説明

流路構成部材およびインクジェットヘッドユニット

【課題】固定部材を用いることなく、流路内への接着剤進入を確実に防止するとともに、小型化にも対応した流路構成部材およびインクジェットヘッドユニットを提供する。
【解決手段】上部ベント用パイプ201および下部ベント用パイプ202の重力方向の下方位置に接着剤材料400を滞留させる接着剤保持部としてのU字形状の底部130bおよび凹状ひさし部210を設けることで、上部ベント用パイプ201および下部ベント用パイプ202とチューブ100との接続を補強するために接着剤材料400を塗布した場合に、接着剤材料400が底部130bおよび凹状ひさし部210に停滞することから、配管接続用パイプとチューブ100との連結領域に接着剤材料400がそのまま留まることができるため、配管接続用パイプとチューブ100との連結領域において、確実に接着剤を硬化させて、連結領域の確実な結合を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流路に連結される配管接続用パイプを有する流路構成部材、およびその流路構成部材を備えるインクジェットヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
流路が内部に形成された流路構成部材において、供給側や排出側と流路構成部材を繋ぐ手段として、配管部材としてのチューブを用いた接続が一般的に用いられる。流路構成部材にはチューブを接続するための配管接続用パイプが形成されており、配管接続用パイプと供給側、排出側などのチューブが嵌合され接続されることで流路が形成される。なお、以下の説明において、チューブが接続されていない状態を単に流路構成部材と称し、流路構成部材にチューブが接続された状態を流路構成ユニットと称する。
【0003】
接続用パイプとチューブとの連結部は、嵌合にて接続されただけの状態では強固な接続状態とはいえず、組込み時の作業等において、配管接続用パイプとチューブとの連結部に負荷が作用すると、連結部でリーク等の不良を発生してしまう。
【0004】
通常、配管接続用パイプとチューブとの連結部を強固な状態とするために、固定部材を用い連結部を外周から締め付ける方法、接着剤による固定を目的として配管接続用パイプの外周に接着剤を塗布する方法、またはチューブの先端内部に接着剤を塗布した後に配管接続用パイプに嵌合して接続する方法などが用いられている。
【0005】
下記特許文献1には、接着剤を用いた配管接続用パイプとチューブとの連結構造が開示されている。
【特許文献1】特開2005−212161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
流路内へ安定した供給を行なう上で、配管接続用パイプとチューブとの接続においては、連結部を強固な接着状態とし、連結部からの液体のリークの発生や、配管接続用パイプからのチューブの脱落を防止することは非常に重要となる。しかしながら、固定部材を用い連結部を外周から締め付ける方法では、以下のような課題が発生する。
【0007】
すなわち、固定部材は連結部をチューブ外周から締め付けているだけなので、チューブに対して連結部からチューブが抜ける方向に力がかかると、チューブとともに固定部材も一緒に抜ける方向へ移動するため、チューブが抜けやすい。
【0008】
一方で、配管接続用パイプの外周へ接着剤を塗布する方法においては、配管接続用パイプが上方向を向く構成では、接着剤材料の流動が少なく、安定した接着を可能とする。しかし、配管接続用パイプが流路構成部材の側面に位置し、重力方向と直交方向にある構成においては、塗布された接着剤は流動し、チューブの配管接続用パイプへの嵌合部を確実に接着することが困難である。
【0009】
また、流動性の少ない、高粘度、高チクソ性を備える接着剤や、瞬間接着剤のような硬化時間が短い接着剤による接着も可能である。しかし、このような接着剤を用いる場合、チューブの配管接続用パイプへの嵌合部近傍へ接着剤を導入する必要があり、配管接続用パイプが狭隙部などに形成された構成においては、精密な作業が必要となる。
【0010】
また、塗布位置などの作業ミスにより、配管接続用パイプの先端から、流路内へ接着剤が進入してしまう危険性が高い。また、チューブの先端内部へ接着剤を塗布する方法においては、接着剤をチューブ内側へ均等に塗布することが困難であるとともに、チューブの配管接続用パイプへの嵌合の際に、チューブ内部に塗布された接着剤が、配管接続用パイプ先端から流路内部へ侵入してしまう可能性が高い。
【0011】
また、固定部材を用いる方法、接着剤を塗布した後に接続する方法のいずれにおいても、上記課題以外に小型化への対応が困難であるという問題がある。流路構成部材の小型化とともに、必然的に配管接続用パイプも小さくなる。
【0012】
このため、狭い領域への固定部材の装着や、配管接続用パイプ外周への接着剤の塗布は高精度の作業となり、確実で安定した接続状態を形成するのは困難となる。したがって、本発明の目的は、固定部材を用いることなく、流路内への接着剤進入を確実に防止するとともに、小型化にも対応した流路構成部材およびインクジェットヘッドユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明に基づいた流路構成部材においては、外部に設けられた配管部材が連結され、液体を通過させるための流路が本体部材の内部に形成された流路構成部材であって、上記流路と連通し、上記本体部材の垂直壁から略水平方向に突出するように配設される配管接続用パイプと、上記配管接続用パイプの少なくとも重力方向の下方位置に設けられ、上記配管接続用パイプに上記配管部材を固定する際に用いられる接着剤を滞留させる接着剤保持部と、を備えている。
【0014】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、上記接着剤保持部は、上記配管接続用パイプに連結される上記配管部材との間隙が均一となるように、上記配管接続用パイプの外周面に沿った湾曲形状を有している。
【0015】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、上記垂直壁は、上記接着剤保持部に連通し、接着剤を導入するための上部開口部を有している。
【0016】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、上記垂直壁は、上記配管接続用パイプを含むように凹み領域を有し、上記凹み領域の上端部が、上記上部開口部を構成し、上記凹み領域の下端部が、U字形状の上記接着剤保持部を構成している。
【0017】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、上記配管接続用パイプは、重力方向に沿って2以上配設されている。
【0018】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、重力方向に沿って2以上配設された上記配管接続用パイプの間に、上記接着剤保持部が設けられている。
【0019】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、上記垂直壁は、それぞれ上記配管接続用パイプが設けられる下段凹み領域および上記下段凹み領域よりも本体側に後退する上段凹み領域を有し、上記下段凹み領域および上記上段凹み領域の下方にはそれぞれ上記接着剤保持部が設けられている。
【0020】
この発明に基づいた流路構成部材の他の形態においては、上記配管接続用パイプは、本体部材の垂直壁から略水平方向に突出する先端側の全周に、半径方向の外方に膨出するかえりが設けられている。
【0021】
この発明に基づいたインクジェットヘッドユニットにおいては、インクを吐出するインクヘッドと、上記インクヘッドにインクを供給し、上述した流路構成部材を有するインクフィルタユニットと、上記インクフィルタユニットにおける上記インクヘッドへのインク吐出信号を与えるための回路基板を有するベースユニットとを備えている。
【発明の効果】
【0022】
この発明に基づいた流路構成部材によれば、配管接続用パイプの少なくとも重力方向の下方位置に接着剤を滞留させる接着剤保持部を設けることで、配管接続用パイプと配管部材との接続を補強するために接着剤材料を塗布した場合に、接着剤材料が接着剤保持部に停滞することから、配管接続用パイプと配管部材との連結領域に接着剤がそのまま留まることができる。その結果、配管接続用パイプと配管部材との連結領域において、確実に接着剤を硬化させて、連結領域の確実な結合を図ることが可能となる。
【0023】
次に、この発明に基づいた流路構成部材の他の形態によれば、上記接着剤保持部の形状として、配管接続用パイプの外周面に沿った湾曲形状を採用することにより、配管接続用パイプに連結される配管部材との間隙が均一となり、導入される接着剤材料が、連結領域外周に均一に効率よく停滞させることが可能となる。
【0024】
次に、この発明に基づいた流路構成部材の他の形態によれば、垂直壁に、接着剤保持部に連通し、接着剤を導入するための上部開口部を設けることで、連結領域近くへの接着剤材料の塗布が困難な形状においても、上部開口部から導入された接着剤材料が確実に連結領域へ流れ込むことができるため、連結領域の確実な接着を可能とする。
【0025】
次に、この発明に基づいた流路構成部材の他の形態によれば、凹み領域の上端部が上部開口部を構成し、凹み領域の下端部がU字形状の接着剤保持部を構成していることにより、構造の簡略化と小型化への対応を可能とする。
【0026】
次に、この発明に基づいた流路構成部材の他の形態によれば、配管接続用パイプを、重力方向に沿って2以上配設させることで、複数の開口部を必要とせず、効率良く接着剤材料の導入が可能となる。
【0027】
次に、この発明に基づいた流路構成部材の他の形態によれば、配管接続用パイプの先端側の全周に、半径方向の外方に膨出するかえりを設けることで、配管接続用パイプの外周面と配管部材の内周面と間に間隙が形成され、積極的に接着剤材料をこの間隙に導入させることができる。
【0028】
また、かえりを設けることで、配管部材の配管接続用パイプからの引き抜きが防止できるとともに、かえりが堰となり接着剤材料の配管部材内への侵入および配管接続用パイプを通じての流路への侵入を防止することが可能となる。
【0029】
次に、この発明に基づいたインクジェットヘッドユニットによれば、配管接続用パイプからの配管部材の脱落や、連結部での液体のリークの発生が無く、信頼性の富み小型化に対応したインクジェットヘッドユニットの提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明の各実施の形態について説明する。なお、以下に示す各実施の形態においては、本発明の適用事例としてインクジェットヘッドユニットに本発明の流路構成部材および流路構成ユニットを適用した場合について説明しているが、本発明の適用対象をインクジェットヘッドユニットに限定するものではなく、広く同様の構成を有する装置に対して、本発明の流路構成部材および流路構成ユニットを適用することが可能である。
【0031】
たとえば、インク供給装置の供給チューブ連結部、液体分離装置のチューブ連結部、その他のチューブ連結部を備える装置に対して、本発明の流路構成部材および流路構成ユニットを提供することが可能である。
【0032】
また、以下に説明する実施の形態において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。また、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。
【0033】
<実施の形態1>
以下、図1から図3を参照して、本発明に基づいた実施の形態におけるインクジェットヘッドユニットについて説明する。なお、図1は、本実施の形態における流路構成部材となるフィルタユニット3が適用されるインクジェットヘッドユニット1の構成を示す斜視図であり、図2は、このインクジェットヘッドユニット1の構成を示す、カバー部材18が取り外された状態を示す部分分解斜視図であり、図3は、実施の形態におけるインクジェットヘッドユニット1に採用されるベースユニット2の構成を示す図である。
【0034】
(インクジェットヘッドユニット1)
図1および図2を参照して、インクジェットヘッドユニット1は、カバー部材18、ベースユニット2、およびフィルタユニット3を備える。カバー部材18は、互いに結合されたベースユニット2およびフィルタユニット3のインク吐出側の面を覆うように配置されており、ヘッドチップ11との隙間は接着剤により封止されている。
【0035】
(ベースユニット2)
図3を参照して、ベースユニット2の構成を説明する。ベースユニット2の基本的構成は左右対称である。ベースユニット2は、ヘッドベース13、チップマウント12、ヘッドチップ11、フレキシブル基板26、ドライバ基板4、および、マニホールド14A,14Bを備える。
【0036】
ヘッドベース13は、金属性素材によって構成されている。本実施の形態では、ヘッドベース13の素材としてSUS(線膨張係数約11×10−6m/K)を用いている。ヘッドベース13は、その表面に凸状の台座部(図示省略)が形成されているおり、その断面は逆T字型を呈している。
【0037】
この台座部には接着剤を介してチップマウント12が接着されている。チップマウント12は、アルミナ(線膨張係数約4×10−6m/K)によって構成されている。チップマウント12には接着剤を介してヘッドチップ11が接着されている。本実施の形態では、接着剤としてエポキシ系接着剤が用いられる。
【0038】
ただし、接着剤の種類は、本実施の形態のものに限定されるものではない。またヘッドベース13には、ドライバ基板4が取り付けられ、フレキシブル基板26を介して、ヘッドチップ11に接続されている。
【0039】
(マニホールド14A,14B)
次に、マニホールド14A,14Bについて説明する。マニホールド14A,14Bは、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)によって構成されている。マニホールド14A,14Bは、互いに対称な形状を呈している。マニホールド14A,14Bの内部には共通液室に連続すべき液体流路16A,16Bが形成されている。
【0040】
マニホールド14A,14Bをベースユニット2に取り付ける際には、ベースユニット2に設けられた複数の位置決めピンが、マニホールド14A,14Bに設けられた複数の位置決め用穴にそれぞれ嵌め込まれる。
【0041】
さらに、ベースユニット2に設けられた複数の貫通孔を介して、マニホールド14A,14Bに設けられた複数の雌ネジ部にネジを嵌め込むことにより、マニホールド14A,14Bがベースユニット2に固定される。これにより、マニホールド14A,14Bに形成された液体流路16A,16Bは、ヘッドチップ11に形成された液体導入口、液体排出口(図示しない)と接続され連通する。
【0042】
(フィルタユニット3)
次に、図4から図8を用いて、フィルタユニット3の構成について説明する。なお、図4は、フィルタユニット3の構成を示す斜視図であり、図5は、フィルタユニット3の構成を示す分解図である。また、図6は、フィルタユニット3を配管接続用パイプ側から見た場合の斜視図であり、図7は、フィルタユニット3を配管接続用パイプ側から見た場合の図であり、図8は、チューブ100を接続した状態での図7中VIII−VIII線矢視断面図である。
【0043】
図4および図5を参照して、流路構成部材を構成するフィルタユニット3は、一方に開放した有底角筒状のハウジング161,162を備えている。なお、ハウジング161に形成される有底角筒状の凹み300は、図5に示すような形状である。ハウジング161,162は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)で構成される。
【0044】
ハウジング161,162は、それぞれ開放面を重ねあわせるように接合される。また、ハウジング161,162に挟み込まれるようにフィルタプレート164が配置される。ハウジング161側には、環状のパッキンを保持する環状の溝(図示省略)が形成される。
【0045】
環状の溝には、略L字状の断面を有する環状のパッキン165Aが配置される。本実施の形態ではパッキン165Aの素材として、パーフロムゴムを用いている。ハウジング部材162には、フィルタプレート164の端部を支持するための環状のフィルタ支持部が形成されている。
【0046】
ハウジング162の液室内には、マニホールド14Aにおける第1の開口57A(図3参照)に連通されるべき流路が形成される。さらに、ハウジング162には、マニホールド14Bの第1の開口56Aに連通されるべき図示しないベント流路が形成されている。なお、このベント流路は、ハウジング161に形成されたベント流路を介して、液体収容部に接続される。
【0047】
図6から図8を参照して、フィルタユニット3には、液体供給用パイプ200、上部ベント用パイプ201、下部ベント用パイプ202、および、液体収容用パイプ203の4本の配管接続用パイプが設けられている。本実施の形態では、流路構成部材本体であるハウジング161、162をポリエーテルエーテルケトン(PEEK)にて形成し、4本の配管接続用パイプをSUS303にて形成している。
【0048】
4本の配管接続用パイプは流路構成部材に圧入されて内部流路と連通する構成となっている。圧入後における配管接続用パイプは、後述の凹み領域130の側面からの突出長さ(h1)は約4mm程度である。突出した配管接続用パイプの外形寸法(外径)は約2mm程度の筒状形状である。
【0049】
本実施の形態では、配管接続用パイプを別途形成して圧入する構成を採用しているが、本体を構成する材料、たとえばPEEKやポリプロピレン(PP)などを用いて、一体形成する構成でも構わない。各配管接続用パイプの外周に位置するハウジング161、162の垂直壁163には、U字形状をした凹み領域130が3箇所設けられている。
【0050】
垂直壁163において、この凹み領域130の上部には、凹み領域130内に接着剤材料を導入するための上部開口部130aが設けられ接着剤注入口の役割を果たしている。凹み領域130の下部は、U字形状の接着剤保持部としての底部130bを有している。この底部130bでは、導入された接着剤材料を停滞させ、接着剤材料の液溜りを形成する機能を有している。
【0051】
U字形状の凹み領域130は、幅(W)約5mm、凹み深さ(d1)約1.5mmにて形成されている。配管接続用パイプの外形(外径)が約2mmに対し、接続されるチューブ100の外形(外径)寸法が約4mmであるため、本実施の形態では、凹み領域130の側面とチューブ100との間には、約0.5mm隙間(S)ができるように構成している。
【0052】
一方、本実施の形態では、配管接続用パイプにおいて、略中央に配置される上部ベント用パイプ201と下部ベント用パイプ202とは、上下直線状(重力方向沿って配置)に形成されている。そこで、上部ベント用パイプ201の下部には、接着剤材料を停滞させるため接着剤保持部としての凹状ひさし部210が形成されている。この凹状ひさし部210は、凹み領域130のU字形状の底部130bと同様の機能を有している。
【0053】
また、凹み領域130の上部開口部130aから導入された接着剤材料を、下部ベント用パイプ202へ流れ込むようにするため、凹状ひさし部210と凹み領域130の側壁130wとの間には隙間230が形成されている。なお、この隙間230は約0.5mm程度である。
【0054】
(チューブ100の配管接続用パイプへの嵌合および固定方法)
図8に示すように、フィルタユニット3の上部ベント用パイプ201および下部ベント用パイプ202のそれぞれに、チューブ100が接続された状態を示す。なお、以下に示すチューブ100の配管接続用パイプへの嵌合方法は、液体供給用パイプ200および液体収容用パイプ203も同様である。
【0055】
本実施の形態において、チューブ100の上部ベント用パイプ201および下部ベント用パイプ202への嵌合に際しては、チューブ100の嵌合の前に接着剤材料の塗布は行なわずに、チューブ100を上部ベント用パイプ201および下部ベント用パイプ202に接続する。
【0056】
その後、凹み領域130の上部開口部130aから接着剤材料400を導入する。上部開口部130aから導入された接着剤材料400は、先ず、上部ベント用パイプ201のチューブ100との連結部上部から下部に向けて流動する。
【0057】
下部に向けて流動した接着剤材料400は、凹状ひさし部210に滞留するものと、隙間230より下部ベント用パイプ202のチューブ100との連結部に流れ込むものとに分かれる。凹状ひさし部210から溢れでた接着剤材料400は、隙間230より下部ベント用パイプ202のチューブ100との連結部に流れ込む。下部ベント用パイプ202のチューブ100との連結部に流れ込んだ接着剤材料400は、凹み領域130の底部130bに停滞する。
【0058】
凹み領域130に導入された接着剤材料400は、上部ベント用パイプ201および下部ベント用パイプ202ともに、チューブ100との連結部近傍で停滞するため、停滞した接着剤材料400は、毛細管現象により連結部である各パイプの外周とチューブ100の内周の隙間へ浸透し、各パイプの外周とチューブ100との連結部の内側を接着する。
【0059】
なお、各パイプの外周とチューブ100の内周の隙間、および、チューブ100の先端とハウジング161、162との隙間としては、数十μm程度の隙間が存在すれば、毛細管現象により接着剤材料400を当該隙間に浸透させることができる。
【0060】
また、接着剤材料400は、停滞した位置で硬化し、フィルタユニット3本体と、チューブ100の外周を接着するための硬化剤となり、より強固な接着状態を実現させる。本実施の形態では接着剤材料400として、エポキシ系接着剤を使用しており、材料特性として、粘度400cpおよび4000cpの2種類を用い、硬化特性は常温放置で約2時間〜3時間程度にて流動性がなくなり、約12時間程度で硬化する材料特性のものを用いている。
【0061】
接着剤材料400の導入方法としては、ディスペンサーにて適量を上部開口部130aより凹み領域130に滴下し、凹み領域130の底部130bへ導入する。ただし、接着剤の種類は、本実施の形態のものに限定されるものではない。
【0062】
また、液体供給用パイプ200および液体収容用パイプ203へのチューブ100の嵌合においても、上記と同様にディスペンサーにて適量の接着剤材料400が導入されることにより、液体供給用パイプ200および液体収容用パイプ203の外周とチューブ100との連結部の内側が接着されるとともに、フィルタユニット3本体と、チューブ100の外周が接着剤材料により接着固定されている。これにより、4本の配管接続用パイプのそれぞれにチューブ100が接着剤材料400を用いて固定されることで、流路構成ユニットが完成される。
【0063】
また、上記実施の形態においては、接着剤材料400の流動性を促す観点から、ハウジング161、162に垂直壁163を設け、この垂直壁163から水平方向に延びるように配管接続用パイプを配設する構成を採用しているが必ずしもこの構成に限定する必要はない。接着剤材料400の流動性に応じて、垂直壁163を水平方向に対して垂直とはせずに、所定の傾斜角度を設ける構成の採用も可能である。また、配管接続用パイプの接続角度においても、接着剤材料400の流動性に応じて適宜選択することができる。
【0064】
以上本実施の形態におけるインクジェットヘッドユニット1によれば、液体供給用パイプ200、上部ベント用パイプ201、下部ベント用パイプ202、および、液体収容用パイプ203の4本の配管接続用パイプの重力方向の下方位置に接着剤材料400を滞留させる接着剤保持部としてのU字形状の底部130bおよび凹状ひさし部210を設けることで、配管接続用パイプとチューブ100との接続を補強するために接着剤材料400を塗布した場合に、接着剤材料400が底部130bおよび凹状ひさし部210に停滞することから、配管接続用パイプとチューブ100との連結領域に接着剤材料400がそのまま留まることができるため、配管接続用パイプとチューブ100との連結領域において、確実に接着剤を硬化させて、連結領域の確実な結合を図ることができる。
【0065】
また、底部130bおよび凹状ひさし部210の形状として、配管接続用パイプの外周面に沿った湾曲形状を採用することにより、配管接続用パイプに連結されるチューブ100との間隙が均一となり、導入される接着剤材料400が、連結領域外周に均一に効率よく停滞させることができる。
【0066】
また、ハウジング161、162の垂直壁163に、底部130bおよび凹状ひさし部210に連通し、接着剤を導入するための上部開口部130aを設けることで、連結領域近くへの接着剤材料400の塗布が困難な形状であっても、上部開口部130aから導入された接着剤材料400を確実に連結領域へ流し込むことができ、連結領域の確実な接着が可能となる。
【0067】
また、その上端部が上部開口部130aを構成し、下端部がU字形状の底部130bを構成する凹み領域130を採用することで、構造の簡略化と小型化への対応が可能となる。
【0068】
また、略中央に配置される上部ベント用パイプ201と下部ベント用パイプ202と重力方向に沿って配設させることで、複数の開口部を必要とせず、一つの上部開口部130aから効率良く接着剤材料400の導入が可能となる。
【0069】
このように、上記構成からなる流路構成部材をインクジェットヘッドユニットに適用することで、配管接続用パイプからのチューブ100の脱落や、連結部でのインクのリークの発生が無く、信頼性に富み、小型化に対応したインクジェットヘッドユニットの提供が可能となる。
【0070】
<実施の形態2>
次に、この発明に基づいた実施の形態2におけるインクジェットヘッドユニットの構造について、図9を参照して説明する。なお、図9は、チューブ100を接続した状態での図7中VIII−VIII線矢視に対する断面図である。本実施の形態において、基本的構造は、上記実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットの構造と同じであり、相違点は、配管接続用パイプの形状が異なる点にある。
【0071】
図9に示すように、本実施の形態においては、液体供給用パイプ、上部ベント用パイプ、下部ベント用パイプ、および、液体収容用パイプとしての配管接続用パイプ220は、ハウジング161、162の垂直壁163から吐出する側の先端部の全周に、半径方向の外方に膨出するかえり221が設けられ、このかえり221から配管部222が伸びている。
【0072】
このような形状を有する配管接続用パイプ220を採用することで、配管部222の外周面とチューブ100の内周面と間に間隙が形成され、積極的に接着剤材料400をこの間隙に導入させることができる。なお、この隙間Sとしては、0.1mm〜0.2mm程度の寸法に設定される。
【0073】
また、かえり221を設けることで、チューブ100の配管接続用パイプ220からの引き抜きが防止できるとともに、かえり221が堰となり接着剤材料400のチューブ100内への侵入および配管接続用パイプを通じての流路への侵入を防止することが可能となる。
【0074】
<実施の形態3>
次に、この発明に基づいた実施の形態3におけるインクジェットヘッドユニットの構造について、図10および図11を参照して説明する。また、本実施の形態においては、上記実施の形態2で説明した配管接続用パイプ220を採用した場合を示しているが、上記実施の形態1で説明した配管接続用パイプの形態を採用することも可能である。なお、図10は、フィルタユニット3を配管接続用パイプ側から見た場合の斜視図であり、図11は、チューブ100を接続した状態での図7中VIII−VIII線矢視に対応する断面図である。
【0075】
本実施の形態において、基本的構造は、上記実施の形態1および2におけるインクジェットヘッドユニットの構造と同じであり、相違点は、ハウジング161、162の垂直壁163に設けられる、U字形状をした凹み領域の形態にある。なお、中央部に設けられる凹み領域の形態のみがことなり、両側に設けられる凹み領域130の形態は、上記実施の形態1および2における凹み領域130と同じ形態である。
【0076】
中央部に設けられる凹み領域は、下部ベント用パイプ202が設けられる下段凹み領域130D、および上部ベント用パイプ201が設けられ、下段凹み領域130Dよりもハウジング161側に約1.5mm程度後退する上段凹み領域130Uを有している。
【0077】
下段凹み領域130Dおよび上段凹み領域130Uの形態は、凹み領域130の形態と同じである。これにより、下段凹み領域130Dおよび上段凹み領域130Uの上方には、それぞれ上部開口部130aが設けられ、下方にはそれぞれ接着剤保持部としての底部130bが設けられることになる。
【0078】
この構成を採用することによっても、上記実施の形態1の場合と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施の形態1における流路構成部材となるフィルタユニットが適用されるインクジェットヘッドユニットの構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットの構成を示す、カバー部材が取り外された状態を示す部分分解斜視図である。
【図3】実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットに採用されるベースユニットの構成を示す図である。
【図4】実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットに採用されるフィルタユニットの構成を示す斜視図である。
【図5】実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットに採用されるフィルタユニットの構成を示す分解図である。
【図6】実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットに採用されるフィルタユニットを配管接続用パイプ側から見た場合の斜視図である。
【図7】実施の形態1におけるインクジェットヘッドユニットに採用されるフィルタユニットを配管接続用パイプ側から見た場合の図である。
【図8】チューブを接続した状態での図7中VIII−VIII線矢視断面図である。
【図9】実施の形態2におけるチューブを接続した状態での図7中VIII−VIII線矢視に対応する断面図である。
【図10】実施の形態3におけるインクジェットヘッドユニットに採用されるフィルタユニットを配管接続用パイプ側から見た場合の斜視図である。
【図11】チューブを接続した状態での図7中VIII−VIII線矢視に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 インクジェットヘッドユニット、2 ベースユニット、3 フィルタユニット、4 ドライバ基板、11 ヘッドチップ、12 チップマウント、13 ヘッドベース、14A,14B マニホールド、16A,16B 液体流路、18 カバー部材、26 フレキシブル基板、56A,57A 第1の開口、100 チューブ、130 凹み領域、130a 上部開口部、130b 底部、130w 側壁、130D 下段凹み領域、130U 上段凹み領域、161,162 ハウジング、163 垂直壁、164 フィルタプレート、165A パッキン、200 液体供給用パイプ、201 上部ベント用パイプ、202 下部ベント用パイプ、203 液体収容用パイプ、210 凹状ひさし部、220 配管接続用パイプ、221 かえり、222 配管部、230 隙間、300 凹み、400 接着剤材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に設けられた配管部材が連結され、液体を通過させるための流路が本体部材の内部に形成された流路構成部材であって、
前記流路と連通し、前記本体部材の垂直壁から略水平方向に突出するように配設される配管接続用パイプと、
前記配管接続用パイプの少なくとも重力方向の下方位置に設けられ、前記配管接続用パイプに前記配管部材を固定する際に用いられる接着剤を滞留させる接着剤保持部と、を備える流路構成部材。
【請求項2】
前記接着剤保持部は、前記配管接続用パイプに連結される前記配管部材との間隙が均一となるように、前記配管接続用パイプの外周面に沿った湾曲形状を有する、請求項1に記載の流路構成部材。
【請求項3】
前記垂直壁は、前記接着剤保持部に連通し、接着剤を導入するための上部開口部を有する、請求項1または2に記載の流路構成部材。
【請求項4】
前記垂直壁は、前記配管接続用パイプを含むように凹み領域を有し、
前記凹み領域の上端部が、前記上部開口部を構成し、
前記凹み領域の下端部が、U字形状の前記接着剤保持部を構成する、請求項3に記載の流路構成部材。
【請求項5】
前記配管接続用パイプは、重力方向に沿って2以上配設されている、請求項1から4のいずれかに記載の流路構成部材。
【請求項6】
重量方向に沿って2以上配設された前記配管接続用パイプの間に、前記接着剤保持部が設けられる、請求項1から5のいずれかに記載の流路構成部材。
【請求項7】
前記垂直壁は、それぞれ前記配管接続用パイプが設けられる下段凹み領域および前記下段凹み領域よりも本体側に後退する上段凹み領域を有し、
前記下段凹み領域および前記上段凹み領域の下方にはそれぞれ前記接着剤保持部が設けられる、請求項5に記載の流路構成部材。
【請求項8】
前記配管接続用パイプは、前記本体部材の垂直壁から略水平方向に突出する先端側に、半径方向の外方に膨出するかえりがその全周に設けられる、請求項1から7のいずれかに記載の流路構成部材。
【請求項9】
インクを吐出するインクヘッドと、
前記インクヘッドにインクを供給し、請求項1〜7に記載の流路構成部材を有するインクフィルタユニットと、
前記インクフィルタユニットにおける前記インクヘッドへのインク吐出信号を与えるための回路基板を有するベースユニットと、を備えるインクジェットヘッドユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−279873(P2009−279873A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135693(P2008−135693)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】