説明

流動床ガス化装置

【課題】流動床ガス化装置においてガス化反応に必要な加熱量を低減する。
【解決手段】流動床反応槽3は、内側に配置された加熱燃焼室14で発生する熱で加熱される。また、流動床反応槽3の外側に排ガス通路16が設けられている。加熱燃焼室14内での燃焼により発生した排ガスは、加熱燃焼室14内を上昇し、排ガス導入管路21を介して排ガス通路に導かれて降下した後に、排ガス出口17から炉外に取り出される。流動床反応槽3は排ガス通路16を通る排ガスによっても加熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床ガス化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の流動床ガス化装置では、流動床におけるガス原料のガス化により発生したガスは、炉壁の上部側から取り出される(例えば非特許文献1参照)。ガス化反応が起こる炉内の温度は、例えば600°〜800°程度とする必要があるので、炉壁の断熱を十分に行って熱拡散を防止すると共に、十分な加熱量を確保する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】社団法人日本エネルギー学会編、「バイオマスハンドブック」、第1版、株式会社オーム社、2002年9月20日、p.94-95, 213-217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、流動床ガス化装置において、ガス化反応に必要な加熱量を低減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炉外壁で囲まれた炉内に配置された外側仕切壁と、この外側仕切壁の内側に配置された内側仕切壁とを有し、前記外側仕切壁と前記内側仕切壁との間の反応室内に流動床が形成される流動床反応槽と、前記内側仕切壁で囲まれた空間であって前記流動床反応槽の加熱のために燃料を燃焼させる加熱燃焼室と、前記外側仕切壁と前記炉外壁との間の空間である排ガス通路と、前記加熱燃焼室の上端側と前記排ガス通路の上端側とを接続する排ガス導入路と、前記炉外壁の下端側に設けられた前記排ガス通路と連通する排ガス出口とを備え、前記加熱燃焼室内での燃焼により発生して前記加熱燃焼室内を上昇した排ガスを、前記排ガス導入路を介して前記排ガス通路に導いて降下させ、前記排ガス出口から炉外に取り出すようにしていることを特徴とする、流動床ガス化装置を提供する。
【0006】
流動床反応槽は、その内側に配置された加熱燃焼室での燃焼により発生する熱で加熱される。また、流動床反応槽は、その外側に配置された排ガス通路を降下する排ガスが有する熱によっても加熱される。このように流動床反応槽を内側(加熱燃焼室)と外側(排ガス通路)の両方から加熱することで、効率的に流動床反応槽を加熱できる。また、流動床反応槽と炉外の大気との間に排ガス通路を介在させることで得られる断熱効果により、流動床反応槽から大気中への放熱を効果的に抑制できる。
【0007】
前記流動床反応槽の反応室に流動床用ガスを導入するための管路が、前記加熱燃焼室を通過するように配置されていることが好ましい。
【0008】
この構成により、加熱燃焼室を通過することで予め加熱された流動床用ガスが流動床反応槽の反応室に供給されるので、反応室内の加熱を一様化できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流動床ガス化装置によれば、流動床反応槽を内側(加熱燃焼室)と外側(排ガス通路)の両方から加熱することで効率的に流動床反応槽を加熱できる上、流動床反応槽と炉外の大気との間に排ガス通路を介在させることで得られる断熱効果によって流動床反応槽から大気中への放熱を効果的に抑制できる。また、流動床用ガスを導入するための管路は加熱燃焼室を通過するので、加熱燃焼室で予熱済みの流動床用ガスを供給することで、反応室内の加熱を一様化できる。その結果、流動床反応槽の反応室内での反応に必要な加熱量を低減することができ、エネルギー削減とそれによる経済性向上を図ることができる。さらに、流動床反応槽の放熱が抑制されるため、反応室における燃焼加熱が不要になる。その結果、本発明の流動床反応槽では、反応室に供給する流動床用ガスを無酸素にして反応室からのガス発生量を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る流動床ガス化装置の模式的な断面図。
【図2】図1のII−II線での模式的な断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1及び図2は本発明の実施形態に係る流動床ガス化装置1を示す。この流動床ガス化装置1では、ガス原料(本実施形態では木屑)を、例えば砂、アルミナ等の粒子である流動材を流動床用ガスによって流動化させて形成した流動床中で撹拌しつつ加熱して熱分解させ、燃料として使用される可燃性のガスを発生させる。
【0013】
流動床ガス化装置1は、本実施形態では円筒状である炉外壁2を備える。炉外壁2の上端には天壁部2aが設けられ、下端には底壁部2bが設けられている。図1及び図2で図示を省略しているが、炉外壁2の外側には断熱材が配置されている。
【0014】
炉外壁2で囲まれた炉内に、流動床反応槽3が収容されている。流動床反応槽3は炉外壁2の内側に間隔を隔てて配置された筒状の外側仕切壁4と、この外側仕切壁4のさらに内側に間隔を隔てて配置された同じく筒状の内側仕切壁5を備える。外側仕切壁4の上端は炉外壁2の天壁部2aで閉鎖され、内側仕切壁5の上端は天壁部2aに装着された蓋体6によって閉鎖されている。一方、外側仕切壁4の下端には外側底壁部4aが設けられ、内側仕切壁5の下端には内側底壁部5aが設けられている。
【0015】
外側仕切壁4と内側仕切壁5の間に形成された概ね筒状の空間は、流動床反応槽3の反応室7として機能する。この反応室7の下端側は外側底壁部4aと下側底壁部5aとの間に形成された隙間を介して互いに連通している。反応室7の底にあたる外側底壁部4aには、反応室7内に流動床用ガスを上向きに供給するための下側ガス供給口8が設けられている。また、内側仕切壁の高さ方向中央付近には、反応室7内に流動床用ガスを横向きに供給するための上側ガス供給口9が設けられている。この上側ガス供給口9に流動床用ガスを送るためのガス供給管路11は、炉外から外側底壁部4aと下側底壁部5aを貫通し、内側仕切壁5内の空間(後述する加熱燃焼室14)を内側仕切壁5に沿って上向きに延びている。ガス供給管路11は、上端に上側ガス供給口9が接続される一方、反応室7の底部側において反応室7内で流動床用ガスを循環させるためのガス口12に接続されている。
【0016】
流動床反応槽3内で発生した可燃性のガス(本実施形態ではバイオガス)を取り出して例えば発電用のガスエンジンへ供給するために、天壁部2aに生成ガス取出口13が設けられている。
【0017】
流動床反応槽3の内側仕切壁5で囲まれた概ね円柱状の空間は、加熱燃焼室14として機能する。蓋体6を貫通して加熱燃焼室14内に下向きに延びるように、加熱管15が配置されている。加熱管15には炉外に位置する上端側から気体燃料(例えばLPG)と燃焼用の空気が供給される。気体燃料と燃焼空気の混合気体は加熱燃焼室14内に位置している加熱管15の噴出口15aから噴出され、加熱燃焼室14内で生じる気体燃料が燃焼する。
【0018】
流動床反応槽3の外側仕切壁4と炉外壁2とで囲まれた概ね円筒状の空間は、排ガス通路16として機能する。炉外壁2の下端側には排ガス通路16と連通する排ガス出口17が設けられている。
【0019】
加熱燃焼室14の上端側には蓋体6に排ガス取出口18が設けられている。一方、排ガス通路16の上端側には天壁部2aに排ガス取込口19が設けられている。排ガス取出口18と排ガス取込口19とは、排ガス導入管路21で互いに接続されている。
【0020】
次に、本実施形態の流動床ガス化装置1の運転動作を説明する。流動床反応槽3の反応室7へ図示しない投入口から投入された木屑は、下側及び上側ガス供給口8,9から供給される流動床用ガス(一点鎖線)で形成される流動床において撹拌しつ加熱されて熱分解しガス化する。反応室7内の温度は例えば600℃〜800℃程度となる。反応室7で発生した可燃性のガス(破線)は生成ガス取出口13から取り出される。
【0021】
以下に詳述するように、流動床反応槽3は内側と外側の両方から加熱される。まず、流動床反応槽3は、その内側に配置された加熱燃焼室14での燃焼により発生する熱で加熱される。加熱燃焼室14は例えば600℃〜1000℃程度となる。次に、加熱燃焼室14での燃焼により発生する排ガス(実線)は、加熱燃焼室14内を上昇して排ガス取出口18から排ガス導入管路21へ入る。排ガスは、排ガス導入管路21で流れの向きが上向きから下向きに折り返された後に、排ガス取込口19から排ガス通路16内に導かれる。導入された排ガスは排ガス通路16内を降下して、排ガス出口17から炉ガスに取り出される。そして、流動床反応槽3は、排ガス通路16を降下する排ガスが有する熱によっても加熱される。以上のように流動床反応槽3を内側(加熱燃焼室14)と外側(排ガス通路16)の両方から加熱することで、効率的に流動床反応槽3を加熱できる。
【0022】
また、流動床反応槽3と炉外の大気との間には、前述のように排ガスが導入される排ガス通路16を介在させているので、高い断熱効果が得られる。そのため、流動床反応槽3から大気中への放熱を効果的に抑制できる。
【0023】
さらに、流動床反応槽3の反応室7に流動床用ガスを導入するためのガス供給管路11は、加熱燃焼室14を通過して上側ガス供給口9まで達している。そのため、加熱燃焼室14で予め加熱された流動床用ガスが上側ガス供給口9から反応室7に供給されるので、反応室7内の加熱を一様化できる。
【0024】
以上のように、本実施形態の流動床ガス化装置1では、特に、流動床反応槽3を内側と外側の両方から効率的に加熱すること、流動床反応槽3と炉外の大気の間に排ガス通路16を設けることで断熱性を高めていること、及び加熱燃焼室14を通過させて予熱済みの流動床用ガスを供給することで反応室7内の加熱を一様化したことを特徴としている。これらの特徴により流動床反応槽3の反応室7内での反応に必要な加熱量を低減することができ、エネルギー削減とそれによる経済性向上を図ることができる。
【0025】
その上、本実施形態の流動床ガス化装置1では、流動床反応槽3の放熱が抑制されるため、反応室における燃焼加熱が不要である。その結果、本発明の流動床反応槽3の反応室に供給する流動床用ガスを無酸素とし、反応室からのガス発生量を増加させることができる。
【0026】
図2に最も明瞭に示すように、本実施形態では、炉外壁2と、流動床反応槽3の外側仕切壁4及び内側仕切壁5とはいずれも円柱状である。しかし、流動床反応槽3、加熱燃焼室14、及び排ガス通路16等が必要な機能を発揮できる限り、これらの壁は例えば円錐状等の他の形状であってもよい。
【0027】
木質バイオマスの一例である木屑がガス原料である場合を例に本発明を説明したが、木質バイオマス以外の林産廃棄物バイオマス、農業廃棄物バイオマス、及び食品廃棄物バイオマス、廃プラスチック等をガス原料とする場合にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 流動床ガス化装置
2 炉外壁
2a 天壁部
2b 底壁部
3 流動床反応槽
4 外側仕切壁
4a 外側底壁部
5 内側仕切壁
5a 内側底壁部
6 蓋体
7 反応室
8 下側ガス供給口
9 上側ガス供給口
11 ガス供給管路
12 ガス口
13 生成ガス取出口
14 加熱燃焼室
15 加熱管
15a 噴出口
16 排ガス通路
17 排ガス出口
18 排ガス取出口
19 排ガス取込口
21 排ガス導入管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉外壁で囲まれた炉内に配置された外側仕切壁と、この外側仕切壁の内側に配置された内側仕切壁とを有し、前記外側仕切壁と前記内側仕切壁との間の反応室内に流動床が形成される流動床反応槽と、
前記内側仕切壁で囲まれた空間であって前記流動床反応槽の加熱のために燃料を燃焼させる加熱燃焼室と、
前記外側仕切壁と前記炉外壁との間の空間である排ガス通路と、
前記加熱燃焼室の上端側と前記排ガス通路の上端側とを接続する排ガス導入路と、
前記炉外壁の下端側に設けられた前記排ガス通路と連通する排ガス出口と
を備え、
前記加熱燃焼室内での燃焼により発生して前記加熱燃焼室内を上昇した排ガスを、前記排ガス導入路を介して前記排ガス通路に導いて降下させ、前記排ガス出口から炉外に取り出すようにしていることを特徴とする、流動床ガス化装置。
【請求項2】
前記流動床反応槽の反応室に流動床用ガスを導入するための管路が、前記加熱燃焼室を通過するように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の流動床ガス化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−36291(P2012−36291A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177520(P2010−177520)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【出願人】(504209655)国立大学法人佐賀大学 (176)