説明

流路内蔵型台座及びその製造方法

【課題】 溝の周りを囲む溶接線にクラックが生じることや溶接線が腐食することを防止して溶接線のシール機能を維持することができる構成の流路内蔵型台座及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 摩擦攪拌溶接で溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを溶接して溶接線28を形成し、溝24と溶接線28との間は、プレート22とプレート23との間に設けたろう材30を、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成するときの摩擦熱で溶融することにより、プレート22とプレート23とをろう付けする。また、ろう材に代えて熱硬化型接着剤を用い、前記摩擦熱で熱硬化型接着剤を硬化させるようにしてもよい。また、溶接線28で複数本の溝24の周囲を囲み、溶接線内の中央部ではプレート22とプレート23とをスポット溶接するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流路内蔵型台座及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
流路内蔵型台座は、例えば家庭用等の固定式もしくは車載用等の可動式の燃料電池発電システムや、列車のエアブレーキシステム等の流体制システムなどの各種の産業分野における各種のシステムに適用されている。即ち、流路内蔵型台座は、これらのシステムを構成する部品や装置などの各種機器を台座表面に取り付けること、前記機器を連結する複雑な配管に代えて内蔵流路(溝)を設けること(内蔵流路を前記配管として機能させること)、更には電気配線なども内蔵することにより、コンパクトに一体化した家庭用の燃料電池発電ユニットなどの固定式ユニットや、車載用の燃料電池発電ユニットなどの可動式ユニットの実現に供されている。
【0003】
例えば、図5に例示する燃料電池発電システムでは、詳細な説明は省略するが、燃料電池本体54の他、これに付属する気化器42、脱硫装置44、COコンバータ46、リフォーマ49、インバータ64などの各種機器やこれらをつなぐ多数の配管や配線などを有しているが、これに流路内蔵型台座を適用することよってコンパクトに一体化した燃料電池発電ユニットを実現することができる。
【0004】
流路内蔵型台座の具体的な構成例としては、既に様々なものが提案されているが、例えば下記の[特許文献1]で開示されたものを挙げることができる。ここでは、図6〜図8に基づき、従来の流路内蔵型台座の構成例について説明する。図6は従来の流路内蔵型台座の全体構成の概要を示す分解斜視図、図7(a)は前記流路内蔵型台座の一部を詳細に示す平面図、図7(b)は図7(a)のA−A線矢視断面図、図7(c)は図7(a)のB−B線矢視断面拡大図、図8は多数の溝の構成例を示す平面図である。
【0005】
図6及び図7に示すように、流路内蔵型台座1は第1プレート及び第2プレートとしてのプレート2と、プレート3とを下記の[特許文献2]などで公知の摩擦攪拌溶接(FSW)で接合してなるものである。流路内蔵型台座1の片側の表面、即ちプレート2の表面2aには、例えば燃料電池発電システムや流体制御システムなどを構成する部品や装置などの各種の機器4が取り付けられている(図6ではプレート表面2a上の機器4を一点鎖線で示している)。即ち、流路内蔵型台座1は機器4を取り付けための台座として機能している。機器4は、プレート3に植え込まれ且つプレート2のボルト孔2bに挿通された植え込みボルト5と、この植え込みボルト5に螺合されたナット6とにより、上プレート2,3とともに締結されて台座表面(プレート表面2a)に固定されている。
【0006】
プレート3の接合面3aには、エンドミル、フライス盤、ボール盤などの適宜の加工手段によって複数本の溝7が形成されている。これらの溝7は、それぞれ所定の断面積を有し、且つ、適当な長さと方向に形成されている。そして、このプレート3に形成された溝7を覆うようにして(溝7に蓋をするようにして)、プレート2が、プレート3に接合されている。かくして、流路内蔵型台座1の内部には、溝7からなる流体の流路が形成される。また、プレート2には連通孔8が形成されており、溝7は、これらの連通孔8を介して機器4に連通されている。即ち、流路内蔵型台座1には複数本の溝7が流体の流路として内蔵されており、これらの内蔵流路(溝7)が、機器4同士を連結する配管としての機能を担っている。つまり、流路内蔵型台座1は、集積配管としての機能も果たしている。各溝7(内蔵流路)の断面積は、各溝7内を流動する流体の性状、流速及び圧力損失などから決定され、各溝7(内蔵流路)の長さや方向は、各機器4の配置などによって決定される。なお、流路内蔵型台座1が燃料電池発電システムなどに適用される場合、実際には図8に示すように多数の溝7が複雑に形状されることになるが、図6,図7では説明のため単純化している。
【0007】
そして、図7に示すように、溝7の周囲には溶接線10が形成されている。この溶接線10は、前記摩擦攪拌溶接で溝7の周囲を囲むようにプレート2とプレート3とを溶接してなるものであり、プレート2とプレート3とを接合する接合部として機能すると同時に、溝7を流れる流体がプレート2とプレート3との間から漏れるものを防止するためのシール部としても機能する。
【0008】
また、溶接線10は溝7の中心から適宜の間隔fを保った位置に形成されている。即ち、溶接線10と溝7との間11には適宜の間隔dが確保されている。摩擦攪拌溶接は摩擦熱によってプレート2とプレート3とを塑性流動させて結合するものであるが、このとき溝7の縁に溶接線10を形成しようとすると、前記摩擦熱の影響が溝7の壁面7aにまで及んで壁面7が塑性変形してしまう。このため、溶接線10と溝7との間11には、前記摩擦熱の影響による壁面7aの塑性変形を防止することができるように適宜の間隔dが確保されている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−372198号公報
【特許文献2】特許第2792233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の流路内蔵型台座1では、上記のように溶接線10と溝7との間11に間隔dを確保した場合、この溶接線10と溝7との間11においてプレート2とプレート3とが接着されないため、プレート2とプレート3との間に微小な隙間が生じてしまう。
【0011】
このため、溝7を流れる流体の圧力などによって溝7(プレート2,3)に繰り返し応力が作用したときに前記隙間が切り欠きとして作用することにより、寿命が低下するおそれがある。また、溝7を流れる流体が前記隙間に浸入して、コンタミを発生する可能性もある。
【0012】
従って本発明は上記の事情に鑑み、溶接線のシール機能を維持することができる構成の流路内蔵型台座及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する第1発明の流路内蔵型台座は、少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座において、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接してなる溶接線を有し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとがろう付けされていることを特徴とする。
【0014】
また、第2発明の流路内蔵型台座は、少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座において、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接してなる溶接線を有し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとが接着剤で接着されていることを特徴とする。
【0015】
また、第3発明の流路内蔵型台座は、第1又は第2発明の流路内蔵型台座において、
前記溶接線は複数本の前記溝の周囲を囲んでおり、前記溶接線内の中央部では前記第1プレートと前記第2プレートとをスポット溶接したことを特徴とする。
【0016】
また、第4発明の流路内蔵型台座の製造方法は、少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は前記第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座の製造方法であって、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接して溶接線を形成し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けたろう材を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線を形成するときの摩擦熱で溶融することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとをろう付けすることを特徴とする。
【0017】
また、第5発明の流路内蔵型台座の製造方法は、少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は前記第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座の製造方法であって、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接して溶接線を形成し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けた熱硬化型接着剤を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線を形成するときの摩擦熱で硬化させることにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを接着することを特徴とする。
【0018】
また、第6発明の流路内蔵型台座の製造方法は、第1又は第2発明の流路内蔵型台座の製造方法において、
前記溶接線は複数本の前記溝の周囲を囲み、前記溶接線内の中央部では前記第1プレートと前記第2プレートとをスポット溶接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
第1発明の流路内蔵型台座によれば、摩擦攪拌溶接で溝の周囲を囲むように第1プレートと第2プレートとを溶接してなる溶接線を有し、前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとが、ろう付けされていることを特徴とするため、前記溝と前記溶接線との間では、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。しかも、摩擦攪拌溶接で溶接線を形成する際の摩擦熱を有効に利用してろう付けを行うことができるため、製造作業の効率化を図ることもできる。
【0020】
第2発明の流路内蔵型台座によれば、摩擦攪拌溶接で溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接してなる溶接線を有し、前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとが、接着剤で接着されていることを特徴とするため、前記溝と前記溶接線との間では、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。
【0021】
第3発明の流路内蔵型台座によれば、溶接線は複数本の溝の周囲を囲んでおり、前記溶接線内の中央部では第1プレートと第2プレートとをスポット溶接したことを特徴とするため、複数本の溝の周囲を溶接線で囲んでも、前記スッポト溶接の補強によって前記溶接線内の中央部が膨らむ(第1プレートと第2プレートの間の隙間が大きくなる)のを確実に防止することができる。
【0022】
第4発明の流路内蔵型台座の製造方法によれば、摩擦攪拌溶接で溝の周囲を囲むように第1プレートと前記第2プレートとを溶接して溶接線を形成し、前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けたろう材を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線を形成するときの摩擦熱で溶融することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを、ろう付けすることを特徴とするため、前記溝と前記溶接線との間では、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。しかも、摩擦攪拌溶接で溶接線を形成する際の摩擦熱を有効に利用してろう付けを行うため、製造作業の効率化を図ることもできる。
【0023】
また、第5発明の流路内蔵型台座の製造方法によれば、摩擦攪拌溶接で溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接して溶接線を形成し、前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けた熱硬化型接着剤を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線を形成するときの摩擦熱で硬化させることにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを、接着することを特徴とするため、前記溝と前記溶接線との間では、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。しかも、摩擦攪拌溶接で溶接線を形成する際の摩擦熱を有効に利用して接着を行うため、製造作業の効率化を図ることもできる。
【0024】
また、第6発明の流路内蔵型台座の製造方法によれば、溶接線は複数本の溝の周囲を囲み、前記溶接線内の中央部では第1プレートと第2プレートの接合面をスポット溶接することを特徴とするため、複数本の溝の周囲を溶接線で囲んでも、前記スッポト溶接の補強によって前記溶接線内の中央部が膨らむ(第1プレートと第2プレートの間の隙間が大きくなる)のを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づき詳細に説明する。
【0026】
図1(a)は本発明の実施の形態例に係る流路内蔵型台座の製造方法を示す断面図(図1(b)のC−C線矢視断面図)、図1(b)は前記流路内蔵型台座の製造方法を示す平面図(図1(a)のD方向矢視図)、図1(c)は図1(b)のE−E線矢視断面拡大図、図2(a)は前記流路内蔵型台座の構成を示す平面図、図2(b)は図2(a)のF−F線矢視断面図拡大図、図2(c)は図2(a)のG−G矢視断面拡大図である。
【0027】
図1及び図2に基づき、本実施の形態例の流路内蔵型台座21の製造法及び構成について説明する。
【0028】
本実施の形態例の流路内蔵型台座21は、第1プレート及び第2プレートとしてのプレート22と、プレート23とを摩擦攪拌溶接(FSW)で接合してなるものである。これらのプレート22とプレート23とを摩擦攪拌溶接(FSW)で接合して一体化するには、まず、プレート22とプレート23とを重ね合わせる。
【0029】
プレート23の接合面23aには、流路内蔵型台座21が適用されるシステム(例えば燃料電池発電システムや流体制御システムなど)に必要な液体状又はガス状の流体を流すための流路となる溝24が、前もってエンドミル、フライス盤、ボール盤などの適宜の加工手段によって加工されている。なお、流路内蔵型台座21が燃料電池発電システムなどに適用される場合、実際には図8に示すように多数の溝24が複雑に形状されることになるが、図1〜図3では説明のため単純化している。
【0030】
また、プレート22には、片側の台座表面となるプレート22の表面22aに取り付けられる前記システムの構成部品や構成装置など各種の機器(図示省略)と、溝24とを連通するための連通孔25が、前もって適宜の加工手段によって加工されている。各溝24(内蔵流路)の断面積は、各溝24内を流動する流体の性状、流速及び圧力損失などから決定され、各溝24(内蔵流路)の長さや方向は、各機器の配置などによって決定される。
【0031】
なお、溝24はプレート23の接合面23aに限らず、プレート22の接合面22bに形成してもよく、連通孔25もプレート22に限らず、プレート23に形成してもよい。また、機器はプレート22の表面22aに限らず、他方の片側台座表面となるプレート23の表面23bに設けてもよく、両側の台座表面(プレート表面22a,23b)に設けることもできる。
【0032】
そして更に、プレート23の接合面23aには、前もって、接合面23aの他の部分よりも少し下がった(凹んだ)段差部29が、適宜の加工手段により、溝24の全周縁に沿い且つ溝24の周縁に接するようにして形成されており、且つ、この段差部29には、ろう材30が設けられている。段差部29は、溝24と溶接線28(詳細後述)との間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)に形成されている。 従って、段差部29に設けられたろう材30も、当然、溝24と溶接線28との間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)に配置されている。
【0033】
このため、プレート22,23を重ね合わせると、溝24と溶接線28の間31では、プレート22とプレート23との間にろう材30が介在されることになる。なお、ろう材30を段差部29に設けるのは、段差部29を形成せずに面一なプレート23の接合面23aにろう材を設けると、当該ろう材を設けた部分以外の部分でプレート22とプレート23との間に当該ろう材による隙間が生じてしまうのを、防止するためである。
【0034】
プレート22,23の材料としてはアルミニウム合金板、銅板、ステンレス板などの適宜のもの用いることができるが、ろう材30は後述する摩擦攪拌溶接の摩擦熱によって確実に溶融する必要があるため、プレート22,23の材料よりも融点の低いものを選択する必要がある。
【0035】
そして、プレート22,23を重ね合わせることにより、ろう材30をプレート22とプレート23との間に介在させた状態にした後、摩擦攪拌溶接機26の先端工具27を、摩擦攪拌溶接の開始点Jに位置させて回転を開始するとともに矢印Hで示すように軸方向(プレート22,23の板厚方向位置)に加圧して、プレート22,23の一体化に適した高さ方向位置(プレート22,23の板厚方向位置)までプレート22に挿入する。即ち、先端工具27の回転によってプレート22との間に発生した摩擦熱によってプレート22が塑性流動状態となることにより、先端工具27をプレート22に挿入することができる(なお、場合によってはプレート23まで先端工具27を挿入するようにしてもよい)。
【0036】
続いて、先端工具27を回転させたまま矢印Hで示すように前記挿入方向と直交する方向に溝24の周縁に沿って移動させる。その結果、先端工具27の回転によって生じる摩擦熱により、プレート22とプレート23とが塑性流動状態となって溶接されることより、溶接線28が形成される。図1には溝24の全周縁の途中まで摩擦攪拌溶接をした状態を示している。
【0037】
その後、更に摩擦攪拌溶接を継続することにより、ついには図2に示すように溝24の周囲を囲む溶接線28が形成される。溶接線28は、プレート22とプレート23とを接合する接合部として機能すると同時に、溝7を流れる流体がプレート22とプレート23との間から漏れるものを防止するためのシール部としても機能する。
【0038】
但し、摩擦攪拌溶接時の摩擦熱によって溝24の壁面24aが塑性変形をするのを防止するため、溶接線28は溝24の縁ではなく、溝24の中心から適宜の距離fを保った位置に形成されており、溶接線28と溝24との間31に適宜の間隔dが確保されている。
【0039】
そして、このような位置に溶接線28を摩擦攪拌溶接で形成するのと同時に、プレート22,23間に介在されているろう材30を、前記摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成するときの摩擦熱で溶融させる(プレート22,23間の隙間に溶けたろう材30が充填される)。その結果、溝24と溶接線28の間31では、プレート22とプレート23とがろう材30によってろう付けされた状態となる。従って、この溝24と溶接線28との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないため、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝24を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。
【0040】
ところで、溝24の周囲を囲むように溶接するとき、溶接線28の位置は基本的にはプレート23上に形成された各溝24の位置に基づき、各溝24の周囲を囲む位置となるように設計される。しかし、これに限定するものでなく、プレート23上の各溝24の位置や、各溝24を流通する流体の性状等によっては、同じ性格の複数の溝24を1つのグループとし、各グループル毎にその周囲を溶接線28で囲むようにしてもよい。
【0041】
図3(a)は溶接線で2本の溝の周囲を囲む場合の流路内蔵型台座の構成例を示す平面図、図3(b)は図3(a)のK−K線矢視断面拡大図、図4(a)は溶接線で3本の溝の周囲を囲む場合の流路内蔵型台座の他の例を示す平面図、図4(b)は図4(a)のL−L線矢視断面拡大図である。
【0042】
図3では、位置や流体の性状などの点で同じ性格の3本の溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを摩擦攪拌溶接で溶接して溶接線28を形成している。この場合も、溝24と溶接線28との間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)では、プレート23の接合面23aに段差部29が形成されており、この段差部29に設けられたろう材30が、プレート22とプレート23との間に介在されている。
【0043】
そして、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成する際、同時にプレート22,23間に介在されているろう材30が、前記摩擦攪拌溶接の摩擦熱で溶融する(プレート22,23間の隙間に溶けたろう材30が充填される)。その結果、溝24と溶接線28の間31では、プレート22とプレート23とが、前記ろう材30によってろう付けされた状態となる。従って、この場合も、溝24と溶接線28との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないため、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝24を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。
【0044】
また、図示例では2本の溝24の間においても、プレート23の接合面23aに段差部29が形成されており、この段差部29に設けられたろう材30が、プレート22とプレート23との間に介在されている。従って、このろう材30も前記摩擦攪拌溶接の摩擦熱で溶融するため、2本の溝24の間においても、プレート22とプレート23とが前記ろう材30によってろう付けされた状態となっている。但し、これに限定するものではなく、例えば2本の溝24に同種の流体が流れていることなどの理由から、2本の溝24の間のシール性については特に問われないような場合には、2本の溝24の間ではプレート22とプレート23とをろう付けしなくてもよい。
【0045】
図4では、位置や流体の性状などの点で同じ性格の3本の溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを摩擦攪拌溶接で溶接して溶接線28を形成している。この場合も、溝24と溶接線28との間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)では、プレート23の接合面23aに段差部29が形成されており、この段差部29に設けられたろう材30が、プレート22とプレート23との間に介在されている。
【0046】
そして、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成する際、同時にプレート22,23間に介在されているろう材30が、前記摩擦攪拌溶接の摩擦熱で溶融する(プレート22,23間の隙間に溶けたろう材30が充填される)。その結果、溝24と溶接線28の間31では、プレート22とプレート23とが、前記ろう材30によってろう付けされた状態となる。従って、この場合も、溝24と溶接線28との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないため、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝24を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。
【0047】
また、図示例では3本の溝24のそれぞれ間においても、プレート23の接合面23aに段差部29が形成されており、この段差部29に設けられたろう材30が、プレート22とプレート23との間に介在されている。従って、このろう材30も前記摩擦攪拌溶接の摩擦熱で溶融するため、2本の溝24の間においても、プレート22とプレート23とが、前記ろう材30によってろう付けされた状態となっている。但し、これに限定するものではなく、例えば3本の溝24に同種の流体が流れていることなどの理由から、2本の溝24の間のシール性については特に問われないような場合には、3本の溝24のそれぞれの間ではプレート22とプレート23とをろう付けしなくてもよい。
【0048】
一方、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成するときの摩擦熱が十分にろう材30が伝わないためにろう付けが不十分になること、或いは、ろう付けを行わないことによって、溶接線28内の中央部(隣り合う溝24の間)が膨らむ(プレート22とプレート23の間の隙間が大きくなる)心配がある場合には、溶接線28内の中央部(隣り合う溝24の間)を、アーク電極とレーザ光を同軸に合成する溶接法であるハイブリッド溶接や摩擦攪拌溶接などの適宜の溶接手段によってスポット溶接をすることにより、補強してもよい。図4中の32が、このときのスポット溶接部である。
【0049】
更には、図示は省略するが、ろう材30に代えて接着剤を用いて、溝24と溶接線28の間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)におけるプレート22とプレート23とを接着を行うようにしてもよい。なお、ろう材30に代えて接着剤を用いること以外の流路内蔵型台座21の構成や製造方法については上記と同様であるため(図1〜図4参照)、ここでの説明は省略する。
【0050】
この場合、接着剤としては摩擦攪拌溶接の摩擦熱に対する耐久性を考慮して、伝熱セメント、セラミックセメントなどの耐熱性の接着剤を用いる必要がある。また、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成するときの摩擦熱を有効に利用するという観点からは、熱硬化型接着剤を用いることも有効である。
【0051】
即ち、摩擦攪拌溶接で1本又は複数本の溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを溶接して溶接線28を形成する際、溝24と溶接線28との間31は、プレート22とプレート23との間に設けた熱硬化型接着剤を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線28を形成するときの摩擦熱で硬化させることにより、前記プレート22と前記プレート23とを、接着するようにしてもよい。
【0052】
以上のように、本発明の実施の形態例の流路内蔵型台座21によれば、摩擦攪拌溶接で溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを溶接してなる溶接線28を有し、溝24と溶接線28との間31は、プレート22とプレート23とがろう付けされているため、溝24と溶接線28との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝24を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。しかも、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成する際の摩擦熱を有効に利用してろう付けを行うことができるため、製造作業の効率化を図ることもできる。
【0053】
ところで、ろう材30を設ける場合、溶接線24の縁から溶接線28の手前までではなく、溶接線28まで更には溶接線28の外側まで設けることも考えられる。しかし、プレート22,23間の隙間の切り欠き効果や前記隙間への流体の侵入をなくして、耐圧強度や耐久性の向上を図るためには、溝24の縁でプレート22,23間に隙間がなければよいため、ろう材30は溝24と溶接線28の間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)に設けて、少なくとも溝24側がろう付けされていれば十分であり、溶接線28側にろう付けされていない部分があっても特に問題はない。従って、上記のようにろう材30を溝24と溶接線28の間31(溝24の縁から溶接線28の手前までの範囲)に設けることによって、ろう材30を無駄なく有効に利用することができる。更には、摩擦攪拌溶接によって溶接線8を形成する際にプレート22,23の材料にろう材30が混入することもないため、より良好な溶接を行うこともできる。
【0054】
また、本実施の形態例の流路内蔵型台座21によれば、摩擦攪拌溶接で溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを溶接してなる溶接線28を有し、溝24と溶接線28との間31は、プレート22とプレート23とが接着剤で接着されている場合にも、溝24と溶接線28との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝24を流れる流体が隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。
【0055】
また、本実施の形態例の流路内蔵型台座21によれば、溶接線28は複数本(図示例では2本又は3本)の溝24の周囲を囲んでおり、溶接線28内の中央部ではプレート22とプレート23とをスポット溶接した場合には、複数本の溝24の周囲を溶接線で囲んでも、前記スッポト溶接の補強によって溶接線28内の中央部が膨らむ(プレート22,23間の隙間が大きくなる)のを確実に防止することができる。
【0056】
また、本実施の形態例の流路内蔵型台座21の製造方法によれば、摩擦攪拌溶接で溝24(1本又は複数本)の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを溶接して溶接線28を形成し、溝24と溶接線28との間31は、プレート22とプレート23との間に設けたろう材30を、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成するときの摩擦熱で溶融することにより、プレート22とプレート23とをろう付けするため、溝27と溶接線27との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝24を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。しかも、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成する際の摩擦熱を有効に利用してろう付けを行うため、製造作業の効率化を図ることもできる。
【0057】
また、本実施の形態例の流路内蔵型台座21の製造方法によれば、摩擦攪拌溶接で溝24の周囲を囲むようにプレート22とプレート23とを溶接して溶接線28を形成し、溝24と溶接線28との間31は、プレート22とプレート23との間に設けた熱硬化型接着剤を、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成するときの摩擦熱で硬化させることにより、プレート22とプレート23とを接着することを特徴とするため、溝27と溶接線27との間31では、プレート22とプレート23との間に微小な隙間が生じないことにより、前記隙間による切り欠き効果が生じることもなく、溝を流れる流体が前記隙間に浸入することもない。従って、耐圧強度や耐久性の向上を図ることができる。しかも、摩擦攪拌溶接で溶接線28を形成する際の摩擦熱を有効に利用して接着を行うため、製造作業の効率化を図ることもできる。
【0058】
また、本実施の形態例の流路内蔵型台座21の製造方法によれば、溶接線28は複数本(図示例では2本又は3本)の溝24の周囲を囲み、溶接線28内の中央部ではプレート22とプレート23とをスポット溶接するため、複数本の溝24の周囲を溶接線28で囲んでも、前記スッポト溶接の補強によって溶接線28内の中央部が膨らむ(プレート22,23間の隙間が大きくなる)のを確実に防止することができる。
【0059】
なお、上記実施の形態例の流路内蔵型台座21は2枚のプレート22,23を接合してなるものであるが、必ずしもこれに限定するものではなく、本発明は3枚以上のプレートを接合してなる流路内蔵型台座にも適用することができる。
【0060】
また、上記実施の形態例の流路内蔵型台座21ではろう材30を予めプレート23に設けているが、これに限定するものではなく、ろう材30をプレート22に予め設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は流路内蔵型台座に関し、溶接線のシール機能を維持する場合に適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】(a)は本発明の実施の形態例に係る流路内蔵型台座の製造方法を示す断面図((b)のC−C線矢視断面図)、(b)は前記流路内蔵型台座の製造方法を示す平面図((a)のD方向矢視図)、(c)は(b)のE−E線矢視断面拡大図である。
【図2】(a)は前記流路内蔵型台座の構成を示す平面図、(b)は(a)のF−F線矢視断面図拡大図、(c)は(a)のG−G矢視断面拡大図である。
【図3】(a)は溶接線で2本の溝の周囲を囲む場合の流路内蔵型台座の構成例を示す平面図、(b)は(a)のK−K線矢視断面拡大図である。
【図4】(a)は溶接線で3本の溝の周囲を囲む場合の流路内蔵型台座の他の例を示す平面図、(b)は(a)のL−L線矢視断面拡大図である。
【図5】燃料電池発電システムの構成図である。
【図6】従来の流路内蔵型台座の全体構成の概要を示す分解斜視図である。
【図7】(a)は前記流路内蔵型台座の一部を詳細に示す平面図、(b)は(a)のA−A線矢視断面図、(c)は(a)のB−B線矢視断面拡大図である。
【図8】多数の溝の構成例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0063】
21 流路内蔵型台座
22 プレート
22a 表面
22b 接合面
23 プレート
23a 接合面
23b 表面
24 溝
25 連通孔
26 摩擦攪拌溶接機
27 先端工具
28 溶接線
29 段差部
30 ろう材
31 溝と溶接線の間
32 スポット溶接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座において、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接してなる溶接線を有し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとがろう付けされていることを特徴とする流路内蔵型台座。
【請求項2】
少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座において、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接してなる溶接線を有し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとが接着剤で接着されていることを特徴とする流路内蔵型台座。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の流路内蔵型台座において、
前記溶接線は複数本の前記溝の周囲を囲んでおり、前記溶接線内の中央部では前記第1プレートと前記第2プレートとをスポット溶接したことを特徴とする流路内蔵型台座。
【請求項4】
少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は前記第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座の製造方法であって、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接して溶接線を形成し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けたろう材を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線を形成するときの摩擦熱で溶融することにより、前記第1プレートと前記第2プレートとをろう付けすることを特徴とする流路内蔵型台座の製造方法。
【請求項5】
少なくとも2枚の第1プレートと第2プレートとを摩擦攪拌溶接で接合してなるものであり、前記第1プレート又は前記第2プレートの接合面に形成した溝を流体の流路として内蔵し、且つ、片側又は両側の台座表面に機器が取り付けられる流路内蔵型台座の製造方法であって、
前記摩擦攪拌溶接で前記溝の周囲を囲むように前記第1プレートと前記第2プレートとを溶接して溶接線を形成し、
前記溝と前記溶接線との間は、前記第1プレートと前記第2プレートとの間に設けた熱硬化型接着剤を、前記摩擦攪拌溶接で前記溶接線を形成するときの摩擦熱で硬化させることにより、前記第1プレートと前記第2プレートとを接着することを特徴とする流路内蔵型台座の製造方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の流路内蔵型台座の製造方法において、
前記溶接線は複数本の前記溝の周囲を囲み、前記溶接線内の中央部では前記第1プレートと前記第2プレートとをスポット溶接することを特徴とする流路内蔵型台座の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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