説明

流体管路切換装置および内視鏡

【課題】内視鏡に利用される流体管路切換装置であって、ピストンの着脱を行う際に、パッキンがシリンダに形成された接続孔に接触することを防止して、パッキンが損傷することを防止することができる流体管路切替装置を提供する。
【解決手段】ピストン76と、複数のシール部材82を有するボタン68と、ピストンの挿入方向に段階的に縮径し、側面に流体管路が接続される接続孔が形成されるシリンダ72と、ピストンの下端位置を規定するためのストッパとを有し、複数のシール部材が、先端側に向かって段階的に細くなり、シリンダ内を軸線方向に分離するものであり、かつ、シール部材の径は、ピストンの、シール部材が摺接する段の上の段の内径よりも小さく、かつ、各流体管路とシリンダとを接続するための接続孔の位置はそれぞれ、対応する段に摺接するシール部材の下端位置よりも先端側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の送気/送水ボタン等に用いられる流体管路切換装置、および、この流体管路切換装置を用いる内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、内視鏡は、人体等の生体内に挿入されて、臓器の診断や検査等に利用されている。
内視鏡は、基本的に、人体に挿入される挿入部、挿入部の操作や送気/送水などの内視鏡の操作を行なう操作部、送気手段、吸水手段、吸引ポンプ等と接続されるコネクタ(LG(Light Guide)コネクタ)、および、コネクタと操作部および挿入部を接続するユニバーサルコード(LG軟性部)等から構成される。
また、挿入部は、CCDセンサを有する撮像ユニットや照明レンズ等が組み込まれた先端部と、基端側の長尺な軟性部と、先端部と軟性部との間に設けられる、内視鏡の操作部での操作に応じて屈曲されるアングル部とを有する。
【0003】
挿入部の先端部には、前述のように、CCDセンサ等を有する撮像ユニット、ライトガイド(光ファイバ)の先端部およびライトガイドが伝播した光を検査部位に照射するための照明レンズ(観察窓)等が組み込まれる。
さらに、挿入部の先端部には、生検鉗子等の処置具を被処置部に挿入するための鉗子孔(鉗子チャンネル)や、照明レンズや被処置部の洗浄、体腔を膨らませて観察視野を広げるための送気等を行うための、送気/送水ノズル(送気チャンネル)も設けられる。
【0004】
送気/送水ノズルを用いた送気/送水の機能を有する内視鏡では、一般的に、コネクタからユニバーサルコード、操作部および挿入部を通って先端部に至るまで、可撓性のチューブが挿通される。このチューブを通して、コネクタに接続された送気源や吸水源から供給された空気や水を、挿入部の先端部に供給し、射出する。
また、操作部には、このチューブと連通する(流体)管路切換装置が設けられており、この管路切換装置を操作することによって、送気および送水のon/offを行えるようになっている。
【0005】
この管路切換装置は、一例として、特許文献1や特許文献2に示されるように、前述のコネクタから先端部まで挿通されるチューブに接続されるシリンダと、このシリンダの軸線方向に移動自在に挿入されるピストンを含む、医師が操作を行うためのボタンとから構成される。
【0006】
これらの管路切換装置では、ボタンのピストンをシリンダに挿入して、ボタン受けを内視鏡操作部の所定位置に固定することにより、管路切換装置が構成され、かつ、内視鏡に取付けられる。
内視鏡の管路切換装置では、ボタンの押圧(押下)や開放、ボタンおよびボタン頭に形成された空気排出孔の閉塞や開放等の、ボタン頭を用いたボタンの操作によって、送気のon/off、送水のon/off、送気と送水との切換等が行えるようになっている。
【0007】
また、ピストンの外周には、シリンダとピストンとの間の空間を軸線方向に分離する、略円筒状のパッキン(シール部材)が取付けられる。
管路切換装置では、このパッキンによって、シリンダとピストンとの間の空間で形成される水および空気の流路を分離し、かつ、ボタンの操作に応じて、シリンダに接続されるチューブに対する管路切換装置内での流路の切換を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−294714号公報
【特許文献2】特開2005−006822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような管路切替装置においては、ボタンの操作によってピストンが移動する際に、パッキンがシリンダに形成された接続孔(流体管路が接続される孔)に接触すると、パッキンに傷がついてしまう。そのため、特許文献2のように、ボタンの操作によってパッキンが移動する領域とは異なる位置に接続孔を形成して、パッキンが接続孔に接触しないようにすることが行われている。
【0010】
ところで、内視鏡装置においては、内視鏡による検査を行うたびに内視鏡の洗浄を行う必要がある。内視鏡の洗浄を行う際には、ピストン(ボタン)をシリンダから取り外して洗浄を行い、洗浄後、再度ピストン(ボタン)をシリンダに組み付ける。
内視鏡装置においては、ピストンの着脱を行う頻度が多いため、内視鏡の洗浄を行うためにピストンの着脱を行う際に、パッキンが、シリンダの内径に形成された接続孔に接触すると、やはり、パッキンに傷がついてしまい、シール性能が低下したり、パッキンが切れてしまい、適切な管路の切り替えができないおそれがある。
しかしながら、ピストンの着脱の際に、パッキンがシリンダに形成された接続孔に接触することについては考慮されていなかった。
【0011】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、内視鏡の送気/送水ボタン等に利用される流体管路切換装置であって、ピストンの着脱を行う際に、ピストンのパッキンが、シリンダに形成された接続孔に接触することを防止して、パッキンが傷ついて、シール性能が低下したり、パッキンが切れてしまうことを防止して、適切に管路の切り替えを行うことができる、内視鏡用の流体管路切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、内視鏡の流体管路に接続されて複数の流体管路の連通状態を切り替える流体管路切替装置であって、ピストンと、前記ピストンに取り付けられる複数のシール部材を有するボタンと、前記ピストンが挿入され、前記ピストンの挿入方向に段階的に縮径し、側面に前記複数の流体管路をそれぞれ接続される接続孔が形成されるシリンダと、前記ピストンを前記シリンダ内に押し込んだ際の下端位置を規定するためのストッパとを有し、前記複数のシール部材が、前記ピストンの挿入方向の先端側に向かって段階的に細くなり、前記シリンダ内面とピストン外面との間で前記シリンダ内を軸線方向に分離するものであり、かつ、前記シール部材の径は、前記ピストンの、前記シール部材が摺接する段の上の段の内径よりも小さく、かつ、各流体管路と前記シリンダとを接続するための前記接続孔の位置はそれぞれ、対応する段に摺接する前記シール部材の下端位置よりも先端側にあることを特徴とする流体管路切替装置を提供する。
【0013】
このような本発明において、前記ピストンが、前記ピストンの軸方向に離間して配置され、前記先端側に配置されるものほど小さくなる4つの前記シール部材を有し、前記シリンダが、前記ピストンの4つの前記シール部材がそれぞれ摺接する、前記先端側の第1の領域、前記第1の領域に隣接し前記第1の領域よりも大径の第2の領域、前記第2の領域に隣接し前記第2の領域よりも大径の第3の領域、および、前記第3の領域に隣接し前記第3の領域よりも大径の第4の領域を有することが好ましい。
また、前記複数の流体管路が、4つの流体管路であって、それぞれ、前記底部、前記第2の領域、前記第3の領域、前記第4の領域に接続されるのが好ましい。
また、前記ピストンが、前記先端側に底部を有し、前記第1の領域と前記底部との間の領域は、前記第1の領域よりも大径に形成されていることが好ましい。
また、前記ストッパは、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記ピストンの前記下端位置を規定するものであり、かつ、前記下端位置において、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記第2の領域と前記第3の領域との間を気密に分離するシール部材であることが好ましい。
また、前記ピストンが、前記シリンダの内面に常時接触して、前記ピストンを前記シリンダの軸線方向にのみ移動するようにガイドするスライダを有することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、体腔内に挿入される挿入部、この挿入部の先端部から流体を射出するための複数の管路、および、前記先端部から射出する流体を変更するための流体管路切換装置を有し、前記挿入部を体腔内に挿入することにより被観察部を観察する内視鏡であって、前記流体管路切換装置が、ピストンと、前記ピストンに取り付けられる複数のシール部材を有するボタンと、前記ピストンが挿入され、前記ピストンの挿入方向に段階的に縮径し、側面に前記複数の流体管路をそれぞれ接続される接続孔が形成されるシリンダと、前記ピストンを前記シリンダ内に押し込んだ際の下端位置を規定するためのストッパとを有し、前記複数のシール部材が、前記ピストンの挿入方向の先端側に向かって段階的に細くなり、前記シリンダ内面とピストン外面との間で前記シリンダ内を軸線方向に分離するものであり、かつ、前記シール部材の径は、前記ピストンの、前記シール部材が摺接する段の上の段の内径よりも小さく、かつ、各流体管路と前記シリンダとを接続するための前記接続孔の位置はそれぞれ、対応する段に摺接する前記シール部材の下端位置よりも先端側にあることを特徴とする内視鏡を提供する。
【0015】
このような本発明の内視鏡において、前記流体管路切換装置の前記ピストンが、前記ピストンの軸方向に離間して配置され、前記先端側に配置されるものほど小さくなる4つの前記シール部材を有し、前記シリンダが、前記ピストンの4つの前記シール部材がそれぞれ摺接する、前記先端側の第1の領域、前記第1の領域に隣接し前記第1の領域よりも大径の第2の領域、前記第2の領域に隣接し前記第2の領域よりも大径の第3の領域、および、前記第3の領域に隣接し前記第3の領域よりも大径の第4の領域を有するのが好ましい。
また、前記複数の流体管路が、4つの流体管路であって、それぞれ、前記底部、前記第2の領域、前記第3の領域、前記第4の領域に接続されることが好ましい。
また、前記ピストンが、前記先端側に底部を有し、前記第1の領域と前記底部との間の領域は、前記第1の領域よりも大径に形成されていることが好ましい。
また、前記ストッパは、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記ピストンの前記下端位置を規定するものであり、かつ、前記下端位置において、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記第2の領域と前記第3の領域との間を気密に分離するシール部材であることが好ましい。
また、前記ピストンが、前記シリンダの内面に常時接触して、前記ピストンを前記シリンダの軸線方向にのみ移動するようにガイドするスライダを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上述のように、本発明の流体管路切換装置は、内視鏡の送気/送水ボタン等に利用される物であり、複数の流体管路が接続されるシリンダと、軸線方向に移動可能な状態でシリンダに挿入されるピストン(ボタン)とからなる。
本発明は、このような内視鏡用の流体管路切換装置において、ピストンと、複数のシール部材を有するボタンと、ピストンの挿入方向に段階的に縮径し、側面に流体管路が接続される接続孔が形成されるシリンダと、ピストンの下端位置を規定するためのストッパとを有し、複数のシール部材が、先端側に向かって段階的に細くなり、シリンダ内を軸線方向に分離するものであり、かつ、シール部材の径は、ピストンの、シール部材が摺接する段の上の段の内径よりも小さく、かつ、各流体管路とシリンダとを接続するための接続孔の位置はそれぞれ、対応する段に摺接するシール部材の下端位置よりも先端側にある構成とする。
【0017】
そのため、本発明によれば、ピストンの着脱を行う際に、ピストンのパッキンが、シリンダに形成された接続孔に接触することを防止することができる。そのため、パッキンが傷ついて、シール性能が低下したり、パッキンが切れてしまうことを防止することができ、適切に管路の切り替えを行うことができる。また、パッキンの損傷を防止することができるので、パッキンの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の流体管路切換装置を利用する本発明の内視鏡の一例を概念的に示す図である。
【図2】図1に示す内視鏡の挿入部の先端部の概念図である。
【図3】内視鏡内の流体管路を説明するための概念図である。
【図4】(A)は、図1に示す内視鏡に用いられる送気/送水ボタンのボタンおよびボタン受けの断面を概念的に示す図、(B)は、この送気/送水ボタンの断面を概念的に示す図である。
【図5】(A)および(B)は、図1に示す内視鏡に用いられる送気/送水ボタンの作用を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の流体管路切換装置および内視鏡について、添付の図面に示される好適実施例を基に、詳細に説明する。
【0020】
図1に、本発明の流体管路切換装置を利用する本発明の内視鏡の一例を概念的に示す。
図1に示す内視鏡10は、体腔(消化管、耳鼻咽喉など)等の治療や検査を行なう処置部に挿入されて、体内の観察、静止画や動画の撮影、生体組織の採取などの処置等を行なうものである。
【0021】
内視鏡10は、CCDセンサを用いて検査部位の画像を撮像(撮影)して、検査部位の観察、動画や静止画の撮影を行なう、いわゆる電子スコープ型の内視鏡である。この内視鏡10は、通常の内視鏡と同様に、挿入部12、操作部14、ユニバーサルコード16、LGコネクタ18、および、ビデオコネクタ20を有して構成される。
また、挿入部12は、体腔内等の検査部位に挿入される、長尺な部位で、公知の内視鏡と同様に、先端(挿入側の先端=操作部14と逆端)の先端部24と、アングル部26と、軟性部28とを有する。
【0022】
操作部14は、内視鏡10の操作を行なう部位である。
操作部14には、通常の内視鏡と同様に、鉗子口32、先端部24からの吸引を行なうための吸引ボタン34、先端部24から送気および送水を行なうための送気/送水ボタン36等が配置される。
この送気/送水ボタンは、本発明の内視鏡用の流体管路切換装置である。内視鏡10は、操作部14に設けられる送気/送水ボタン36として、本発明の流体管路切換装置を利用する以外、基本的に、公知の内視鏡である。
【0023】
操作部14には、アングル部26を左右方向に湾曲させるLRツマミ38、同上下方向(前記左右と直交する方向)に湾曲させるUDツマミ40、アングル部26を湾曲状態で保持するためのLRブレーキ42およびUDブレーキ46も設けられる。
さらに、電子スコープである内視鏡10には、これらの操作手段以外にも、ズームスイッチ、静止画の撮影スイッチ、動画の撮影スイッチ、フリーズスイッチ等、撮像ユニット(CCDセンサ)を用いて画像を観察/撮影する内視鏡が有する、各種のスイッチが設けられている。
【0024】
LG(Light Guide)コネクタ18は、内視鏡を使用する施設における、吸引源、送水源、送気源等と、内視鏡10とを接続するための部位である。そのため、LGコネクタ18には、内視鏡10と吸引源(吸引手段)とを接続するための吸引コネクタ48、同送水源(給水源=吸水手段)と接続するための送水コネクタ50、同送気源(送気手段)と接続するための送気コネクタ52等が設けられる。
また、LGコネクタ18には、照明光源を接続するためのLG棒54や、電子メスを使用する際にSコードを接続するS端子等が設けられる。
【0025】
前述のように、内視鏡10は電子スコープであるので、LGコネクタ18には、プロセッサ装置と内視鏡10とを接続するためのビデオコネクタ20が接続される。CCDセンサ52が撮像した画像(画像データ)や、操作部14における各種の指示は、前述のデータケーブル78によって、このLGコネクタ18を経てビデオコネクタ20からプロセッサ装置等に出力される。
【0026】
ユニバーサルコード(LG軟性部)16は、LGコネクタ18と操作部14とを接続する部位である。
このユニバーサルコード16には、送水コネクタ50に接続する送水チャンネル50L、送気コネクタ52に接続する送気チャンネル52L、吸引コネクタ48に接続する吸引チャンネル48L、ライトガイド、データケーブル等が収容/挿通される。
【0027】
前述のように、内視鏡10の挿入部12は、先端部24、アングル部26、および、軟性部28を有して構成される。
アングル部(湾曲部)26は、先端部24を目的位置に挿入したり目的位置に位置させるために、操作部14におけるLRツマミ38等の操作によって上下および左右(直交する4方向)に湾曲する領域である。
軟性部26は、先端部24およびアングル部26と、操作部14とを繋ぐ部位で、検査部位への挿入に対して十分な可撓性を有する長尺なものである。
【0028】
図2に先端部24の正面(挿入部12の先端面)を概念的に示す。
図示例の内視鏡10において、先端部24には、撮像ユニットが有する撮影レンズ58および照明レンズ60が組み込まれている。
CCDセンサや撮影レンズ58等の撮影に必要な素子や光学部品等を組み込んでユニット化したものである。撮像ユニットが撮影した画像を送るための信号線は、挿入部12(アングル部26および軟性部28)、操作部14、ユニバーサルコード16、LGコネクタ18を介して、ビデオコネクタ20まで挿通される。
照明レンズ60は、ライトガイド(例えば細い光ファイバの束)が伝播した光を、被検査部に照射するためのレンズである。ライトガイドは、挿入部12(同前)、操作部14、ユニバーサルコード16を挿通して、LGコネクタ18のLG棒54まで挿通される。
【0029】
また、挿入部12の先端部24には、鉗子孔72、送気および送水を行うための送気/送水ノズル64が形成される。
【0030】
図3に、内視鏡10における流体管路を概念的に示す。
前述の鉗子口32は、鉗子チャンネル32Lによって鉗子孔72に連通する。
LGコネクタ18の吸引コネクタ48は、吸引チャンネル48Lに接続される。吸引チャンネル48Lは、LGコネクタ18から、ユニバーサルコード16を挿通して操作部14に至り、操作部14において、吸引ボタン34に接続される。さらに、吸引チャンネル48Lは、吸引ボタン34から、鉗子チャンネル32Lに接続される。
【0031】
また、LGコネクタ18の送水コネクタ50は、送水チャンネル50Lに接続される。送水チャンネル50Lは、LGコネクタ18から、ユニバーサルコード16を挿通して操作部14に至り、操作部14において送気/送水ボタン36に接続される。さらに、送水チャンネル50Lは、送気/送水ボタン36から、送気/送水チャンネル64Lに接続される。
他方、LGコネクタ18の送気コネクタ52は、送気チャンネル52Lに接続される。送気チャンネル52Lも、ユニバーサルコード16を挿通して操作部14に至り、操作部14において送気/送水ボタン36に接続される。さらに、送気チャンネル52Lも、送気/送水ボタン36から、送気/送水チャンネル64Lに接続される。
送水チャンネル50Lおよび送気チャンネル52Lが接続された送気/送水チャンネル64Lは、挿入部12(軟性部28およびアングル部24)を挿通して、挿入部12の先端部24において、送気/送水ノズル64に接続される。
【0032】
図4に、この送気/送水ボタン36の概略断面図を示す。
この送気/送水ボタン36は、基本的に、ボタン68と、ボタン受け70と、シリンダ72とから構成される。なお、図4において、(A)は、ボタン68およびボタン受け70を示し、(B)は、シリンダ72も含んで、送気/送水ボタン36が内視鏡10の操作部14に組み込まれた状態を示す。
【0033】
図4(B)に示すように、シリンダ72は、下面が閉塞する、金属製の略円筒形のものである。なお、本発明において、『下』とは、内視鏡10(操作部14)の内部側(すなわち、ボタン68の押圧方向)であり、『上』とは、内視鏡10の外部側(すなわち、同押圧からの開放方向)である。
内視鏡10は、操作部14の所定位置に円形の貫通孔を形成し、この貫通孔を囲んで円筒状の壁部14aが立設される。この壁部14aの内面には、ネジ山が形成されている。他方、シリンダ72の上端部外面にも、ネジ山が形成されている。内視鏡10においては、この壁部14aの内面に、シリンダ72の上端部の外面を螺合することにより、シリンダ72を操作部14に固定する。
【0034】
シリンダ72は底部を有し、その内部は、軸線方向の下方に向かって、4段階で、漸次、径が小さくなっており(大径領域72a、中径領域72b、小径領域72cおよび最小径領域72d)、最下端部で、径が大きくなっている(水導入部72e)。
なお、シリンダ72と、後述するボタン68のピストン76の軸線方向(中心線方向)は、一致しているので、以下の説明では、この方向を単に『軸線方向』とも言う。
【0035】
シリンダ72において、最下端部の水導入部72eには、水の流入口50iが形成されて、此処に送水チャンネル50Lの入り側が接続される。また、小径領域72cの下端部には、水の流出口50jが形成されて、此処に送水チャンネル50Lの出側が接続される。
さらに、シリンダ72において、中径領域72bの下端部には、空気の流入口52iが形成されて、此処に送気チャンネル52Lの入り側が接続される。また、大径領域72aには、空気の排出口52jが形成されて、此処に送気チャンネル52Lの出側が接続される。
【0036】
ボタン68は、ピストン76とボタン頭78とから構成される。
ピストン76は、金属製の略円柱の物で、下端部近傍が小径部76aとなっている。ピストン76は、上端の一部を除いて、軸線方向に移動可能にシリンダ72に収容される。
また、ピストン76の中心には、軸線方向に延在して長穴76bが形成(穿孔)されている。この長穴76bは、図4(B)に示す、ボタン68が押圧されていない状態では、下端がシリンダ72の中径領域72bの下端部近傍に位置するように、形成される。
また、長穴76bの下端は、ボタン68が最も下まで押圧された際には、シリンダ72の小径領域72cに位置するように形成される(図5(B)参照)。
【0037】
なお、以下の説明では、便宜的に、ボタン68が押圧されていない状態を『定常位置』、ボタン86が最も下まで押圧された状態を『押圧位置(下端位置)』とも言う。
【0038】
ピストン76には、長穴76bまで貫通するように、軸線方向に離間して2つの貫通孔76cおよび76dが形成されている。
上方の貫通孔76cは、定常位置では、シリンダ72の大径部72aに位置し、押圧位置では、シリンダ72の中径領域72bに位置するように、形成される。
下側の貫通孔76dは、長穴76bの下端部に形成される。前述のように、定常状態では、長穴76bの下端部は中径領域72bの下端部に位置する。従って、この下側の貫通孔76dは、押圧位置では、シリンダ72の小径領域72cに位置する。
【0039】
ピストン76の下端部には、軸線方向に離間して、2つのリブ80aが全周に形成される。また、このリブ80aの間には、外周に凸部を有する円筒状のパッキン(シール部材)82aが嵌入/保持される。
【0040】
パッキン82aは、ゴムや弾性を有する樹脂で形成される。このパッキン82aは、シリンダ72の内面全周に当接することにより、シリンダ72内面とピストン76外面との間の空間を軸線方向に液密および気密に分離する。
また、パッキン82aは、少なくともシリンダ内面との当接部が、定常位置および押圧位置において、以下に示す所定位置に位置するように形成されればよい。
この点に関しては、他のパッキン(シール部材)82b〜82dも同様である。
【0041】
リブ80aおよびパッキン82aは、定常位置ではパッキン82aがシリンダ72の最小径領域72dに位置し、押圧位置ではパッキン82aが同水導入部72eに位置するように、形成される。
また、パッキン82aの外径(最大径)は、最小径領域72dの内径よりも大きく、かつ、水導入部72eの内径よりも小さい。すなわち、パッキン82aは、最小径領域72dをシリンダ72内面とピストン76外面との間の空間を、軸線方向に液密および気密に分離する。
【0042】
なお、以下の説明では、便宜的に、シリンダ72内面とピストン76外面との間の空間を『シリンダ72内』、パッキンによる、このシリンダ72内の軸線方向の液密および気密の分離を『軸線方向に分離』とも言う。
【0043】
ピストン76の小径部76aの直上には、全周に凹部80bが形成される。この凹部80bには、外周に凸部を有する円筒状のパッキン82bが嵌入/保持される。
凹部82bおよびパッキン82bは、パッキン82bが、常に(定常位置および押圧位置の何れでも)、シリンダ72の小径領域72cに位置するように、形成される。また、パッキン82bの外径は、小径領域72cの内径よりも大きい。すなわち、パッキン82bは、シリンダ72内の小径領域72cを軸線方向に分離する。
【0044】
ピストン76の凹部80bの上で、かつ、貫通孔76cと76dとの間には、全周に、凹部80cが形成される。この凹部80cには、外周に凸部を有する円筒状のパッキン82cが嵌入/保持される。
凹部80cおよびパッキン82cは、パッキン82cが常に中径領域72bに位置するように形成される。パッキン82cの外径は、中径領域72bの内径よりも大きい。すなわち、パッキン82cは、シリンダ72内の中径領域72bを軸線方向に分離する。
また、凹部80cおよびパッキン82cは、押圧位置では、パッキン82cの下端部が、シリンダ72の中径領域72bと小径領域72cとの境目となる段差に当接して、この位置で、シリンダ72内を軸線方向に分離するように形成される。
すなわち、パッキン82cは、ボタン86(ピストン76)の押圧位置(下端位置)を規定するためのストッパの役割も有する。
【0045】
ピストン76の凹部80cおよび上側の貫通孔76cの上には、上下端にリブを有するフランジ部80dが形成される。このフランジ部80dのリブの間には、外周に凸部を有する円筒状のパッキン82dが嵌入/保持される。
フランジ部80およびパッキン82dは、パッキン82dが常にシリンダ72の大径領域72aに位置するように形成される。また、パッキン82dの外径は、大径領域72aの内径よりも大きい。すなわち、パッキン82dは、シリンダ72内の大径領域72aを軸線方向に分離する。
【0046】
前述のように、シリンダ72の内部は、上から、大径領域72a、中径領域72b、小径領域72cおよび最小径領域72dと、段階的に、縮径している。
また、上述のように、ピストン76に装着されるパッキンは、最上部のパッキン82dが大径領域72aを、その下のパッキン82cが中径領域72bを、その下のパッキン82bが小径領域72cを、その下のパッキン82aが最小径領域72dを、ぞれぞれ、軸線方向に分離する。
【0047】
すなわち、図示例においては、シリンダ72内が、下方に向けて段階的に縮径し、ピストン76に取り付けられるパッキンも、これに応じて、下方に向けて外径が小さくなる。
【0048】
前述のとおり、内視鏡装置においては、内視鏡による検査を行うたびに内視鏡の洗浄を行う必要がある。内視鏡の洗浄を行う際には、ピストン(ボタン)をシリンダから取り外して洗浄を行い、洗浄後、再度ピストン(ボタン)をシリンダに組み付ける。
このように、内視鏡装置においては、ピストンの着脱を行う頻度が多いため、内視鏡の洗浄を行うためにピストンの着脱を行う際に、パッキンが、シリンダの内径に形成された接続孔に接触すると、パッキンに傷がついてしまい、シール性能が低下したり、パッキンが切れてしまい、適切な管路の切り替えができないおそれがある。
【0049】
これに対して、本発明は、シリンダ72内が、下方に向けて段階的に縮径し、ピストン76に取り付けられるパッキンも、これに応じて、下方に向けて外径が小さくなる形状とし、かつ、流体管路の接続位置をそれぞれ対応する段に摺接するパッキンの押圧位置(下端位置)よりも下側(先端側)にある構成とすることにより、ボタン68(ピストン76)をシリンダ72に組み込む際に、パッキンが、シリンダ72の内面に形成される流入口50i、52i、流出口50j、および、排出口52j(すなわち、接続孔)の角部に摺接することを防止できる。
すなわち、この構成によれば、内視鏡10の洗浄等のためにボタン68を取り外して、洗浄終了後などに、再度、ボタン68を取り付ける際に、シリンダ72内の接続孔(孔の角部等)でパッキンを損傷することを防止して、シール性能が低下することやパッキンが切れてしまうことを防止することができ、適切に管路の切り替えを行うことができる。また、パッキンの損傷を防止することができるので、パッキンの長寿命化を図ることができる。
【0050】
ピストン76の、凹部80b(パッキン80b)と長穴76bの下部との間には、全周に凹部84が形成される。この凹部84には、略円筒状のスライダ86が嵌入/保持される。
スライダ86は、硬質の樹脂製の部材である。また、凹部84およびスライダ86は、スライダ86が、常にシリンダ72の小径領域72cに位置するように、形成される。
【0051】
ここで、スライダ86は、シリンダ76の小径領域72cに挿入可能で、かつ、小径領域72cの内径と略同一な外径を有する。従って、スライダ86は、ボタン86が押圧/開放された際に、シリンダ72の小径領域72c内周面の全周に当接して、軸線方向に摺接して移動する。
すなわち、スライダ86は、ボタン86(ピストン76)の移動をガイドするガイド部材であり、ボタン86が軸線方向のみに移動するように、ボタン86をガイドする。
【0052】
さらに、ピストン76の凹部80c(パッキン82c)の上には、凹部90が形成される。この凹部90には、フラップ92が嵌入/保持される。
フラップ92は、下端部が肉厚で、上端部近傍が漸次縮径する、略円筒状のゴム製の部材である。フラップ92は、下端部の肉厚部を凹部90に嵌入することで、ピストン76に保持される。また、凹部90およびフラップ92は、フラップ92がピストン76の上側の貫通孔76cを覆い、かつ、フラップ92の上端部が、貫通孔76cの上でピストンの外周全周に当接するように、形成される。
【0053】
このフラップ92は、いわゆる自転車のタイヤに用いられる虫ゴムのような作用を有するものである。
すなわち、フラップ92は、上端がピストン76の外周面に当接することで、貫通孔76cを気密に覆ってはいるが、この上端は、自由端となっている。そのため、フラップ92は、貫通孔76cから空気が排出されると、内部からの圧力によって上端部が広がり、空気がフラップ92の外部に排出される。逆に、フラップ92に、外部から圧力が掛かった場合には、貫通孔76cを覆った状態を保ち、逆止弁として作用する。
【0054】
なお、図示例においては、フラップ92と、その下のパッキン82cとは別体であるが、本発明は、これに限定はされない。
すなわち、シリンダ72やピストン76の形状や構成によっては、フラップ92と、その下のパッキン82cとを、一体で成形してもよい。
【0055】
ボタン68の上端部には、ピストン76の上端部を覆ってボタン頭78が取り付けられる。ボタン頭78(その上面)は、内視鏡10を用いた診断等において、医師が、直接、接触して、送気/送水ボタン36を操作する部位である。
図示例において、ボタン頭78は、外径が、下方に向けて2段階で、漸次、減少する中心に貫通孔を有する略円筒状のものであり、例えば、螺合によって、ピストン76の上端部に装着される。ボタン頭78は、通常、樹脂等で形成される。
【0056】
一例として、ボタン頭78の貫通孔は、上方が小径部78aで、下方が大径部78bとなっており、下方の大径部78bが、ピストン76の上端部に螺合する。
一方、ボタン頭78の貫通孔の上方の小径部78aは、ボタン頭78がピストン76に装着された際に、ピストン76に形成された長穴76bに一致する(連通する)。
【0057】
ボタン受け70は、ボタン68を軸線方向に移動可能に保持すると共に、ボタン68を内視鏡10の操作部14(壁部14a)に取り付けるための物である。
図示例において、ボタン受け70は、ボタン68を挿通するボタン受け本体98と、このボタン受け本体98を被嵌する取付けカバー100とから構成される。
【0058】
ボタン受け本体98(以下、本体98とも言う)は、金属製の部材で、下端部近傍が閉塞する二重管形状を有する(断面が略U字状の円環形状)。すなわち、本体98は、中心に円形の貫通孔98aを有する。
ボタン68は、この貫通孔98aに挿通されて、軸線方向に移動可能にボタン受け70に保持される。
【0059】
ここで、図4に示すように、ボタン頭78の第2段目(軸線方向の下の段)の外径は、本体98の貫通孔98aの内径よりも大きい。また、ピストン76の一番上のパッキン82dが装着されるフランジ80dの外径も、本体98の貫通孔98aの内径よりも大きい。
従って、ボタン68は、不要に本体98(ボタン受け70)から抜けることは無い。
【0060】
また、本体98の下端部近傍の閉塞面と、ボタン頭78の最大径部の下面との間には、スプリング102が配置される。
このスプリング102は、ボタン頭78を上方に付勢する。ボタン68は、このスプリング102によって上方に付勢されて、フランジ80dが本体98の下面(貫通孔98aを形成する筒の下端)に当接した位置で停止して、定常位置に保持される。
【0061】
取付けカバー100は、ゴム製の略円筒状の部材である。
この取付けカバー100は、筒内の上方において、前記二重管形状のボタン受け本体98を収容/被嵌して、自身の弾性でボタン受け本体98を保持する。
また、取付けカバー100の内径は、前述の操作部14に形成される円筒状の壁部14aの外径と略同一である。さらに。取付けカバー100の内側下端部には、全周に渡って、凸状の取付け部100aが形成される。
【0062】
前述のように、取付けカバー100は円筒状で、かつ、中に二重管構造の本体98を収容する。従って、取付けカバー100で壁部14aを被嵌することにより、本体98の貫通穴98aと、壁部14aに取り付けられるシリンダ72内とが連通する。
図示例の送気/送水ボタン36は、ボタン68のピストン76をシリンダ72に挿入して、操作部14に形成される壁部14aの外部を被嵌して、取付けカバー100の取付け部100aと、壁部14aとを係合する。
送気/送水ボタン36においては、これにより、ボタン68およびボタン受け70を、着脱自在に内視鏡10の操作部14に取付け、送気/送水ボタン36を構成する。
【0063】
なお、図示例においては、ボタン受け70は、金属製の本体98と、この本体90を被嵌する取付けカバー100とで形成されているが、本発明は、これに限定はされない。
すなわち、本発明において、ボタン68を挿通するボタン受けは、例えば、樹脂を用いた成形等によって、一体で形成されるものであってもよい。この際において、ボタン受けの内視鏡への着脱自在な取付けは、ボタン受け70と同様の弾性を利用する方法、螺合や凹凸を利用する嵌合、固定部材を用いた取付け等、公知の方法によればよい。
【0064】
以下、図5を参照して、送気/送水ボタン36の作用を説明することにより、本発明の液体管路切換装置について、より詳細に説明する。
【0065】
図5(A)(図4(B))に示すように、定常状態では、ボタン68がスプリング102の作用によって上方に移動している。
【0066】
定常状態では、送水チャンネル50Lから供給された水は、流入口50iからシリンダ76の水導入部72eに送水される。
定常状態では、水導入部42eの上の最小径領域72dには、ピストン76の下端部に配置されているパッキン82aが位置している。前述のように、このパッキン82aは、最小径領域72dの所定位置で、シリンダ72内を軸線方向に分離している。
従って、定常状態では、水導入部72eに送水された水は、この水導入部72eで停止され、此処以外の所には送水されない。
【0067】
一方、送気チャンネル52Lから供給される空気は、導入口50iからシリンダ72内に送気される。
定常状態では、この導入口50iが形成される位置は、導入口50iの下方で、小径領域72cに位置するパッキン82bが、導入口50iの上方では、中径領域72bに位置するパッキン82cが、それぞれシリンダ72内を軸線方向に分離している。
従って、導入口50iからシリンダ72内に送気された空気は、中径領域72bの下端部に位置する貫通穴76dからピストン76の長穴76bに送気され、長穴76bおよびボタン頭78の貫通孔78aを経て、送気/送水ボタン36(ボタン68)の外部に排出される。
【0068】
ここで、この定常状態において、内視鏡10を操作する医師が、ボタン頭78の貫通孔78aを指で閉塞する。
これにより、ピストン76の長穴76bに送気された空気は行き場を失い、ピストン76の上側の貫通孔76cからフラップ92を押し広げて、シリンダ72内に送気され、シリンダ72に形成された排出口52jから、出側の送気チャンネル52Lに送気される。
送気チャンネル52Lに送気された空気は、次いで、送気/送水チャンネル64Lに送気されて、送気/送水ノズル64から射出される。
【0069】
さらに、医師が、ボタン頭78を押圧すると、図5(B)に示す押圧状態となる。
この状態では、最小径領域72dでシリンダ72内を軸線方向に分離していたパッキン82aが、その下の水導入部42eに移動する。前述のように、パッキン82aの径は、水導入部42eの内径よりも小さい。従って、水導入部42eに送水された水は、最小径領域72dおよび小径領域72cのパッキン82bで分離された領域まで送水される。
ここで、シリンダ72の小径領域72cの下端部には、流出口50jが形成され、此処に、送水チャンネル50Lの出側が接続される。従って、小径領域72cに送水された水は、送水チャンネル50Lに送水される。
送水チャンネル50Lに送水された水は、次いで、送気/送水チャンネル64Lに送水されて、送気/送水ノズル64から射出される。
【0070】
ここで、前述のように、パッキン82cは、押圧位置では、パッキン82cの下端部が、シリンダ72の中径領域72bと小径領域72cとの境目となる段差に当接して、この位置で、シリンダ72内を軸線方向に分離する。
また、押圧状態では、下側の貫通孔76dは、小径領域72cに位置する。加えて、水は、貫通孔76cの下方に位置するパッキン82bによって、止められている。
従って、押圧状態では、送気チャンネル52Lに接続された流入口52iから送気された空気が、貫通孔76cからピストン76内の長穴76bに送気されることはない。すなわち、送気/送水ボタン36によれば、押圧状態では、送気を遮蔽して、水のみを適正に送水することができる。
【0071】
さらに、医師がボタン頭78の押圧を開放すると、スプリング102の作用によって、ボタン68が上方に移動して、定常状態となる。
【0072】
次に、ピストン76(ボタン68)の着脱について、より詳しく説明する。
図4(B)に示すように、先端側のパッキン82aが摺接する最小径領域72dには、流体管路と接続される接続孔が形成されておらず、また、最小径領域72dよりも上の領域のシリンダ72の内径はパッキン82aよりも大きい。したがって、ピストン76を着脱する際にパッキン82aは、接続孔(流出口50j等)と接触することがない。
次に、先端側から2番目のパッキン82bが摺接する小径領域72cには、送水チャンネル50Lが接続される排出口50jが形成されている。図5(B)に示すように、この排出口50jは、ピストン76が押圧位置にあるときのパッキン82bの位置よりも下側(先端側)に形成されている。したがって、小径領域72cのパッキン82bよりも上側には、流体管路と接続される接続孔が形成されておらず、また、小径領域72cよりも上の領域のシリンダ72の内径はパッキン82bよりも大きい。したがって、ピストン76を着脱する際にパッキン82bは、接続孔(流入口52i等)と接触することがない。
【0073】
同様に、先端側から3番目のパッキン82cが摺接する中径領域72bには、送気チャンネル52Lが接続される流入口52iが形成されている。図5(B)に示すように、この流入口52iは、ピストン76が押圧位置にあるときのパッキン82cの位置よりも下側(先端側)に形成されている。したがって、中径領域72bのパッキン82cよりも上側には、流体管路と接続される接続孔が形成されておらず、また、中径領域72bよりも上の領域のシリンダ72の内径はパッキン82cよりも大きい。したがって、ピストン76を着脱する際にパッキン82cは、接続孔(排出口52j等)と接触することがない。
また、先端側から4番目(一番上)のパッキン82dが摺接する大径領域72aには、送気チャンネル52Lが接続される排出口52jが形成されている。図5(B)に示すように、この排出口52jは、ピストン76が押圧位置にあるときのパッキン82dの位置よりも下側(先端側)に形成されている。したがって、大径領域72aのパッキン82dよりも上側には、流体管路と接続される接続孔が形成されていない。したがって、ピストン76を着脱する際にパッキン82dは、接続孔(排出口52j等)と接触することがない。
【0074】
このように、本発明の構成によれば、内視鏡10の洗浄等のためにボタン68を取り外して、洗浄終了後などに、再度、ボタン68を取り付ける際に、シリンダ72内の接続孔の角部等でパッキンを損傷することを防止することができるので、検査を行うたびに洗浄を行う必要がある内視鏡装置において、ピストンの着脱の際のパッキンの損傷を防止して、シール性能が低下することやパッキンが切れてしまうことを防止することができ、適切に管路の切り替えを行うことができる。また、パッキンの損傷を防止することができるので、パッキンの長寿命化を図ることができる。
【0075】
以上、本発明の内視鏡用の液体管路切換装置および内視鏡について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の変更や改良を行ってもよいのは、もちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
各種の診療や検査に用いられる内視鏡に、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
10 内視鏡
12 挿入部
14 操作部
14a 壁部
16 ユニバーサルコード
18 LGコネクタ
20 ビデオコネクタ
24 先端部
26 アングル部
28 軟性部
32 鉗子口
34 吸引ボタン
36 送気/送水ボタン
38 LRツマミ
40 UDツマミ
42 LRブレーキ
46 UDブレーキ
48 吸引コネクタ
48L 吸引チャンネル
50 送水コネクタ
50i、52i 流入口
50j 流出口
50L 送水チャンネル
52 送気コネクタ
52j 排出口
52L 送気チャンネル
54 LG棒
60 照明レンズ
62 鉗子孔
62L 鉗子チャンネル
64 送気/送水ノズル
64L 送気/送水チャンネル
68 ボタン
70 ボタン受け
72 シリンダ
72a 大径領域
72b 中径領域
72c 小径領域
72d 最小径領域
72e 水導入部
76 ピストン
76a 小径部
76b 長穴
76c,76d,78a,98a 貫通孔
78 ボタン頭
80a リブ
80b,80c,84,90 凹部
80d フランジ
82a,82b,82c,82d パッキン
86 スライダ
92 フラップ
98 (ボタン受け)本体
100 取付けカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の流体管路に接続されて複数の流体管路の連通状態を切り替える流体管路切替装置であって、
ピストンと、前記ピストンに取り付けられる複数のシール部材を有するボタンと、
前記ピストンが挿入され、前記ピストンの挿入方向に段階的に縮径し、側面に前記複数の流体管路をそれぞれ接続される接続孔が形成されるシリンダと、
前記ピストンを前記シリンダ内に押し込んだ際の下端位置を規定するためのストッパとを有し、
前記複数のシール部材が、前記ピストンの挿入方向の先端側に向かって段階的に細くなり、前記シリンダ内面とピストン外面との間で前記シリンダ内を軸線方向に分離するものであり、かつ、前記シール部材の径は、前記ピストンの、前記シール部材が摺接する段の上の段の内径よりも小さく、
かつ、各流体管路と前記シリンダとを接続するための前記接続孔の位置はそれぞれ、対応する段に摺接する前記シール部材の下端位置よりも先端側にあることを特徴とする流体管路切替装置。
【請求項2】
前記ピストンが、前記ピストンの軸方向に離間して配置され、前記先端側に向かって小さくなる4つの前記シール部材を有し、
前記シリンダが、前記ピストンの4つの前記シール部材がそれぞれ摺接する、前記先端側の第1の領域、前記第1の領域に隣接し前記第1の領域よりも大径の第2の領域、前記第2の領域に隣接し前記第2の領域よりも大径の第3の領域、および、前記第3の領域に隣接し前記第3の領域よりも大径の第4の領域を有する請求項1に記載の流体管路切換装置。
【請求項3】
前記複数の流体管路が、4つの流体管路であって、それぞれ、前記底部、前記第2の領域、前記第3の領域、前記第4の領域に接続される請求項2に記載の流体管路切替装置。
【請求項4】
前記ピストンが、前記先端側に底部を有し、前記第1の領域と前記底部との間の領域は、前記第1の領域よりも大径に形成されている請求項2または3に記載の流体管路切替装置。
【請求項5】
前記ストッパは、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記ピストンの前記下端位置を規定するものであり、かつ、前記下端位置において、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記第2の領域と前記第3の領域との間を気密に分離するシール部材である請求項2〜4のいずれかに記載の流体管路切替装置。
【請求項6】
前記ピストンが、前記シリンダの内面に常時接触して、前記ピストンを前記シリンダの軸線方向にのみ移動するようにガイドするスライダを有する請求項1〜5のいずれかに記載の流体管路切換装置。
【請求項7】
体腔内に挿入される挿入部、この挿入部の先端部から流体を射出するための複数の管路、および、前記先端部から射出する流体を変更するための流体管路切換装置を有し、前記挿入部を体腔内に挿入することにより被観察部を観察する内視鏡であって、
前記流体管路切換装置が、ピストンと、前記ピストンに取り付けられる複数のシール部材を有するボタンと、前記ピストンが挿入され、前記ピストンの挿入方向に段階的に縮径し、側面に前記複数の流体管路をそれぞれ接続される接続孔が形成されるシリンダと、前記ピストンを前記シリンダ内に押し込んだ際の下端位置を規定するためのストッパとを有し、
前記複数のシール部材が、前記ピストンの挿入方向の先端側に向かって段階的に細くなり、前記シリンダ内面とピストン外面との間で前記シリンダ内を軸線方向に分離するものであり、かつ、前記シール部材の径は、前記ピストンの、前記シール部材が摺接する段の上の段の内径よりも小さく、かつ、各流体管路と前記シリンダとを接続するための前記接続孔の位置はそれぞれ、対応する段に摺接する前記シール部材の下端位置よりも先端側にあることを特徴とする内視鏡。
【請求項8】
前記流体管路切換装置の前記ピストンが、前記ピストンの軸方向に離間して配置され、前記先端側に配置されるものほど小さくなる4つの前記シール部材を有し、
前記シリンダが、前記ピストンの4つの前記シール部材がそれぞれ摺接する、前記先端側の第1の領域、前記第1の領域に隣接し前記第1の領域よりも大径の第2の領域、前記第2の領域に隣接し前記第2の領域よりも大径の第3の領域、および、前記第3の領域に隣接し前記第3の領域よりも大径の第4の領域を有する請求項7に記載の内視鏡。
【請求項9】
前記複数の流体管路が、4つの流体管路であって、それぞれ、前記底部、前記第2の領域、前記第3の領域、前記第4の領域に接続される請求項8に記載の内視鏡。
【請求項10】
前記ピストンが、前記先端側に底部を有し、前記第1の領域と前記底部との間の領域は、前記第1の領域よりも大径に形成されている請求項8または9に記載の内視鏡。
【請求項11】
前記ストッパは、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記ピストンの前記下端位置を規定するものであり、かつ、前記下端位置において、前記第2の領域と前記第3の領域との境界となる段差に当接して、前記第2の領域と前記第3の領域との間を気密に分離するシール部材である請求項8〜10のいずれかに記載の内視鏡。
【請求項12】
前記ピストンが、前記シリンダの内面に常時接触して、前記ピストンを前記シリンダの軸線方向にのみ移動するようにガイドするスライダを有する請求項7〜11のいずれかに記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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