説明

流動焼却炉の分散パイプ支持構造

【課題】耐久性に優れるとともに、放熱による熱損失を抑制することができる流動焼却炉の分散パイプ支持構造を提供。
【解決手段】流動焼却炉の炉体下部2に水平方向に挿入された分散パイプ1の炉外側基部に、下方に90度屈曲するダクト5を接続し、このダクト5の下端面をメタルパッキンを介して流動空気のヘッダー管4の上面に接続する。ヘッダー管4の下面は上下方向に変位可能なスプリングハンガー14により弾性支持する。スプリングハンガー14によって上下方向の振動が吸収され、メタルパッキンが水平方向の変位が吸収される。設備の安全性、耐久性が大幅に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動焼却炉の炉体下部に流動用空気を吹き込むために設けられている分散パイプの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流動焼却炉は、炉体下部に設置された分散パイプから供給される高温の流動用空気の圧力によって珪砂などの流動媒体を流動させて流動床を形成し、炉内に投入された廃棄物を高温の流動媒体との接触により瞬時に破壊しつつ焼却する炉である。この構造の焼却炉は体積当たりの焼却能力が大きく、またダイオキシンの発生もないため、近年広く普及している。その一例が特許文献1に示されている。
【0003】
分散パイプは炉体下部に水平方向に挿入されており、炉体下部外周に配置されたヘッダー管に接続されている。図1は従来方式の分散パイプの支持構造であって、分散パイプ1は炉体下部2に取付ノズル3によって取付けられており、ヘッダー管4との間は下方に屈曲するダクト5と、フレキシブルダクト6とを介して接続されていた。
【0004】
ところがこのような流動焼却炉は、炉体内部で大量の流動媒体が上下動しているために常に強い振動が発生している。また分散パイプ1は熱伸び及び流動媒体による磨耗を考慮し、片持ち構造となっている。しかも処理量が200トン/日規模の大型流動焼却炉の場合、分散パイプ1の長さは約3.0m以上に達する。
【0005】
さらに炉体内部は800℃前後の高温となるため、炉体自体にも分散パイプ1にも熱膨張が発生する。従来構造では、フレキシブルダクト6にこれらの上下振動と熱膨張とをともに吸収させていた。しかし分散パイプ1が片持ち構造であることとも関連して、フレキシブルダクト6は絶えず大きな繰り返し荷重を受けることとなり、耐久性が低下するおそれがあった。そこで万一の破損を避けるために早めに交換する必要があるなど、メンテナンスに多くのコストを要していた。
【0006】
また処理容量が200トン/日以上の大型炉では、フレキシブルダクト6の長さが大き
くなるが、伸縮を要する部分であるためにその外周を耐火物によって保温することが困難である。このために内部に高温の流動用空気が流れるフレキシブルダクト6からの放熱が大きく、その分だけ余分の補助燃料を必要とするという問題もあった。処理容量が200トン/日以上の大型炉では特に、ヘッダー管を直管形状とすると取付ノズル3のノズル長
が長くなり、取付ノズル3からの放熱が大きく、その分だけ余分の補助燃料を必要とするという問題もあった。
【特許文献1】特開2001−263634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、耐久性に優れるとともに、放熱による熱損失を抑制することができる流動焼却炉の分散パイプ支持構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、流動焼却炉の炉体下部に水平方向に挿入された分散パイプの炉外側基部に、下方に屈曲するダクトを接続し、このダクトの下端面を水平面内でスライド可能なメタルパッキンを介して流動空気のヘッダー管の上面に接
続するとともに、このヘッダー管の下面を上下方向に変位可能なスプリングハンガーにより弾性支持したことを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、請求項2に記載のように分散パイプの炉外側基部と下方に屈曲するダクトとの間に、垂直面内でスライド可能なメタルパッキンを介在させた構造とすることが好ましい。また請求項3のように、ヘッダー管の下面とスプリングハンガーとの間に、水平面内の変位を許容する滑性シートを介在させた構造とすることが好ましい。また請求項4のように、分散パイプが流動焼却炉の炉体下部に片持支持されたものに特に有効である。さらに請求項5のように、分散パイプが流動焼却炉の炉体下部に多数本平行に挿入されたものであり、ヘッダー管が流動焼却炉の炉体下部外周に配置されたものであることが好ましい。請求項6のように、炉体とヘッダー管間の熱応力を抑制するために、ヘッダー管の形状を炉体に沿って湾曲させておくことが好ましい。
【0010】
本発明は、処理量が200トン/日以上の大型の流動焼却炉に特に有効であり、ヘッダー管の形状を炉体に沿って湾曲させるとともに、取付ノズル・ダクト・垂直管に耐火材を施すことで、炉体とヘッダー管の間に生じる熱応力を抑制するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の流動焼却炉の分散パイプ支持構造によれば、分散パイプの炉外側基部を水平面内でスライド可能なメタルパッキンを介して流動空気のヘッダー管の上面に接続し、ヘッダー管の下面を水平面内でスライド可能な滑性シートと上下方向に変位可能なスプリングハンガーにより弾性支持した。このため、運転中の上下方向の振動はスプリングハンガーのバネ力により吸収され、水平方向の振動および熱応力はメタルパッキン及び滑性シートにより吸収される。このため、従来のガラス繊維等のガスケットの様に振動に対し圧縮せず伸縮性を確保し、シール性を損なうことなく従来のフレキシブルダクトをなくすることができ、耐久性が向上した。また伸縮するフレキシブルダクトをなくしたことにより、分散パイプ支持構造を断熱材によって覆うことが可能となり、放熱による熱ロスも抑制することが可能となった。
【0012】
請求項2の構造とすれば、分散パイプの炉外側基部と下方に屈曲するダクトとの間に、垂直面内でスライド可能なメタルパッキンを介在させたので、上下方向の振動によるシール性の低下をより確実に避けることができる。請求項3の構造とすれば、滑性シートによって水平方向の変位を更に吸収しやすくなる。本発明は請求項5のように、流動焼却炉の炉体下部に多数本平行に挿入された分散パイプを、流動焼却炉の炉体下部外周に配置されたヘッダー管に接続する部分に用いるに適している。また請求項6のように、ヘッダー管の形状を炉体に沿って湾曲させておくことにより、炉体とヘッダー管間の熱応力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図2は本発明の実施形態を示す縦方向の断面図、図3は水平方向の断面図である。従来と同様に、分散パイプ1は炉体下部2に取付ノズル3によって取付けられている。分散パイプ1は片持支持され、図3に示すように分散パイプ1は流動焼却炉の炉体下部2に多数本平行に挿入されたものであるが、その支持構造は基本的に同一である。各分散パイプ1は流動焼却炉の炉体下部外周に配置されたヘッダー管4に接続されて高圧空気を供給され、炉内の流動媒体を流動させるものである。
【0014】
分散パイプ1の炉外側基部には、下方に90度屈曲させたダクト5が接続されている。このダクト5の前端面はフランジ10を介して取付ノズル3に接続され、またこのダクト5の下端面はフランジ11を介してヘッダー管4から延びる垂直管12に接続されている
。従来一般にはこのようなフランジ接続部のシールにはガラス繊維等からなるガスケットが用いられていたのであるが、本発明ではメタルパッキンを用いる。
【0015】
メタルパッキンはステンレス等を変形可能な断面形状に加工したリング状のパッキンであり、市販品を用いることができる。なおメタルパッキンの構造については、例えば特開2002−364750号公報や特開2008−32106号公報に開示されている。この実施形態では、外側がステンレスでありその内部にロックウールを充填したメタルパッキンを用いた。
【0016】
従来のガスケットとは異なり、メタルパッキンはフランジ面内においてスライド可能であり、フランジ10の内部のメタルパッキンは垂直面内でスライド可能であり、フランジ11の内部のメタルパッキンは水平面内でスライド可能である。このようなスライドを許容するためには、2枚の金属フランジも所要距離だけスライド可能に締め付けておく必要がある。
【0017】
上記のように分散パイプ1の炉外側基部は、取付ノズル3、フランジ10、ダクト5、フランジ11、垂直管12を介してヘッダー管4に接続されているが、本発明ではヘッダー管4の下側にも、特殊な支持構造が採用されている。
【0018】
すなわち、垂直管12の直下のヘッダー管4の下側には支持ベース13が設けられ、支持ベース13はスプリングハンガー14によって基台15に支持されている。スプリングハンガー14は図4に示すように中心のガイドポスト18の周りにコイルスプリング17を設け、昇降体16に作用する垂直荷重をコイルスプリング17によって弾性的に支持する機構である。
【0019】
このスプリングハンガー14はヘッダー管4に作用する垂直荷重を弾性的に支持することができるものであるが、この実施形態ではさらにスプリングハンガー14の上面板20と支持ベース13の下面との間に水平面内の変位を許容する滑性シート21を介在させて、ヘッダー管4の下面とスプリングハンガー14との間に、水平面内の変位を許容する構造としてある。滑性シート21としては、フッ素樹脂シートのような耐熱性が大きく、摩擦係数の小さいシートが用いられる。これによって垂直及び水平方向の変位が許容されることとなる。
【0020】
このように構成された本発明の流動焼却炉の分散パイプ支持構造によれば、流動焼却炉の運転時に発生する上下方向の振動は分散パイプ1を介してヘッダー管4に伝達されるが、ヘッダー管4がスプリングハンガー14によって弾性的に支持されているので、上下方向の振動を吸収することができる。なおフランジ10に設けたメタルパッキンの部分でも上下方向の変位を吸収することができる。
【0021】
また熱膨張や炉体の横方向の振動によって水平方向の力が分散パイプ1とヘッダー管4との間に作用するが、フランジ11に設けたメタルパッキンの水平面内におけるスライドや、滑性シート21の滑りによって水平方向の変位を吸収することができる。このため、本発明によれば従来のような耐久性に不安の残るフレキシブルダクトを使用しなくても、炉体の振動や熱膨張を吸収することができる。さらに図3に示すように、ヘッダー管4の形状を炉体に沿って湾曲させておくことにより、炉体とヘッダー管4間の熱応力を抑制することができる。
【0022】
このため設備の耐用年数が増加すること、設備の安全性が向上することなどの利点がある。また、従来は保温できなかったフレキシブルダクトをなくし、ダクト5や垂直管12の外周をキャスタブル耐火物によって保温することが可能となり、熱損失の抑制を図るこ
とも可能となる。なお本発明は処理容量が200トン/日以上の大型炉において特に有効
であるが、それ以下の容量の小型炉にも適用できることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施形態を示す縦断面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す水平断面図である。
【図4】スプリングハンガーの断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 分散パイプ
2 炉体下部
3 取付ノズル
4 ヘッダー管
5 ダクト
6 フレキシブルダクト
10 フランジ
11 フランジ
12 垂直管
13 支持ベース
14 スプリングハンガー
15 基台
16 昇降体
17 コイルスプリング
18 ガイドポスト
20 上面板
21 滑性シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動焼却炉の炉体下部に水平方向に挿入された分散パイプの炉外側基部に、下方に屈曲するダクトを接続し、このダクトの下端面を水平面内でスライド可能なメタルパッキンを介して流動空気のヘッダー管の上面に接続するとともに、このヘッダー管の下面を上下方向に変位可能なスプリングハンガーにより弾性支持したことを特徴とする流動焼却炉の分散パイプ支持構造。
【請求項2】
分散パイプの炉外側基部と下方に屈曲するダクトとの間に、垂直面内でスライド可能なメタルパッキンを介在させたことを特徴とする請求項1記載の流動焼却炉の分散パイプ支持構造。
【請求項3】
ヘッダー管の下面とスプリングハンガーとの間に、水平面内の変位を許容する滑性シートを介在させたことを特徴とする請求項1記載の流動焼却炉の分散パイプ支持構造。
【請求項4】
分散パイプが流動焼却炉の炉体下部に片持支持されたものであることを特徴とする請求項1記載の流動焼却炉の分散パイプ支持構造。
【請求項5】
分散パイプが流動焼却炉の炉体下部に多数本平行に挿入されたものであり、ヘッダー管が流動焼却炉の炉体下部外周に配置されたものであることを特徴とする請求項1記載の流動焼却炉の分散パイプ支持構造。
【請求項6】
ヘッダー管の形状を炉体に沿って湾曲させたことを特徴とする請求項1記載の流動焼却炉の分散パイプ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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