説明

流路切換式地熱水循環装置

【課題】 構造を簡単にすることにより製造コストを抑制するとともに、既存の井戸を利用して設置コストを抑制することのできる流路切換式地熱水循環装置を提供する。
【解決手段】 帯水層Lを有する深さまで埋設される外装管2と、この外装管2内に配置される内装管3と、外装管2に設けられる上部ストレーナ4と、内装管3に設けられる下部ストレーナ5と、外装管2内の上下の流通を遮蔽する流通遮蔽部14と、外装管2内の地熱水を汲み上げる外装管用ポンプ8と、内装管内の地熱水を汲み上げる内装管用ポンプ9と、地熱水を熱源として熱交換を行う熱交換手段10と、地熱水を外装管2内とへと還元する外装管用還元パイプ11と、内装管3内とへと還元する内装管用還元パイプ12と、第一モードと第二モードとの切り換えを行うモード切換手段13とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯水層の地熱水を循環利用する流路切換式地熱水循環装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、地中の温度は年間を通してほぼ一定である。そのため、夏季における地中は外気温よりも低い傾向があり、冬季における地中は外気温よりも高い傾向がある。また、地中にある帯水層内に含まれる地熱水の温度は、地中の温度に依存するため、上記と同様の傾向がある。
【0003】
そこで、これまでに帯水層内の地熱水を汲み上げ、夏季には冷房用の熱源として活用し、冬季には暖房用の熱源として活用する試みがなされている。
【0004】
例えば、本願発明者は、特許第3927593号公報において、ストレーナを有する外装管と、この外装管内に挿入される断熱内装管と、この断熱内装管と外装管との間に形成される流通路と、断熱内装管内から地熱水を汲み上げるポンプと、このポンプにより汲み上げられた地熱水を圧送する熱源供給圧送管と、利用された後の地熱水を流通路へと圧送する熱源還元管とを有する二重管式地熱水循環装置を提案し、特許権を取得している(特許文献1)。この特許文献1によると、利用後の地熱水が、ストレーナを介して帯水層へと還元されるため、過剰採水による井戸枯れや地盤沈下の心配がなくなるとされている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、ストレーナの帯水層側に地熱水を濾過した際の泥や砂等の異物が堆積し、目詰まりを起こすおそれがあった。また、目詰まりが生じた場合、これを解消することは困難であると考えられる。
【0006】
そこで、本願発明者は、特許第4564106号公報において、外装管と、外装管内に配置される内装管と、この内装管内に配置される地熱水吸引ポンプと、外装管に設けられるストレーナと、外装管と内装管との間に形成される流通路を上下に分割するように塞ぐことで形成した上側流通路および下側流通路と、下側流通路内の地熱水を地熱水吸引ポンプにより吸引し、利用後の地熱水を上側流通路から帯水層へと還元する第一循環モードと、上側流通路内の地熱水を地熱水吸引ポンプにより吸引し、利用後の地熱水を下側流通路から帯水層へと還元する第二循環モードと、これらの第一循環モードまたは第二循環モードの循環モードの切り換えを行うモード切換手段とを有する流路切換式地熱水循環装置を提案し、特許を取得している(特許文献2)。この特許文献2によると、第一循環モードまたは第二循環モードを適宜切り換えることにより、ストレーナの帯水層側に堆積した異物を帯水層側へ流し出す作用を生じさせることができ、ストレーナの目詰まりを防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3927593号公報
【特許文献2】特許第4564106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載された発明においては、地熱水吸引ポンプが内装管内にしか設置されておらず、汲み上げる地熱水を常に内装管内に供給するため、第一循環モードと、第二循環モードとを切り換えるには、複雑な流通路が必要となっていた。従って、製造コストが高くなってしまうことから、構造を簡単にすることで製造コストを低く抑えて実用化を高めたいというニーズが存在していた。
【0009】
また、特許文献2に記載された発明においては、流通路を上下に分割する構造を外装管等に予め設けておく必要があった。例えば、特許文献2では、外装管内の支持部と内装管の係止部とにより構成したり、外装管と内装管とを間仕切り等で固定したりするものが提案されていた。
【0010】
しかし、特許文献2で提案されていたものは、上記構成を有する外装管等を新たに製造して埋設する必要があるため、設置コストも嵩むという要因になる。従って、既存の井戸を外装管として利用できれば設置コストが抑えられる。
【0011】
本発明は、このようなニーズに応えるためになされたものであって、構造を簡単にすることにより製造コストを抑制するとともに、既存の井戸を利用して設置コストを抑制することのできる流路切換式地熱水循環装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る流路切換式地熱水循環装置は、地表から少なくとも一つの帯水層を有する深さまで埋設される外装管と、この外装管内に配置されるとともに少なくとも前記外装管の接する帯水層よりも深い位置まで埋設される内装管と、前記外装管において前記帯水層と接する位置に設けられる上部ストレーナと、前記内装管において前記帯水層と接する位置に設けられる下部ストレーナと、前記外装管に接する帯水層と前記内装管に接する帯水層との間に設けられて前記上部ストレーナから流入する地熱水の流出を防止する前記外装管の底部で構成された流出防止部と、前記内装管と前記外装管との間に配置されて前記外装管内に流入する地熱水を汲み上げる外装管用ポンプと、前記内装管内に配置されて前記内装管内に流入する地熱水を汲み上げる内装管用ポンプと、前記外装管用ポンプまたは前記内装管用ポンプにより汲み上げられた地熱水を熱源として熱交換を行う熱交換手段と、この熱交換手段により使用された後の地熱水を前記外装管内とへと還元する外装管用還元パイプと、前記熱交換手段により使用された後の地熱水を前記内装管内とへと還元する内装管用還元パイプと、前記外装管用ポンプを作動させるとともに前記内装管用還元パイプを開放する第一モードと前記内装管用ポンプを作動させるとともに前記外装管用還元パイプを開放する第二モードとの切り換えを行うモード切換手段とを有する。
【0013】
また、本発明に係る流路切換式地熱水循環装置は、地表から少なくとも複数の帯水層を有する深さまで埋設される外装管と、この外装管内に配置されるとともに少なくとも一つの帯水層よりも深い位置まで埋設される内装管と、前記複数の帯水層のうち上方側にある上方帯水層と下方側にある下方帯水層との間に設けられる前記外装管内の上下の流通を遮蔽する流通遮蔽部と、前記外装管において前記上方帯水層と接する位置に設けられる上部ストレーナと、前記外装管において前記下方帯水層と接する位置に設けられる下部ストレーナと、前記流通遮蔽部より上方の前記内装管と前記外装管との間に配置されて前記外装管内に流入する地熱水を汲み上げる外装管用ポンプと、前記内装管内に配置されて前記内装管内に流入する地熱水を汲み上げる内装管用ポンプと、前記外装管用ポンプまたは前記内装管用ポンプにより汲み上げられた地熱水を熱源として熱交換を行う熱交換手段と、この熱交換手段により使用された後の地熱水を前記外装管内とへと還元する外装管用還元パイプと、前記熱交換手段により使用された後の地熱水を前記内装管内とへと還元する内装管用還元パイプと、前記外装管用ポンプを作動させるとともに前記内装管用還元パイプを開放する第一モードと前記内装管用ポンプを作動させるとともに前記外装管用還元パイプを開放する第二モードとの切り換えを行うモード切換手段とを有する。
【0014】
また、本発明の一態様として、前記外装管用還元パイプの流出口および前記内装管用還元パイプの流出口を動水位より深い位置に配置するとともに、前記外装管内および前記内装管内の動水位より深い位置に前記地熱水と空気との接触を遮断する空気遮断部を設置するよにしてもよい。
【0015】
さらに、本発明の一態様として、前記流通遮蔽部は、前記内装管を挿通させる内装管挿通孔を有する可延性板材と、この可延性板材を上下から狭持して前記可延性板材の外周縁を前記外装管内壁に密接させる狭持部材とを有するようにしてもよい。
【0016】
また、本発明の一態様として、前記流通遮蔽部は、複数枚の前記可延性板材を有しており、各々の前記可延性板材は前記内装管挿通孔を分断する切断面により2つに分割されており、上下に接する前記可延性板材同士の前記切断面を周方向にずらして重ね合わせてなるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造を簡単にすることにより製造コストを抑制するとともに、既存の井戸を利用することにより設置コストも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の第一実施形態における第一モードを示す正面縦断面図である。
【図2】本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の第一実施形態における第二モードを示す正面縦断面図である。
【図3】本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の第二実施形態における第一モードを示す正面縦断面図である。
【図4】本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の第二実施形態における第二モードを示す正面縦断面図である。
【図5】本第二実施形態における流通遮蔽部を示す正面図である。
【図6】本第二実施形態における流通遮蔽部を示す平面図である。
【図7】本第二実施形態における流通遮蔽部を示す図5の左側面図である。
【図8】本第二実施形態における第一可延性板材を示す平面図である。
【図9】本第二実施形態における第一可延性板材を示す正面図である。
【図10】本第二実施形態における第二可延性板材を示す平面図である。
【図11】本第二実施形態における第二可延性板材を示す正面図である。
【図12】本第二実施形態における第三可延性板材を示す平面図である。
【図13】本第二実施形態における第三可延性板材を示す正面図である。
【図14】本第二実施形態における第四可延性板材を示す平面図である。
【図15】本第二実施形態における第四可延性板材を示す正面図である。
【図16】本第二実施形態における上部狭持部材を示す平面図である。
【図17】本第二実施形態における上部狭持部材を示す正面図である。
【図18】本第二実施形態における下部狭持部材を示す平面図である。
【図19】本第二実施形態における下部狭持部材を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の第一実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本第一実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Aにおいて第一モードの状態を示す正面縦断面図である。
【0020】
図1より、本第一実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Aは、主として、地中に埋設される外装管2と、前記外装管2内に配置される内装管3と、前記外装管2の側面に設けられる上部ストレーナ4と、前記内装管3の側面に設けられる下部ストレーナ5と、前記外装管2の下方に設けられる底部として構成される流出防止部6と、前記外装管2および前記内装管3の地表近傍に設けられる空気遮断部7と、前記外装管2内に配置される外装管用ポンプ8と、前記内装管3内に配置される内装管用ポンプ9と、汲み上げられる地熱水を熱源として熱交換を行う熱交換手段10と、使用後の地熱水を前記外装管2内へ還元する外装管用還元パイプ11と、使用後の地熱水を前記内装管3内へ還元する内装管用還元パイプ12と、地熱水の流れを第一モードまたは第二モードに切り換えるモード切換手段13とから構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0021】
外装管2は、鉄鋼や樹脂等を材料とする管であり、複数の帯水層Lを有する地中において、地表から少なくとも一つの帯水層Lを有する深さまで埋設されている。
【0022】
内装管3は、鉄鋼や樹脂等を材料とする管であり、外装管2内に配置されているとともに、少なくとも外装管2の接する帯水層Lよりも深い位置における帯水層Lを有する深さまで埋設されている。また、内装管3は、この内装管3と外装管2との間に外装管用ポンプ8を配置するため、外装管2の中心位置から偏心された位置に配置されている。なお、外装管2と内装管3との間に外装管用ポンプ8を配置するのに十分な空間が形成されている場合、内装管3を外装管2に対して偏心位置に配置しなくてもよい。
【0023】
上部ストレーナ4は、外装管2を挿入するために掘削された地中と外装管2との間に形成される隙間に充填された小砂利等によって構成されたフィルターを有しており、外装管2の帯水層Lと接する位置に設けられている。この上部ストレーナ4は、外装管2内に流入する地熱水に含まれる砂や泥等の不純物を除去するものである。なお、上部ストレーナ4のフィルターは金網や不織布等により形成されてもよい。
【0024】
下部ストレーナ5は、上部ストレーナ4と同様、内装管3を挿入するために掘削された地中と内装管3との間に形成される隙間に充填された小砂利等によって構成されたフィルターを有し、外装管2の底部である流出防止部6よりも下方における内装管3が接する帯水層Lの位置に設けられている。この下部ストレーナ5は、上部ストレーナ4と同様に、内装管3内に流入する地熱水に含まれる砂や泥等の不純物を除去するものである。なお、下部ストレーナ5のフィルターは金網や不織布等により形成されてもよい。
【0025】
流出防止部6は、外装管2の下方を塞ぐためのものであるとともに、本第一実施形態では、上部ストレーナー4から流入させた地熱水を流出させないように機能している。また、前記流出防止部6には、内装管3を挿通させるための内装管挿通孔61が形成されている。なお、前記流出防止部6は、外装管2と一体的に形成されていてもよく、外装管2とは別体として形成し、溶接、嵌合または螺合等によって外装管2の下方に固定されてもよい。
【0026】
空気遮断部7は、鉄鋼や樹脂等を材料とする板状部材からなり、外装管2の上方および内装管3の上方であって動水位Wよりも深い位置に配置される。この空気遮断部7は、外装管2内および内装管3内の地熱水と、その上方にある空気との接触を遮断するものである。
【0027】
なお、動水位Wとは、外装管用ポンプ8または内装管用ポンプ9を作動させた際の各管内の地熱水の水位のことである。
【0028】
外装管用ポンプ8は、前記外装管2内の地熱水を汲み上げるためのポンプであり、内装管3と外装管2との間に配置される。また、本第一実施形態における外装管用ポンプ8は、汲み上げる地熱水と空気との接触を避けるため、水中から地熱水を汲み上げることのできる水中ポンプが用いられている。
【0029】
内装管用ポンプ9は、前記内装管3内の地熱水を汲み上げるためのポンプであり、内装管3内に配置される。また、本第一実施形態における内装管用ポンプ9は、外装管用ポンプ8と同様、汲み上げる地熱水と空気との接触を避けるため、水中ポンプが用いられている。
【0030】
なお、外装管用ポンプ8および内装管用ポンプ9は、水中ポンプに限定されるものではない。例えば、水中で使用できないポンプ等も用いることができる。水中で使用できないポンプの場合は、ポンプの取水口を外装管8内または内装管9内の動水位Wより深い位置に配置し、ポンプ本体を地中や地上等に設けることにより、外装管2内または内装管3内の地熱水を汲み上げることができる。
【0031】
熱交換手段10は、地熱水を熱源として熱交換を行う冷暖房装置等で構成される。なお、熱交換手段10の代わりに、または、熱交換手段10とともに、蛇口を設けて地熱水を水源として利用できるようにしてもよい。
【0032】
外装管用還元パイプ11は、鉄鋼や樹脂等を材料とする管であり、熱交換手段10から外装管2内にかけて配置されている。この外装管用還元パイプ11は、熱交換手段10により使用された後の地熱水を外装管2内へと還元する管である。また、本第一実施形態における外装管用還元パイプ11の下端部にある流出口111は、動水位Wより深い位置に配置されている。使用された後の地熱水を外装管2内へと還元する際に、地熱水と空気との接触を避けるためである。
【0033】
内装管用還元パイプ12は、鉄鋼や樹脂等を材料とする管であり、熱交換手段10から内装管3内にかけて配置されている。この内装管用還元パイプ12は、熱交換手段10により使用された後の地熱水を内装管3内へと還元する管である。また、本第一実施形態における内装管用還元パイプ12の下端部にある流出口121は、外装管用還元パイプ11の下端部にある流出口111と同様、地熱水と空気との接触を避けるため、動水位Wより深い位置に配置されている。
【0034】
モード切換手段13は、外装管用ポンプ8を作動させるとともに内装管用還元パイプ12を開放する第一モードと、内装管用ポンプ9を作動させるとともに外装管用還元パイプ11を開放する第二モードとを切り換えることにより、地熱水の循環方向を切り換えるものである。本第一実施形態におけるモード切換手段13は、第一モードと第二モードとの切り換えを行うため、ポンプ制御部(図示しない)と、還元パイプ切換制御部131とを有している。
【0035】
ポンプ制御部は、外装管用ポンプ8および内装管用ポンプ9の作動のオン・オフ制御を行うものであり、第一モードでは、前記外装管用ポンプ8を作動させるとともに前記内装管用ポンプ9を停止させ、第二モードでは、前記内装管用ポンプ9を作動させるとともに前記外装管用ポンプ8を停止させる。
【0036】
還元パイプ切換制御部131は、電磁弁等を有しており、使用された後の地熱水を送る流路を外装管用還元パイプ11か内装管用還元パイプ12に切り換える制御を行う。第一モードでは、内装管用還元パイプ12側の流路を開放し、第二モードでは、外装管用還元パイプ11側の流路を開放する。
【0037】
次に、本第一実施形態における流路切換式地熱水循環装置1Aの各構成の作用について、図1および図2を用いて説明する。
【0038】
まず、各構成が第一モードである場合について説明する。図1に示すように、第一モードの場合、モード切換手段13のポンプ制御部は、外装管用ポンプ8を作動させるとともに内装管用ポンプ9を停止させる。
【0039】
外装管用ポンプ8は、外装管2内の地熱水を汲み上げて熱交換手段10へと送る。本第一実施形態では、外装管用ポンプ8として水中ポンプを用いているため、汲み上げた地熱水を空気と接触させることなく、熱交換手段10へ送ることができる。
【0040】
外装管2では、地熱水が汲み上げられ、水位が低下すると、これに応じて外装管2内の圧力も低下する。そのため、相対的に帯水層L側の圧力が高くなり、帯水層L内の地熱水が上部ストレーナ4を通過して外装管2内に流入する。このように外装管2内の地熱水は、帯水層Lから随時供給され、外装管用ポンプ8によって連続的に汲み上げることができる。
【0041】
また、流出防止部6が、外装管2の下方を塞いでいるため、上部ストレーナ4を通過して外装管2内に流入する地熱水を外装管2内に溜めておくことができる。
【0042】
上部ストレーナ4は、フィルターによって帯水層L内に含まれる泥や砂等の異物を濾過し、外装管2内に流入する地熱水を綺麗にする。
【0043】
熱交換手段10は、汲み上げられた地熱水を熱源として熱交換を行う。例えば、夏季では、地熱水が外気温よりも低温であるため、地熱水を冷房用の熱源として利用する。また、冬季では、地熱水が外気温よりも高温であるため、地熱水を暖房用の熱源として利用する。
【0044】
モード切換手段13の還元パイプ切換制御部131は電磁弁を制御して、使用された後の地熱水を送る流路を内装管用還元パイプ12側にして当該内装管用還元パイプ11を開放させる。
【0045】
そして、第一モードにおける熱交換手段10により使用された後の地熱水は、内装管3内へと送られる。このとき、内装管用還元パイプ12の流出口121が動水位Wよりも深い位置に配置されているため、地熱水を空気とを接触させることなく内装管3内へ送ることができる。
【0046】
また、地熱水が内装管3内に送られることにより当該内装管3内の圧力は高くなる。よって、相対的に帯水層L側の圧力が低くなり、内装管3内の地熱水は下部ストレーナ5を通過して帯水層Lへと還元される。
【0047】
次に、各構成が第二モードである場合について説明する。図2に示すように、第二モードの場合、モード切換手段13のポンプ制御部は、内装管用ポンプ9を作動させるとともに外装管用ポンプ8を停止させる。地熱水を第一モードにおける循環方向とは逆方向に循環させるためである。
【0048】
内装管用ポンプ9は、内装管3内の地熱水を汲み上げて熱交換手段10へ送る。外装管用ポンプ8と同様、水中ポンプを用いているため、汲み上げた地熱水を空気と接触させることなく、熱交換手段10へ送ることができる。
【0049】
内装管3内の地熱水は、汲み上げられことにより水位が低下し、前記内装管3内の圧力が低下する。よって、相対的に帯水層L側の圧力が高くなり、帯水層L内の地熱水が下部ストレーナ5を通過して内装管3内に随時流入する。
【0050】
下部ストレーナ5は、上部ストレーナ4と同様、フィルターによって帯水層L内に含まれる泥や砂等の異物を濾過し、内装管3内に流入する地熱水を綺麗にする。
【0051】
熱交換手段10は、第一モードと同様、汲み上げられた地熱水を熱源として熱交換を行う。
【0052】
第二モードでは、モード切換手段13の還元パイプ切換制御部131が電磁弁を制御して、使用された後の地熱水を送る流路を外装管用還元パイプ11側に切り換え、当該外装管用還元パイプ11を開放する。
【0053】
また、外装管用還元パイプ11の流出口111は、内装管用還元パイプ12の流出口121と同様に、動水位Wよりも深い位置に配置されているため、地熱水を空気に接触させることなく外装管2内へ送ることができる。流出防止部6は、外装管2内へ送られた地熱水の外装管2内からの流出を防ぐ。
【0054】
そして、地熱水が外装管2内に送られることにより、外装管2内の圧力は高くなる。よって、相対的に帯水層L側の圧力が低くなり、外装管2内の地熱水は上部ストレーナ4を通過して帯水層Lへと還元される。
【0055】
また、第一モードおよび第二モードともに、空気遮断部7が、外装管2内および内装管3内の地熱水と、その上方にある空気との接触を遮断している。従って、本第一実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Aは、地熱水を空気に接触することなく循環することができる。
【0056】
一方、上部ストレーナ4または下部ストレーナ5により濾過された砂等の異物は、上部ストレーナ4または下部ストレーナ5の外側である帯水層L側に付着ないし堆積される。そのため、長期間、同じモードで使用を続けると、帯水層L側が目詰まりを起こすおそれがある。
【0057】
そこで、本第一実施形態ではモード切換手段13によりモードを切り換えることによって上部ストレーナ4または下部ストレーナ5の目詰まりを防止する。
【0058】
例えば、第一モードの場合、上部ストレーナ4により濾過された砂等の異物は、上部ストレーナ4の帯水層L側に堆積される。そこで、モードを第二モードに切り換えると、上述のとおり、第二モードでは、外装管2内の圧力は高くなり、相対的に帯水層L側の圧力が低くなるため、地熱水は上部ストレーナ4を通過して帯水層Lへと還元される。このとき、上部ストレーナ4の帯水層L側に堆積された砂等の異物は、帯水層L側に押し流されるため、目詰まりを解消することができる。
【0059】
同様に、第二モードの場合、下部ストレーナ5により濾過された砂等の異物は、下部ストレーナ5の帯水層L側に堆積される。そこで、モードを第一モードに切り換えると、内装管3内の地熱水は下部ストレーナ5を通過して帯水層Lへと還元されるため、下部ストレーナ5の帯水層L側に堆積された砂等の異物は、帯水層L側に押し流されて目詰まりが解消される。
【0060】
よって、適宜モードを切り換えることにより、目詰まりを防止することができる。なお、モードを切り換えるタイミングは適宜選択されるものである。地中の温度は年中ほぼ一定であるため、いつモードを切り換えても、同等の温度を有する地熱水の連続供給が可能である。
【0061】
また、地中の温度は、外気温度に対して夏は冷たく、冬は暖かい。従って、地熱水は、夏は冷房用の熱源として、冬は暖房用の熱源として適しており、年中、地熱水の温度を効率よく熱源とすることができる。
【0062】
なお、適宜、第一モードと第二モードとに切り換えることにより、利用した水をそれぞれの帯水層Lへ還元することができるため、帯水層Lの枯渇を防ぐとともに各帯水層Lに与える負荷を小さくできる。
【0063】
以上のような本第一実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Aによれば、以下の効果を得ることができる。
1.地熱水を汲み上げるポンプを外装管2内と内装管3内の両方に配置したことにより、地熱水を循環させる流通路の構造を簡単にすることができる。
2.地熱水は空気と接触させずに循環させることができる。そのため、流路切換式地熱水循環装置1A内における藻等の発生が抑制できる。
3.ストレーナの目詰まりを防止するという、流路切換式地熱水循環装置1Aにおける基本性能をストレーナの交換をしなくても維持することができる。
4.地熱水を循環利用することで環境へ配慮された優しいシステムを提供できる。
【0064】
次に、本発明に係る流路切換式地熱水循環装置の第二実施形態について図面を用いて説明する。なお、本第二実施形態の構成のうち、上述した第一実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0065】
図3は、本第二実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Bにおいて第一モードの状態を示す正面縦断面図である。
【0066】
図3より、本第二実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Bは、主として、外装管2と、内装管3と、上部ストレーナ4と、下部ストレーナ5と、空気遮断部7と、外装管用ポンプ8と、内装管用ポンプ9と、熱交換手段10と、外装管用還元パイプ11と、内装管用還元パイプ12と、モード切換手段13とを有しており、第一実施形態における外装管2の底部で構成された流出防止部6に代えて、流通遮蔽部14を有している。
【0067】
本第二実施形態における外装管2は、図3に示すように、地表から複数の帯水層Lを有する深さまで埋設されている。また、外装管2には、帯水層Lと接する位置にストレーナが設けられている。
【0068】
流通遮蔽部14は、外装管2内の任意の深さに設置され、外装管2内の上下の流通を遮蔽するものである。すなわち、流通遮蔽部14は、第一実施形態における外装管2の流出防止部6に相当するとともに、流通遮蔽部14より下方の外装管2を第一実施形態における内装管3に相当する機能を持たせるものである。
【0069】
よって、本第二実施形態では、流通遮蔽部14より上方側にある上方帯水層ULに設けられた外装管2のストレーナが上部ストレーナ4となり、流通遮蔽部14より下方側にある下方帯水層LLに設けられたストレーナが下部ストレーナ5となる。
【0070】
本第二実施形態における流通遮蔽部14は、図5から図7に示すように、可延性板材15と、この可延性板材15を狭持する狭持部材16とを有する。以下、可延性板材15および狭持部材16について詳細に説明する。
【0071】
可延性板材15は、狭持部材16により狭持されることで外方向(半径方向)に延出され、その外周縁が外装管2内壁に密着することにより、外装管2内の上下の流通を遮蔽するものである。本第二実施形態における可延性板材15は、図8から図15に示すように、第一可延性板材15a、第二可延性板材15b、第三可延性板材15cおよび第四可延性板材15dからなる。
【0072】
第一可延性板材15aは、最も上方に配置される可延性板材15であり、図8および図9に示すように、狭持部材16に設けられたボルト161を挿通させる2つのボルト挿通孔151と、内装管2を挿通させるための内装管挿通孔152を有している。
【0073】
また、第一可延性板材15aは、内装管挿通孔152を2つに分断する切断面153により2つに分割されている。これは、内装管2の下端部から流通遮蔽部14を設置するまでの距離が長い場合に、前記内装管2を所定の位置まで内装管挿通孔152内に挿通させるよりも、分割した流通遮蔽部14をその設置場所において直接的に装着する方が、作業上、容易だからである。
【0074】
本第二実施形態では、図8に示すように、内装管挿通孔152を2等分するとともに、一方のボルト挿通孔151の近傍を通る縦断面により分割されている。
【0075】
また、図9に示すように、第一可延性板材15aの外周縁部154は、上方に向けて縮径するテーパ状に形成されている。これは、流通遮蔽部14を装着させた状態で内装管3を外装管2内に配置する場合、流通遮蔽部14の外周縁部における上側角部が外装管2の内壁に引っ掛かる等して挿入出が妨げられるのを防止するためである。
【0076】
第二可延性板材15bは、第一可延性板材15aの下方に設けられるものである。図10および図11に示すように、第一可延性板材15aと同様、2つのボルト挿通孔151と、内装管挿通孔152とを有している。また、内装管挿通孔152を2つに分断する切断面153により2つに分割されている。
【0077】
但し、第二可延性板材15bは、第一可延性板材15aの切断面153とは異なる位置における切断面153により分割されている。第一可延性板材15aおよび第三可延性板材15cと重ね合わせた際に、切断面153部分に隙間が生じ、その隙間同士が連通することによって水漏れが生じるのを防ぐためである。
【0078】
よって、本第二実施形態における第二可延性板材15bは、内装管挿通孔152を2等分するとともに、第一可延性板材15aとは異なる方のボルト挿通孔151の近傍を通る切断面153により分割されている。
【0079】
第三可延性板材15cは、第二可延性板材15bの下方に設けられるものであり、図12および図13に示すように、2つのボルト挿通孔151と、内装管挿通孔152が形成されている。また、内装管挿通孔152を2つに分断する切断面153により2つに分割されている。この第三可延性板材15cの切断面153は前述した第二可延性板材15bの切断面153とは異なる位置において切断されている。
【0080】
第四可延性板材15dは、第三可延性板材15cの下方である、最下段に取り付けられるものである。図14および図15に示すように、2つのボルト挿通孔151と、内装管挿通孔152とが形成されている。また、内装管挿通孔152を2つに分断する切断面153により2つに分割されている。この第四可延性板材15dの切断面153は前記第三可延性板材15cの切断面153とは異なる位置において切断されている。
【0081】
さらに、図15に示すように、第四可延性板材15dの外周縁部154は、流通遮蔽部14の外周縁部における下側角部が外装管2の内壁に引っ掛かる等して挿入出の妨げとならないように、第一可延性板材15aの外周縁部154とは逆に、下方に向けて縮径するテーパ状に形成されている。
【0082】
なお、可延性板材15は、枚数について特に限定されるものではなく、1枚の可延性板材15により構成してもよい。
【0083】
狭持部材16は、上部狭持部材16aと下部狭持部材16bとから構成されている。これら上部狭持部材16aおよび下部狭持部材16bにより、可延性板材15を上下方向から狭持することで、可延性板材15を外方向(半径方向)に延出させるものである。
【0084】
上部狭持部材16aは、図3、図4、図16および図17に示すように、下部狭持部材16bに設けられたボルト161を挿通させる2つのボルト挿通孔163と、内装管3を挿通させる内装管挿通孔164とを有する。また、可延性板材15と同様、内装管3において流通遮蔽部14を設置場所に直接的に装着できるようにするため、内装管挿通孔164を2つに分断する切断面165により2つに分割されている。
【0085】
また、下部狭持部材16bは、図3、図4、図18および図19に示すように、内装管挿通孔164を有するとともに、2本のボルト161が上方に向けて固定されている。また、上部狭持部材16aと同様に、流通遮蔽部14の設置場所に直接的に装着できるようにするため、内装管挿通孔164を2つに分断する切断面165により2つに分割されている。2本のボルト161は、ナット162による締め付ける力を調節することにより、可延性板材15を延出させる量を調節している。
【0086】
本第二実施形態における内装管3は、下端部が開口されており、流通遮蔽部14の設置場所よりも下方における側面には地熱水を流入・流出させるための流水孔31が形成されている。なお、内装管3内への異物の混入を防止するため、下端部や流水孔31に別途、ストレーナを設けてもよい。
【0087】
内装管3は、所定の場所に流通遮蔽部14を設置し、それを外装管2内に挿入することにより外装管2内に配置される。このとき流通遮蔽部14における第一可延性板材15aと第四可延性板材15dの外周縁部154がテーパ状に形成されているため、速やかに設置することができる。
【0088】
なお、本第二実施形態における第一モードおよび第二モードの地熱水の流れは、上述の第一実施形態における流れと同様であり、それに伴う各構成の作用も同等となる。
【0089】
以上のように本第二実施形態の流路切換式地熱水循環装置1Bによれば、上下に複数のストレーナを有する外装管2内に内装管3を挿入するとともに流通遮蔽部14を配置することにより、簡単に流路切換式地熱水循環装置1Bを構成することがができる。すなわち、既存の井戸等を外装管2として用いることができ、別途、外装管2のための井戸を掘削せずに容易に実用化を図ることが可能となる。
【0090】
また、ストレーナが目詰まりしたことにより使用できなくなった井戸でも、地熱水の循環方向を適宜切り換えることにより、ストレーナの目詰まりを解消し、井戸を再生することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 流路切換式地熱水循環装置
2 外装管
3 内装管
4 上部ストレーナ
5 下部ストレーナ
6 流出防止部
7 空気遮断部
8 外装管用ポンプ
9 内装管用ポンプ
10 熱交換手段
11 外装管用還元パイプ
12 内装管用還元パイプ
13 モード切換手段
14 流通遮蔽部
15 可延性板材
16 狭持部材
111 流出口
121 流出口
131 還元パイプ切換制御部
15a 第一可延性板材
15b 第二可延性板材
15c 第三可延性板材
15d 第四可延性板材
151 ボルト挿通孔
152 内装管挿通孔
153 切断面
154 外周縁部
16a 上部狭持部材
16b 下部狭持部材
161 ボルト
162 ナット
163 ボルト挿通孔
164 内装管挿通孔
165 切断面
31 流水孔
61 内装管挿通孔
L 帯水層
UL 上方帯水層
LL 下方帯水層
W 動水位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表から少なくとも複数の帯水層を有する深さまで埋設される外装管と、
少なくとも一つの前記帯水層よりも深い位置まで前記外装管内に挿入される内装管と、
この内装管に装着させた状態で前記外装管内に挿入され、前記複数の帯水層のうち上方側にある上方帯水層と下方側にある下方帯水層との間に配置されることにより前記外装管内の上下の流通を遮蔽する流通遮蔽部と、
前記外装管において前記上方帯水層と接する位置に設けられる上部ストレーナと、
前記外装管において前記下方帯水層と接する位置に設けられる下部ストレーナと、
前記流通遮蔽部より上方の前記内装管と前記外装管との間に配置されて前記外装管内に流入する地熱水を汲み上げる外装管用ポンプと、
前記内装管内に配置されて前記内装管内に流入する地熱水を汲み上げる内装管用ポンプと、
前記外装管用ポンプまたは前記内装管用ポンプにより汲み上げられた地熱水を熱源として熱交換を行う熱交換手段と、
この熱交換手段により使用された後の地熱水を前記外装管内とへと還元する外装管用還元パイプと、
前記熱交換手段により使用された後の地熱水を前記内装管内とへと還元する内装管用還元パイプと、
前記外装管用ポンプを作動させるとともに前記内装管用還元パイプを開放する第一モードと前記内装管用ポンプを作動させるとともに前記外装管用還元パイプを開放する第二モードとの切り換えを行うモード切換手段と
を有する流路切換式地熱水循環装置。
【請求項2】
前記外装管用還元パイプの流出口および前記内装管用還元パイプの流出口を動水位より深い位置に配置するとともに、前記外装管内および前記内装管内の動水位より深い位置に前記地熱水と空気との接触を遮断する空気遮断部を設置する請求項1に記載の流路切換式地熱水循環装置。
【請求項3】
前記流通遮蔽部は、前記内装管を挿通させる内装管挿通孔を有する可延性板材と、この可延性板材を上下から狭持して前記可延性板材の外周縁を前記外装管内壁に密接させる狭持部材とを有する請求項1または請求項2に記載の流路切換式地熱水循環装置。
【請求項4】
前記流通遮蔽部は、複数枚の前記可延性板材を有しており、各々の前記可延性板材は前記内装管挿通孔を分断する切断面により2つに分割されており、上下に接する前記可延性板材同士の前記切断面を周方向にずらして重ね合わせてなる請求項3に記載の流路切換式地熱水循環装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−2806(P2013−2806A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243180(P2011−243180)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2011−134849(P2011−134849)の分割
【原出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【特許番号】特許第5096608号(P5096608)
【特許公報発行日】平成24年12月12日(2012.12.12)
【出願人】(593040999)
【Fターム(参考)】