説明

流体輸送用配管の閉塞検知システム

【課題】固液混合流体が液面を所定のレベルに保ちながら貯留される貯留槽から、当該流体を固液分離するための分離機へ当該流体を輸送する配管内における完全閉塞などのような強固な詰まりの発生を抑制し、長期的に安定した輸送状態で装置を運転可能な流体輸送用配管の閉塞検知システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る流体輸送用配管の閉塞検知システムは、前記貯留槽における前記流体の液面レベルを検知する液面レベル検知装置と、前記配管の途中に設けられ、前記液面レベル検知装置からの信号に基づいて弁開度を調節する制御弁と、前記制御弁の弁開度と、前記分離機の運転状態を示すモータの電流値とからなる入力値を、予め設定された条件と比較して、前記配管内において閉塞が進行しているか否かを判別する閉塞検知装置と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリー等の固液混合流体が輸送される配管内における、固形物の付着による当該配管の閉塞の進行を検知するためのシステムに関する。さらに詳しくは、本発明は、例えば、液相酸化による芳香族カルボン酸の製造装置における触媒回収工程のように、固液混合流体が液面を所定のレベルに保ちながら貯留される貯留槽から、当該流体を固液分離するための分離機へ配管を通じて当該流体を輸送する場合において、当該配管の閉塞の進行を検知するための流体輸送用配管の閉塞検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、テレフタル酸等の化学物質を製造する化学工場等では、反応器、熱交換器、貯留槽、晶析槽、分離機、乾燥機など各種の工程を成す化学機器が工程順に設置され、これらの機器間を流体輸送用配管で接続し、ポンプによりその流体輸送配管を介して各機器から機器へと流体を輸送するようになっている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001-261614号公報 図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この流体輸送用配管内では、スラリーからの固形物等が管内壁面に付着し、それが成長することによる管内の詰まりがしばしば発生している。この配管の詰まりが発生すると、流体の連続輸送が不可能となる。そこで、この詰まりにより流体の連続輸送が不可能になることを防ぐため、従来は、当該配管の上流に設置された貯留槽の液面レベルの上昇、配管内における流量低下、配管の途中に設置された、液面レベル検知装置からの信号により弁開度を調節する制御弁の弁開度の増加などを運転員が監視して、閉塞の進行が確認された場合には、苛性ソーダ水溶液等の洗浄液、または蒸気、窒素等の気体により配管内の洗浄を行って、完全閉塞前に詰まりを除去する作業を行っていた。
【0004】
しかし、運転員による閉塞進行の監視確認が遅れた場合には、配管が完全に閉塞してしまう。このように配管が完全に閉塞すると、配管の貫通作業は極めて困難となり、貫通作業に長い時間を要していた。また、場合によっては配管を取り外し、棒等の治具を用いて貫通作業を行う必要があるため、この完全な閉塞が、製造装置の連続運転安定性、並びに運転員への作業負荷へ与える影響は大きい。
【0005】
本発明は、固液混合流体が液面を所定のレベルに保ちながら貯留される貯留槽から、当該流体を固液分離するための分離機へ当該流体を輸送する配管内における完全閉塞などのような強固な詰まりの発生を抑制し、長期的に安定した輸送状態で装置を運転可能な流体輸送用配管の閉塞検知システムを提供することを目的とする。
【0006】
また本発明は、当該配管の詰まり状況の監視、配管洗浄の実施といった運転員の作業負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流体輸送用配管の閉塞検知システムは、固液混合流体が液面を所定のレベルに保ちながら貯留される貯留槽から、当該流体を固液分離するための分離機へ当該流体を輸送する配管内における固形物の付着による当該配管の閉塞の進行を検知するための流体輸送用配管の閉塞検知システムであって、
前記貯留槽における前記流体の液面レベルを検知する液面レベル検知装置と、
前記配管の途中に設けられ、前記液面レベル検知装置からの信号に基づいて弁開度を調
節する制御弁と、
前記制御弁の弁開度と、前記分離機の運転状態を示すモータの電流値とからなる入力値を、予め設定された条件と比較して、前記配管内において閉塞が進行しているか否かを判別する閉塞検知装置と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明における好ましい態様では、前記分離機は遠心分離機である。
本発明における好ましい態様では、前記閉塞検知システムは、前記閉塞検知装置が前記配管内において閉塞が進行していると判別した場合に、前記閉塞検知装置からの遠隔操作によって前記配管内に洗浄用媒体を導入する洗浄用媒体導入装置を備えている。
【0009】
本発明における好ましい態様では、前記閉塞検知システムは、前記閉塞検知装置が前記配管内において閉塞が進行していると判別した場合に、前記閉塞検知装置からの遠隔操作によって、前記洗浄用媒体により前記配管内を洗浄した後、当該配管内に置換用媒体を導入する置換用媒体導入装置を備えている。
【0010】
前記貯留槽の具体例としては、液相酸化による芳香族カルボン酸の製造装置における、酸化反応後の混合物から分離された触媒含有母液の造粒槽を挙げることができる。
液相酸化による芳香族カルボン酸の製造においては、原料として、アルキル置換基、または、一部酸化したアルキル置換基を有する芳香族化合物が用いられる。アルキル置換基としては、炭素数が通常1〜8程度のものが用いられるが、メチル基、エチル基、n-プ
ロピル基、イソプロピル基などの炭素数1〜3のものが望ましい。また、一部酸化したアルキル置換基も、通常、炭素数1〜8のものが用いられ、その具体例としては、ホルミル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等が挙げられる。
【0011】
また、これらの置換基を1つだけ有するものに限らず、2つ以上の置換基を有する芳香族化合物を用いてもよい。複数個の置換基を有する場合は、各々の置換基は同一であってもよく異なっていてもよい。
【0012】
上記芳香族化合物の芳香核には、ベンゼン環のような単環式のみならず、ナフタレンのような多環式芳香核も含まれる。
上記芳香族化合物の具体例としては、トルエン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、4,4'-ジメチルビフェニル、オルト-、メタ-またはパラキシレン、1,2,4-ト
リメチルベンゼン、2,6-ジメチルナフタレン等のアルキル基の置換した芳香族化合物
、あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0013】
前記芳香族カルボン酸の代表的な例としては、テレフタル酸を挙げることができる。
本発明の閉塞検知システムを前記芳香族カルボン酸の製造装置に適用する場合、前記洗浄用媒体としては、アルカリ性洗浄液、蒸気、または窒素等の気体が好ましい。
【0014】
本発明における好ましい態様では、前記閉塞検知システムは、前記洗浄用媒体を前記配管内に導入して当該配管内を洗浄した後、当該配管内に置換用媒体を導入する置換用媒体導入装置を備えている。
【0015】
本発明の閉塞検知システムを前記芳香族カルボン酸の製造装置に適用する場合、前記洗浄用媒体は、アルカリ性洗浄液であり、
当該アルカリ性洗浄液を前記配管内に導入して当該配管内を洗浄した後、当該配管内に置換用媒体である水を導入することが好ましい。
【0016】
本発明によれば、貯留槽の液面レベルに応じて調節される制御弁の弁開度と、運転が一
定に保たれると共に、閉塞監視対象である配管(図1の符号41)を通じて到達する流体の流量に応じて負荷が変化する分離機のモータ電流値と、の両方に基づいて配管の閉塞進行を判別しているので、配管が完全に閉塞する前の段階で、精度良く閉塞の予兆を検知することができる。ここで、前記分離機が遠心分離機の場合は、運転が一定に保たれるということは、回転数が一定であるということである。
【0017】
さらに、配管の閉塞の進行が検知されたら、閉塞検知装置からの遠隔指示によって、洗浄用媒体導入装置により配管内へ洗浄用媒体が導入されて自動的に配管の洗浄が行われるため、設備の連続安定運転が実現され、さらに、運転員の作業負荷が低減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配管内における完全閉塞などのような強固な詰まりの発生を抑制し、長期的に安定した輸送状態で装置を運転できる。
また本発明によれば、配管の詰まり状況の監視、配管洗浄の実施といった運転員の作業負荷を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。図1は、本発明に係る流体輸送用配管の閉塞検知システムの実施例を、液相酸化によるテレフタル酸の製造装置に適用した構成を概略的に示した図である。
【0020】
同図において、原料1であるパラキシレンを酸化反応工程2において空気酸化することにより、テレフタル酸が製造される。
酸化反応工程2では、酸化反応器に原料であるパラキシレン、触媒、溶媒を収容し、これらを補給しながら空気等の分子状酸素含有ガスを吹き込んで連続的に反応が行われる。具体的には、例えば、触媒としてコバルト化合物とマンガン化合物と臭素化合物とを併用したものを用い、反応溶媒として低級脂肪族カルボン酸、特に酢酸または酢酸と水との混合物を用いて、温度160℃〜260℃、圧力0.4MPa〜5MPa(ゲージ圧)、滞留時間10分〜200分の条件で酸化反応が行われる。
【0021】
反応後の混合物は、分離工程3において、遠心分離、濾過等により粗テレフタル酸ケーキと酸化反応母液とに固液分離され、次いで乾燥工程4において乾燥されて粗テレフタル酸が得られる。
【0022】
分離工程3において、粗テレフタル酸ケーキから分離された酸化反応母液は、酸化反応工程に循環使用するが、一部は連続的に以下の触媒回収工程に供給され、当該工程を経て酸化反応工程2に循環再利用される。
【0023】
この触媒回収工程では、最初に、酸化反応母液を蒸発器に導入し、大気圧下、105℃〜230℃の温度で、単段または多段で濃縮する。反応溶媒として酢酸と水との混合液を用いた場合には、濃縮時に生成する酢酸と水との混合ガスは、冷却後、酢酸水溶液として、酸化反応工程2で再利用される。
【0024】
得られた濃縮物は、保温用の熱媒が流れるジャケットが付設された攪拌槽に供給され、濃縮物に対して0.1〜10質量倍量の熱水が加えられ、強攪拌下、65℃〜300℃の温度で、10分〜300分の間熱水処理される。この熱水処理により、濃縮物に含まれる有機臭素化合物のうち主成分である水難溶性のα−ブロモメチル安息香酸が加水分解されて無機臭素化合物に転化し、有機臭素化合物のほとんどを熱水相に溶解させることができる。熱水相に溶解した重金属溶媒や臭素触媒は、造粒処理においてもそのほとんどが水相に移行することから、酸化触媒の回収率を総合的に高めることができる。
【0025】
この熱水処理工程により得られた熱水スラリーは、その後、造粒槽11へ連続的に供給される。造粒槽11では、熱水スラリーに対して0.1〜10質量倍量の水が加えられ、攪拌下、20℃〜60℃の温度で10分〜30分の間、固体残渣が造粒処理される。これにより、安息香酸等の芳香族有機酸が完全に固化し、平均粒径1.4mm〜2.0mmの造粒スラリーが得られる。
【0026】
造粒槽11に貯留されたスラリーは、配管41を通じて、その途中に設けられたポンプ16により遠心分離機14に輸送され、固液分離される。分離された触媒水溶液は、加熱濃縮を経て、酸化反応工程2に回収される。また、触媒水溶液に含まれる重金属触媒のみ、炭酸塩として回収される場合もある。一方、固体残渣は工程外に除去される。
【0027】
以上の触媒回収工程では、前述したように、造粒槽11からのスラリーが下流へ輸送される配管41内において、スラリーからの固形物等が管内壁面に付着し、それが成長することによる管内の閉塞がしばしば発生した。
【0028】
本実施例では、このような配管41の閉塞の進行を検知して、事前に閉塞を洗浄するための閉塞検知システムを備えている。この閉塞検知システムは、図1の液面レベル検知装置12と、配管41の途中に設けられた制御弁13と、閉塞検知装置21と、を備えている。
【0029】
液面レベル検知装置12は、造粒槽11におけるスラリーの液面レベルを検知するものであり、液面レベル検知装置12からの液面レベルを示す信号に基づいて、制御弁13の弁開度が調節される。液面レベルが増加傾向にあるときは、制御弁13の弁開度を大きくし、減少傾向にあるときは、制御弁13の弁開度を小さくすることにより、造粒槽11におけるスラリーの液面レベルを一定に保つようにしている。
【0030】
液面レベル検知装置の具体例としては、(i)差圧式液面計、(ii)フロート式液面計
、(iii)放射線式液面計などの液面計を挙げることができる。
(i)差圧式液面計では、測定したい範囲の0%の位置と100%の位置(ドラムの下部と上部)にノズルを設け、この間の差圧を測定する。液面の高さの変化で差圧が変化する
ため、液面を測定できる。
【0031】
(ii)フロート式液面計では、液面に実際にフロートを浮かべ、これの変動を測定して液面を測定する。
(iii)放射線式液面計では、容器の片側に放射線の線源、その反対側に測定器を設置
し、液の上下による、測定器に達する放射線の強度の変化によって液面を測定する。
【0032】
制御弁13の具体例としては、ボール弁、グローブ弁、バタフライ弁、ゲート弁などが挙げられる。
閉塞検知装置21は、配管41における閉塞の進行を判別し、その結果に基づいて、必要に応じて自動的に洗浄を行うための制御を実行するためのプログラムおよびその他のデータ等を格納する記憶装置や、当該プログラムに従って演算処理を実行する演算処理装置などを備えたコンピュータから構成されている。
【0033】
閉塞検知装置21には、運転時において、制御弁13の弁開度を示すデータと、遠心分離機14を一定速度で回転させるモータ14aの電流を電流計15により計測した電流値のデータとが、連続的に入力される。
【0034】
遠心分離機の具体例としては、デカンタ型、バスケット型、ディスク型等が挙げられる
が、本実施例においては、デカンタ型縦型遠心分離機を用いている。
これらの弁開度のデータおよびモータ14aの電流値のデータからなる入力値は、閉塞検知装置21に予め設定されている条件と比較され、配管41内において閉塞が進行しているか否かが判別される。
【0035】
ここで、上記条件は、配管41の閉塞進行時に起こり得る経験的に得られた条件であり、例えば、弁開度のデータとモータ電流値のデータとの組み合わせが、通常の運転状態に対応するものとは異なるようになった時間が一定時間を超えた場合が相当する。一例としては、制御弁13の弁開度が通常30%で運転されているものが、70%の開度となり、さらに、電流計15の電流値が通常30A以上で運転されているものが、30A以下になり、かつ、その状態が1分以上続いた場合に、配管41内の閉塞が進行していると判別される。
【0036】
弁開度、モータ電流値および時間からなる閾値の組み合わせ条件は、複数設定することができる。具体的には、例えば下記(1)〜(3)の3つの条件:
(1)電流値が27A以下でかつ弁開度が50%以上である状態が2分続いた
(2)電流値が30A以下でかつ弁開度が70%以上である状態が1分続いた
(3)電流値が30A以下でかつ弁開度が95%以上である状態が20秒続いた
のそれぞれを、配管41内の閉塞が進行しているか否かの判別条件として設定することができる。この場合、上記(1)〜(3)のうちいずれか1つの条件に相当した場合には、配管41内の閉塞が進行していると判断される。
【0037】
以上において、配管41内の閉塞が進行すると、制御弁13は、造粒槽11におけるスラリーの液面レベルをできるだけ一定に保つために、弁開度を大きくするように制御される。したがって、制御弁13の弁開度のデータのみに基づいて閉塞の判別を行ってもある程度の傾向を捉えることは可能である。しかし実際には、弁開度のデータのみでは必ずしも正確には閉塞の進行を捉えることができない場合がある。
【0038】
そこで、本実施例では、遠心分離機14のモータ電流値をさらに判別因子として加えている。遠心分離機14の回転数は、4500rpmであるが、配管41の閉塞が進行すると、遠心分離機14に達するスラリーの流量が低下して遠心分離機14への負荷が小さくなるため、消費電力が低下して電流値が小さくなることから、モータ電流値は配管41の閉塞と相関を有している。
【0039】
このように、遠心分離機14のモータ電流値を配管41の閉塞の進行を検知するための判別因子としてさらに加えることで、十分に精度良く閉塞の進行を判別することができる。
【0040】
上記判別の結果、配管41内において閉塞が進行していないと判別された場合には、引き続き運転が続行される。一方、配管41内において閉塞が進行していると判別された場合には、閉塞検知装置21は、配管41内を洗浄するために、予め格納された洗浄用プログラムに従って、弁や洗浄用媒体導入装置31等を遠隔制御する。
【0041】
洗浄用プログラムに書き込まれる配管閉塞箇所の洗浄方法は、製造工程に影響を与えず、かつ閉塞箇所の洗浄を確実に行える方法であればよい。この時の洗浄範囲については、閉塞箇所のみに留まらず、その下流、上流についても、固形物等の付着が懸念される箇所については、工程の運転に影響を与えない範囲でできる限り広い範囲とするのが望ましい。例えば、閉塞発生頻度の高い箇所の上流にポンプが設置されている場合、プログラム起動時には、そのポンプの上流側から洗浄液等を注入することが望ましい。
【0042】
具体的には、閉塞検知装置21は、各機器への制御信号等を送信する等によって、次の操作を行うように遠隔制御する。通常の運転状態では、弁51a,51dが開放し、弁51b,51c,51eが閉じた状態でポンプ16が起動し、制御弁13によって造粒槽11の液面を一定に保ちながら運転している。
【0043】
閉塞検知装置21は、上述のように配管41の閉塞の予兆を検知すると、最初にポンプ16を停止し、上流側の弁51aおよび下流側の弁51dを閉じ、排水溝52aを配管41に連通させる弁51cと、排水溝52bを配管41に連通させる弁51eとを開放する。
【0044】
この状態で、弁51bを開放し、洗浄用媒体導入装置31の洗浄液タンク31aから配管41内へアルカリ性洗浄液が注入される。
次に、弁51cを閉じ、ポンプ16を起動することにより洗浄液をさらに配管41内へ注入する。その後、ポンプ16を停止することにより、洗浄液注入を停止する。
【0045】
その後、置換用媒体導入装置32の置換液タンク32aから配管41内へ、弁51bを通じて置換液である水を注入する。
次に、弁51bを閉じ、弁51dを開放した後、ポンプ16を起動する。そして、制御弁13の弁開度低下を確認されれば、通常の運転状態となり、本実施例の閉塞検知システムによる監視を受けながら運転が継続される。
【0046】
なお、洗浄用媒体導入装置31は、洗浄用媒体を配管41内に導入するものであるが、例えば、洗浄液タンク31a、弁51b、ポンプ16などを要素として構成することができる。置換用媒体導入装置32も同様に、置換液タンク32a、弁51b、ポンプ16などを要素として構成することができる。
【0047】
本実施例の閉塞検知システムを構築して、実際にテレフタル酸製造装置に適用して運転を行った。閉塞検知装置21における閉塞進行の判別条件としては、弁開度、電流値および時間からなる閾値の組み合わせ条件が、上記(1)〜(3)の3つの条件のいずれかに該当する場合とした。
【0048】
その結果、配管41の閉塞が自動的に検知され、閉塞の進行が検知されると、洗浄システムが自動的に起動して、当該閉塞箇所の洗浄が行われた。なお、配管41の分解および貫通作業は、皆無であった。
【0049】
一方、上記閉塞検知システムを適用しないで、従来のように運転員による閉塞監視を行った場合には、およそ4日に1回の割合で、閉塞を原因とする配管の分解、貫通作業を実施した。
【0050】
以上、実施例に基づき本発明について説明したが、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではなく、各種の変形、変更が可能である。
例えば、上記実施例では、テレフタル酸の製造工程に本発明のシステムを適用した例を示したが、他の原料化合物を用いた芳香族カルボン酸の製造工程、さらには他の化学物質の製造装置であっても、スラリー等の固液混合流体が液面を所定のレベルに保ちながら貯留される貯留槽から、当該流体を固液分離するための分離機へ当該流体を輸送する配管内における固形物の付着による当該配管の閉塞の進行を検知するために本発明を適用できる。
【0051】
配管の閉塞進行を検知した後、洗浄用媒体導入装置による洗浄を行うための洗浄用媒体としては、当該配管を閉塞させた物質を取り除くことができる各種の洗浄液、気体等を用
いることができる。その具体例としては、苛性ソーダ水溶液、水蒸気、窒素ガス等が挙げられる。
【0052】
上記実施例のように、洗浄液が、配管に残留した場合に生産される化学物質の品質に影響を与え得る物質である場合には、洗浄終了後に、生産される化学物質に影響を与えない物質により配管内を置換することが好ましい。このような置換用媒体としては、洗浄液の種類にもよるが、純水、窒素ガスなどが挙げられる。
【0053】
洗浄時間については、洗浄期間中に貯留槽などの機器からの流体の排出または機器への流入が遮断される場合で、かつ、これらの機器内での流体の保持量に上限または下限が存在する場合には、それらの限界に対して余裕がある範囲内とすることが望ましい。但し、配管をバイパスするライン等が設置されており、洗浄プログラムの起動期間にも通常通りの流体の流入、排出がなされる場合にはこの限りではない。
【0054】
本発明では、上記の置換作業まで自動で行うことができるため、本発明のシステムの作動による運転員の作業は一切発生することはない。ただし、運転員による補助を追加した方が正確に、かつ効率的に配管内における閉塞箇所の洗浄を行える場合には運転員による補助作業を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る流体輸送用配管の閉塞検知システムの実施例を、液相酸化によるテレフタル酸の製造装置に適用した構成を概略的に示した図である。
【符号の説明】
【0056】
1 原料
2 酸化反応工程
3 分離工程
4 乾燥工程
11 造粒槽
12 液面レベル検知装置
13 制御弁
14 遠心分離機
14a モータ
15 電流計
16 ポンプ
21 閉塞検知装置
31 洗浄用媒体導入装置
31a 洗浄液タンク
32 置換用媒体導入装置
32a 置換液タンク
41 配管
51a 弁
51b 弁
51c 弁
51d 弁
51e 弁
52a 排水溝
52b 排水溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固液混合流体が液面を所定のレベルに保ちながら貯留される貯留槽から、当該流体を固液分離するための分離機へ当該流体を輸送する配管内における固形物の付着による当該配管の閉塞の進行を検知するための流体輸送用配管の閉塞検知システムであって、
前記貯留槽における前記流体の液面レベルを検知する液面レベル検知装置と、
前記配管の途中に設けられ、前記液面レベル検知装置からの信号に基づいて弁開度を調節する制御弁と、
前記制御弁の弁開度と、前記分離機の運転状態を示すモータの電流値とからなる入力値を、予め設定された条件と比較して、前記配管内において閉塞が進行しているか否かを判別する閉塞検知装置と、
を備えることを特徴とする流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項2】
前記分離機が遠心分離機であることを特徴とする請求項1に記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項3】
前記閉塞検知装置が前記配管内において閉塞が進行していると判別した場合に、前記閉塞検知装置からの遠隔操作によって前記配管内に洗浄用媒体を導入する洗浄用媒体導入装置を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項4】
前記閉塞検知装置が前記配管内において閉塞が進行していると判別した場合に、前記閉塞検知装置からの遠隔操作によって、前記洗浄用媒体により前記配管内を洗浄した後、当該配管内に置換用媒体を導入する置換用媒体導入装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項5】
前記貯留槽は、液相酸化による芳香族カルボン酸の製造装置における、酸化反応後の混合物から分離された触媒含有母液の造粒槽であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項6】
前記芳香族カルボン酸は、テレフタル酸であることを特徴とする請求項5に記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項7】
前記洗浄用媒体は、アルカリ性洗浄液、蒸気、または気体であることを特徴とする請求項5または6に記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。
【請求項8】
前記洗浄用媒体は、アルカリ性洗浄液であり、
当該アルカリ性洗浄液を前記配管内に導入して当該配管内を洗浄した後、当該配管内に置換用媒体である水を導入することを特徴とする請求項7に記載の流体輸送用配管の閉塞検知システム。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−1639(P2008−1639A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172931(P2006−172931)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】