説明

流体用フィルタシステム

【課題】フィルタ部材を完璧に位置固定でき交換が簡単かつ容易であって簡単、安価に形成できるフィルタシステムを提供すること。
【解決手段】流体容器(3)の中にフィルタ部材(1)が組み込まれ、フィルタ部材がフィルタ媒体(27)によって包囲される、流体を透過させる支持管(23)を有し、支持管が内部の流体室(21)を形成し、流体室が一端部において終端キャップ(39)によって閉鎖され、支持管が他端で流体容器の入口開口部(5)の端縁に固定可能である。終端キャップが終端キャップの端縁上にセンタリング部分を形成するラグ形状の突出部を有し、突出部が容器の内部に軸方向に延伸し、リブ構造と係合してフィルタエレメントを容器にセンタリングするU字形状を有し、終端キャップが端縁にフィルタ媒体をフィルタ媒体の終端領域内で包囲する端縁包囲フレームを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に油圧タンクの形式の、流体容器とその中に組み込み可能なフィルタ部材とを有し、そのフィルタ部材が、フィルタ媒体によって包囲された、流体を透過する支持管を有し、その支持管が内部の流体室を有し、その流体室が一方の端部において終端フラップによって閉鎖されており、その場合に支持管がその、開放した他方の端部において、流体容器の入口開口部の端縁に固定可能である、流体用フィルタシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフィルタシステムは、多数の構造および仕様において市場で入手できる。その場合に、それらは特に、油圧オイルのような、流体内の汚染物質を流体から濾過するために用いられる。油圧オイルの汚染は、それぞれの液圧設備の取り付けの際と駆動開始の際に行われ、この初期汚染に加えて、駆動中に、たとえば不十分なタンク通気、管通過、ピストンロッドシールなどに基づいて油圧タンクに汚染物質が侵入することによって、もたらされることがある。土砂運搬機械、パワーショベルなどのような、作業機械の油圧設備において、油圧タンク内にストックされている流体の内部に汚れがもたらされる限りにおいて、たとえばフィルタ部材を直接タンク内に組み込むことによって、油圧タンクの領域内で直接濾過を行わせることが、効果的であって、その場合にタンク内容物から取り出された油圧オイルが、汚れを濾過して除去するために、フィルタ部材のフィルタ媒体を直接貫流し、このようにして浄化された液体が、再びタンク内容物へ供給される。この解決においては、フィルタシステムは、タンク内容物のみを浄化する。しかしまた、フィルタシステムが然るべく濾過されて浄化された液体を作業機械の油圧循環内へ給送して、そこから液体をタンク内へ還流させる、解決も考えられ、その液体は、このように油圧循環内で循環する際に固体片による汚染を受けることもある。
【0003】
この種のフィルタシステムを充分に作動させるためには、複数の前提が満たされなければならない。1つには、特に動的な負荷(振動)の元でも、十分な作動信頼性に関して、タンクの内部でフィルタ部材の信頼できる位置固定が保証されなければならない。他方で、保守のなじみやすさを考えて、使用済されたフィルタ部材の交換が簡単かつ快適に可能でなければならない。既知のフィルタシステムにおいては、互いに矛盾する要請、すなわちフィルタ部材の十分に確実な係止と容易かつ快適に交換できること、は、同時には満たされない。既知の解決においては、フィルタ部材を交換する場合に、フィルタ部材のための係止装置の取り外しと取り付けに関連して手間と時間のかかる措置が実施される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題性に関して、本発明の課題は、フィルタ部材の完璧な位置固定にもかかわらず、その交換が簡単かつ容易に実施可能であって、さらにフィルタシステムが、特に簡単な、安価に形成できる構造を特徴とする、いわゆるイン−タンク−システムの形式の、フィルタシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この課題は、全体として特許請求項1の特徴を有する、フィルタシステムによって解決される。
【発明の効果】
【0006】
それによれば、本発明の本質的な特殊性は、フィルタ部材の終端キャップに設けられたセンタリング部分と流体容器の壁に結合された位置決め部分との間の協働において、フィルタ部材の端面側のセンタリングが形成されていることにある。従って、センタリング部分と位置決め部分の間の係合は、入口開口部を通してフィルタ部材を導入することによって、そしてセンタリング係合の解除は、入口開口部からフィルタ部材を取り出すことによって、行うことができる。終端キャップにおける、すなわち支持管の、入口開口部とは逆の端部における、フィルタ部材の端面のセンタリングが、入口開口部に設けられている、支持管の開口部側の端部の固定と協働して、駆動安全の位置固定、すなわち動的負荷が発生した場合でもフィルタ部材の確実な保持、をもたらす。簡単な構造にもかかわらず、本発明は、フィルタ部材の交換プロセスにおいて簡単に形成され、かつ解除される係止に基づいて、簡略化された保守の利点を提供する。
【0007】
流体容器がプラスチック材料から成形される、特に好ましい実施例において、位置決め部分は、流体容器の壁の変形によって形成することができる。この種の実施例は、たとえば容器がブロー成形方法において、あるいは既知の回転成形方法に従って形成されることにより、特に簡単かつ安価に形成することができ、その場合に油圧液用のタンクのような、比較的大きい容器のためには、たとえばPE−またはPA−プラスチック材料を利用することができる。
【0008】
センタリング部分がフィルタ部材の終端キャップの凹部によって形成され、位置決め部分を形成するために、流体容器の壁が、カップの形状の変形を有し、その底が隣接する側壁と共に、凹部とセンタリング係合するための、容器内部へ突出する栓状部を形成する、実施例においては、簡単な構造において、フィルタ部材の特に駆動安全の係止が保証されている。
【0009】
この種の実施例は、さらに、栓状部の、容器内部に位置する終端部分が栓状部直径を減少させる面取りを有するように、配置がなされる場合に、特に良好な操作性を特徴としている。それによって、フィルタ部材を容器内へ挿入する場合に、フィルタ部材の終端キャップが面取りされた栓状部に接して移動する場合に、特に注意を向ける必要なしに、確実なセンタリング係合が行われる。
【0010】
終端キャップ内の凹部によって形成されるセンタリング部分の代わりに、代替的に、センタリング部分は、フィルタ部材の終端キャップの突片状の突出部によって形成することができ、その突出部はU字プロフィール部分を有しており、それが、位置決め部分として用いられる、流体容器の壁に設けられた、内側へ突出する、U字プロフィール内へ嵌入するリブ構造と協働して、組み込まれたフィルタ部材をセンタリングする。
【0011】
終端キャップが、対応づけられたフィルタ媒体のための端縁フレームを形成する、最初に説明した実施例におけるのと同様に、第2の実施例においても、突出部を、対応づけられたフィルタ媒体の終端領域のための端縁フレームを形成する、終端キャップの終端縁に取り付けることができる。
【0012】
第1の実施例の、位置決め部分として用いられる栓状部と同様に、第2の実施例の、位置決め部分を形成するリブ構造も、容器の統合された壁部分として形成することができ、その場合にリブ構造は、流体容器の、容器内部へ引き込まれた細長い壁部分として形成することができ、かつその場合に、引き込まれた壁部分の外側が、流体容器の壁部分内に、リブ構造の方向に延びる溝を形成し、その溝は、流体容器の2つの互いに隣接する側において開放している。それによって、容器内部にリブが形成され、そのリブは、容器底から距離をもって、容器の側壁から離れる方向に延び、従って容器上側から導入されるフィルタ部材の挿入方向に対して横方向に延びる。
【0013】
本発明の対象は、請求項10の特徴を有する、本発明に基づくフィルタシステムのためのフィルタ部材でもある。
【0014】
以下、図面に示す実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に基づくフィルタシステムの実施例を、やや図式的に簡略化して示す縦断面図である。
【図2】図1に符号IIで示す領域を、図1に比較して著しく拡大して示す部分表示である。
【図3】本発明に基づくフィルタシステムの第2の実施例を、破断して図式的に簡略化して示す斜視図である。
【図4】図3の切断線IV−IVに沿って、図3に比較して拡大して示す部分断面図である。
【図5】図3と図4の実施例のフィルタ部材のみを、やや図式的に簡略化して示す縦断面図である。
【図6】フィルタ部材を、図5に比較してやや拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面において、図1と2は、いわゆるイン−タンク−フィルタシステムの形式の、本発明に基づくフィルタシステムの第1の実施例を示しており、全体を符号1で示すフィルタ部材が、油圧タンク3内に組み込まれている。これは、燃料タンクであって、既知の回転成形方法(Schaab/Stockhert,“Kunststoff Maschinenfuehrer”、p.561−564を参照)に従って、比較的大型の容器に適したプラスチック材料から形成されており、その場合に回転成形のプロセスにおいて上側に入口開口部5が形成されている。図示の例において、入口開口部5は、中央の垂直軸7(成形方法に関して回転軸)に対して同心である。タンク3の、開口部5とは反対側の底9に、同様に回転成形方法において、軸7に対して同心の、タンク3の内部11内へ突出する栓状部13が形成されており、それがカップの形状を有しており、そのカップの底15が、隣接する側壁17と共に、軸7に対して同心の位置決めボディを形成している。図2からもっともはっきりとわかるように、栓状部13の側壁17は、底15に隣接する終端領域内に面取り部19を有しており、それが、終端領域において栓状部13の外径を減少させている。
【0017】
フィルタ部材1は、この種のフィルタ装置において一般的なように、内部の流体室21を形成する支持管23を有しており、その支持管は、金属またはプラスチックから形成されており、図2から明らかなように、流体通路を有しており、そのうちの1つだけが、図2に符号25で示されている。支持管23は、外側をフィルタ媒体27によって包囲されており、そのフィルタ媒体は、それぞれの濾過プロセスに適した、それ自体知られた構造を有している。フィルタ部材1の、タンク3内へ組み込む場合に入口開口部5に対応づけられる端部において、支持管23は、フィルタ媒体27の対応する端部と共に、エレメントカバー29と結合されている。この例において、アルミニウム合金からなるダイカスト部品である、カバー29は、図示されていない流体接続端を形成するための、中央の開口部31を有している。カバー29の、タンク3内へ組み込む場合にタンク内部11へ向けられる下側において、開口部31が同心の環状溝33によって包囲されている。この環状溝33が、支持管23とフィルタ媒体27の該当する端部のためのシートを形成し、その場合にシート内には、エポキシ接着剤による結合が存在する。カバー29は、外側においてフランジ端縁35を形成し、そのフランジ端縁がタンク3の外側に取り外しできるように取り付け可能であって、その場合にフランジ端縁35は、シール部材37のためのフレームを形成する。
【0018】
フィルタ部材1の、開口部31とは逆の端部は、終端キャップ39によって閉鎖されている。この終端キャップは、流体室21内へ延びる凹部41が形成されるように、成形されており、その凹部の側壁43が、支持管23の終端部分の内側に沿って延びている。終端キャップ39の、凹部41の側壁43に連続する部分が、端縁フレーム45を形成しており、それが、支持管23とフィルタ媒体27の端部を把持している。
【0019】
すでに述べたように、記載の構造においては、フィルタ部材1の交換は、極めて簡単である。というのは、フィルタ部材1を組み込む場合に、フィルタ部材を、タンク3の入口開口部5を通して挿入する運動の経過において挿入して、位置決め部分として用いられる栓状部13上にかぶせれば済むからであり、その場合にセンタリング部分として作用する、終端キャップ39の凹部41と位置決め部分として用いられる栓状部13との間に係合が形成される。栓状部13の端部側に設けられている面取り部19に基づいて、挿入プロセスにおいてある程度の整合エラーが存在する場合でも、確実なセンタリング係合が行われる。同時に、フィルタ部材1が、カバー29とは逆の側でセンタリングされることによって、タンク3が動的な負荷、たとえば揺れや振動にさらされた場合でも、タンク内におけるフィルタ部材の完璧な位置固定が保証される。
【0020】
図3から6は、第2の実施例を示している。図面において、第2の実施例の、第1の実施例に相当する部分は、第1の例の場合におけるのと同じ参照符号で示されている。第1の実施例に対する差違は、フィルタ部材1の終端キャップ39に設けられているセンタリング部分とそれに応じて異なるように形成された、タンク3の壁に設けられた位置決め部分の構造が異なるだけである。第1の実施例において、底9に、タンク3の壁から内側へ向かって変形されているカップ形状の栓状部13の代わりに、第2の実施例においては、タンク3の壁の変形が、側壁49から始まってタンク3の内部11へ突出する、リブ形状の構造47(図3を参照)の形式で設けられており、その場合にその構造は、底9から距離をおいてまっすぐに延びるリブを形成している。タンク3の壁のこの変形が、その外側に、溝51の形式の狭い凹部を形成しており、その溝は底9の外側と側壁49の外側において開放している。
【0021】
リブ構造47上にかぶせることのできるセンタリング部分として、フィルタ部材1において同様に、フィルタ媒体11と支持管23の端部のための端縁フレームを形成する、終端キャップ39に、突出部53が設けられており、その突出部は、U字プロフィール部分55が形成されるように、突片状に形成されている。図3と4から明らかなように、突出部53は、U字状プロフィール部分55内へ嵌入することによってセンタリング係合が行われるように、リブ形状の構造47上にかぶせることができる。上述した実施例におけるのと同様に、図3から6の例においても、フィルタ部材1をタンク3の入口開口部5を通して導入する際に、センタリング部分として用いられる突出部53が、位置決め部分として用いられる、リブ形状の構造47上にかぶせられることによって、部材交換のプロセスが、簡単、快適かつ確実に構成される。センタリング係合が、タンク3の内部11内のフィルタ部材1の所望の位置固定をもたらす。突出部53は、終端キャップ39に一体的に形成することができ、あるいは別体の部品として、たとえばエポキシ接着剤によって、終端キャップ39と結合することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用のフィルタシステムであって、
流体容器(3)であって、入口開口部(5)と容器内部に軸方向に突出するリブ構造で形成され位置決め部分(47)を有する壁を有する、流体容器(3)と、
流体容器(3)内に組み込まれるフィルタ部材(1)であって、フィルタ媒体(27)によって包囲される、流体を透過する支持管(23)を有し、前記支持管が内部の流体室(21)を形成し、前記流体室が一方の端部において終端キャップ(39)によって閉鎖されており、前記支持管(23)がその、他方の開放した端部において、流体容器(3)の入口開口部(5)の端縁に係合され、
前記終端キャップ(39)が終端キャップ(39)の端縁上にセンタリング部分を形成する突出部(53)を有し、
前記突出部(53)が軸方向に延伸し、前記リブ構造と係合してフィルタ部材(1)を容器内にセンタリングするU字形状を有し、
前記終端キャップ(39)が端縁にフィルタ媒体(27)の終端領域を包囲する端部包囲フレーム(45)を有する、フィルタ部材と、
を具備する、
ことを特徴とする流体用フィルタシステム。
【請求項2】
前記流体容器(3)が、油圧タンクである、ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタシステム。
【請求項3】
前記リブ構造は容器の内側に引き伸ばして延伸された壁部分を有し、壁部分はその外側に溝を形成しており、前記溝は前記リブ構造の方向に延伸し、前記溝は容器の隣り合う2つの側において開放している、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタシステム。
【請求項4】
前記容器がモールドプラスチックで形成され、
位置決め部分が容器の壁を変形して形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−96230(P2012−96230A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−272058(P2011−272058)
【出願日】平成23年12月13日(2011.12.13)
【分割の表示】特願2009−521119(P2009−521119)の分割
【原出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(500082609)ハイダック フィルターテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (26)
【Fターム(参考)】