説明

流路構造およびこれを備えた電子機器

【課題】流路抵抗を大きく増加させることなく、流速差を有して流入した流体の流速を均一化する。
【解決手段】流路構造は、流体を流入口2から流出口3に導く流路1と、流路内のうち流入口と流出口との間における一部の領域に設けられ、流路に流入した流体がその流れ方向に交差する方向において有する流速の差を低減するための流速制御構造5とを有する。流速制御構造は、流れ方向に交差する方向において流体を通過させる空間5bと交互に設けられた複数の流速制御部材5aを含む。複数の流速制御部材の大きさが、流れ方向に交差する方向における流体の流速がより速い領域に設けられた流速制御部材ほど大きくなるように互いに異ならせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器において気体や液体等の流体をガイドする流路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の筐体内にて気体や液体等の流体をガイドするダクトや導管等の流路は、筐体内部の各種部品を避けて配置される必要があることから、曲げられたり断面積が変化したりする部分を含む場合が多い。そして、そのような部分の存在により、流路内を流れる流体には、該流体の流れ方向に直交する方向(又は直交する面内)において速度の差が生じる。言い換えれば、流速に分布が生じる。
【0003】
例えば、内部を空気が流れるダクトにおいて、ダクトの下流側にファンが設置されている場合、ファンに流れ込む空気の流速に分布があるとファンの性能が著しく低下する。また、流速分布がある流体が流路の曲がった部分に流れ込むと、流れの剥離が発生し、流路の利用効率が低下する。このため、高い流路利用効率を得るためには、均一な流速で流体を流すことができる流路構造が求められる。
【0004】
このような流路構造は、例えば、複数の発熱素子を内部に備え、該発熱素子を冷却するためにファンの駆動による空気の対流を用いつつ、小型化や低騒音化が求められる液晶プロジェクタ等の画像投射装置において採用することが好ましい。
【0005】
特許文献1には、曲がり部を有するダクトにおける流入口に多孔板とハニカム板を設け、これらによって流入した空気を整流した後、曲がり部に設けられた複数の分配板によって曲がり部よりも下流の流出口に導く流路構造が開示されている。該流路構造では、さらに流出口に設けられた多孔板とハニカム板を経て整流された空気が流出する。
【0006】
また、特許文献2には、流速分布を有する空気が流入するダクトの内部にフィルタを設け、流速が速い領域ではフィルタの通気抵抗を高く設定し、流速が遅い領域ではフィルタの通気抵抗を低く設定することで、流速の差を低減させる流路構造が開示されている。この流路構造では、フィルタをプリーツ形状に形成し、該プリーツのピッチを変化させることによって通気抵抗を増減させている。
【0007】
さらに、特許文献3には、ダクトの曲がり部に、互いに相似形状を有するように形成された複数の案内羽根を設けることで、均一な流速で曲がり部に流れ込んだ流体が曲がり部の下流側でも均一な流速を維持できる流路構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−349944号公報
【特許文献2】特開2005−098657号公報
【特許文献3】特許第2706222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1にて開示された流路構造では、曲がり部の前後(つまり流入口と流出口)に多孔板やハニカム板という流路抵抗を大きく増加させる部材を設けている。このため、ファンの駆動によって規定量の空気をダクトを通して流す場合にファンの出力を増加させる必要がある。これにより、騒音が上昇するおそれがある。
【0010】
また、特許文献2にて開示された流路構造では、流路の内部における流れ方向に直交する断面の全体をフィルタで覆っているため、特許文献1の流路構造と同様に流路抵抗が大幅に増加し、ファンの出力や騒音の増加につながる。
【0011】
さらに、特許文献3にて開示された流路構造では、曲がり部に流入する流体の流速が均一でなければ、すなわち流入する流体の流速に差(分布)があると、流出する流体の流速を均一化することができない。
【0012】
本発明は、流路抵抗を大きく増加させることなく、流れ方向に交差する方向にて流速差を有して流入した流体の流速を均一化することができるようにした流路構造およびこれを備えた電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面としての流路構造は、流体を流入口から流出口に導く流路と、流路内のうち流入口と流出口との間における一部の領域に設けられ、流路に流入した流体がその流れ方向に交差する方向において有する流速の差を低減するための流速制御構造とを有する。該流速制御構造は、流れ方向に交差する方向において流体を通過させる空間と交互に設けられた複数の流速制御部材を含む。そして、複数の流速制御部材の大きさが、流れ方向に交差する方向における流体の流速がより速い領域に設けられた流速制御部材ほど大きくなるように互いに異なっていることを特徴とする。
【0014】
なお、上記流路構造を有する電子機器も、本発明の他の一側面を構成する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、流入口と流出口との間の一部の領域に、流れ方向に交差する方向において流体を通過させる空間と交互に複数の流速制御部材を設けている。このため、流入出口に多孔板やハニカム板を設けたり流路内にその断面全体を覆うフィルタを配置したりする場合に比べて流路抵抗を増加させずに、流体における流れ方向に交差する方向での流速を均一化することができる。そして、流体の流速を均一化することで、ファンを使用する場合においては該ファンに求められる出力やファンからの騒音を低減することができる。また、流路の曲がり部等にて発生する流れの剥離を抑制して、流路利用効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1であるダクトユニットの空気流れ方向に沿った断面図。
【図2】実施例1のダクトユニットの空気流れ方向に沿った断面での流速分布図。
【図3】実施例1のダクトユニットのA0−A1線に沿った断面での流速分布図。
【図4】実施例1のダクトユニットのB0−B1線、C0−C1線およびD0−D1線に沿った断面における流速を示す図。
【図5】実施例1のダクトユニットにおける流量と圧力の相関を示す図。
【図6】実施例1のダクトユニットと実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットの流量と圧力の相関を比較した図。
【図7】実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットの上面図。
【図8】実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットの空気流れ方向に沿った断面での流速分布図。
【図9】実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットのa0−a1線に沿った断面での流速分布図。
【図10】実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットのb0−b1線、c0−c1線およびd0−d1線に沿った断面における流速を示す図。
【図11】実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットのc0−c1線に沿った断面における流速の変化とこれを近似する曲線関数と該曲線関数の反転曲線とを示す図。
【図12】実施例1に示した流速制御構造を持たないダクトユニットにおける流量と圧力の相関を示す図。
【図13】本発明の実施例2であるダクトユニットの空気流れ方向に沿った断面図。
【図14】本発明の実施例3である画像投射装置の上面図。
【図15】実施例3の画像投射装置の冷却構成を示す上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0018】
図1には、本発明の実施例1である流路構造としてのダクトユニットの断面を示している。1はダクトユニットにおける流路を形成するダクトである。2はダクト1の流入口である。3はダクト1の流出口である。6はダクト1における流入口2と流出口3との間に設けられた90°曲がった部分(以下、曲がり部という)である。
【0019】
ダクト1(ダクトユニット)は、流入口2から流入した流体である空気(図中に実線矢印で示す)を、その流れ方向(図中に一点鎖線矢印で示す:以下、空気流れ方向という)を曲がり部6にて90°曲げながら流出口3に導く。
【0020】
4はダクト1内(流路内)における曲がり部6と流出口3との間に設けられたファンである。本実施例では、ファン4として軸流ファンを用いている。
【0021】
5は屈がり部6内、つまりはダクト1内のうち流入口2と流出口3との間における空気流れ方向での一部の領域に設けられた流速制御構造である。流速制御構造は、空気流れ方向に交差する方向において空気を通過させる空間5bと交互に設けられた複数の流速制御部材5aを含む。ここで、空気流れ方向に交差する方向には、流れ方向に90°で交わる、つまりは直交する方向だけでなく、90°以外の角度で交わる方向も含む。以下の説明において、空気流れ方向に交差する方向を、流れ交差方向という。
【0022】
なお、本実施例では、曲がり部6内に流速制御構造5を配置しているが、ファン4に流れ込む空気の流速差を低減すればよいため、流速制御構造5は、流入口2とファン4との間のいずれかの位置に配置されていればよい。言い換えれば、ファン4は、流速制御構造5と流出口3との間のいずれの位置に配置することが望ましい。
【0023】
流速制御構造5は、流入口2に流入した空気がその流れ交差方向において有する流速の差を低減するための構造を有する。具体的には、複数の流速制御部材5aの大きさが、空気の流れ交差方向における空気の流速がより速い領域に設けられた流速制御部材5aほど大きくなるように互いに異なっている。各流速制御部材5aの大きさの決定方法については、後に詳述する。
【0024】
このようなダクトユニットにおいて、ファン4が不図示の電源からの電力供給に応じて回転すると、流入口2からダクト1内に空気が流れ込む。ダクト1内に流れ込んだ空気は、流速制御構造5に向かって流れる。上述したように、流入口2に流入した空気は、その流れ交差方向において流速の差(流速分布)を有する。
【0025】
流速制御構造5に到達した空気は、該流速制御構造5によって流速が均一化され(すなわち、流速差が低減され)て、ファン4に向かって流れる。ファン4を通過した空気は、流出口3からダクト1の外部に流出し、発熱部材の冷却等に使用される。
【0026】
次に、流速制御構造5について、より詳細に説明する。まず、図1に示した流速制御構造5が設けられていない比較例のダクトユニットにおける空気の流れについて、図7から図10を用いて説明する。
【0027】
図7において、7はダクト1のうち流速制御構造5が設けられていない曲がり部である。この比較例のダクトユニットにおける他の構成要素は、図1に示したダクトユニットと同じであり、当該他の構成要素には図1と同符号を付す。
【0028】
また、図8には、本比較例のダクトユニットを空気流れ方向に沿って切断した断面でのファン4の中心軸付近における空気の流速分布を示している。また、図9には、ファン4に流れ込む直前の空気の流速分布であって、図7に示したa0−a1線に沿った断面での流速分布を示している。さらに、図10は、図9に示したb0−b1線、c0−c1線およびd0−d1線に沿った断面における流速分布を示している。図10において、横軸は流れ交差方向における位置(断面距離L)であり、縦軸は流速(m/s)である。このことは、図11でも同じである。
【0029】
本比較例における境界条件は、流入口2での圧力を0[Pa]とし、ファン4の回転により流出口3に流れる空気の流量を1.5[m/min]とする。
【0030】
図8、図9および図10に示すように、ダクト1には90°の曲がり部7が設けられており、該曲がり部7内を空気が流れる際には、遠心力の作用によって、曲がり部7のうち外側の領域を通った空気の流速が、内側の領域を通った空気の流速よりも低く(遅く)なる。したがって、ファン4に流れ込む空気についても、曲がり部7の外側の領域を通った空気と内側を通った空気との間に大きな流速差が生ずる。
【0031】
この流速差により、曲がり部7の内側の領域では空気の流れに剥離が発生し、ダクト1の利用効率(流路利用効率)が低くなる。しかも、羽根の回転によって空気を吸い込んで押し出すファン4では、流速が高い空気が羽根に当たることによって、流速が低い空気が当たる場合と比べて大きな騒音が発生する。したがって、ファン4に流れ込む空気に存在する流速差が大きいほどファン4からの騒音も大きくなる。このため、このような空気の流速差を低減するために、本実施例では、ファン4よりも上流側に流速制御構造5を設けている。
【0032】
次に、本実施例における流速制御構造5の決定方法について、図11を用いて説明する。図11中の曲線Eは、図7のように流速制御構造5を設けない場合における図10に示したc0−c1線に沿った断面での流速分布(各位置での流速を結んだ曲線)を示している。なお、曲線Eとしてb0−b1線やc0−c1線に沿った断面での流速分布を用いてもよい。
【0033】
流速制御構造5の決定には、まず曲線Eに対する回帰分析によって、該曲線Eの近似関数(近似曲線)Y=f(X)を求める。ここで、Yは流速であり、Xはダクト1内でのc0−c1線に沿った(流れ交差方向での)位置である。
【0034】
本実施例において、近似関数Y=f(X)は、
Y=a1×Ln(X)+a2
により示される対数関数とする。図11において、曲線Fが近似関数Y=a1×Ln(X)+a2を示す。
【0035】
次に、近似関数Y=f(X)から、関数Y=f(−X)を作成する。本実施例におけるY=f(−X)は、
Y=a1×(−Ln(X))−a2
であり、図11中の曲線Gに相当する。
次に、Y=f(X)とY=f(−X)のY軸方向での座標を揃えるため、
Y=f(−X)+|Ymax−Ymin|
を計算する。YmaxおよびYminはそれぞれ、c0−c1線に沿った位置での流速Yの最大値および最小値である。そして、|Ymax−Ymin|は、流速の均一化の目標流速に相当する。
【0036】
図10において、曲線HがY=f(−X)+|Ymax−Ymin|を計算して得られる曲線である。そして、この曲線Hは、曲線F(近似関数Y=f(X))をXY座標上で反転して得られる曲線(反転関数)である。
【0037】
本実施例では、流速制御構造5に含まれる複数の流速制御部材5aのそれぞれの大きさを、流れ交差方向において流速の差がない流体に対して曲線H(反転関数)に従う流速の差を与えるように設定する。このような大きき設定がなされた複数の流速制御部材5aを空気が通過する空間と交互に配置して流速制御構造5を構成することにより、曲線Fによって示される空気の流速差が相殺されるかたちで低減され、流れ交差方向において空気の流速が均一化される。
【0038】
次に、複数の流速制御部材5aの大きさを、曲線H(反転関数)を用いて設定する方法について説明する。本実施例では、各流速制御部材5aは円柱形状を有するものとし、この場合の流速制御部材5aの大きさとは、円柱形状の直径または空気流れ方向から見たときの面積を意味する。円柱形状の直径は、空気流れ方向から見たときの流れ交差方向での幅と言い換えることもできる。また、複数の流速制御部材5aの数をnとし、円柱形状の直径をΦとして、曲がり部6の最も内側から数えてn番目の流速制御部材5aの直径ΦをΦnとする。
【0039】
なお、前述したように、流速制御構造5は、流入口2とファン4との間のいずれの位置に配置してもよいが、本実施例では曲がり部6内に配置する。
【0040】
まず、ダクト1の内部の流れ交差方向での幅内に、n個の流速制御部材5aである円柱の中心が均等間隔で位置するように該n個の円柱の位置を決定する。本実施例では、6個の流速制御部材5aを配置する。
【0041】
次に、各円柱の大きさ(直径)を決定するために、曲線H(反転関数)を用いる。XY座標において、横軸Xをダクト1内における流れ交差方向での位置とし、n番目の流速制御部材5aである円柱を配置する位置をXnとする。また、n番目の流速制御部材5aの円柱の直径をΦTnとする。さらに、位置Xnにおける流速YをYnとし、直径ΦTnが最大となる流速YをYn maxとして、各円柱の大きさを決定するための係数を(Yn/Yn max)とする。また、最大の直径ΦTnをΦTn maxとする。
【0042】
これらの値を用いて、n番目の流速制御部材5aの円柱の直径ΦTnを、
ΦTn=ΦTn max×(Yn/Yn max)
により計算する。
【0043】
このように本実施例では、複数の流速制御部材5aの円柱の直径を、流れ交差方向において流速の差がない流体に曲線H(反転関数)に従った流速の差を与えるように互いに異ならせて設定する。これにより、元々、曲線F(近似関数)により近似される流速差を有していた空気が流速制御構造5に流れ込むことで、該流速差が低減され、流れ交差方向においてほぼ均一な流速を有する空気をファン4に供給することができる。特に、複数の流速制御部材5aの大きさを設定するために、流速の近似関数やその反転関数を用いることで、より効果的に流速の均一化を行うことができる。
【0044】
次に、流速制御構造5を配置したことによる効果について、図2から図6を用いて説明する。図2には、本実施例のダクトユニットの空気流れ方向に沿った断面でのファン4の中心軸付近における空気の流速分布を示している。また、図3には、本実施例のダクトユニットにおけるファン4に流れ込む直前の空気の流速分布であって、図1に示したA0−A1線に沿った断面での流速分布を示している。さらに、図4は、本実施例のダクトユニットにおける図3に示したB0−B1線、C0−C1線およびD0−D1線に沿った断面での流速分布を示している。図4において、横軸は流れ交差方向における位置(断面距離L)であり、縦軸は流速(m/s)である。
【0045】
図2から図4に示すように、図8から図10に示した流速制御構造を持たない比較例のダクトユニットと比べて、ファン4に流入する空気の流れ交差方向での流速差が低減している(流速が均一化されている)。
【0046】
流速制御構造5(流速制御部材5a)は流路抵抗となるが、先に説明したように、図7に示すように流速制御構造5が設けられていないダクトユニットでは、曲がり部7の内側において空気の流れに剥離が発生し、ダクト1の利用効率が低くなる。このため、図1に示した本実施例では、流速制御構造5を設けて曲がり部6の内側における流れの剥離を抑制し、ダクト1の利用効率を高める。これにより、流路抵抗となる流速制御構造5が配置されたとしても、ダクト1の全体での流路抵抗を、流速制御構造5がない場合と同等とすることができる。
【0047】
図5には、本実施例のダクトユニットにおける流量と圧力との相関を示している。一方、図12には、流速制御構造5を持たない比較例のダクトユニットにおける流量と圧力との相関を示している。図6には、これらの相関を比較して示している。図5、図6および図12において、横軸は流量(m/min)であり、縦軸は圧力(Pa)である。図6に示すように、流速制御構造5を持つ本実施例でも流速制御構造5を持たない比較例でも、流路抵抗は同等である。
【0048】
本実施例によれば、流速制御構造5を流入口2と流出口3との間における流速制御が必要な部分(一部)にのみ設けるため、ダクトユニットの構造を複雑にすることなく、流速分布を持って流入した空気に対して、流速の均一化を行うことができる。そして、流速を均一化することで、流路内での空気の流れの剥離を低減することができ、流路の変化によって生じる流路の利用効率の低下を抑制できる。また、ファン4に求められる出力やファン4から発生する騒音を低減することができる。
【0049】
なお、本実施例では、流速制御部材5aを円柱形状とし、その大きさである円柱の直径を上述した反転関数を用いて設定する場合について説明した。しかし、流速制御部材5aに三角柱形状、四角柱形状や板形状等の円柱形状以外の形状を与え、その大きさである空気流れ方向から見たときの幅や面積を、流れ交差方向にて流速差がない空気に反転関数に従う流速差を与えるように設定してもよい。
【0050】
また、本実施例では、空気の流れを制御するダクトユニットについて説明したが、他の実施例として、流体である液体(水や油等)の流れを、本実施例のダクトユニットと同様の構成を有する流路構造(導管)により制御してもよい。
【実施例2】
【0051】
図13には、本発明の実施例2であるダクトユニットの空気流れ方向に沿った断面を示している。この図において、実施例1のダクトユニットと共通する構成要素には、実施例1と同符号を付して説明に代える。8はダクト1内を流れる空気に含まれる塵埃を捕集する集塵フィルタであり、流速制御構造5とファン4(流出口3)との間に配置されている。
【0052】
集塵フィルタ8は、一般的に該集塵フィルタ8を通過する空気の流速によって捕集できる塵埃の大きさや捕集率が変化する。このため、ダクト1内に流入する空気の流量が一定である場合に、集塵フィルタ8の塵埃捕集面の面内方向(つまりは流れ交差方向)において空気に流速分布がある場合、高い方の流速によって捕集できる塵埃の大きさや捕集率が左右される。例えば、このダクトユニットを、液晶プロジェクタ等の画像投射装置における液晶パネルや光学素子に冷却用空気を導くために使用する場合、液晶パネルやこれに近接した光学素子に塵埃が付着すると、投射画像中に塵埃の像が含まれて画質が低下する。
【0053】
また、集塵フィルタ8の塵埃捕集面の面内方向にて流速分布がある場合、流速が高い部分に塵埃が堆積して目詰まりが発生し易く、集塵フィルタ8の塵埃捕集面の全体を効率良く利用できなくなり、集塵フィルタ8の早期交換が必要となる。
【0054】
このため、本実施例では、図13に示すように、集塵フィルタ8よりも上流側(流入口2と集塵フィルタ8との間)に流速制御構造5を設ける。これにより、集塵フィルタ8に流入する空気の塵埃捕集面の面内方向での速度差を低減することができ、集塵フィルタ8の塵埃捕集率を向上させるとともに、目詰まりの発生を遅らせて集塵フィルタ8の長寿命化を実現できる。
【実施例3】
【0055】
図14および図15には、実施例1にて説明したダクトユニットを備えた本発明の実施例3である画像投射装置の構成を示している。本実施例の画像投射装置は、反射型液晶パネルを光変調素子として用いた液晶プロジェクタであり、電子機器および光学機器の1つである。
【0056】
図14において、9は光源ランプであり、10はランプ9を冷却するランプ冷却ファンである。11はランプ冷却ファン10から流出した空気を、ランプ9に向かって導くランプ冷却ダクトである。1〜6は実施例1にて説明したダクトユニットであり、ランプ9を冷却した空気を、後述する排気口14bから筐体の外部に流出させるために用いられる。
【0057】
12は不図示の電源ユニットおよび該液晶プロジェクタの各種動作を制御する電装ユニットである。13は照明光学系、色分解合成光学系および投射レンズを含む光学エンジンである。照明光学系は、ランプ9から射出した光を複数の反射型液晶パネルの照明に適した光に変換する。色分解合成光学系は、照明光学系からの光を複数の色光に分解してこれらの色光を反射型液晶パネルに導き、これら反射型液晶パネルにより変調された複数の色光を合成する。投射レンズは、色分解合成光学系により合成された光をスクリーン等の被投射面に投射する。14は筐体を構成する外装部材であり、吸気口14aと排気口14bを有する。
【0058】
図15には、本実施例の画像投射装置内での空気の流れを太い実線矢印で示している。ファン4およびランプ冷却ファン10が、電装ユニット12から供給される電力によって駆動されて回転すると、外部から吸気口14aを通って空気が筐体内に流れ込む。筐体内に流れ込んだ空気の一部は、ランプ冷却ファン10により吸い込まれて吐出され、ランプ9を冷却した後、ダクト1の流入口2に向かって流れる。
【0059】
流入口2からダクト1内に流れ込んだ空気は、流速制御構造5に向かって流れ、流速制御構造5に到達した空気は、流れ交差方向での流速が均一化された後、ファン4に向かって流れる。ファン4に流入する空気は、流れ交差方向においてほぼ均一な流速を有するため、ダクト1の利用効率を向上させたり、ファン4からの騒音を低減させたりすることができる。ファン4から吐出された空気は、流出口3および排気口14bを通過して筐体の外部に排出される。
【0060】
本実施例では、実施例1にて説明したダクトユニットを画像投射装置に用いる場合について説明したが、実施例1のダクトユニットは、画像投射装置に限らず、空気の流れを制御する必要がある様々な電子機器(または光学機器)に使用することができる。
【0061】
以上説明した各実施例は代表的な例にすぎず、本発明の実施に際しては、各実施例に対して種々の変形や変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0062】
流束を均一化する流路構造であって、画像投射装置等の電子機器の冷却その他の様々な用途に利用できる。
【符号の説明】
【0063】
1 ダクト
2 流入口
3 流出口
5 流速制御構造
6 曲がり部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を流入口から流出口に導く流路と、
前記流路内のうち前記流入口と前記流出口との間における一部の領域に設けられ、前記流路に流入した流体がその流れ方向に交差する方向において有する流速の差を低減するための流速制御構造とを有し、
該流速制御構造は、前記流れ方向に交差する方向において前記流体を通過させる空間と交互に設けられた複数の流速制御部材を含み、
該複数の流速制御部材の大きさが、前記流れ方向に交差する方向における前記流体の流速がより速い領域に設けられた前記流速制御部材ほど大きくなるように互いに異なっていることを特徴とする流路構造。
【請求項2】
前記流れ方向に交差する方向において、前記流路内での位置をXとし、該位置Xでの前記流体の流速をYとするとき、該流速Yの変化が、Y=f(X)で表される近似関数により近似され、該近似関数をXY座標上にて反転して得られる関数を反転関数とするとき、
前記複数の流速制御部材の大きさが、前記流れ方向に交差する方向において流速の差がない流体に対して前記反転関数に従う流速の差を与えるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の流路構造。
【請求項3】
前記大きさは、前記各流速制御部材を前記流れ方向から見たときの面積であることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路構造。
【請求項4】
前記流速制御構造が、前記流路における曲がった部分の内側に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の流路構造。
【請求項5】
前記流体としての空気を前記流路に流入させるファンが、前記流速制御構造と前記流出口との間に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の流路構造。
【請求項6】
前記流速制御構造と前記流出口との間に集塵フィルタが配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流路構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の流路構造を備えたことを特徴とする電子機器。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−169514(P2012−169514A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30431(P2011−30431)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】