説明

流水検知装置

【課題】1次側に作用する広い使用圧力範囲について高圧となっても安定した不作動流水量を確保して誤動作を防止する。
【解決手段】流水検知装置10は、加圧送水装置からの加圧水をヘッドに供給する配管の途中に設けられ、1次側と2次側の同圧状態で自重により弁体18を閉鎖位置とし、2次側配管の圧力低下により弁体18を1次側圧力により開放して加圧送水装置からの加圧水を連続的に給水し、圧力スイッチ28により弁体18の開放から所定の遅延時間後に流水検知信号を出力する。流水検知装置10の1次側と2次側とバイパスするバイパス配管32に、2次側配管の圧力を所定圧力に昇圧するための加圧水の供給に対し所定の一定流量となる不作動流水量を2次側配管に給水する定流量弁34を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー設備などの消火設備における流水検知装置に関する。

【背景技術】
【0002】
従来、スプリンクラー設備、泡消火設備、水噴霧設備においては、加圧送水装置からの加圧水をヘッドに供給する配管の途中に流水検知装置を設けている。
【0003】
流水検知装置は、通常時、1次側と2次側が同圧状態であることから自重により弁体を閉鎖位置としている。火災時にヘッドから加圧水の散布が行われた場合には、2次側の圧力低下を受けて弁体を1次側圧力により開放し、弁体の開放を流水検知部により検知して所定の遅延時間後に流水検知信号を出力し、流水警報を出すようにしている。
【0004】
またスプリンクラー設備、泡消火設備、水噴霧設備においては、火災発生時以外で漏水や環境温度の変化による圧力変動などの何らかの原因で設備全体の圧力が低下したときに、補助加圧ポンプが起動して配管内を昇圧するようにしている。この配管内の圧力を昇圧するために補助加圧ポンプの起動により流す流量を、弁体を作動せずに流すことから不作動流水量という。
【0005】
このとき補助加圧ポンプから加庄水等が流水検知装置の1次側から2次側へ補給されるが、流水検知装置には流水警報(火災警報)を発しないようにする構造を設ける必要がある。
【0006】
図6は従来の湿式流水検知装置の概略図であり、図6(A)は不作動流水状態を示し、図6(B)は開放作動状態を示している。
【0007】
図6(A)の流水検知装置では、作動流量よりも少ない不作動流水が発生した場合に、主弁100の中央部にある小弁102のみが開放して流水検知装置の2次側へ流水を開始する。
【0008】
火災発生に伴うスプリンクラーヘッドからの放水等により、2次側の漏水等に対応した不作動流水量を越える流水が発生したときには、図6(B)に示すように流水検知装置の主弁100が開弁し、1次側から2次側に加圧水が連続的に給水される。
【0009】
主弁100が開弁すると、弁シート座104に設けた孔を通って加圧水が流れ、オートドリップ106を通って排水される。弁シート座104に設けた孔からの流入量がオートドリップ106の排水量を上回ると圧力スイッチ108の接点が閉じ、遅延タイマーを作動して所定時間後に火災受信機などに流水検知信号を送出して流水警報(火災警報)を出すようにしている。なお、親子弁110は作動試験の際に開放される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7−308396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の流水検知装置にあっては、不作動流水量を決める主弁100に設けた小弁102の通水部は固定径のため、流水検知装置の使用圧力範囲(1次側に作用する圧力範囲)が広い場合は、1次圧力が高くなるほど不作動流水量が増加するため、流水検知装置の不作動流水量と作動流水量の差が小さくなり、流水検知装置の作動が不安定となる等の問題が発生する。
【0012】
この問題を解決するために意図的に不作動流水量が小さくなるような設計を行うことによって流水検知装置の作動特性を向上することができる。しかし、不作動流水量を小さくすると、補助加圧ポンプの運転など流水検知装置の2次側を昇圧する際に主弁が開放して流水警報を発してしまう新たな問題が発生する。
【0013】
更に使用圧力範囲を大きくする場合は、高圧時に不作動流水量が流水検知装置の作動流量を超える可能性もあり、流水検知装置の機能を果たさないことも考えられる。
【0014】
本発明は、1次側に作用する広い使用圧力範囲について高圧となっても安定した不作動流水量を確保して誤動作を防止する流水検知装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、配管途中に設けられ配管内の流水を検知して流水検知信号を出力する流水検知装置に於いて、
流水検知装置の1次側と2次側とを連通する連通路を形成し、連通路に所定流量以上の流さない不作動流水用の定流量機構を備えたことを特徴とする。
連通路は、流水検知装置内部に設けた弁体をバイパスするバイパス通路を形成し、バイパス通路に前記定流量機構を設ける。
【0016】
本発明の別の形態にあっては、流水検知装置内部に設けた弁体に前記定流量機構を設け、定流量機構が弁体を開放作動させることなく2次側に供給する不作動流水を行う。
【0017】
ここで弁体に設ける定流量機構は、弁体中央の開口穴に、1次側に向けて先端を開口した円錐部を延在し、1次側圧力が高い時に2次側に押されて先端開口の穴径を減少させ、1次側圧力が低い時に1次側に復元して先端開口の穴径を増加させる定流量弁体を備えたことを特徴とする。

【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、流水検知装置の1次側と2次側とを連通する連通路を形成し、連通路に定流量機構を設けたため、1次側に作用する圧力範囲が広くなっても、1次側圧力に依存せずに2次側配管の圧力を所定圧力に昇圧するために供給する不作動流水量を定流量とすることができ、1次側圧力が高くなって不作動流水量と作動流量の差がなくなって流水検知装置の動作が不安定になる問題を解消する。
【0019】
また、1次側圧力が高圧となっても、不作動流水量を正確に設定できることで、高圧で作動流量の少ない高い安定性が求められる流水検知装置を実現することが可能となる。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による流水検知装置の実施形態を示した説明図
【図2】図1の実施形態で用いる定流量弁の一例を示した説明図
【図3】図1の実施形態で用いる定流量弁の他の例を示した本説明図
【図4】図1の実施形態で用いる定流量弁の他の例を示した説明図
【図5】本発明による流水検知装置の他の実施形態を示した説明図
【図6】従来の流水検知装置を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明による流水検知装置の実施形態を示した説明図である。図1において、流水検知装置10は、弁ボディ12の下側に1次側となる流入口14を形成し、上側に2次側となる流出口16を形成している。流入口14に対しては消火ポンプや補助加圧ポンプを備えた加圧送水装置からの加圧水が給水される。2次側となる流出口16は例えば閉鎖型のスプリンクラーヘッドに対する配管が接続されている。
【0022】
弁ボディ12の内部には弁体18が開閉自在に組み込まれている。通常時、流水検知装置10の流入口14の1次側と流出口16の2次側の圧力はほぼ同圧であることから、弁体18は自重により、及び弁体18の一次側と二次側の面積差による閉鎖方向へ働く力により図示の弁シート20に閉じた閉鎖位置となっている。弁シート20の内部左側には通水口22が開口され、通水口22から配管24によって、親子弁30側に設けているオートドリップ26に通水する経路が設けられている。弁体18が閉鎖位置にあるときには弁シート20と弁体18の接触により通水口22は閉鎖されている。
【0023】
この配管24は途中で分岐され、信号停止弁29を介して圧力スイッチ28を接続している。圧力スイッチ28は、スプリンクラーヘッドの作動による流水で弁体18が開放した際に、通水口22から流れ込む水量がオートドリップ26による排水量を上回ったときに圧力スイッチ28を作動し、遅延タイマの作動により所定時間後に流水検知信号を出力することになる。
【0024】
親子弁30は、流水検知装置10の作動テストの際に開放操作することで2次側に流水を発生させ、弁体18を開放作動させる。
【0025】
このような流水検知装置10につき、本実施形態にあっては更に、1次側の流入口14側から2次側の流出口16側に向けて接続したバイパス配管32の途中に定流量弁34を設けている。
【0026】
定流量弁34は、スプリンクラーヘッドに対する2次側の配管圧力が漏水などにより低下した際に所定圧力に昇圧するために起動する例えば補助加圧ポンプからの加圧水の供給に対し、流入口14に対する1次側圧力の如何に関わらず、所定流量となる不作動流水量を2次側配管に供給する。
【0027】
即ち流水検知装置10は、流入口14に対する1次側の圧力範囲として、例えば高層階の建物のように、低層階では1次側圧力が高く高層階では1次側圧力が低いような状況に対応した1次側圧力範囲が広い場合についても、1次側圧力の如何に関わらず、補助加圧ポンプによる2次側圧力の回復のための不作動流水量を常に一定流量に保つことができる。
【0028】
図2は図1の実施形態で用いる定流量弁の一例を示した説明図である。図2において、定流量弁34は弁ボディ36を有し、弁ボディ36の左側に流入ポート38を形成し、右側に流出ポート40を形成している。
【0029】
流入ポート38側には、ストップリング49による位置決めで弁穴45を備えたピストン44が摺動自在に組み込まれ、ピストン44の右側にはスプリング46がスプリングホルダー50との間に配置され、更にスプリングホルダー50とその右側のニードルホルダー43との間にスプリング48を配置している。ピストン44の弁穴45に対しては、その右側に配置したニードル42の先端が位置しており、ニードル42はニードルホルダー43により弁ボディ36に固定されている。
【0030】
図2の定流量弁34の動作は次のようになる。流入ポート38の圧力が低い場合には、ピストン44を押す力が小さいことからスプリング46,48の押圧力が大きく、このためピストン44はストッパリング49に近い側に位置し、ニードル42の先端と弁穴45の間の開口面積が大きくなり、1次圧力が低くとも一定流量を流出ポート40に流す。
【0031】
流入ポート38の圧力が高い場合には、ピストン44を押す力が増加してスプリング46,48に抗してピストン44が右側に移動し、弁穴45がニードル42に近付くことで開口面積が低下し、これによって1次側圧力が高くとも一定流量を流出ポート40に供給することができる。
【0032】
図3は図1の実施形態で用いる定流量弁の他の例を示した説明図であり、この例にあっては、ニードル側を1次側圧力に応じて移動するようにしたことを特徴とする。
【0033】
図3において、定流量弁34は弁ボディ51の左側に流入ポート52を形成すると共に右側に流出ポート54を形成し、内部にストッパリング58で位置決めされたニードル56を摺動自在に組み込み、ニードル56の右側にスプリング62を配置している。ニードル56には連通穴60が設けられ、ニードル56の先端側の弁ボディ51には弁穴64が形成されている。
【0034】
図3の定流量弁34の動作としては、流入ポート52に対する1次側圧力が低い場合にはニードル56を右側に押す力が弱く、ニードル56は弁穴64から離れた位置にあるため、弁穴64とニードル56との間の隙間となる開口面積が大きく、1次側圧力が低くとも所定の流量を流出ポート54に供給する。
【0035】
1次側圧力が高い場合には、ニードル56を押す力が増加することでスプリング62を圧縮してニードル56が右側に移動し、弁穴64との間の開口面積を小さくし、1次側圧力が高くとも所定の流量を流出ポート54に流すようになる。
【0036】
図4は図1の実施形態で用いる定流量弁の他の例を示した説明図であり、ゴム製のフローワッシャーの変形を利用して定流量制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0037】
図4(A)において、定流量弁34は、弁ボディ66の左側に流入ポート68を形成し、右側に流出ポート70を形成している。弁ボディ66の内部には弁穴76が開口され、弁穴76の右側にストッパリング75で抜け止めされた弾性を持つゴムで作られたフローワッシャー72が組み込まれている。フローワッシャー72はドーナツ状の部材であり、内部に弁穴74を開口している。
【0038】
図4の定流量弁34の動作としては、流入ポート68に対する1次側圧力が低い場合には、図4(A)に示すようにフローワッシャー72を押す力は小さく、フローワッシャー72の変形量は少ないことから、そのときの弁穴74で決まる開口面積に応じた所定流量を流出ポート70に流している。
【0039】
流入ポート68に対する1次側圧力が高い場合には、図4(B)に示すようにフローワッシャー72を押す力が増加し、フローワッシャー72は弁穴74を窄める円錐形状に変形し、弁穴74の開口面積が減少し、これによって、1次側圧力が高くとも所定流量を流出ポート70に供給することができる。
【0040】
もちろん図1の実施形態に使用する定流量弁としては、図2〜図4に示した以外の適宜の構造の定流量弁を使用することができる。
【0041】
図5は本発明による流水検知装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態にあっては、流水検知装置10の弁体そのものに定流量弁体を組み込んだことを特徴とする。
【0042】
図5において、流水検知装置10は、弁ボディ12の下側に流出口14を形成し、上側に流出口16を形成しており、内部に弁シート20に対し開閉自在に弁体18を設けている。また弁シート20の通水口22から配管24によりオートドリップ26及び圧力スイッチ28に対する配管が行われ、更に配管31により親子弁30に対する配管が行われている。
【0043】
弁体18には連通穴78が設けられ、連通穴78に定流量弁体80を装着している。定流量弁体80は弾性を持つゴム材料で作られており、1次側圧力の増加による変位で開口82の穴径を減少し、1次側圧力の低下による変位で開口82の穴径を増加させることによって、1次側圧力の如何に関わらず2次側配管に対する加圧水の供給流量を所定流量とする定流量機構を構成している。
【0044】
具体的には、定流量弁体80は1次側に向けて絞り込んだ円錐部の先端に開口82を形成した弾性を持つゴム材料で作られた部材であり、円錐底部を連通穴78に組み込み固定している。この定流量弁体80は、1次側圧力が低いときは変形量が少ないことから開口82の開口面積は大きく、1次側圧力が低くとも所定流量を2次側に流すことができる。
【0045】
一方、1次側圧力が高い場合には、定流量弁体80は1次側圧力に押されて2次側に変形することで、開口80が絞り込まれて開口面積が低下し、これによって1次側圧力が高くとも開口面積を小さくすることで2次側に対し所定流量を供給することができる。
【0046】
このため図5の実施形態にあっても、2次側配管の圧力が漏水などにより低下して加圧送水装置の補助加圧ポンプなどの運転により2次側圧力を回復するための加圧水を供給する際には、1次側圧力の如何に関わらず定流量弁体80が1次側圧力に応じた変形で開口82の面積を調整することで、常に所定の流量を不作動流水量として2次側に供給して2次側圧力を回復させることができる。
【0047】
もちろん、加圧送水装置より定流量弁体80で制御している定流量に対応した不作動流水量を超える加圧水の供給を受けると弁体18が開放し、2次側に加圧送水装置よりの加圧水を継続して供給する動作を行うことになる。
【0048】
なお上記の実施形態は、定常監視状態で弁体の自重による閉鎖する構造の流水検知装置を例にとっているが、弁体と一体に形成したピストンをシリンダ室に自在に設け、バイパス配管に設けたパイロット弁などにより2次側圧力の低下を検出してピストンをリフトさせることで弁体を開放するリフト型の流水検知装置についても同様に適用できる。
【0049】
また上記の実施形態にあっては、2次側の流水に応じた弁体の開放で圧力スイッチを作動して所定の遅延時間後に流水検知信号を出力する構成の流水検知装置を例に取っているが、弁体18の開放を機械的にリンク機構などにより検出して、遅延タイマの作動により流水検知信号を出力する構造の流水検知装置についても、同様に適用することができる。
【0050】
また本発明で使用する流水検知装置は、スプリンクラー設備、泡消火設備、水噴霧設備などの適宜の2次側配管の流水で消火を行う設備で使用する流水検知装置に適用することができる。
【0051】
また、定流量弁80は弁体18に設けずに、例えば弁体18の周囲の弁ボディ12内に別途連通路を形成して定流量弁を備え、弁ボディ12内に内蔵させるようにしても良い。
【0052】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。

【符号の説明】
【0053】
10:流水検知装置
12,36,51,66:弁ボディ
14:流入口
16:流出口
18:弁体
32:バイパス配管
34:定流量弁
38,52,68:流入ポート
40,54,70:流出ポート
42,56:ニードル
43:ニードルホルダー
44:ピストン
45,64,74,76:弁穴
46,48,62:スプリング
50:スプリングホルダー
60:連通穴
78:連通穴
80:定流量弁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管途中に設けられ配管内の流水を検知して流水検知信号を出力する流水検知装置に於いて、
流水検知装置の1次側と2次側とを連通する連通路を形成し、前記連通路に所定流量以上の流さない不作動流水用の定流量機構を備えたことを特徴とする流水検知装置。

【請求項2】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、前記連通路は、流水検知装置内部に設けた弁体をバイパスするバイパス通路を形成し、前記バイパス通路に前記定流量機構を設けたことを特徴とする流水検知装置。

【請求項3】
請求項1記載の流水検知装置に於いて、流水検知装置内部に設けた弁体に前記定流量機構を設け、前記定流量機構が前記弁体を開放作動させることなく2次側に供給する不作動流水を行うことを特徴とする流水検知装置。

【請求項4】
請求項3記載の流水検知装置に於いて、前記定流量機構は、前記弁体中央の開口穴に、1次側に向けて先端を開口した円錐部を延在し、1次側圧力が高い時に2次側に押されて先端開口の穴径を減少させ、1次側圧力が低い時に1次側に復元して先端開口の穴径を増加させる定流量弁体を備えたことを特徴とする流水検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−24792(P2011−24792A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173946(P2009−173946)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【出願人】(591017847)小熊機械株式会社 (2)
【Fターム(参考)】