.4cm(4.5インチ)×厚さ0.95cm(3/8インチ))状に成形した。キャップを成形型上に置いたが、成形型を圧縮しなかった。
【0101】
上記ディスクについて、水での湿潤性の試験を行った。注射器を用いて、水道水10mLをディスク表面に注いだ。水は5秒間かけて注いだ。続いて、ディスク上の水が完全にディスクに吸収されるまでの総時間を記録した。この試験のデータを表11bに示す。
【0102】
【表20】

【0103】
実施例12
比較例
ポリエチレン結合剤(プラズマ処理せず)を用い、表12aの処方に従ってディスクを製造した。
【0104】
【表21】

【0105】
ディスクを実施例11の方法で製造し、実施例11に従って湿潤性を試験した。この試験データを表12bに示す。
【0106】
【表22】

【0107】
示されるように、実施例11のディスクと比較して、実施例12のプラズマ処理した結合剤を用いずに製造したディスクの方が、湿潤時間は一般に長かった。これは、修飾された結合剤が湿潤性を改善したことを示す。
【0108】
実施例13
炭素ブロックを、最初にTMSで、続いてOでプラズマ処理された結合剤で製造し、次いで抗菌剤とグラフトした。抗菌剤は、ミシガン州ミッドランド(Midland)のアージス(Aegis)からAEM 5700の商標名で市販される、3−トリメトキシシリルプロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリドの形状のオルガノシリコン第四級アンモニウム化合物である。抗菌剤をグラフトするため、1%抗菌剤水溶液をプラズマ処理した結合剤上に噴霧し、ペースト上の稠度を示すまで混合した。続いて、オーブン内を窒素ガスが流れている85℃の対流式オーブンで、材料を一晩乾燥させた。
【0109】
炭素ブロックを表13の処方に従って調製した。
【0110】
【表23】

【0111】
外径5.3cm(2.1インチ)×長さ23.6cm(9.3インチ)のブロックを調製した。これらのブロックについてNSF 53規格に従って濁度試験を行い、50サイクルの試験において流出液の濁度低減が0.25NTU未満であることを達成した。NSF規格では、0.5NTUの低減までが求められている。
【0112】
実施例14
実施例13に示すように、炭素ブロックを最初にTMSで、続いてOで処理された結合剤で製造し、次いで抗菌剤とグラフトした。
【0113】
炭素ブロックを表14の処方に従って調製した。
【0114】
【表24】

【0115】
外径2.8cm(1.1インチ)×長さ10.2cm(4インチ)のブロックを、インパルス充填を用い、圧縮により硬化して調製した。これらのブロックについてNSF 53規格に従って濁度試験を行い、19サイクルの試験において流出液の濁度低減が0.5NTU未満であることを達成した。
【0116】
プラズマ処理されなかった結合剤を有する比較ブロックでは、このブロックは濁度試験に合格しなかった。つまり、比較ブロックを用いた19サイクルの試験において、濁度結果は0.5NTUを超えた。
【0117】
本明細書全体で「一実施形態」「特定の実施形態」「1つ以上の実施形態」又は「ある実施形態」とは、その実施形態に関して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本命最初全体の様々な場所に「1つ以上の実施形態では」「特定の実施形態では」「一実施形態では」又は「ある実施形態では」などの表現が出てくるが、本発明の同一の実施形態を参照する必要はない。更に、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わせてよい。
【0118】
本明細書において、特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び適用の単なる説明にすぎないことを理解されたい。本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、本発明の方法及び装置に対して様々な修正や変更が可能であることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内にある修正や変更を包含することを意図とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着性媒体と、プラズマ処理した高分子結合剤粒子と、を含む濾材。
【請求項2】
前記プラズマ処理した高分子結合剤粒子の表面が、オキシド、シリコン、又はその両方を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
前記吸着性媒体が、活性炭を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項4】
前記活性炭が、平均粒径が45マイクロメートル以上の粒子を含む、請求項3に記載の濾材。
【請求項5】
前記高分子結合剤粒子が、その表面にグラフトされた抗菌剤を更に含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項6】
前記高分子結合剤粒子が、前記媒体の5重量%〜30重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の濾材。
【請求項7】
前記濾材が、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、シストの捕集量の増加をもたらす効果がある、請求項1に記載の濾材。
【請求項8】
前記濾材が、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、揮発性有機成分の捕集量増加をもたらす効果がある、請求項1に記載の濾材。
【請求項9】
前記濾材が、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、梁強度が増加している、請求項1に記載の濾材。
【請求項10】
前記濾材が、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾材と比べ、親水性が増加している、請求項1に記載の濾材。
【請求項11】
前記高分子結合剤粒子が、ポリエチレンを含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項12】
前記ポリエチレンが、超高分子量ポリエチレンを含む、請求項11に記載の濾材。
【請求項13】
前記高分子結合剤粒子が、不規則な波型の表面を有する粒子を含む、請求項1に記載の濾材。
【請求項14】
前記不規則な波型の表面を有する粒子が、超高分子量ポリエチレンから形成される、請求項13に記載の濾材。
【請求項15】
前記高分子結合剤粒子が、実質的に球状の粒子を更に含む、請求項11に記載の濾材。
【請求項16】
活性炭と、前記活性炭に付着するプラズマ処理した超高分子量ポリエチレン結合剤と、を含む、濾過マトリクス。
【請求項17】
前記活性炭が50〜85重量%の範囲の量で存在し、前記ポリエチレン結合剤が10〜30重量%の範囲の量で存在する、請求項16に記載の濾過マトリクス。
【請求項18】
前記ポリエチレン結合剤が、不規則な波型の表面を有する粒子を含む、請求項16に記載の濾過マトリクス。
【請求項19】
前記ポリエチレン結合剤が、その表面にグラフトされた抗菌剤を更に含む、請求項16に記載の濾過マトリクス。
【請求項20】
前記濾材が、プラズマ処理した高分子結合剤粒子を含まない比較濾過マトリクスと比べ、親水性が増加している、請求項1に記載の濾過マトリクス。
【請求項21】
吸着性媒体及びプラズマ処理した高分子結合剤から形成された濾過マトリクスと、濾材を取り囲むハウジングと、流入口と、流出口と、を含む、濾過システム。
【請求項22】
前記吸着性媒体が活性炭を含み、前記高分子結合剤が不規則な波型の表面を有する超高分子量ポリエチレン粒子を含み、前記高分子結合剤の表面がオキシド、シリコン、又はその両方を含む、請求項21に記載の濾過システム。
【請求項23】
流体を、吸着性媒体及びプラズマ処理した高分子結合剤を含む濾材と接触させる工程を含む、濾過方法。
【請求項24】
前記濾材が、プラズマ処理した結合剤を含まない比較濾材と比べ、シストの捕集量が増加している、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
重力流濾過装置に前記濾材を設置することを更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
濾過システムの製造方法であって、
高分子結合剤粒子をプラズマで処理し、プラズマ処理した高分子結合剤を形成する工程と、
吸着性媒体と前記処理済み粒子とを接触させ、媒体混合物を形成する工程と、
前記媒体混合物を加熱して、濾過マトリクスを形成する工程と、
濾過ブロックをハウジング内に挿入して、濾過システムを形成する工程と、を含む、方法。
【請求項27】
前記プラズマ処理した高分子結合剤に抗菌剤をグラフトする工程を更に含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記処理工程が、
前記高分子結合剤粒子をチャンバ内に供給する工程と、
前記チャンバを真空にする工程と、
前記粒子をガスにさらす工程と、
無線周波数パルスを前記粒子に適応する工程と、を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記ガスが、シラン、酸素、又はその両方を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記グラフトする工程が、プラズマ処理した結合剤と抗菌剤とを水溶液中で混合して混合物を形成する工程と、前記混合物を乾燥する工程と、を含む、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2011−507683(P2011−507683A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539607(P2010−539607)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/085491
【国際公開番号】WO2009/085553
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】