説明

流体駆動ポンプ

【課題】 部品に汎用性を持たせて様々な仕様に容易に対処でき、安価に流体駆動ポンプを製作できるようにする。
【解決手段】 2つの流体作用部11と、各流体作用部11を互いに連結する連結部12とを備え、各流体作用部11が、羽根車16と、回転体17と、主ケーシング15とを有し、主ケーシング15が、流通口19,20と、羽根車室23と、回転体室25と、羽根車室と回転体室とを区画する隔壁21とを有し、羽根車16と回転体17とが、隔壁21を隔てて一体回転自在に磁気結合され、連結部12が、各主ケーシング15を連結する連結ケーシング32と、各回転体17を連動連結する連結軸とを有し、一方の流体作用部11が、流体により羽根車16を回転し、回転体17を介して連結軸33に回転動力を伝達するモーター部Mを構成し、他方の流体作用部11が、連結軸33からの回転動力で回転体17を介して羽根車16を回転するポンプ部Pを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体駆動ポンプ、特に、水等の流体を駆動源とし、マグネットカップリングを介してポンプ羽根車を回転するタイプの流体駆動ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流体駆動ポンプとして、下記特許文献1に記載のものがある。
この技術は、強制循環される一次側流体を回転力の駆動源とする駆動羽根車と、二次側流体を循環させるポンプ羽根車と、一次側流体と二次側流体とを気密に分離する隔壁と、駆動羽根車に取り付けられた駆動側マグネットと前記ポンプ羽根車に取り付けられたポンプ側マグネットとを前記隔壁を介して対向させて磁気結合したマグネットカップリングと、を備えたものである。
【0003】
【特許文献1】特開平6−185489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のような従来の流体駆動ポンプは、駆動羽根車及びポンプ羽根車のサイズ等に応じて、マグネットカップリングやケーシング、隔壁の形状が決定される。そのため、羽根車のサイズ等が異なる製品間で、マグネットカップリングやケーシング等の部品を流用するのは困難である。例えば、ある既存の製品の一方の羽根車のサイズ等を設計変更し、新たな製品を製作する場合は、マグネットカップリングやケーシング全体も新たに設計し、製作する必要がある。したがって、従来技術は、ある特定種類の製品の大量生産には向いているが、使用する場所等に応じてその都度仕様変更する必要がある場合には、コスト高となり、不向きである。
【0005】
本発明の目的は、部品に汎用性を持たせて様々な仕様に容易に対処でき、安価に製作することができる流体駆動ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体を駆動源として作動する流体駆動ポンプであって、2つの流体作用部と、2つの流体作用部を互いに連結する連結部と、を備えており、各流体作用部が、それぞれ羽根車と、回転体と、前記羽根車及び前記回転体を収容する主ケーシングと、を有し、前記主ケーシングが、流体が流通する第1,第2流通口と、該第1,第2流通口に連通され且つ前記羽根車を回転自在に収容する羽根車室と、前記回転体を回転自在に収容する回転体室と、前記羽根車室と回転体室とを区画する隔壁と、を有し、前記羽根車が、前記第2流通口から前記第1流通口に流れる流体によって回転するモーター機能と、回転することによって前記第1の流通口から流体を吸引し前記第2流通口から吐出するポンプ機能と、を有し、前記羽根車と前記回転体とが、前記隔壁を隔てて一体回転自在に磁気結合されており、前記連結部が、各流体作用部の主ケーシングを互いに連結する連結ケーシングと、該連結ケーシング内に配置され且つ各流体作用部の回転体を互いに連動連結する連結軸と、を有しており、一方の流体作用部が、前記モーター機能によって羽根車を回転し、前記回転体を介して前記連結軸に回転動力を伝達するモーター部を構成し、他方の流体作用部が、前記連結軸からの回転動力で前記回転体を介して前記羽根車を回転し、前記ポンプ機能を発揮するポンプ部を構成していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、次の効果を奏する。
(1)例えば、既存の製品に対し、一方の流体作用部のサイズ等を設計変更した製品を新たに製作する場合には、当該流体作用部のみを変更し、他方の流体作用部及び連結部はそのまま既存製品のものを流用することができる。したがって、部品の汎用性をもたせることができ、様々な仕様に容易に対処することができる。
【0008】
(2)例えば、既存の製品に対し、2つの流体作用部の間隔等の配置を設計変更した製品を新たに製作する場合には、連結部の構成のみを変更し、2つの流体作用部はそのまま既存製品のものを流用することができる。したがって、部品の汎用性を持たせることができ、様々な仕様に容易に対処することができる。
【0009】
(3)流体作用部として、主ケーシング、羽根車、及び回転体によって構成された、市販品のマグネットポンプをそのまま用いることができるため、安価に潤滑給油ポンプを製作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る流体駆動ポンプ10の正面図であり、図2は、同側面図である。流体駆動ポンプ10は、流体の力、例えば水力を駆動源として作動し、潤滑油等の他の流体を吸引して吐出するものである。この流体駆動ポンプ10は、2つの流体作用部11と、2つの流体作用部11を連結する連結部12とを有している。流体作用部11は、流体に対して作用する、又は流体から作用を受けるものである。
【0011】
図3は、図2のIII−III矢視断面図である。2つの流体作用部11は、全く同一の構成であり、各流体作用部11は、マグネットカップリングを用いて羽根車16を回転する、所謂マグネットポンプの形態とされている。そして、一方の流体作用部11はモーターとして機能し、他方の流体作用部11はポンプとして機能するようになっている。
【0012】
図1及び図3の例では、左側の流体作用部11がモーター部M、右側の流体作用部11がポンプ部Pとされている。各流体作用部11を構成するマグネットポンプは、市販のものが用いられている。
【0013】
各流体作用部11は、主ケーシング15と、羽根車16と、回転体17と、を備えている。主ケーシング15は、第1,第2,及び第3構成体18,21,24によって分割構成されている。第1,第2,及び第3構成体18,21,24は、この順で重ね合わせられると共に、外周部でボルトによって互いに連結されている。
【0014】
第1構成体18は、円筒状の周壁18Aと、周壁18Aの軸方向外端部に設けられた外端壁18Bと、軸方向内端部に設けられた内端壁18Cとを有している。外端壁18Bの中央には、外方に突出する筒形の第1流通口19が形成され、内端壁18Cは、中央の大部分が開口(31)されている。周壁18Aには、略接線方向に筒形の第2流通口20が形成されている。
【0015】
モーター部Mである左側の流体作用部11では、第2流通口20が、駆動源としての水(流体)の入口となり、第1流通口19が出口となる。逆に、ポンプ部Pである右側の流体作用部11では、第1流通口19が流体の入口となり、第2流通口20が出口となっている。
【0016】
第2構成体21は、円筒状の外周壁21Aと、外周壁21Aの径方向内方に間隔をあけて配置された内周壁21Bとを有し、外内周壁21A,21Bの軸方向外端部が外端壁21Cによって接続されている。内周壁21Bの軸方向内端部は、内端壁21Dによって閉塞されている。
【0017】
第1構成体18と第2構成体21との合わせ面には、Oリング等のシール部材22が設けられ、両者間の水密が保持されている。第1構成体18と第2構成体21との間には、前記羽根車16を回転自在に収容する羽根車室23が形成されている。
【0018】
第3構成体24は、円筒状の外周壁24Aと、外周壁24Aの軸方向内端部に設けられた内端壁24Bとを有している。外周壁24Aの軸方向外端部は、第2構成体21の外周壁21Aの軸方向内端部に突き合わされている。第2構成体21と第3構成体24の間には、前記回転体17を回転自在に収容する回転体室25が形成されている。
【0019】
羽根車16は、中心部が支軸26によって回転自在に支持されている。支軸26は、軸方向の各端部がそれぞれ第1構成体18と第2構成体21とに回転自在に支持されている。羽根車16は、軸心方向の外端部に羽根部27を有し、羽根部27は第1構成体18内に配置されている。モーター部Mの羽根部27は、第2流通口20から流入した流体を、外周部から受け入れて回転し、中心部から第1流通口19に排出する。ポンプ部Pの羽根部27は、回転することによって、第1流通口19から中心部に流体を吸引し、外周部から第2流通口20に排出する。
【0020】
羽根車16の軸方向内端部の外周部には内側マグネット28が設けられている。内側マグネット28は、第2構成体21の内周壁21Bの内周面に対向して配置されている。
【0021】
回転体17は、有底円筒状に形成されており、第2構成体21の内周壁21Bの外周面に対向する配置で外側マグネット29を備え、軸方向内端部に、被連結部30を備えている。この被連結部30は、第3構成体24の内端壁24B中央に形成された開口から突出し、後述する連結軸33に連結されている。
【0022】
羽根車16の内側マグネット28と、回転体17の外側マグネット29とは、第2構成体21によって構成される隔壁によって水密的に隔離され、磁力によって吸引し合うことで磁気結合され、一体的に回転するようになっている。
【0023】
連結部12は、連結ケーシング32と、連結軸33とを有している。連結ケーシング32は、筒形状を呈しており、軸方向の両端部にフランジ部34を備えている。連結ケーシング32の下部には、台座35が設けられている。各フランジ部34には、それぞれモーター部M、ポンプ部Pの第3構成体24がボルト等によって連結されている。
【0024】
連結軸33は、連結ケーシング32内に配設され、第3構成体24の内端壁24B中央の開口に設けられた軸受を介して回転自在に支持されている。連結軸33の各端部は、回転体17の被連結部30に挿入され、ナット36を締結することによって被連結部30に一体回転可能に固定されている。
【0025】
図4は、本実施形態の流体駆動ポンプ10を用いた潤滑給油システムの回路図である。これは、水力によって流体駆動ポンプ10を駆動し、潤滑油を循環させ、給油対象を潤滑するシステムである。流体駆動ポンプ10は、モーター部Mである流体作用部11に、水道等の駆動源38が接続され、ポンプ部Pである流体作用部11に、給油対象となる装置に設けられたオイルパン等の潤滑油槽37が接続されている。
【0026】
モーター部Mは、例えば、水圧0.2〜0.3MPa、流量12l/minの水が供給され、羽根車16を回転し、ポンプ部Pに駆動力を伝達する。モーター部Mから排出された水は、廃棄されるか、又は水源等に戻される。
【0027】
潤滑油槽37の潤滑油は、ポンプ部Pによって吸い出されると共に給油対象に送られ、再度潤滑油槽37に戻されるようになっている。
【0028】
[本実施形態の効果]
(1)本実施形態の流体駆動ポンプ10は、水等の流体を駆動源として作動するため、電気のない場所や、防爆区域において適切に利用することができる。例えば、発電所においては、原子力発電設備等の主発電設備と、火力発電設備等の予備発電設備とがあり、予備発電設備は、主発電設備の非常時等に迅速に稼働できるよう、待機中も継続的に潤滑しておく必要がある。このような潤滑は、電気を用いずに小さい駆動力で長期的に潤滑油を少量ずつ供給することが求められるため、本実施形態の流体駆動ポンプ10が最適である。
【0029】
(2)2つの流体作用部11は同一の構成であり、しかも、市販品のマグネットポンプを用いているので、非常に安価に製作できる。
【0030】
(3)流体作用部11の仕様(吐出量等)を設計変更する場合には、同じ形状でサイズの異なるマグネットポンプに変更すればよい。すなわち、変更する流体作用部11以外(連結部、他の流体作用部)は同一の構成を流用することができ、変更する流体作用部11も市販のマグネットポンプを自由に選択できるので、様々な仕様に容易に対処することが可能となる。
【0031】
(4)2つの流体作用部11の間隔や配置関係等を設計変更する場合、連結部12のみを変更し、流体作用部11は同一の構成を流用することができる。これによって、様々な仕様に容易に対処することが可能となる。
【0032】
(5)流体作用部11としてマグネットポンプを用いているので、羽根車16の軸部分には漏洩防止のためのシール等を施す必要が無く、回転抵抗が小さくなる。そのため、水力等の小さな駆動力でも円滑に作動することができる。また、シール等を施す必要がないため、当該シール等のメンテナンスが不要となり、保守コストも低減できる。
【0033】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態に限定されることなく適宜設計変更可能である。
(1)上記実施形態では、2つの流体作用部として、同じ形状、同じサイズのものを用いたが、異なるサイズとしてもよい。図4に示したように、潤滑給油ポンプとして本実施形態の流体駆動ポンプを使用する場合、ポンプ部Pの羽根車16は、回転数を上げるために、モーター部Mの羽根車16よりも小さくするのが好ましい。
【0034】
(2)本発明の流体駆動ポンプは、駆動源として油等の水以外の流体を用いることができ、吸引吐出する流体も油に限られず、あらゆる流体を用いることができる。
【0035】
(3)上記実施形態の図3において、左側の流体作用部11をポンプ部Mとして用い、右側の流体作用部11をモーター部Pとして用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の流体駆動ポンプは、電気のないところや発電所等の防爆区域等において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態に係る流体駆動ポンプの正面図である。
【図2】同側面図である。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】本実施形態の流体駆動ポンプを用いた潤滑給油システムの回路図である。
【符号の説明】
【0038】
10 流体駆動ポンプ
11 流体作用部
12 連結部
13 モーター部
14 ポンプ部
15 主ケーシング
16 羽根車
17 回転体
23 羽根車室
25 回転体室
32 連結ケーシング
33 連結軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を駆動源として作動する流体駆動ポンプであって、
2つの流体作用部と、2つの流体作用部を互いに連結する連結部と、を備えており、
各流体作用部が、それぞれ羽根車と、回転体と、前記羽根車及び前記回転体を収容する主ケーシングと、を有し、
前記主ケーシングが、流体が流通する第1,第2流通口と、該第1,第2流通口に連通され且つ前記羽根車を回転自在に収容する羽根車室と、前記回転体を回転自在に収容する回転体室と、前記羽根車室と回転体室とを区画する隔壁と、を有し、
前記羽根車が、前記第2流通口から前記第1流通口に流れる流体によって回転するモーター機能と、回転することによって前記第1の流通口から流体を吸引し前記第2流通口から吐出するポンプ機能と、を有し、
前記羽根車と前記回転体とが、前記隔壁を隔てて一体回転自在に磁気結合されており、
前記連結部が、各流体作用部の主ケーシングを互いに連結する連結ケーシングと、該連結ケーシング内に配置され且つ各流体作用部の回転体を互いに連動連結する連結軸と、を有しており、
一方の流体作用部が、前記モーター機能によって羽根車を回転し、前記回転体を介して前記連結軸に回転動力を伝達するモーター部を構成し、
他方の流体作用部が、前記連結軸からの回転動力で前記回転体を介して前記羽根車を回転し、前記ポンプ機能を発揮するポンプ部を構成していることを特徴とする、流体駆動ポンプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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