説明

流路切換式地熱水循環装置

【課題】 ストレーナの目詰まりを防止できる流路切換式地熱水循環装置を提供する。
【解決手段】 地熱水吸引ポンプ7により下側流通路6側に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lの地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を取水用下方開口部42から内装管4内に流入させて地上へと圧送し、当該地熱水を利用後、上側流通路5側に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lへ還元するように循環制御される第一循環モードと、地熱水吸引ポンプ7により上側流通路5側に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lの地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を取水用側面開口部43から内装管4内に流入させて地上へと圧送し、当該地熱水を利用後、下側流通路6側に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lへ還元するように循環制御される第二循環モードと、第一循環モードまたは第二循環モードに循環モードの切り換えを行うモード切換手段8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯水層の地熱水を循環利用する流路切換式地熱水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地中の温度は年間通してほぼ一定であり、夏季には外気温よりも低く、冬季には外気温よりも高い。そこで、従来、地中の帯水層内に含まれる地熱水を汲み上げて夏季には冷房の熱源として活用し、冬季には暖房の熱源として活用する等の試みがなされている。
【0003】
例えば、発明者は、特許第3927593号公報において、帯水層から地熱水を浸入または還元させるストレーナを有する外装管と、この外装管内に挿入されて当該外装管との間に流通路を形成する断熱内装管と、この断熱内装管内から地熱水を汲み上げるポンプと、このポンプにより汲み上げられた地熱水を冷暖房装置等へ圧送する熱源供給圧送管と、利用された後の地熱水を前記流通路へと圧送する熱源還元管とを有する二重管式地熱水循環装置を提案し、特許を取得している(特許文献1)。この特許文献1によると、当該二重管式地熱水循環装置により、利用後の地熱水は、前記ストレーナを介して帯水層へと還元されるため、過剰採水による井戸枯れや地盤沈下の心配がなくなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3927593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、長年使用することにより、ストレーナが目詰まりを起こす可能性があり、その場合、地熱水を取り込む能力が低下し、熱交換効率が低下してしまう。ストレーナは地中深くに埋設されているため、仮に目詰まりを生じた場合、これを解消する作業は極めて難しい作業となる。従って、あらかじめ目詰まりが生じない技術を求めるニーズが存在していた。
【0006】
本発明は、このようなニーズに応えるためになされたものであって、ストレーナの目詰まりを防止できる流路切換式地熱水循環装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る流路切換式地熱水循環装置は、地表から帯水層にかけて埋設される外装管と、この外装管の内側に配置される内装管と、この内装管内に配置される地熱水吸引ポンプと、前記外装管における帯水層との境界に設けられる地熱水ストレーナとを有する流路切換式地熱水循環装置であって、前記外装管と前記内装管との間に形成される流通路を上下に分割するように塞ぐことで形成される上側流通路および下側流通路と、前記地熱水吸引ポンプの吸引力により前記外装管の前記下側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層の地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を前記内装管の下方に開口させた取水用下方開口部から前記内装管内に流入させて地上へと圧送し、当該地熱水を利用後、その地熱水を前記外装管の前記上側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層へ還元するように循環制御される第一循環モードと、前記地熱水吸引ポンプの吸引力により前記外装管の前記上側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層の地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を前記内装管の側面に開口させた取水用側面開口部から前記内装管内に流入させて地上へと圧送し、当該地熱水を利用後、その地熱水を前記外装管の前記下側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層へ還元するように循環制御される第二循環モードと、前記第一循環モードまたは前記第二循環モードに循環モードの切り換えを行うモード切換手段とを備えている。
【0008】
すなわち、本発明に係る流路切換式地熱水循環装置は、地熱水ストレーナの内側に付着した堆積物を地熱水吸引ポンプの吸引力により除去するとともに、地熱水ストレーナの帯水層側に付着した堆積物を地熱水の還元力により除去することで地熱水ストレーナの目詰まりを防止するものであって、前記第一循環モードまたは前記第二循環モードにモードを切り換えることで、地熱水の循環方向を逆転させ、地熱水吸引ポンプの吸引力による堆積物の除去と地熱水の還元力による堆積物の除去とを交互に行うことで、半永久的に地熱水を循環させることを可能としたものである。
【0009】
また、本発明の一態様として、前記モード切換手段は、地熱水を利用した後に還元する際、前記上側流通路に返還する第一返還路と前記内装管に返還する第二返還路とのいずれかに返還路を切り換える返還路切換手段と、前記内装管に形成した前記取水用側面開口部よりも上方に開口されて前記第二循環モードの際に還元用の取水口として機能する還元用上方開口部と、この還元用上方開口部から前記下側流通路まで流通可能に連通させてなる還元用連通路と、前記取水用下方開口部を開閉する取水用下方開口開閉手段と、前記取水用側面開口部を開閉する取水用側面開口開閉手段と、前記還元用上方開口部を開閉する還元用上方開口開閉手段とを有しており、前記モード切換手段により循環モードが前記第一循環モードに切り換えられた場合、前記返還路切換手段により地熱水の返還路を前記第一返還路に切り換え、前記取水用下方開口開閉手段により前記取水用下方開口部を開口し、前記取水用側面開口開閉手段および前記還元用上方開口開閉手段によりそれぞれ前記取水用側面開口部および前記還元用上方開口部を閉口して循環路を構成し、前記モード切換手段により循環モードが前記第二循環モードに切り換えられた場合、前記返還路切換手段により地熱水の返還路を前記第二返還路に切り換え、前記取水用下方開口開閉手段により前記取水用下方開口部を閉口し、前記取水用側面開口開閉手段および前記還元用上方開口開閉手段によりそれぞれ前記取水用側面開口部および前記還元用上方開口部を開口して循環路を構成するようにしてもよい。
【0010】
さらに、本発明の一態様として、前記下方開口開閉手段、前記取水用側面開口開閉手段、および前記還元用上方開口開閉手段は、前記内装管内で上下動可能に軸支された循環モード切換軸にそれぞれ同軸上に設けられるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地熱水を取り込むストレーナの目詰まりを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の一実施形態における第一循環モードを示す縦断面図である。
【図2】本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の一実施形態における第二循環モードを示す縦断面図である。
【図3】本実施形態における内装管を示す正面図および縦断面図である。
【図4】図3における4A−4A断面を示す横断面図である。
【図5】図3における5A−5A断面を示す横断面図である。
【図6】図3における6A−6A断面を示す横断面図である。
【図7】本実施形態における循環モード切換軸、取水用下方開閉手段の開閉弁、取水用側面開口開閉手段、地熱水吸引ポンプおよび還元用上方開口開閉手段を示す正面図である。
【図8】図7における8A−8A断面を示す横断面図である。
【図9】図7における9A−9A断面を示す横断面図である。
【図10】本実施形態における切換軸長調整部を示す正面図および縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の一実施形態について図面を用いて説明する。図1および図2は、本実施形態の流路切換式地熱水循環装置1を示す断面構成図である。
【0014】
本実施形態における流路切換式地熱水循環装置1は、主に、外装管2と、地熱水ストレーナ3と、内装管4と、上側流通路5と、下側流通路6と、地熱水吸引ポンプ7と、第一循環モードと第二循環モードとに切り換えるモード切換手段8とから構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0015】
外装管2は、地表から帯水層Lにかけて埋設されており、帯水層Lとの境界に地熱水ストレーナ3が設けられている。本実施形態における外装管2は、無底円筒形状に形成された鉄製の管であり、複数の帯水層Lにかけて埋設されている。また、外装管2の内側には、後述する内装管4の外側に設けられた係止部41を係止させることによって、当該内装管4を所定位置に支持するとともに、前記内装管4との間に形成される流通路を上側流通路5および下側流通路6に分割するように塞ぐ支持部21が設けられている。なお、支持部21の詳細な説明は、係止部41の詳細な説明とともに後述する。
【0016】
外装管2に設けられる地熱水ストレーナ3は、金網や不織布等により形成されたフィルターを有しており、透過する地熱水を濾過するためのものである。本実施形態における地熱水ストレーナ3は、支持部21を境界として上下両側にそれぞれ配設されている。なお、上下いずれかの地熱水ストレーナ3から浸入してくる地熱水と利用後に還元される地熱水とは、支持部21および係止部41を境界として流通が遮断されるため、それぞれの地熱水が混ざり合うことがない。
【0017】
内装管4は、前記外装管2の内側に配設される。本実施形態における内装管4は、外装管2の内径よりも小さな外径を有する無底円筒形状の鉄製の管により形成されており、その外側面の所定位置には前記支持部21に係止させる係止部41が設けられている。本実施形態において、内装管4の下方には、取水用下方開口部42が形成されており、後述する第一循環モードの場合に、地熱水ストレーナ3から下側流通路6へ浸入してきた地熱水を内装管4へと流入させるようになっている。
【0018】
本実施形態における前記支持部21は、外装管2における所定高さの内周面に沿ってリング状に形成されている。また、本実施形態における係止部41は、内装管2における所定高さの外周面に沿ってリング状に形成され、前記支持部21に係合しうる形状に形成されている。これら支持部21および係止部41は共に、上方へ向けて拡径する円錐状のテーパー面を有しており、内装管4が外装管2内に挿入されて係止部41と支持部21とが係合することにより、内装管4が外装管2の略中心に配置されるようになっている。また、支持部21および係止部41は、互いに係合することにより、流通路の上下流通を遮断して上側流通路5および下側流通路6を形成している。
【0019】
また、図3および図4に示すように、内装管4の係止部41よりも上方には、上側流通路5と内装管4内とを連通させる取水用側面開口部43が形成されている。この取水用側面開口部43は、後述する第二循環モードにおいて、地熱水ストレーナ3から上側流通路5へ浸入してきた地熱水を内装管4へ流入させるためのものである。
【0020】
なお、内装管4を外装管内2に配設させる構造は、支持部21および係止部41によるものに限定されるものではなく、内装管4と外装管2との間に板状の間仕切り等を設けて溶接固定させてもよいし、鋳造や切削加工等により内装管4と外装管2とを一体成型させてもよい。
【0021】
地熱水吸引ポンプ7は、内装管4内に配置されており、吸引力により地熱水ストレーナの内側に付着した堆積物を除去しつつ、内装管4内に取り込んだ地熱水を地上に汲み上げて冷暖房装置9等に圧送しの熱交換に利用できるようにするものである。本実施形態における地熱水吸引ポンプ7は、後述する循環切換モード軸87に固定されている。
【0022】
モード切換手段8は、第一循環モードまたは第二循環モードに循環モードの切換を行うものであり、本実施形態においては、返還路切換手段81と、還元用上方開口部82と、還元用連通路83と、取水用下方開口開閉手段84と、取水用側面開口開閉手段85と、還元用上方開口開閉手段86と、循環モード切換軸87とにより構成されている。
【0023】
第一循環モードは、図1に示すように、地熱水吸引ポンプ7の吸引力によって外装管2の下側流通路側6に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lの地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を内装管4の下方に開口させた取水用下方開口部42から前記内装管内に流入させて地上へと圧送し、地上の冷暖房装置9により地熱水を利用後、その地熱水を外装管2の上側流通路側5に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lへ還元するように循環制御されるものである。
【0024】
また、第二循環モードは、図2に示すように、地熱水吸引ポンプ7の吸引力によって外装管2の上側流通路側5に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lの地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を内装管4の側面に開口させた取水用側面開口部43から前記内装管内に流入させて地上へと圧送し、地上の冷暖房装置9により地熱水を利用後、その地熱水を外装管2の下側流通路側6に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lへ還元するように循環制御されるものである。
【0025】
返還路切換手段81は、利用後の地熱水を返還する返還路を、上側流通路5に連通された第一返還路811または内装管4に連通された第二返還路812のいずれかに切り換えられる流路切換弁等で構成されている。すなわち、図1および図2に示すように、返還路切換手段81は、一つの流入口に対して二つの流出口を有しており、流出先をいずれかの流出口に選択可能に切り換えられる構成になっている。なお、本実施形態における返還路切換手段81は、第一循環モードでは第一返還路811に切り換えられ、第二循環モードでは第二返還路812に切り換えられる。
【0026】
本実施形態における第一返還路811は、前記返還路切換手段81と前記上側流通路5とを連通する流通路であり、第一循環モードにおいて、前記返還路切換手段81によって返還路が第一返還路81側に切り換えられることにより、利用後の地熱水を冷暖房装置9から上側流通路5へと流入させるようになっている。また、第一返還路811の下端は、上側流通路6における地熱水の水面Wよりも低い位置になるように調整されて設置されている。
【0027】
また、本実施形態における第二返還路812は、前記返還路切換手段81と前記内装管4とを連通する流通路であり、第二循環モードにおいて、前記返還路切換手段81によって返還路が第二返還路812側に切り換えられることにより、利用後の地熱水を冷暖房装置9から内装管4へと流入させるようになっている。また、第二返還路812の下端は、内装4管における地熱水の水面Wよりも低い位置になるように調整されて設置されている。
【0028】
還元用上方開口部82は、図3および図5に示すように、内装管4において前記取水用側面開口部43よりも上方に開口されている。この還元用上方開口部82は、還元用連通路83によって下側流通路6と流通可能に連通されており、第二循環モードにおいて、利用後の地熱水を内装管4内から下側流通路6へと流通させるようになっている。
【0029】
本実施形態において、内装管4の外側における還元用上方開口部82から下側流通路6までには、内装管4よりも一回り大きい円筒88が設けられており、還元用連通路83は、図2,図3および図6に示すように当該円筒88と前記内装管4との間に形成されている。
【0030】
取水用下方開口開閉手段84は、前記取水用下方開口部42を任意に開閉するためのものであり、本実施形態においては、図1ないし図3および図7に示すように、内装管4の下方内周面に形成された開閉弁座841と、前記内装管4内において前記開閉弁座841を水密状態で密着する開閉弁842とから構成されている。前記開閉弁842は内装管4内において上下動する循環モード切換軸87の下端に固定されている。また、本実施形態における開閉弁座841および開閉弁842は、上方へ向けて拡径された円錐状のテーパー面を有しており、開閉弁842が開閉弁座841に密接することにより、開閉弁842が開閉弁座841の略中心に配設されるようになっている。なお、本実施形態において、取水用下方開口開閉手段84は、第一循環モードの場合に前記取水用下方開口部42を開口し(図1参照)、第二循環モードの場合に前記取水用下方開口部42を閉口するようになっている(図2参照)。
【0031】
取水用側面開口開閉手段85は、前記取水用側面開口部43を任意に開閉するためのものである。本実施形態における取水用側面開口開閉手段85は、図7および図8に示すように、前記内装管4の内周径とほぼ等しい外径を有する開閉リング851によって形成されており、開閉弁842よりも上方位置において循環モード切換軸87に4本の支持アーム852により固定されている。なお、本実施形態において、取水用側面開口開閉手段85は、第一循環モードの場合に前記取水用側面開口部43を閉口し(図1参照)、第二循環モードの場合に前記取水用側面開口部43を開口するようになっている(図2参照)。
【0032】
還元用上方開口開閉手段86は、前記還元用上方開口部82を開閉するためのものである。本実施形態における還元用上方開口開閉手段86は、図7および図9に示すように、前記内装管4の内径とほぼ等しい外径を有する開閉リング861によって形成されており、内装管に沿って上下動することにより前記還元用上方開口部82を開閉するようになっている。また、還元用上方開口開閉手段86における開閉リング861の内側には、地熱水が流通しないように止水板862が設けられている。なお、この止水板862は、還元用上方開口開閉手段86に設けられている構成に限定されるものではなく、前記取水用側面開口部43と還元用上方開口部82との間の任意の位置に設置されるようにしておけばよい。
【0033】
なお、本実施形態において、還元用上方開口開閉手段86は、第一循環モードの場合に前記還元用上方開口部82を閉口し(図1参照)、第二循環モードの場合に前記還元用上方開口部82を開口する(図2参照)。
【0034】
循環モード切換軸87は、図1、図2および図7に示すように、前記取水用下方開閉手段84と、前記取水用側面開口開閉手段85と、前記還元用上方開口開閉手段86とを連動させて、第一循環モードおよび第二循環モードの切り換えを行うためのものである。また、本実施形態では、地熱水吸引ポンプ7により圧送される地熱水の流通路としても機能するように構成されている。
【0035】
よって、本実施形態における循環モード切換軸87には、下から順に前記取水用下方開閉手段84の開閉弁842、前記取水用側面開口開閉手段85の開閉リング851、前記地熱水吸引ポンプ7および前記還元用上方開口開閉手段86の開閉リング861がそれぞれ固定されている。また、本実施形態における循環モード切換軸87は、地熱水吸引ポンプ7より上方がパイプ状に形成されている。また、循環モード切換軸87の上端には当該循環モード切換軸87を螺進させることで上下動させるための螺進部89と図10に示すような切換軸長調整機構10が設けられている。なお、上下機構は螺進部89に限定されるものではなく、循環モード切換軸87を上下動させることが可能な構成から適宜選択されるものである。
【0036】
また、本実施形態における切換軸長調整機構10は、図10に示すように、下側調整部11と上側調整部12とを有しており、さらに下側調整部11は、空室体111と、蓋体112とから構成されている。
【0037】
本実施形態における下側調整部11の空室体111は、上側調整部12を挿入させる空間を有しており、循環モード切換軸87の外径よりも大きい内径の円筒状に形成され、当該循環モード切換軸87の上端に連接されている。また、本実施形態における蓋体112は、上側調整部12を空室体111に挿入後に水密上に蓋をするためのものであり、上側調整部12を通す孔を有し、前記空室体111の上部に固定されるようになっている。
【0038】
また、本実施形態における上側調整部12は、蓋体112の孔に挿入可能な外径を有しており、空室体111に挿入され、蓋体112で蓋が閉められた後に、当該蓋体112に係止することで、下側調整部11から抜けなくするための突起部121を有している。
【0039】
よって、本実施形態における切換軸長調整機構10は、上側調整部12が、下側調整部11の空室体111内でスライドすることにより、高さの調整が可能となる。
【0040】
なお、前記取水用下方開閉手段84の開閉弁842、前記取水用側面開口開閉手段85および前記還元用上方開口開閉手段86の配置は以下のようになる。
【0041】
図1および図2に示すように、本実施形態における螺進部89および切換軸長調整機構10が、循環モード切換軸87を最上位置まで上昇させた場合に、取水用下方開口部42が開き、取水用側面開口部43および還元用上方開口部82が閉じるとともに、循環モード切換軸87を最下位置まで降下させた場合に、取水用下方開口部42が閉じ、取水用側面開口部43および還元用上方開口部82が開くように、取水用下方開口開閉手段84、取水用側面開口開閉手段85および還元用上方開口開閉手段86が循環モード切換軸87に配置されている。
【0042】
なお、モード切換手段8は、上記のものに限定されるものではなく、返還路切換手段81と、取水用下方開口部42と、取水用側面開口部43と、還元用上方開口部82とを連動して開閉、または、切り換えることができる構造であれば適宜選択してよい。例えば、返還路切換手段81、取水用下方開口開閉手段84、取水用側面開口開閉手段85および還元用上方開口開閉手段86を電磁弁によって構成し、コンピュータを用いた電子制御によって適宜循環モードを切り換えるようにしてもよい。
【0043】
次に、本実施形態の流路切換式地熱水循環装置1における各構成の作用について、第一循環モードおよび第二循環モードにおける地熱水の循環とともに説明する。
【0044】
まず、各構成が第一循環モードである場合について説明する。図1に示すように本実施形態における第一循環モードの場合、返還路切換手段81は、返還路を第一返還路811に切り換える。また、循環モード切換軸87は、螺進部89および切換軸長調整機構10により最上位置まで上昇される。これにより、取水用下方開口部42が開き、取水用側面開口部43および還元用上方開口部82が閉じる。
【0045】
第一循環モードにおける地熱水は、地熱水吸引ポンプ7の吸引力により外装管2の下側流通路側6に設けられた地熱水ストレーナ3から浸入してくる。このとき地熱水ストレーナ3は、浸入してくる地熱水に含まれる砂利や砂、泥等の不純物を濾過する。また、後述する第二循環モードのときに地熱水ストレーナ3の内側に付着した藻や水垢等の不純物は、地熱水吸引ポンプ7の吸引力により吸引され、除去されていく。一方、地熱水ストレーナ3の帯水層L側には前記不純物が付着し、堆積していく。
【0046】
次に、下側流通路6に流入した地熱水は、地熱水吸引ポンプ7の吸引力により内装管4の下方に開口させた取水用下方開口部42から内装管4内へ流入してくる。第一循環モードにおいて、取水用側面開口開閉手段85が取水用側面開口部43を閉じているため、内装管4内に流入してきた地熱水が上側流通路5へ流れ込むことはない。また、取水用側面開口開閉手段85の開閉リング851が図8に示すような支持アーム852によって循環モード切換軸87に固定されているため、地熱水は支持アーム852の間を通り抜けることができる。
【0047】
また、第一循環モードにおいて、還元用上方開口開閉手段86は、還元用上方開口部82を閉じているとともに、その止水板862は内装管4内の流通を妨げている。そのため、地熱水が還元用連通路83を流れることはなく、内装管4内および外装管2内における地熱水の水位が高くなっても、内装管4内に流入してきた地熱水が還元用上方開口開閉手段86よりも上側に流れ出ることはない。よって、地熱水は内装管4内に貯留されることになる。
【0048】
そして、地熱水吸引ポンプ7は、内装管4内に流入して貯留された地熱水を地上へと圧送する。この圧送された地熱水は、パイプ状に形成された循環モード切換軸87内を通って冷暖房装置9へ供給される。
【0049】
冷暖房装置9で利用された後の地熱水は、返還路切換手段81を介して第一返還路811から上側流通路5へと返還される。このとき本実施形態における第一返還路811の下端は、地熱水の水位Wよりも低い位置に設けられているため、返還された地熱水は殆ど空気と触れることがない。そのため、外気による汚染がなく、また地熱水の活性が抑えられるため藻や水垢等の発生を抑制することができる。
【0050】
また、内装管4に設けられた係止部41および外装管2に設けられた支持部21によって、上側流通路5と下側流通路6とが確実に分断されているため、上側流通路5に返還された地熱水が下側流通路6へ流れ込むことはない。
【0051】
そして、上側流通路5に返還された地熱水は、外装管2の上側流通路側5に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lへ還元される。このとき地熱水を還元させる上側流通路5に設けられた地熱水ストレーナ3の内側では、地熱水に含まれる藻や水垢等の不純物が徐々に堆積していくことになるが、地熱水ストレーナ3の帯水層L側に付着または堆積している不純物は、地熱水が帯水層Lへとしみ出す力によって押し流されるため、外装管2の上側流通路側5に設けられた地熱水ストレーナ3の目詰まりが解消される。
【0052】
次に、各構成が第二循環モードである場合について説明する。図2に示すように本実施形態における第二循環モードの場合、返還路切換手段81は、返還路を第二返還路812に切り換えられる。また、循環モード切換軸87は、螺進部89および切換軸長調整機構10により最下位置まで下降される。これにより、取水用下方開口部42が閉じ、取水用側面開口部43および還元用上方開口部82が開く。
【0053】
第二循環モードにおける地熱水は、地熱水吸引ポンプ7の吸引力により外装管2の上側流通路側5に設けられた地熱水ストレーナ3から浸入してくる。このとき地熱水ストレーナ3は、浸入してくる地熱水に含まれる砂利や砂、泥等の不純物を濾過する。また、第一循環モードのときに地熱水ストレーナ3の内側に付着した藻や水垢等の不純物は、地熱水吸引ポンプ7の吸引力により吸引され、除去されていく。一方、地熱水ストレーナ3の帯水層L側には前記不純物が付着し、堆積していく。
【0054】
支持部21および係止部41により、上側流通路5に浸入した地熱水が下側流通路6へ流れることはない。よって、上側流通路5に流入した地熱水は、取水用側面開口部43から内装管4内に流入してくる。
【0055】
第二循環モードにおいて、取水用下方開口開閉手段84が取水用下方開口部42を閉じているため、内装管4内に流入してきた地熱水は下側流通路6へ流れ込むことはない。また、地熱水の水位Wが高くても内装管4内に流入してきた地熱水は還元用上方開口開閉手段86の止水板862によって、それよりも上に流れ出ることはない。よって、地熱水は内装管4内に貯留されることになる。
【0056】
地熱水吸引ポンプ7は、内装管4内に流入して貯留された地熱水を地上へと圧送し、その地熱水は、循環モード切換軸87内を通り冷暖房装置9へ供給される。
【0057】
冷暖房装置9で利用された後の地熱水は、返還路切換手段81を介して第二返還路812から内装管4内へと返還される。本実施形態における第二返還路812の下端は、地熱水の水位よりも低い位置に設けられているため、返還された地熱水は殆ど空気と触れることがない。そのため、第一循環モードと同様に、外気による汚染がなく、また地熱水の活性が抑えられるため藻や水垢等の発生を抑制することができる。
【0058】
また、内装管4内に返還された地熱水は、還元用上方開口部82から還元用連通路83を介して下側流通路6へと流れる。このとき、還元用上方開口開閉手段86の止水板862によって、地熱水が当該還元用上方開口開閉手段86から下へ流れ出ることはない。
【0059】
下側流通路6に還元された地熱水は、外装管2の下側流通路6側に設けられた地熱水ストレーナ3から帯水層Lへ還元される。このとき地熱水を還元させる下側流通路6に設けられた地熱水ストレーナ3の内側では、地熱水に含まれる藻や水垢等の不純物が徐々に堆積していくことになるが、地熱水ストレーナ3の帯水層L側に付着または堆積している不純物は、地熱水が帯水層Lへとしみ出す力によって流し出されるため、外装管3の下側流通路6側に設けられた地熱水ストレーナ3の目詰まりが解消される。
【0060】
以上のような本実施形態の流路切換式地熱水循環装置1によれば、以下のような効果を得ることができる。
1.第一循環モードおよび第二循環モードを適宜切り換えることにより、地熱水ストレーナ3に付着、堆積した不純物を除去することができ、目詰まりを抑制することができる。
2.地熱水を循環利用しているため、井戸枯れや地盤沈下などの心配がない。
3.循環する地熱水を外気に触れさせないようにしているため、藻や水垢等の発生を抑制し、藻や水垢等を原因とする装置の故障を抑制するとともに、地熱水の水質汚染を抑制することができる。
【0061】
なお、本発明に係る流路切換式地熱水循環装置1は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0062】
例えば、汲み上げられた地熱水は、冷暖房装置9等の熱源として利用されるだけに限定されるものではなく、蛇口等を設けることにより、水源としても利用できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 流路切換式地熱水循環装置
2 外装管
3 地熱水ストレーナ
4 内装管
5 上側流通路
6 下側流通路
7 地熱水吸引ポンプ
8 モード切換手段
9 冷暖房装置
10 切換軸長調整部
11 下側調整部
12 上側調整部
21 支持部
41 係止部
42 取水用下方開口部
43 取水用側面開口部
81 返還路切換手段
82 還元用上方開口部
83 還元用連通路
84 取水用下方開口開閉手段
85 取水用側面開口開閉手段
86 還元用上方開口開閉手段
87 循環モード切換軸
88 円筒
89 螺進部
111 空室体
112 蓋体
121 突起部
811 第一返還路
812 第二返還路
841 開閉弁座
842 開閉弁
851 開閉リング
852 支持アーム
861 開閉リング
862 止水板
L 帯水層
W 地熱水の水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から帯水層にかけて埋設される外装管と、この外装管の内側に配置される内装管と、この内装管内に配置される地熱水吸引ポンプと、前記外装管における帯水層との境界に設けられる地熱水ストレーナとを有する流路切換式地熱水循環装置であって、
前記外装管と前記内装管との間に形成される流通路を上下に分割するように塞ぐことで形成される上側流通路および下側流通路と、
前記地熱水吸引ポンプの吸引力により前記外装管の前記下側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層の地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を前記内装管の下方に開口させた取水用下方開口部から前記内装管内に流入させて地上へと圧送し、当該地熱水を利用後、その地熱水を前記外装管の前記上側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層へ還元するように循環制御される第一循環モードと、
前記地熱水吸引ポンプの吸引力により前記外装管の前記上側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層の地熱水を浸入させるとともに、その地熱水を前記内装管の側面に開口させた取水用側面開口部から前記内装管内に流入させて地上へと圧送し、当該地熱水を利用後、その地熱水を前記外装管の前記下側流通路側に設けられた前記地熱水ストレーナから前記帯水層へ還元するように循環制御される第二循環モードと、
前記第一循環モードまたは前記第二循環モードに循環モードの切り換えを行うモード切換手段と
を備えている流路切換式地熱水循環装置。
【請求項2】
前記モード切換手段は、
地熱水を利用した後に還元する際、前記上側流通路に返還する第一返還路と前記内装管に返還する第二返還路とのいずれかに返還路を切り換える返還路切換手段と、
前記内装管に形成した前記取水用側面開口部よりも上方に開口されて前記第二循環モードの際に還元用の取水口として機能する還元用上方開口部と、
この還元用上方開口部から前記下側流通路まで流通可能に連通させてなる還元用連通路と、
前記取水用下方開口部を開閉する取水用下方開口開閉手段と、
前記取水用側面開口部を開閉する取水用側面開口開閉手段と、
前記還元用上方開口部を開閉する還元用上方開口開閉手段と
を有しており、
前記モード切換手段により循環モードが前記第一循環モードに切り換えられた場合、前記返還路切換手段により地熱水の返還路を前記第一返還路に切り換え、前記取水用下方開口開閉手段により前記取水用下方開口部を開口し、前記取水用側面開口開閉手段および前記還元用上方開口開閉手段によりそれぞれ前記取水用側面開口部および前記還元用上方開口部を閉口して循環路を構成し、
前記モード切換手段により循環モードが前記第二循環モードに切り換えられた場合、前記返還路切換手段により地熱水の返還路を前記第二返還路に切り換え、前記取水用下方開口開閉手段により前記取水用下方開口部を閉口し、前記取水用側面開口開閉手段および前記還元用上方開口開閉手段によりそれぞれ前記取水用側面開口部および前記還元用上方開口部を開口して循環路を構成する請求項1に記載された流路切換式地熱水循環装置。
【請求項3】
前記下方開口開閉手段、前記取水用側面開口開閉手段、および前記還元用上方開口開閉手段は、前記内装管内で上下動可能に軸支された循環モード切換軸にそれぞれ同軸上に設けられている請求項2に記載された流路切換式地熱水循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−242087(P2011−242087A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116455(P2010−116455)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【特許番号】特許第4564106号(P4564106)
【特許公報発行日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(593040999)
【Fターム(参考)】