説明

流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置

【課題】比較的大きな気泡を滞留させることができると共に、鉛直方向に小型化することができる流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】鉛直方向Zに向かって液体が流れる第1流路310と、該第1流路310に交差して、当該第1流路310よりも鉛直方向に直交する水平方向側に向かって液体が流れる第2流路320と、を具備し、前記第2流路320は、気泡が滞留する第2流路用気泡溜まり部321と、該第2流路用気泡溜まり部321に連通して設けられた第2流路用溝流路322と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に流路が設けられた流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴を吐出する液体噴射ヘッドの代表例としては、インク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドが挙げられる。このインクジェット式記録ヘッドとしては、例えば、インク滴をノズル開口から吐出するヘッド本体(ヘッドケース、流路ユニット及び振動子ユニットで構成されたヘッド本体)と、ヘッド本体に固定されてインクが貯留されたインクカートリッジ(液体貯留部材)からのインクを各ヘッド本体に供給する共通の流路部材(導入針ユニット)と、を具備するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなインクジェット式記録ヘッドでは、流路部材(導入針ユニット)にインクカートリッジに挿入されるインク供給針が設けられており、流路部材にインクカートリッジを装着することで、インク導入針がインクカートリッジに挿入されて、インクカートリッジ内のインクがインク導入針の内部を通過して流路部材に供給される。
【0004】
このようにインク供給針を有する流路部材では、インク供給針の内部にインクに含まれる気泡を収容する気泡溜まりと、気泡溜まりの下流側にフィルターとが設けられており、気泡溜まりに気泡を収容することで、気泡がフィルターを塞いでフィルターの有効面積を減少させる不具合などを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−6730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、気泡溜まりは、鉛直方向に伸びたインク供給針の中に設けられているため、気泡が成長すると、気泡の浮力によってインク供給針の上部に接触し、流路を気泡がチョークしてしまい、インクを供給することができなくなってしまう。このため、気泡溜まりに比較的大きな気泡を収容するためには、インク供給針の内部に鉛直方向に高い気泡溜まりとなる空間を画成する必要があり、流路部材が鉛直方向に大型化してしまうという問題がある。
【0007】
なお、このような問題はインクジェット式記録ヘッドだけではなく、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにおいても同様に存在し、また、液体噴射ヘッド以外のデバイスに用いられる流路部材においても同様に存在する。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑み、比較的大きな気泡を滞留させることができると共に、鉛直方向に小型化することができる流路部材、液体噴射ヘッド及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の態様は、鉛直方向に向かって液体が流れる第1流路と、該第1流路に交差して、当該第1流路よりも鉛直方向に直交する水平方向側に向かって液体が流れる第2流路と、を具備し、前記第2流路は、気泡が滞留する第2流路用気泡溜まり部と、該第2流路用気泡溜まり部に連通して設けられた第2流路用溝流路と、を具備することを特徴とする流路部材にある。
かかる態様では、第1流路よりも水平方向に液体が流れる第2流路を設けると共に、第2流路用気泡溜まり部と第2流路用溝流路とを設けることで、第2流路用気泡溜まり部内に比較的大きな気泡を収容しても第2流路用溝流路によって液体を下流に供給することができる。したがって、流路部材を鉛直方向に大型化することなく、大きな気泡を収容することができる。
【0010】
ここで、前記第2流路用気泡溜まり部と前記第2流路用溝流路とが、当該第2流路を流れる液体の流方向に亘って連続して連通していることが好ましい。これによれば、第2流路用溝流路内を流れる液体に含まれる気泡が、第1流路用気泡溜まり部内に収容され易い。
【0011】
また、前記第2流路用気泡溜まり部と、前記第2流路用溝流路とは、鉛直方向上端部側で連通し、前記第2流路用気泡溜まり部と前記第2流路用溝流路とは鉛直方向下側に設けられたリブによって区分けされていることが好ましい。これによれば、第2流路用溝流路内を流れる液体に含まれる気泡が、第2流路用気泡溜まり部に収容され易く、且つ第2流路用気泡溜まり部に収容された気泡が第2流路用溝流路内に入り込むのを抑制することができる。
【0012】
また、前記第1流路は、気泡が滞留する第1流路用気泡溜まり部と、該第1流路用気泡溜まり部に連通して設けられた第1流路用溝流路と、を具備することが好ましい。これによれば、第1流路の第1流路用気泡溜まり部に気泡を収容しても、第1流路用溝流路を介して液体を供給することができる。
【0013】
また、前記第1流路用気泡溜まり部と前記第1流路用溝流路とは、前記第1流路を流れる液体の流方向に亘って連通して設けられていることが好ましい。これによれば、第1流路用気泡溜まり部に収容された気泡によって第1流路がチョークされるのを抑制することができる。
【0014】
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射ヘッドにある。
かかる態様では、流路部材内に比較的大きな気泡を収容することで、気泡を外部に排出するクリーニング動作を行う回数を減少させて、液体の無駄な消費を抑制することができると共に、小型化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の他の態様は、上記態様の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体の無駄な消費を抑制して小型化した液体噴射装置を実現できる。
【0016】
また、本発明の他の態様は、上記態様の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、液体の無駄な消費を抑制して小型化した液体噴射装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る記録ヘッドの分解斜視図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るヘッド本体の要部断面図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る流路部材の断面図である。
【図4】本発明の実施形態1に係る流路部材の要部断面図である。
【図5】本発明の実施形態1に係る流路部材の要部断面図である。
【図6】本発明の実施形態1に係る流路部材の要部断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る記録装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドを示す分解斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、液体としてインク滴を吐出可能なヘッド本体20と、ヘッド本体20にインクを供給する流路部材30と、ヘッド本体20と流路部材30との間に保持された配線基板40と、を具備する。
【0020】
ここで、ヘッド本体20についてさらに図2を参照して詳細に説明する。なお、図2は、ヘッド本体の要部を示す断面図である。
【0021】
図2に示すように、本実施形態のヘッド本体20は、複数のアクチュエーターユニット210と、アクチュエーターユニット210を内部に収容可能なケース250と、ケース250の一方面に接合された流路ユニット230と、を具備する。
【0022】
本実施形態のアクチュエーターユニット210は、複数の圧電アクチュエーター211がその幅方向に並設された圧電アクチュエーター形成部材212と、圧電アクチュエーター形成部材212の先端部(一端部)側が自由端となるようにその基端部(他端部)側が固定端として接合される固定板213とを有する。
【0023】
圧電アクチュエーター形成部材212は、圧電材料214と、圧電アクチュエーター211の2つの極を構成する内部電極、すなわち、隣接する圧電アクチュエーター211と電気的に独立する個別電極を構成する個別内部電極215と、隣接する圧電アクチュエーター211と電気的に共通する共通電極を構成する共通内部電極216とを交互に挟んで積層することにより形成されている。
【0024】
この圧電アクチュエーター形成部材212には、例えば、ワイヤーソー等によって複数のスリット217が形成され、その先端部側が櫛歯状に切り分けられて圧電アクチュエーター211の列が形成されている。
【0025】
ここで、圧電アクチュエーター211の固定板213に接合される領域は、振動に寄与しない不活性領域となっており、圧電アクチュエーター211を構成する個別内部電極215及び共通内部電極216間に電圧を印加すると、固定板213に接合されていない先端部側の領域のみが振動する。そして、圧電アクチュエーター211の先端面が、後述する振動板232の島部240に接着剤等を介して固定される。
【0026】
また、アクチュエーターユニット210の各圧電アクチュエーター211には、当該圧電アクチュエーター211を駆動するための駆動IC等の駆動回路220が搭載されたCOF等の回路基板221が接続されている。
【0027】
流路ユニット230は、流路形成基板231、振動板232及びノズルプレート233を具備する。
【0028】
流路形成基板231は、シリコン単結晶基板からなり、その一方面側の表層部分には、複数の隔壁234によって画成された圧力発生室235がその幅方向(短手方向)に並設されている。
【0029】
また、各圧力発生室235の長手方向一端部側には、各圧力発生室235に液体の一例であるインクを供給するためのマニホールド236が液体供給路の一例であるインク供給路237を介して連通されている。また、流路形成基板231の圧力発生室235の開口面側は振動板232で封止され、他方面側にはノズル開口238が穿設されたノズル形成部材の一例であるノズルプレート233が接着剤や熱溶着フィルムを介して接着されている。ノズルプレート233のノズル開口238と圧力発生室235とは、流路形成基板231を貫通して設けられたノズル開口連通孔239を介して連通している。
【0030】
振動板232は、例えば、樹脂フィルム等の弾性部材からなる第1の部材である弾性膜232aと、この弾性膜232aを支持する、例えば、金属材料等からなる第2の部材である支持板232bとの複合板で形成されており、弾性膜232a側が流路形成基板231に接合されている。例えば、本実施形態では、第1の部材である弾性膜232aは、厚さが数μm程度のPPS(ポリフェニレンサルファイド)フィルムからなり、第2の部材である支持板232bは、厚さが数十μm程度のステンレス鋼板(SUS)からなる。
【0031】
また、振動板232の各圧力発生室235に対向する領域内には、圧電アクチュエーター211の先端部が当接する島部240が設けられている。すなわち、振動板232の各圧力発生室235の周縁部に対向する領域に他の領域よりも厚さの薄い薄肉部241が形成され、この薄肉部241の内側にそれぞれ島部240が設けられている。このような島部240には、上述したアクチュエーターユニット210の圧電アクチュエーター211の先端部が例えば、接着剤等を介して固定される。
【0032】
また、振動板232のマニホールド236に対向する領域には、薄肉部241と同様に、支持板232bがエッチングにより除去されて実質的に弾性膜232aのみで構成されるコンプライアンス部242が設けられている。なお、このコンプライアンス部242は、マニホールド236内に圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部242の弾性膜232aが変形することによって圧力変化を吸収し、マニホールド236内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。
【0033】
なお、本実施形態では、振動板232を弾性膜232aと支持板232bとで構成し、島部240の周辺部及びコンプライアンス部242を弾性膜232aのみで構成したが、特にこれに限定されず、例えば、振動板として、1枚の板状部材を用いて、板状部材の厚さ方向の一部を除去した凹形状の薄肉部241、242等を設けることで、島部240及びコンプライアンス部242を形成するようにしてもよい。
【0034】
ケース250は、流路形成基板231の振動板232上に固定されたものであり、振動板232とは反対側に設けられた流路部材30に配線基板40を介して接続されて、図示しないインクカートリッジ等の液体貯留部からインクをマニホールド236に供給するインク導入路251が設けられている。
【0035】
また、ケース250には、厚さ方向に貫通する複数の収容部252が設けられており、各収容部252にアクチュエーターユニット210が位置決めされて固定されている。本実施形態では、アクチュエーターユニット210を8個設け、アクチュエーターユニット210がそれぞれ独立して収容されるように8個の収容部252を設けるようにした。
【0036】
また、ケース250には、コンプライアンス部242に対向する領域に開口する凹形状を有するコンプライアンス空間253が設けられている。このコンプライアンス空間253によってコンプライアンス部242は変形可能に保持される。
【0037】
さらに、図1に示すように、ケース250の振動板232に接合された面とは反対側の面には、回路基板221の各配線が接続される導電パッドが設けられた配線基板40が固定されている。ケース250の収容部252は、この配線基板40によって実質的に塞がれている。配線基板40には、ケース250の収容部252に対抗する領域にスリット状の開口部41が形成されており、回路基板221はこの配線基板40の開口部41から収容部252の外側に引き出されて配線基板40のケース250とは反対側の面で配線基板40と電気的に接続されている。
【0038】
また、配線基板40には、流路部材30の流路が内部に設けられた突起部を挿通する挿通部42が設けられており、挿通部42を挿通した流路部材30の流路とインク導入路251とが連通する。
【0039】
このようなヘッド本体20では、インク滴を吐出する際に、圧電アクチュエーター211及び振動板232の変形によって各圧力発生室235の容積を変化させて所定のノズル開口238からインク滴を吐出させるようになっている。具体的には、図示しないインクカートリッジからケース250に設けられたインク導入路251を介してマニホールド236にインクが供給されると、インク供給路237を介して各圧力発生室235にインクが分配される。実際には、圧電アクチュエーター211に電圧を印加することにより圧電アクチュエーター211を収縮させる。これにより、振動板232が圧電アクチュエーター211と共に変形されて圧力発生室235の容積が広げられ、圧力発生室235内にインクが引き込まれる。そして、ノズル開口238に至るまで内部にインクを満たした後、回路基板221を介して供給される記録信号に従い、圧電アクチュエーター211の電極215、216に印加していた電圧を解除する。これにより、圧電アクチュエーター211が伸張されて元の状態に戻ると共に振動板232も変位して元の状態に戻る。結果として圧力発生室235の容積が収縮して圧力発生室235内の圧力が高まりノズル開口238からインク滴が吐出される。
【0040】
一方、流路部材30は、ヘッド本体20のケース250に配線基板40を間に挟んだ状態で固定される。ここで、流路部材30についてさらに図3〜図6を参照して詳細に説明する。なお、図3は、本発明の実施形態1に係る流路部材を示す断面図であり、図4は、図3のA−A′線断面図及びB−B′線断面図であり、図5及び図6は、流路部材の内部をインクが流れる状態を示す断面図である。
【0041】
図示するように流路部材30は、第1流路部材31、第2流路部材32及び第3流路部材33が積層されて構成されたものであり、内部にインクが流れる流路300が設けられている。
【0042】
具体的には、流路部材30は、ヘッド本体20側に設けられた第1流路部材31と、第1流路部材31のヘッド本体20とは反対側に設けられた第2流路部材32と、第2流路部材32の第1流路部材31とは反対側に設けられた第3流路部材33と、を具備し、これら第1流路部材31、第2流路部材32及び第3流路部材33は鉛直方向Zに積層されている。
【0043】
この流路部材30に設けられた流路300は、鉛直方向Zに向かってインクが流れるように設けられた第1流路310と、第1流路310に連通して鉛直方向Zに対して直交する水平方向に向かってインクが流れるように設けられた第2流路320と、を具備する。
【0044】
また、流路300は、第2流路320に連通して鉛直方向Zに向かってインクが流れるように設けられた第3流路330と、第1流路310に連通して内部にフィルター34が設けられたフィルター室340と、フィルター室340に連通して、ヘッド本体20にインクを供給する第4流路350と、をさらに具備する。
【0045】
このような流路部材30では、インクが第3流路330から供給されて、第3流路330から第2流路320、第1流路310、フィルター室340及び第4流路350を順番に通過してヘッド本体20に供給される。
【0046】
ここで第1流路310は、鉛直方向Zに向かってインク(液体)が流れるように設けられたものである。なお、鉛直方向Zに向かってインク(液体)が流れるとは、インク(液体)の流れる方向に鉛直方向Zに向かう成分(ベクトル)が存在することを言う。したがって、第1流路310は、鉛直方向Zに対して直交する水平方向を含まなければ、鉛直方向Zに対して傾斜した方向も含むものである。
【0047】
また、第1流路310は、図3及び図4(a)に示すように、円柱形状の空間である第1流路用気泡溜まり部311と、第1流路用気泡溜まり部311に連通する第1流路用溝流路312と、を具備する。
【0048】
第1流路用溝流路312は、インクの流れる方向に直交する方向の断面が凹形状となるように鉛直方向Zに向かって形成されている。また、第1流路用溝流路312は、第1流路用気泡溜まり部311の周方向に一定の間隔で4つ設けられている。また、第1流路用気泡溜まり部311と第1流路用溝流路312とは、第2流路320の鉛直方向Zに亘って連続して連通して設けられている。
【0049】
このような第1流路310では、初期状態では、インクは第1流路用気泡溜まり部311と第1流路用溝流路312との内部を流れ、図5(a)、(b)に示すように、インクに含まれる気泡500が成長すると、第1流路用気泡溜まり部311に気泡500が保持される。このとき、第1流路用気泡溜まり部311内に気泡500が滞留してもインクは第1流路用溝流路312を通過することができるため、第1流路310が気泡500によってチョークされることがない。すなわち、第1流路310として第1流路用気泡溜まり部311と第1流路用溝流路312とを設けることによって、第1流路用気泡溜まり部311内に比較的大きな気泡500を収容することができる。ちなみに、第1流路310として、第1流路用溝流路312を設けずに、第1流路用気泡溜まり部311のみを設けた場合、成長した気泡500によって第1流路310がチョークされないように第1流路310内には大きな気泡500を収容することができないため、第1流路310内のインクや気泡500を強制的にノズル開口238から排出させるクリーニングを行う頻度を多くし、インクの無駄な消費が増大してしまう。本実施形態では、第1流路310として第1流路用気泡溜まり部311と第1流路用溝流路312とを設けることで、第1流路用気泡溜まり部311内に大きな気泡500を収容しても、第1流路用溝流路312を介してインクを供給することができるため、クリーニングを行う頻度を減少させて、インクの無駄な消費を低減することができる。
【0050】
また、第1流路用気泡溜まり部311と第1流路用溝流路312とは、第2流路320の鉛直方向Zに亘って連続して連通して設けることで、第1流路用気泡溜まり部311に気泡500が収容された際に、第1流路用気泡溜まり部311が気泡500によって塞がれても、第1流路用溝流路312を介してインクを下流に確実に供給することができる。
【0051】
第2流路320は、図3及び図4(b)に示すように、第1流路310よりも鉛直方向Zに直交する水平方向側に向かってインクが流れるように設けられている。すなわち、第2流路320は、鉛直方向Zのみにインクが流れるものを含まず、水平方向に対して第1流路310よりも小さい角度で設けられたものを言う。本実施形態では、第2流路320を水平方向(鉛直方向Zに直交する方向)にインク(液体)が流れるように設けた。
【0052】
この第2流路320は、円柱形状を有する第2流路用気泡溜まり部321と、第2流路用気泡溜まり部321に連通する第2流路用溝流路322と、を具備する。
【0053】
第2流路用気泡溜まり部321は、円柱形状の軸方向(高さ方向)を水平方向に配置した形状を有し、一端部が第1流路用気泡溜まり部311と連通して設けられている。
【0054】
また、第2流路用溝流路322は、第2流路用気泡溜まり部321の水平方向の両側と、第2流路用気泡溜まり部321の鉛直方向Zの下側とにそれぞれ設けられている。
【0055】
この3つの第2流路用溝流路322は、それぞれ第2流路用気泡溜まり部321にインク(液体)の流れる方向、本実施形態では水平方向に亘って連通して設けられている。また、第2流路部材用気泡溜まり部321の鉛直方向Zの下側に設けられた第2流路用溝流路322aは、インクの流れる方向に直交する方向の断面が凹形状となるように鉛直方向Zに向かって形成されており、第2流路用気泡溜まり部321の鉛直方向Zの下側に開口して設けられている。
【0056】
また、第2流路用気泡溜まり部321の水平方向の両側に設けられた第2流路用溝流路322bは、第2流路用気泡溜まり部321と鉛直方向上側で連通して設けられている。すなわち、第2流路用溝流路322bと第2流路用気泡溜まり部321とは、両者が連通する領域の鉛直方向Zの下側に設けられたリブ323によって区画されている。
【0057】
これら第2流路用溝流路322は、第2流路用気泡溜まり部321と第2流路320のインクの流れる方向に亘って連続して連通して設けられている。
【0058】
このような第2流路320では、初期状態では、インクは第2流路用気泡溜まり部321と第2流路用溝流路322との内部を流れ、図6に示されるように、インクに含まれる気泡500が成長すると、第2流路用気泡溜まり部321に気泡500が保持される。このとき、第2流路用気泡溜まり部321内に気泡500が滞留してもインクは第2流路用溝流路322を通過することができるため、第2流路320が気泡500によってチョークされることがない。すなわち、第2流路320として第2流路用気泡溜まり部321と第2流路用溝流路322とを設けることによって、第2流路用気泡溜まり部321内に比較的大きな気泡500を収容することができる。ちなみに、第2流路320として、第2流路用溝流路322を設けずに、第2流路用気泡溜まり部321のみを設けた場合、成長した気泡500によって第2流路320がチョークされないように、第2流路320内には大きな気泡500を収容することができず、第2流路320内のインクや気泡500を強制的にノズル開口238から排出させるクリーニングを行う頻度を多くする必要があり、インクの無駄な消費が増大してしまう。本実施形態では、第2流路320として第2流路用気泡溜まり部321と第2流路用溝流路322とを設け、第2流路用気泡溜まり部321内に比較的大きな気泡500を収容しても第2流路用溝流路322を介してインクを供給することができるため、気泡500が比較的大きく成長するまでの間、クリーニングを行う必要がない。したがって、クリーニングを行う頻度を減少させて、インクの無駄な消費を低減することができる。
【0059】
また、第2流路用気泡溜まり部321と、この第2流路用気泡溜まり部321の水平方向両側に設けられた2つの第2流路用溝流路322bは、鉛直方向Zの上側で互いに連通して設けられており、鉛直方向Zの下側がリブ323によって区画されている。このため、第2流路用溝流路322b内を通過するインクに含まれる気泡501は、第2流路用気泡溜まり部321内に効率良く排出されて、インクに含まれる気泡501が下流の第1流路310側に流れ難くなっていると共に、第2流路用気泡溜まり部321に収容された気泡500が第2流路用溝流路322内に侵入するのを抑制することができる。
【0060】
さらに、第2流路用溝流路322と第2流路用気泡溜まり部321とは、第2流路320のインクの流れる方向に亘って連続して連通して設けられることで、第2流路用溝流路322内を通過するインクに含まれる気泡が確実に第2流路用気泡溜まり部321に排出されるようになっている。
【0061】
また、図3に示すように、このような第2流路320には、第3流路330が連通して設けられている。第3流路330は、第3流路部材33に設けられた針部35の内部に設けられている。
【0062】
針部35は、第3流路部材33に一体的に形成されており、その内部に鉛直方向に向かってインクが流れる第3流路330が設けられている。
【0063】
第3流路330は、針部35の先端において開口面積が徐々に漸減するテーパー形状に形成されており、針部35の先端部よりも下側では、鉛直方向に略同一の開口面積で設けられている。つまり、第3流路330は、針部35の先端部以外では、水平方向の断面積がインクの流れる方向に向かって略同一で形成されている。
【0064】
本実施形態では、上述したように第1流路310と第2流路320とのそれぞれに気泡を収容する第1流路用気泡溜まり部311と第2流路用気泡溜まり部321とを設けるようにしたため、針部35の内部に気泡溜まり部となる空間を鉛直方向に長く設ける必要がない。また、水平な第2流路320に第2流路用気泡溜まり部321を設けたため、第1流路310の鉛直方向Zの長さを短くすることができる。したがって、針部35の鉛直方向Zの長さを短くして、流路部材全体の鉛直方向の高さを低くすることができる。ちなみに、流路部材30に水平方向にインクが流れる第2流路320を設けずに、流路部材30に鉛直方向Zにインクが流れる第1流路310と第3流路330とフィルター室340と第4流路350とのみを設けた場合、気泡を収容する容積が小さくなることから鉛直方向Zに長い流路300を設けなくてはならなくなり、流路部材30が鉛直方向Zに大型化してしまう。
【0065】
また、流路部材30には、第1流路310に第2流路320とは反対側で連通するフィルター室340と、フィルター室340に連通してヘッド本体20のインク導入路251に連通する第4流路350と、が設けられている。
【0066】
フィルター室340は、第1流路部材31と第2流路部材32との間に第4流路350及び第1流路310よりも広い開口面積(インクの流れる方向に直交する断面方向)で設けられている。
【0067】
また、フィルター室340は、第1流路310に連通する領域から第1流路部材31と第2流路部材32との境界に向かって開口面積が徐々に漸大し、第1流路部材31と第2流路部材32との境界から第4流路350に連通する側で開口面積が徐々に漸小するように設けられている。
【0068】
このようなフィルター室340の内部には、第1流路部材31と第2流路部材32との間にインクに含まれる異物や気泡などを除去するフィルター34が設けられている。フィルター室340は、上述のように、第1流路部材31と第2流路部材32との境界部分で最も大きな開口面積で設けられているため、第1流路部材31と第2流路部材32との境界部分にフィルター34を設けることで、フィルター34の有効面積を広げることができる。
【0069】
また、フィルター室340に連通する第4流路350は、本実施形態では、鉛直方向Zに向かって開口面積が同一となるように形成されている。
【0070】
このような流路部材30には、第3流路部材33の針部35が設けられた面にインクが貯留されたインクカートリッジが装着されることで、インクカートリッジに針部35が挿入され、インクカートリッジ内のインクは第3流路330から第2流路320、第1流路310、フィルター室340及び第4流路350を介してヘッド本体20に供給される。
【0071】
もちろん、針部35にインクカートリッジを接続せずに、インクタンクなどのインク貯留部に接続されたチューブ状の供給管を接続するようにしてもよい。
【0072】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的構成は上述したものに限定されるものではない。
【0073】
例えば、上述した実施形態1では、第1流路310が第1流路用気泡溜まり部311及び第1流路用溝流路312を有するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、第1流路310が第1流路用気泡溜まり部311のみで構成されていてもよい。この場合には、第1流路310で収容可能な気泡の量が減少するが、第2流路320で大きな気泡を収容することができるため、従来のように針部35内で気泡を収容するのに比べて、鉛直方向の高さの小さな流路部材30で従来よりも多くの気泡を収容することができる。
【0074】
また、上述した実施形態1では、流路部材30に第1流路310、第2流路320、第3流路330、フィルター室340及び第4流路350を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、第1流路310と第2流路320とが設けられていれば、その他の流路が設けられていなくても、またさらに他の流路が設けられていてもよい。
【0075】
さらに、上述した実施形態1では、圧力発生室235に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、圧電材料214と電極215、216とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーター211を用いて説明したが、圧力発生手段としては、特にこれに限定されず、例えば、電極及び圧電材料を成膜及びリソグラフィー法により積層形成した薄膜型、グリーンシートを添付する等の方法により形成される圧膜型などの撓み振動型の圧電アクチュエーターを用いることができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
【0076】
また、これら各実施形態のインクジェット式記録ヘッド10は、インクカートリッジ等と連通するインク流路を具備するインクジェット式記録ヘッドユニットの一部を構成して、インクジェット式記録装置に搭載される。図7は、そのインクジェット式記録装置の一例を示す概略図である。
【0077】
図7に示すインクジェット式記録装置Iにおいて、複数のインクジェット式記録ヘッド10を有するインクジェット式記録ヘッドユニット1(以下、ヘッドユニット1とも言う)は、インク供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、このヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動可能に設けられている。この記録ヘッドユニット1は、例えば、ブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0078】
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラーなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8に巻き掛けられて搬送されるようになっている。
【0079】
また、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッド10(ヘッドユニット1)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッド10が固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
【0080】
さらに、上述した例では、流路部材30を具備するインクジェット式記録ヘッド10について説明したが、インクジェット式記録ヘッド10以外の部分に流路部材30が設けられたインクジェット式記録装置にも本発明は適用することができる。具体的には、インクが貯留された貯留手段が、キャリッジ3に搭載されずに、装置本体4に固定されて、貯留手段とヘッド本体20とをチューブ状の供給管で接続するインクジェット式記録装置の場合、例えば、貯留手段を設置する場所に上述した流路部材30が設けられていてもよい。
【0081】
なお、上記実施の形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式記録ヘッドを、また液体噴射装置の一例としてインクジェット式記録装置を挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド及び液体噴射装置全般を対象としたものであり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドや液体噴射装置にも勿論適用することができる。その他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ、かかる液体噴射ヘッドを備えた液体噴射装置にも適用できる。
【0082】
また、本発明は液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に搭載される流路部材に限定されず、その他のデバイスに搭載される流路部材についても適用可能である。
【符号の説明】
【0083】
I インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、 10 インクジェット式記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、 20 ヘッド本体、 30 流路部材、 31 第1流路部材、 32 第2流路部材、 33 第3流路部材、 34 フィルター、 35 針部、 40 配線基板、 300 流路、 310 第1流路、 311 第1流路用気泡溜まり部、 312 第1流路用溝流路、 320 第2流路、 321 第2流路用気泡溜まり部、 322、322a、322b 第2流路用溝流路、 330 第3流路、 340 フィルター室、 350 第4流路、 500、501 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に向かって液体が流れる第1流路と、
該第1流路に交差して、当該第1流路よりも鉛直方向に直交する水平方向側に向かって液体が流れる第2流路と、を具備し、
前記第2流路は、気泡が滞留する第2流路用気泡溜まり部と、該第2流路用気泡溜まり部に連通して設けられた第2流路用溝流路と、を具備することを特徴とする流路部材。
【請求項2】
前記第2流路用気泡溜まり部と前記第2流路用溝流路とが、当該第2流路を流れる液体の流方向に亘って連続して連通していることを特徴とする請求項1記載の流路部材。
【請求項3】
前記第2流路用気泡溜まり部と、前記第2流路用溝流路とは、鉛直方向上端部側で連通し、前記第2流路用気泡溜まり部と前記第2流路用溝流路とは鉛直方向下側に設けられたリブによって区分けされていることを特徴とする請求項1又は2記載の流路部材。
【請求項4】
前記第1流路は、気泡が滞留する第1流路用気泡溜まり部と、該第1流路用気泡溜まり部に連通して設けられた第1流路用溝流路と、を具備することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の流路部材。
【請求項5】
前記第1流路用気泡溜まり部と前記第1流路用溝流路とは、前記第1流路を流れる液体の流方向に亘って連通して設けられていることを特徴とする請求項4記載の流路部材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射ヘッド。
【請求項7】
請求項6記載の液体噴射ヘッドを具備することを特徴とする液体噴射装置。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか一項に記載の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−82185(P2013−82185A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225371(P2011−225371)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】