説明

流体製品の貯蔵および塗布用装置

本発明は、製品を自由な形態で貯蔵するためのタンク(10)と、前記タンク内に突出するコンベヤ導水管(14)と、前記コンベヤ導水管に接続した塗布装置(18)と、第1および第2の開口(24、26)を有し、そこに前記コンベヤ導水管の一部分(30)が配置されている通路(22)とを備えた、流体製品(12)を貯蔵し、塗布するための装置であって、前記通路の前記第1の開口が前記タンク内に配置され、前記第2の開口が前記コンベヤ導水管のみによって前記タンクの内部に接続され、前記コンベヤ導水管が、前記第1の開口を通り越して前記タンク内へと前記通路の外に突出する、装置に関する。本発明によれば、重力方向に関する装置の任意の位置において、前記第1の開口の真下に位置する前記タンクの容量が、前記装置の呼び充填容量よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体製品を貯蔵し、塗布するための装置であって、
製品を自由な形態で貯蔵するためのタンクと、
前記タンク内に突出するコンベヤ導水管と、
前記コンベヤ導水管に接続した塗布装置と、
第1および第2の開口を有し、そこに前記コンベヤ導水管の一部分が配置されている通路と、
を備え、
前記通路の前記第1の開口が前記タンク内に配置され、
前記第2の開口が前記コンベヤ導水管のみによって前記タンクの内部に接続され、
前記コンベヤ導水管が、前記第1の開口を通り越して前記タンク内へと前記通路の外に突出する、
装置に関する。
【背景技術】
【0002】
執筆、絵画、描画、および模様の分野における塗布装置は、それらが塗布用の流体を収容する場合には、もっぱら、貯蔵能力の観点から2つのタイプに大別することができる。一方のタイプでは、塗布用の流体は毛管現象で貯蔵装置内に拘束されるが、もう一方のタイプでは、塗布用の流体は中空空間に束縛されずに可動に収容される。後者の種類のシステムは、「フリーインク」という用語でも知られている。本発明はそれらのシステムに関するものである。
【0003】
フリーインク・システムの場合には、束縛されずに収容されたインクが漏れるのを効果的に防ぐために、特別な予防措置を採らなければならない。バルブシステムの一例として、さらなる毛管現象を利用した貯蔵手段を備えた、貯蔵用プレート手段および補償システムを、その目的に使用することができる。
【0004】
塗布用の流体の不慮の漏れは、例えば、圧力または温度の変化によって生じうる。上記の既知のシステムは、漏出しない能力を達成するために、通常は、追加的措置を講じる必要があるという欠点を有している。一般に、それらの手段は追加の構成要素を必要とし、したがって、複雑で高価な構造の原因となり、それによって製造原価が増大する。
【0005】
このような手段は、塗布用の流体を比較的少ない容量(数ml)から大容量へ転換する場合に、特に問題になる。ここで大容量についての言及は、2mlを顕著に超える量、換言すれば、例えば10mlの量を表すのに用いられる。塗布用の流体が同一の組成であって、圧力および温度の変化が同一である場合は、塗布用の流体の容量とともに、必要とされる補償容量も増大するため、束縛されずに収容される貯蔵容量が大きければ大きいほど、通常提供される緩衝手段(例えば毛管現象を利用した貯蔵手段など)も相応して大きくなければならない。
【0006】
既知の塗布装置のさらなる問題は、特に、束縛されずに収容されるインクの容量が顕著に増大する場合には、たとえ一定の境界条件(圧力および温度)であっても、塗布用の流体の漏出の危険性があることである。既知の塗布装置の場合には、ペン先が重力方向、すなわち下向きの塗布装置表面としての役割をする場合に、タンクの内部に減圧が生じ、コンベヤ導水管は束縛されずに収容されたインクと接触する。その減圧は、流体の支柱の静水圧を補償する。したがって、既知の装置は、通常の状態では漏出に悩まされることはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、フリーインクの充填容量が増大する場合、少なくともタンクの寸法が半径方向のみならず軸方向にも増大し、補償効果を得るために、より大きい減圧が必要とされる場合には、インク供給装置における静水圧も増大してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本明細書の冒頭に記載する種類の装置によって形成される最先端技術に基づいている。最も単純な事例では、本発明は、ボトルに関し、コンベヤ導水管が、タンクとしての役割をする前記ボトルの内部に入り、前記コンベヤ導水管のもう一方の端に塗布装置が配置される。その場合、上記通路はボトルのネックによって形成される。それは、通常、コンベヤ導水管を気密に取り囲んではいない。
【0009】
本発明の目的は、流体の漏出に対する耐性の増大を提供するための面倒な問題および費用を最小限に抑えると同時に、装置が流体の漏出に対してさらに耐性になる、さらに具体的には、たとえ圧力および/または温度が増大する場合でも、さらに耐性になるような方法で、上記種類の装置を開発することである。
【0010】
本発明によれば、特定の目的は、重力方向に関する装置のいずれの位置においても、第1の開口の真下にあるタンクの容量が、装置の呼び充填容量よりも大きいことにより達成される。
【0011】
言い換えれば、本発明は、装置がいかように持たれ、または置かれているかに関わらず、タンク内に導入された製品が決して第1の開口に到達しないことを提供する。それは、製品が、第1の開口を通じて漏出しないことを確実にする。それに対し、タンク外に出る唯一の方法は、コンベヤ導水管を経由することによって行なわれる(毛管現象)。しかしながら、コンベヤ導水管は、ペン先が流体のレベルよりも上にあるときにのみ、流体と接触することから、流体漏出に対して耐性である。
【0012】
流体漏出に対する耐性は、圧力および/または温度の変化に関してのみ達成されるわけではない。むしろ、本発明による解決策は、ペン先が重力方向を向いているときには、インクと接触しないことに起因して静水圧がコンベヤ導水管に作用しないため、コンベヤ導水管に作用する圧力が顕著に低減されることを提供する。したがって、本発明は、一定の境界条件(圧力および温度)において、および境界条件の変化と共に、流体の漏出に対する耐性を、単純な方法で提供する。
【0013】
通路はコンベヤ導水管を気密に取り囲んでおらず、開口は装置のいずれの位置においても製品と流体連通していないことから、タンク内のガス空間と外部が常に連通し、それによって、圧力の増大は、何の問題もなく補償される。
【0014】
本発明に従った構造は、特に単純である。本明細書ですでに説明したボトルに基づいて、ボトルネックをボトルの内部に、例えばタンク容量の幾何学的中心の範囲まで、延在させる必要がある。それに対し、補償貯蔵手段などは必要としない。
【0015】
本発明によれば、重力方向に関して、コンベヤ導水管が製品とコンベヤで連通している少なくとも1つの位置が装置に存在することが好ましい。
【0016】
したがって、コンベヤ導水管を通じて製品を塗布装置に運ぶためには、装置を特定の位置に動かさなければならないが、これは、コンベヤ導水管の毛管現象の理由から、一般には自動的に生じる。
【0017】
本発明のさらなる好ましい実施の形態によれば、コンベヤ導水管は柔軟性である。
【0018】
この構造を有することにより、コンベヤ導水管は、例えば自身の重さで曲がることができ、たとえ通路の長手軸の延長として配置されない場合でも、製品内にまで及ぶことができる。
【0019】
通路の外に突出する、コンベヤ導水管の一部分の少なくとも自由端は、製品よりも密度が低いことが好ましい。
【0020】
これにより、自由端が製品上に浮き、コンベヤ導水管がタンク壁に急速に吸引される危険性を未然に防ぐことを提供することができる。
【0021】
その点に関しては、通路の外に突出する、コンベヤ導水管の一部分に浮きが存在することが好ましい。
【0022】
その構造は、コンベヤ導水管自体が変更されることを回避し、コンベヤの性質に悪影響を与えないようにする。
【0023】
その場合、本発明によれば、浮きは、前記通路の外に突出する、コンベヤ導水管の一部分の自由端に配置されることが好ましい。
【0024】
さらに具体的には、浮きは、コンベヤ導水管の末端で最大の効果を有する。
【0025】
本発明によれば、通路は、管の内部によって、少なくとも部分的に形成されることが好ましい。
【0026】
それは、特に単純な構造を提供する。
【0027】
タンク壁に急速に吸引される可能性があるコンベヤ導水管に対するさらなる手段として、前記通路の外に突出するコンベヤ導水管の少なくとも一部分を支持するためのホルダーを提供することができる。
【0028】
その場合、ホルダーは、コンベヤ導水管とタンク壁との間の空間を最小限にすることを確保する役割をする。
【0029】
ホルダーは管を有しうる。
【0030】
それは、言い換えれば、構造的に特に単純な解決策をもたらす。
【0031】
本発明によれば、2つの部分を有する管が好ましく、その第1の部分は、少なくともある程度通路を形成し、第2の部分は、通路の外に突出する、コンベヤ導水管の一部分を支持するためのホルダーに属する。
【0032】
言い換えれば、これは、通路とホルダーの両方が管によって形成されるという解決策を提供する。これもまた、構造的に特に単純である。
【0033】
その点、本発明に従ったさらに好ましい特徴は、第1の開口が、管における少なくとも1つの貫通開口によって形成されることを提供する。
【0034】
言い換えれば、この解決策では、通路および/またはホルダーを形成する単一の管が提供され、この管が、適切な位置、すなわち、例えばタンク容量の幾何学的中心に、少なくとも1つの貫通開口を有し、これを通じて、圧力が増大する際に、すでに言及したガス交換が生じうる。
【0035】
本発明に従ったさらなる好ましい特徴では、装置は底を備え、平らな水平表面上の任意の位置から、装置自体を、底を下にして自動的に起立させる。
【0036】
言い換えれば、本発明のこの実施の形態に従った装置は、自動的に復元する「起き上がり小法師(stand-up manikin)」の原理を使用する。
【0037】
本発明のさらなる好ましい実施の形態によれば、装置は、塗布装置と反対側に底を備え、装置の外郭およびその質量分配により、重力方向に関する任意の位置から、装置自体を、底を下にして自動的に起立させる。
【0038】
したがって、これも、「起き上がり小法師」の原理を使用している。
【0039】
最後に、本発明に従った装置は、塗布装置と反対側に、凸状の外郭を有する底を備え、水平面状の任意の位置において、その重心が、平面における接点を通る垂線に対して底の側に存在することが、本発明に従って提供されることが特に好ましい。
【0040】
この解決策もまた、「起き上がり小法師」の原理を体現する。
【0041】
添付の図面に関する例として好ましい実施の形態を用いて、本発明を詳細な説明においてさらに十分に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に従った貯蔵装置および塗布装置の縦断面図。
【図2】上下を逆位置にした図1の装置。
【図3】横倒しした状態の図1の装置。
【図4】変形装置の図1と同一視点の図。
【図5】さらに別の変形装置の図1と同一視点の図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1〜3に示す貯蔵および塗布装置は、流体製品12が自由な形態で収容されたタンク10、コンベヤ導水管14、ケーシング管16、塗布先端18、および先端ホルダー20を備えている。ケーシング管16の内部は、コンベヤ導水管14のための通路22を形成する。それは、コンベヤ導水管を気密に取り囲んではいない。コンベヤ導水管は、毛管現象の性質を有する。言い換えれば、それは、毛管現象効果に起因して、タンク10から塗布先端18へと流体を運ぶ。
【0044】
通路22の第1の開口は参照番号24によって識別され、第2の開口は参照番号26によって識別される。コンベヤ導水管14の一部分28は、第1の開口24を通り越し、通路22の外から流体12内へと延在する。別の部分30は通路22内にある。
【0045】
第2の開口26は、通路22およびそこに収容されたコンベヤ導水管14を通じてのみ、タンク10の内部と連通している。
【0046】
第1の開口24は、タンク10の幾何学的中心に位置する。タンク10の容量は、その半分に満たない量が、流体12で満たされている。したがって、流体12は、装置の任意の位置に置いて、第1の開口24に到達しない。したがって、流体12は漏出し得ない。それでもなお、例えば圧力または温度が増大する場合には、圧力の補償効果の可能性が存在する。さらに具体的には、とりわけ、ケーシング管16がコンベヤ導水管14を気密に取り囲んではいないことから、装置の位置に関係なく、タンク10のガス空間と第2の開口26または外部とは常に連通している。それは、第1の開口24が決して流体12内には突出せず、したがって、ガス交換用に常に開放されていることによって生じる。
【0047】
この局面では、図1〜3に示す流体12の量は、装置の呼び充填容量に相当することを明確に指摘しなければならない。その呼び充填容量は、タンク10の容量の半分未満であり、流体12の収容に利用可能である。
【0048】
図3から、コンベヤ導水管14は図示する実施の形態では硬性であるように見えるであろう。しかしながら、その性質は柔軟性であってもよい。それは、図3に示す位置において、コンベヤ導水管14がそれ自体の重さで曲がり、一部分28を下方向に移動させることを意味する。一部分28がタンク10の壁に急速に吸引されないように、一部分28の自由端に「浮き」が配置されうる。このような浮きは、例えば輪状であり、コンベヤ導水管が、タンク壁まで流体12に浸かることができないように提供されるであろう。
【0049】
タンク壁に急速に吸引されるという問題の別の解決策は、図4に示す変形体によって代表される。それによれば、ケーシング管16は部分32によって延長される。部分32は、その事例では、第1の開口24を越えて突出する、コンベヤ導水管14の一部分28のホルダーの役割をする。この場合、開口24は、部分32によって延長されるケーシング管内に、2つの貫通開口34.1および34.2の形態で存在する。あるいは、対応して穿孔された、織られた、または焼結された管部分を使用することも可能である。
【0050】
図5に示す構造は、タンク10が膨らんだ構造、すなわち、凸形状であり、底36の質量が特に重いという点のみが図1〜3に示すものとは異なっている。この設計構造を有する装置は、常に、装置自体を、底36を下にして自動的に再び起立させる。それは常に、流体12がコンベヤ導水管14内にさらに流入ことを確実にする。
【0051】
前記説明、特許請求の範囲、および図面に開示される本発明の特徴は、個別に、および、さまざまな実施の形態における本発明の実施について任意の組合せで、必須でありうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体製品(12)を貯蔵および塗布するための装置であって、
前記製品を自由な形態で貯蔵するためのタンク(10)と、
前記タンク内に突出するコンベヤ導水管(14)と、
前記コンベヤ導水管に接続した塗布装置(18)と、
第1および第2の開口(24、26)を有し、前記コンベヤ導水管の一部分(30)が配置されている、通路(22)と、
を備え、
前記通路の前記第1の開口が前記タンク内に配置され、
前記第2の開口が前記コンベヤ導水管のみによって前記タンクの内部に接続され、
前記コンベヤ導水管が、前記第1の開口を通り越して前記タンク内へと前記通路の外に突出し、
ここで、
重力方向に関する装置の任意の位置において、前記第1の開口の真下に位置する前記タンクの容量が、装置の呼び充填容量よりも大きいことを特徴とする、
装置。
【請求項2】
重力方向に関して、前記コンベヤ導水管(14)が前記製品(12)とコンベヤで連通している少なくとも1つの位置が装置に存在することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記コンベヤ導水管(14)が柔軟性であることを特徴とする請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記通路(22)の外に突出する前記コンベヤ導水管(14)の一部分(28)の少なくとも自由端が、前記製品(12)よりも低密度であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記通路(22)の外に突出する前記コンベヤ導水管(14)の一部分(28)に、浮きを有することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記浮きが、前記通路(22)の外に突出する前記コンベヤ導水管(14)の一部分(28)の前記自由端に配置されることを特徴とする請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記通路(22)が、少なくとも部分的に、管(16)の内部によって形成されることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記通路(22)の外に突出する前記コンベヤ導水管(14)の一部分(28)の少なくとも一部を支持するためのホルダー(32)を有することを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記ホルダー(32)が管を備えていることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】
第1の部分が少なくとも部分的に前記通路(22)を形成し、第2の部分が、前記通路の外に突出する前記コンベヤ導水管(14)の一部分(28)を支持するホルダーに属する、2つの部分を有する管(16,32)を備えることを特徴とする請求項1〜9いずれか1項記載の装置。
【請求項11】
前記第1の開口(24)が、前記管(16,32)における少なくとも1つの貫通開口(34.1,34.2)によって形成されることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
底(36)を備え、平らな水平表面上の任意の位置から、前記底を下にして自動的に再び起立させることを特徴とする請求項1〜11いずれか1項記載の装置。
【請求項13】
前記塗布装置(18)の反対側に底(36)を備え、
前記装置の外郭およびその質量分配によって、重力方向に関する任意の位置から前記底を下にして自動的に再び起立させることを特徴とする請求項1〜12いずれか1項記載の装置。
【請求項14】
前記塗布装置(18)の反対側にあり、凸状の外郭を有する、底(36)を備え、
水平面上の任意の位置において、その重心が、前記平面上の接点を通る垂線に対し、前記底の側に位置することを特徴とする請求項1〜13いずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−535135(P2010−535135A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518529(P2010−518529)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005874
【国際公開番号】WO2009/015783
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(509153928)シュタビロ インターナツィオナール ゲーエムベーハー (8)
【氏名又は名称原語表記】STABILO International GmbH
【Fターム(参考)】