説明

流動状油揚げ及びパック詰め流動状油揚げ並びにそれらを使用した巻き寿司の製造方法

【課題】 油揚げを流動状とし、寿司飯上への油揚げの配設を容易とした流動状油揚げ及びパック詰め流動状油揚げ並びにそれらを使用した巻き寿司の製造方法を提供する。
【解決手段】 油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に粘液剤を添加混合した。平面状の海苔の上面に寿司飯を広げ、その寿司飯上の芯に相当する位置に沿って、流動状油揚げを連続的にノズルから押し出し、連続的に押し出された油揚げを具材として寿司飯を巻き込むことによって巻き寿司を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油揚げに粘液剤を添加して流動状とした流動状油揚げ、及びそれを使用した巻き寿司の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、味付油揚げは、いなり寿司の皮として、また、きつねうどんの具材として広く使用されおり、これらは、ビニール袋詰めにされて販売されている。ビニール袋詰めの多くは、四角形の油揚げを数枚重ねた状態で販売され、あるいは味付け後に密封加熱処理された状態で販売されている。
このような油揚げに関する技術として特開2001−333725号公報記載の技術が知られている。
一方、巻き寿司は椎茸、干瓢、焼き卵、三つ葉、キュウリ等の野菜、水産物、肉製品等を具材として、具材の周りを寿司飯で包み、外周を海苔で巻き込んだものであり、このような巻き寿司に関する技術として特開平8−47372号公報記載の技術が知られている。
【特許文献1】特開2001−333725号公報
【特許文献1】特開平8−47372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記巻き寿司は海苔の上に広げた寿司飯の中央に、手作業によって具材を並べて巻き込むことによって製造するが、この具材として油揚げが使用される場合もある。この具材を並べる作業は手作業によって行われ、具材も多様なため、具材を並べる作業に手間を要するという問題があった。
油揚げを具材とする場合には、チューブから連続的に押し出すことが出来れば効率的である。
本発明は係る従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、油揚げを流動状とし、寿司飯上への油揚げの配設を容易とした流動状油揚げ及びパック詰め流動状油揚げ並びにそれらを使用した巻き寿司の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための手段として、請求項1記載の流動状油揚げでは、油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に粘液剤を添加混合したことを特徴とする。
請求項2記載のパック詰め流動状油揚げでは、油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に調味液及び粘液剤を添加混合し、密閉包装したことを特徴とする。
請求項3記載のパック詰め流動状油揚げでは、油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に調味液及び粘液剤を添加混合して滅菌包装し、その包装パックの一端に押出し口を形成したことを特徴とする。
請求項4記載の巻き寿司の製造方法では、具材の周囲を寿司飯で包み、その寿司飯の外周を海苔で巻き込むことによって製造する巻き寿司の製造方法において、平面状の海苔の上面に寿司飯を広げ、その寿司飯上の芯に相当する位置に沿って、請求項1記載の流動状油揚げを連続的にノズルから押し出し、連続的に押し出された油揚げを具材として寿司飯を巻き込むことによって製造する方法とした。
【発明の効果】
【0005】
前記構成を採用したことにより、本発明では次の効果を有する。
油揚げを流動状としたので必要量のみを必要部分に押し出して使用することができる。
そのため、油揚げを切断する手間が省略され、使用目的に応じて油揚げの取り扱い性が向上する。
従来では、巻き寿司を製造する際には、具材を寿司飯の中心線に整然と並べる必要があったが、本発明では流動状油揚げをノズルから押し出すことにより、一連の作業により容易に具材を配設することが可能となる。
また、流動状油揚げを調味液で味付けしているので、調理用具材としての汎用性が付与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面に基づいて本発明の流動状油揚げを実現する最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0007】
本発明の第1実施例に係る流動状油揚げは、油揚げを細かく切断し、その切断した油揚げの集合物に粘液剤を添加して全体を流動状としたものである。
油揚げは薄い豆腐を所定の大きさにカットして、油で揚げることにより製造されるのであるが、作り方の一例は次の方法による。
豆腐生地を型枠、網籠等に収容してフライヤの油中に浸漬する。豆腐生地はまず70〜120℃の油中で膨張し、次に、150〜180℃の高温の油中に移送され、狐色に焦がし、表面につやのある皮をつくる。このように、豆腐を薄く切って水をきり一度低温の油で揚げて豆腐を十分に膨張させた後、高温の油でカラッと揚げると内部に豆腐の生地を残しながら、表面はカラッとして水分を含まない良質の油揚げが製造される。
これを、手作業または空気の圧入によって豆腐組織部を裂いて袋状にし、この袋状にした油揚げを幅約3〜10mm、長さ20〜50mm程度に切断する。この切断した油揚げには一面側に豆腐生地が残っており、また、全体にスポンジ状の微細な空隙が形成されている。
油揚げは柔軟素材で構成されるため、流動状としやすい。
【0008】
次に、流動状油揚げの製造方法を説明する。
加工澱粉30gを水300ccに溶解して混合する。その混合液に、調味液700ccをさらに加えて混合する。調味液は醤油、砂糖、化学調味料等を混合したものから構成される。前記溶液を70〜80℃に加熱すると、澱粉の性質により粘性が生じる。
これを粘液剤として幅約5mm、長さ40mm程度に切断した油揚げの集合物800gに混合する。
すると、粘液剤と油揚げが混ざり合って流動状油揚げが製造される。この流動状油揚げは冷蔵、または冷凍した状態で長期の保存が可能となる。
尚、油揚げに粘性を付与する粘液剤としては澱粉以外の多糖類、ゼラチン、脂質、乳剤等を使用することが可能である。
【実施例2】
【0009】
次に図1は、第2実施例に係るパック入り流動状油揚げの一部切り欠き平面図である。
第2実施例に係るパック入り流動状油揚げは流動状油揚げ2を調味液と共に樹脂製フィルム3内に充填し、樹脂製フィルムの外周をヒートシールにより調味液及び流動状油揚げを脱気状態で密封したものである。
充填物の流動状油揚げ2は予め加熱により滅菌処理がなされ、または密封した後に包装パックごと加熱して内容物を滅菌する。
前記樹脂製フィルム3は耐熱性、密閉性を備えたフィルムであり、一例として、ポリエチレン等の複層構造、あるいは、ナイロンフィルムにポリエチレンフィルムを重合したものから構成される。
【0010】
流動状油揚げを充填した包装パック1は、略平行の胴部4及び先端に向かって徐々に細くなった収束部5からなる本体6と、その収束部5の先端に突起した押し出し口7を有して構成されている。
前記収束部5の先端の押し出し口7は細い筒状となっているため、ハサミで切断すると、切断面がそのままノズルとして機能するようになっている。
そのため包装パックの胴部4を手で掴んで内部を圧搾すると、先端のノズルから徐々に流動状油揚げが押し出されることになる。
このとき、流動状油揚げ2は粘性を有しているので、ノズルから一気に流出することなく、圧力に応じて先端から徐々に押し出されることになる。
これは、菓子の製造作業において、袋に充填したクリームを把持して圧力を加えながら絞り出す作業と同様である。
尚、包装パック1の形状としては、先鋭した押し出し口7を備える必要はないが、四角形、三角形等の角のある形状であれば適用可能であり、また、ノズル部分を本体6に別途接続する構成としても良い。
【実施例3】
【0011】
次に図2に基づいて流動状油揚げを使用した巻き寿司の製造方法を説明する。
巻き簀の上に干し海苔10をのせ、その海苔10上面の中央部分に寿司飯11を一様に広げる。そして、巻き方向と直行する略中心の端から端までの位置に具材12を配設する。この具材12としては、椎茸、干瓢、焼き卵、三つ葉、キュウリ等の野菜、水産物、肉製品等が使用される。
次に、パック詰め流動状油揚げの、押し出し口7を切断してノズルを形成し、具材に沿って流動状油揚げを充填した包装パック1を握力で圧迫しながら、ノズルを移動させて流動状油揚げを連続的にノズルから押し出して油揚げを配設する。
ここで、流動状油揚げ2は粘性を備えているので寿司飯11に調味液が不必要に浸透するおそれもない。
これによって、具材が巻き寿司の芯に相当する部分に配設されることになる。
その後、巻き簀により寿司飯11と具材12、流動状油揚げ2を海苔10と一緒に巻き込んで周りから押さえることにより形を整える。最後に巻き上がった寿司を包丁で等間隔に輪切りにすることにより巻き寿司が製造される。
具材としては、流動状油揚げのみを使用することも可能である。
食品工場での生産ラインによる連続生産においては、流動状油揚げを送出する装置を特別に設置することも可能であり、流動状油揚げ送出装置から送出ノズルを伸ばして押し出しをスイッチ操作等によって制御する構成としても良い。
【0012】
以上、実施例を説明したが、本発明の具体的な構成は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、前記実施例では油揚げのみを流動状としたが、流動状油揚げに他の具材を混合する場合であっても本発明に含まれる。
また、包装パックのフィルムは内部の残量を確認できるように透明素材を使用する他、アルミ等の遮光性素材を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第2実施例に係るパック入り流動状油揚げの一部切り欠き平面図である。
【図2】巻き寿司の製造方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 包装パック
2 流動状油揚げ
3 樹脂製フィルム
4 胴部
5 収束部
6 本体
7 押し出し口
10 海苔
11 寿司飯
12 具材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に粘液剤を添加混合したことを特徴とする流動状油揚げ。
【請求項2】
油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に調味液及び粘液剤を添加混合して流動状とし、その流動状とした油揚げを密閉包装したことを特徴とするパック詰め流動状油揚げ。
【請求項3】
油揚げを所定の大きさに切断し、その切断した油揚げの集合物に調味液及び粘液剤を添加混合して流動状とし、その流動状とした油揚げを密閉包装し、その包装パックの一端に押出し口を形成したことを特徴とするパック詰め流動状油揚げ。
【請求項4】
具材の周囲を寿司飯で包み、その寿司飯の外周を海苔で巻き込むことによって製造する巻き寿司の製造方法において、
平面状の海苔の上面に寿司飯を広げ、その寿司飯上の芯に相当する位置に沿って、流動状油揚げを連続的にノズルから押し出し、連続的に押し出された油揚げを具材として寿司飯を巻き込むことによって製造する巻き寿司の製造方法。

【図1】
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【図2】
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