説明

流体継手

【課題】ネジ止め作業を必要としない流体継手を提供する。
【解決手段】流体継手20では、挟持部25が配管部21の外周面から径方向外側に突出しており、フランジ面23aと対峙している。流体継手20は、2つの挟持部25を備えており、2つの挟持部25の位置関係は、配管部21の中心軸に対して180°互いに離れている。2つの挟持部25は、配管部21とともに取付穴101に挿入される。作業者が配管部21を取付穴101に挿入した後に配管部21の中心軸を中心として回転させることによって、2つの挟持部25も回転し、フランジ部23との間に取付板100を挟み込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体継手に関し、特に給湯装置の貯湯ユニットに使用される流体継手に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置において、貯湯ユニット内の配管と貯湯ユニット外の配管とを接続するために使用される流体継手は、例えば、特許文献1(特開2009−198114号公報)に開示されているように、貯湯ユニットの筐体にネジ止めによって固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、複数の流体継手を使用する貯湯ユニットでは、ネジ止め作業が貯湯ユニットの生産性を低下させる要因になっている。
【0004】
本発明の課題は、ネジ止め作業を必要としない流体継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る流体継手は、貫通穴である第1穴が開けられた板状の取付部に取り付けられる、流体継手であって、配管部と、フランジ部と、挟持部とを備えている。配管部は、第1穴を貫通するように挿入される。フランジ部は、配管部の外周面と交差し、配管部が第1穴に挿入されたときに取付部の表面と対峙するフランジ面を有している。挟持部は、フランジ面と対峙し、配管部とともに第1穴に挿入され、配管部の中心軸を中心として回転されることによってフランジ部との間に取付部を挟み込む。
【0006】
この流体継手では、フランジ面と挟持部とが板状の取付部を挟むことによって流体継手自身が取付部に固定される。それゆえ、専用の取付具による取付作業やネジ止め作業などが不要となり、取付作業性が向上する。
【0007】
本発明の第2観点に係る流体継手は、第1観点に係る流体継手であって、取付部が、第1穴よりも小さい第2穴を更に有している。また、フランジ部は、突起部を更に有している。フランジ部が挟持部とともに所定角度だけ回されたときに、突起部が第2穴に入る。
【0008】
この流体継手では、突起部が取付部の第2穴に入ることによって、フランジ面と挟持部とが取付部を確実に挟んだ位置で流体継手が位置決めされるので、流体継手の固定を緩める方向の回転が防止される。
【0009】
本発明の第3観点に係る流体継手は、第1観点または第2観点に係る流体継手であって、挟持部が、フランジ面と対峙する側に、フランジ面との隙間を徐々に狭くする傾斜面を有している。傾斜面は、挟持部が回される方向に沿って傾斜している。
【0010】
この流体継手では、作業者が挟持部を回すことによって、板状の取付部が挟持部とフランジ面との広い隙間から狭い隙間に向って進入する。挟持部が取付部を挟む力は徐々に増加するので、挟持部の根元への過渡的な応力が抑制され、破損が防止される。
【0011】
本発明の第4観点に係る流体継手は、第3観点に係る流体継手であって、フランジ部が、第2突起部を更に有している。第2突起部は、フランジ面から隆起して配管部が第1穴に挿入されたときに取付部の表面とフランジ面との間に介在する。
【0012】
フランジ面が取付部に対して傾いた状態では、取付部が挟持部とフランジ面との間に進入できない。しかし、この流体継手では、第2突起部が取付部とフランジ面との間に介在してフランジ面が取付部側に傾くことを防止している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1観点に係る流体継手では、フランジ面と挟持部とが板状の取付部を挟むことによって流体継手自身が取付部に固定される。それゆえ、専用の取付具による取付作業やネジ止め作業などが不要となり、取付作業性が向上する。
【0014】
本発明の第2観点に係る流体継手では、突起部が取付部の第2穴に入ることによって、フランジ面と挟持部とが取付部を確実に挟んだ位置で流体継手が位置決めされるので、流体継手の固定を緩める方向の回転が防止される。
【0015】
本発明の第3観点に係る流体継手では、作業者が挟持部を回すことによって、板状の取付部が挟持部とフランジ面との広い隙間から狭い隙間に向って進入する。挟持部が取付部を挟む力は徐々に増加するので、挟持部の根元への過渡的な応力が抑制され、破損が防止される。
【0016】
本発明の第4観点に係る流体継手では、第2突起部が取付部とフランジ面との間に介在してフランジ面が取付部側に傾くことを防止する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体継手が使用される貯湯ユニットの外観斜視図。
【図2】取付板の斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る流体継手の斜視図。
【図4】図3の中心軸線Cを含む紙面に垂直な平面における流体継手の断面図。
【図5】図4のD−D線における流体継手の中間流路の断面図。
【図6】配管が接続された流体継手の縦断面図。
【図7A】取付板の取付穴に挿入される直前の流体継手の斜視図。
【図7B】取付板の取付穴に挿入された直後の流体継手の斜視図。
【図7C】取付板の取付穴に挿入され、所定角度だけ回された直後の流体継手の斜視図。
【図8】変形例に係る流体継手の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0019】
(1)貯湯ユニットの構成
図1は、本発明の一実施形態に係る流体継手が使用される貯湯ユニットの外観斜視図であり、流体継手が固定されている内部がみえるように一部分を破断した状態で示している。
【0020】
図1において、貯湯ユニット3は、ケーシング130内にタンク30を収納している。タンク30は、例えば、ヒートポンプユニット(図示せず)のような加熱手段と配管で繋がっており、タンク30から加熱手段に水を送り、加熱手段で加熱された水はタンク30に戻って貯えられる。
【0021】
(2)詳細構成
(2−1)ケーシング
ケーシング130を図1のA方向から視たとき、ケーシング130は、正面の前板131、右方の右側板133、左方の左側板135、および背面の背面板137によって形成された筒状枠の上下開口が、天板139及び底板141によって閉じられた形状である。
【0022】
また、前板131の下端は、右側板133、左側板135および背面板137の下端より高い位置にあり、その前板131の下端より下側で、且つ前板131よりも背面板137側に入った位置で、第2前板143が右側板133、左側板135及び底板141に支持されている。
【0023】
さらに、取付板100は、前板131の下端と第2前板143の上端とを水平に繋ぐように配置されて、流体継手20を取り付けるための金具として機能する。
【0024】
図2は、取付板の斜視図である。図2において、取付板100を図2のB方向から視たとき、正面には鉛直上方に折り返された前縁100a、右方には鉛直上方に折り返された右縁100b、左方には鉛直上方に折り返された左縁100c、背面側には鉛直下方に折り返された後縁100dが形成されている。
【0025】
前縁100aは前板131とネジ止めされ、右縁100bは右側板133とネジ止めされ、左縁100cは左側板135とネジ止めされ、後縁100dは第2前板143とネジ止めされる。
【0026】
取付板100は、各種の流体継手を固定するための穴を有しており、ここでは、本発明の実施形態に係る流体継手が取り付けられる取付穴101について説明する。取付穴101は、円形の貫通穴および長方形の角穴の中心を合わせて一個の穴としたような形状であり、その長方形の短辺は貫通穴の直径よりも小さく、長辺は貫通穴の直径よりも大きい。
【0027】
また、取付板100は、取付穴101の周囲に、2つの位置決め穴103をさらに有している。2つの位置決め穴103は、取付穴101の中心に対して点対称の位置にある。図1に示すように、取付穴101には流体継手20が取り付けられている。
【0028】
(2−2)流体継手
図3は、本発明の一実施形態に係る流体継手の斜視図である。図3において、流体継手20は、樹脂製の継手であって、配管部21と、フランジ部23と、挟持部25と、突起部27と、管挿入部31と、取っ手33とを備えている。本実施形態では、配管部21、フランジ部23、挟持部25、突起部27、管挿入部31、及び取っ手33がPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂で一体成形されている。もちろん、成形材料は他の合成樹脂であってもよい。
【0029】
配管部21は、円筒形を成し、取付板100の取付穴101に挿入される。フランジ部23は、配管部21の外周面から径方向外側に向って広がる円板である。フランジ部23と配管部21とは同軸で交差しているので、外見上はフランジ部23から配管部21が同軸で突出しているように見える。
【0030】
説明の便宜上、フランジ部23の両平面のうち、配管部21がある側の面をフランジ面23aとする。フランジ面23aは、配管部21が取付穴101に挿入されたときに取付板100の表面と対峙する。
【0031】
挟持部25は、配管部21の外周面から径方向外側に突出しており、フランジ面23aと対峙している。図3では、1つの挟持部25しか図示されていないが、流体継手20は、2つの挟持部25を備えており、2つの挟持部25は、配管部21の中心軸に対して180°互いに離れている。2つの挟持部25は、配管部21とともに取付穴101に挿入される。そして、作業者が配管部21を取付穴101に挿入した後に配管部21の中心軸を中心として回転させることによって、2つの挟持部25も回転し、フランジ部23との間に取付板100を挟み込むことができる。
【0032】
図3に示すように、挟持部25は、フランジ面23aと対峙する側に、フランジ面23aとの隙間を徐々に狭くするような傾斜面25aを有している。傾斜面25aは、挟持部25が回される方向に沿って傾斜している。本実施形態では、傾斜面25aは、曲面や斜面であり、傾斜を登る方向に進むほど傾斜率が小さくなっている。
【0033】
突起部27は、フランジ部23のフランジ面23aから突出している。突起部27の突出寸法は、取付板100の板厚寸法以下である。作業者が配管部21を取付穴101に挿入した後に配管部21の中心軸を中心として回転させることによって、フランジ部23、挟持部25および突起部27がともに回転する。突起部27は、所定角度だけ回されたときに、位置決め穴103に嵌まり込む。
【0034】
管挿入部31は、円筒形を成し、フランジ部23の両平面のうち、フランジ面23aと反対側の面に位置する。なお、管挿入部31、フランジ部23及び配管部21は同軸である。
【0035】
取っ手33は、管挿入部31の外周から径方向外側に延び、且つフランジ部23と垂直に交差する板である。流体継手20は、2つの取っ手33を備えており、2つの取っ手33の位置関係は、管挿入部31の中心軸に対して180°互いに離れている。
【0036】
図4は、図3の中心軸線Cを含む紙面に垂直な平面における流体継手の断面図である。図4において、配管部21の内側にはネジ穴21aが形成されている。ネジ穴21aは有効ネジ部21aaと、有効ネジ部21aaの終端から奥に進むほど段階的に径が小さくなるノズル部21abを含む。有効ネジ部21aaの終端はフランジ部23の中間位置まで到り、ノズル部21abはフランジ部23の中間位置から管挿入部31の途中まで入り込んでいる。
【0037】
管挿入部31の内側には管挿入穴31aが形成されている。管挿入穴31aの深さは、管挿入部31の軸方向長さの半分程度である。管挿入穴31aの底とネジ穴21aのノズル部21abの先端とは、中間流路35によって繋がっている。
【0038】
図5は、図4のD−D線における流体継手の中間流路の断面図である。図5において、中間流路35には、内面から径方向内側に突出する4つのリブ35aが形成されている。4つのリブ35aは、中心軸に対して90°間隔で離れている。
【0039】
図6は、配管が接続された流体継手の縦断面図である。図6において、配管部21のネジ穴21aには、先端がノズル状の雄ねじ管50が螺合している。作業者は、雄ねじ管50のツマミ51を持って回しながらネジ穴21aに挿入するだけでよい。
【0040】
管挿入部31の管挿入穴31aには、連絡配管40が挿入されている。連絡配管40の端部は拡管された上で、アタッチメント41が装着されている。
【0041】
(3)流体継手の取付板への固定
図7Aは,取付板の取付穴に挿入される直前の流体継手の斜視図である。また、図7Bは、取付板の取付穴に挿入された直後の流体継手の斜視図である。図7Cは、取付板の取付穴に挿入され、所定角度だけ回された直後の流体継手の斜視図である。
【0042】
図7A及び図7Bにおいて、作業者は、流体継手20の取っ手33を持って、配管部21と挟持部25とを取付板100の取付穴101に挿入する。このとき、突起部27の先端が取付板100に接触するまで、フランジ部23を取付板100に近づける。
【0043】
次に、図7B及び図7Cにおいて、作業者は、フランジ部23、挟持部25および突起部27がともに配管部21の中心軸を中心として回転するように、取っ手33を図7Bの矢印の方向に捻る。挟持部25が回ることによって、取付板100が挟持部25の傾斜面25aとフランジ面23aとの広い隙間から狭い隙間に向って進入する。挟持部25が取付板100を挟む力は徐々に増加するので、挟持部25の根元に過渡的な応力が集中することは抑制される。そして、挟持部25が所定角度だけ回されたときに、突起部27が位置決め穴103に嵌まり込、流体継手20の取付板100への固定は完了する。
【0044】
(4)特徴
(4−1)
流体継手20では、フランジ面23aと挟持部25とが取付板100を挟むことによって流体継手20自身が取付板100に固定される。それゆえ、専用の取付具による取付作業やネジ止め作業などが不要となり、取付作業性が向上する。
【0045】
(4−2)
流体継手20では、突起部27が取付板100の位置決め穴103に入ることによって、フランジ面23aと挟持部25とが取付板100を確実に挟んだ位置で流体継手20が位置決めされる。それゆえ、流体継手20の固定を緩める方向の回転が防止される。
【0046】
(4−3)
流体継手20では、作業者が挟持部25を回すことによって、取付板100が挟持部25の傾斜面25aとフランジ面23aとの広い隙間から狭い隙間に向って進入する。挟持部25が取付板100を挟む力は徐々に増加するので、挟持部25の根元への過渡的な応力が抑制される。それゆえ、PPS樹脂のような剛性が高く、衝撃で割れ易い樹脂であっても破損が防止される。
【0047】
(5)変形例
上記実施形態では、突起部27の先端が取付板100に接触するまで、フランジ部23を取付板100に近づけるが、2つの突起部27が取付板100の表面に接触したとき、フランジ部23が傾き易い。そこで、上記不都合を解消するための変形例を紹介する。
【0048】
図8は、変形例に係る流体継手の斜視図である。図8において、2つの突起部27の他に、2つの第2突起部29がフランジ面23aから隆起している。配管部21が取付穴101に挿入されたとき、取付板100の表面とフランジ面23aとの間に第2突起部29が介在するので、フランジ面23aが取付板側に傾くことが抑制される。
【0049】
その結果、取付板が挟持部25とフランジ面23aとの間に進入し易くなり、作業性がより向上する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明によれば、作業者は、専用の取付具による取付作業やネジ止め作業などを行うことなく、流体継手20をと取付板100に固定することができるので、貯湯ユニットに限らず、流体継手を固定する必要のある機器に有用である。
【符号の説明】
【0051】
20 流体継手
21 配管部
23 フランジ部
23a フランジ面
25 挟持部
25a 傾斜面
27 突起部
29 第2突起部
100 取付板(取付部)
101 取付穴(第1穴)
103 位置決め穴(第2穴)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0052】
【特許文献1】特開2009−198114号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴である第1穴が開けられた板状の取付部に取り付けられる、流体継手であって、
前記第1穴を貫通するように挿入される配管部(21)と、
前記配管部(21)の外周面と交差し、前記配管部(21)が前記第1穴に挿入されたときに前記取付部の表面と対峙するフランジ面(23a)を有するフランジ部(23)と、
前記フランジ面(23a)と対峙し、前記配管部(21)とともに前記第1穴に挿入され、前記配管部(21)の中心軸を中心として回転されることによって前記フランジ部(23)との間に前記取付部を挟み込む挟持部(25)と、
を備えた流体継手(20)。
【請求項2】
前記取付部は、前記第1穴よりも小さい第2穴を更に有し、
前記フランジ部(23)は、前記挟持部(25)とともに所定角度だけ回されたときに前記第2穴に入る突起部(27)を更に有する、
請求項1に記載の流体継手(20)。
【請求項3】
前記挟持部(25)は、前記フランジ面(23a)と対峙する側に、前記フランジ面(23a)との隙間を徐々に狭くする傾斜面(25a)を有し、
前記傾斜面(25a)は、前記挟持部(25)が回される方向に沿って傾斜している、
請求項1又は請求項2に記載の流体継手(20)。
【請求項4】
前記フランジ部(23)は、前記フランジ面(23a)から隆起して前記配管部(21)が前記第1穴に挿入されたときに前記取付部の表面と前記フランジ面(23a)との間に介在する、第2突起部(29)を更に有する、
請求項3に記載の流体継手(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−141008(P2012−141008A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293655(P2010−293655)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】